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ルマニア○記/Lumania W○× Record #025

※近頃はYouTubeliveで創作活動を垂れ流ししていますw
興味がある方は見て見てね♥ キャラとも絡めるし、一次創作の作者さんで設定があるひとはイラリクもOK!ただし描けるものだけwww 以下は説明の動画と、実際のliveの様子です。まだやりはじめたばっかりなので、誰にも見てもらえない過疎っぷりが痛々しいですね(T_T)


#025

 Part1


 ブッヴ、ヴヴヴーン……!

 常時薄暗く、周りをディスプレイや計器類でびっしりと埋め尽くされたコクピットの中は、狭苦しさに息が詰まるようだ。

 ただ低くくぐもったエンジン音がこの背後から伝わる

 搭乗者であるクマ族用に大きめにあつらえれられたパイロットシート越しに、かすかな振動も伝わってきた。

 するとこれだけで今現在のこの機体の調子がどんなものだか、それと察するパイロットだ。

 口元にはかすかに余裕の笑みがある。

 まだ開発途上の域をでない新型の大型アーマーだった。

 だがこれがすこぶるつきに快調で、ひとつも機体警戒アラートを発することなく、沖合の洋上から目指す大陸の北岸へと進路を進める。

 おかげでこの母艦である中型級空母から出撃して、しばらくはすんなりと視界のすっきりと開けた高空を進むことができた。

 かくして沖合から中央大陸の海岸線を広く眺める景色を見下ろすみずからのアーマーのコクピットで、ちょっと緊張した面持ちでディスプレイを見つめるクマ族の新人パイロットだ。

 一言も発さずに目の前のモニターや計器類を見つめていると、不意に短いアラーム音が弾けて右手のモニターに意識を向ける。

 するとほぼ同じタイミングで、左手側のモニターには相棒の見慣れた赤い機影が、その特徴的なシェイプをした機体の一部を映り込ましてくるのが視界の端に見て取れる。

 まずは先行して出撃したじぶんに、後続のアーマーパイロットがややもせずに追いついて通信回線を開くのだった。

「カノンさん、注意して! ここはもう戦闘空域だよ。そんな大きな機体でボケッとしてると流れ弾を食らっちゃうから!!」

「おうっ、言われなくともわかっておるんじゃ! なにせここからもう目視ができるじゃろう? あっちの高空で激しいアーマー同士の空中戦が、今まさに大空一杯に繰り広げられておるんじゃっ……!!」

 みずからの機体の映すレーダーサイトには、敵味方複数のアーマーを示す、赤やら青色の点やらがそれぞれに複雑な軌跡を描いて交錯している。

 正面からやや右の空域、じぶんから見ておよそ一時から二時の方角にかけて、目にもとまらぬ高速の回避軌道が青一色のキャンバスに幾筋も描き込まれていた。

 加えてビームや弾丸の閃光も無数に重なる。

 ごくりと生唾を飲むクマ族の少尉、カノンである。

 ちょっとビビったさまでぼんやりとした感想を述べていた。

「あ、あの中に今からこのおれたちも混じるんじゃのう? まだ新型のこの慣れない機体で、ちゃんと付いていけるんじゃろうか??」

 ブルルッ……!

 そう武者震いしたのはマイク越しにも伝わったか?

 そのクセいささか緊張感にとぼしい本音に、すかさず右手のスピーカーからは相方の甲高い声音が入る。

「カノンさん、わたしたちはあの中には混じらんよ。そういう通達が入っているの、まさか知らないの? そうやん、精鋭ぞろいのキュウビ部隊には、いついかなる場合においてもこの手出しはいっさい無用!……って、そういう話やったでしょうに。わたしらの艦長からもそう言われてたし……!」

「そ、そうじゃった! この相手もやたらに手強いからヘタに近寄ると無駄にケガをするんじゃったか? 確かにあの敵のやたらに目立つ大型の機体、なにやら普通じゃない迫力があるんじゃ。こうして改めて画面越しに見てみるに……」

