カテゴリー
DigitalIllustration NFTart NFTartist Novel オリジナルノベル Official Zombie OfficialZombie/オフィシャル・ゾンビ OpenSeaartist SF小説 Uncategorized オフィシャル・ゾンビ ファンタジーノベル ワードプレス

「オフィシャル・ゾンビ」15

オフィシャル・ゾンビ
ーOfficial Zombieー

オフィシャル・ゾンビ 15

※↓鬼沢や日下部たちが突入したビルのフロアマップです。
  オフィスビル「ベンチャーズ・ヒルズ」フロアマップ

※「ニコニコ生放送」で創作ライブやってま~す♡

オフィシャル・ゾンビ 15


 かつての世間においては、あくまで空想上の存在としての正体もなく動き回る死体のことを〝ゾンビ〟と称したのだろう。

 しかしながら昨今では、これがおよそ現実のものとして実在し、かつまたいくつもの異なる視点と違った意味合いが重なるものとして認識されつつあるのだった。

 端的に言ってしまうのならば、それは怪物、バケモノなのか?

 いつからか、人間でありながら、ひとならざるちから(能力)を持つものすべてをそれと称するようになったこの世界である。

 だからこそ、それはただの絵空事ではなくて厳然たる事実として、今この時もいくつかの人間ならざるもの、〝亜人種〟たちの目の前に立ちはだかるのだ。

 そして真実、図らずもその渦中にその身を置くことととなったお笑い芸人たちが、ここにいた――。




  有無もなく開け放たれた鉄製の扉の奥には、そこにはおよそ思いも寄らないような現実が待ち構えていた。

 そこにみずからの足を踏み入れるタヌキ――世間的には人気お笑いタレントとして知られる鬼沢は、まずギョッとして目にしたその部屋のそれはただごとではないありさまにひたすら唖然となる。

 先頭に立つ見てくれクマの日下部は、だがこれにいささかも動ずることなく冷静に辺りを見回すのだが、この背中であわあわとしたセリフをぶちまける、それは動揺すること著しいタヌキだ。

「あれ、なんだ、ここは明かりが付いているんだな? でもなんか暗くないか? 前来た時はもっと明るかったはずだぞ、この部屋! それになんか雰囲気もやけに怪しい、てか、あからさまにおかしなことになってないか?? ぜったいヤバイだろう!!」

 ドアをくぐってまずでかいクマの背中越しに辺りをきょろきょろと見回して、次にこの隣にまで進み出るタヌキは、やがて照明が灯る天井を見上げると、いぶかしげにこの表情を曇らせる。

 険しい顔の鼻先をヒクヒクとひくつかせながら、身体中の毛が逆立っているのを自分でもそれと意識していた。

「ん、なんだ、あれ? 天井のあたりに黒いモヤモヤみたいなのが掛かっているじゃん! しかも全体にびっしりと! もやなのか、かすみなのか、怪しすぎるぞ、絶対におかしい!! なんか吸ったらやばい毒ガスとかじゃないのか!?」

 だから部屋が暗いのかと納得してまたあたりにこわごわとした視線を向ける鬼沢に、対するでかいクマ、もとい日下部がしれっとしたさまで応じる。

「はい。邪気がいよいよ濃くなって、この肉眼でもはっきりと確認できるくらいになってきたんですね……! 確かに普通の人間が吸ったら何かしらの実害があるんでしょうか。これは部屋の扉をきっちりと閉めておかないといけませんね?」

「あんなの絶対にヤバイだろ! 俺も吸いたくないもんっ、なんか雰囲気悪すぎて息苦しくなってきたよ、こんなの見るのはじめてだ! 前はとっても活気があったのに、今はひとが死んだみたいに静かだし、誰もいないのか? そうだ、こんな悪い空気の場所にひとなんかいられないだろ??」

 戦々恐々として身体を震わせる鬼沢に、だがオフィシャルのゾンビのアンバサダーとしての経験が長い日下部は、あくまで平然たるさまだ。

 おまけなにほどでもないとうそぶいてくれる。

「でも本当に濃い瘴気は、もっと真っ黒くて、むしろ天井ではなくてこの床に落ちてたまるんですよ? 知りませんでしたか?」

「知らない!! 知るわけないじゃんっ、瘴気ってなんだよ!? ほんとにおかしなことに巻き込まれちゃってるじゃん、俺!! この先どうなるんだよ? まさか本気でここの社長さんとバトルなんかするわけ? このカッコで!?」

 しまいには頭を抱えて身もだえるタヌキに、隣でひどく白けたさまのクマだったが、そこにやがてまた背後からのっそりと出てくる気配が、場にそぐわないようなのんびりした言葉を発した。

 ちなみに気配はふたつあった。

「なんや、今さら? 鬼沢くん、そないなさまじゃこの先やっていけへんで? もう戦いの最中やさかい、ちゃんと集中せな!」

 出てくるなりにそう関西弁で注意されて、自然とそちらに顔を向けるタヌキの表情がただちにぴきりと固まった。

「えっ、誰? なんかヘンなのがいるっ!? コワイコワイっ、日下部、なんか見るからに怪しいヤツがいるぞ!! いつの間にどこから出て来たんだよ、こんなブサイクなバケモノ!?」

 相手の姿を見るなり飛び上がって驚く鬼沢に、当の本人、バケモノ呼ばわりされた何者かがただちに不機嫌にこの声を荒げる。

「誰がバケモノやっ!! 見てわかるやろ、バイソンの東田や! ちょっと見てくれが変わったからゆうてそないにビビることあらへんやろ、そこに相方もおるんやで? あとそないなふざけた見てくれしてるきみに言われたないて!!」

「あ、バイソンさん? わ、もう1匹いる! おんなじようなヤツが!? て、こっちが東田さんなら、そっちのは相方の津川さん?? これってあのバイソンさんたちが変身した姿なの? マジで? なんか思ってたのと全然違うんですけど!!」


 もともとの身体つきの違いか?

 ゾンビと化してもあちらのほうがやはり背丈が低く、おまけじぶんたちとは似ても似つかない種類のいかついお化けと化したベテラン漫才コンビを、心底、おっかなびっくりに見つめるタヌキだった。

 およそ想定外もはなはだしいその見てくれに、内心どころか思い切り面食らってしまう。ブルブル震える太いシッポが背後でピンと立ち上がっていた。

 かくして鬼沢のようなタヌキやクマのような哺乳類系のケモノのたぐいとは、まったく別のカテゴリーに族する動物の特徴があらわな正体をさらすおじさん芸人たちだ。

 それだからかこの後輩芸人の露骨なまでの驚きようにあって、ややむくれたさまでモノを申すのだった。

「まったく、失礼な子やな! こないにキュートな見てくれのゾンビさん、他にはそうそうおらへんやろ? かと言うてこのほっこりほのぼのとした見た目にダマされると痛い目みるで?」

「ほんまやんな! あのコバヤの兄さんあたりと比べたら天と地ほども見てくれちゃうやんけ? こないに控え目でかつ重厚感がありながら、そこはかとないかわいげがあっておまけおとなしい見てくれのゾンビなんちゅうもん、わいら以外にはどこにもいてへんて!!」

「うう、確かに、いないような、いるような、どうにもコメントしがたい姿だけど、ゾンビってのは何でもありなのか??」

 そんな左右から詰められてうっとたじろぐ鬼沢に、横で冷めたまなざしで両者を見つめていた日下部だが、それからやはり落ち着きはらった声音で言うにはだ。

「さあ……? 確かに驚きですけど、これはこれでありなんじゃゃないですか? それに良くよく見たら、なんか愛嬌あるし」

「どこが! 気持ち悪いだけだろ? あ、じゃなくて、独特なんだよなあ……! なんかどこかで見たことあるような気もするし? そうだよ、昔から有名な、これって、つまりはアレなのか??」

 ベテランの先輩芸人コンビが化けたゾンビ、得体の知れない見てくれした存在を上から下までねめ回して、はじめなんか言いづらそうに言いよどむタヌキだが、意を決してズバリと言うのだ。

「カッパ! そうだ、あの河童なんだよな? 見た目の特徴からしたらば! ふたりしてこんなどでかい甲羅までご丁寧に背負っちゃって、ほんとにいたんだなあ、カッパって……!!」

 ひとりで納得する後輩芸人にベテランが一斉に食らいついた。

「どこがカッパやねん! おいこのくされダヌキ、よう見てみい、こないに立派な見てくれのカッパがどこの世界におる?」

「堪忍してえや! オニちゃん、わしら頭に皿なんて載っけておらへんやんけ? せやのうてもあんなひょろっひょろの貧弱なもんと一緒にされたないわ! 川にもおらへんし、この手に水かきなんちゅうもんもあらへんのやでぇ?」

「え、ちがうの?? でもそれ以外で言ったら……!」

 ひどく困惑した顔を日下部に向けるのに、だがしかし日頃からテンションが低いクマときたらば、きょとんとしたさまでこの太い首を傾げさせるばかりだ。

 なおさら困惑したさまのタヌキがまた仕方もなしに、目の前のなんだか良くわからないおかしなキャラ感が満載の先輩ゾンビたちを怪しげに見つめながらに言った。

「仮にカッパでないとしても、どっかよその国の版権キャラで、もうとっくにいたよな? こんなヤツ?? カメと何かが無理矢理に合体しちゃったみたいな、ヘンテコな生き物!! 確か、ニンジャ、ナンタラーズみたいな?? カメのくせに人間の言葉をしゃべって、やたらに素早くて、おまけに格闘技が得意なんだっけ??」

 何やらひどいぶっちゃけ発言だ。

 するとこれには言われた当のカメもどきたちが、ただちに聞き捨てがならないと全力でそれを否定する。

「ちゃうちゃう! そないなもんと一緒にせんといてや! あっちは忍者とカメ、せやけどこっちはカメはカメでも、リクガメとウミガメ! おまけに力士、由緒正しいお相撲さんとのコラボやさかい!! その証拠にこないにぶっといまわしをはいとるんやで、そやったらまったくの別もんやろ?」

「コラボっちゅうか、じぶんでもわけがわからへんのやけどな? でも手裏剣やら武器やらをつこうたりはせえへんで? そこはあくまで男らしゅうした素手の突っ張りとこの身体を張った体当たり、ぶちかましっちゅうんかの? まさしく力とちからのぶつかり合いや!!」

「ほんとにただの相撲取りじゃん! いや、でもいいのかな? なんだかんだ言い分けしてても、発想自体は完全にまるパクリじゃんこんなの!! 後で訴えらたりしない??」

「まあ、あほらしすぎて誰も相手にしてくれないんじゃないんですか? そもそもが? もっと言ってしまえば、おれたち普通のひとたちからは見えないんだから……」

 すぐ横を見ればこれまたひどいぶっちゃけ発言にあって、タヌキがひたすら目をまん丸くする。

「著作権とか完全無視なんだな! そんなのがまかり通っちゃうんだ、は~ん。でも俺、油断してたらちょっと笑っちゃうかも、こんなの、だってバイソンとか言ってるのに……!!」

 若干吹き出し加減にそれとなくふたりのゾンビ、カメの化身みたいなのを見る鬼沢は、目が合うなりにさっとこの顔を逸らす。

 憮然とした表情の先輩方を置いておいて、そこで改めてあたりの様子をうかがった。

「はあ、なんかここってすごい雰囲気が悪いのに、そのクセ何も起きないんだよな? 誰もいないのかな? さっきから何かしらちょろちょろと視界の端に見切れてはいるんだけど……?」

 ここはこの会社の社員専用のトレーニングルームであり、それ用のごついトレーニングマシーンがところ狭しとたくさん並んでいるのだが、なのにこれと言ってひとの姿が見当たらない。

 おかしな気配みたいなものはそれとなく感じてはいるのだが?

