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寄せキャラ・スピンオフシリーズNo.1「翼の折れた新型機」②

実在のお笑いタレントをモデルにしたのにまったく似てない!(笑)「寄せキャラ」たちが戦場をところせましと大奮闘!!

 前回、序段、Part1からの続きです!
 関西弁がやかましい強面の上官、ベテランパイロットのコッバスと初対面した新人パイロットのコルクとケンス。おっかなびっくりしながらも顔に似合わず世話好きな上官どのとのミーティング、徐徐に打ち解けていけるのか?? 

 「翼の折れた新型機」②

〈Part2〉

 そこは軍用であるだけ敷地面積は広いが、建物の数自体はまばらな基地内部をおおよそで案内してくれた直属の上司、見た目がおっかないシェパード種の犬族のコッバスは、最後に自分たちが日常的に寝泊まりすることになる「共同生活棟」にコルクたち新入隊員を連れて来ると、ここでしまいやと言い放つ。

 基地の中枢たる「司令部本棟」と双璧をなす大きさを誇るというが、要は同じ鉄筋コンクリートのそこそこの大きさの建物が、ふたつ横並びに並んでいるだけであった。どちらもかなり年季がいった感じのヤツだ。一言で言ってしまえば、ただのおんぼろ。

 しょせんはお飾りみたいな田舎の前線基地であることをはっきりと見せつけられた気分の新人たちだった。このあたりはつい先日までいた地元の属国のそれとなんら変わりもしない。こちらも大陸中央のルマニア本国からしたら周辺諸国のただの一属国だ。

 何はともあれ、これでようやく解放されるのかとそれまでずっと緊張しっぱなしだった毛むくじゃらの犬族は、ほっと胸をなで下ろす。が、そこの食堂で今後のチーム行動におけるミーティングをして解散と言われて、またこの表情をこわばらせてしまう。

 隣のケンスがやれやれといいたげに首を振るのに自然と苦笑いの生まれついての臆病者は、それでも目の前の上官どのがこれまでとはまた違った、ただ怖いだけの存在ではないものらしいことに、ちょっとした期待とある種の興味を抱いたりもしていた。
 ここで信頼や尊敬ができる人物に出会うことなど、はなから期待はしていなかった若者たちだ。

 いかにもやり手らしい熟練のパイロット然とした中年オヤジはところどころ笑えないオヤジギャグをまじえながらも、若い学徒たちにやはりそれなりに気を遣っているらしいことがそこはかとなく伝わってくる。パッと見はおっかない顔つきに、よく見ればその目元のあたり、かすかな笑みみたいなものがあったろうか。

 本当の年齢のことを言ったら毛嫌いされるに違いないと思っていたふたりは、これだけでもどこか救われた気持ちになる。
 そうでなくとも経験の浅い新人は、ただの足手まとい呼ばわりされてさんざんに叩かれののしられるようなことが、日常茶飯事のこれまでだった。

 なのに今は同じ目線で食堂のテーブルを囲んで、おなじものを載せたプレートを前に腹ごしらえをしようとしているのだ。
 ほんとうにはじめてだらけの一日だった。
 目の前の食卓にはそれまでの冷たく味気ない軍用のレーションとは違った、ちゃんと人の手で調理され味付けのされたまともな温かな食事が並んでいる。その量も驚くほどのボリュームだ。

 他よりも鼻がきく犬族にはたまらないニオイを立ち上らせるごちそうを前にして、ごくりと生唾飲み込んで固まってしまう食べ盛りに、目の前でどかりと背もたれに身をあずける上官どのはさも鷹揚な態度で言ってくれる。

「おう、ええからもっと楽にせい! ははん、おのれらさてはこれまでろくなもんを食わせてもらえてなかったんちゃうか、その反応からするには? 気の毒なこっちゃ、だがここはおのれらがおったさっむい北国とは違(ちご)うて温暖で気候がええから食い物には事欠かん。味も絶品や! そやから遠慮すな、わいらは地域の平和と治安を維持する軍人さんやさかい、このくらいは当然やろ? 今日は新人の歓迎会っちゅうことで特別大盛りにしてもらっとるしの! 食え食え!!」

「はっ、はい!」

「い、いただきます!! はんっ、ん、んんっ……!!」

 よほど腹が減っていたと見えて元気にガツガツと料理に食らいつく若者たちを前に、それをとても愉快そうに眺める上官、コッバスは機嫌が良さそうになおのことニヤけて言った。

「まったく、そないにうまそうにがっつきおってからに、ほんまにうらやましいくらいの食欲やの! もうそんな勢いで食らいつくなんてことほぼあらへんわ。ちゅうてもべっぴんな嬢ちゃんやったら別やがの! かっか、いいから食え! 食いながら聞け。おのれらに聞きたいことはいろいろとあるが、ゆうたらなあかんことも山とあるんや。ええな?」

 ちょっとだけふたりで目を見合わせてからやがてこくりとうなずくコルクとケンスだ。さっきよりも落ち着いたペースで食事を喉の奥に流し込みながら、上官の質問には素直に聞かれるがままに答えてゆく。
 はじめはおおよその両名の生い立ちと軍に入る経緯、これまでの経過と、お互いの食事が終わる頃にはこの今現在にまで話が進んでいた。さっきまでニヤけていたはずの上官どのの顔が次第に真顔になっていくのをふたりは気付けていたのだろうか。

 かくして話はとうとうこの核心に、新人のパイロットたちが抱える最大の問題点へと突き当たった。ゆったりともたれていた粗末な椅子の背もたれから上半身をよっこらと起こすコッバスは、そこでふと難しい顔つきしてふたりに内緒話でもするかのよう、やや声のトーンを落としながらに聞いてくれる。

「おう、ほんでこっからが本題じゃ! おのれらと一緒に運び込まれてきたあの新型のアーマー、さっき見させてもろうたが、仕様も規格もほぼ一緒なんやな? ちゅうてもこのわいの現行機のビーグルⅤ(ファイブ)とはえらい見てくれえ変わってもうて何がなにやらさっぱりや! まずサイズがでかい! 一回りっちゅうほどではないが、頭ひとつくらいノッポやったの? おまけにあちこちゴツゴツとしていかついこといかついこと!!」

 お気楽な口調でずけずけと思ったことをぶちまけてくれる隊長どのに、ふたりの部下たちは神妙な顔でうなずく。

「はい……! 現行のファイブとはまるで設計思想が異なるとかで、でもこの俺たち自身もさっぱりわかってないのが実情です。まだ実戦での経験も乏しいし……」

 ケンスの返事を横で聞きながら何度もうなずくコルクだが、何か物言いたげなさまでも言葉を発することなく、やがて視線を気まずげにそらしてしまう。これを横目で見る相棒も何やら気まずげに黙り込むのだった。

 なにかモジモジとした部下たちの様子にちょっとした違和感を感じながらもコッバスは続ける。

「ん、まあそうやな? まるで設計思想が違う。その通りやろ。わしからしたらいっそ異次元やな! あの背中に背負った馬鹿デカいブースター、いわゆるロケット推進システムっちゅうやつか? あんなもんでムリクリ重たいアーマーを飛ばそうっちゅうんやから、あの空を! 二本の足で地べたを走り回るしか能がないこっちからしたらビックリ仰天の離れ業や。ただしうまいこと飛べたらの話やが。そうそう簡単なこっちゃあらへんのやろ。あれがおのれらみたいなペーペーの若造どもに押しつけられとるっちゅうことは?」

 鋭い指摘にギクリとした様で固まってしまう新人くんたちだ。
 これに案の定かとかすかなため息みたいなものを口の端から漏らす上官は、苦めた顔で視線を手元にあった端末パッド、およそ12インチほどの薄型のディスプレイに落とす。利き手に持ったスプーンの先端をその中に映る人型のロボット兵器の簡略図に当てて、コンコンと鳴らしながらにまた続けた。


「厳密にはジェットエンジンちゅうやつか? 既存のジェットフライヤーのそれなんかよりはなんぼか小型化されとるみたいやが、それが背中にまとめて四つ。あと補助的に足にもひとつずつあるんか? なんとも豪勢なこっちゃ! あと目立つのは……」

 パッドの中に投影される機体モデル図の胴体の中心あたりに銀色の匙の先端を当てて、意味深な視線を投げかける。

「ビーグルにはあんまり見かけへんような邪魔っけな装備が胴体の先っぽに取り付けられとったが、あれってのはいわゆるエネルギーフィールドの発生装置っちゅうことか? 一部では実用化にこぎ着けとるとはウワサには聞いとったが、そんなけったいなもんがわしらのビーグルにまでのう! マジでビックリや」

 これにいよいよ微妙な顔つきになる部下たちに、また声をひそめて上官のコッバスは聞いてくる。

「ちゅうか、ちゃんと使えるんか? そないなバリバリ燃費を食らうお化けじみた兵装が?? 目には見えない不可視の障壁、電磁シールドか? わっかりやすう言うたら『バリア』だなんちゅう大それたもんは、いやそれこそがどでかいエンジン積んどる大型戦艦の専売特許やろ! サイズでは到底お話にならないアーマーなんぞにどうにかできるもんなんか?」

 聞かれてもうまく返事ができない新人パイロットたちだ。
 ケンスは首を一層に傾げてたどたどしげにセリフをつなぐ。

「はあ、まあ、その、俺たちの口からはなんとも……! これもまた実験段階の新型装備とのことで、常時張りっぱなしだなんてことはできないらしいです。ここぞって時に使えとは言われてるけど、実際にどれだけの効果が期待できるかわからないから、どの場面で使えばいいのかさっぱり、なあ?」

「…………」

 そう、同僚に同意を求められて、うなずくしかないコルクだった。
 あまり腑に落ちないさまの上官は顔つき難しくしてとりあえずで了解。

「なるほどの、思った以上に問題だらけっちゅうことか。しっかし一か八かのバクチみたいな機能なんぞには頼らんほうが身のためやな。なんぼ実験のためかて死んでしもうたらそれまでや。若い身空で、命をかけるほどの価値も言われもあらへんやろ。そやから最後の切り札くらいに大事に取っとき! あとそもそもがおのれらのあのシックスちゅうんは、ぶっちゃけこないなところじゃなくて本来はもっと別の場所で戦うためのもんだとは聞いたことがあるしのう?」

 そう言いながら聞き手のスプーンの先端をなぜだか天井に向けてクイクイと指し示すのに、二人の新人は何ともいえない表情を見合わせる。上官どのが言っているのは天井よりもはるかに高いある特殊なところであるのはわかった。そう確かにそんなウワサを聞いたことはあったが、それほど高等な学校教育をろくに受けることができなかったコルクもケンスも、それこそがまるで想像が及ばないところのお話なのであった。
 今はただ上官のシェパードの話に耳を傾けるしかない。  

「本命はあれを元にして作られるっちゅうⅦ(セブン)ちゅう話やったか、言えばそっちはそれのひな形っちゅうもんで、ほんまに過渡期のもんかも知れへんしな? ま、どないにしろおのれらが気にすることはあらへんが」

 いよいよ顔つきが暗くなる新人たちに、しかしながらコッバスは今日一番の真顔となってさらなる質問を浴びせかけてくる。

「おう、それじゃ最後の質問や! ちゃんと答えい、これが一番大事な質問やさかい。そうやつまりはおのれらの自身のことや。あんまり期待はせんで聞いてやるから正直にの。ん、おのれら、パイロットとしての腕前は、どのくらいのもんなんや? スコアは? ひょっとして星のひとつくらは持っとるんか??」

 スコア、いわゆる戦績について聞かれて二人は押し黙る。
 答えずらそうなケンスに、視線を完全に逸らしてしまうコルクだった。毛むくじゃらの相棒が完全に黙秘を決め込むのに仕方なしに坊主頭の新人が答える。

「あの、正直、俺は大したことは……! まともな実戦に出たのが都合三回、記憶では五回くらいのはずだったんですが、その中でかろうじて敵機を小破と中破したのが一回か二回くらいで、撃墜マークまでは……」

 敵機を大破、つまりは撃破した者に与えられる撃墜マークをそのカタチからズバリ〝星〟と呼び、それの過多こそがパイロット自身の経歴や腕前の善し悪しを推し計る上で一番の指標となるものだった。ちなみにこのカウント自体はアーマーがコクピットに内蔵する各種計器類がその場の状況から厳密に演算した中で算出されたものなので、およそ虚偽虚飾ができない軍の最高機密情報となる。機体の肩に赤い星印を付けるのはパイロットたちのあこがれであり、誇りでもあった。