 ぽっちゃり体型のクマ族のメガネ男子は、困惑顔で目の前の大型ディスプレイが映し出すリアルタイムの映像に見入る。

 そうした中でも拡大表示したある特定の大型のアーマーには、ほとほと困惑したさまでなおのことこれをまじまじと凝視。

「〝グリーン・デビル〟……じゃったか? おれのこのガマよりもでかいんじゃろうか? とんでもない出力がありそうじゃ!」

「だからそっちはどうでもいいんよ! わたしたちはわたしたちのやるべきことをやらないと。新手が来た! ほぼ真正面!!」

 若いネコ族の女子パイロットの甲高い注意喚起に、手元のレーダーサイトの発する鋭い警告音が重なった。

 これにつと視線を落とすなり、ほぼ真正面、この十二時の方角に新たな敵の反応が〝二つ〟現出したのを、ただちに見てとるクマ族のカノンだ。

 ちょっと慌てた反応返しながら、グッと奥歯をかみしめて気を落ち着かせるように努める。

「わっ、いきなりビックリじゃ! 二機じゃの? ううん、なんじゃ、これは? 敵軍の機体認識のアーカイブ・データに適合するものがひとつもないんじゃが……これはっ……」

 困惑した顔で正面のディスプレイに映した敵影を拡大表示しては、なおさらに目を白黒させる後衛パイロットだ。

 これに前衛を務めるネコ族がいつにました金切り声で応える。

「新型機だよ! 見ればわかるやんっ、あんなのどっちも見たことないもの。そうだよ、このわたしたちとおんなじ、未知の機体……!!」

 戦場にお目見えしてまだそう間もないことでは条件が一緒なのだからビビることはない!とみずからに言い聞かせるイワックだ。相棒ののんびりしたクマ族にも言わんとしていることが伝わっているかと内心で心配にもなる。

 戦況解析とモニタリングを司る機体制御補助コンピューターを操ると、手前のディスプレイに即座に出された解析データを目にして内心で舌打ちしていた。

「奥のやたらでかいヤツはようわからんし、でかい同士でカノンさんがやり合うんやろうけど、手前のヤツは……! 敵のデータではビーグルⅥっちゅうんが一番近いらしいけど、こんなの実機のモニター解析データが少なすぎて参考にならんて! 友軍のアーマーのデータで見ると……えっ?」

 即座にモニターに表示される結果に反射的小さな悲鳴を発してしまって、うわ、聞かれてしまったか?と思わず相棒の顔を映したサブモニターをチラ見してしまう。

 幸いにもまったく無関心なさまでうんうんとうなっているクマ族だ。さてはこちらにはまったく興味感心がないものらしく。

 それはそれでちっと小さく舌打ちして厳しい視線をまた正面に戻す。

「一番近いと推測される機体が、〝ゼロシキ〟!? いいや、それってあのキュウビ部隊のキツネ族のエースパイロットさまが乗ってるっちゅう機体じゃろ? シャレにならんて……!!」

 折しも話に上がったばかりの精鋭部隊、中でも凄腕パイロットが操る高速機動型アーマーの逸話は、アーマーパイロットならば誰しもが聞き及ぶところだ。

 同じ戦域に実物がいて、常軌を逸した曲芸まがいの戦闘行動を繰り返している……が、あえてそちらは見ないようにしていた。

 緊張していた四肢にグッと力を入れ直して、キッと強いまなざしで正面モニターを睨みつける。

 強くおのれに言い聞かせるイワックだ。

「相手がなんであれやるしかないんよ! 高速機動ならこの機体も負けるはずないて、何よりこのわたしが負けるはずないて! カノンさん、行くよ! 援護よろしく!!」

「おう、こっちもよろしくじゃ! やつらにわしらアゼルタの新型機の威力を見せつけてやるんじゃあ!!」

 いざ意気をあげて戦場に立ち向かう男女コンビのアーマーパイロットたちだった。

 そしてこれに相対するのもまた、ふたりの若い男女のアーマーパイロットコンビなのであった。



 Part2


「はああっ、いくよ! エンジン全開っ、フルスロットル!!」

 イヌ族の若い女パイロット、サラは生まれついての勝ち気な性格を全面に押し出してキバをむきながらに吠える!

 ついでに後ろの相棒が乗る機体に向けてしれっと言い放った。

「で、当然、ここからはあたしが先行して先制攻撃ぶちかますから、平社員のあんたはしっかりサポートすんのよ? 敵もちょうど二機で、後ろのでかいのは後方支援型だろうから、そいつを牽制しながら適宜にこちらへの援護射撃! わかってるわよね?」

「わかってるって! 平社員だけ余計だぜっ、戦場でヒラも社長もありしゃしねえだろう? しっかし、ほんとにオレたちとおんなじ機体編成なんだな。サイズから何からドンピシャじゃん!」

 そんなクマ族の相棒の返事を軽く受け流す女社長の前衛パイロットは、ペロリと舌なめずりして捨て台詞よろしく発した気合いの声もろともにアクセル全開に機体を発進させる。

「あんたのカンて当てになるの? ま、わかってるんならちゃんとやることやってよね! あたしもあたしのやること全力で振り切るからっ、それじゃよろしく!!」

「ケガすんなよ! こっちもうまくやるからボーナスの査定よろしく!!」 

 味方のでかい機体をその場に残して単機で先行したこちらに対して、あちらも大型の支援機を後方に待機させたまま、小型の高速機動型らしきが前進してきた。

 まっすぐこちらめがけて!

