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ルマニア戦記/Lumania War Record #016

#016


Part1


 小隊に新しくベテランのクマ族たちが加わって、貧弱だった部隊編成が見違えるほどに強化されたのだが、これが実際にみなでそろって出撃するのは、それから実に三日も後のことであった。

 もろもろの都合、母国を遠く離れた彼らの母艦が公海上にしばしの足止めを食らうことになったのと、パイロットが万全だからとこの機体の調整までが万全とまでは行かなかったことがあり。

 加えて全てが新型開発機ばかりのアーマー部隊は、この機体のマッチングに非常な手間暇がかかるのだ。

 よって晴れてハンガーデッキの格納庫から海風をともなった外界を臨めたのは、およそ70時間も後のことなのであった。

 言ってしまえば寄せ集め部隊なのだが、性格おおざっぱなクマ族たちが仕切り直しをするには、およそ十分な時間である。

 ベアランド小隊(第一小隊) 隊長・ベアランド少尉(クマ族)、部下・ダッツ中尉(クマ族)、ザニー中尉(クマ族)

 広く視界の開けた専用の中央カタパルトからモニター越しの外界を眺めるアーマー部隊の隊長は、楽しげに舌なめずりした。

「さあて、いよいよ出撃だね! 予定通り、ここからずっと先に見えるあの大陸の内陸部を目指すんだけど、ぼくのランタンはいいとして、そっちのビーグルは燃料、大丈夫かな? どっちも股の下にくっついてた、あのばかでっかいプロペラントを外しちゃったでしょ?」

 見た目にずいぶんな幅を利かせていた燃料タンクをすっかりと取り外されていたのを思い返して、なにげに聞いてやるのに、左右のスピーカーからは問題ないとのおじさんたちの返事がただちに返ってくる。

「かましまへん。よっぽど過酷な最前線ならいざ知らず、まだ序の口でありますよって……! せやからどうかぼくらのことは気にせんといてください」

「ここも最前線なんちゃう? まあ問題あらしまへんわ。おれたち新人のワンちゃんたちとちゃいますから! ふふん、見といてください、バリバリ活躍してやりまっせ!!」

「そいつは良かった♡ それじゃあミーティングのとおり、ぼくらは派手に暴れ回るとしようか! あらかた近海の敵を蹴散らしてから、母艦をともなっていざ目指す南の大陸、アストリオンに上陸と……!!」

「了解!!」

 あいにくとここからではどちらも機体が見えないのだが、左右のハンガーデッキに分かれて待機している、青と赤の機体のクマ族たちからの返事に満足して、みずからも出撃に備えるベアランドだ。

 すると上面のスピーカーからは短いアラームと共に、この艦の主の声が響いてくる。

「ん、ブリッジのンクスだ。各機とも準備いいな? ただいまより〝アストリオン上陸作戦〟を開始する。各自健闘を祈る! 第一、第二部隊、共に必ず本艦に戻ってくるように……!!」

「もちろん! 了解♡ ……て、横にいるはずのあの副官どのは今はいないんだね? どこで何をしているんだか」

 小声で言ってマイクには入らないように配慮したはずが、正面のモニターの中のスカンク族の上官どのは、これが小さく咳払いするのに、ちょっと苦笑いで了解する隊長だ。

 無用な詮索はしないことだと……!

 画面の横のほうでちょっとだけ見切れている犬族のオペレーターが発進のコールを送るのに、また了解して正面に向き直る。

「少尉どの! こちらは制御室のリドルです! ランタン、発進準備OK、ランチャーカタパルト、今回は70で行きます!! よろしいですか?」

 艦長に代わって響いてきた、カタパルトデッキのアーマー発進制御室に詰めている若いクマ族の言葉には笑顔で応じる隊長だ。

「そんな遠慮しないで100でいいのに! それじゃ、先に行ってるよ! ふたりとも後から急いで追いかけて来てくれ、こっちはいざ走り出したら止まれないからね?」

「了解! て、ランチャーなんちゃらって、なんのこっちゃ?」

「知らん。見てればわかるんちゃう?」


「なら見て驚けよ。ただごとじゃありゃしないから……!」

「あはは! それじゃ、システム発動、健闘を!!」

「了解!!」


 どうやら第二部隊の巨漢のクマ族のメカニックも通信に混じっているらしいのに、なおさら笑顔になって身体中に力を入れる。

 一瞬後には巨大なGが全身に掛かりながら機体が弾丸のようにカタパルトからはき出されるのを体感していた。

 ベアランド機出撃!!

 カタパルトから発射されて、これがあっという間に見えなくなる隊長機の後ろ姿に、後から発進を控えた部下のクマ族たちは、騒然となってこれを見送った。

「はああっ、ちょ、ちょいまち! なんや今のあれぇ? あの隊長、いったいなにしてはるん??」

「わからん。あんなのアーマーの発進とちゃうんやない? ほんまにどうないなことになってはりますのん??」

 カタパルトの左右で困惑した通信を交わすクマ族たちに、デッキの中央コントロール・ルームの巨漢のクマが答えた。

「ふん、しょせんは人間わざじゃありゃしないのさ。あの機体じゃなければ空中分解必至の、弾丸ミサイル級の強引なマスドライバー発進、もとい、強制発射システムだ。おい、間違っても真似しようだなんて思うなよ?」

「思わへんて! あないなもんシャレにならへんやないですか? ちびりそうや、発進するのがこわなってきた!!」

「いいえ、ご心配なく、そちらのカタパルトシステムはごく通常のものですから! それではダッツ中尉、ザニー中尉、どちらも準備はよろしいですか?」

「ほえ、ちょい焦ったけどかまへんよ。お好きなタイミングでどうぞ。ぼくら同時の発進でかまへんから。はよせんと追いつかないやろ、あれ?」

「それ以前にこっちの第二部隊が待ってるんだ。早いところカタパルトを空けてくれ。ほら、とっとと出しちまえよ!」

「あ、はい、それでは健闘を祈ります! 両機ともカウント3で同時発進、3、2、1、カタパルト・Go!!」

「了解!!」

 全身を青と赤で塗りたくられたいかつい人型の機体が、左右のカタパルトから青空へと向けて同時に飛び立っていく!

