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「オフィシャル・ゾンビ」08

オフィシャル・ゾンビ
ーOfficial Zombieー

オフィシャル・ゾンビ 08

 これまでのおおざっぱないきさつ――
 通称・ゾンビと呼ばれる人外の亜人種が陰でうごめく世界で、期せずしてゾンビの認定を受けてしまったお笑い芸人、鬼沢。
 おなじくゾンビにして政府公認のアンバサダーを名乗る後輩のお笑い芸人、日下部によってその本性であるタヌキの姿に変身させられ、あまつさえ屋外に追い出されてしまうのだった。
 クマのバケモノと化した日下部とタヌキの鬼沢、呆然と立ちすくむお笑い芸人のもとに、果ては思いもよらぬ人物が現れて…!

 はじめの平和な家族連れでにぎわう都心の公園から、今現在はがらりと場所が変わって、ここは先の憩い広場からは徒歩でほどもなくした同じ街中の一画。

 とあるビルの内部だ。

 ただし人の気配がどこにも感じられない、言うなればとうの昔に放棄されたのであろう、一棟の大きな廃ビルの中であった。

 元はそれなり大きな企業のオフィスビルとおぼしきものだが、建物そのものがすでに遺棄されてひさしく、ほこりっぽいフロアにひとつもものがないがらんどうなさまは、そこに一抹のわびしさと不穏な気配のごときものをじっとりと醸し出していた。

 ひとつも人工の明かりがない空間は実際はさぞかし広いのだろうに、天井から床までびっしりと暗がりで塗りつぶされているため、まるで見渡しが効かない。

 その雑草だらけですっかり寂れた玄関口には〝立ち入り禁止〟の大きな立て看板があり、しっかりと封鎖されていたのだが、この正面口から堂々と中に侵入する中年の男の背中に続いて、のっしのっしとでかい足を踏み入れるふたりのゾンビたちだ。

 そこでは人目を気にしないで済むぶんにこれまでよりずっと落ち着いていられたが、見通しが悪く薄暗い建物の中に見知ったはずの人影を探して怪訝な顔つきをせずにはいられない、現在絶賛タヌキのお化けに変身中の鬼沢だ。

 隣で息を潜める日下部、見た目はいかついクマの化けものにちらと視線をくれるが、後輩の芸人にしてオフィシャル・ゾンビの政府公認アンバサダーめは憎らしいこと何食わぬ顔でおなじくその第三の男の挙動をぼんやりと眺めている。

 何か文句のひとつでも言ってやろうとしたところに、いきなりこのあたりの景色がパッと明るく開けた。
 これにはただちにビクっと背後に垂らした太いシッポを逆立てるメタボ体型のタヌキだ。
 内心で平静を装っていてもいざこういうところに出てしまうのは致し方がないことなのだろうか。

 ここは廃ビルなのだから電源などはとうに落ちているはずだ。

 それにも関わらず、天井の明かりが煌々と灯ってその廃墟のありさまをはっきりと照らし出すのに目を丸くしてしまう。

 白っぽい人工の照明は、その広いエントランスのほぼ真ん中に立つ昔から見知った男の姿もそこにはっきりと照らし出した。

 不敵な笑みを浮かべてこちらを見ているおやじ……!

 男は自分たちと同業の業界人で、〝お笑い芸人〟だった。

 おまけにかなりのベテランで、有名人だ。

 この中でもタレント・ランキングだとか言ったものではダントツの認知度と人気があるのではないかと素直に認めてしまう鬼沢は、ごくりと息を飲んでその年配の先輩芸能人の言葉を待った。

 男は見た目で言えばいわゆる中年のおっさんで、だいぶ中年太りしたいかつめの身体に街中ではあまり見慣れないような、いかにも芸能人ふうなちょい奇抜なファッションなのだが、かろうじて全体を渋くまとめた色使いでギリOKっぽい衣服をその身にまとっている。

 かなり個性的なキャラで知られる芸歴が長いベテラン芸人にはいかにも似つかわしいが、じぶんならちょっとハードルが高いなと内心、覚めた目つきで眺めてしまう後輩芸人だった。

 このあたり隣の若手くんの目にはどう映っているか?

 何はともあれ口元に男らしい口ひげを蓄えたオヤジは低くて渋い、そのくせによく通るバリトンの美声で乾いた廃ビルの空気をビンと震わせてくれる。

「おう、よう来たな、後輩のゾンビども! もとい、芸人ども! ああそうや、ここは見てのとおりで余計な人目を気にせんでええさかい、せいぜい楽にしとけや。ちなみに政府公認の廃ビルで、ゾンビさま専用の容れ物やからなおさら遠慮はいらへん! このわいのお気に入りの〝秘密基地〟や。ちゅうても実際はみんなのものやさかい、おのれらも自由に使ってかまへんのやからの」

「……?」

 二匹の化け物を前にしてもいささかもビビることなく鷹揚な態度のおやじの言いように、なおさら怪訝にその太い首を傾げるタヌキだが、この横のクマがしれっと言うのだった。

 わかりやすく説明してくれる。

「はい。廃ビルや廃工場をそのまま秘密裏にゾンビ機構のものとして国が収容かつ管理しているんですよ。ちなみに都内に同様の物件がいくつも存在したりします。見た目はボロボロでもちゃんとライフラインは生きているから、身を潜めるにはうってつけですよ。ここは規模としてはかなり大きいものですし。裏手の広い裏庭も含めたら、合宿とか特訓とかもできたりしますよね?」

「へえ、そうなんだ? てか合宿って、なに? 特訓なんて俺しないよ。で、目の前にいるあの先輩は、俺、ちょっとビックリしちゃっているんだけど??」

 感心するよりも半ば呆れた感じで大きな頭を頷かせるタヌキが横のクマから目の前のおじさん芸能人へと視線を泳がせるのに、当の本人がニヤリとした意味深な笑みでぬかしてくれる。

「なんや、クサカベ、まだゆうてへんのかこのわいのこと、オニザワに? あー、ちゅうか、そっちのクマがクサカベで、そっちの間抜け面のタヌキがオニザワでええんよな? なるほど立派なゾンビっぷりやが、まだちんちんに毛が生えたての新人くんやろ、シッポの落ちつかない揺れかたがかわいいてしゃあないわ! ほなはよ慣れえよ。傍で見ててあぶなっかしいてしゃあない、収録中もシッポが見え隠れしてたりするやろ、ほんまにの!!」

 豪快な語り口で明るく茶化した言いようでありながら、最後のあたり聞き捨てならないぶっちゃけ発言があっただろう。

 またしてもシッポがビクンと跳ね上がる鬼沢は背中にぶち当たるこのみずからの身体の一部に困惑しながら声を荒げる。

「は? シッポが見え隠れって、そんなわけないじゃないか! 俺こんな姿で収録に参加したおぼえなんて一度もないもん!! それこそ騒ぎになっちゃうじゃん!!」

 これには依然として平然と横に突っ立つクマがすぐさま納得したしたり顔でうんうんと同意。

「ああ、確かにシッポ、時々見えてたりしますよね、鬼沢さん? 本人自覚してないし普通のひとには見えないから問題ないんですけど、この業界、実はゾンビのシッポがはみ出ちゃってる放送事故は結構あるあるです。収録に参加してるゾンビ側からは丸見えですものね? かと言ってその場じゃ注意もしずらいし」

「ああ、ヘタに言うて意識してもうたら、最悪見えんはずの人間にまで見えることになりかねん。カメラに抜かれでもしたら即アウトやろ! いかついシッポの形状からさぞかし年季の入った古だぬきなんやろうと思ってたんが、ずばり的中しよったな! その姿はかなりもんで霊格の高いどこぞやの〝氏神さま〟みたいなもんなんやろ? さてはおまえ、そないなもんにたたられるようなバチ当たりなことをしよったんか、どこぞのロケ先で??」

 しったふうなことをずけずけと言ってくれる先輩に狼狽せずにはいられない鬼沢だ。口から泡が出る勢いでわめき散らす。

「し、知らないよ! 俺は身に覚えなんか何もない!! こんなの何かの間違いに決まってるよ。そうとも俺はただの被害者だ! 無実なんだって! いいや、そう言うコバヤさんだって、俺、知らなかったけど、その、ゾンビ、だったの? でもそうなるんだよね? コバヤさんはコバヤさんの姿のままだけど、でも……」