 顔色のすぐれない部下の言葉に、ふうんと大きな耳をそばだてて聞くコッバスはやがてもうひとりの部下の横顔に目を向ける。

「そうか。しっかしまだ高校も出ておらへんのにうかつに徴兵されてもうたジャリにしては上出来やろ? これまでちゃんと命があっただけ! 普通は生き残られへんぞ、そんで、そっちのもう一方のジャリは、どないなもんなんや??」

 この話題になってから露骨に腰が引けている部下にこちらもさしたる期待はできないものかと思いきや、横から意外な注釈が入る。これに立てた耳がどちらもピンと前後に振れる上官だ。

「いやコイツは、コルクは優秀ですよ? おっかない教官どのたちからも一目置かれるほどにビーグルを自在に操ってましたから! 特に走りにかけては誰も追いつけないってくらいに! ホシだって初めての実戦でいきなりふたつ、その後にもひとつで、もう三つも持ってるもんなあ?」

「う、うん……いや、あの、うん……」

 まるでさえない顔つきの毛むくじゃらに、凜々しい顔つきの上官は驚きに目をまん丸くして食いついてくる。

「初陣で?? おいおい、マジか! 昨日今日軍隊に入ったばっかりのどシロートが、いきなり星を三つって、ビギナーズラックどころかエースやんけ!! あの新型はまだピカピカやったから実戦なんぞろくすっぽ未経験で、ノーマルのファイブでのことやろ? ちゅうことはただのまぐれとも言い切れへんわけや!!」

「い、いえ、そんなっ……おれは、ただ……仕方なしに」

 感嘆符がいくつも入り交じった驚きのセリフにだが言われる側のコルクはなおのこと顔つきを暗くして下を向いてしまう。
 たどたどしい口ぶりで一言二言だけ返すのをやや怪訝に見るコッバスはやがてその見た目の通りにナイーブな青年の胸の内を察する。

「はあん、褒められたところであんまり誇る気持ちになれへんちゅうわけか? およそパイロットには向いておらんの! おう、だがよう聞けよ、わしら軍人は殺人者じゃあらへん。わかるやろ? ホシの数はひとを殺した数じゃのうて、国を守るために、大事な家族や友人を守るために命を危険にさらした勇気と根性の何よりの証(あかし)じゃ! 誇るべき勲章やろ。おのれらそこをはき違えるなよ?」

 そうでなければ戦場を生き残ることはできないと断言する上官に、ふたりの新人パイロットは神妙な顔でただ黙って聞いていた。この時には無言も応答になるくらいに互いの関係性を築けていたのか。 
 果たしてみずからの言わんとすることは伝わったと了解するコッバス隊長どのだ。これにてミーティングのお開きを宣言する。

「ようわかったわ。それじゃあこれまでや。これにて解散、来て早々だが明日には出撃命令が出るやろうさかい、各自十分な休養を取るんやぞ。部屋は入り口におった守衛に聞けば専用のキーをくれる。そこにある番号がおのれらにあてがわれた部屋の場所や。すぐにわかるやろ。ほなまた明日な、解散!」

 有無を言わさず話を切り上げるコッバスはみずから席を立って敬礼。これに反射的にふたりの新人たちも立ち上がって敬礼!

「はいっ、ありがとうございました! 中尉どの!!」

「よ、よろしくお願いしますっ、どんっ、中尉どの……!」

 ところどころ暗雲めいたものが立ちこめながらも比較的平和裏に終わったミーティングだ。毛むくじゃらの犬族のコルクはようやくほっと胸をなで下ろして、立ち去っていく上官どのの背中を見送る。

 食べ終わった食器のトレーを部下に任せずみずから運んで片付けるのをなんだかひどく意外げに見てしまうが、ああやって始末するんだとみずからも自分のトレーを持ち上げる。

 これから先への期待と不安が入り交じるが、正直、嫌な予感があったりはした。
 それは同僚のケンスも同様であったのだろう。
 その場に立ち上がったきりで一瞬、どちらも浮かない表情を自然と見合わせてしまうのだ。
 この時、本来は言わなければいけないはずのことを言えずじまいで終わってしまった気まずさが胸の内にどちらもくすぶる。

 そしてふたりの予感は早くもこの翌日、まさしく現実のものとなってその身に降りかかることとなるのだった。 

 
     →次回、パート3に続く……!



 

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寄せキャラ・スピンオフシリーズNo.1「翼の折れた新型機」①

なかなか出番が回ってこない「寄せキャラ」たちを救済すべく、いきなりスピン・オフ・ストーリーのはじまりはじまりです!

タイトル

「翼の折れた新型機」

登場人物…モデルはみんな某人気お笑い芸人さんたちなのですが、基本的に似てないのがツライところですね(^^;)

メカニックデザイン…本編で量産型の主力シリーズとなるビーグル系、5型と6型がメインとなります。デザイン間に合うのか?

「翼の折れた新型機」①

〈序段〉

 それは、ある夏の日の、寂しげな夕暮れ時。

 人生最大の転機は、思いも寄らぬタイミングで訪れた。

 厳しい軍事教練を終えて、やっとおんぼろな宿舎に帰れる段となった頃、いきなり招集をかけられたふたりの若い新兵たちだ。

 それからややもすれば、夕日に照らされ巨大な影法師を落とす大きな人影らしきをしばしのあいだ、じっと見上げていた。

 すっくと仁王立ちする、「鋼鉄の巨人」との不意の遭遇――。

 長らく無言だったのが、やがてどちらからともなくかすかなため息めいたものが聞こえて、ようやく互いにふと我に返る。

 全身をすすけた灰色のパイロットスーツで固めた毛むくじゃらの犬族の青年が、やや困惑したさまで気弱げな言葉を発する。

「い、いいのかな……? 俺たちなんかが、こんな立派な新型のアーマーのパイロット、だなんて……??」

「……ああ、おまけにこれってまるっきりの新品だよな? これまでみたいなあちこち欠陥だらけのボロっちい使い古しなんかじゃなくって。これってどういう風の吹き回しなんだ??」

 相棒なのだろう、同じくたびれたスーツ姿でだがこちらはとてもすっきりとした見てくれのやはり犬族の青年が怪訝なさまで応じる。

 これに見上げたものに長らく視線が釘付けの剛毛の犬族なのだが、ごくりと生唾飲んで返すのだ。

「っ……うん。俺たちみたいなろくな実績のないただの新兵が、なんだか、おかしな夢を見てるみたいだ……!」

 それきりまぶしい夕日に照らされて、長らくその場に立ちすくむだけの若い犬族の青年パイロットたちだった。

 ※挿し絵と本文は随時に更新されます。

 上の挿し絵の色無しバージョン、下絵の線画を無料のダウンロードコンテンツとして公開しています(^^)/

 ちょっとした塗り絵にもなるので興味がありましたら以下のリンクからご利用ください♥

https://www.lumania01.com/?p=2850



〈Part1〉

 天から降って来たかのような突然の新型開発機の試験運用命令で、ふたりの新人パイロットたちの日常はまさしく一変、慌ただしくしたてんてこ舞いの日々がはじまった。

 おまけにそれから一週間と経たぬ内に、今度はふたりそろって新たな戦地への赴任が申し渡されることとなる。

 まだ勝手も知れぬ新型機を抱えたままに、不安のぬぐえない若者たちだったが、気が付けばもう祖国から遠く離れた南の最前線の地を踏んでいた。

 そこはこれまでとは違ってかなり暑い気候の土地柄で、以前にいた北方の田舎の前線基地と負けず劣らずした、おんぼろなローカル基地だ。

 それまで大陸の北東でかなり寒い地方出身の犬族は、生来の毛深い身体に早くもじっとりと汗をかいているのを感じる。

 おまけに生まれつきこの性格がものぐさなのも手伝って、濃い体毛をトリミングすること自体がまれなだけに余計に身体に熱がこもる。

 新型機と併せて渡された、そのやけに頑丈な見てくれした新品のパイロットスーツがもはやサウナスーツさながらの発汗作用をもたらしていた。

 確か外部の空気を取り入れて温度を下げる機能もあったはずだが、まだ慣れていないから何をどうしたものやらわからない。

 オンボロなジープから一緒に降り立った、隣の相棒の犬族が至って涼しい顔をしているのがひどくうらめしく思えた。

 こちらは生まれつきに体毛が短い種族なので、暑さにはそれなり耐性があるものらしい。

 逆に寒い祖国ではやたらと厚着しているのをからかった覚えがあるのだが、今となっては立場が完全に逆転しているのを思い知らされるばかりだ。

 内心で、はあっ!とため息つくボサ髪の毛むくじゃらに、とかくさっぱりした見てくれの同僚がしっかりしろよと言いたげな目付きで物を申す。

「おい、暑くてだるいからって気を抜いてるなよ? 話じゃ俺たちごとき新兵は、基地の司令官どのには挨拶なんてする必要がないんだろ? でもその代わりに配属される部隊の隊長どのが直々に迎えてくれるんだとさ。だからほら、そんなぼやっとしていたら、出会ったとたんにぶん殴られちまうぜっ……!」

「う、うんっ。わかってる。でもこんなに広い中でいったいどこで落ち合えばいいんだろう? 俺たちまだ来たばっかりだから、この基地のことなんてなんにもわからないんだから……」

 ちょっとうわずった感じで答える毛むくじゃらの新人くんは、キョロキョロとあたりを見回しては見るからに不安げなさまだ。

 おなじくあたりをぐるりと見渡す同僚は、背後で走り去ったジープの排気の先に何やら人影らしきがあるのに気付いた。

 視界はただひたらすらだだっ広い野っ原に、ひび割れだらけの粗末なアスファルト舗装の滑走路が二本ばかし横切るのみ。

 その殺風景な景色のど真ん中、長い滑走路に挟まれた草むらにおそらくはひとりのパイロットスーツ姿が仁王立ちしているのを、それと視認するのだった。

 この右手にはおんぼろな格納庫施設らしきがあるのも見て取って、さてはこの前方にたたずむあちらも犬族らしきがくだんの人物だと察知する。


「おい、あそこの犬族だろ? さっきからずっとこっち見てるし! でもお前が苦手な、みんなもれなくデカくてがさつなクマ族とかじゃなくて良かったな? ほら、さっさと行くぜっ!」

「わ、まっ、待って、待って!」

 ただ呆然と立ち尽くしている同僚の脇腹を、肘でちょんと小突いて急かすなり、ただちにその場で駆け足、足踏み!

 すぐさまそこからダッシュして、遠目にも強面した上官のもとへとふたりでそろって駆けつける。

 ここらへんは昔から何事にも引っ込み思案で、とかく出遅れがちなこの毛むくじゃらの幼なじみの尻をひっぱたいてでも先導してやらなければならないことを、しっかりと心得ていた。

 近づくにつれ、相手の容姿がそれとはっきり見て取れるようになる。間違いはなさそうだ。これに性格とことん気弱な毛深い犬族が気圧されたさまで、もう弱音めいたことを吐き出す。

「あ、あれって、うわぁ、シェパード種だ! はじめて見た!! ジャルマン、じゃなくて、ジャーマン、だったっけ? いやだな、おっかないっ、こっち見てるし、顔がコワイ!!」

「しっ、聞こえるぞ! はじめてってことはないだろ? それにおっかないってのは、裏を返せばそれだけ頼れる隊長どのだってことじゃないか? 俺は嫌いじゃないよ、それよりもしょっぱなの挨拶、いつもみたいにしくじるなよ!!」

 ふたりでひそひそ小声で言い合いながら、厳しい眼差しを送ってくるそのじぶんたちよりもずっと年上でベテランのパイロットの直前でぴたり、きをつけの姿勢で直立する。

 ほぼ反射的にビッと右手で敬礼をしながらまずはすらりとした細身の犬族が、よどみもなくはきはきとした挨拶を発した。

「敬礼! お初にお目に掛かります! 隊長殿! じぶんはケンス・ミーヤン准尉であります! 左の同僚ともども、新型機の試験運用パイロットとして今日付でこちらに赴任してまいりました! ですが事実上の実戦配備だと心得ておりますので、以後、よろしくお願いいたします!!」

「あ! あっ、あ、あのっ、じぶんは、ひ、左に同じでありますっ!!」

 せっかく相棒がわかりやすいお手本を示してくれたのに、緊張しすぎて何を言ったらいいものかパニクってしまったらしい。

 およそ必要だろうセリフをほぼ全てはしょった驚くべきショートカットな自己紹介に、せめてじぶんの名前くらいは名乗れよ!とまた脇腹を横から小突かれる。

※挿し絵の中で新人パイロットたちのコスチュームが間違っていることが判明(笑)! ケチがついてしまったので次回で挽回、こちらの挿し絵はこの状態でフリーズとなりましたm(_ _)m