 先に飛び立って行った緑色の隊長機を追って、どちらもまっすぐに白い軌跡の飛行機雲を描くのだった。

 これこそがいかついクマ族のみで編成されたアーマー小隊の記念すべき初陣であり、後に赤、青、緑の鬼の三原色部隊と恐れられる飛行編隊の誕生なのであった。


 Part2



 雲一つもなくした快晴の青空。

 轟音を立てて緑色の巨大な機体が大気を切り裂く。

 周りの空気との激しい摩擦で赤い蒸気めいたものをその全身にまとわりつかせながらにだ。

 耳を澄ませば風切り音もしてきそうなコクピットの中、目指す大陸の目前でゆっくりと操縦桿に手を伸ばして、しっかりとこの両手に掴み取る。

 深呼吸をひとつして機体のコントロールをみずからに手に持ち直すクマ族だ。

「よっしと……! 予定通りのポイントに無事到着、このぼくが一番乗りだね!! 敵さんもまだ見当たらないし?」
 
 まずは母艦から単機で先行して、無理矢理な出力と加速度にもてあそばれる機体とこの速度が、やがて通常に落ちるところまで安定させてから、いざ周囲の状況を見回すベアランドだ。

 レーダーサイトには今のところこれと言った反応がないが、じきにやかましく警告音が鳴り響くのはわかりきっていた。

 弾道ミサイルさながらの強引にして急速なアーマー発進は、敵の裏をかくのには便利だが、味方をことごとく置いてけぼりしてしまうのがたまにキズだ。

 よって静かなモニターの向こうに広がる大陸を見ながら、誰にともなしひとりごとみたいな文句を発する隊長のクマ族だった。

「は~ん、こうして見てみると、目標の空軍基地ってのはほんとに内陸にあるんだな? ここからじゃまだ確認ができないよ。もっと高度を上げれば見えるのかな? どうしたもんだか……! このまま単機で先行しても良さそうだけど、やっぱりベテランのパイロットさんたちを待ってたほうがいいよね?」

 言っているそばからレーダーサイトに複数の反応が出現!

 敵を表す赤の点(ドット)と、味方を表すそれとがほぼ同時にサイトの中に前と後ろからポツポツと発生するのだった。

 中でもサイトの後ろ側、背後から追いついてきた味方の友軍機の二機のアーマーのパイロットたちからただちに通信が入る。

 お国言葉のなまりが激しいおじさんのクマ族たちだ。

 緊張感をみじんも感じないお気楽なセリフを発してくれた。


「戦場の青いイナズマ! ダッツ・ゴイスン、ただいま到着! やっと追いつきましたわあ、隊長さん、早すぎやって!! 」

「ほんまに早いわあ! ひとりで何をそんなに急いでますのん? ひと呼んで赤い旋風のザニー・ムッツリーニ、おなじく到着しました、そいで敵さんも、もうぼちぼち来てはるんですな?」

 はじめに青い機体のクマ族の威勢のいい文句が耳朶を打つ。

 到着するなり回りの状況を適宜に把握しているこちらは赤い機体のクマ族のベテランパイロットの言葉に、すぐさま了解してモニターがマークする敵の機影を確認するベアランドだ。

ベアランドの乗機、バンブギン、通称ランタンと、ザニーとダッツの乗機、ビーグルⅥ・プロトタイプ(まだ描き掛け)


 おそらくはどこか遠くの洋上の母艦か、さらに遠くの大陸の西海岸の敵基地から飛び立ったものとおぼしき航空機いくつかが、こちらに向けて急速に接近してくるのをそれと認める。

 よって完全に慣れきったおじさんたち同様、こちらもいささかも焦ることもなくして、こともなげに言ってやるのだった。


「ああ、ジェット・フライヤーか! ああいう航空機タイプって、大抵は無人機なんだよね? 本命のアーマーが到着するまでの時間稼ぎぐらいなもので。だったら、さっさと落としちゃお♡ それじゃ主役のアーマーが来たら、各自で対応お願いね!」

 言いながら操縦桿のトリガーを二回、三回と引いて、迫り来るジェット機をことごとく打ち落とす隊長の緑の大型アーマーだ。

 そのまるで容赦がなくあっさりとしたさまに半ば感心したようなおじさんクマ族たちの返事が返る。

「了解! にしてもなんやちょろい作戦みたいやんな? 思うたよりも敵さんおらへんし、このまま海岸線の先まであっさり突破できそうやわ!!」

「せやんな、隊長さんのそのアーマーやったら敵なんかおらへんのちゃう? あ、来ましたで、本命のアーマー部隊! なんかひょろっちいのがこっちに向かって来てはるけど、あんなんおったったけ??」

「ん、ああ、あの見覚えのあるカトンボは、敵の新型機だね! 以前に会敵したことがあって、そんなには苦戦しなかったんだけど、あれとおんなじか別の同型機なのかな? どっちにしろそっちのビーグルで十分に対応できると思うよ」