 首を傾げるタヌキに、クマがそれとなく耳打ちする。

「良く周りを見てください。ちゃんといるでしょう? これと言った敵意は感じないでしょうけど、油断はしないでくださいね」

「えっ……? ああ、やっぱりいるのか? て、なんだ??」

 視界を塞ぐいかついトレーニングマシーン越しにちらほらと見え隠れするのが、やはり人影なのだと理解する鬼沢だが、それをよくよく見てみるにつけ、またしてもぶったまげてしまう。

「なんだよっ、あれ! マジでゾンビみたいなのがいるぞ? てか、ゾンビじゃん!! 死人みたいな顔つきしたヤツが前のめりにおかしな動き方して、しかもあっちにもこっちにもたくさんいるっ!!!」

 うわっと全身総毛立つタヌキに、パッと見は全身オレンジがかった黄色の体色のリクガメ、もとい、バイソンの東田らしきが真顔で言ってくれる。

「ゾンビちゃうやろ。格好からするにはここの社員さんやないんか? みんなここの悪い空気に当てられて正気をなくしてもうて、あないなことになっとるんやろ。近づかなければこれと害はないんやが、感づかれたら確実に襲われるっちゅう、なるほど、見ようによってはゾンビやんな?」

「噛みつかれたりするんかの? ちゅうてもゾンビになるわけやないから、ただの正体をなくしてもうた人間、いわゆる狂人やな! どないする? けっこうおるで??」

 全身が真緑をしたこちらはウミガメがひと、さながら力士に取り憑いたみたいないかれた見てくれのバイソンの津川らしきが、こちらもひょうひょうと言ってのける。

 対してゾンビのアンバサダー経験の浅い鬼沢、タヌキは困惑もここにきわまったさまで声を震わせるばかりだ。

「どうすんのっ? こんなのどうにも収集がつかないじゃん! 確かにあの格好はここの保障会社の社員さんたちだれけど、ガタイがいいし、見た顔がいくつかあるし!! でもっ……」

 知人とまではいかないまでも、見知った顔の人間があんなひどいありさまになっているのと、これと己が正面切って相対しなければならない異常事態……!

 普段は平和なテレビタレントとして生活している身には、どうにも心の平静が保てない小心者だった。

 日下部、現在はでかい図体のクマが平然と言ってのける。

「障害になるのならば排除しなければなりません。相手が誰であれ、致し方がないことですから。多少のケガはやむを得ないとして、意図的に殺したりしなければとりあえずOKです」

「そういうこっちゃ! 鬼沢くんのはなしじゃ相手さんはプロのガードマンっちゅうから、ちから加減を誤ったりしなければ死んだりはせえへんのやろ? 気配を感知したものには自動的に襲いかかる、言い変えればあちらは対して思考能力がないんやから、簡単なもんや」

「えっ、でもそんな、ただの人間をこの姿でやっちゃうの? いいや、ダメだろ、テレビタレントがそんなことしちゃ!?」

 全身でのけぞるタヌキに、二本足で立つミドリガメ、もといウミガメもどきの津川が言った。

「今はタレントちゃうやんけ? そうやったとしても、あちらさんがほっといてくれへんで、話が通じへんし、もうこっちに気づいておるようやし? せや、オニちゃんがわあわあ盛んにわめきよるからまんまとひとりこっちに来ておるやん、どないする?」

「どうって、わわ、ほんとにこっちに来た! マジでゾンビみたいでおっかないんだけど、どうするの? あ、完全にイッちゃってるよ、顔つきが!! あんなの人殺しの顔だ!!」

 半ばパニックになってその場から思わず一歩後ずさる鬼沢の横から、逆に前へと一歩大きく踏み出す影があった。

 リクガメもどきの東田だ。

「しゃあないのう。せやったらここはこのぼくらの出番やろ。鬼沢くんにはいいところを残しておいてやるよって、よう見とき、見本を見せたるさかい、ほれ、こうやるんや!!」

 すぐそこまでおぼつかない足取りで近づくゾンビ、もとい生気がない糸の切れた操り人形みたいなさまの保障会社のガードマンに向けて、言うなり右のストレートを容赦なくお見舞いするリクガメと相撲取りの掛け合わせの亜人種だ。

 これをまともに真正面で食らった相手は、言葉もなく背後へと吹き飛ぶ! そうしてあわや壁に激突するかと思いきや、この手前のトレーニングマシーンの一台に背中から叩きつけられて、そこであえなくがっくりとうなだれるのだ。

 完全に行動不能に陥ったさまを見届けて、一丁上がりと利き手でガッツポーズする東田だ。

 これに泡を食った鬼沢がまたしても裏返ったわめき声を発してしまう。それがゾンビと化した周囲の人間たちを呼び寄せることになるのはすっかり失念している芸人さんだ。

「わあっ、ほんとにやっちゃった!! 死んでない? こんなのいいのか?? 俺たちタレントだぞ!? 日下部っ……!」

「いいんですよ。これが今のおれたちのお仕事ですから。問題ありません。多少は乱暴なことをしてもこの場は許されます。よっぽど現状回復が難しいようなことにでもならない限りは……」

 言いながらそれとなく先輩芸人のバイソンたちを見るクマのアンバサダーだが、あいにくと当のカメのゾンビたちはやる気も満々だった。

 凜々しい横顔を見せて、ふたりの後輩芸人たちに言ってくれる東田だ。その見た目はリクガメの甲羅を背負った相撲取りだが。

「せやからここはぼくらに任せて先に行きいや、後から必ず追いつくさかいに! こういうゴミゴミした障害物だらけの場所でも、ぼくらやったら関係ないさかいに。ほな、行こうか……!」

「おう、アレやるんか? 早速やな! ちょいと目が回ってあれなんやけど、アレやったら一網打尽にしてやれるさかい」

「えっ、何? なんか勝ってに盛り上がってるけど、なんかやるの? あと俺たちどうしたらいいの?? わけがわからないよ!!」

 慌てふためくタヌキの前で息の合った掛け合いを見せるカメたちはなにやら示し合わせてさらなる意気込みを全身にまとわせる。ほんとに意味がわからなかった。

 

ノベルとイラストは随時に更新されます!

プロット①
 ドラゴン警備保障、入り口~
 クマとタヌキにゾンビ化した日下部と鬼沢がバイソンと合流の後、目的の警備会社に乗り込む。
 暗くて人気が無い状態。受付、受付嬢が邪気にやられて倒れているのに慌てる鬼沢だが、あとの三人は知らん顔。
 営業の接客室も同様でみんな倒れているが、そこには触れずに先へと進む。

→トレーニングルーム~バトル開始!
 トレーニングルームには警備員たちが邪気に毒されて正体をなくした状態で待ち構える。これにいつの間にか変身、ゾンビ化していたバイソンの津川と東田が立ち向かう。その正体に鬼沢はビックリ仰天していろいろと騒ぎになる。
 ひどい荒技を繰り出すバイソンのコンビにまたしてもびっくりする鬼沢だが、修羅場を抜けられる裏の近道があるのを思い出し日下部と直接事務室へ。事務室では特に屈強な社員の二人組が待ち構える。さながらゴリラみたいな見てくれに驚く鬼沢だが、すんなりとこれを捕らえることに成功。技の名前でもめる。バイソンはバリケードをこさえて合流。鬼沢がそれなりにやることを知ると、その場に残ってゾンビ社員を止めることを申し出る。
 鬼沢と日下部が社長室へ突入!

カテゴリー
DigitalIllustration NFTart NFTartist Novel オリジナルノベル Official Zombie OfficialZombie/オフィシャル・ゾンビ SF小説 オフィシャル・ゾンビ お笑い コント ファンタジーノベル ライブ配信アプリ ワードプレス

「オフィシャル・ゾンビ」14

オフィシャル・ゾンビ
ーOfficial Zombieー

オフィシャル・ゾンビ 14

※↓鬼沢や日下部たちが突入したビルのフロアマップです。
  オフィスビル「ベンチャーズ・ヒルズ」フロアマップ

※「ニコニコ生放送」で創作ライブやってま~す♡

オフィシャル・ゾンビ 14


 まだ見習いではあるが、鬼沢にとってはじめてのオフィシャル・ゾンビのアンバサダーとしての仕事は、かつて番組収録のロケで訪れた個人経営の警備会社に取り憑く〝害悪〟の実態調査、ないしこの正常(清浄)化のミッションであった。

 テレビ局で落ち合った同じ顔なじみの芸人にしてアンバサダーの面々と即席のチームを組んで徒歩での移動、つつがなくこの目的地に到着。

 本人がいまだ納得がいかないままに、作戦自体はあれよあれよと実行に移されていく……!

 まさかのロッククライミングよろしくで五階建ての建物の壁を生身でよじ登って、この目標となる最上階にアプローチすると言う、ベテランのおじさん漫才師コンビと二手に分かれて、こちらはビルの正面玄関から臆面もなく堂々と内部に侵入!

 かくして一気にこの階段を目的地の五階まで駆け上がったクマとタヌキ、もとい、日下部と鬼沢だった。

 普通の人間からはその姿形が見えないのをいいことに何食わぬさまで階段からフロアに顔を出すと、そこは何故かもう真っ暗闇な状態だ。

 本来ならばまだ営業中の時間のはずなのだが……?

 階段の踊り場から一本まっすぐに続く廊下は明かりがすべて消されてしまっている。外からの夕焼けは北向きの窓からは入って来なかった。
 
 どうやら窓枠全体にそれ用のシールドが施されているらしい。

 ゾンビ化したケモノ、ないしバケモノの状態だからこの視界にさして不都合はないのだが。

 それでお互いに微妙な顔を見合わせる芸人さんたちだった。

「目的地に到着しました……! 気を引き締めていきましょう。ここからはちょっと不穏な気配を感じますので……」

「なんか真っ暗だなあ? ひょっとして、定休日だったりしてやしないか? だとしたらすごい間抜けなんだけど! わざわざ階段上ってきたからちょっと身体が熱くなってきちゃったよ、全身こんな毛だらけだから!! 誰もいないなら普通にエレベーターで来れば良かったんじゃないか??」

 鬼沢のいかにも平和ボケしたタレントさんらしいのんびりしたものの言いに、対してこちらは白けた顔で応じる日下部だ。

「いわゆるセオリーですね。エレベーターなんてヘタに使って、閉じ込められたらそれこそ目も当てられないじゃないですか? 見ての通りで、あちらはもうおれたちの存在に気づいていますから。明かりを消して気配を殺して、もう臨戦態勢ですよ……!」

「なんでわかるの? ただのお休みかもしれないじゃん??」

 あんまりピンと来ていないらしい気の抜けたタヌキに、はじめ小さなため息つくクマが、仕方もなさげに本音をぶっちゃける。

「まずはじめにここに突入したって時に、強めの〝ゴースト〟が二体いたじゃないですか? ここの玄関から入って正面のエレベーターホールのあたりに? あれです。アレが実は……」

「俺があっさりと片付けてやったけどな! 必殺のグーパンチと新技のハリセンで!! すごかったろ? あれから自分なりに特訓して、ちゃんと武器になるまで鍛え上げたんだから!! あんなのもとはただのハンカチだぞ?」

「まあ、それは認めますけど。あれから鬼沢さんなりに努力していたんですね? あとあのハリセンってのははじめて見ました」

 日下部のあまり気持ちのこもっていないようなセリフにひとりだけ得意顔して、えっへん!と胸を張るタヌキのゾンビにして先輩芸人だ。

「へっへ、コバヤさんと戦った時に偶然出したアレを改良したんだ! でもあのままだと危なすぎるだろ? いろいろ考え合わせた結果、ああなった。ハリセンなんていかにも芸人さんらしくてカッコイイじゃん! あれなら致命打になんかならないし」