「あ? あ、そっか、じじっ、じぶんはっ、ここ、コルクっ、ナギ、でありまして、おなじく准尉でありますっ、あの、その、あの、し、え、しぇっ、シェパード隊長どの!!」

「あ~あ、やっちまった……!」

 見た目がそうだからと勝手な決めつけであらぬことを口走った慌て者だ。絶対にそんな名前じゃないだろうと横目で見てくる相棒の冷めた視線に気付きもしないでひたすらかしこまる。

 事前の忠告もむなしくすでに結構な失態をやらかしているのをわかっているのかいないのか、かくして自分も一緒に殴られるのを覚悟する哀れなグレイハウンド種だった。

 対して胸の前で腕組みして出迎えてくれた、もういい中年にさしかかるだろうベテランの隊長どのは、それまでの険しい顔つきが途中からやや困惑したよな表情で、ふたりの若者たちの顔をしばし見比べることとあいなる。

 若干の沈黙があって、そこから渋い低音のバリトンボイスが新人パイロットたちの耳朶を打った。

「おうっ、よろしゅうな、ガキんちょども! おのれらのことは事前に聞いておる、そや、そっちの毛むくじゃらのワン公がコルク・ナギで、ほんでそっちのつるっパゲのほっそいほっそいひ弱な見てくれのが、ケンス・ミーヤン、やったか? なるほどの、若い新人とは聞いとったが、ほんまにまだ乳臭いガキなんやな? おいおい、そろいもそろって、ヤバいんちゃうんか?」

「あ、はっ、はいっ……!」

「わ、わわっ、わ、ご、ごめんなさいっ……」

 ひどく怪訝なさまでひとの顔を見ながら威勢良くもズケズケとした物言いにあって、新人コンビたちはどちらもびっくりして言葉を失ってしまう。

 おまけにあまり聞き慣れない、ルマニア本国のそれではないのが丸わかりの、どこぞの属州か地方のものらしき独特なお国言葉にも圧倒されていた。何かと形式張った階級社会の軍隊の中では田舎者扱いを嫌って大抵は避けるものだろうに、それをこんなにも露骨に出してくるのは、はじめてのことだったのだ。

 そんな、あわわと浮き足立つ部下たちを目の前にしてなおさらけたたましくわめく上官だが、それでも言うほどには怒っているわけではないものらしい。

 拳の一発くらい飛んでくるのは覚悟していたハゲ呼ばわりの細身の犬族、ケンスは力んでいた身体の緊張を解いて意外なさまで相手の顔を見る。上官どのの顔をこんな間近で見るのはこれまたはじめてだ。

 じぶんたちのようなルマニア本国ではなくした属州出身の若造たち相手にはパワハラが当たり前の世界だし、怖い存在だからあまり近づかないようにしていたのは隣の臆病者と同じだった。
 すると強面は強面だが、キバをむいているわけではないし、種族柄生まれつきに精悍な顔つきをしたのがおっかなく見せているだけなのかもしれないと想像したりもする。本当は優しかったりして? ちょっと好感が持てた。

 そのとなりでもはやビクビクが止まらない毛むくじゃら、コルクは半泣きで喉を詰まらせるばかりだ。ほんとに情けがない。

 ちょっと呆れる相棒だった。

「そんなかしこまらんでも、おら、とっとと休んでいいやろ。いつまでそんな堅苦しい敬礼しとるんや? あとそっちの毛むくじゃらのガキ、左やのうて、右やろ、この場合は! おんどれ右も左もわからんあほうがギガ・アーマーなんて操縦できるんか! しっかりせいや!!」

「わあああっ、はっ、はいいっ……!」

「失礼しました! でもコイツ、腕は確かですよ。俺よりもセンスはあります。ちょっと頼りないけど、いざって時は、なあ?」

 相棒からの精一杯のフォローに完全に目が泳いでいる毛深い犬族は、あうあうとただ頭をうなずかせるばかりだ。

 そんなテンパってばかりのコルクをどうにも疑わしげな目つきで見ながら、その締まった口元にかすかな笑みみたいなものを浮かべる隊長どのはやがて自らの名前を名乗った。


「見た目がシェパードやからって名前までそのまんまのはずがないやろ? ほな一度しか言わんからよう聞いとけ! わしはコッバス・ドン・ケー、この道かれこれ二十年のベテランパイロットさまじゃ!! 階級は中尉でそこそこやがの。そやさかいおのれらは親しみを込めてドンと呼べ! 遠慮なんていらへん。そや、これからは家族も同然の付き合いになるんやからの?」

「はっ、はいっ、恐縮であります! コッバス中尉どの、もとい、ドン中尉どのっ!!」

「ど、ドンっ……??」

 もれなくおっかないはずの上官がいきなりくだけたさまに、目をぱちくりするばかりの新入隊員たちだった。言えば脂ののった中年親父は、迫力のある顔つきでさすが軍人らしいいかにもな威厳があるが、それだけでない、どこかしら温かみみたいなものも感じられた。これまたはじめての感覚だ。

 こ、こんなひと、いるんだ……!

 普段から絶対に相手と目を合わせることがないコミュ障気味の若者は、とても意外げなさまで、ほけっと目の前の上官どのを見つめてしまう。自然と身体の緊張が解けているのをわれながらに意識していた。もはやはじめてづくしの一日だった。

「ドンでいい。そう言うたやろ? 経歴や細かいことはそこらの端末に載ってる個人の履歴なりなんなり見てテキトーに納得せい。それよりもおのれらにまずは質問したいことがある。ええか、正直に答えいよ?」

「は、はい?」

 相手が差し向けてくる何やら意味深な目付きにあって、ちょっとどぎまぎして思わず互いの目を見合わせる新人たちだ。一体何を切り出されるのかとこの両耳をそばだててしまう。

 やけに真顔の中尉どのはしごくまじめな口調で問うた。

「童貞か? もとい、トシはいくつや? 酒は飲めるんか??」

「あっ、は、はいっ……!」

 はじめのは軽いジャブ程度の冗談だったとして、その後に続いた問いかけにはふたりしてお互いの目を見合わせてしまう。
 この場合は決まってテンプレートの返事が用意されているのだが、それを切り出す前に相手はなお真顔で畳掛けてくる。

「ほんまのことを言え! おのれらの実際の年齢をだ。経験があるか酒が飲めるかはこの際どうでもええから、ガチのトシを言うてみい。ほんまに若すぎるやろ? 怒らんから、おのれらが生まれてこれまで何回この夏を過ごしてきたか、何年目や、今??」

「あ、あの……」

「ごごっ、こめなんさいっ……」

 バレてる……!

 またふたりで目を見合わせてしまう若者たちだった。

 完全にうろたえてうつむいてしまうコルクに代わって、こちらもかなり当惑気味のケンスがおずおずと答えた。
 おっかない顔つきのシェパード種のベテランは目をまっすぐに見つめてくるので、ウソを言ってもすぐにバレると観念させられるグレイハウンドだ。今やその細くて長いシッポが完全に地面にまで垂れ下がってしまう。

「あの、ならば正直にお答えします! えっと……自分たち、今年で本当は17になります! 表向きは、20(はたち)と答えろと言われておりますが、実際は、その……なあ?」

「…………」

 言われるがまま、いざ正直に答えるなりまた口ごもる細身の犬族は、となりの相棒である太めの毛むくじゃらの犬族に目を向けた。
 あいにくとこちらはうつむいたきりで上官どのの顔を見ることさえできないでいる。完全にヘコんでいる状態だった。

 かくして両者ともあえなく撃沈しているそのさまに、当の上官どのはかすかに舌打ちめいたものを発したのか? それから了解したと真顔をうなずかせてはやたらと渋い顔つきになる。

「今年はって……おい、ちゅうことは、まだ16っちゅうことやな、おのれらそろいもそろって? おっそろし、まだハイスクールのクソガキ、ボンボンやんけ! 中坊じゃないだけまだマシやが、チンチンに毛が生えたばっかりのジャリがのほほんとようこんな生きるか死ぬかの最前線に出てこられたもんやの? おまけに出来たばっかりで得体の知れない新型アーマーなんちゅうもんを引き連れてや! ふざけおって、コイツは一体何の冗談や!? シャレでは済まされんやろ!」

 今にもキバをむきだして掴みかかってきそうな剣幕だ。返事ができないふたりとも肩をすくめて身をこわばらせてしまう。
 これに短いため息をつく中尉は苦い笑いで続けた。

「わかっとる。おのれらが悪いわけやない。むしろ悪いのはわしら大人たちじゃ。こんな遊びたいさかりのジャリを戦場に連れ出して命の取り合いさせようなんて正気の沙汰じゃあらへんやろ。長引く戦で経済が疲弊した貧しい田舎じゃ、どこも人身売買じみた徴兵が当たり前になってきてるってウワサには聞いておったが、ほんまに笑われへんな、いざこの現実を見せつけられると……!」

 どうにも返事ができない学生たちは、いよいよ困って互いの顔を見合わせるばかりだ。実際じぶんたちが軍人である認識が薄い中、それをズバリ言い当てられて内心のもやもやがどちらも顔に出てしまう。いかんともしがたい馬鹿げた現実に途方に暮れるばかりだ。それはまた目の前の上官どのも同じようだった。

「あかん、頭がクラクラしてきよった! ほんまにこんなガキどもを引率して戦場に出なあかんのか? このわしは?? 気楽な遠足とちゃうんぞ! ガチの殺し合いせなあかんのに!!」

 嘆かわしげに言いながらちらりと目の前の若者たちをうかがうのだが、当の本人たちはこのあたりさしてビビってはないようなのに内心で舌を巻いたりもする。若いながらにどうやら実戦は既に経験済みであるらしいことを察知するベテランパイロットだ。ひょっとしたらそれなり使い物になるからこそ新型機を任させているのかとも推測、ほんまにふざけた話やと苦笑いになる。

「なんや、可愛げない、この胸に飛び込んでおいおい泣くくらいでもええんやぞ? おのれらジャリなんやから?? そのいかつい格好は伊達じゃないっちゅうことか、おしめ穿かされたよちよち歩きかと思わせて、おい、おのれらちょっとニオわへんか?」

「ええっ? そんなハズは……コルク、やったのか?」

「やややっ、やってない! おれこんなの使ったことないし!」

「おれもだ。いやだもんな? いくらその機能があるからってわざわざ着てるパイロットスーツの中で用を足すだなんて。乗ってるアーマーにも簡易式のトイレはあるんだし、そこらへんで立ちションとか野ぐそとかするほうがよっぽどマシでさっ……」

「ほんまにおもろいやっちゃの、そろいもそろって、見た目から何から問題だらけや! その見慣れないスーツ、全身の空調はおろか便所の機能まで搭載しとるんやろ? おまる持参でクソする間も惜しんで戦えっちゅう話か! こないなガキどもに!!」

 冷めた眼差しでねめつけられながらえらい言われようにコルクは心底恥ずかしいやら悲しいやら、あらためて己の姿をしげしげと見つめてしまう。

 およそこれまでのタイプとは一線を画した新型のスーツは色からカタチからまったくの別物で、いっそどこぞか敵国の兵士のものかと疑ってしまうくらいに違和感があっただろう。

 特にこの股間、みずからの股にある汚物処理用の装置が目障りで仕方ない。正直、邪魔だった。ニオイなどには万全の措置が取られているとは聞いたが、鼻が敏感な犬族の自分にはおよそ似つかわしくないだろうと渡された時からずっと憂鬱な思春期だ。

 それだからおなじ犬族の上官や昔からなじみの同僚の前では絶対に使わないと固く心に決めていた。

 黙りこくる新人たちを前にこちらも渋い顔の上官はやがてまたため息ついて、背後の太くてふさふさしたシッポを一振り。
 やがて言うのだった。

「まあええわ。自己紹介はここらへんにしといて、おのれら付いて来い。この基地をおおよそ案内したる。優しい上官どのに感謝せいよ? せやから戦場では足を引っ張るな! はなからそないに期待はせんといてやるから、どっちも死なない程度に踏ん張るんやぞ? アーマーに乗ったら全ては自己責任や! 自分のケツは自分で拭け! わかったら付いて来い!!」

「はい!」

「あああっ、一生付いて行きます! シェパード隊長どの!!」

「ちゃうっちゅうとるやろうが!! 一生ってなんや!?」

 がなりながら肩で風切る中尉どのに、まだ学生気分が抜けないへっぽこ隊員たちが慌てて追いすがる。
 もはや問題だらけの部隊編成だった。 
 戦場は地獄絵図に違いない。

     → 次回、パート2に続く……!