 正面のメインモニターの中央に捉えた、どちらも見覚えるのある特徴的な細身のデザインの二機の軽量級アーマーに、だがこちらはまるで感心なさげに答えるベアランドだ。

 形状がまったく同じ見てくれのふたつの敵影は、おそらくは以前にやり合ったものと同一の機体なのではないかと思われた。

 前回、さして苦労することもなく撃退していたこともあり、こちらの経験豊富なベテラン勢ならそう手こずることもないだろうと確信する隊長さんだ。

 これに手練れのクマ族のパイロットたちが即座に応ずる。

「カトンボでっか? ふう~ん、なるほどや、ほなここはこのぼくらに任せてもらいましょうか、よって隊長さんはそこで気楽に見といてください」

「よっしゃ、やったるでえ! あないなひょろっちいザコちゃんアーマー、一発どついたらそれでしまいや!!」

 モニターの左右で不敵な笑みを浮かべる赤毛のクマと灰色グマをいかにも頼もしげに見ながら、こちらは若干の苦笑いになる茶色の若いクマ族だ。

「あんまり油断してると機体にキズをつけちゃうかも知れないよ? まだ初戦なんだからなるべく手堅く行ってよね! それじゃ、お言葉に甘えてぼくは高みの見物させてもらうけど、第二小隊のシーサーがなんか下からやかましく言ってるから、ちょっと高度を上げてぼくらはもっと上空でやり合おうか?」

 天井のスピーカーから何やらやかましい文句が入って来たのは、後発の第二小隊が追いついたその直後のことだ。

 小隊隊長のウルフハウンドのものだったが、これに傍で聞いていた赤い機体のパイロットのクマ族が了解してくれる。

「ああ、それやったらこっちにもテキストで入電しておりますな? なんやえらい怒ってはるようやけど?」

「尻にくっつけとる新人のワンちゃんたちがやりづらあてしゃあないから、おれたちみたいな邪魔もんはどっか遠くに行ってくれゆうてはるんやろ? なんやめっちゃひとりよがりやんなあ、そないなもんはそっちで面倒みたれよ!」

「まあまあ、言ってること自体は間違ってはいないんだから! あんまり混戦状態になったら同士討ちもありうるし、距離はちゃんと取っておこう。それにこのぼくのカンだとそろそろやっかいなのも出てきそうな頃だから、いざそっちに対応するためにも、スペースはなるたけ広く取っておかないとね♡」

「はあ? なんのこっちゃ? お、カトンボが早速こっちに来よったで! 相方、ようやっとこの腕の見せ所や、ぼくらの得意の空中殺法、ヤツらにガツンとお見舞いしたろ!」

「ガッテン!!」

 さすがにお互い息の合った熟練パイロットたちだ。

 同時にこの機体を海上からさらに上空へと舞い上がらせていく。

 するとこれを追いかけるかたちで敵の二体のアーマーも次次に上空へと導かれるように機体を上昇、一定の距離を保ちながら互いににらみ合うかたちとなった。 

 やかましく通信交わしながら機体高度を一気に上空にまで押し上げて新型機同士の一騎打ち、もとい、コンビ対コンビの空中戦タッグマッチが始まるのだった。


Part3


 ところ変わってこちらは対戦相手となる、敵側のアーマーパイロット、犬族のモーリィがいまいましげな愚痴ともひとりごとともつかないセリフを正面のモニターに向けてがなっていた。

 年の頃で言えば青年の若手パイロットはとかく血気盛んだ。

「ん、ちょい待ち、あっこにやなヤツがおるでぇ? いつぞやのでっかいお化けアーマー! おまけに子分を2匹も連れとるやんけ!! しんどいわあ、このまま知らん顔して帰ったろか? やってられへんやろ!!」

 あっさりと敵前逃亡をほのめかすのに、これを受ける相棒のこれまた犬族の、もさもさ顔したリーンが明るく答える。

「銃殺刑にされるんちゃう? せやったら少しは相手をしたらな! あのでっかいのは手をつけられへんとしても、子分さんはどうにかできるんちゃうん? なんや見たこともないようなアーマーやけど!」

「はん、しょせんはひとさまの領土やゆうて、みんなで開発機の実験しとるんかいな? えげつないわあ! せやけどあっちはやる気まんまんらしいから、それなり相手してやらな失礼になるんかの? ええわ、そやったらこっちも星を挙げて正規軍の仲間入りさせてもらお!」

「なんや、結局はやるんかいな!」


「当ったり前やろ! ちょうど二対二でええ勝負できそうやし、大ボスはずっと後ろに構えてはるから手を出す気はないんちゃう? 前もやる気なさそうやったから、ひょっとしたら本調子ちゃうのかも知れへんやん。こっちは本命の後続部隊が来よるまで持たせたればいいゆうてはったから、のんびり持久戦としゃれ込ませてもらお!」

「せやんな! ちゅうかわしら真打ち登場までの噛ませ犬かい」

「ええわ、ほな噛ませ犬もあなどれんちゅうことを見せたるわい!」

 再び登場! 関西弁の犬族キャラコンビ、モーリィとリーンの若手パイロット! アーマーは新型のロータードライブ型!!


 さも息の合った漫才みたいな掛け合いをしながら、じりじりと相手との距離を詰める、二体の飛行型アーマーだ。

 緑の大型アーマーを奥に控えさせた状態でこの前に立ちはだかる二機の青と赤のアーマーに、それぞれが個々に狙いを定める。

 果たしてはじめに仕掛けるのはどちらなのか?