 ここまでの道中のことをそれと思い出す鬼沢だ。
 困惑の色を深めるタヌキは目を寄り目にして深く考え込む。
 コバヤと呼ばれたオヤジのベテラン芸人は何食わぬ顔で大きく頷いた。

「そや! これまでの経緯を見てもうわかったやろ? ひとには不可視のゾンビのおまえたちを率いてここまで来よる道すがら、こないな有名人さまを指さす人間がひとりもおらへんかったっちゅうあたり! もはや不自然に過ぎるっちゅうもんや」

「やっぱり、見えてないんだ? 俺たち同様、みんなにはコバヤさんのことが?? でもいたって普通の人間のカッコしてて、今のコバヤさんはどこもゾンビっぽくはないんだけど……?」

 やや納得しかけてそれでも何か心に引っかかる鬼沢に、すまし顔の日下部が横からさらなる注釈を付け加える。

「ある程度の経験値を積んでゾンビとしてのレベルが上がれば、わざわざその姿に変身しなくてもステルスをかけることはできるようになりますよ。ひとにもよりますが。あと何を隠そう、コバヤさんはこっちの方面でもベテランで、有名人ですからね?」

「ふん。あいにくとおのれのようなオフィシャルとはちごうて、ただの野良の一匹狼のゾンビやがな! いいや、そもそもがわいらみたいなゾンビに公式も非公式もあらへんやろっ」

「まあ、できたらコバヤさんもオフィシャルになって欲しいんですけど? 世間に潜伏するナチュラルのゾンビたちを見つけ出して野放しにしておかないのがおれたちの仕事でもあるわけだし」

「ナチュラル? なにそれ? ゾンビってそんないくつも種類があったりするの?? 俺が、なんだっけ、えっと、オフィシャルで、コバヤさんはまた違うんだ? いわゆるカテゴリー??」

 初めて聞くことだらけで何をどう理解していいやらさっぱりわからない鬼沢が視線を右往左往させるのに、何やらひどいしかめ面する熟年芸人が途端にこの語気を荒げた。
 キビシイ目線を目の前のクマに投げかける。

「一緒や! ただおのおのに主義主張が異なるだけで、区別する必要なんてどこにもあらへん。しょせんは国のお偉いさんがたの都合やろ? せやからわいはオフィシャルになんぞなられへんのやっ、この首に首輪をはめようなんぞまっぴらごめんやからの! クサカベ、よう覚えておけよ、この漢(おとこ)、ジュードーコバヤカワ、おのれの道はおのれで決める! せやかておのれらの守りたいものとこのわいの守るべきもの、そないに違いはあらへんやろ。世間からバケモノのとそしられても決して人の道は違えんのがあるべきゾンビの姿やからの……!!」

「はあ……。残念です。でもおれも諦めませんよ。それもまたオフィシャルの公式アンバサダーとしての勤めですから。今日からは鬼沢さんと二人がかりでコバヤさんの説得にかかります」

「え、俺? まだ何も納得していないんだけど??」

 タヌキがきょとんとした顔で真っ黒い鼻先をヒクつかせるのに、苦笑いの先輩芸人が意味深な目つきでそれを見返しながらにのど仏を鳴らしてくれる。
 その含むところがある言葉になおさらにきょとんとした顔で鼻先をひくつかせる鬼沢なのであった。

「好きにするがええわ。だが今はこの右も左もちんぷんかんぷんのゾンビ一年生のタヌキの世話が先やろ? そやからこのわいが呼ばれたわけでもあるんやし。なあ、オニザワ?」

「はい? えっと……」

「ええから任せとき。まずは実地訓練、実戦のバトルを体験するところからやろ! ゾンビには必須のスキルや。まあ、優しくしたるさかい、遠慮せんでかかってこい。あいにくギャラリーはそこののんきなクマ助だけだが、熱いエキシビション・マッチのはじまりや! 見物やぞ。動画に撮っておきたいくらいやわ」

「は??」

 事態は急転直下、何か思わぬ流れになりかけているのにひたすらきょとんとなる鬼沢だが、横からクマ、もとい日下部が真顔で言ってくれる。これまた急な物の言いだった。

「鬼沢さん、まずは慣れるところからです。これまでの通りに。ゾンビたる者、それは戦ってなんぼの世界でもありますから、頑張ってコバヤさんに食らいついてください。ちなみに強いですよ、コバヤさん、あのままの姿でも……!」

「はあ? おまえ、何言ってんの??」

「せやから相手をしてやるっちゅうてんのや、このわいが! おうタヌキ、ちんたらしとらんでさっさと来いや! この大先輩がいっちょもんだる、せやからおまえは気張っておのれの力を出せる限りひねり出して、どないなもんができるのかはよう慣れてものにせい。まずはおのれを知ることからや!!」

「は? コバヤさんも何言ってんの?? こんなわけわかんない状態でひとなんか殴れるわけないじゃん、おっかない! 普通の人間よりもずっと力があるんでしょ? 今だって大人と子供くらいも体格差あるし、先輩の芸人さんをケガさせちゃうわけにはいかないじゃん! 俺、そういうの嫌いだし」

「それは相手がただの人間だったらの話ですよ。今回はまったくの別で、むしろ通らなければならない道です。それこそがおれたちゾンビにとってのある意味、通過儀礼みたいなものですから。あとコバヤさんはほんとに強敵ですよ?」

「もうええ、百聞は一見にしかずや。習うよりも慣れよ! おいオニザワ、ごたくはええからさっさとその力を見せてみい、そしておのれの限界を知れ、このわいが教えたる。先輩の芸人として、ガチのゾンビとして、おのれの身体にたたき込んだるわ!!」

「わ、わけがわからないよ! 俺、ケンカなんて兄弟以外としたことないし、ましてや本気の殴り合いだなんて考えたこともない! プロレスだってまともに見たことないんだから!!」

「うっさいわ、ボケ! ええから、かかってこいやあ!!」

 怒号と悲鳴が交錯する。

〝人間〟対〝バケモノ〟……!

 ギャラリーがひとりだけの異種格闘技戦が幕を開けた。

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「オフィシャル・ゾンビ」⑦

オフィシャル・ゾンビ
ーOfficial Zombieー

 オフィシャル・ゾンビ ⑦

 これまでのおおざっぱないきさつ――
 ある日、いきなり異形のゾンビ(亜人種)、タヌキの妖怪(?)と化してしまった人気お笑いコンビ、「アゲオン」のツッコミ担当、鬼沢 耀(オニザワ ヨウ)。そこに政府公認のオフィシャル・ゾンビとして公式のアンバサダーを名乗る、おなじくお笑い芸人にしてクマのバケモノと化した「宮田日下部(みやたくさかべ)」のボケ担当、日下部 煌(クサカベ コウ)により、すったもんだの末に自身もアンバサダーとしての実施訓練を強要されることとなり……!! 抱腹絶倒のドタバタコメディ佳境に突入!!


 ガッシャアアアアアーーーーーーンッ!!!

 狭い楽屋にひとつだけある大きな窓ガラスが派手な音を立てて粉みじんに砕け散る!

 その窓をみずからの背中で突き破った毛むくじゃらの人影が、勢いもそのままに仰向けで背後の虚空にその身を投じる。

 だがここは、地上から実に七階もの高さがあり……!

 もはや自殺行為、アクロバティックな身投げもさながらだ。

 ただし見た目がタヌキらしき謎の怪人は、それがみずから意図したものではなくて第三者に無理矢理に突き飛ばされただけに、およそ恥も外聞もなくした魂消るような悲鳴を発していた。

 その一部始終を間近で見つめるこちらも謎のクマの怪人めは、覚めたまなざしで空中で手足をバタつかせるタヌキを見送る。

「うっわああああああああああああああああっっっ!!!」

「あ、ちゃんと両足で着地してくださいねっ、鬼沢さん! 今はゾンビの状態だからよほどのことがなければケガなんてしませんからっ、頭から落ちなければ実質OKです!!」

「わああっ、なっ、何言ってるんだよっ、ここ何階だと思っているんだ!? うっわっ、あああああああああああっっっ!!!」

 やけに冷静なクマからの忠告に、背後の窓を派手に突き破って今しも高層階の楽屋の外へと放り出される哀れなタヌキが必死にわめき叫ぶ……!

 それきりすぐに見えなくなったのに続いて、これをただちに追いかけるべくしたクマもガラスの破片をさらに勢いよく飛び散らせて外へとその身を投げ出した!!