 これには真顔で睨んだその口元に、ニッと不敵な笑みが浮かぶ勝ち気なイヌ族の女社長だ。

「へえ、気が合うじゃん? 相手してくれるんだ! あんたのその派手な機体って、いわゆる高速機動型の突撃強襲機(アサルト・アーマー)ってヤツでしょ? あたしのと一緒でさ!!」

 全身が派手な赤色で塗りたくられた相手の機体めがけて、こちらはこの全身が派手なピンクで塗りたくられたファッショナブルな機体が、まっすぐに空を切り裂いてゆく。

 周囲からやかましく警告音が鳴り響くが、それをかき消す金切り声で叫ぶサラだ。

「じゃあこのドンピンと勝負しようよ! 見た目の派手さじゃ負けないし、性能やテクでも負けやしないから!! そらあああああっ!!」

 殺意をみなぎらせてターゲットサイトを睨む勇猛果敢な若き女パイロットだ。

 有効射程もぎりぎりですかさず引き金を引きしぼって、戦いの火ぶたをみずから切って落とすのだった。


 Part3


 空中戦仕様における近接戦闘特化型の高速機動機と、これを後方から支援するための火力強化型の大型機――

 まったく同一の機体構成によるアーマーユニットの一騎打ちは、まずは前衛の格闘戦を担う機体同士の激しい空中戦、ドッグ・ファイトからはじまった。
 
 エンジン全開!!

 アーマーの高速旋回軌道による激しいGの抵抗をその小柄な身に受けながら、ギリギリと奥歯を食いしばって眼前のターゲットサイトを凝視するネコ族の女子パイロット、イワックだ。

 迎え撃つ派手なピンクの機影を必死に正面ディスプレイの真ん中に据えるべく、みずからの機体を操る。

 が、相手の高速機動型アーマーは、その出だしから無鉄砲な突撃機動を畳がけてくれてばかりで、こちらには冷静な射撃操作をさせてくれない。

 ものすごいプレッシャーだ。

 思わず舌打ちして金切り声を発しかけたところに、ディスプレイの端っこに何かしらのサインと短い発信音を聞き付ける。

 それが背後の僚機からの合図だと即座に察するネコ族だ。

 苦い表情で正面をにらみ付けながら低い唸りを上げた。

「くっ、無駄ダマなんて撃ちたくはないけど、撃たないと何もはじまらないんよ! それじゃあ、カノンさん、ゆくよ!!」

 みずからのアーマーが構えたハンドカノンを一斉射!

 まだ狙いが甘い三つの赤い弾光は、虚しくも敵の残像のみを捉えて大空の彼方へと飛散する。

 だがそれとほぼ同時に、短い警告音がまたもや鳴って左右のサブ・ディスプレイが黄色く発光するのを確認!

 後方支援機からの援護射撃がなされたサインであり、ただちに右手の空を旋回してこちらに機体を向ける敵機へとめがけて鋭い閃光が走るのを、正面の画像の中でも認める。

 惜しくもギリギリでかわされるが、この機を逃すまいと正面に向けた意識をまた別方向からの警告音に邪魔されるイワックだ。

 友軍機からのものではなかった。

 ならば相手側の支援機からの長距離射撃であると反射的に悟って、機体にとっさに急旋回をかけてこの射線から逃れるネコ族の真紅の機体だ。

 また鋭い舌打ちが漏れ出た…!

「チィッ……! 考えることはみんな同じなんよね? でもあたしとカノンさんのほうが息が合ってる! そやったらこのまま押し切るよ、カノンさん!!」

 背後に控える味方のクマ族の乗る大型機へと気合いを発して、みずからもまた正面を睨み据えるネコ族の女子パイロット、イワック・ラー准尉である。

 果たしてこの相手方となるこちらはイヌ族の女子パイロット、サラはけんか腰のセリフをやかましく浴びせ倒していた。

「へえ、それって見かけ倒しじゃないんだ? よく動くじゃん! でもその機体、小回りは利くけど直線のスピードはそんなでもないよね? あんた腰が引けてるんだって、せこせこしないで勝負しなよ! あと後方、もっとちゃんと援護しな! それでボーナスなんざ、ちゃんちゃらおかしくておはなしにならないよ!!」

 相手までか味方にまでも罵声が飛ぶのには、通信機越しに若い男のクマ族の不本意そうな声音がゴチャゴチャ聞こえるが、一切無視して正面に集中!