「でもいざとなったら切れ味鋭いカタナのようにもできるんですよね? 弱いゴーストが相手なら、あれで十分だとしても」

「やりたくない! 俺は殺し屋じゃないんだから。それにまだアンバサダーになるだなんて言ってないし。そうだぞ、おまえが勝手に話を進めているんだからな?」

「でも結果的にそうなっていますよね? いい加減に覚悟を決めてください。さっきのゴーストを退治したのも立派なアンバサダーのお仕事なんだし。でも結果から言ってしまえば、失敗でしたね?」

「は、何が?? ちゃんとどっちも一発できれいに跡形もなくやっつけたじゃん!!」

 すっかりいい気になっていたのが思いも寄らぬ指摘をされて、不服気に反論する鬼沢に、すると日下部は真顔でこれまた思わぬ事実を言ってのける。

「だからそれが問題なんです。あれはいわゆる見張り役の囮で、敵が侵入してきたことを感知するためのトラップみたいなものだったんですよ。だから本来は触れずにスルーしてしまうのがベストでした。やっつけちゃったらおれたちの存在がバレバレですからね?」

「なんだよそれ! だったらはじめからそう言ってよ!! あんなに張り切って俺、バカみたいじゃんか!? それじゃバレちゃったからこんな真っ暗にして、むしろ待ち構えているのか、この俺たちのこと?」

 おそらくはそうです、と涼しい顔で答える日下部が化けたクマは、階段からまっすぐに続く廊下の先をじっと見やる。

 これに気まずげな顔でそちらを見やるタヌキだったが、おまけテンションがだだ下がりでブチブチと文句をたれはじめるのだ。

「ああ、あの廊下の突き当たりがこの会社の入り口なんだよな。確かこの五階のフロアをそこだけで占拠してるはずだから、いかにも羽振りがよさそうだけど、まさかこんな裏があるだなんて考えもしなかった……! それにあの社長さん、そんなひとにはちっとも見えなかったんだけどなー??」

 二手に分かれて向かっているもう一方のバイソンさんたちは大丈夫かな?と心配そうな文句もこぼす先輩のタヌキに、後輩のクマはまるで気に掛けた風もなく、さっさと暗い廊下を突き進む。

「大丈夫でしょう。おれたちよりもベテランの芸人であると同時に、手練れのゾンビのひとたちですから? この先で合流できるはずです。お互いに目的地は同じな都合? この先が入り口で、その手前にひとつ脇道がありますね?」

 この中規模なオフィス・ビルの単純な構造を考えたらば、もうおおよその想像はついているのだろうが、とりあえず後ろを振り返る日下部に、しょんぼりした浮かない面を上げる鬼沢は、それからやはり想像通りの返事を返した。

「ああ、さっきのエレベーターの入り口だろ。前のロケの時はみんなでそっちからここまで上がって来たから。でもそれ以外はそっちには何もないはずだぞ? て、あれ??」

 実際に道の半ばにあった脇道をのぞき込んで、その奥にあったエレベーターの扉を確認するふたりのゾンビたちだが、このエレベーターが何故だか起動していて、今しもその扉が開かれそうになるのに、ちょっと息を飲む……!

 ピーン……!

 到着を告げる電子音と共にその扉が左右に開かれる。

 するとそこだけが光りに満たされた内部には、どうやらふたりほどの人影らしきがあるようだった。

 それがものも言わずに外へと歩き出して迷うことも無くこちらに近づいてくるのには、ひたすらに目をまん丸くしてそのさまを見つめる鬼沢だった。ちょっと腰が引けてしまう。

「えっ、誰だ? エレベーターからこっちに来るぞ??」

 余計に緊張するが、隣の日下部が不意にふっとその緊張を緩めるのに、みずからも落ち着いて見直すことでそのふたりの人影の正体をそれと悟る。

 何のことはない。

 この建物の前で別行動を取っていたバイソンのふたりだった。

 そのおじさん芸人たちがしれっとしたさまで、今やゾンビとなったクマとタヌキの後輩芸人たちの前に再び現れる。

 思ったよりも早い再会で、おまけに意外なかたちだった。

 それだからコンビの中ではボケでネタを作る担当だと言う東田が、臆面もなくしてこちらに話しかけてくる。

「ほえ、ふたりともここにいたんかい? 先回りするつもりで、すっかり先を越されてもうたんやなあ? しかもどっちも立派なゾンビさんになってもうて、なんや見違えるわあ!」

「ほんまや! でっかいクマさんとタヌキさん! ええコンビやんけ? うらやましいわあ、見た感じごっつかわいげがあって、そのまんまテレビに出てもうても人気が出そうやもんなあ!!」

 いつもの関西弁でまくしたてる二人ともが背丈的にはそう高くないので、ゾンビになった後輩芸人たちをすっかり見上げるかたちとなる。

 そう実に大人と子供ほどの違いがあった。

 逆にこれを見下ろすかたちになる現状タヌキのバケモノの鬼沢が、ちょっと呆気に取られたかんじでものを言う。

「あれ、バイソンさんたち、確かこの建物の外から侵入するって言ってませんでしたっけ? なんで中から、しかもエレベーターから出てくるの??」

 そう言って心底不可思議そうに隣の日下部に視線を移すのに、当のクマ自身はそ知らぬそぶりで気のない返事だ。

「さあ、おれに聞かれても? 本人たちに聞いてくださいよ。ちなみにエレベーターを使っているのは、おれもビックリです」

 何やらどっちらけた表情で目の前のおじさんたちに視線を落とすクマに、つられてまた関西出身の芸人さんたちをマジマジと見下ろしてしまうタヌキだった。

 そんな微妙な空気を感じたらしい東田なのだが、そのクセまた無表情にぬかしてくれたりもする。

「あいにくと壁からは侵入できへんかった。屋上はこれと言って何ものうて、仕方も無しに非常口の階段から入ろうかと思ったら、なんやおかしな気配があったもんでのう? あえてエレベーターを使ってもうたんや。ちゅうか、むしろ意外な奇襲戦法やろ?」

「わいはやめとけっちゅうたんやけどな? 使えるんやし、めんどいゆうてうちの相方が? 結果オーライやったけど、中から攻めたオニちゃんたちのほうが早かったんやな!!」

「ああ、まあ……! でもバイソンさんたちはまだ変身してないんですね? 俺ちょっと興味があったんだけど、日下部は見たことあるのか、ひょっとして?」

 またお隣のクマに向かうタヌキに、だが問われたクマ自身は、はてとその太い首を傾げるばかりだ。

「いえ、おれも詳しくは知りません。ただどちらもかなりの使い手とだけは聞いていますが? それはさておき、今は本来の任務の遂行に集中しましょう。せっかく合流したんですから、ここからは一致団結したチームワークでですね?」

 見上げる小柄なおじさんたちもこれにうんうんと同調する。

「せや、みんなで変身してもうても、ごっついのばかりじゃこんな狭い建物の中では自由がきかへんやろう。せやからぼくらは必要に応じてやらせてもらうわ。ちゅうても、きみらみたいないかにもな見てくれしたゾンビさんとはちょっと毛色が違うから、いざとなったら笑わへんでくれよ?」

「ほんまやわ! はずいししんどいわ。後輩のおまけになりたてのゾンビさんに笑われるんはの! ちゅうてもそないに捨てたもんでもないとは思うんやけどな?」

「なんか気になるな? そもそも笑えるような見てくれなのかがちょっと怪しいんだけど、前のコバヤさんみたいなえげつないものでないことを願ってやまないよ……てか、日下部、ひとりでそんなさっさと行くなよ! チームワークなんだろっ!!」

 困惑顔で考え込む鬼沢だが、そんなことはまるでお構いなしにまたずんずんとでかい図体を大股で進ませる日下部だ。
 
 また慌ててこれに追いすがる鬼沢に、その後から関西出身の芸人さんたちもぞろぞろとくっついていく。

 めでたく全員集合。

 果たしてリーダーのアンバサダーに無理矢理に引っ張られる形で、目的地の入り口へと無事、到着する一行だった。

 いざ決戦の時は、近い……!

◇         ◇


 今回のターゲットがいると目される警備保障会社の入り口は、人気がなくやはり真っ暗なのが遠目にも見てわかった。

 それでも全面ガラス張りのエントランスの自動扉はしっかりと電源が入っていたものらしく、本来ひとからは見えないゾンビの鬼沢たちにも反応して、すんなりとこの道を開けてくれた。

 とりあえず敵地のこともあり、みなが息を殺してこの中へと入っていく。

 内部はどこも照明が落とされていて、真っ暗闇だった。

 この頃には闇に目がすっかりと慣れてきていた鬼沢は、慎重にあたりの様子を見回しながら、思ったことを小声で言葉にする。

「誰もいないのかな? やっぱり定休日だったんじゃないのか? なんかお化け屋敷みたいで落ち着かないよ。この先の受付のカウンターに美人の受付嬢がいたはずなんだけど、どこにもいないじゃないか? なんか拍子抜けしちゃうし、どっちらけだな……」

 口を開くなりしょうもないことをブチブチとこぼす先輩芸人のタヌキに、先頭に立つクマの後輩がやはりいつもの真顔で冷静に返してくれる。

「そうなんですか? それは残念でしたね、というか、その受付嬢さんならちゃんとそこにいるでしょう? 見えませんか??」

 言われて途端に、へ?と目をまん丸くする鬼沢に、背後からこの様子を眺めていたベテラン芸人コンビのボケ担当の東田が、それと指を差して指摘してくれた。

「ほれ、あのカウンターの奥の方、ひとが倒れておるやろ? 足だけこっちに見切れておるがな。おそらくはこのフロア中に満ち満ちておる邪気に当てられて、気絶してもうたんやないのか?」

「おお、せやな、確かにここに来てからまたえらいこと空気がよどんでおったから、もはや普通の人間には耐えられないのちゃうん? それが若い女の人じゃなおさらやんな!!」

 驚いたことをさも当たり前みたいにほざく関西出身の漫才師コンビたちに、生まれも育ちもバリバリ関東の鬼沢は、それこそがびっくり仰天してわめいてしまう。

「ちょっ、ちょっと! ダメだろそんなの!! 助けなきゃ!? カウンターの奥だな? あ、確かにいるっ……!」

 反射的にそちらに歩み出そうとする大柄なタヌキの肩を、だががっしりと掴んだクマがあくまで冷静なままでその真顔を左右に振った。

 その彼はおまけ落とした抑揚で言ってくれるのだ。

「ダメです。そのままにしておいてあげてください。この状況では介抱したところでどうにもなりやしません。返って目を覚まされでもしたら、鬼沢さん、一体この場をどうやって説明するんですか? あと、そもそもが今のこのおれたちの姿、あのひとには見えませんよ??」

「えっ、でも……!?」

 言われてハッとする鬼沢だが、背後の太いシッポをピンと立てて、それをブルブルと激しく震わせる。

 内心の動揺ぶりがはっきりと目に取れたが、それに東田もごく当たり前な体で言ってくれる。

「せやな? 日下部くんの言う通りや。どうにもならへん。それよりもこの邪気の源たる、悪玉のグールをどうにかせにゃ……! ここの社長さんなんやったけ? 思うたよりも手強いかもしれへんで??」

 ※お笑い漫才コンビ、バイソンのツッコミ担当、津川のイメージです(^^) やっぱりビミョーなのですが、挿し絵を描いているうちにそれなりにまとまってくるのでしょうか??