 いざ「ゾンビ」と化しての任務行動、公式アンバサダーとしての実施訓練のスタートだ。

「わああああっ! あ、え、ここって何階だったっけ?? は、わわっ、死んじゃう死んじゃうっ、死んじゃうよぉっっ!!」

 仰向けの姿勢で楽屋の窓を突き破ってそのまま虚空に放り出された人型のでかいタヌキは、その背中越しに振り返って見た光景にただちに全身の体毛が総毛立つ!

 はるか遠くにコンクリの地面が見えるが、今しもそこめがけてこの身体が重力の法則のなすがままに落ちていこうとしている。

 通常なら絶対に助からない高さと落下速度でもってだ。

「ああ、いやだっ、いやだよっ、死にたくなっ……あ?」

 シュタっ……!!

 目をつむって死の恐怖にあがきもがく見た目ひとがたのタヌキのバケモノだが、それはただ一瞬のことで気が付いたらばすべてが一変していた。

 地上七階から地べたまでの自由落下はほぼ一瞬で、頭から落ちるなと言われるまでもなくこの体勢を自然と空中で立て直していたタヌキ、もとい人気お笑いタレントの鬼沢だ。

 直後には足下に堅い感触を感じたくらいでしっかりとコンクリの地面に着地していたことに見開いた目をひたすら白黒させる。

「あれ、着地できちゃった? あんな高くから落ちたのに??」

 見上げたテレビ局の巨大な社屋、七階に相当するある一部だけが大きく窓が破損しているのを視認して、はたと首をかしげる。

「まあ、ゾンビだからそんなものです。もちろん個体差があるから一概にとは言えませんが、人間の時のそれよりはすべての感覚や運動能力が大幅に勝っているはずですよ? 今、鬼沢さんがその身をもってしっかりと実演してくれたように」

「……! なんだよ、おまえに無理矢理やらされたんだろ? よくもやってくれたよな、しかもこんなおかしな見てくれしてるのに、真っ昼間のこんな街中の屋外に放り出すだなんて……!!」

 気が付けば音もなくすぐそばに着地していたクマ、厳密には日下部の澄ました返事にこちらは仏頂面して文句がだだ漏れる。

「お互いさまじゃないですか。もとよりこの見てくれに関してはそんなに気にしてくれなくていいですよ。それをこれから現実に実演して証明してみせます。もちろんふたりでですね? つきましてはここから大通りを渡った先にあるわりかし大きな公園、わかりますか?」

「公園? わかるけどなんで?? この局からちょっと離れたところにある『第三市民公園』だったっけ、ずっと昔のまだ若手の頃に相方とそこで漫才の練習とかしてたから、いざ番組収録の前とか大事な時に! でもよりにもよってそんなところに顔出したらすぐさまパニックだろ、あそこって普段から家族連れで混んでるし、そこまでもけっこうな人通りがあるし?」 

 不審な顔で尖った鼻先をひくつかせるでかいタヌキに、相変わらずのんびりした顔つきの大柄なクマがちょっとだけ意味深な目つきで先輩の芸人、今や見てくれの怪しげなゾンビ(?)を、その背後に面した大通りへと誘う。

 局の敷地を離れたらそこはもう結構な人混みで、この格好で向かうのにはかなりの気後れがするタヌキの鬼沢をよそにさっさとそちらへと大股で歩きだした。

「おれの後に付いて来てください。ああ、おかしな物音を立てたりヘタに騒いだりしない限りは、見た感じちゃんと身体のステルス効いてるみたいだから大丈夫ですよ、鬼沢さん。周りにぶつからないように注意を払えば、走っても平気なはずです。それじゃ、行きますよ?」

「ステルス?? あ、お、おいっ! 行くって、このカッコじゃさすがにマズイだろ? ちょっと、クサカベ! 待ってよ、ひとりにしないでくれ!!」

 その場で二の足を踏む鬼沢だが、周りの人気を恐れてこわごわと自らも足を踏み出す。結構派手な物音を立てたばかりだから、この場にいても人目を避けることはできないのは理解していた。

 大股で詰めてそのでかい背中に手が届くぐらいになったら、この毛むくじゃらの巨体がいきなりスピードを上げて走り出した。

 有無も言わさずにだ。

 するとこちらも焦って駆けだしてしまうタヌキである。

「あっ、おいっ! そんな走るなよっ、て、信号もないところでいきなり渡っちゃうの!? だ、大胆だなっ、みんな見てるじゃんっ!! テレビタレントが人前でそんなことしたら、しかもこんなおっかない見てくれでっ、おおいっ、待ってくれよ!!」

 東京の都心で、おまけ昼間の街中じゃ人通りも車の通りも決して少なくはない。

 そんな中に正体不明のバケモノが二体も出現したら、ちょっとしたパニックは免れないだろうと恐れおおのくテレビタレントの心配をよそに、何の苦もなく大通りを横切ってその先のビル街の脇道へとその身をくらますクマの後輩芸人だ。

 その後を必死になって追いかけた。

 なんて悲鳴や罵声を浴びせられるのか気が気ではない鬼沢だが、なぜかどこからもそれらしきが上がらないのには、内心で不可思議な困惑と共に、もはや夢なのかとさえ疑ってしまう。

「いいや、だったらさっさと覚めてくれよ! おおい、クサカベっ、あ、騒いじゃダメなんだっけ? おおーい、いた! ちょっとクサカベっ!!」

 まだ慣れない感じの毛だらけの身体と背後でぶんぶんと揺れるシッポのバランスに悪戦苦闘しながら、どうにか見失いかけた後輩の背中に追いすがる。ちょっとスピードをゆるめて小走りくらいのクマは覚めたまなざしで大汗だらけのタヌキを見返した。

「……ほら、平気だったでしょ? この調子で目標の公園まで行きますよ。この姿になったおれたちは普通の人間の知覚や認識では捉えにくくなっているんですよ。人間じゃ無いんですね、しょせんは? 気を引き締めて息を殺していれば、まず感づかれることはありませんから」

「そ、そうなのか? 確かに周りの誰とも目が合わないのがびっくりなんだけど、つまりはこれって『透明人間』になってるってこと?? すごいじゃん!!」

「……いえ、厳密には違うと思いますよ? というか鬼沢さん、なんか今やらしいこと頭で考えてるでしょ? そういう煩悩や雑念が働くと途端に見えちゃったりするから、やっぱり透明人間じゃないんですよ、おれたち! 気をつけてくださいね?」

「や、やらしいって何だ! そりゃちょっとは想像したけど、この見てくれでそんなのただの変態だろ!! ……触ったりはできるんだ?」

「発言がことごとくいやらしく聞こえますよね? もちろんできますよ。でもたぶんその時点で、この身体のステルスが切れちゃうと思いますけども。フェードとかも言ったかな? 要は気配を殺して身を隠しているんですが、驚いたことにカメラとかの撮影機器にも写らないらしいですよ、ちゃんと意識してその状態を保っているぶんには?」

「いや、その状態って、どれがそれなんだかイマイチわからないんだけど? 意識をそれなり集中していればいいのか?? それともこれもいわゆる慣れってヤツ??」

「あはは、良くおわかりで。理解できてるんならこんな人通りを避けた裏道でなくても大丈夫ですね! それじゃさっさと人通りを渡って目的地へと向かいます。くれぐれも余計な物音は立てないでくださいね!」

「あっ、だからっ、ああっ、もう、待ってよ……!!」

 なるべく物音を立てないように用心しながら人混みを息を殺して走り抜ける二匹のバケモノたちだ。
 その身に古めかしい装束をまとってはいながら、この足自体はどちらも裸足なので余計な靴音などは響かない。
 だが雨上がりの歩道はいたるところに水たまりがあって、そこを渡るたびに水音だけがピシャピシャと鳴るのだった。

 ほどなくしてお目当てとしていた市民公園へとたどり着く。

 いざ公園に着いてみれば、そこは思った以上の家族連れで賑わっているのに、ちょっと意外げな顔でこの広場の入り口近くから辺りを見渡す鬼沢だった。

 雨上がりの晴れた日常の風景にじぶんがいかになじまない見てくれをしているのかひどい困惑を覚えながらも、目の前の平和な景色には内心でカレンダーの日付を思い出す。

「あ、そうか。今日って休日なんだっけ……! あ~ぁ、それなのにどうして俺はこんな……!!」

 恨みがましげにすぐ隣で呆然と同じ景色を眺めているいかついクマのバケモノを見やるが、その当人、後輩の他事務所所属の若手の芸人くんはそ知らぬさまで明後日の方向に目線をくれる。