 激しい上下運動をして味方からの援護射撃の射線をかわす赤い機体に狙いをつけた。ギリギリまで距離を詰めての撃破に意識を切り替える。もとよりそのつもりの彼女だった。

 そしてこの後方、若い灰色のクマ族のパイロット、ニッシーはにやけたツラで文句を垂れながらも、その両手はいそがしく周りのコンソールのスイッチをなで回す。

 目つきはぬかりなく鋭くして周囲のモニターをくまなくにらみ付けていた。元ゲーマーのカンが今が大事な局面、ボス戦であると告げている。初見であろうと遅れを取るつもりはなかった。

「ちぇっ、好き勝手に言ってくれるなっての! こっちはまだ慣れない新型の機体なんだぜ? おまけにオレは新米パイロットで、じゅうぶんやってるつうの!! にしても良く動き回るよな? こんなにあっちこっちに動き回られたら狙いもろくにつけられないぜっ、もっと圧をかけて動きを止めてくれよ、社長!! んっ……!?」

 調子よくガヤを飛ばしている最中にも、不意に正面ディスプレイ上に注意喚起のサインと強めの警告音を聞き付ける。

 画面ずっと奥に控える敵の大型機が、こちらに狙いを定めているのだとひと目で判断できた。こちらも大型機だからそんなに急激な回避機動は取れない。まだ十分な間があったからそんなに気にもとめていなかったのだが、算段が狂ったと低い舌打ちする若い灰色熊だ。

「おいおい、気が早いな? まだ有効射程の範囲外だから意味ねえだろ? それともそこからでも届くってのか?? いいぜ、だったらやってやるよ! カモン!! 撃ち合いなら誰にも負けねえっ、やれるもんならやってみやがれ!!!」

 ターゲットのサインがまだ射程外のイエローの十字マークに手早く起動操作をかけて、相手のブサイクな見てくれの茶色い大型ーアーマーに意識を集中!

 味方が演じている空中チャンバラは画面の右端に追いやって、みずからのでかい獲物を大写しに正面に据える。

 大型の高出力キャノンは発射から再チャージまで時間がかかるため、無駄撃ちは禁物だ。絶好の機会を狙いながらターゲットに意識を集中。黙り込む室内に無機質な電子音と低いエンジン音がこもる。

 ごくりと息を飲みながらこの利き手のトリガーを引き絞るタイミングは、奇しくも相手の大型機とまったくの同時であった。

 時を同じく、こちらはおのれの正面のディスプレイに意識を集中する、全身が焦げ茶の毛色のクマ族――

 カノンは地味な灰色だった敵マーカーが、今やオレンジの点滅をしてこちらにレーダーを集中させていることに、なぜだかちょっとだけ安堵のため息をついていた。

 危うく相方のネコ族に怒られるとこじゃった…!と軽く額の汗をぬぐったりもする。

 相手方の支援機を牽制するべくこれに狙いを定めたのはいいものの、まったくの射程外で全ての操作を無効化扱いされて慌てふためいていたついっさきだ。

 言えば完全にしくじっていたが、思いも寄らないことこれにまんまとあちらが応じてくれて、めでたく一騎打ちの様相になだれこんでいる。

 そうでなければ今頃、相棒のアーマーが2対1の構図でピンチに陥っていたやもしれなかった……!

 とりあえずで牽制は成功していたんじゃなと内心で胸をなで下ろして、改めて正面に据えたターゲットシグナルに意識を注ぐ。

 アーマーが機動できるギリギリの大気圏高度から落ちてきた相手機と比べて、沖合海面の空母から出撃したこちらは位置的やや低いところから敵機を見上げるかたちだ。

 長距離の射撃ではやや不意な立ち位置をどうやって挽回するべきかと考えながら、無意識にアクセルをふかして距離を詰めてしまい、かろうじて相手を射程圏内に納めてしまう。

 小さく、あちゃあ!とか言ってしまって、相棒には悪いがこちらに専念させてもらうことにする新米の少尉である。

「んぬぬっ、位置が悪いが今からエンジンふかてしまったんじゃ撃ち合いに支障が出るんじゃ! 全てのちからを背中のハイパーキャノンに集めて相手を撃破するんじゃ!! おれはこのガマ・ガーエルを信じておるんじゃあ!!」

 気合いを発して必殺の一撃見舞うタイミングを推し量る。

 攻撃は最大の防御!