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オリキャラデザイン! イヌキャラ、ケンス

モデルありきのインチキキャラ、通称「寄せキャラ」のデザインです。いわゆるコンビ芸人の、じゃないほう(?)の犬キャラで~す(^^)

 まったく似てくれる様子がないのですが、やっていく内にそれなりになってくれればいいものかととりあえずのデザインだけぶっぱなします(^^)/

 後は野となれ山となれ♥

 テキトーなアタリを描きます♥

 ちなみにモデルとなる人物の画像(バストアップ)と、実際にイメージとして落とし込む犬キャラのモデルとなる犬種の画像も並べて参考とします。

 ちなみに参考としている犬種は、この時点では「イングリッシュ・セッター(セター?)」です。

 この次にまた別の犬種を参考にしています。

 元の犬種が毛むくじゃらだったのに対して、モデルのイメージも考慮してもっとすらりとした細身の大型犬種に選び直しました。

 ちなみに「イングリッシュ・グレイハウンド」なのですが、この相方となるキャラも毛むくじゃらだったので、どっちももじゃもじゃだとコンビとして暑苦しいのではないかとこちらに転向となりました。

 こちらが毛むくじゃらの「ユーラシア」をモデルとした相方のキャラデザインです。

 毛むくじゃらのイメージは本人にも当てはまるのか?

 上記の相棒がどちらかと言えば太めなので、デブと痩せのコンビとして成立するのか??

 おおよそでカタチを決めました。

 ぶっちゃけ似てないっちゃあまったく似てない(笑)なのですが、描いているうちにどうにかなることを信じるしかありませんね!

 もひとつぶっちゃければ、必ずしも似てないと成立しないわけでもないですから!

 あくまで風味、ノリなんですかね(^^)

 おおよそでカタチを決めました!

 結果、やっぱり似ていないんですが、ノベルを進めていく内にそれなりになってくれることを信じています(^^;)

 これで完成?

 実際の犬種、グレイハウンドの画像を参考にしつつ、色を付けてみました(^^)

 モデルになった人物とそんなに遠くはない(?)と思われる見た目の犬種なのですが、やっぱりモデルとはほど遠いところに着地しました…!

 ま、しゃあないですね(^^;)

記事は随時に更新されます。



 

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オリキャラデザイン! イヌキャラ、コッバス

オリジナルノベルのキャラで実在の人物がモチーフの「寄せキャラ」によるスピンオフをやらかすために懲りずに新キャラをデザイン(^^)

 おおざっぱなアタリですね!

 ちなみに某お笑いタレントさんがモデルにもなるのですが、うまく行くかは神のみぞ知るです(^^)

 はじめのアタリを元にして、ちょっと肉付けしました♥

 ちなみに基本となるイヌキャラのモチーフは、有名犬種のシェパード、厳密には「ジャーマン・シェパード」です。

 ドーベルマンとどっちにするか悩みましたが、これの相棒となるキャラがそっちのほうが似つかわしいカンジがしたので、こちらにしました。

 さらに肉付け♥

 う~ん、どうなんだろう??

 ぼんやりとながらキャラの見た目が決まってきたのですが、あいにくとモデルのなったタレントさんとはかなりの開きが…!

 やればやるほどビミョーになるような??

 全身のイメージも固めていきます。

 なんかビミョー?

 なんやかんやで結果、こんなカンジになりました(^^)

 ちなみにコスチュームはクマキャラの主人公が着用しているのとおんなじなのですが、パイロットスーツの胸当てと肩の部分のプロテクターを外した軽装タイプの仕様となります。

 ガタイがいかついクマ族と違ってスピードや身軽さを重視する傾向があるイヌ族はこちらのほうがお好みみたいで♥

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オリキャラデザイン! クマキャラ、ガロフ

オリジナルノベルのキャラ、後後に登場予定のクマキャラのデザインです(^o^) うまくできるかな??

 まずはアタリですね!

 ほんとにおおざっぱなのですが、作製課程はツイキャスでライブ配信とかもしたりしてます(^o^)

 ちょっと失敗?

 アタリを元に肉付けしたのですが、なんかイマイチ見えてこないです(^^;)

 クマキャラなんですが、もうちょっと迫力を付けたいですね!

 頭がでっかすぎなきらいがあんですが、挿し絵のモデルとしてのデザインなのでとりあえずよしとしておきます(^^;)

 表情の他にコスチュームもきっちりとデザインする予定なのですが、あんまりはかどらないみたいです。

記事は随時に更新されます♥

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オリジナルノベルのメカキャラデザイン! 敵のロボキャラ、その①

主人公たちと敵対する勢力側のメカ、戦闘ロボのデザインをやっていきます(^^)/

 ノベルを進めているつれ、これから主人公たちが対戦するはずの相手側のキャラや敵メカがまだデザインできていないこと(!)に気が付いて、今さらながらにやっていきます(^^;)

 [データ・スペック]

#006の中盤以降から登場予定。

 海上戦対応型ギガ・アーマー
機体名称
 イルカ…標準型アーマー。両脚のホバー(マリンジェット)で高速機動。飛行能力はない。標準型の兵装装備。  

 シャチ…大型アーマー、指揮官機。標準型の兵装の他に、専用の高火力装備を備える。 

 サーペント…新型機

これまでの敵メカのデザイン

 主人公のライバルとなるキャラたちやメカのデザインです。
 フルカラー版は下記にあるリンクから(^^)/

実際にデザインしてみよう(^^)

 ギガ・アーマー「イルカ」
 海洋戦対応型アーマー。海中潜行可能。
 通常型。一般兵(パイロット)向け。

 おおよそのアタリです。

 なんか失敗気味?

アタリを元にもうちょっと描き込んでみました♪

 なんかイマイチですね(^^;)

記事は随時に更新されます♡

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ルマニア戦記/Lumania War Record #006

#006


 Part1

 田舎の前線基地を発ってから、およそ丸二日――。

 その日の朝方には予定にあった合流ポイントである、砂漠の中継地点にまでたどり着いたベアランドだが、そこにはもうすでに仲間たちの姿は無かった。

 そこでただひとりだけ待ち受けていた、若いクマ族の整備士にして補給機のパイロットにおおよそのいきさつを聞いて、それからすぐにじぶんたちも中立地帯のオアシス都市国家を飛び立つこととなる。

 事態はことのほか、急を要していた。


 幸いにも機体にこれと目立った損傷がないことで、移動しながら機体の点検をおざなり完了。とりあえずでオールグリーンだと年少のクマから聞かされるこちらもまだ若い青年のクマ族は、ご機嫌なさまで大きくうなずく。

「はっはん! 傍目には3対1の大ピンチってヤツをさ、頭脳戦でまんまと無傷で勝ち抜いてやったからね♡ そうだ、あとでシーサーにお礼を言わないと。あいつが前の戦いで見事にぶっ壊してくれた赤いふとっちょのアーマー、やっぱり調子が悪かったみたいでさ、土手っ腹に不意打ちでビームをぶちかましたら見事にうろたえまくってくれてたもんね? おかげですんなりとバックれられたし! 広い戦場でいずれまた巡り会うこともあるのかなぁ、そしたら今度はちゃんとお相手してあげないと♪」

「はあ、ほぼ無傷であったのはさすがに驚きました! 自分もちょっとは覚悟をしていましたから。ウルフハウンド少尉どのは無理をしなくていいとおっしゃっていましたが、このタイミングならばひょっとしたら、こちらのほうが早く目的地にたどり着けるのではないでしょうか?」

 いくら有能で腕のいいメンテナンスでも、ろくな設備もない中でただのひとりでは、こんなデカブツのアーマーはどうにも手に余るのだろう。

 そんなちょっとほっとしたさまのリドルの言葉には、したり顔して返すクマの隊長さんだ。

「まあね? とは言ってもあちらさんは予定を早めてさっさと製造港(ドック)を出発しちまうんだろう? 極秘開発があっさりとバレて敵さんにあぶり出されるカンジでさ! 西岸一帯にいくつもダミーの港があるんだから、ただちに袋だたきになんかされないまでも、出来上がったばっかりなのが護衛のアーマーもなしの丸腰じゃしんどいよな。さあて、どうしたもんだか……!」

「はい! 機密を保持する以上、こちらからヘタに通信するのは得策ではないかと。でもそれではあちらの状況がまるで掴めませんし、援軍であるこのぼくらとの連携も取れません!」

「まあね。ごちゃついた状況の把握ってのは、俯瞰で見るのが一番手っ取り早いんだよな? てことはそうだな、一発あれをやるしかないか! 前にもシーサーの時にやったことあるし、距離を稼ぐのには打って付けだもんな、このぼくのランタンが特技、必殺の弾道ミサイルダイブ!!」

 そう言いながらもひとりでしごく合点するのに、はじめモニターの中で不思議そうな顔したクマ族がはたと首を傾げる。

 ※テキストと画像は随時に更新されます(^^)


「はい? 弾道、ミサイル……?? あ! それをやるならもっとちゃんとしたチェックを! 大陸間弾道ミサイルさながらの弾道軌道で大気圏を突っ切るだなんて、普通のアーマーにはできない芸当でありますから!!」

「あっは、まあまあ! そこは細かいこと言いっこなしで♡ この際なんだからさ。リドルはなるたけ急いで追っかけておいで。はじめに見た時より見た目がいかつくなったけど、それってローターエンジンを増設して航行能力をより高めたんだろ? さてはおやっさんの取り計らいで本国からはるばる送ってきたんだ!」

 話をすり替えられて調子が狂う若いクマはこれに戸惑いながらも返した。


「あ、はい。おかげでウルフハウンド少尉どのたちにまんまと置いてけぼりにされました。手伝いが必要なら怪力のベアランド隊長どのがおられるとかで……あはは。でも実際は現地のスタッフさんに助けてもらいましたから。でもそれだから先発の少尉どのたちよりも先に新造戦艦、『トライ・アゲイン』には合流できます!」

「ん、ああ、そっか、トライ・アゲイン……か! そんな名前だったっけ? そうか、なら善は急げだな! 時期を逸してそれこそが名前の通りにまた「再挑戦」だなんてことになったら、笑うに笑えないもんね。ようし、エンジン全開! ぼくらの新しいお家(うち)に向かってはりきってぶっ飛ばすよっっ!!!」


 Part2

 ベアランドたちがバタつきはじめた頃とほぼ同時刻――。

 ところ変わって、こちらは大陸西岸域に位置する某地方国家の大きな港街だ。

 巨大な港湾施設がコンクリで固められた岸壁にそびえる。

 いわゆる大型の大規模造船所施設なのだが、高層ビルが縦にそのまますっぽり入るほどの直径の円筒を横に据えたカタチの建造物は、およそただごとではない異様な見てくれだ。

 事実、それを裏付けるかにしてこの巨大な円筒の暗がりには何やら巨大な物陰がそびえ、無言で鎮座する。

 それが大陸中央に位置する大国により密かに建造されていた最新型の軍艦だとはまだ一般には知る者はいないはずだ。

 そんな静けさに満ちたドックに、突如としてかまびすしい警報がわんわんと鳴り響く。

 半円型の特殊巨大ドーム内の照明が灯され、闇に座していた新造戦艦の巨大な勇姿を浮かび上がらせた。

 ※イラストは随時に更新されます。

 すでに海面からは巨大な船体を浮かせた航空航行をスタンバイさせていた戦艦の最上部、メインブリッジとなる中央戦術作戦指揮所の中に、あるひとりのブリッジクルーの声が響いた。

「艦長! グレッカ港湾行政本部より、本艦のただちの出港、港および都市部より離れた海上への待避要請が入っております!」

 ブリッジ中央に据えられた大型の艦長席に腰を据える人物へ向けて緊迫した物言いに、対するこの艦長とおぼしき男は無言でただアゴをうなずかせる。

 物思いにふけるような厳しい眼差しでただまっすぐ先を見据えるベテランの軍人に、まだ若い見た目の通信士の犬族の男は困惑したさまで続ける。

「たく、これでもう三度目です。こっちはまだ出来たてホヤホヤでろくな試験飛行もしちゃいないのに、冷たいったらありゃしませんぜ! おまけに肝心のアーマー部隊だっていやしないのに、丸裸で戦場に出撃しろだなんてな、あっちの守備隊のアーマーを回すくらいの機転を利かせろってもんでしょうに? そう言ってやりましょうか??」