 チッと小さく舌打ちして、それから辺りの平和な景色を改めて眺めては自然と深いため息をついていた。
 それにクスっと笑うような気配を発するクマが言ってくれる。

「ね、見えていないでしょう? こちらからわざとわかるようなそぶりを見せなければ、おれたちはほぼいないも同然なんです。それこそがゾンビのゾンビたるゆえんですね?」

「はあん、みんな家族の団らんを楽しんでいるよな。ここに得体の知れない不審者がいるとも知らずにさ! しかもふたりも!! こんな目立って仕方がないカッコをしていてもまったくバレないのはありがたいけど、タレントとしては悲しいものがあるよな……! いや、こんなゾンビ、もといバケモノじゃ仕方ないのか、おまけに俺ってタヌキなんだ? はああ、家族になんて説明すればいいんだよ……」

 がっくり肩を落とすタヌキの妖怪と化した鬼沢に、相変わらず他人事みたいな物言いのクマのバケモノ、日下部がぬけぬけと言ってくれた。

「言わなくていいんじゃないですか? さしあたって今のところは?? このあたりまだ法的な整備が整っていないんだし、亜人種管理機構への個人的なカミングアウトだけで十分ですよ。周りへの周知は後後にしておいてですね。かく言うこのおれもごく一部のひとにしかそれとはっきりとは言っていないし。まあ、噂はいろいろと走っているようですけど……」

「ああ、俺もいろいろ聞いてるよ。あることないこと、ありとあらゆる妄言から誹謗中傷みたいなことまで! まったくいざ自分の身に降りかかるとなると寒気しかしないよな、こんなの!!」

「慣れるしかないんですかね、誰しもが……? 社会の共通認識としてそれが正しく認知されるまで、あるいはおれたちが一方的に我慢し続けるか? 無理がありますかね。平和が一番だなんてのんきなことは言ってられないこのご時世ですから」

「なんか気が滅入ってくるよな? で、どうしてこんな真っ昼間の平和な公園なんかに連れて来たんだよ? 俺たち、ここじゃ異物か不審者でしかありゃしないぞ。くそ、家族と来てたら最高の思い出作りじゃないかよ。ここってこんな穴場だったんだ!」

 ちょっと悔しげなさまで身もだえするタヌキに、隣のクマがちょっとだけ苦笑いしてそこからまじめな話を切り出した。

「来たのにはちゃんと意味があります。実際の肌で感じた自分の身体の出来具合を見るのと、人混みに問題なく紛れることができるのかのチェックとかを兼ねてですね? この点、鬼沢さんは自然とできているから問題ないですよ。たとえ家族の前ででもその姿でいる限りは見つかることはありません」

「だからそれはそれで、なんか悲しいだろう? あれ、いざ正体を明かしたところでこの姿を見せることができなかったら、なんか説得力がないんじゃないのか? ただの嘘つきみたいな??」

「まあ、そのあたりは、説明がしづらいんですが、たとえば自慰をしているところをわざわざ家族に見せることはありませんよね? それと同じで、あえて隠さずに見せようと思えば見せることができるはずです。恥を忍んであえて恥部をさらすみたいな感覚で?」

 しまいにはえらくぶっちゃけた物言いをしてくれる後輩に、家に帰ればタレントからマイホームパパになる中堅芸人は泡を食ってわめいてしまう。周りを気にして口元に手のひらを当てて努めて語気を落としつつ、それでも最後にはまたわめいていた。

「待て待て! 自慰ってなんだ! ……あ、語弊があるだろう、俺は間違っても子供の前ではそんな姿見せないぞ? この姿はそんな恥ずかしいことなのか? 冗談じゃない! だったら俺は絶対に見せないぞ、家族にこんなわけのわからないゾンビ、じゃなくてタヌキのカッコ!! だからなんでタヌキなんだよっ!?」

「愛嬌があっていいんじゃないですか? おれは好きですよ、タヌキの鬼沢さん。むしろ元の姿の時よりも愛着あるかも? 普段は坊主の太ったおじさんですものね? いかにも見え透いたビジネススマイルの??」

「待て! それこそ語弊があるだろう? おじさんなのは認めるが、ビジネススマイルってなんだ?? 俺はお笑い芸人だよ、根っからの! そもそもまだ若手のお前にどうこう言われる筋合いはない。それよりも、これからどうするんだ?」

 ひょうひょうとした後輩の横顔を睨んで問いただすのに、いっかなに悪びれるでもないクマはこれまたぬけぬけとしたさまで果ては意外なことをさらりと言ってのけた。

「まあ、とりあえずはその状態に慣れてもらうことが一番ですかね? 来ている衣服、装束っていうのか、そのへんのアイテムだとかもそれなりに調べて使い方をきちんと押さえてもらって……あ、あと、あるひとを呼んでいますので、この場でそちらとの顔合わせもしてもらってですね……」

「あるひと? え、誰?? なんかコワイんだけど、このカッコで引き合わせるってことは、ひょっとしてそのひとも……!」

 怪訝なさまで毛むくじゃらの頭を傾げさせるのに、落ち着き払ったクマの妖怪はあくまでもクレバーな調子で言ってくれる。

「会えばわかりますよ。ちなみに鬼沢さんも知っているひとです。ちょっと意外かも知れないですけど? でも身元自体はとてもはっきりとしているひとですから」

「は? まさか顔なじみの先輩のお笑い芸人が出てくるなんてことはないだろうな? 頭に黄色いメットを被って?? ドッキリじゃん! タチの悪い? でもこの俺たちのことが見えるヤツなんだろ、だったらやっぱり……」

「来ましたよ。ほら……!」

「あ!」

 何かしらの気配に感づいたのか、ふと背後を振り返ってそれと目線でそちらを指し示す日下部だ。
 これに同じく背後を振り返る鬼沢なのだが、いざ振り返って見た先にいた人物に、ポカンとしたさまで大きな口を開けてしまうのだった。

 確かに見知った人間がそこにはいた。

 だがそれは実に思いもよらない人物で、なのに比較的に身近な立場にいるごく見知った人間だったのだ。

 それこそが……!

                ※次回に続く……!
 

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「オフィシャル・ゾンビ」⑥

オフィシャル・ゾンビ
ーOfficial Zombieー

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オフィシャル・ゾンビ⑥(めんどくさいので今回からこのかたちにしました(^^)) 


 シンと静まり返った楽屋で、そこでは得体の知れない二体の何者かが物も言わずに相対していた。

 つい何時間か前にはそこにはそれなり名の知れたふたりのテレビタレントがいたはずなのだが、そんな面影はもはやどこにもありはしない。

 かたや毛深い毛むくじゃらの二本の足で仁王立ちして相手を見下ろすクマに、かたや四つん這いでうずくまる、こちらも毛むくじゃらでなんとも正体が知れない何かしらだ。

 力なくがっくりとうなだれているからこの顔つきがまだ定かではない。双方、見た目がケダモノで身体中毛だらけなのは同じだが、二体のバケモノたちはそれぞれが違ったカタチの衣装らしきをその身にまとっていた。

 それがまた異様さに拍車をかけているのだが、見ようによっては昔の武人が身にまとう鎧のようでもあり、頑丈な見てくれのアーマーと古めかしい装束の合わさったようなかなり独特なものだ。

 相変わらず黙りこくるクマが見ている前で、畳に突っ伏すケダモノが低いうめきを発する……!

「ううっ、う、ううう~~~っ……! な、なんだ、どうなったんだ、俺、どうして……ん、なんだ、これ??」

 あまりに突然のことに恐怖と混乱から反射的に身を固くしてその場にうずくまったそのケダモノ、もとい鬼沢だ。

 それだからようやくうっすらと目を開けて、まずそこに飛び込んで来たものにさも怪訝そうにこの顔つきをしかめる。

 ちょっと前までテレビでは人気のタレントだったはず芸人さんは目の前にあった見覚えのない毛むくじゃらの何かしら、おそらくは二本の腕らしきをしげしげと見つめるのだ。

 じいっと……!