 抜けるような青空の下で息もつかせぬ緊張感が高まった。

 これを傍から見ていた隊長のベアランドは、その静かな立ち会いに、それでも結果は知れていると周囲への警戒を怠らない。

「悪いけどその華奢で非力なアーマーじゃ、うちの大ベテランのおじさんたちには敵わないよね。むしろ問題はその後で……! 西岸の本拠地からより強力な増援部隊が来るのは明白で、本番はきっとそこからなんだ」

 そう言っているさなかにも眺めているモニターの中では、青いアーマーが瞬時に素早い機動に入るのだった。

 こちらにより先行していた敵のアーマーに向けて、ただちに一直線の突撃機動、激しいチャージをかける!

 空中での接近戦を果敢に挑むのをただじっと眺めていた。

 胸の内ではちょっとした胸騒ぎを感じながらにだ。

 大気を震わす轟音が鳴り響いた。

 戦場の青いイナズマ!ダッツと、赤い旋風、ザニーの専用ギガ・アーマーの図、とりあえずこんなカンジ?


 みずからを青いイナズマと言った通り、強力なターボジェットエンジンをいくつも搭載したアーマーは、そのずんぐりした見てくれによらない、急速発進と加速度で一瞬にして敵アーマーとの間を詰める。

 そのままショルダーチャージでも仕掛けそうな勢いだったが、すんでの所で急停止してアーマーの右手に装備したハンドカノンを相手めがけて振りかざす、ダッツの青いアーマーだ。

 その名を「ブルー・サンダー」。

 歴戦の勇者である中尉が、その幾多の戦火の中で勝ち得た、数ある異名の中の一つだと、そうベアランドは聞かされていた。

 まさしくだなと思う反面、さっさとケリをつけないでもったいつけたように相手にその銃口をちらつかせただけなのには、内心であれれ?と首を傾げてしまう。

 言ってしまえばまだ本気の本調子ではない、およそ遊んでいるような印象を受けるのだった。

「あらら、大丈夫かね? 窮鼠猫を噛むって言うし、あんまりなめてちゃいけないんじゃないのかな??」

 ちょっと突っ込んでやろうかと通信をオンにした途端、左側のスピーカーからやかましいがなり声が響いて面食らう隊長だ。

『見たかおんどれぇ! ビビッてんちゃうんか? 次はマジでやったるから覚悟せいよ、おおら行くで、おらおうらおらぁ!!』

「わっ! びっくりした……まあ、心配ないみたいだね?」

 結果、何も言わずに通信をオフにする隊長さんだった。

 ダッツからの猛攻に明らかに動揺する灰色の飛行型アーマーの中で、若い犬族のモーリィはあられもない悲鳴を上げてどたばたとのたうちまわっていた。

「わ、なんや! いきなりそないなむちゃくちゃしくさりおって、ぶつかってまうやないか!? は、挑発としるんけ? ええ根性やな、ええわ、やったるわ!! おおおおおおおおおうらあっ!!」

 機体の小回りを活かした空中の接近戦ならいくらでも勝ち目があるとあえて相手の挑発に乗ってやる若手のビーグル族だが、負けん気が強いのが今は仇となりつつあるようだった。

 空中での制止機動や上下運動が得意なロータードライブの利点を最大限に用いて右へ左へと機体を揺らして相手を翻弄するはずが、目の前のスピードとパワーが取り柄なだけのジェットドライブタイプはなんら苦も無くこちらの動きについて来ている。

 むしろこちらが翻弄されかけて、相手の構えた銃口の照準をずらすのに今はただただ必死のモーリィだった。

 ギリッと厳しく結んだ口元から、果ては言葉にならない悲鳴じみたものが漏れ出る。

 これにこちらが押していることを確信してますます本調子になる青のアーマー、ベテランパイロットのクマ族のダッツは舌なめずりして正面のモニターに凄みを利かせた。

「かっか、いい気味や! 小型で小回りが利くからこないなドッグファイトやったらじぶんのほうが有利やと思っとったんやろ? ざまあかんかん!! ジェットのパワーを最大限にかましながらの縦横無尽の空中殺法がこの青いイナズマこと、ダッツ・ゴイスンさまの最も得意とするところやからの! じぶん、もうフラグ立っとるでぇ? 観念しいや!!」

 あと一押し、ないしふた押ししたらばっちり照準を定められると勢い込んだところに、甲高いアラーム、警告音が鳴り響く!

「んっ、ちっ! おおい、いいところなんやから邪魔させんなや! あとのヤツはおのれの領分ちゃんけ?」

『わあっとるわ! そうやって間で遊ばれとるからやりづらいだけで、もうこっちもええとこまで追い詰めとる……!』

 片やお互いに距離を置いての銃撃戦にいそしんでいた赤いアーマーの相棒が、通信機越しにやや不機嫌な返事をよこしてくる。

『レッド・ストーム』と自身の異名から取ってつけた赤いジェットドライブ・タイプのアーマーは、相棒の青い機体のそれとは一部の仕様が異なるだけで、見た目ほぼ同一タイプの機体だった。

 背後から赤い一条の閃光が一直線に走ると、それきりやかましい警告音がピタリと鳴り止む。

 後方支援に回っている敵アーマーの射撃マークが外れたのが直感的に理解できたが、実際にてんで見当違いの方向に銃弾がばらまかれるのに相方の援護が適正に働いたのを現実にも理解する。