「やめなさいよ、ビグル軍曹……!」

 おなじく犬族の通信士で若い女性のクルーにたしなめられるが、これと隣り合わせで座る男は嫌気のさした顔を左隣に向けて肩をすくめさせる。

 ブリッジ内は緊迫した空気が漂うが、それまで無言だった初老の艦長は険しい表情でやがては重苦しい言葉を発した。

「……いや、言ったところでおよそ無駄だろう。あちらはあちらで都合がある。大国の横暴で港を長らくいいように占領されて、あげく戦火にまみれるだなどと馬鹿を見るようなことは間違っても避けたい、しごくまっとうな意見だろう。こちらも文句を言えた義理ではないものだしな……!」

 一呼吸置いて、それからまた重たい口調のセリフを続ける艦長だ。

「やむを得まい。港湾には了解の旨を伝えておけ。こちらはただちに発進、街には戦火の及ばない沖合の洋上へと艦を遠ざけると……! メインエンジン、第一、第二、予備運転から戦闘出力運転に切り替え! 副エンジンも順次にフルモードに移行、全力をもって艦の運航に当たれ! これは試験運転ではない!! 全艦に通達、本艦はこれより出航、戦闘状態に突入する!!」

 号令を立て続けにかます壮年のスカンク族にあたりの空気が一変する。

 艦長席の正面に据えられたメインモニターのスピーカー越し、動力機関ブロックやその他の部署からの了解の返答が幾重にもこだました。


 武者震いするみたいに全身を小刻みに揺らす犬族の通信士がそれでもまだどこかおどけたような調子で応答する。

「了解! 後に合流する予定のベアランド隊にも打電を打ちます。貴公らの母艦はこれより戦闘に突入、早いとこ追いつかないと置いてけぼりになるぞっと! てか、ほんとうに間に合うんですかね? 奴さんたち」

「話では大した男なのらしいぞ? ちょっとやそっとの無茶なら平気でこなすような。そのための新型機でもあるのだし、期待だけはしておいてやろう……」

 また肩をすくめさせる通信士から目を離して、正面に向き直る艦長は真顔でさらなる号令を発した。


「本艦艦長、バルゼア・ンクスである。諸君らも知っての通り、ただ今はかなり困難な局面ではあるが、優秀なる諸君らの尽力の下、本艦は無事に危機を乗り越えることを信じて疑わない。この新型艦のちからを存分に見せつけてやろうぞ!!」

 軍では有名なベテランの鼓舞に、ただちに複数のスピーカーから気勢がどっとばかりにあふれ出す。

 これにより艦内の士気が上がるのを確認するスカンク族の艦長、バルゼア・ンクスはうむと小さくうなずいて、最後の号令を発令した。

「これより全艦、第一次戦闘態勢! 微速前進、ドックを離脱の後、面舵一杯! ただちにメインエンジン出力最大のこと!! 総員対ショック用意、公海上まで一気に突っ走れっ! さあ、晴れての初陣だ、思う存分に暴れてやるがいい!!」

 頭上のスピーカーからまた、おおお!と気勢が上がる。

 周りを見回せばそれぞれに緊迫した面持ちのクルーたちが了解して頭をうなずかせる。やはり緊張しているのか言葉が出て来なかったが、まだ若い士官候補たちを鼓舞するべく胸を張って仁王立ちする艦長はひときわに高く喉を震わせる。

「ルマニア軍最新鋭艦、フラッグシップのお披露目だ。今こそ世界にこの勇姿を見せつけてやろうぞ! 航空重巡洋艦『トライ・アゲイン』発進!!」

 ※こちらのセクションはまだ執筆途中です。随時に更新してまいります(^^)

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ルマニア戦記/Lumnia War Record #005

#005


 現地時間、AM3:30 


 作戦開始の時刻になった。

 まだ東の地平から朝日の気配も感じられぬ夜更けに、田舎の前線基地の外れにある見るからにオンボロなアーマーの格納庫には勇ましいロボット兵器のエンジン音がかまびすしく鳴り響く。

 まだ世間的には公表すらされていない二機の新型開発機と一機の旧型機種が、今しもスタートを切るべく横並びの直立不動で起立する。
 
 あいにく部隊にはまだ隊長格らしきが不在なもので、このデッキの主たるベテランメカニックのブルドックの親父の声を待つのだった。


 それだから最新鋭機のよりいかつい見てくれした機体の中でその身を落ち着ける若手のでかいクマのパイロットも、陽気な鼻歌交じりで例の味のあるしわがれ声が景気のいい号砲を放つのを今か今かと待ち受ける。

「ふっふふ~ん♪ さてはて、これでこの問題だらけのオンボロデッキともめでたくお別れだな! 配備先の新造戦艦にはそれ専用のハンガーデッキがあるっていうから、ずいぶんと気が楽になるよ。ただし頼りになるブルースのおやっさんはいないんだけど……」

 これを最後にしばらく世話になったこの基地とは永遠におさらばなのだが、となればベテランのメカニックとも長いお別れ、それなりに礼を言いたいところだ。

 だがあいにくと耳に入ってきたのは同僚の何かとつっけんどんなオオカミのものだった。

「おう、そろそろいいよな? つーか、そっちの合図がなけりゃこっちの出るタイミングがわからねえだろ。いいからぼけっとしてないでよろしく頼むぜ、ベアランドの隊長さんよ!」

「え、ああっ、そうだな……! て、隊長? あれ、シーサー、今なんて??」

 出し抜けのセリフにぽかんと口を開けてしまう。

 部隊を仕切る立場となる辞令などまだどこからも出されていないはずだ。


 ただの噂ぐらいでは聞いたことがあったが、実感が持てないところに無愛想な相棒から言われてひたすら目がキョトンとなる。

「隊長だよ! 何度も言わせやがるなっ!! はん、しっかりしやがれ、体力バカの野放図なクマと張り合っても疲れるだけだし、こちとら見てのとおりで生まれつき一匹オオカミな性分だから、隊長さんだなんて性に合いやしない。納得の上で譲ってやるんだぜ? だから今日から名実ともにあんたがこの部隊の大将だ!! そら、それじゃ先に行ってるぜっ!」

 一方的に言いたいことだけぶちまけると全身が銀灰色のスマートな機体がただちに前のめりにヒビだらけの滑走路を駆けっていく。

 通常のギガアーマーにはありえない身のこなしと駆け足のアーマーは、それこそあっという間に夜の暗闇にその姿を消し去ってしまった。

 それを半ばあっけにとられて見送るベアランドだ。

「あっ、シーサー! それじゃこの先の中継地点で無事に会おう! ……て、いいのかね? このぼくなんかで??」

 あいにくとこの己自身が部隊を仕切るのに適しているとも自覚していない呑気な若造だ。

 そう自分に問いかけてしまうのに、残る一機のアーマーからはまたなおさらに若い青年の言葉が掛けられてくる。

「はっ! いいのではありませんか? 自分もウルフハウンド少尉どのがおっしゃっていた通り、ベアランド少尉どのがきっと適任なのだと思われますので。どうかこの即席部隊を無事に目的地まで導いてください。それでは自分もウルフハウンド少尉を追って発進します。こちらはかろうじて空を飛べますが、巡航速度はどちらにも負けてしまいますので……では!」

「あっ、みんな気が早いな! でもリドル、おまえはあくまで補給機のパイロットなんだからムリなんかするんじゃないよ! 戦いはシーサーと基地の外で合流する第三部隊のみんなに任せてさ! あー、なんか緊張してきちゃったな? 責任重大だっ……」

 唯一空を飛んでの戦闘が可能な機体として、今回の作戦では部隊から独立した行動をする都合、ひとりだけ取り残されて居心地が悪くなる。

 ドックに残っているのはあとはじぶんとここのメカニックマンの親父さんだけだ。

 それとなんと別れを惜しんだものか考える間もなく当の野太くしわがれた声が二つの鼓膜をビン!と震わせる。

「ふん、今さら何を力んでいやがる? いつだって太平楽なクマ助が、柄にもねえこと言うんじゃねえや。いいか、こっちは可愛い弟子を預けてやるんだ、もっと堂々と構えてくれねえとおちおち昼寝もできやしねえだろうが! やっと御役御免で悠々自適な老後を過ごそうってのによ」

「ははっ! まいったな? まだそんな落ちぶれてもいないくせに! いずれまた可愛い息子さんには会わせてあげるから、それまでボケずに頑張っててくれよ、おやっさん? 危ない橋を渡るのはリドルじゃなくてぼくらパイロットの仕事なんだからさ! あいつは腕がべらぼうに立つスーパーメカニックってことで♡」

「フッ、そう願う。だがシビアな戦場はそんな建前ばかりじゃ通用しねえだろ? あいつだってそれなりには覚悟を決めているはずだ。何はともあれよろしく頼むぜ、クマ助、ベアランドよ」

「約束するよ……! それじゃ、ベアランド小隊、新たなる戦地を目指してこれより出陣、互いの幸運と再会を祈る!」

 物言いが達観した声の主はその姿こそ見えなかったが、きっとどこかで見守ってくれているのだとわかっていた。

 ブルドック族特有のしわくちゃな顔がなおさらしわくちゃになるのを見せまいとして、どこか物陰にひそんでいるのだと。

 まだ未明の暗い空に、最後の新型アーマーもゆっくりと滑走路を滑空してはやがて暗い空へと飛び立っていく。

 目指すは大陸西岸の僻地の属領。

 新たなる戦いが幕を開けようとしていた


「えっと、ぼくらがこれから乗り込む予定の最新鋭の新造戦艦、いわゆる旗艦、フラッグシップって言うのかな? ずいぶとん大きくて見栄えがいいけど、ほんとにこの設計モデルの図面のとおりにできてるのかね? あとこの船の名前の『T・A』って、なんの略だったっけ??」

 正面のディスプレイに大写しに映し出されたうわさの戦艦の模型図を半分がた猜疑の眼差しで見上げながら、う~んと腕組みするクマ族のパイロットだ。

 俗にルマニアと称される東大陸の西岸に位置する属領で秘密裏に建造されている新型の大規模航空巡洋艦は、そこにみずからが乗るこの新型機のアーマーの専用ドックが配備され、これまでより充実した整備と補給が可能となる。


 一緒に田舎の前線基地を出発したじぶんよりも若いクマ族のメカニックの受け売りだが、母国の首都とは比べものにもならないひなびた地方のそれよりは格段に環境が良くなることは間違いがないのだろう。

 見渡す限りを自然に囲まれてしばらくはご無沙汰していた無機質でメカニカルな空間が待ち遠しいクマの若きエースは自然と鼻歌まじりで操縦桿を握っていた。

 大陸北西の辺境国家からは、目的地まではおおよそ三日ほどかかるだろう。


 もとい厳密には一日とちょっとなのだが、二手に分かれて出発したウルフハウンドたちの別働隊が陸路であることから必然的にそのようになる。

 こちらは機体の性能で単身空路なのだが、直線で突っ切れるところをわざわざ回り道しての航路、ずっと北側よりのコース取りとなった。

 しばらくは敵国との国境ギリギリを進む陸路部隊の隠密行動を支援すべく、みずからが囮となってより目立つ高空をのんびりと巡航、なるたけ敵の注意を引きつけつつ、のらりくらりと立ち回ってからただちに戦域を離脱、南下した先の砂漠のオアシス都市国家群の中立地帯で仲間と合流、後に目的地までの道のりを無事に踏破する……!


 言えばなるほど単純だが、やるのは至難の離れ業だ。

 いかにアーマーの性能が良くとも限度はある。

 致命打を食らえば、はい、それまで。

 そこまで行かなくとも自身が巡洋艦までたどり着くのが困難となり、最悪どことも知れぬ山奥や砂漠でひとりぼっちで遭難だなんてことにもなりかねないのだから。

「ふっふ~ん♪ ん……っ」


 風に吹かれようがビクともしない鋼鉄の巨大兵器の体内でうずくまるクマはいかにも呑気なさまだが、これがやがて何かを予期したかのごとく正面のディスプレイの図面を消してその先に見えた青い空に目を凝らす。

 基地をたってからおよそ三時間ほど。

 それまで静かだったコクピット内にけたたましい警報が鳴り響いたのは、その直後の事だ。

 ※ストーリーと挿し絵は随時に更新されていきます!