 それが誰のものなのか認識がそれとできないままに、両手をグー、パー、グー、パーさせたりして、またしばし考え込んだ。

「……えっ! え、え、え、え???」

 ギョッとして、顔面に冷や汗じみたものを浮かべたのはこの直後のことだ。顔も全体くまなく毛むくじゃらなのに、イヤな汗をかいているのが傍から見てもはっきりとわかった。

 間近で見ているクマのバケモノ、元は日下部はうんうん、わかりますよ、ときっと内心では頷いてたのだろうか。

 よって裏返った悲鳴を発する、その元は鬼沢のバケモノだ。

「なっ、なんだこれ!? これ、まさか俺か?? いやいやいやっ、そんなわけないっ! んなわけないじゃん!!」

 ブルブルと震える両腕がそれがどちらも自分のものだとはっきりとこの身体の感覚として、そこに伝わる神経がまざまざと教えてくれるのだが、感情がそれを一切拒否、頭の認識がまるで追いつかない中堅どころの芸人だ。

 わなわなと全身を震わせながら、やがてハッとした表情で、次にはおそるおそるしてその毛むくじゃらの腕でみずからの顔を触ることとあいなる……。

「……っ!!?」

 生まれてこのかた、自分の身体からは一度たりとも感じたことがない毛むくじゃらの毛皮(?)の感触とまるで見覚えのない凹凸をなす顔の造形、いわゆる動物、ケダモノのそれにいよいよ絶句してしまうおじさんだ。

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 腰を抜かして背後の畳にぺたりと尻を付けてしまう。

 見上げる視線の先に謎のクマ、茶色いバケモノがいたが、今となってはそこに一切の驚きを感じられなかった。
 もはやどうでもいいくらいだ。

 言葉もないままにうつろな視線でどこをともなく見つめてしまうが、この視界の左の端に見切れるものに自然と焦点が合う。

 太い毛玉のような、神社の坊主が晴れの日に振り回すみたいなでかい毛筆のかなり特大のヤツがヒクヒクとひくついていた。

 それだけやけに異質だが、身体の感覚がやはりそれが自分の身体の一部であることをしっかりと教えてくれた。

 そう。人間には唯一なくて、ケダモノにはあるもの――。

 それが自分の尻のあたりから生えていることを、左手でグニュッとモノを掴んでその厳然たる事実をはっきりと自覚させられるのだ。

「う、これ、シッポ……か? ウソだろ、俺のケツから太いのが伸びてるぞ? 夢だろ?? そうに違いないよ、こんなの、ありえない……! おい、日下部、こんなの、冗談だよな??」

 半ば呆然として目の前で立ち尽くすクマに問いかけるが、こちらはこちらでやはり相当にありえない見てくれをさらしてしまっている若手のお笑い芸人だ。

 あえなく真顔でそのいかつい肩をすくめるばかりである。

 その上で変になぐさめを言っても虚しいだけだろうと、おのれが言えることだけをありのままに伝えてやるのだった。

「まあ、見たままですね……! はじめはパニックするかも知れませんけど、すぐに慣れますから。日常生活においてはむしろこっちのほうが便利な場面も多々あるし、あはは。基本的に不便はないはずですよ? それにしても鬼沢さん……」

「…………」

 まったくもって理解も納得もしがたい。

 そんなただ呆然自失の体で開いた口がふさがらない先輩タレントに現状すっかりクマの見てくれした後輩が言い放つ。

「やっぱり、タヌキだったんですね? 状況からしてそうなるんじゃないかなと予想はしていたんですけど、なるほど納得です。まあでも可もなく不可もなくで、良かったんですかね。鬼沢さんの元からのキャラに置き換えてもそんなに違和感なさそうだし」

「は? 何言ってんの? タヌキって、何??」

 いまだ呆然としたさまの鬼沢だ。
 この頭の中が真っ白けなのを察して、ごそごそとみずからの懐の内に片手を突っ込むクマは、ほどなくそこから何かしらを取り出して畳に尻をつけたままのタヌキにはいと手渡してくれる。

 それを無言で無意識に受け取るタヌキは、それをそのまま目の前にかざしてぼんやりした視線を投じてしばしのフリーズ。

 渡されたのはシンプルなデザインながらにやや大きめサイズの手鏡で、でかい頭をしっかりと捉えて克明に写しだしてくれる。

 そこに写ったものが果たして何なのか、それが果たして誰なのかを理解するのにちょっとだけまた間を要して、直後、とどめを刺されるかのような衝撃に見舞われるテレビタレントだ。

 ↑鬼沢が変化した姿のイメージです。タヌキですね♡
 ちなみに鬼沢自体がお笑い芸人のハ○イチのツッコミのひとがモデルなのですが、もはや原型が無くなっています(^^;)
OpenSeaでNFTとしても販売中!将来有望な激安物件です♡

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「うわあっ、マジでタヌキじゃん!! タヌキそのものじゃんっ!! ここに写ってるの俺か!? ウソだって!! いいや、認めない、認めないぞっ、こんなのでたらめに決まってる! ……やっぱりタヌキだあああああああ!!?」

 一心不乱に頭を振り乱して、一度強く目をつむって再び直視した鏡には、やはりおなじケダモノの顔面が写されていたのについには絶叫するタレントさんだ。もとい、元タレントさんか?

 いっそ失禁しててもおかしくないようなうろたえぶりでおまけこの世の終わりみたいな絶望的な声音を発するのだった。

「ああ、終わっちゃったよ、俺のタレント生命……! こんなんじゃどこにも顔なんて出せやしない。まずBPOが黙ってないよ。BPOってなんだっけ? そうでなくともPTAとか、なんかしらの振興会とか、動物愛護団体とか、おい、タヌキに人権ってあるのか??」

 完全に頭の中がパニックして思考がごちゃ混ぜになっている鬼沢に、見た目のほほんとした面構えのどでかいクマが右手を差し出してくる。
 のほほんとしたさまであっけらかんと言うのだった。

「まあまあ、そんなに落胆しないでください。何事も慣れですから。ぶっちゃけ嘆いているヒマなんてありませんし。むしろそれありきのお笑い芸人だし、タレント活動だって割り切ってしまえばそれでいいんですよ。このおれをはじめとして仲間は他にもいますから」

「……仲間って、俺も家族もこんなの想定外過ぎるよ。親や学校になんて説明するんだ? あとそういうの噂では聞いたりするけど、おまえ以外にはゾンビを公言してるヤツ、見たことないし。お先真っ暗じゃないか……!」

 がっくりとうなだれるその乾いた鼻先に、毛むくじゃらでごつい右手を突き出して笑うクマ、日下部はいつまでも尻餅ついたままのタヌキの鬼沢に立ち上がるように促しながらに言う。

「大丈夫です。国がうまいことサポートしてくれます。でないと世の中が乱れちゃいますからね。それよりももっと良く今の鬼沢さんの姿を見せてくださいよ。全身がタヌキに化けて、身につけているものもすっかり変わっているじゃないですか? 己を知り相手をしらば百選危うからずっていう通り、まずは自分のことをわからないことにはこの先やっていけませんよ? ついでにおれのことも見てください。お互い見せ合いっこですね。その後にいよいよ実践てことで……」

「実践? おまえ、以前と比べてだいぶ落ち着いてきたよな? 昔はそんなんじゃなかったじゃん! いいよ、自分で立つから。ほらっ、と……わ、なんだこの慣れないカンジの景色、ひょっとして背が高くなってるのか? あれ、でもまだおまえのほうがちょっと高いの??」

「クマよりでかいタヌキなんて違和感しかないでしょう。確かにおれのほうが若干だけ高いみたいですね? 鬼沢さんは、ふうん、はじめてにしてはちゃんとそれなりのカッコしてますよね? その時の状況によっては多少の誤差が出るかもしれないですけど、たぶん平均的な鬼沢さんの変化態(モード)、いわゆるゾンビ化した状態がこれなわけで……」

「ゾンビ……! て、あれ、なんで俺こんな格好してるんだ? 俺のお気に入りの私服が影も形もなくなっちゃったじゃないか? こんなヘンチクリンな衣装、俺のスタイリストは絶対に用意しないよ! というかこれって、服なのか??」

 まったく見覚えがないみずからの出で立ちに改めて意識が向いて、目をパチクリするばかりのタヌキはひたすらに首を傾げる。
 すると間近で向かい合うクマがしたり顔して言うのだった。

「スタイリストさんなんていないじゃないですか。間違いなく鬼沢さんの服、装束ですよ、それって。特殊な見た目をしているけど、そもそもで今まで来ていた服はサイズ的に無理があるじゃないですか? さっきのアイテム、X-NFTと同様の原理で物質が変化したユニフォーム版の神具楽(カグラ)だと思ってもらえばいいんですよ。これがおれたちにとっての正式な仕事着みたいなもんですから」