 舌なめずりするダッツは鋭い視線をモニターの正面に据えた。

 相手の灰色の機体は前後左右へと激しく回避運動をするのに、そのさまが今は獲物の子鹿が震えているかのように見えていた。

 そしてこのさまを傍から自機のコクピットの中でのんびりと構えて見ていたベアランドは、決着がじきに着くだろうことをそれと予感していた。

 言うだけあってさすがベテランのクマ族コンビは、それは腕利きのパイロットたちだ。

 激しい戦火を幾度もくぐり抜けて来ただけのことはある。

 思っていた通りかそれ以上の出来に内心で満足しつつ、目ではてんでよその方向を見ながらに、またもうひとつの予感が現実になりつつあることをそれと確信するベアランドだ。

「やっぱり、おいでなすったか……! まさしく今回の本命、さしずめ真打ち登場って感じなのかな?」

 目の前のレーダーサイトには、大陸の北西部の方角からこちらに向けて急スピードで接近する、三機のアーマーらしき点滅が灯っていた。

 抜けるような青空の下、暗雲が立ちこめるのをただひとりだけ実感しつつある若いクマ族の隊長だった。


  次回に続く……!




状況 海上 ベアランド 単機でアストリオンの北岸域へ…
  ダッツ、ザニーと合流の後、敵方のモーリー、リーンと交戦
  第二部隊が合流、上空へ ← キュウビ小隊

「アストリオン上陸作戦」プロット
  アストリオン情勢

アストリオン・中央大陸(ルマニア・東大陸/アゼルタ・西大陸)
アストリオン・種族構成・ブタ族、イノシシ族、イノブタ族などがおよそ半数を占める。アストリオン自体は宗教色の強い、宗教国家でもある。元首・イン ラジオスタール アストリアス(家)

アストリオン・大陸構成
東側 アストリオン 60%
中央砂漠 空白地帯 25%
西側 ピゲル大公家 15%
 西側は過去にあったルマニア(タキノンが領事だった?→タルマとの確執になる?)とアゼルタのゴタゴタで独立を宣言したピゲル公爵の独立領となり、後にアゼルタと同盟関係になる。

主人公、ベアランドたちが目指すのは、大陸の北岸地域から侵入して、大陸内陸部の中央砂漠にあるアーマー基地。今は西の大公家と結びついたアゼルタの支配下にあるのだが…?
 実は無人化している?? レジスタンス(ベリラ、イッキャ?)の暗躍…!

Part2 ベアランド小隊、
 敵キャラ、モーリーとリーンに遭遇 
          ↑
Part3     キュウビ小隊、出現!!
    キュウビVSダッツ、ザニー…!

    移行、アストリオンに上陸……
  基地の占領完了と同時に、アストリオンからの守備部隊と合流?←ジーロ艦に合流したダイル?

プロット
ベアランド小隊、出撃 ベアランド、ダッツ、ザニー
ウルフハウンド小隊、出撃 ウルフハウンド、コルク、ケンス

ブリッジ 艦長 ンクス、オペレーター ビグルス
     副艦長は何故か不在?

 友邦国のアストリオンの北岸域から侵入
 内陸の基地を奪還、そのまま寄港するべく

 海と空の戦い キュウビ小隊出現

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ルマニア戦記/Lumania War Record #015

#015

Part1


 一難去って、また一難……!

 戦場の嵐はどうにかこれをくぐり抜けたはずなのに、また新たな嵐に飲み込まれてしまう不運のアーマー部隊だった。

 一時的にお世話になるべく立ち寄った、新型の僚艦。

 その第一艦橋にみなで顔を出すなりこれに烈火のごとく怒り出すブリッジの主、ジーロ・ザットン大佐に恐れおののくふたりの部下たちの盾になりながら、どうにかこの怒りを納めようと悪戦苦闘するクマ族の隊長、ベアランドだ。

 内心ではそんなに怒ることもないだろうにと首を傾げながらも、後から艦に合流して上がって来た副隊長のウルフハウンドと共に、どうにかこうにか荒れ狂う艦長どのをなだめすかしてその場のお茶を濁すのだった。

 昔は教官と生徒であった間柄で知らない仲ではない。

 よって性格いささか難ありなこのおじさんの対処法はどちらもそれなりに心得ていた。

 かくして不機嫌ヅラでブリッジを後にする艦長の背中をいったんは静かに見送って、心身共に疲れ果てている部下たちを副隊長に任せたら、この後をひとりで追いかけるアーマー隊長である。

 いくつか聞きたいことがあったし、部下を抜きにしたもっと冷静な話し合いをあの切れ者の指揮官とは持ちたかった。

 相手は艦長室にこもるようなことを言っていたが、その性格柄で当てにならないと予想するかつての教え子は、何の気も無しにまったくの別方向へとこの足を向けていた。

 そこはこの艦の最上階のブリッジのさらに上、いわゆるてっぺんの天井、ロフト部分だ。

 すると思った通りに外部へのドアはロックが外されていて、外に出ると道なりにタラップをのぼってこの屋上部分へと顔を出す。

 見晴らしのいい真っ平らな鋼の屋根には、これまた思ったとおりの人物が、真ん中に仰向けで寝そべっていた。

 どうやらぼんやりと青空を眺めているようだ。

 やっぱりね……!