「おっと、ようやくおいでなすったか……! 反応が三つ! やっぱりあの厄介なのとその取り巻き連中さんたちかい、ん、でもあっちのあの赤いおデブさんのヤツって、確かこの前シーサーとやり合って……?」

 やがてモニターに最大望遠で映し出された、色からカタチからそれぞれに特徴がある見慣れない機体に合点がいったり首を傾げたりのベアランドだ。

 したり顔して舌なめずりしていた。

「そのそろいもそろってカテゴリー識別不明の機体ってばさ、つまりはきみらも新型機の運用実験ってヤツをしてるんだろ? ははん、お互い大変だよな! でも機体性能ではあいにく負けてないんだ、このぼくのランタンは! さあ、この前の続き、楽しい一騎打ちをしようか? そうとも銀色のやたら速いきみは、もうはなからそのつもりなんだろ??」

 これまでの相手の戦いぶりからあちらは機体の性能を試すのが最大の目的なのだと知れていた。

 万一にも手傷を負えば、あっさりときびすを返す。

 ただし中でも一機だけ。

 そう、おそらくはリーダー格にあたるのだろう隊長機らしきは執拗にこちらとの正面切っての戦いを挑みかけてきた。

 まるで強い敵との戦いを望むかのごとく、ライバルを求めるがごとくにだ。

 そのかたくなな相手の胸の内があまり理解しかねる陽気なクマさんは苦笑いで応じてやるのだ。

「ほんとにしつこいよな! だったらこっちも本気にならざるおえないよ、後悔しても恨みっこなしだからね!!」


 コクピットの中でひとり意気を上げるクマに対し、こちらはもう一方の敵方、三機のアーマー追撃部隊。

 中でもレーダーに捉えた標的をモニターの正面に睨み据える、眼光鋭いひとりの男がいた。

 その顔つきを見ればまだ若いのだろうが、一分のスキもない堂々たるさまで深くシートにその身を落ち着ける。

 それがやがては独り言かのように静かに言葉を発した。

「……ふむ。このようなわかりやすい場所で、加えて単機で、ずいぶんと呑気なありさまだな。相変わらずひょうひょうとしたやつばらよ。見つけて下さいと言わんばかりの不用心ぶり。セオリーは一切無視、か……」

 冷静なさまで互いの射程距離まであとギリギリに迫る大型の敵アーマーを見つめる、若いキツネ族のパイロットだ。

 かくて相手の意図するところをこれと真顔で推測している内に、それを脇から渋い声音が茶化すように言い当ててくれる。

「はあ、やっぱり囮(おとり)ってヤツですかね? ありゃあ??はなしじゃあいつ以外の別動部隊が海岸線沿いに先行してるらしいんですが、えらい勢いで追尾しきれないらしいですぜ! 国境の守備隊はあっさりとまかれちまって、今はもう隣国の山岳地帯をひたすら爆走中だとか。相手になるのは目下、こうしてお空を飛べるこの俺達くらいなんですが……」

「あいにくこっちにヤマを張っちまってそっちはすっかりノーマーク! いいや、もとよりそんなもん相手にする気なんてありやしないんでしょう、我らが隊長殿は? なんせ出会ってからこれまであっちのデカブツくんにゾッコンなんだから!!」

 左に続いて右からも含んだような低めの声音が届いて、口元をかすかにゆがめるキツネのパイロットは鼻先から軽く息を吐く。

「いかにも。興味はない。わたしの狙う獲物は目下、あれのみだ。それ以外は捨て置いてかまわぬ。どれ、ここからは手はずどおりだ。貴様らは一切、あれに手出しをするな」

 鋭い視線を左右に流して、また正面に向き直る隊長どのだ。

 するとこれに少しだけ不服なさまでまただみ声がぼやく。

 正面のモニターの左右に四角い小窓が現れて、左側に映った見るからにタヌキ面したタヌキ族のベテランパイロットが大柄な身体を露骨にすくませる。


 これにまた右側の小窓に映ったこちらは小柄なイタチ族でやはりベテランとおぼしきパイロットが応じた。

 間髪入れぬテンポの良さだ。

 さてはいいコンビなのらしかった。

「了解! ですがいざって時は、旦那、俺等はただのお飾りじゃねえんだ、必要と見たらすかさず横ヤリ入れますぜ? うまそうなごちそうにさっきから武者震いが、腕が鳴ってしょうがねえ! ま、万が一にもそんなことはないんだろうが……」

「たりめーよ! やいブンの字っ、おれらの旦那を誰だと思ってやがる? なにを隠そうこのお方こそが東の空に敵なしの『神速の雷刃(らいじん)』、二の太刀(たち)いらずのキュウビ カタナ様だろうが!!」

「ふっ、いかにも無用の心配だ。だがブンブ中尉、貴様の機体は前回の戦いにおいて少なからぬダメージを受けているのだろう。あれとの戦いにいかようにして割って入るつもりなのだ? おまえたちは見届け人であればいい。結果は知れているのだから」

 キツネ族の隊長はおよそ自分よりも一回り以上は年上のベテランたちを部下に従えているのだとわかる。

 気勢をあげる左右からの文句をしれっと聞き流してひらりとやり返す。

「うっ、そこを突かれたらもはやぐうの音も出ませんぜ! ちきしょー、俺もアイツと遊びたかったぜー、こちとら試したいことが山とあるのに!!」

「諦めろよ、旦那がいる以上、しょせんおれらには出る幕なんてありやしないんだ。せいぜい敵のアーマーのモニターに徹して本部にゴマを擦ってやるくらいだろ、ま、大事な新品の機体を損傷させちまったその修理の代金くらいにはなるだろうさ?」

「ううっ、おめーもいちいちチクチクきやがるよな! このすかしっぺめ! せいぜい蚊蜻蛉(かとんぼ)よろしく鳴いてろよ、間違っても巻き添えくらって地べたにたたき落とされねえようにな!!」

 左右の耳で威勢のいい掛け合いをやはり涼しい顔で聞き流すキツネの隊長だ。

 これが足下のアクセルペダルをゆっくりと踏み込む。

「双方、このわたしの『ゼロシキ』の射程はわかっているな? こちらから良いと言うまでは間違っても入ってくるな。ゴッペ中尉も機体の身軽なのをいいことに目障りな動きは無用、この場にとどまるのが無難だ。巻き添えを食いたくないのなら?」

「へいっ、こいつは参った、おれまで一発入れられちまった! 了解、おおせのままに。旦那のお楽しみの邪魔は間違ってもしやしませんぜ」

「あ~あ、たく、俺等、完全に三下扱いだな? こんなことなら別動隊の追撃にでも向かってれば良かったぜ!」

「笑止。その機体では前回の二の舞がせいぜいだろう? ならば次に取っておけ。あの二番手のアーマーもその実力はただならぬ物がある。万全でなければ貴様らでも手に余るほどにな」

「ぐぬぬっ……!」

「どの局面においても油断は大敵よ。それが故にわたしはすでに認めている。見てくれいっかな正体の知れぬあれこそが、その実この生涯においても真のライバル、それたりえることを……!」

「へぇ、そこまでですかい?」

「いざ、参る!」 

 全身を渋いシルバーにまとった鋭角のシルエットの機体がうなりを上げて前方、全身緑に塗りたくられた見た目ブサイクなロボットへと挑みかかる。


 ビッ、ビピッ、ピーーー!

 耳に障る鋭いビープ音!

 警報とほぼ同時のタイミングでメインモニターの奥に控える銀色の機体が突如、真正面から急接近してくる!!

「おいでなすった! やっぱりキミかい!!」

 三機捉えた敵影の中で、やはりはじめに動いたのは一番見慣れた渋い銀灰色の機影だ。


 その見かけ大型の戦闘機が、爆音もろともしたギリギリの過ぎ去り際に直立反転、いきなり右手に構えた銃口を突きつけてくる……!!

 いやはや見てくれただの戦闘機、ジェットフライヤーだったはずだろう。

 それが手品のような抜く手も見せぬ素早さで人型のロボット、ギガ・アーマーへと変身変型していることに内心で舌を巻くベアランドだ。

「ほんとに器用だよな! 狙いも正確だし! あんな傍から見てビックリするくらいに単純な変型機構しといて、でもそれだけにまったくスキを見せずにバンバン早変わりしてるもんな!!」


 大型ロボット用にあつらわれたこれまた大型のハンドガンの銃弾を機体を背後にのけ反らせてギリギリでかわす。

 機体の前面に常時、不可視の電磁シールドを展開していても、至近距離で実体弾を食らってはおよそ無傷では済まされない。

 装備自体がまだ調整中の実験開発段階であり、熱粒子の半実体弾、いわゆるビームやレーザーのような光学兵器ならかなりの相殺効果を期待できるものが、旧来の武装にはこれまでの経験上ほぼフルパワーでオンにしなければしのぎきれないことがわかっていた。

 基本、火器管制と機体制御をひとりでこなさなければならないこの機体ではスイッチの切り返しはなかなかにホネだ。


「守りにばっかりちからを割いていたら、いざ攻撃や高速機動しようって時にパワー不足になっちゃうもんね? しっかしほんとにしつこいよな!!」

 続けて二撃、三撃と機銃掃射をぶちかましてくる相手に舌打ちして応戦、こちらも至近距離から相手目掛けて腹部のカノンをお見舞いする。

 複数ある中から一番火力のでかい正面の左右一門ずつのメインを発砲!

 この際、右手で引き金を引く寸前に左手でシールド制御のスイッチをoffにする。

 正面に強固な干渉フィールドを張ったままではビームの威力や精度射程を狂わせかねない。


 基本は一つの高出力エンジンで機体の全てを切り盛りしている都合、このほうがより攻撃系の兵装の威力を発揮できた。

 相手はシールドらしきを装備していないようだから当たればそれなり期待できたが、あいにくあっさりとこれを回避、またしても戦闘機形態となって上空へと逃げられてしまう。

「ああっ、もう、ほんとにめんどくさいな! キミってば!!」

 対してこれを背後、眼下の緑の海の中に見据えるキツネの隊長どのはかすかに喉を震わせてしごく納得した物の言い様だ。

「ふっ、かくも鈍重な見てくれの機体でよくもこのゼロシキの動きに付いてくる……! ならば貴様はよほど名のあるパイロットなのだろうな!?」


 相手の顔を見てみたいものだと内心で感心しながら、手元のスロットルレバーを一気に己側へと傾けた。

 機首を真下へと反転させた戦闘機が重力に飲まれるままに急降下、ブサイクな大型ロボめがけてダイブする!

「あっぶないな! でもそれでいきなり変型だなんてできやしないんだろっ? 激しいGがかかった状態でそんなことしたら自殺行為だもんなっ!! くうっ……!」

 目を見開いて迎え撃つベアランドは冷静にターゲットスコープの狙いを絞るが、あっという間に過ぎ去っていく敵影にまたしても舌を巻く。


 地面目掛けて突撃するくらいの勢いで飛び去った銀色の怪鳥は眼下に広がる緑の絨毯をギリギリにかすめながら旋回上昇、おまけにこちらへと機銃を掃射してきた。

 ぬかりがないこと戦闘機からロボットへ切り替えのタイミングが絶妙らしく、一秒とかからないように見える。

 機体にかかる重力や大気との摩擦、気流なども読んだ上での手品じみた機体さばきだと理解するクマはこれがゲームだったら白旗上げてやりたい気分だ。

「凄いプレッシャーだよ! キミってば正真正銘のエースパイロットだ!! あえて一騎打ちを挑んでくるのもそうだけど、お仲間さんもまるで動じていないもんな? ちょっと視界にチラチラするのが気になるけど、ん、待てよ……?」

 所詮は多勢に無勢だろう。


 強敵相手に無理に応戦するよりもどうにかお茶を濁してこの場を立ち去れないかと頭を巡らして、さっきからモニターの端っこに消えたり映ったりしている残りの二機に意識が向く。

 あちらは参戦するつもりはまるでないものらしいが、これをあえて巻き込むのもひとつの手かと頭の中の計算機がはじきだす。

 悪知恵ひらめいた悪童みたいな目付きで舌を見せるクマは操縦桿に全身の力を込めた。

「シーサーに感謝してやらないといけないね♡ ようし、そうと決まれば! 見てなよ、みんなビックリさせてやるぞ!!」
 
 真っ直ぐに向かってくる隊長機とおぼしき相手の機体と残りの二機との距離を測りながら、わざとうろたえたかに機体を後退させる。


 相手の機銃掃射をギリギリで交わしながら、接近戦を挑むアーマーにビームを見舞った。

「さすがに当たりやしないか! でもあいにくと狙いはそっちじゃないんだっ、本当の狙いってヤツは、そうらっ、食らえ!!」

 素早い動きに必死に食らいつくかに機体を旋回させて、また発射したメインのビームカノンの射線上にあったものは……!!