「うう、さっぱりわからないよ。ごめん、俺さっきからおまえが言ってることの半分もわかってないと思う。俺がさっきまで着ていた私服が、俺がこんなタヌキに、これタヌキなんだよな? なんか納得いかないけど、タヌキってあたりに、とにかくタヌキになったのと一緒に服もドロンって化けたってことなのか? あれ、俺、いま何を言ってるんだ??」

 自分の口から出た台詞に自分で困惑、げんなりしたさまで左右の眉をひそめる鬼沢に、若干の苦笑いみたいなものをそのキバが見える口元に浮かべる日下部は、こくりとうなずく。

「ちゃんと理解できてますよ。鬼沢さん。ついでにその衣装の仕様だとかもじぶんであれこれ探ってきちんと理解しておいてくださいね。ひょっとしたら意外な機能や能力があるかも知れませんよ? 昔からひとを化かすっていうタヌキだから、なおさらじゃないんですかね? 腰の左右に付いてる大きなポーチみたいなの、それっていかにも意味ありげだし……!」

「ポーチ? あ、これのことか、これって袋なのか? モノが入れられるみたいな?? なんか邪魔なカンジだよな、どっちかひとつでいいのに! 番組で用意された衣装だったら良くできてるけど、なんかビミョーだ。でも子供受けとかはするのかな? 俺、これからはよりご家庭の主婦層の支持とか人気が欲しいから、これってかなり重要なんだよな。子供がケガするような無骨な突起とかはないほうがいい! あれ、そう言うおまえはおまえでやっぱりおかしなカッコしてるよな、んんっ……」

「鬼沢さん、今さら主婦層人気なんて狙っているんですか? 鬼沢さんのところのアゲオンのファンの母体って、たいていは若めの独身男性層ぐらいに思ってましたけど。あんまり女子受けはしない芸風に見えるし……なんですか?」

 しげしげとみずからの格好を眺め回してから、次に目の前に仁王立ちする相手の出で立ちにまじまじと注目する、そのタヌキのおじさんの視線に若干気圧されながら太い首を傾げるクマだ。

 すると毛むくじゃらのタヌキは渡された手鏡を元の主に返しながら、何やらどっちらけるようなことを真顔でぬかしてくれる。

「日下部、おまえのそのカッコってさ、なんかダサくない?」

「は?」

「いや、ダサいだろう! 全体的に色味が暗いし、デザインももっさりとしてどこにも愛嬌が無いっていうか、デザイナーの意図するところがさっぱりわからないもん。俺のとは雲泥の差だ。絶対売れないだろ、そんなノーコンセプトな出で立ちの芸人!」

「はい? コンセプトは関係ないんじゃないですか? デザイナーなんていないし。失礼しちゃうな、もとより鬼沢さんのと大差ないと思いますよ。これって本人の気質、ゾンビの個体差に応じて実体化するものですから、まさしく状況に応じたベストなカタチなんですよ。変ないちゃもんつけないでください。芸人だったらむしろ悪目立ちして一発屋くらいは狙えますから」

「どうかな~? とにかく俺はないと思う。ダサいもん。子供が受け付けないって、なんか気色悪いもんな! 変質者が不気味な笑みを浮かべているように見えるぞ、おまえのその服の模様? あるいは悪質なピエロ??」

「ニコちゃんマークに見えるでしょう? 心理的に相手に不信感を抱かせないためのある種の擬態みたいなものだとおれは理解してますよ。誰にでも受け入れられる完璧なデザインです。ま、ふつうの人間には見えないんですけど、このカッコ自体は……」

「は? 見えないって何が? こんなにでかくて毛むくじゃらでむさ苦しいんだから、見えないわけがないだろう?? 俺もひとのことあんまり言えないけど、おまえは100メートル先からだって丸わかりだよ。みんなこぞって逃げていくだろ」

「そんなことないです。じゃあ試してみますか、実践で? 実際に外に出てみればわかりますよ。回りの反応ってヤツが……!」

「は? このカッコで?? できるわけないだろって、おい、何する気だ? ちょっと、そのポーズって、まさかさっきの……」

 利き手を腰だめに構えて意識をそこに集中するようなそぶりをする目の前のクマに、ちょっと危機感を感じてのけ反るタヌキ。

「はい。このおれの後に付いて来てください。これから実践に入りますので。まずは外に出てからですね、ということで、んん、伸びろ、如意棒……っ!!」

「あ、え、わあっ、ちょっと待って、まさか、壁をぶち破って無理矢理この外に放り出すつもりかっ!? そんなむちゃくちゃ、わああああああああああああああああっっっ!!!?」

「いいえ、壁ではなくて、窓です! 回りにひとはいないように配慮してありますから、問題ありませんよ。そうれっ!!!」

 派手なガラスの割れる音とおじさんの悲鳴を残して、がらんとした楽屋にはそれきりに人の気配が一切しなくなった。

 ぽつんと取り残された私物のバッグがそこにはあるだけだ。

 混迷を深める二匹の魔物、ゾンビたちの消息を知る手がかりはどこにもない。この瞬間を境にひとの感覚が及ばない未知の領域へとお笑い芸人たちの命運は転じるのだった。

                次回に続く……!

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「オフィシャル・ゾンビ」⑤

  オフィシャル・ゾンビ
  ーOfficial Zombieー

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 ※第一話はこちら↓↓

-さいしょのおはなしの、つづきの4-


 カポッ……!

 目の前にほらと示されたのは、例のあの金色の輪っかだ。

 これをそのままこのみずからのまあるい坊主頭にスポンとはめられた中堅どころのテレビタレントは、はじめぽかんとしたさまで目の前の何食わぬさまのバケモノ、その実は後輩のお笑い芸人である日下部(くさかべ)らしきを見上げる。

 すると見れば見るほどにいかつい異形のバケモノは、もはや当たり前みたいにその場にいてくれるのだが、内心でもやもやしたものが渦巻く鬼沢は困惑したさまでもようやく聞いた。

「は……なに、コレ?」

 サイズがぴたりで計ったみたいにジャストフィットする冷たい感触に、状況はそれと理解できるが、この意味がまったくもって理解ができないと目で訴えかける。

 相手のクマ(?)は知った風な顔してうなずいてくれた。

「はい。特典のX-NFT、説明するのは難しいので今は省きますけどの検出作業です。このおれの輪っか、通称「金魂環(キンコンカン)」はひとの、もといゾンビの隠された能力を現実に導き出すちからがあるんです。はは、便利ですよね? このおれ自身に限らず、こうして他人に対しても有効ってあたり……!」

「は? さっぱりわかんないんだけど?? おまえが言ってることちんぷんかんぷんで、こんなんじゃ俺どうにもできやしないよ。なあ、あと何より今のこの俺のありさまって、傍から見たらかなりお間抜けなんじゃないのか?」

 怪訝も怪訝の顔つきで見上げてくる鬼沢に、クマの日下部はちょっとだけ左右の肩をすくめてからそのくせ平然と受け答える。

「ああ、まあ、大丈夫ですよ。隠しカメラなんてどこにもありませんから。あとお間抜けな姿の鬼沢さんより、まずはこのおれに視線が釘付けになるんじゃないですか? だから制限かけてるわけでもあって、機密はちゃんと保持されてますから。いかに鬼沢さんがお間抜けなカッコしてても」

「どの口が言うんだよ? で、だからこれで何がどうなるんだ? そもそも特典特典て、俺、別にそんなの欲しくないんだけど」

 完全に覚めたまなざしで言うのに、こちらも覚めた目で見返すクマはマイペースなさまをいっかなに崩さない。

「欲しい欲しくないに限らずに、ゾンビたる者ひとつは持っていてしかるべきものですよ。特にオフィシャルに限っては、それが何よりの証明になるものですから? 個人個人でまるで違うものですから、どんなものかはそれこそが”ガチャ”でピンからキリまでさまざまなんですけど……ちょっとドキドキしますね!」

「全然。俺はまったくときめかない。まず意味がわらいないし、そのエックス、えー、なんちゃら、だったっけか?」

「んーと、あ、”魂魄霊子顕現化錬金合成物質”……だったかな? とにかく”X-NFT”とだけ覚えておいてくれれば問題ありません。そろそろかな? 頭のキンコンカン、輪っかが点滅してるでしょう。それってアイテムの錬金合成ができてるサインですよ。ちなみにぼくらの業界用語、いわゆる隠語ってヤツではこれを”神具羅”、カグラとも言うんですけど」