 これにはちょっとしたり顔してそちらに歩み寄る隊長さんだ。

 こちらから話しかけるよりも先にあちらのほうが反応した。

「どうしてわかった? 俺は艦長室に行くと言ったはずだが」

 すぐ間近から犬族の仏頂面を見下ろしながら、ぺろりと舌を出して応じるクマ族だ。

「どうしてって、教官どの、もといジーロ艦長が性格ねじくれた気分屋なのはみんな知ってるじゃない? ぼくなんかそれこそ昔からの旧知の仲なんだからね!」

「ふん、わるかったな……! 何の用だ? あいにく気ままなクマ族の相手なんかする気分じゃない」

 ますますしかめ面の上官どのにもお気楽なクマの隊長はいたずらっぽい笑みでウィンクくれてやる。

「そう言わずに! 久しぶりなんだからちょっとはお話しようよ、まじめな話ってヤツをさ?」

 短い舌打ちが聞こえたが聞こえなかったふりする隊長はしれっと言ってやる。

「さっきはずいぶんとお冠だったけど、あれじゃ若い芽がつぶされちゃうよ。上官とは言えパワハラだったんじゃないのかい?」

「…………」

 返事がないのにこれまたしれっと聞いてやる。

「まさかとは思うけど、コルクと何かあったのかい? あの性格気弱な毛むくじゃらの犬族くんと、過去にさ??」

「どうしてそう思う? 俺は初対面だと記憶している」

 むすりとした顔で青空見上げたままのジーロに、ベアランドは真顔で言葉を投げかける。

 ある意味、一番気に掛かった事柄だった。 

「そうか。でもあの子のことをはじめて目にしたって時に、なんだかちょっと驚いたような顔をしてたよね? 艦長?」

 また短い舌打ちが聞こえる。

「ッ……イヤなところをしっかりと見ていやがるんだな? この食わせ物のデカぐまめ! いいや、なんのことはない」

「?」

「そうさ、ただの他人のそら似ってヤツだ……! おまえにプライベートをあれこれ詮索されるいわれはないぞ? 気にするな。あいつとはあかの他人同士だよ」

 そんな幾分かトーンを落とした返答には、なるほどと納得して頷きながらもまたその首を傾げるクマ族だ。

「そうか、そりゃそうだよね。う~ん、それなのにひどいな、あの怒りようは?」

「八つ当たりをした覚えはない。ちゃんと必要なことを言ってやった。あんなビビリじゃそれなりに免疫つけなきゃこの先やっていけないだろう? おままごとをしているわけじゃないんだ」

「そりゃあね……!」

 浮かない顔の艦長は胸の内から取り出した何かしら眺めながら至って気のない返事なのに、ちょっとだけ引っかかりを覚えながらも話を変えるベアランドだった。

「ああ、そういや、ぼくらのボスとはなんの密談をしていたんだい? この先のことに関わるんだろうから、ちょっとはこっちにも教えてもらいたいんだけど」

「そんなものはそっちのボスに聞け! ンクス艦長、先生からはあっさりと断られたよ。悪い話じゃないと思うんだが、あちらにはあちらの思惑があるんだと」

「ふうん、あっさりと引き下がるんだ? らしくないなあ!」

「ほっとけ……ん!」

 それまでの穏やかな潮風が一転、身の回りがいきなり騒がしくなるのに両耳をピンと立てて回りの気配を探る艦長だ。

 これに身の回りをぐるりと見回してそれと認めるベアランドはちょっと意外そうに騒音の元となっている見慣れた同僚の機体を眺める。海を渡る機体と、空を飛ぶ二機のアーマーたちが見る間に小さくなっていくのを見送った。

「なんだ、もう帰っちゃうんだ、シーサーたち? せっかくこの艦の中をみんなで見て回る許可を得ていたのに!」

 これには足下から不機嫌そうなおじさんが言ってくれる。

「お前もさっさと帰れよ。あとなんであんな目立つところにあんなブサイクなアーマーを停めてやがるんだ。さっきから目障りでしかたがありゃしない」

「そんな青空を眺めながら文句を言わないでおくれよ。あそこにしか停められなかったんだから! 間違って塩水に漬けちゃったらうちのメカニックくんたちがきっと嘆くし♡」

 聞きたいことが空振りだらけだなと苦笑いしながら、また他に話を向けてやる隊長さんだ。

「そういや、この艦のアーマーらしきが見当たらないけど、ベテランのパイロットとその新型機ってのはデマだったのかい? 個人的にはちょっとだけ期待してたんだけど」

 するとこれには何故だかちょっと苦い顔つきしてひん曲がった口元で答えるジーロだった。

「あるさ。あるにはあるが、ただそれにつき若干の問題があって、出すに出せないってだけのことであって……!」

 そこで不意にむくりと起き上がって、でかいクマ族を見上げる犬族の艦長だ。そうして何かしら意味深な目つきと共に言ってくれるのだった

「そうか、だったらお前にいい土産話をくれてやる。せっかくだからな? 面白いものを見せてやるから、付いて来いよ」

「?」

 怪訝な顔で背中を見送るクマ族に、老獪な犬族はニヒルな笑みをその口元に浮かべて促した。

「だから、お前が見たいって言うヤツらに会わせやるって言っているんだ。おまけにこのアーマーにもな? 俺の気が変わらない内にさっさと来い」

 こうして言われるままにこの後を付いていくクマ族の隊長は、その先で思いも寄らない者たちと会うことになる。

 やがてひとりだけ母艦に帰投するアーマーの中で、この顔に苦笑いが張り付いて取れないベアランドであった。


Part2

 無事に戦いを終えてみずからの母艦に戻ったベアランド小隊であったが、その日の夜半にはまた再び出撃することとあいなるのだった。

 敵襲などではなく、友軍の僚艦にふたたび呼ばれてのことだ。

 例の偏屈な犬族の艦長にまたみんなでお説教を食らうのではあるまいな?とはじめ微妙な顔つきのクマ族の隊長さんだが、こちらの大ベテランの艦長から聞かされたのは、それは意外な先方からの提案であった。