 #006へ続く……!

ライバルキャラの解説ページ↓

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ルマニア戦記 #004

第二話 「クマとオオカミ。真逆のふたり?」

 第二話

『クマとオオカミ。真逆のふたり?』

 #004

※おはなし、挿し絵(イラスト)ともに随時に更新されていきます! 今はやりのいろんな配信アプリを用いて挿し絵やキャラクター、メカニックのデザインなどを動画配信、こちらのホームページと同時進行でやってまいります♥ ちなみにこのお話あたりから主人公のデザインがしれっとモデルチェンジしてたりします(^^) あしからず♪

 某日、未明。

 まだ夜明け前なので外は暗い。

 なのにかまびすしいサイレンがまたしてもオンボロな戦闘ロボの格納庫の中にわんわんと鳴り響く!

 もはやいたって日常の光景だが、ドタドタとした足取りでデッキ内に入ってくるなり大柄のクマのパイロットがひどいうんざり顔で愚痴をわめいた。

「ああっ、うるさいったらありゃしないな! リドル、もういいからこのサイレン切っちまってくれよ? 鼓膜がどうにかなっちまいそうだ!! よっと……!」

 耳を刺す騒音から逃げ込むみたいな感じでみずからのアーマーのコクピットにいそいそと潜り込むでかいクマに、後から駆けつける小柄で華奢な若いクマ族がひどく恐縮したさまで返事をする。


 どこぞかに向かって何事かこちらも喚いていたが、おそらくはデッキのおやっさんにサイレンを切ってくれるように懇願したのだろう。

 目の前のパイロット同様、あちらは雲の上の存在のような大ベテランの上官でおまけ親代わりのお師匠さまだから、きっと板挟みなのに違いない。

「ベアランド少尉どの! サイレンは機体が出撃しなければ止めることが出来ないとのことでありますっ! それとウルフハウンド少尉どのはすでに出撃しておられますっ、こちらもすぐに出られますのでただちにアーマーの立ち上げお願いします! チェック、三十秒で済ませます!!」

「あっそ、いつもながら優秀だね! 相棒のオオカミくんがひとりで突っ走ってるのはやっぱりいつものこととしても、どうして敵さんてのはこう朝が早いのかね? なんかしらの意図があるんじゃないのかと疑っちゃうよ」

「はい? あ、警報止まりました! でも師匠が怒ってるみたいでしたが。ハッチ、さっさと閉じますか?」

「ははっ、あのダミ声でがなられたらサイレン鳴ってるのと変わらないもんな! それよりシーサーのやつは結構先行しちゃってるのかい? アーマーの性能をいいことに脇目も振らずに敵陣めがけて突っ込んでくから、あれじゃいいかげんに包囲網とかをしかれちまうんじゃないのかね??」

 呑気な口ぶりで思ったこと言ったら地べたのあたりから例のだみ声がしてきた。

 その声いわく、そうならねえようにおめえがしっかりサポートしてやるんだろうが、このノロマのクマ助が!! もはやその顔を見るまでも無くしかめっツラのおやじさんはすこぶるおかんむりのようだ。

 ふたりで思わず頭をすくめて、苦い目付きを見合わせてしまう。

「ああっ……! すでにこちらの通信や観測レーダーの範囲を越えた中立線地帯から敵国側に入っておられるようです。よって少尉どのの機体では合流までにかなりの時間が、とにかく出撃準備済ませます!」



「了解! うん、ならこっちも考えがあるよ。リドル伍長、滑走路の誘導は途中まででいいから、中に待機してこっちの軌道演算のサポートしておくれよ。できる範囲で構わないから、いわゆるミサイル発射の要領でさ♡」

「は、はいっ?」

 さっさとみずからの仕事に取りかかるべく一旦は引っ込めかけた頭をまたぴょこんと出してくる弟分のクマに、でかい図体をみずからのシートにくくりつける兄貴分は鷹揚に笑ってウィンクする。

「いいから! 一か八か、大気圏内じゃそうはスピードが出せないコイツでも、やりようによってはかなりのショートカットが効くってことを実証するチャンスだよ。ま、この場合はシーサーが遠くに居てくれることがミソなんだけれどもね♪」

「はあっ……!」

 相手が言ってくれていること、理解しきれてないふうな若手のメカニックに目付きでうながしてグローブをはめたふたつの大きな拳をゴキゴトと鳴らすベアランドだ。

いたずらっぽい笑みで楽しげにハンガーデッキの前方のまだ暗い西の空を見上げる。

「さあて、楽しくなってきたよね♡」

 みずからの乗り込む大型の機体以外は物音を立てない基地の外れで、人知れず戦いの幕は開ける。

 夜明けは近かった。


 すこぶる順調な進撃だった。

 いまだこれと言った敵影との遭遇もないまま、友軍の基地からもうかなりの距離を単独で走破するウルフハウンドの新型アーマーだ。

 不意に耳障りな警告音がなって、それで二つの川に挟まれた緩衝地帯から完全に敵国側のテリトリーに入ったことを知る。

 鋭い目付きで周囲の景色を写した高精細ディスプレイをねめ回して、不機嫌に舌打ちする血気盛んな新人少尉どのだ。

「ケッ、わかってるよ! にしてもここまでずっとろくなお迎えもなしじゃねえか? レーダーのレンジにも入らない遠くからロケット砲やら機銃掃射やらで威嚇にもならねえ腰抜けどもが、まともなアーマーらしきがどこにも見当たらねえ。このままじゃ敵さんの本陣(基地)にまで乗り込んじまうぜ!」

 さすがに単機でそこまでするほど無鉄砲でもないものだが、思わず毒づいてしまうオオカミ族だ。

 見覚えがある長い海外線をまっすぐに縦断していつぞやの廃墟と化した前線基地を横目に見ながら、うっそうと茂る敵国側の森林地帯に突入!


 その先はかつての農耕地帯で、今は拓けた荒れ地と知れていた。

不可思議なアーマーの反応が感知されてからここまでいの一番で乗り付けて、からっきしでは帰るきっかけが掴めない。

 せめて敵のアーマーのひとつかふたつは撃破して星を稼ぎたいところだった。


 相棒のクマ助はいつものんびり太平楽でまるで気にしていないのだから、ここでライバルに差をつければ一足先に昇格、部隊の隊長の座にもめでたくありつけるやも知れない。

 噂では性格剛胆にして冷静沈着、裏表のない性格が人望にも厚いとされる同僚のクマ族がその候補とされているとは耳にしていた。

 だからと言ってこれをただ快くは認めていない彼だ。

 やる気のないヤツに部隊の指揮など執らせてなるものかと殺気を宿して正面のモニターに食らいつく。

「どらっ! これでどうだっ、ここまで来たらさすがに……!!」

 森を抜けたら予想していた通りに拓けた荒野が広がっていた。

 おまけそこには待ってましたとばかりに複数の敵機が待ち構えていたが、それらは何やら拍子抜けするくらいにぽんつぽつんとに散在していた。

 何故だろう。

 いっそ所在なさげなくらいだ。


 かろうじてこの中心に移動型の機動要塞らしきがあったが、丸裸に近いくらいにその大型の機動タンク艦の周囲には護衛のアーマーも弾よけのトーチカらしきも存在しない。

 かくして出くわすなりそれが散漫に砲弾を発砲していたが、射撃精度なんておよそ無いに等しいくらいにひどりありさまだった。

 それらが周囲の土塊(つちくれ)や林の枝葉をむなしく飛び散らすのに、舌打ちしながらアーマーを加速させる。

 あいにくと馬鹿正直に敵陣目がけて直進するほど無策ではない。

 生まれつきに単独行動を好むオオカミは用心深く雑木林と野原の境を縫うように自機を走らせるのだが、これにようやく周囲でぽつぽつとまばらな敵のアーマー群が攻撃をしかけてくる。

 そのちょっと慌てているみたいに息せき切った攻撃には傾げた頭の隅で?マークを灯しながら、負けん気の強い若造は大口開けてうなりを発する。

「へっ、うすのろのロートルアーマーどもめ! そろいもそろってどこ狙ってやがる? もっとマシなのを揃えやがれよ!! そらっ……」

 あんまりひとりで調子に乗っては、しまいには囲まれて袋だたきに遭うだろう? などとひとを揶揄した相棒の言葉が脳裏をよぎったが、その時はまるで気にもせずで右から左へ聞き流した自信家だ。

 前方には直進をはばむように土があからさまに掘り返された跡がいくつも残り、おそらくは地雷が埋設されているのだろうことを目視できた。


 これ見よがしでずさんなトラップをセンサーでも察知したのをアラーム音が告げるが、それにも構わずにコクピットの制御システムであるシステムコアに命令を発する。

「構わねえさ! ギャング、おまえの力を見せてやれ! スタンドアップ! ゆくぜっ、『ラン・モード』!!」

 言うなり出し抜け、みずからのパイロットシートから勢いよく立ち上がるオオカミだ。

 身体をくくりつけるシートベルトはとっくに取っ払っていた。

 これに合わせて周囲を取り巻くコンソールやパネル、背後の座席がバラバラと音を立てて解体され、周りに障害物のないさながらランニングマシーンのような特異なデバイスに置き換えられていく。

 およそ一秒そこそこ、最低限の安全を確保するべくした手すり代わりのロープが張り巡らせるのみのちょっとした空間が出来上がっていた。

 すると当の細身のパイロットはなんのためらいもなし、唯一残ったハンドリングレバーを両手に構えて直立歩行の構えから一気に両脚を回転させる激走の態勢に転じる。

 これにともない彼を乗せたアーマーそれ自体も常識では考えられないようなスピードの走行モードに突入する。

 地雷原とおぼしき穴ぼこだらけの荒野を猪突猛進!

 鋼鉄の両脚を交互に繰り出して爆走する巨人、ギガアーマーなどおよそこれまで誰も見たことがなかっただろう。

 本来、通常の歩行動作だけではどんなにいっても早足止まりの大型ロボット兵器だ。

 従ってそれ向けに設定された地雷はどれも影が走り去った後にきっちり二拍遅れで空しく爆発、コクピット内で疾走するオオカミ族の機体にかすり傷ひとつとつけることはできないのだった。

 何を意図したものか、広い野原の中心の移動要塞を大きく取り囲むように敵は陣形を組んでいる。


 ならばこのまま大回りに荒野を一週してあらかたケリをつけてやろうと目論むウルフハウンドだが、駆け抜けてやるべくした前方の地雷原が一斉に爆破、大きな土煙を上げて前方の視界をふさがれる。

「チッ……! めんどくせえな、だったらお望み通りに出て行ってやるよっ! ただしノロマなおまえらじゃこの俺さまのギャングは捕まえられないぜ!?」

※まだ執筆途中です! 随時に更新してまいります(^^)
もろもろの都合で次回のお話が先行公開されますが、こちらもヒマあらばきちんと更新してまいります(^^;)

 →次回、#005へのリンクが以下になります(^^)/

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ルマニア戦記 スピンオフ No.01

閑話休題・スピンオフシリーズ・第一話♡

「少尉どのたちの休日(プライベート)」 その1 とある居酒屋にて♪

※向かって右手の主人公のクマキャラ、ベアランドのキャラデザインが途中でリニューアルされます!(オオカミキャラのウルフハウンドはそのまま♥)いきなり挿し絵に知らないキャラが紛れてきたら、それが新デザインの主人公となりますので、こちらの旧デザインともどもよろしくお願いしま~すm(_ _)m


 夕刻――。
 夕暮れも間際の西の空がひときわに明るく輝く。
 言えばまだ宵の口だが、田舎の山間にあるとある街中の軽食堂はもうそれなりのにぎわいを見せていた。
 そんな中に、ガラリ……!
 挨拶もなしに扉を開けて訪ねてきたふたりの訪問者の姿に、ピタリ、と一瞬だけ店の中が静まりかえる。
 だがそれもほんの一時だけで、すぐにそれまでの喧噪が場を満たした。
 これにふたりの客も気にした風も無く何気ない顔つきで空いた席を物色、左手のすぐ間近にあった二人掛けのテーブルへと歩み寄った。
 もとい正確にはひとりだけで、もうひとりのは宙にぶらんと両足が浮いたままだったが……。
 ただでさえ普通とは違った見てくれしたからだ付きだ。
 なのにこれがより一層に違和感を増していたのだが、まるで手荷物のバッグを置くみたいなかんじでこの首根っこ掴んでいた同僚のオオカミ男をそうれと下ろして、みずからはその向かいの席によいしょと座り込むそれは人並み外れてどでかいクマ男だった。
 片田舎の地元の人間向けの大衆居酒屋だ。
 よって周りは至って普通の農民や猟師など、平和な生産業者ばかり。
 そんな中でバリバリ軍人さんのオーラを醸しながら、簡素な造りのテーブルと椅子にどかりと腰を下ろして、ひどく物言いたげな相棒のオオカミ族のしかめっツラをこちらはさも楽しげに見返す。
 挙げ句は舌打ち混じりに相手が何か言うよりも早くに手元のメニューを見ながら乱れ打ちみたいな注文を繰り返す大食漢だった。
 なおさら不機嫌面したオオカミが渋い文句を発するのもお構いなし。