「おい、ほんとにさっぱりわからないぞ。でも確かに、俺の頭、ピカピカなってるのか? でもできてるって、どこにも何もないじゃないか? まさかどっかから宅配で送られてきたりするのか、それって??」

「無理です。たとえ武装したアマゾンやウーバーイーツでも入って来られないくらいに厳重な警戒態勢下ですから、ここって。それよりも身体のどこかしらに異変とか、感じないんですか、鬼沢さん? おれは感じてますけど、ほのかな気配、みたいな?」

「武装したアマゾンの配達員なんて見たことあるのか? 異変て、頭がピカピカなってる以外は何も変わらないだろう? うざいな! もう取ってもいいか、この頭の輪っか、ん……!」

 頭の上のコブでも見るように険しくした視線を上向けていた鬼沢は、そこから不意にこの足下へと目線を急降下させる。

 はたと小首を傾げながらに何かしらの変化らしきに気が付いたらしい。それだからこの足下から徐々に視線を上げていき、みずからの腰回りでぴたりと目線とこの身動きが止まる。

 怪訝なさまで、自身の地味な灰色のスラックスの尻の部分、おそらくは後ろポケットへとこの手を潜らせるのだ。

 ただ無言でそのさまを見守る日下部、クマのバケモノがちょっと緊張したさまでごくりと息を飲むのが伝わる。

 そんなに注目されてしまうとみずからの挙動もやや緊張してぎこちなくなる見た目よりメンタル繊細な坊主は、途中からやや困惑顔しておのれの利き手でつまみ出したものを目の前にかざす。

 直後、かすかな沈黙がその場を支配した。

「……あれ、これって……??」

 何の変哲もない白い無地のハンカチがそこにはあった。

 きれいにアイロンがかけられて折り畳まれたものがだ。

「それは……鬼沢さんの私物ですか?」

 全身モサモサとした剛毛の毛だらけのクマのバケモノが聞いてくるのに、さっぱりした丸坊主のこやじが答える。

「そうだよ。当たり前だろう、ひとの物のはずがないじゃん。て言うか、なんだよ、コレ! まさかこんなのが特典だなんて言いやしないよな?? あと頭のこの邪魔なの、いい加減さっさと取ってくれ!」

「ああ、まだそのままにしておいてください。その輪っかの反応からしたら、たぶんそれに間違いないですから。と言うことは鬼沢さんのそれって、おれみたいに疑似物体を現出させる具現化型なんかではなくて、もとからあるものを変質変化させる、変化型なんですかね? いいからもっとよく見てくださいよ、それってほんとにただのハンカチですか?」

 なにやらひとりでしきりと納得しているさまのクマに、まるで納得がいかないおじさん芸人は憮然としたさまだ。
 そんなものだから手元のハンカチをぞんざいに振り乱してくれる。良く見るも何もただのハンカチだろうと言いかけたその口が唖然と開かれたままになっていた。

「だからっ、見たまんまだろうっ……! え、あれ、あ??」

 サイズで言ったらたかが知れているはずのハンカチが、だがこれをいざ開いてみたら結構な大きさで、胸の高さから腰を超えて足下までも届くのにギョッと目を見開いてしまう。

 ハンカチと言うよりはいっそシーツに近いくらいの布面積だ。

「な、なんだコレ!? ハンカチだったよな? シーツになってる?? でもこんなの俺のうちにないぞ、あれ、まだ大きくなってる? なんだこれ??」

 ひどい困惑顔で見上げるのに、見下ろすクマはやはり何食わぬさまで思案顔だ。

「……はい。鬼沢さんの特典ですね。まぎれもなく。その効果や使い方は自分で研究、会得していってください。実戦的な能力だったらいいですね。特典はひとつとは限らないし、変わることもありますから。それにつき相談には乗りますが、あくまで自己責任です。あと必ずしも申請する義務はありません。ここらへん、適当なウソでもわかりませんからね?」

「え、いや、だって? なにがなんだか、ほんとにシーツになっちゃったじゃん! こんなのがズボンのポッケに入ってたのか? なんか気持ち悪いな!! いらないよこんなのっ……あれ?」

 気味悪がって手放した途端に畳の上でシュルシュルと元のサイズにもどるハンカチだ。
 目がひたすら点になるお笑い芸人に、同じく芸人にして今は正体不明のクマのバケモノが納得顔で言った。

「はい。やっぱり鬼沢さんの能力ですね。ハンカチ自体が特典なのではなくて、鬼沢さんが身につけたものが特典化、つまりはX-NFT化するってことです。まさしく変化型かと。もちろんなんでもってわけではなくて、この場合はうすっぺらい布状のものなんですかね、おそらくは? 手放すとただちに効果がなくなるあたりは、術者本人の唾液や血液を付けることでより効果を持続させることができるかも知れないです。このおれの推測では……」

「は? は?? は??? いや、悪いけどさっぱりわかんない……! 俺、一体全体、どうなっちゃったの??」

「心中お察ししますが、慣れてもらうしかないです。あと、これからが本番ですから、いよいよ本日のメインイベントですよ」

 真顔で言ってくれるクマに、内心の焦燥があらわな中堅タレントはこの表情が血の気の失せた紫から興奮した赤へと変わる。

「はっ、なにが? は、あれ、なんだ、なんだか身体が……あっつくなってきてる? 熱があるみたいな、頭だけじゃなくて、ほんとに身体全体がっ、なんだこれ? コワイコワイっ!!」

「落ち着いてください。あんまりパニクった状態でゾンビ化しちゃうとそのまま闇落ちしちゃうかも知れないので……! 熱いのはそれすなわち身体が変化しているためで、ごく自然な反応ですから。すぐに元に戻りますよ。その代わりに見た目がすっかり変わってしまうんですけど、それもまた自然の流れですから」

「あっ、頭が痛い! 取ってくれコレ!! みんなコイツのせいなんだろうっ、おおいっ、日下部!!」

「よくわかってらっしゃいますね? 隠されたゾンビのちからを導き出すってのは、姿そのものを顕現化させることでもあるんです。おれがアンバサダーの仲介役を任命されている一番の理由ですね! 変化したら自然と外れますよ。もう用がないですから」

「おお、おいっ、うお、あ、あああああっ、ああああああ!!」

 苦しげなうめきを上げて身もだえする鬼沢はついにはその場にがっくりと両膝を付いてしまう。

 がくんと畳に突っ伏すかたちで頭を垂れた頭頂部から金色の輪っかが抜け落ちるが、その瞬間にひときわに強い輝きを放って畳に落ちる前にそれ自体は空気へと溶けていくのだった。

 そのまばゆい輝きに働き盛りのおじさん芸人が包まれて、光りが消えた後に残されていのは、それはそれまでとは似ても似つかないまったく別の何者かだった。

 一言で言ってしまえば、もはや人間ではない。

 かくてここ一番の沈黙がその場を長らく支配するのだが、目をまん丸くしてまじまじと見つめるクマのバケモノに、おそるおそるにこの顔を上げる毛むくじゃらの何者かは、みずからの異変にしばし理解が追い付かなかったのだろう。

 まず人間のそれとは明らかに違ったみずからの両手の異様なありさまに絶句して、すぐ目の前で固唾を飲んで見守るクマと互いの目線を見合わせる。

 ぼんやりしたさまのクマは、言葉を失うその元先輩芸人の何者か、この場に出現したまた新たなるバケモノに当たり障りのない感じで言ってくれた。

「ようこそ、鬼沢さん。こちら側の世界に……!」

 これに全身を小刻みに震わせる鬼沢らしきは、ただちに全身の毛を逆立てて喉から干上がった悲鳴を発した。

「な、なっ、な、なな、なあんだこれぇええええええっっ!?」

 日常を粉みじんに吹き飛ばす混迷と混乱はその絶頂に達したのだった。


            次回に続く……!



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お笑い コント スピンオフ 寄せキャラ

「寄せキャラ」であそぼ♡ 漫才師「ダイ〇ン」がモデルのクマキャラ・ダッツ&ザニーでコント! お題「ゾンビ」「ブサイク」

いざデザインしたまではいいものの、まったく出番が回ってこないキャラクターに光を当てるべく、ノベルとはまったく関係のないインチキコントを作っていきます(^^)/

ちなみに、「寄せキャラ」は以下のものがイメージです♡

で、実際に今回登場する、漫才師のお笑いコンビ、「ダ〇アン」の寄せキャラが、こんなカンジ…!