「そんな……! あの社長さんとほんとに戦わなきゃならないの? なんか気が引けちゃうよ。あと受付の女の子を見捨てるのも、テレビで名の知れたタレントとしてやっぱりどうかと思うし……あとで訴えられたりしない??」

 困惑すること著しい人気タレントのぼやきに、言えばまだ若手の芸人テレビタレントの日下部、今はクマのバケモノが言った。

「今はゾンビのアンバサダーなんですから、そんなの気にしないでいいですよ。それよりも先を急ぎましょう。この先にターゲットがいると目される、〝社長室〟があるはずですから……!」

 さっさと突き当たりを左に向かう日下部に、後からいやいやでこれにくっついていく鬼沢は浮かない顔だ。

 果ては何の気無しに見回した周囲の暗がりのさまに、ひいっと悲鳴をあげてしまう。

 暗がりのせいではじめまるでわからなかったのだが、受付を左に曲がった先の接客用の応接間にも、バタバタと倒れている人影らしきがあるのに気が付いたのだ。

 まるで死んだかのように動かないそれらにどうしたものかと浮き足立ってしまう小心者の芸人だ。

 本来ならすぐさま掛けよって介抱すべきところなのだが、他のゾンビたちはまるで我関せずでそちらを見ようともしない。

 それだからまた東田が狼狽する後輩に言ってくれる。

「せやから、そないに気にしてもしゃあないわ、鬼沢くん。この場合、ほっておくのが一番で、目を覚まされてもパニックになるだけやろ?」

「え、でも、せめて救急車くらいは呼んだほうが……!」

 視線をうろうろとさせてシッポがしゅんと垂れ下がるタヌキに、もうひとりの先輩おじさん芸人もあっけらかんとぬかした。

「ええて! それで救急隊員がのこのこやってきてもうてもみんなでバタンキューやで? 被害者が増えるだけやろ。まずはこのごっつ悪い空気をどうにかせにゃ! 大本を絶たないとどうにもならへんのや、倒れてもうてるひとらには申し訳あらへんけど、それはわいらの仕事やない」

「その通りです……!」

 後輩のクセにどこまでも冷静な日下部、クマがうなずく。

「そうなのか? ほんとにいいの?? けっこう倒れてるけど、みんな死んではいないんだな? う~ん……! まあ仕方がないのか、でもこうして見てみるに、この会社ってけっこう流行ってるんだ?」

 いよいよ頭の中が混乱してなんだかおかしな感心の仕方をするタヌキに、白けた視線でこれを見上げる東田だ。

「今触れるとこちゃうやろ? それよかここの社員さん、警備会社のわりにはみんなスラッとしたスーツ姿でおって、そないにいかついこともあらへんのやな? ぶっちゃけもっと筋肉もりもりの暑苦しい制服姿の野郎を思い描いておったんやが……」

「ほんまやの! むしろ華奢で弱っちい感じやんか?」

 床に倒れている客と社員のありさまをじろじろと見ながら後に続くおじさんたちに、そこは鬼沢が説明する。

「ああ、そっちのひとたちは接客のセールスマンさんたちですよ、実際の現場で稼働するボディガードのひとたちとは違います。俺が前に来た時は、もっとマッチョなひとたちばっかりだったから。この先が社員専用のトレーニングルームになってて、そこに絵に描いたような筋肉マンたちがひたすら汗を流していたから……! ちょっと引いちゃうくらいな」

「この先ですね?」

 商談室の突き当たりにあった、スタッフ・オンリーの注意書きが掛けられたドアのノブを、しっかりと右手で持ちながら聞く日下部だが、その答えを確認するまでもなくしてあっさりとこれを押し開けるのだった。

「……!? うわっ、なんだ……!!」

 開け放たれた扉の向こうの景色、かつて見た時とはまるで違うそのありさまに、ぎょっと目を見開くタヌキの鬼沢だった。

 その先にあったものとは……!? 

               ※次回に続く……! 

 

ノベルとイラストは随時に更新されます!

プロット②
 ドラゴン警備保障、入り口~
 クマとタヌキにゾンビ化した日下部と鬼沢がバイソンと合流の後、目的の警備会社に乗り込む。
 暗くて人気が無い状態。受付、受付嬢が邪気にやられて倒れているのに慌てる鬼沢だが、あとの三人は知らん顔。
 営業の接客室も同様でみんな倒れているが、そこには触れずに先へと進む。
 トレーニングルーム~バトル開始!
 トレーニングルームには警備員たちが邪気に毒されて正体をなくした状態で待ち構える。これにいつの間にか変身、ゾンビ化していたバイソンの津川と東田が立ち向かう。その正体に鬼沢はビックリ仰天していろいろと騒ぎになる。
 ひどい荒技を繰り出すバイソンのコンビにまたしてもびっくりする鬼沢だが、修羅場を抜けられる裏の近道があるのを思い出し日下部と直接事務室へ。事務室では特に屈強な社員の二人組が待ち構える。さながらゴリラみたいな見てくれに驚く鬼沢だが、すんなりとこれを捕らえることに成功。技の名前でもめる。バイソンはバリケードをこさえて合流。鬼沢がそれなりにやることを知ると、その場に残ってゾンビ社員を止めることを申し出る。
 鬼沢と日下部が社長室へ突入!

プロット①
 ※侵入する建物・オフィスビルの名称
  「ベンチャーズ・ヒルズ」

 クマとタヌキにゾンビ(亜人)化した日下部と鬼沢が、ビルの入り口から正面突破で内部に侵入。
入り口にいた強めの邪気を放つゴーストを鬼沢がグーパンチとハリセンで退治。後に五階の階段を上がりきったところで余計なことだったと日下部に突っ込まれる。
 建物の奥にあるエレベーターホールのエレベーターではなく、あえて手前の階段を使って、一気に五階まで駆け上がる。
 五階は真っ暗な状態。
 ゾンビ化しているのでそんなには不自由しないが、相手にも警戒されていることを自覚する。
 標的に向けて進行、途中、エレベーターを使って屋上から五階に降りてきたバイソンの東田と津川と合流。
 屋上は何もないことを聞かされる。堂々とエレベーターを使ったことに、鬼沢は内心あきれたさま。

カテゴリー
DigitalIllustration NFTart NFTartist Novel オリジナルノベル Official Zombie OfficialZombie/オフィシャル・ゾンビ OpenSeaartist SF小説 オフィシャル・ゾンビ お笑い キャラクターデザイン コント ファンタジーノベル ライブ配信アプリ ワードプレス

「オフィシャル・ゾンビ」13

オフィシャル・ゾンビ
ーOfficial Zombieー

オフィシャル・ゾンビ 13

https://opensea.io/assets/matic/0x2953399124f0cbb46d2cbacd8a89cf0599974963/88047277089427635657081635585532914949557992380650193262688159096145044307969/

※世界最大のNFTマーケットプレイス、”OpenSea”にてノベルのイラストを出品中!ただいまほぼ最安値なので、安いうちにホルダーになってもらえれば、いずれ価値が出てくるかも??
※この線画のイラストは、ポリゴンNFTで、一点ものです(^o^)

※「ニコニコ生放送」で創作ライブやってま~す♡

オフィシャル・ゾンビ 13


 夕方、日暮れ前――。

 くだんの目的地へと到着した。

 そこでただちに今回のミッションのおおよその目的と目標など、手短なブリーフィングがあり、それを淡々とした口調で説明する日下部だ。

 みんなで楽屋に集まっていざ放送局を後にしてから、この芸人ばかりの即席チームのリーダーとしての役割をやはり淡々とこなしていた。

 そしてそのすぐ隣では、何故だかちょっとびっくりした表情でぽかんと目の前の建物を見上げる鬼沢だった。

 そう、そこはこの彼にとっては、もはやはっきりとその見覚えがある、都心の五階建てのごく中規模なオフィス・ビルだ。

 まださほど年数は経っていないだろう無骨で頑丈な鉄筋コンクリの建物に、大小合わせて10社ほどの新興企業やら何やらが入っているはずの、いわゆる雑居ビルだった。

 その内のひとつの会社の取材が目的で、複数の収録スタッフと共に番組のロケで訪れたのは、あれは果たしていつのことだったか?


 当人しごく有名なテレビタレントでいろんなところに引っ張りだこだから、正直、そう詳しく中身までは覚えていないのだが、それでもまだ半年も過ぎていないはずだ。

「はあ~……! え、まさかここが目的地だったの? しかもこの五階って、まんまじゃん! でもいったい……なんで??」

 以前、この自分が訪れた時はそんなに怪しいような雰囲気はどこにもなかったはずだと、かつての記憶をうんうんと絞り出す。

 だがやはりこれと言ったものは脳裏には浮かんでこなかった。

 そんなほけっとして気の抜けたさまを、すぐ間近から怪訝に見る日下部が問うてくる。

「……おはなし、聞いてくれていますか、鬼沢さん? さっきから心ここにあらずってさまで、ねぇ、なんだかぼうっとしていますけど……?」


 これからアンバサダーとして肝心の作戦行動に入るのだから、しっかり聞いてくださいと念を押されるのだが、そんな忠告もてんで上の空の中堅芸人だ。

 それだからひどく困惑した顔をこの隣に向けると、やむなく困惑しきったその胸の内を吐露する。

 ここでのロケのことを内緒にしておく必要はないはずだから、覚えている限りのことをありのままにぶっちゃけた。

 すると日下部ばかりか、周りの関西弁のおじさんたちまでもが、驚いたさまで鬼沢の顔を見返してくるのだった。

「はえ、鬼沢くん、ここに来たことあったんかい? 偶然ちゅうか、えらいイタズラやの。運命なのか、悪運なのかしらんけど」

「偶然にしてはできすぎやない? ようわからんけど、呼ばれて来たみたいで気持ちが悪いわ! オニちゃん、なんか恨まれるようなひどいことしたんちゃうんか? ここのオーナーさんか誰かに??」


 関西弁でまくし立てられるのに、やはり困惑することしきりの関東芸人だった。おかげでちょっと腰が引けていたりする。

「まさか、そんなこと……! それにこのビルのオーナーさんには会ってなんかいないはずだし?」

 ひたすら首を傾げる鬼沢に、日下部もやや不審げなさまでものを言う。

「きっとただの偶然……なんですかね? でもどうあれやることはひとつで、変わりませんから。さっきも言ったとおり、ここのビルの最上階にいると思われるグールの討伐、ないし無害化、ただそれだけです」

「ああ、そうなんだ……! 最上階って、ほんとに俺がロケをしたところなんだよな? まさかあそこにこんなかたちで舞い戻ることになるなんて……それに討伐って、なんかな……!」

 そんな内心の複雑な思いが自然とこの口をついて出てくる。

 改めてその地上五階建ての建物の最上階を見つめる鬼沢だ。

 確か記憶では、建物のそれぞれのフロアに別々の企業が入っていて、五階はちょっと特殊な職種の個人経営の会社があり、そこの名物社長を取材する目的で来たのだった。

 屋上に大きな看板がでかでかとその企業名を宣伝していて、その目立つことおびただしいさまを目を細くして凝視してしまう。

 するとそんな自分の代わりに、この横に立つ先輩芸人の東田がこれをそのまま読み上げてくれた。

「えっと、五階っちゅうことは、あれやの? 『ドラゴン警備保障』、なんやありがちなような、ないような、ようわからんところやのう?」

「要は個人経営の警備会社っちゅうことやろ? でもいまどき流行らんのちゃうん? ふつうは大手の警備会社にお任せっちゅうもんで?? そっちのほうがお得やろうし!」

 なにやらとてもうさんくさげにそれを見上げるおじさんたちに、内心では同調する鬼沢も、しれっと本音を言ってのけた。

「まあそっか、てかうちもここらへんは大手のお世話になってるんだよなぁ? あの社長さんの前ではちょっと言えなかったけど! でもあっちは専属のガードマンみたいな、危険でより硬派なことを売りにしているところらしいんだけれども?」