「たくっ……! いきなりこんなしけた居酒屋に連れ込みやがって、ひとを手提げバッグみたいに片手で持ち運ぶんじゃねえよ! こんなふざけたプライバシーの侵害行為、たとえ上官さまでもまっぴらごめんだぜっ……て、おいおいっ、いったいどんだけ注文する気なんだよっ!! バケモンじゃねえかっ!?」

 大口開けてついにはツバを飛ばす若い同僚の新人士官に、おなじく未来を嘱望される新型機のエースパイロット候補はこちらも負けずにでかい口を開けて屈託も無く笑った。

「え? だってせっかくのお祝いじゃないか? 待ちに待った新型実験機での祝勝会! 試験運転がまさかの実戦兼ねちゃったけど、お互いめでたく勝ち星上げたんだから、ここは盛大に祝おうよ♡ えーと、ああ、もう面倒くさいからこのメニューにのっかってるの全部持ってきてよ、店員さ~ん!! あとおいしいお酒もありったけよろしく~♪」

「おいおい、マジでどんだけ食う気なんだよ? ありったけってほどがあるだろう?? まったく生まれつき図体でかくてデリカシーのねえクマ族はこれだから! ……おまえのおごりなんだよな?」

 これからこのテーブルの上を占拠するであろう大量の料理を考えただけでも胸焼けがしてくる。
 見かけ細身の現役パイロットは醒めた目つきでのんびり屋の同僚を見上げた。
 するとこちらは二回りはでかくて筋骨隆々としたのが傍目にもまるわかりのラフな私服姿の青年クマだ。
 おおらかに笑って、うん!とうなずく。

「もちろん♡ でなきゃ着いてきてくれやしないだろ、キミってばとってもシャイなんだから! 世間じゃ孤高の一匹オオカミとは言うけど、やっぱりチームワークは大事だよ。だからそこらへんの親睦っヤツを深めるためにもね?」

 そんないつもながらのしたり顔で馴れ馴れしいさまにこちらも仏頂面を隠しもしないオオカミだ。
 おまけ心底嫌気がさしたさまでぷいと鼻っ面を背ける。

「ケッ、この俺さまはてっきりメカニックのオヤジどもが俺たちのアーマーのパーツをどこぞの闇市で買い付けるってんで、その護衛として車に同乗したんだぜ? それがどうして途中であんな野っ原に放り出されて、おまけおまえみたいなむさいクマ公なんぞとディナーを共にしなけりゃならないんだよ!」

「ああ、はじめはその予定だったんだけどもね? せっかくの申し出をあちらから丁重にお断りされたんだよ。おやじさんいわく、ぼくらみたいなよそ者丸出しの軍人さんにいられてもむしろ目立って仕方ないから、どこかよそでもほっつき歩いててくれってさ? 良かったじゃないか、気晴らしのお休みがてらにこうしてふたりで楽しく夕食会ってのも。非合法なブラックマーケットてのはどこも信用こそが第一で、おやじさんくらいに名の知れた機械工ならどこでもウェルカムのVIP待遇なんだって♡」

「はあん、あんなブサイクなブルドックのジジイがVIPとはな……だからってこのザマはなんなんだよ? 俺はちっとも納得行ってねえぞ?」

「まあまあ! まずは腹ごしらえしようよ。広く海に面したこの国の首都部は漁港からの魚介類ばかりで、山国育ちのぼくらにはなじみのない生の食材や食べづらい魚料理ばかりじゃないか? その点、ずっと田舎で山間のここならうまい肉料理にありつけるってもんでさ、ルマニア本国でもお目にかかれないようなグルメもあるかも知れないよ。ほんとに楽しみだなあ♡」

「たくっ……」

 ふてくされたツラでそっぽを向くオオカミに、どこまでも鈍感マイペースなクマはまるで素知らぬそぶりだ。

「んっ! それにほら、ぼくらチームメイトなのにお互いのことなんにも知らないじゃないか? 思えば士官学校時代からの顔見知りなのに、キミってばいっつも一匹オオカミでひととはろくに交わらなかっただろう?」

 どこかおっかなびっくりなさまで店員が持ってきたグラスの水を一息にあおって、継ぎ足しようのピッチャーごと取り上げる大男の軍人さん、ベアランドに同僚のウルフハウンドはひどく醒めた目付きで鼻先の突き出た口元を歪める。

「はん、おまえらみたいな図体でかくてそのくせデリカシーのないクマどもとつるんでたら、身体がいくつあったって足りやしないだろう! かと言えその他大勢のどん臭いイヌっころどもじゃお話にならねえから、ひとりで好きにやってただけってことよ……」

「ふ~ん、でもその『ウルフハウンド』ってのは、これってばどこかで聞いた風な響きだよな? ならひょっとして高貴なお家柄の出だったりするの、キミってば??」

 それは何の気もなさげに発した言葉つきに、だがこちらはひどくかんに障ったふうなオオカミは尖った耳を片方だけ上下に振って舌打ちなんかする。
 相手の言葉をはねつけたみたいなさまだった。

「……チッ、まったくどの口が言いやがるんだよ? とぼけやがって! だったら聞くが、てめえのその『ベアランド』ってのも、クマ族界隈じゃごくごく当たり前のポピュラーなファミリーネームだってのか? 事情が取り込んでるのはお互いさまってもんだろうよっ……!」

「あっはは! まあ、確かにね? 今時は貴族出身だなんて言っても周りからうとまがられるだけだし、それほどの特権や権威なんてものもありやしないし♡ ぼくらただの下っ端軍人さんだしね!」

 鷹揚に腕組みして笑う茶色のクマにしかめツラの灰色オオカミが毒づく。

「ルマニア八大貴族、もとい、今は七大貴族、だったか? どこもとっくの昔に廃れちまって人の口にも上らねえだろう? 俺は生まれた時から景気のいい話を聞いたことがないぜ、その手のことじゃ」

「はは、何かしらの不祥事でお取りつぶしになったのって、10年くらい前のことだっけ? ライオネイルとか言ってたような……確かに今じゃ聞かないよな! あと他には、ワイルドホルスに、キャトレインだっけ? そこに加えてうちとキミとであとみっつ? ええっと……」

「ンクスに、ピコークだろう! あとひとつは俺も思い出せねえが、そんなもん関係がありゃしねえっ」

※ノベルとテキストは随時に更新されます♡

 うんざり顔でかぶりを振る同僚のパイロットに、同じくクマ族の新人パイロットはしたり顔してその言葉付きをひそめさせる。

「う~ん、ま、全く関係なくはないんじゃないかな? このぼくらが任された新型の実験開発機の製造元だとかを考えたら?? そうとも、あれってのは設計段階から特殊なコンセプトと特別な製造ラインで組み上げられたまさしく一品物で、その昔の貴族専用の特注機さながらなんだから! ルマニア本国のアーマー工廠じゃなくて、まんまそっちで一から開発されたって話じゃないか。この本社やその工場がどこにあるのか誰も知らないっていう、あの謎多きアリストクラッツ社のさ!」

「はん、アリストクラッツ、ねぇ……だがそんなご大層な刻印、おれのギャングのどこにもありやしなかったぜ? なのにそのおかげでわざわざ正規のルートじゃない闇でパーツを仕入れなけりゃならないなんてな、本末転倒なんじゃねえのか?」

「確かにね! いずれ赴任することになる新型の大型戦艦にはそれ用のアーマードックがあるっていうから、今の事態はきっと想定外なんだろ? おっと来た来た!!」

 やがてワゴンに山盛り載せられてきた料理の数々に、喜色満面でみずからの太い喉を鳴らすクマに、げんなり顔で舌を出すオオカミだ。
 おまけこの鼻先をひくひくさせてウルフハウンドが言った。

「ん、くせえな! おい、しっかりと生の魚料理があるじゃねえか、てめえの苦手な? あ、てめっ、どうしてこっちに差し出してくるんだよ!!」

「いいからいいから、遠慮しないで♡ たっぷりとスタミナつけなきゃいけない軍人さんがそんな好き嫌いはいけないよ! それじゃぼくはこっちのおいしそうな手羽からいただこうかな♪」

「ほんとにてめえのおごりなんだろうな?」

「あはっ、うんまーい! 店員さん、こっちにビールじゃんじゃん持ってきてぇー!!」

「まったく……!」

 うんざり顔でため息が尽きないオオカミだ。
 素手で鳥の揚げ物を掴み上げるがさつな相棒に対して、こちらは遠くの本国で使い慣れたフォークやナイフではなく、二本の箸を利き手で持って器用に皿から青魚とおぼしき刺身をつまみ上げる。
 きちんと下処理がされた鮮魚は匂いがやや鼻につくが味や食感自体は新鮮で嫌いではなかった。
 呑気な学生みたいなノリで肉料理を次から次へとほおばるでかいクマ助にじぶんの分も残しておけよと内心で毒づきながら、白けた眼差しで見ていたやせオオカミの顔つきにいくらかの陰りが走った。
 無防備な短パンランニング姿の相棒のさまを見ているにつけ、そこに何かしらの違和感を感じたのだ。
 顔つきが怪訝なウルフハウンドはこの違和感の元凶がおそらくは相手の剥き出しの首元、やけにくっきりとしたいかついデコルテラインにあることを突き止めながらにベアランドに問う。

「……おい、てめえ、首の輪っかはどうしたんだよ? 新型機のテストパイロットとして誓約を交わした時からその代償としてはめられたあの邪魔っけなお飾りがどこにも見当たらねえじゃねえか?? こんなゴツイもの、いくら毛むくじゃらでもそうそう見失ったりはしねえはずだ!」

 みずからのシャツの首元からのぞく太い首輪を不快げに指さしながらのそれに、当の問われたお気楽なクマは何食わぬさまでしれっと言ってのける。
 オオカミは大きく目を見張らせた。
 ピンと尖った二つの耳が大きく震える。

「え? どうって、とっくの昔にむしり取っちゃったよ、あんなの! あの太い金属のワッカだろ? だってあっても機能的にまるで意味ないし、邪魔なだけじゃないか? キミこそまだ律儀に付けてたんだ、そんな無意味なお飾り!」

「む、むしり取った!? ちょい待て、コイツは捕虜や重罪人がはめられるそれこそが拘束用の首輪で、内部にゃ逃走防止のための爆薬が仕込まれてるはずだろうが!! もともと頑丈なのにひとたび外したら首から上がきれいに吹き飛ぶってシロモノをどうやって、まさか持ち前の馬鹿力でむりやりに引っぺがしたって言いやがるのか!?」

「うん。そうだよ♡ それに爆薬だなんてそんなのブラフに決まってるじゃないか? 実際にそうだとしたら周りが危なくて近寄れないし、逆に自殺やテロ目的に使われたり、いざ管理するのも一苦労じゃないか?? 心理的な負荷をかける目的以外の何物でもありやしないよ、素手ではほぼ外せないくらいに頑丈に造られてるってあたりからしても、せいぜいGPSが仕込まれてるくらいなものじゃないのかなぁ? あいにくとぼくは素手で外しちゃったけど! 外したブツはもうどっかにいっちゃったなあ」

「おいおいっ……!」

 あまりにもお気楽さまなクマの言いようにもはや目を白黒させて言葉を失うオオカミだ。
 運ばれてくる料理を次ぎから次へと平らげる大食漢はなおさら太平楽なさまでやがては油まみれの手をこちらに向けてきた。
 まだ刺身を二切れ、三切れしか食べていない細身のパイロットは箸を握ったままに総毛立つ。

「ある程度役割こなしたら専用の解除キーが送られてくるなんて言うけど、期待薄だしな? 元から存在意義がないようなシロモノ、どうせあっちも存在自体忘れてるさ。あ、なんなら取って上げようか? その邪魔なワッカ! しょせんオオカミにはこんな首輪なんて似合わないもんな♡」

「あ? おい待てっ、いきなり何しやがっ……!?」


 ※こちらのエピソードはまだ執筆途中です♡

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