↑「ダイ〇ン」のボケ担当?のひとをモデルにしています笑

↑「ダイ〇ン」のツッコミ担当?のひとをモデルにしています笑

では実際に、このインチキ・クマキャラのコンビでコントを作ってみよう(^^)/

はじめ 立ち位置、マイクを中心に、正面から見て、ザニーが左手、ダッツが右手

ダッツ「ども、ダッツで~す!」

ザニー「ザニーですぅ」

ダッツ「ふたりあわせて、「ダイ〇ン」で~す! まったく似てないで~す! あしからずぅ。てか、似てへんどころかまったくのベツモンやん! こんなんただのクマのバケモンやん!!」

ザニー「しゃあないやろ。そういうインチキノベルのキャラクターなんやから、わしら。あと作者が「似顔絵」描くのヘタクソやから、はなからどうにもならへん」

ダッツ「しょうもな! 少しは頑張れよ。前にアニメのキャラ演じたことあったけど、あれと比べてもワケわからへんやん! なんでこないなブッサイクなクマキャラにされなあかんねん!!」

ザニー「ええやろ。しょせんはインチキなんやから。他にもいろいろとおったけど、どれもみんな無茶苦茶やったからな? まず似てるヤツがひとりもおらへんかった」

ダッツ「そうやった! 誰がおったっけ? 名前はけっこう売れてるのに、まるで見た目が合致しないお笑いコンビのブサイクキャラ、えっと……」

ザニー「ピンもおったやろ? まずはラジオの有名パーソナリティがモデルのブサイクなでかいクマさんと、昔はコンビやったけど今はピンで活躍してる、ベテランのコメンテーターとか?」

ダッツ「あ、ここの頭で出てきた白いクマキャラのおじさんかいな! ビミョーやよな? あと若手もおったやろ。わしらみたいな中堅どころよりもフレッシュな、第七世代っちゅうやつら!」

ザニー「ああ、おったな? イヌキャラの「宮下〇薙」と、「見取〇図」とか? どっちも似てへんどころかまるきりベツモノのやつらが。あと「ハラ〇チ」とかも、ブッサイクなネコとゴリラにされておったような? あんなもん訴えられるやろ」

ダッツ「あれな! マジでシャレにならへんやん。なんであないにブッサイクにされてんねん。仮にもネコやろ? おまけに気色の悪いガンマンスタイルで、あんなんはじめて見たわ!!」

ザニー「ええやろ。ノベルではわしらとは絡まんみたいやし。ちなみにわしら、戦闘ロボのパイロットで、空中戦が得意なちゃきちゃきのベテランコンビらしいで?」

ダッツ「なんで? 「ダ〇アン」も「漫才師」もなんも関係あらへんやん! しょうもな!!」

ザニー「ああ、おまけにふたりともひどい船酔いしてもうて、はじめはまったく使い物にならへんらしい」

ダッツ「なんで!? うそやろっ、わしらのこと馬鹿にしすぎやて!! 東京やのうて関西のわしらを見て!!」

ザニー「ええやろ。しょせんはインチキなんやし。ここで言うてもしゃあない。ほな、ぼちぼちはじめようか」

ダッツ「やんの? わしらでコント?? できんのかいな??」

ザニー「やるしかあらへんやろ。そういう記事になってもうてるんやから。確かお題は、「ゾンビ」と「ブサイク」やったよな」

ダッツ「おおいっ、こんなブッサイクなクマキャラにしといて、完全にイジッとるやん! ほんまにしょうもな!!」

 本文中のキャラクターに興味がありしまたら、上記のリンクからご覧になってください(^^)

コント 「ゾンビ」~ブサイクは世界を救う?~

ザニー「まずはやる前に立ち位置、そっちと変わってええか?」

ダッツ「なんで? アホちゃう? このままでええやん。ネタ書いてるあほんだらのおやじ、マジでわしらのこと知らなさすぎ! 立ち位置まで変わってもうたら、ほんまに誰が何やっとるんだかわからへんようになってまうやん!!」

ザニー「はじめからわからへんやろ? こないなもん。そっちのほうが構図としてやりやすいし、わかりやすいっちゅうはなしやったんだが、まあええわ。ほな入るで、よろしゅう…!!」

 一拍あけて、マイクからザニーが少し後退、ダッツはそのままの立ち位置で、焦ったさまであたりを見回し始める。
 (コントに突入!)  マイクは回収?

ダッツ「はあっ、はあ! えらい世界になってもうた! どこもかしこもゾンビだらけやんっ、わし、こないな世界で生き残っていけるんかいな? しかもたったのひとりきりで!!」

 ひどく狼狽、焦ったさまであたりを見回すが、やがてこの左手、ザニーがいる方を見て異変を感知。ごくりと息を飲む…!

ダッツ「ああっ、誰かおる! まだここにも生き残りがおったんかいな! どないしよ、ああ、あかん! そこまでゾンビが来ておるやん!! あかんっ、囲まれてもうた!! あれじゃ逃げ切れへんで、ああっ、あ……!」

 ひどくくたびれたさまで中腰のザニーが、ギョッとしたさまで辺りを見回すと必死のさまであがきもがく。ガクガクと震えながらやがて絶叫!!

ザニー「うあああああああっっっ!!!」

ダッツ「あかん! 襲われてもうた!! すまんっ、救われへんかたった! わしが非力やさかい、またひとり犠牲になってもうた、この街もうゾンビだらけや!! すんまへんっ……あれ?」

 地面に倒れ伏すザニーを見ながら、微妙な違和感に気付く。
 すると倒れた状態からいきなりすっくと立ち上がるザニーに、ビクっとひるむ、ダッツ。

ザニー「なんやっ、くそおっ!! またおんなじかいなっ、どいつもこいつも無駄に群がりおって、まるで意味あらへんやん!」

ダッツ「あぁれぇ、襲われてたんちゃうん? しっかり何カ所も噛まれておって、なのになんであないにピンピンしてはるの?? ふしぎ~!」

 ちょっとおっかなびっくりに近づく。するとその直後にザニーが放った一言にビックリ仰天!!

ザニー「噛まれただけ! ただ痛い思いをしただけ!! 腐った死体どもにもみくちゃにされて、散々にもてあそばれたのに、ぜんっぜんゾンビになられへんやん、このわし!! 最悪や!!!」

ダッツ「ええ~!! どういうこと!? 噛まれてもゾンビにならへんヤツなんておんの?? 体質?? ウィルス効かへんの?? いやいやっ、だったらすごいやん!!」

 ダッツのぶったまげたセリフに、そこで初めてその存在に気付いたらしいザニー。冷め切った表情でジロリと振り返ると、しごく冷め切った調子で返す。

ザニー「……は、何が凄いん? 噛まれてもゾンビになられへんのやぞ。地獄やろ! 周りはどこもかしこも何万と動く死体がおるっちゅうのに、こっちはただのひとりっきりで噛まれ放題や!! こないにむごい地獄がどこにある??」

ダッツ「うっ! でも、でもゾンビにならへんのやろ? すっごいやん!! ひょっとしたら世界を救うことができるかも知れへんやん、その、特殊な体質があれば。噛まれて感染しても、しっかりと抗体があるっちゅうことや! それさえあれば……」

ザニー「新種のウィルスかも知れへんやろ? 何にしても今さらや。こないになってもうた世界をひとりでどないできるっちゅうんや。噛まれても効かないだけで、攻撃はできへんのやさかい」

ダッツ「確かに、それはしんどいな! ん、でも、でもやで、ゾンビにならへん抗体、ワクチンっちゅうやつをおのれの身体からみんなに分けることができたら、わしら生き残り、人類が滅ぶっちゅうようなことは最悪防げるかも知れへんやん? 希望はある!」

ザニー「わからへんやろ? じゃあおんどれを噛んでみてためしたろか? それでじぶんがゾンビになられへんかったら、めでたくこっちの仲間入りや! 心強いわあ、やってることゾンビとなんら変わらへんけど」

ダッツ、「うっ、あえてこの身をさらして襲われならへんの? しんどいわぁ、あとその前におっさんに噛まれるのも気持ち悪いし。ゾンビにならへんでも噛まれ所が悪ければ失血死してまうこともありえるやん! めちゃめちゃ肉をえぐられて? 痛いどころですまへんやん」

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