「それはちょっと厄介かも知れませんね? いざゾンビになってしまえば、ただの人間相手に遅れを取ることはないでしょうけど、相手がプロの軍人みたいなことになると、手加減するのがしんどいですから。いたずらに殺すわけにも行かない手前……」


 おなじく頭上の看板を一瞥しながら、真顔の日下部が大まじめに言う言葉に、鬼沢は険しかったその表情がちょっとだけ緩む。

「殺したりはしないんだ? なんかホッとした。それにあの社長さん、そんなに悪いひとには見えなかったんだよな? とっても気さくでユーモアがあってさ、ちょっと体育会系でオラオラなカンジが正直、俺は引いちゃったりもしたんだけど、あとめちゃくちゃ日に焼けてた! いかにもやんちゃなケンカ商売してるみたいな??」

 昔の記憶がどんどんと呼び覚まされる売れっ子芸人さんの回想に、どこまでもこの真顔を崩さない日下部が、およそ面白みもない無味無臭な感想を述べてくれる。

「でもあいにくとその社長さんが今回のターゲットである確率が高いです……! これはかなり確かな情報源からもたさられたものなので、たぶんドンピシャですね? ですからいざこれと鉢合わせした時に、動揺したりするのはなしでお願いします」

「そうなんだ……!! てか、なんであの社長がターゲットだなんて断定ができるんだ? 確かな情報源って、そんなの世間一般の週刊誌では一番当てにならないヤツらの代名詞じゃん??」

 はじめ目を丸くして、またすぐにひどく疑わしげに眉をひそめたりもする鬼沢に、これには横合いから世話焼きおじさんの東田がもう何度目かの説明をしてくれた。

 ※お笑い漫才コンビ、バイソンのボケ担当、東田イメージです(^^) なかなかビミョーなのですが、ひょっとしたらモデルの芸人さんよりもいいおとこだったりして??


「ああ、確かな情報源ちゅうのはそやな、おそらくは〝パパラッチ〟や〝シーカー〟ちゅうヤツらからの情報なんやろ? 世の中にはそうヤツらがおるんよ。その手の情報を収集することに長けた、ぼくらゾンビほどではないにせよ、そっち向きの力を持った特殊な人間たちやな……!」

「せやな、わいらみたいに変身まではせんでも、特殊なちからを持った人間は他にもおるんやな! なんちゅうか、半分ゾンビみたいな? ハーフゾンビっちゅうのか……?」

 うんうんとひとり納得顔してうなずく津川に、対して間近で白けた視線を送る東田が、呆れ顔してこれを受け流す。

「ちゃうやろ! 鬼沢くんが混乱しよるから、あんまり適当なことをゆうてやるなよ? ぼくらとちごうて分類、カテゴリーはあくまでれっきとした人間扱いなんやから、ぼくらゾンビさんとはベツモノなんや、しょせんは……」

 かなり含むところがある言いようには、日下部も真顔でこれに同意するのだった。

 だがその一方で、ぎょっとしたさまでまた目をまん丸くする鬼沢だ。

「時には二類とか三類とか言われたりもしますよね? あえてゾンビの名称は伏せて……! 確かにおれたちとは別種のひとたちです。見えている世界が一緒なだけで。シーカーやパパラッチはおれたち同様、ゾンビやそのたぐいが肉眼で確認できるんです」

「え、そうなの? そんなひとたちがいるんだ?? てか、それってやばくないか? そうとは知らずに出くわしたら最悪見破られて、こっちの正体がバレバレになっちゃうじゃん!!」

 にわかに慌てふためく関東芸人にしかしながら関西出身のベテラン勢がでんと大きく構えたさまでなにほどでもないと応じる。

「だとしても問題ないやろ? 見えてるのはあくまでそいつだけで、他の大部分はさっぱりわからへんのやさかい。そないなもんはただの狂人のたわごとや。せやからそれを吹聴するよりも、むしろそれが専門のゾンビの管理機構にたれ込むほうが銭にもなるし、いい副業になるんやから、むしろ役得っちゅうもんやろ?」

「せやから〝パパラッチ〟や〝シーカー〟なんてケチ臭い名前で呼ばれてるんやもんなぁ? ほんまにうまいことやっとるんやで、入手した情報をしかるべきところに高値で売り渡しての! 他に競合する相手がそうそうおらへんさかい、こんなに安定した稼ぎどころは他にありやせんて。噂じゃそれが専業の芸人もおったはずやし、あとそれ自体がゾンビの正体を隠すうまい隠れ蓑になってもうたり……」

「…………」 

 微妙な会話の空白に怪訝な視線を関西弁の漫才コンビに向けるのに、東田が相方の言い渋ったことを露骨に言い直してくれる。

「あえてみずからをゾンビと名乗らんでも、むしろそっちの名目でうまいこと正体を隠し通しよるっちゅう利口な輩もおるんや。まずは正体を見せなそれとわからんもんやさかいに。この世の中、基本は自己申告やろ、何事も?」

「へー……! そんな意外な抜け道があるんだ? いわゆる例外規定的な?? なるほど、だったらこの俺もいっそのこと、そういうことにしちゃって……!!」


 おかしな知恵を付けてあげくは下手な算段までおっぱじめるそれはそれは浅はかな先輩芸人に、芸人としてはずっと後輩の日下部が、ちょっと顔色曇らせてすかさずこれをたしなめる。

「今さら無理ですよ。すっかりタヌキの正体さらしちゃってるじゃないですか? しかもよりにもよってこの公式アンバサダーである、おれの前で??」

「ああ、まあ、そうか……!」

 さすがにそれはないかとペロリと舌を出す坊主頭の芸人さんに、ボサ髪の若手くんは、だがそこで何やら驚いたことを抜かしてくれたりもするのだが……!

「あ、でもあのコバヤさんは、いまだにみずからを二類や三類と自称して、おのれがゾンビであること自体を公式には認めていないんですよね? びっくりしちゃうんですが……」

「は、無理だろ? 俺たちの目の前であんなにはっきりと変身しちゃってたじゃん!? あんな人間どこにもいないって!!」

 それこそがびっくり仰天してとっさに突っ込む本職はツッコミ芸人の鬼沢に、関西芸人たちまでもがやかましいガヤを発する。

「あほちゃう? 無理やて、あの兄さん、それはどうかとぼくらも思うわ。あないに気色の悪いおっかない見てくれで、往生際が悪すぎるて!! 人間があないに臭い屁なんかこくかいっ」

「ないの。ありえへんわ、あのコバヤの兄さんがゾンビでないやなんて! わけわからへん。正気の沙汰やないやろっ……」

 三人の芸人にして現役バリバリのゾンビたちに食いつかれて、肩をすくめるばかりの日下部だ。

 ちょっとだけ天を仰いでしまう。

 目の端に例の看板がまたチラついて、それをきっかけとして気を取り直すと、とりもなおさず作戦開始のゴーサインを出した。

「ああ、とにかく作戦に入ります。早くしないと日が完全に落ちて、いよいよあちらに有利な状況になりますから。地の利は元からあちら側にあるのだし。それではこれから突入しますが、ここはあえて二手に分かれての行動が得策と考えます。狭い建物の中に固まって突っ込むよりも、つまりはバイソンさんたちと、おれと鬼沢さんのペアでですね?」

「え、分かれちゃうの? 敵の本拠地に殴り込みかけるのに?? みんなで行ったほうが良くない? 日下部とふたりきりはなんか不安なんだよなあ、後輩の芸人だし、愛想が悪いし……」

 顔色があまりよろしくない鬼沢をよそに、こちらはしごく平然としたさまの東田がこくりとうなずく。

 了解するなりこの隣の相方に目配せもした。

「ええよ。そのほうがやりやすいやろ。コンビでの行動は漫才同様、慣れとるさかい。ぼくらはぼくらでやらせてもらうわ。ちゅうか、はなからそのつもりやったし……!」

「そやの、スマホのアプリ開いてよう見てみ! ちゃんと今回の案件の概要が出とるわ。日下部くんが執行者として確定されておるやろ。せやからギャラ狙いで他に寄ってくるアホももうおらんのやさかい。ここから先は早い者勝ちの実力勝負や! 負けへんで、ターゲットにかかる賞金、ギャラもけっこうな額やさかいに……!!」

 自身のケータイの画面を見ながらの津川のセリフには、目を白黒させるばかりの新人のアンバサダー見習いだ。

「賞金? ギャラってなんなの??」

「誰だってただ働きはまっぴらやろ? 命を賭けとるんやさかい、当然の報酬や。でなければ誰もアンバサダーなんてやりよるはずがあらへん。ただし今回は鬼沢くんがメインで活躍せなならん『訓練』の意味合いもあるんやから、ギャラは独り占めやなしにみんなで折半ちゅうのがいいんやろ。後後で揉めたりせんように?」

 落ち着いた口調の東田の言い分には、こちらも澄ました顔の日下部がどうでもよさげにみずからの言い分を重ねる。

「おれはどうでも構いません。まずはこのタスクをクリアしてしまうのが先決ですかね。あくまで情報の通りでグールが一体なら、さほど難しくはないでしょうから」

「なんか勝手に話しが進んでない?」

「さよか。それじゃぼくらは別ルートで潜入するから、ここでいったんお別れしよか。おい、いくで……!」

「お、そやな、それじゃオニちゃん、バイバイや! どっちが先にターゲットにたどり着くか、お互い競争やの!!」

「ほんとに勝手に進んでるよ! チームワークとかないんだ!?一切(いっさい)!! てか、何してるの、バイソンさんたち、なんかふたりして建物の壁にぴたっと取りついて……あれ? どうなってるの??」

 はじめは水平だった視線の向きが、どんどん上向きに変わって見上げるような角度でふたりのおじさんたちを見ている鬼沢は、内心の困惑がもはや隠せない。

 平気な顔でこれを見上げる日下部がなんでもなさげに言った。

「まあ、バイソンさんたちの能力なんですかね。ああやって壁伝いにはい上って、目的地に潜入するつもりなんでしょう」

「え、いやいや! どういう仕組みであんなことになるんだよ? てか、こんなまだ日も暮れない内からあんなパフォーマンス目立って仕方ないじゃんか、あ、ひとには見えないんだっけ? でもそれにしたって、意味がわからないよ、もうあんなに高くに張り付いてるし!!」

 あやしい手品かいっそ雑なドッキリを見ている心持ちの鬼沢はリアクションがはばかりない。

 これにあくまで冷静な日下部がぽつりと言った。

「バイソンさんたちは何に変わるんですかね? きっとそれの能力や性質によるところが大きいのでしょうから。ああやって垂直の絶壁を上れるってあたり、だいぶ限られますよね、動物にたとえのだとしたら……??」

「なにも動物とは限らないんじゃないのか? 案外と虫だったりしてさ? いっそのこと害虫のゴキブリとかナメクジとか……うわ、見たくないな!」

 じぶんで言っておきながらおえっと顔をしかめる鬼沢だ。

 これにただちに壁の中腹のあたりからやかましい関西弁のガヤが返ってくる。

「そないなはずがあるかい! イヤなこといいなや、テンション下がるわ、きみらもぼうっとしとらんで早うせいよ!!」

「とっととせな先にステージクリアしてまうで! そしたら当然ギャラはわいらの独り占めや!!」


 そのさまを半ば呆然と見上げる鬼沢が、またビミョーな顔つきで言う。

「あんなこと言ってるけど、ちゃんと中に入れるのかな? そもそもそこに非常口がないと入れないし、いざたどり着いた屋上に何かがいないとも限らないんじゃない??」

「いえ、待ち伏せされている可能性は低いと思いますよ。だとしてもベテランのアンバサダーコンビですから。コロナの都合で換気のために窓が開け放たれていることは多々あるし、非常口があればそれをこじ開けて入れます。原則として、原状回復が可能なちょっとやそっとの破壊工作なら認められているし、壁を思い切りぶち破ったりしなければ大丈夫です」