 一撃で決められれば文句なしだが、万一にこれをかわされたら逆にこちらがピンチになる。かわすにも方法はさまざまあり、その場に即した最良の一手を放ち続けたものが戦場では生き残る。

 安易なラッキーパンチばかりを望んでいては、はじめの一手で詰んでしまうのだ。

 機体に展開する防御シールドとキャノンのエネルギー調整を意識しながら、命中率がゼロから10%、20%、30%と跳ね上がっていくスコープの中の敵影がくっきりと浮かび上がったところで、思い切って大きな賭けに出るまだ若いパイロットだ。

「信じてるんじゃあ! ガマ!! フルパワーであいつを撃破するんじゃあああああっ!!!」

 ありったけのパワーを注ぎ込んで大きな機体がこの右肩に背負う大出力のビームカノンを最大出力で一斉射!

 たっぷり3秒トリガーを引きしぼって、大慌てで回避行動に取りかかった。

 手元のメインエンジンの出力ゲージはまだ50%を切ってはいなかったので、比較的スムーズに推進エンジンをふかすことができた。

 この時、無理に防御シールドを張ってしまおうものならなおさら機体の高度が下がってしまうと、覚悟を決めて高度を上げる回避機動を取る。相手めがけたビームはまだお互いの距離もあり、あえなく手前でシールドにはじかれてしまったことと、高くから撃ち下ろされた相手側のビームは出力不足で3割も届かなかった結果がはじき出される。

 これらの結果を考え合わせてさらに出力された互いの射撃性能値にメガネの奥の目つきが厳しくなるカノンだ。

「むむ、命中率はトントンなのにキャノンの威力があちらのほうが上と出ているんじゃあ! 納得いかんのじゃあ! じゃったらもっと近寄ってミドル寄りのロングから見舞ってやらなければならないんじゃ!! 負けないんじゃあ!!」

 見かけの機体構造からこの推進システムがよくわからない正体不明機に特攻をかけるくらのい意気込みで、シートに踏ん張ったみずからの四肢に力を入れ直す若いクマ族の少尉だった。

 メガネの奥でまばたきすることもないつぶらな瞳で一心に相手の大型機に見入る。もはや味方のネコ族のことなどそっちのけで熱くなるばかりだ。

 これに上空から臨む相手のクマ族も息巻いて野次を飛ばしていた。

「おいおい、せっかく相手してやってるのにえらい肩すかししてくれるじゃねえか? そんなもんなの? だったらおれのこのジンの敵じゃありゃしねえっ! 次で決めてやるぜっ!!」

 みずからの機体の堅さ、防御力が想像以上にあることに気が大きくなっているニッシーだ。ただでさえでかいのにシールドがガチガチに固くて展開もスムーズにできたのにある種のゲームのチートキャラにも似た感覚と快感を覚えていた。

 これならヤれる!!

 鼻息荒く目の前の敵アーマーを凝視する平社員だ。

 社長さんのことはすっかり失念して目の前の敵とのビームの乱打戦にのめりこんでいた。ゲーマーの悪い癖なのかも知れない。

 さっきはビビってバリアをガンガンに張りまくって肝心のキャノンの出力調整がおろそかになっていたが、今回は違うと前のめりに眼前の大型ディスプレイに張り付く。

 まさしくゲーマーの戦闘態勢だ。

「カモンカモン! さあ撃ってこいよっ、今度はばっちりかましてやるから!! そらっ!!」

 機体が内蔵した大出力のエンジンの作り出すエネルギーを各部に配置して微調整しながら戦闘機動をやりくりするのだが、おおよそは機体の制御コンピュータ任せでもここぞという時はパイロットのカンと決断が大きく結果に左右する。

 そのここぞの場面がまさに今であり、必殺の気迫を込めて相手機の挙動にかじりつくクマ族ゲーマー、ならぬ、パイロットだ。  

 じりじりと距離を詰めてくる相手の大型機は決めて手の高出力キャノンで勝負をかけてくるのは見え見えだった。でかい図体同士で被害が甚大になるのが決まり切っている格闘戦なんてまっぴらごめんである。大出力エンジンと火薬を満載した大型機をいざ撃破した時の反動と衝撃を考えたら、ギリギリロングで仕留めるに限る。
 



 


 

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