 とは言えでさては何かしらの打算があるのではないかとこれまたビミョーな顔つきのベアランドなのだが、小隊の部下たちを引き連れてまた新型の巡洋艦へと向けて夜空に飛び立つのだった。

 ただし今回はベアランドの大型機だけで、ふたりの犬族たちの機体は航空空母に置き去りにしたままの、単機での発進だ。

 よってこの2名をみずからの機体のコクピットに同乗させての発艦だった。

 これに部下であるコルクとケンスは、さっぱりわけがわからないとひどい困惑顔をしながら、あちらに着いていざその場で命じられた命令には、なおさらギョッとして当惑することしきりだ。

 ついてほどなく、また母艦へととんぼ返りすることになる第一部隊は、今度は三機編成のアーマー小隊となってみずからの新型重巡洋艦の空母へとたどり着くことになる。

 ちなみにこの時、はじめ三名だったはずの隊員は、何故かこれが五名へと増えており……!

 詰まるところ以前に犬族の艦長どのが言っていた〝お土産〟が、早くももたらされた結果であった。

 大型のアーマーを専用の機体ハンガーに着艦収容させて、クマ族のパイロットは、ただちにこのコクピットからメカニックスタッフであふれかえるデッキフロアへと降り立つ。

 そこにはすでに新しく持ち帰った機体をこれ用のハンガーに収容させていた二名の犬族たちが、ピシッと敬礼して待ち構えていた。ここらへんはすこぶる礼儀正しい新人パイロットだ。

 軽くだけ敬礼して返す隊長のクマ族は、見上げてくる若い犬族たちにおおらかな口ぶりで声をかけた。

「ふたりともおつかれさん! で、どうだった? あの仏頂面の犬族のおやじさんからもらった新型機は? はじめてでおまけ夜間飛行じゃちょっとしんどかったかね、いくらきみらのアーマーと同型機とは言え……!」

 するとこれに敬礼を解いてから応じる長身の犬族、ケンスは戸惑い気味に答えた。

 その隣の同僚の犬族のコルクも何やら困惑気味の表情だ。

 どうやらこのふたりには、あまり相性が良くはない機体だったらしい。

 その様子だけでもはやなるほどと納得する隊長さんだ。

「機体の反応はとても良好でした。おれたちのと遜色ないです。ただ、操縦桿やスイッチのたぐいがとても重くて、やたらに固かったですね! あれじゃいざ戦闘になった時に大変だ……」

「お、オレも、とても苦労しました! あんなのオレたちの手には負えませんっ、ここまで飛ばしてくるのでやっとだったから……!」

「そうか。なるほどね! 知ってのとおりでクマ族のパイロットさんたちだから、そっち向けに操作盤回りがきつめにチューニングしてあるんだよ。ぼくらからしたら、犬族用のはむしろ設定がゆるゆるで、ちょっと肘が当たっただけで固定武装やら何やらが暴発しちゃうからね!」

 冗談めかした言いように、暗い顔つきのケンスが苦笑いして背後に立つ新しいアーマーを見上げた。

「そもそもが、コイツはおれたちのと同型機なんですか? まったく見てくれが違うように思えるんですけど……なあ?」

 横の相棒に問うのに、問われた毛むくじゃらの犬族はうんうんと激しく頷いて同意する。

 すると問われたクマ族の隊長も、ふたつ並んだ機体を見上げながらにやんわりとこの疑問に応じた。



「まあ、これっていわゆる試作機、プロトタイプってヤツでさ、きみらのビーグルⅥの元となった機体らしいよ? これを量産型に改良・改修したのがあっちの機体で、ある意味兄弟みたいなもんなんだよ♡ いたるところゴツゴツしてて、いかにもクマ族向けって感じだけども」

「犬族とクマ族で兄弟ってあんまりピンと来ないですけど……」

「あ、あの頭も、なんかクマっぽい……!」

「ああ、通称、ベア・ヘッドだって! この機体、ビーグルとは言いながら、ヘッドはぼくのとおんなじまあるいクマ型なんだよね。なんかブサイクな♡ でもぼくのランタンほどじゃありゃしないか!」

 茶化して笑う隊長に、やはり苦笑いの部下たちだった。

 この時、背後のほうで何やらごそごそと気配がし出すのに、そちらに気を向けようとしたベアランドだが、折しも横合いから声を掛けられてみんなでそちらに向かうこととなる。

 はじめに部下たちが同乗していた機体に、帰りはまた別のふたりの隊員たちを乗せていたのだが、それをすっかり失念していたのをようやく思い出すベアランドだ。

 それでもベテランの軍人たちなのだから、ほっておいても平気だろうとあえて気にかけずに、今はこちらに近寄ってくる同僚の副隊長に身体を向け直した。

 オオカミ族のウルフハウンドは気楽なさまで声を掛けてくる。

「おう、もう帰ったのかよ? 早かったな! ふうん、ずいぶんとブサイクな機体だが、それなりに使えるんだよな? おまえたちが乗って来たんだろ??」

「ハッ!」

 かしこまってまた敬礼する新人たちに、鷹揚な態度の第二部隊隊長はにんまり顔してこの喉を鳴らした。

「くっく、いい反応だな。多少は戦い慣れてきたってことか。学生さんがいっちょ前のパイロット面してやがる! それじゃ早速だが、こいつらは預からせてもうらうぜ?」

「ああ、そうか、明日付でふたりともシーサーの第二小隊に編入されるんだものね? ぼくのほうにふたり、ベテランが入ってきたから。なんか名残惜しいな♡ ぼくのこと忘れないでね?」