 見上げる目つきが段々と細くなる鬼沢に、みじんも動揺することのない日下部の返答だ。

 視線をすぐ隣に戻してあらためて聞いてやるに、あちらからはやはりあっけらかんとした回答が返ってきた。

「はーん、それじゃ、俺たちはどうするんだ? まさか建物の玄関から、真正面から強行突破だなんていいやしないよな??」

「いえ、そのまさかです……! 鬼沢さん、頭のキンコンカンを返してください。ここからはもうさっさと変身して、お互いにゾンビの状態で挑みます」

「へ? 変身しちゃうの? もうここで?? まだ五階の目的地にも着いてないのに、どうして?? セオリーって言っちゃなんだけど、このまま見えない状態で抜き足差し足して、ターゲットまで迫るんだろ?」

「いえ、それではらちがあきませんから。ゾンビのちから全開で一気に五階まで走っちゃいましょう! もうそれが一番手っ取り早いです」

 結構なぶっちゃけ発言に、目を白黒させるばかりの鬼沢だ。

「そんな雑でいいんだ? バイソンさんたち、立場ないよなあ」


 言ってるそばからさっさとひとの頭からこの金のワッカを回収すると、みずからの身体をいびつにふくれあがらせる日下部だ。

 これにみずからも意識を集中して、ひとならざる姿へと変化するお笑いタレントだった。

 十秒も経たずに、そこには2匹の大きな獣と人間の特徴を併せ持った、それは得体の知れない存在が仁王立ちすることになる。

 涼しい風がまた吹き抜けて、ちまたでは〝ゾンビ〟と呼ばれる獣たちを目的のビルへと誘った――。

 入り口付近からやけにイヤな感じの気配が漂うが、これに臆することもなく先をゆくクマに、おそるおそるでビクビクしながらこの後に続くタヌキだ。

 かくして戦いの幕は切って落とされた。

 果たしてその顛末やいかに?


              次回に続く……!



 

カテゴリー
DigitalIllustration NFTart NFTartist Novel オリジナルノベル Official Zombie OfficialZombie/オフィシャル・ゾンビ OpenSeaartist SF小説 Uncategorized オフィシャル・ゾンビ お笑い ファンタジーノベル ライブ配信アプリ ワードプレス 寄せキャラ

「オフィシャル・ゾンビ」10

オフィシャル・ゾンビ
ーOfficial Zombieー

オフィシャル・ゾンビ 10

 これまでのおおざっぱないきさつ――
 ある日いきなり人外の亜人種である〝ゾンビ〟の宣告をされてしまったお笑い芸人、鬼沢。おなじくゾンビにして、その公式アンバサダーを名乗る後輩芸人の日下部によってバケモノの正体を暴かれ、あまつさえ真昼の街中に連れ出されてしまう。
 そしてその果てに遭遇した、おなじくゾンビだというベテランの先輩お笑い芸人、ジュウドーコバヤカワには突如として実地訓練がてらの実戦バトルを強要され、初日からまさかの〝ゾンビ・バトル〟へと引きずり込まれてしまうのだった…!

 苦戦の末に一時は優位に立ったと思われた鬼沢だが、直後に思いも寄らない反撃に遭い、およそ予想だにしない能力と真の姿をあらわにしたコバヤカワの脅威にさらされることになる…!!

  やたらに威勢の良いオヤジのがなりと共に、コバヤカワの周囲にもくもくとした白い煙幕みたいな〝もや〟が立ちこめる。

 間近で見ていてよもやこれもあの異様な悪臭を放つのか? と今はタヌキの姿の全身が思わず総毛立つ鬼沢だったが、幸いにもイヤなニオイらしきはないのにホッと胸をなで下ろす。

 先の生々しい経験がすっかりトラウマと化していた。

 ただし見ているさなかにも目の前の中年オヤジの身体は、まったく別の何かへとそのカタチを変えていくのだ……!!

 結果、なんとも形容のしがたい複雑怪奇な出で立ちをさらけ出すベテラン芸人に、自身もそれなり中堅どころの芸人である鬼沢は、このタヌキの顔面が驚きで目がまん丸になる。

 かなり特殊な見てくれをしているのでひょっとしたらアレなのかなとある程度の予測がついたりするのだが、その反面、認めたくない思いがそれをはっきりと言葉に出すのをためらわせた。

 もしそうだとしたらあんまりにもヤバイし、その旨、ベテランの先輩芸人さん相手に突っ込むのもかなり気が引けた。

「う、さっきのあの強烈なニオイって、ま、まさか、そんなことはないよね? コバヤさん、俺の勘違いならいいんだけど、ひょっとしてそれって……うそでしょ??」

 嘘だと言ってほしいと思う後輩の願いもむなしく、真正面で仁王立ちする先輩はきっぱりと大きくうなずいて断言してくれた。

「おうよ、見ての通りじゃ!! この全身を渋い黒色系とアクセントの白でまとめたおもくそかっちょいい豪快な毛並みに、背後で雄々しくそり立つ巨大なシッポ! もはやこれ以上のセックスアピールはあらへんちゅうくらいにの! おまけに代名詞のくっさい屁はおのれもその身をもって経験済みやろう? これぞまごうことなきスカンクのゾンビさまよ! 正真正銘!! どうやっ、恐れ入ったか!? だがオニザワ、おのれがビビるのはむしろこれからやぞ!! その鼻もいだるから覚悟せいや!!!」

 少しも照れるでもなくぶちまけられた完全アウトなぶっちゃけ発言に、内心どころか全身でどん引きする鬼沢は、ひん曲がった口元からひいっと裏返った悲鳴が漏れる。

「う、うそでしょう!? スカンクだなんて!! そんなのもアリなの!? それじゃさっきのって俺、ほんとにおならで攻撃されてたんだ! 冗談なんかじゃなくって!! なんだよコバヤさんっ、いくら先輩でもこんなのタチが悪すぎるよ!!」

 所属する事務所は違えどそれなり見知ったはずの後輩芸人の心からの抗議と嘆きに、対して険しい表情のスカンク、この芸名が〝ジュウドーコバヤカワ〟だなんて冗談そのもののオヤジがまたやかましくも真顔でがなり返してくれる。

「じゃかあしいっ!! 男と男の真剣勝負に冗談もシャレもありやせんっ、それがゾンビ同士となったらなおさらじゃ!! そもそものんきに平和ぼけしたリスやら野良ネコやらじゃ戦うもへったくれもありやせんやろうが? ネコ科やったらより強い虎やヒョウ、弱っこいリスよりか断然そこは攻撃力のあるスカンク!! はなっからこの一択じゃ!!」

「はあっ、そもそもなんで戦わなくちゃならないんだよっ!? コバヤさんこれ完全にいじめだからね! 俺まだゾンビになりたてで右も左もわからないのに、こんなのあんまりだよ!! あのおならは本当にシャレにならないし、コバヤさんの格好もヤバ過ぎてマジで近づきたくない!! 二度としないでよ、あんな地獄の閻魔さまがするみいたなバカでっかい屁!!!」

「あん、すかしっ屁ならいいんか? すかしたところでニオイは少しも変わらへんぞ? むしろ不意をつかれるだけより強烈に感じるっちゅうもんでの!!」

「おなら自体をしないでくれって言ってるんだよ!! というか、する気まんまんだよね? 見るからにドSの格好だもん!! なんだよ、俺、絶対に近寄らないよ!?」

 拒絶反応を激しく逆立てた太いシッポにまで出してイィッとキバをむきだすタヌキに、背後のおのれの背丈よりもさらに大きなギザギザ模様のシッポをぶん回すスカンクは、いかめしい真顔を一変、さもおおらかに破顔して後輩芸人を手招きする。

「おう、済まんかったな! そう邪険にすな、何もおのれが憎くてやっとるわけではのうて、むしろオニザワ、おまえにゾンビのなんたるかを教えたるためにやさかい! 何事も経験やろ、今のうちに痛い思いをしておいたら、この先につまづくことはそうそうあらへんのや。お互いのことをよう知るためにも、ここはこの先輩、コバヤカワの胸にぶつかってこい! 優しく受け止めたるから、ほら、こっちへ来いや。早うせい! ここやここっ!!」

「あ、あん、なんだよ、だから近づきたくないって言ってるじゃないか、俺イヤなんだよ、本吉(もとよし)の芸人さんたちの強引なノリとかボケとか小芝居とか! 一発当てたら終わりって言うんなら、さっさと当てて終わらせちゃうよ!! そんな無防備の棒立ちでいたらあっさり届いちゃうんじゃないの?」

 おなじ業界における先輩と後輩の悲しい性か、言われるがままに反射的に足を前に踏み出してしまう鬼沢だ。

 お互いに手を伸ばせばすぐ届く距離までみずから詰めてしまう。

「ええ。そやったらまずはここに一発当ててみい、このわかりやすい土手っ腹に軽くでいいから一発の! 簡単やろ? ほれっ」

 みずからの腹を突き出してくる見た目ヤンキーみたいな出で立ちのスカンクに、すっかり腰の引けたタヌキが困惑して返す。

「えっ、いいの? 終わっちゃうよ?? 軽くでいいんだよね、それなら、ほら! これで当たりだよね?」

 利き手の拳を突き出してそれを相手のまん丸い腹の中心に軽く押し当ててやる鬼沢だが、そこにすかさずに返されてきたコバヤカワの文句に、えっと目を丸くする。

 その瞬間、ぴきりと場が凍り付いた……!

 おまけ返ってきたのは言葉だけではなかったのになおも呆然と立ち尽くすタヌキであった。

「あほう! いつ誰が一発当てたらそれでええなんて言うた? そんな生ぬるいものやあらへんのや、ゾンビの、男の戦なんちゅうもんは!! おのれのような甘ちゃんの腰抜けにはとびきりくっさい屁をお見舞いしたる! 思い知れ!!」

 ぶにっとした柔らかい感触を手の甲に感じたのとほぼ同時、その突き出た腹の周囲からシュババっと噴出した煙が鬼沢の顔面、タヌキ面の突き出た鼻先をもろに直撃する!!

 はじめ何が起こったのか皆目見当がつかなかった。

「えっ、なに、今の?? あ、待って、まさか、あ、あ、あああっ、あ、くさっ、くさいっ!! くさいくさいっくさいぞ!! 鼻がっ、俺の鼻がっ、パニックしてるよっ、くさい、あれ、これ、くさいのか? あ、やっぱりくさい! くせっ、なんだよ、どこからおならしてるんだよっ、ふざけんなよっ、ひどいぞ、こんなのだまし討ちじゃないか!! 涙が出てきたっ、ああ、神様、俺がいったい何したの!?」

 不覚にも鼻で呼吸してしまったらば全身身もだえするようなこの世の終わりみたいな臭気に脳神経が混乱を来した。地獄だ。

「気を抜いとるからや! このわいはスカンクなんやから、その手の攻撃は簡単に予想がつくやろ? 事実、この装束は相手からの打撃にカウンターで屁、人呼んでブラストガスがぶちかませるギミックがたんまり仕込んである! わざわざケツなぞ向けんでも的確に相手の弱点、鼻っ面を撃ち抜いてやれるのよ。触れたら大けがするんや、この漢、コバヤカワっちゅうもんはの!!」

「何言ってんだよっ、ただの変態屁っこきおやじじゃないか! あああっ、くさいくさいくさい!! 鼻のスペアが欲しいっ、日下部のと交換してくれないかな? あいつどこ行ったんだ! うう、俺もうぜったいに近寄らないからね? コバヤさんに!!」

 たまらずバックステップで再び距離を空ける後輩に、先輩の芸人は不敵な笑みを口元に浮かべてまだなお余裕の口ぶりだ。

「かまへん。届く範囲に限りのある拳の打撃とちごうてスカンクのおなら、気体のガスっちゅうんは風にのせて飛ばすことも地雷のようにとどまらせておくことも自在や。あいにく目では見えへんからの! ならおのれは逃げ場を無くして結局この前にまたその姿をさらすしかあらへんのや!! そうやろ、オニザワ?」

「うるさいな! 屁理屈ばかり言って本当にキライになりそうだよ!! スカンクの屁理屈ってなんだよ? さっきのは軽く当てただけだから、本気でやったらどうなるかわからないじゃないか!! 無傷でいられる保証なんてないはずだし、俺、本当に腹が立ってきたぞ、ぜったいに見返してやるからね! いくら臭くても要は鼻で息をしなければいいんだからさ!!」 

 さも鼻をふさいで口呼吸で一気に勝負を決めてしまえばいいと言いたげなタヌキに、眼光のやたらにするどいスカンクが笑う。

「ははん、笑止やの! スカンクの屁がそないなもんで済ませられるほどしょぼいわけがあるか! ゾンビなめるなよ、鼻からでなくとも口やら皮膚やら身体に摂取してしまえばそれまで、脳の神経細胞に直接作用して精神に大打撃をおよぼすんや。決して逃げられへん。肉体ではなくメンタルをねじ伏せる最強の一発や、戦わずして勝つとはまさにこのことやの!!」

「ほんとにうっさいな!! 聞きたくないよ、変人の狂言なんて!! そんなの誰も笑えやしないんだからね!? おかげで完全に息を止めて本気でボコらなけりゃいけなくなっちゃったじゃん! 他事務所の先輩さんを!? でも俺は悪くない!!」

「やれるもんならやってみい! あと、そうだひとついいものを見せてやるぞ、オニザワ、こいつをよう見てみろ、ほれ、受け取れ!! おのれのちゃちな小道具のマントやのうて、ガチもんやぞ! モノホンの〝神具羅〟っちゅうもんを教えたる!!」

 いいざまみずからの装束の股間のあたりについていた何かしらの球状の物体を片手に取り出して、それを無造作に放り投げるスカンクだ。左右にふたつあったものを、右の球を利き手でパスしてくれるさまを目をまん丸くして見ながら思わず両手で受け止めてしまうタヌキである。

「え、なにそれ、取れるの、そのおまたにぶら下がってるふたつの金玉(キンタマ)みたいなの? コワイっ、わ、なにこれ、どうすればいいの? 見た感じは堅い金属の球だよね、野球のボールみたいなサイズの、おまけに全体にボツボツのある、あ、これって、まさか……!?」

「タマキンがそないに器用に取れるはずないやろ! 着脱式の睾丸なんてどこぞの世界の生き物や? せやからそいつはれっきとしたX-NFT、このわい専用の神具羅や! 使い方は、推して知るべしっちゅうもんで……のう?」

「ぐぐっ、ぎゃあ!! またあっ!? キンタマと見せかけて、おならの詰まった爆弾じゃないか!! いきなり爆発したぞ!? うわあっ、くさいくさいくさいくさいくさいっ!!! げほっ、げほほっ、うわああああああああああっ!!」

 いきなり両手の中でブシュウウウウウッ!と白い煙を吐き出すのに慌ててよそに放り投げるが、目の前が真っ白に染まるタヌキは鼻を押さえて身もだえるばかりだ。

 凄まじいばかりの悪臭が鼻から脳へと突き抜ける!

 精神が崩壊するのではないかと思うほどの精神的苦痛と恐怖が頭の中に稲妻のように駆け巡った。

 いっそのことギブアップしてしまいたいところだが、そこはあいにくルール無用のゾンビバトル。

 どこにも逃げ場などない。

「なんだよっ、こんなの反則過ぎるよ! 近くても離れてもこっちの手出しのしようがないじゃないか!? 俺、このままじゃ頭がおかしくなっちゃう! もう逃げるしかないよ、さもなきゃ、コバヤさんを思いあまって殺しちゃうかも??」

「言うたやろ、気を抜いとるからや。おんどれ、日頃芸人としても受け身ばかりでじぶんからそないに攻めることがおよそあらへんよな? ひとの言いなりやからそないなことになりよる。あと脳みそにダメージを食らわすわいの屁ぇは冗談抜きで自我が崩壊するぞ? 一発かませば街のタフなゴロツキどもが一瞬で正気をなくして挙げ句、何でも言いなりのかわいい下僕へと成り下がるからの! 警官やろうが坊さんやろうがみな一緒や!!」

「調教しちゃってるじゃん!! もはや変態だよただの!! コバヤさんの下僕だなんてそんなのまっぴらだ! マジで逃げなきゃっ、ちょっとタンマ! ちょっと体勢を整えるからそこで待ってて! ちゃんと考えて出直してくるから! でもぜったいに一泡吹かせてやるからね? あ、声を荒げたらまた吸っちゃった、くっさいおなら! もうやだあっ!!」

「好きにせい! そやったらせいぜいそのない頭を振り絞ってマシな反撃を見せてみいよ? 特別に今から10分やるからそれが過ぎたら楽しい鬼ごっこや」

 文字通りシッポを巻いて逃げ出していくタヌキを悠然と見送ってその場に仁王立ちするおじさんスカンクだった。

 このまま追い回してやるのも面白いかもしれないが、それではただのいじめに他なるまい。

 少し猶予を与えてやって、改めて逆襲に来たところに自慢のカウンターを食らわせてやるのがいいとほくそ笑む。

 そうしてタヌキの気配が遠のいたところでこれと入れ替わるように他の気配が、間近からピリリと乾いた電子音が鳴った。

 これにみずからのふところに手を突っ込むスカンクが濃い胸元の体毛から取り出したのは、それはよくある普通サイズのスマートホンだ。
 バケモノのごつい手では扱いかねるが、今日日は音声で操作が効くからそう問題はない。

 呼び出し音がなったきりに沈黙するスマホにこちらから声をかけてやる。渋いオヤジのバリトンに、するとスマホからはやけに落ち着いた青年のテノールが響いた。

「おう、見とったか、クサカベ! おのれ今どこにおるんや? このわいが本性さらしてからさっさととんずらこきおって、おかげでオニザワが泣きわめいて逃げ出しおったぞ? まあ、ヘタに巻き添え食わんでおるためには身を隠すのは正解なんやが……」

『はい。コバヤさんのおならは空気よりもずっとその比重が重いから、まずは高い場所に避難するのが一番ですよね? 鬼沢さんは気づいているかわかりませんけど』

「ふん、おのれひとりで上階に退避したんか? 抜け目のないやっちゃ! だがあいにくオニザワはそういうわけにはいかへん。ここのエレベーターはどれも電源が落ちとるさかい、上へはフロア中央の大階段を使うしかあらへんが、そっちにはトラップを仕掛けて屁の包囲網を敷いとるからの! ん、ちゅうことはおのれもまだこのフロアにおるんか、クサカベ? はん、相棒が無茶せんように見張るつもりなら余計な手出しだけはするんやないぞ? あいつのためにならへん。以上や!」

『はい。でもおれは信じてますよ。鬼沢さんのこと。もちろん、コバヤさんのこともです。おいしいご飯をごちそうしてくれるんですもんね?』

「ふん、あいつ次第や。そやの、10分経っても出てけえへんかったら、おのれがわいの相手をしいや? それでチャラにしたるさかい。いやもとい、わいも信じてみよるかの? オニザワのことを。あのタヌキはあれでなかなかにやりよるのかもしれん。それだけのポテンシャルはおのれも見込んでおるんやろう?」

『はい。だからお願いします。引き出してください。鬼沢さんのポテンシャル、コバヤさんの男気ってヤツで……!』

「知らんわ」

 捨て台詞を吐いてスマホを懐にしまうコバヤカワだ。

 素っ気ない言いようでいながら、口元にはやけにおかしげにしたニヒルな笑みがある。

 スマホの声の主はさすがに戦い慣れしていてまるで気配がわからないが、もう一方のゾンビになりたての後輩の中堅お笑い芸人はちょっと遠くのほうからあからさまな気配が伝わってきた。
 
 時計で言ったらおおよそ二時の方角、このまままっすぐ歩いて行ったら間抜け面とぶち当たるのだろう。

「かっか、ほんまにかわいいやっちゃの! あほのタヌキが何をしとるのか知らんが、とにかく10分だけは待っといてやるわ。ちゅうてもこの姿ではあいにくタバコは吸われへんからなるべくはよう出てこいよ……!」

 がに股の仁王立ちでその場で待ち構える見た目がスカンクのバケモノは、遠くの柱の向こうあたりで何やらわさわさした気配がひっきりなしにあらい息づかいをともなってうんうんとうなっているのを楽しげな目つきで眺める。

 完全にバレバレなのだが、当の本人はそんなことまるで知らないで必死にあれやこれやと算段しているらしい。けなげなこと。

 かくして案外と面白いものを見せてもらえるのではないかとおかしな期待にちょっと楽しくなる先輩芸人だった。

「そうや、おのれも芸人のはしくれなら、せいぜい気張っておもろいもんを見せてみいよ、オニザワ! ん、あれ、なんや、もう終わったんか? 気配がもろバレやんけ……!」

 急に静まり返ったかと思ったら、どたどたした足音が視界の右奥のほうから聞こえて、あるところでこれがぴたりと止まった。

 不自然な静けさに直感的に上だと悟るコバヤカワだ。

 元は企業のオフィスビルはエントランスの部分が四階までぶち抜く吹き抜けで、この高い天井に一匹のひとがたのタヌキが舞うのを確認、腰を据えてただちに迎撃態勢に移る。

 中途半端な攻撃にはこちらのガスブラストのカウンターを当ててやると狙いを定める。後輩は勘違いしている節があるが、何も打撃を当てられなければカウンターが発動しないわけではない。

「そもそもが相手の攻撃をギリでよけながらこちらの攻撃を倍にしてぶち返したるのがカウンターの基本やろうが! おまえのぐだくだパンチじゃはなからろくな打撃にはならへんっ、ん、なんや、例のびらびらのマントが両手に、二刀流か?」

 あのタヌキの得意技の自由自在にカタチを変える白いマントが左右の手からたなびく状態でこちらめがけて落下してくるのをはじめいぶかしく見つめるスカンクだが、さして気にするでもなくどっしりとその場で体を正面に構えた。

「ほんま器用なのは認めたるが、しょせんはバカの一つ覚えやろ! ぐだぐだの風船パンチが二つになったところでなんも変わらへんわっ、おまけになんやっ、この根性無しが!!」

 落下の勢いをまんま利用して強襲かけてくるのかと思ったら、あっさりと目の前に着地したのに肩すかしを食らうコバヤカワだ。

 対するタヌキの鬼沢はむすっとした表情でがなり返す。

「見てから言ってよね! 俺なりちゃんと考えて最善のやり方を組み立てたんだから!! こっからだよっ、そら、行くよ!!」

 右手で翻した白マントを上手投げでたたきつけるようにぶちかます。白マントはただちに巨大なグーのパンチと化してスカンクの身体を狙い撃つが、あいにくそれが届くよりもスカンクの反撃のほうが早かった。

「あたらへんでもガスはお見舞いできるで! この太鼓っ腹におのれでリズムを刻めばそれが合図よ!! おおらっ……!!」

 大きく息を吸い込んでから利き手の拳をみずからの丸い太鼓腹に打ち付けると、それをきっかけにその身に付けた装束に複数ある通気口のような凹みや穴ぼこから真っ白い煙が噴射される!

 まさしく必中のタイミングだった。

 もはやよけようがないのがわかって一度は勝ちを確信するコバヤカワの表情が、だがそこで一変する。

 その場で泣きわめいて無様にはいつくばるはずのタヌキは、そのタイミングでここぞとばかりに今度は左手に掴んでいたもう一方の白マントをバサリと目の前に翻す!

 するとこちらはパンチではなくて真っ白い壁のような一枚のスクリーンが生み出され、スカンクから放射された白い煙幕をまとめてはじき返す。

 それは見事な盾の役割を果たしていた。
 
 とは言えニオイそのものを殺したわけではないが、次の攻撃に移るだけの時間は楽に稼げていた。

 白一色に染まった視界の向こうで、決死の覚悟のタヌキが息を荒げる。これが最後とばかりに渾身の力を込めて放つのだった。

「いくぞおっ! そおら、まとめてぶった切れぇええっ!!」

 それが一度は引っ込めた右手のグーパンチであることを推測するコバヤカワは、だったら真っ向から受け止めてねじ伏せてくれると恐い形相でこちらも高くうなりを上げる。

「ほんまにバカの一つ覚えやな!! いい加減に学習せいよっ、そないな貧弱パンチはこけおどしにもならへんちゅうことをっ……んんっ!?」

 壁をぶちのけてくると思われた巨大な握り拳はいっかなに姿を見せず、その代わり、不意に壁からこの上半身をさらしたタヌキが起死回生の思いを込めて繰り出したのは、上段からまっすぐに振り下ろされた力一杯のマントの一閃だ。

 その鋭さに目を疑うスカンクだった。

 目隠しにしていたマントごと空を引き裂く一太刀は、それまさしく日本刀の切れ味でコバヤカワの眼前を一直線にかけ抜ける。

 グーパンチの平たい横の面ではなくて、これを縦の線で一振りのカタナのような形状にして繰り出した攻撃、この意味と威力は思いの外の驚きをもってスカンクの亜人を沈黙させた。

 ……ゴトンッ!

 顔の前にかざしていたみずからの左手がスッパリと肘の付け根のあたりから見事に切り落とされ、手首ごと地面に落ちるのをおよそ他人事みたいに見つめてしまう。

 思わず漏らした呼吸に感嘆の色がにじんだ。

「フッ……やりおったわ……!!」

 少なからぬ驚きと興奮で顔が硬直していたが、この後の予定が決まったことをしっかりと頭では理解していたベテラン芸人だ。

 焼き肉パーティか、あるいはカウンターの寿司ざんまい……!

 今ならうまいタバコが吸えそうやわと口もとに笑みがこぼれかけるのに、だがあいにくで目の前のタヌキが顔面蒼白、ただちに仰天して魂消た悲鳴を上げる。

「ぎゃあああああああっ!? えっ、えっ、え、え、えええ!! コバヤさんの腕がっ、腕が、丸ごと落ちちゃった? うそでしょ、俺なにもそこまでやるつもりはっ、そんなつもりじゃっ、いいやあああああああああああああっっっ!!!」

 ごめんなさいごめんなさい!とその場に土下座する勢いで膝から崩れ落ちるのに、覚めた表情のスカンクはなにほどでもないとどこか浮かない返事だ。

「……ああ、かまへん。ゾンビやから、そないに騒がんでもすぐに応急処置しとけばきっちりと元に収まるやろ。ほんまきれいにスパッと切り取ってくれたからの。血も出てへんやろ? 今は頭の中にアドレナリンが出とるからそんなに痛いこともあらへんし、ほれ、そんならその腕拾うて、ここに貼り付けい!」

「ううっ、そんなで元通りになるの、ちゃんと? わわ、触るのちょっと気持ち悪いんだけど、わっわ……あの、怒ってない? 怒ってくさいおならとか、しない??」

「せえへん! とっととほれ、ここにひっつけいよ」

「わ、わわっ、なんかコワイな! うわあ、これでほんとにくっつけられるの?? うう、はいっ……!」

 平気な顔でちょん切られた片腕の赤黒い断面見せつけてくるスカンクに、完全に腰が引けてるタヌキがあわわと困惑しながら両手にした相手の腕を差し出す。

 ちょっとブレブレだったが、どうにかぴたっと断面と断面を合わせたところに背後からクマの気配が駆けつける。

 そうして皮肉屋のクマにしては珍しく興奮したさまでかけられる言葉には、ギョッとして声をうわずらせるタヌキだ。

「コバヤさん! 大丈夫ですか? 鬼沢さん、まさかほんとに一泡吹かせるだなんて、ビックリです! おれ、ちょっと感動しちゃいましたよ。気配を消して後ろからずっと見てましたけど!」

「は? ストーカーじゃん! おまえ、まさかずっとそばにいたの? ストーカーだよ!! 公式アンバサダーとは名ばかりの、ただの犯罪者じゃんっ、俺、そんなのとこの先やっていける自信がないっ……」

「ええから、腕、ちゃんと固定せんとうまいこと神経がつながらへんやろう? おまえのそのびらびらの神具羅で包帯みたいに巻かれへんのか、首から三角巾みたいに腕を吊る感じでよ??」

「ああ、鬼沢さんの能力はいろいろと用途が広いみたいですね? およそ布状のやわらかいものならなんでも自在に変形変化させることができるみたいな? てことは紙でもいいんですかね? あ、鬼沢さん、コバヤさんの身体には極力触れないように、腕だけを処置してくださいね。でないとまたアレが大量に出ちゃうから……!」

「アレとはなんや? 出物腫れ物所嫌わずとはいうても時と場合はちゃんとわきまえるぞ、紳士としてな! おお、おおきに、これでええわ、ほんまに器用やな、オニザワ、そんなに心配せんでもすぐに直るわ」

「ほ、ほんとに? ちゃんとした外科手術もしないでただくっつけただけなのに……! あ、指先、ちゃんと動いてる?」

 ひたらすきょとんとした鬼沢に、日下部が冷静な口調でぶっちゃけた発言する。さらに目がまん丸になるタヌキだった。

「見ての通りで、おれたちゾンビは人間よりもはるかに身体が頑丈で回復力が高いんですよ。多少の個体差はあれ、おれも鬼沢さんも首をはねられたくらいではきっと即死はしませんよ?」

「は? それは死ぬだろ、さすがに! てかどこでも拾ってくっつければ今みたいに元通りにおさまるの? もはやゾンビどころの騒ぎじゃないよな、それ……」

「まあええやろ。おまえは見事に壁を乗り越えたんや。それだけは確かやからの! 先輩の芸人としてもゾンビとしても、ほんまに鼻が高いわ。オニザワ、ようやった、マジでほめたるで!!」

「あっ、コバヤさん、て、あれっ?? ……あっ!」

「あ、コバヤさん、そんなことしたら、うわっ……くさ!!」

 反射的にバックステップでその場から退避する日下部が思わず鼻を押さえて嗚咽を漏らす。

 言えばがっちりと男と男の固いハグを交わしたコバヤカワと鬼沢だが、それによってスカンクの身体中から真っ白い噴煙が盛大にあたりに噴き上がるのだ。

 つまりはお互いに突き出た中年の太鼓腹同士が衝突しあって、まんまとスカンクのおならを誘発したのだった。

 タヌキからしてみればいい迷惑の大災害である。

「あっ、あ、くさ、くさいっ、ああ、だめだっ、臭すぎて目が回るっ、世界がぐにゃぐにゃしちゃってるっ、ああ、もうひと思いに、殺してっ、はあああああっ、くさいい~~~っ!!」

「おお、すまん! オニザワ、起きろ! まだこれからめでたい祝勝会が、あかん、コイツ、くたばってもうたぞ?」

 みずからの腕の中でくたくたと力なく崩れ落ちていくタヌキのゾンビに、なすすべもなくしたスカンクが地面にくたばる後輩をただ呆然と見つめる。

 悪気はないのらしい。

 これにちょっとげんなりした顔つきのクマがしかたもなさげに口を開く。疲れた感じで、ため息が混じった。

「コバヤさんのおならが臭すぎるんですよ! はあ、もういいです。ならここはもう解散として、鬼沢さんはこのおれが連れていきますから、コバヤさんはその身体をちゃんと癒やしてください。とりあえずアイテムを置いていきますよ。腕を一刀両断にされたのはダメージとしてはやっばりでかいですから、ちゃんとそれなりの療養をしてください」

「ふん、例のこのわいの地元の関西で噂になっとった〝グリーンストーン〟ちゅうやつか? あるいはクリスタルやったか? 気のせいかぶさいくヅラの芸人コンビがこぞって東京に進出してから、こっちでもやけに出回るようになってきたのう?」

「知りません。守秘義務がありますので。でもその話しぶりだとおおかたの見当が付いてるみたいだから、ご自分で確かめてみたらいいんじゃないですか? 同じ事務所の後輩お笑いコンビさんだったらなおさらです」

「しっかり言うとるやんけ? なんやあいつら、ちゃっかりとオフィシャルを公言してからこっちよ来よったんやったな? 世間的にはバレてはせえへんものの、ほんまに難儀なこっちゃで! ええわ、それじゃオニザワは任せたで、クサカベ、将来性のある相棒ができて内心でさぞかしニンマリしとるんやろが、そうそう簡単にはいかへん。せやからやるなら最後までしっかりと面倒見てやれよ……」

 ずいぶんと含むところがあるよな口ぶりで意味ありげな目つきを差し向けるスカンクのベテラン芸人に、まだ若手の芸人はクマの真顔でしっかりと頷いた。

「……はい。そのつもりです。コバヤさんこそ、おひとりであまり無理はしないでくださいね? いつだっておれたちはあなたのこと……」

「知らんわ」

 戦いが終わって自然とあたりの照明が消えていく。

 その暗い闇の中にきびすを返すコバヤカワだ。

 それきり何も言わずに廃墟の中へと消えていく。

 ぷっつりとその気配が途切れたのを見届けて、いまだ地面にくたばるタヌキへと注意を向けるクマ、ならぬ日下部だ。

「さてと、今日はもうここまでですよね。鬼沢さん、とにかく家の前までは送りますから、後はじぶんでうまいことやってくださいよ? 間違ってもシッポとか家族の前で見せたりしないように。たぶん、見えないとは思うんですけど……よいしょっ」

 気を失って自然と身体のサイズがもとの人間のそれへと戻っていく鬼沢に、おなじく人間の姿に立ち返る日下部。

 先輩の芸人を背負って廃屋の出口へと歩き出す。

 夕方の夕日をバックにだったらさぞかし絵になるのだろうが、あいにく今はまだ明るいお昼過ぎだ。

 日差しがまぶしかった。

 おかげでこのおかしな状態が人目につくことを嫌気した後輩芸人は、大股でたったの三歩進んだところで懐から自身のスマホを取り出すこととあいなる。

 帰りは無難にタクシーで送ることに決めた。

 かくしてお笑い芸人の、およそお笑い芸人らしかずしたそれはドタバタした日々が始まるのだった。

 前途は多難だ。

 タクシーの運転士から異様なニオイがしていないかと乗車拒否されかけるのを懸命になだめながら、大きなため息が出るオフィシャル・ゾンビの公式アンバサダー、日下部であった。


                 ※次回に続く……!