「忘れるも何もみんなおんなじ艦に所属の一個中隊じゃねえか? これからも毎日顔を合わせるんだからよ。明日から所属が別になるんだが、もう今からみっちりとミーティングだ! 戦い方も変わってくるから、そこらへんも覚悟して従ってもらうぜ?」

「ああ、なるほど。どっちも機体の仕様が飛行型から地上戦、ないし海上戦用に変わるんだっけ? 道理でふたつともこの区画に見当たらないわけだ。あの銀色のまっちろい機体?」

 表情をややこわばらせるふたりに明るい笑顔で言って、副隊長のオオカミ族には了解したと頷く隊長のベアランドだ。

「それじゃ、行っておいで。副隊長がキビシイからってへこたれちゃダメだよ? しっかりとそのシッポに食らいついて一人前のパイロットにならなくちゃ!」

 最後にびしっと敬礼してただちに灰色オオカミに連れられていく犬族たちを見送る隊長さんだった。

 それきり立ち尽くすが、しんみりとした気分に浸るには回りの喧噪がやかましすぎる。

 それで気持ちを切り替えると、ぐるりと頭を巡らせて、ふたたび自分のアーマーへと向き直るのだった。

 見ればそこには、新顔のふたりのパイロットたちが陽気なさまで立ち話をしている。

 何故だか楽しそうにピョンピョンとフロアで跳ねている、見てくれのそれはでっぷりとした大柄な年配のクマ族たちだ。

 これにはやたらな親近感が沸いてにんまりした笑顔が隠せない隊長さんである。

 こちらはこちらでまた忙しくなるのに違いなかった。

Part3


 巨大な軍用艦の食堂は、一度に大勢の乗組員が利用できるようにそれは大きな区画面積があり、一部には士官やパイロット用の専用フロアだなんてものまでが用意されていた。

 これに普段はさしたる意識もせずにそこらで食事を摂っているクマ族の隊長さんなのだが、あえて今だけはその人気のない専用スペースを陣取ることにする。

 つまりは今日付で編入されてきた新人の隊員たちをともなって、軽いミーティングの場を設けるためだった。

 先にデッキフロアから上がって、すでにミーティングを行っているはずの同僚のオオカミ族が率いる第二部隊はどこにも見当たらないので、おそらくはどこぞかのブリーフィング・ルームにでも詰めているのだろう。

 みなが大柄で大食漢ばかりのクマ族たちとは違って、その体つきがスマートな種族が大半のオオカミや犬族たちには、食べながらミーティングをするという発想や慣習がないのかも知れない。

 食堂の横長のテーブルのあちらとこちらに分かれて座るベアランドは、これと対面するふたりのベテランパイロットたちを実に頼もしげに見つめては、クックと喉の奥を震わせるのだった。



「ふたりともほんとに良く食べるな! 見ていてあっぱれだよ。小食なコルクたちに見習わせてやりたいくらいだ♡ よっぽどおなかが空いてたんだね? まあ、わからなくもないけど……」

 性格何かと難ありな犬族の艦長の巡洋艦に居た時の悲惨なありさまを思い返しながら、肩を揺らして笑ってしまう隊長さんだ。

「それじゃ、食べながらで構わないから、今からおおざっぱなブリーフィングをさせてもらうよ。改めて自己紹介をば♡ じぶんはこのアーマー部隊の隊長を務める、ベアランド少尉だ。ぼくらはとりあえず第一小隊、この戦艦の中では、いわゆる航空アーマー部隊ってヤツだよね、てことで以後よろしく!」

 これにテーブル上にどかんと置かれていた山盛り一杯の食事から、二人そろって顔を上げるクマ族たちは反射的に立ち上がろうとするのを、やんわりと制止するベアランドはまた続けた。

「あ、いいよ、敬礼はさっき済ませたばかりじゃない? そのまま食べ続けてていいから。どうせ面通しくらいのおざなりなものしかやらないんだし、いちいち細かいこという必要もないってものだしね? なんたってこんなにいかつい見てくれした大ベテランのパイロットさんたちじゃさ!」

 どちらもじぶんとおんなじ大柄なクマ族の上に、ふたりともこの艦内ではおよそ見かけないような一風変わった見てくれのスーツに身を包んでいるのを、いかにも頼もしげなニコニコ顔で眺める隊長さんだ。

 見ようによってはかなり異様な、いっそ囚人服だとかを思わせる横縞柄のパイロット・スーツは、これぞまさに知る人ぞ知るべくした王宮や内政府直属の守備部隊の専属衣装だった。

 すなわちよほどの熟練した手練れのみが身につけることを許された、アーマー曲技曲芸部隊、人呼んで『サーカス・ナイツ』の出身であることを、どのくらいのクルーが知っているのだろう。
 
 一説には暗殺だとかいった闇の仕事もこなすのだとか……?

 こうして目にすることもなかなかに無いはずのものなのだ。

 軍内部ではある種の「伝説」とまで化した戦闘集団だった。

 それだから見ていてわくわくが止まらない若いクマ族の隊長は、太い首を傾げながらにしみじみと言うのだ。

「う~ん、それがどうしてあのおじさん、もとい偏屈な犬の艦長さんのとこにいたのかねえ? あんまり詳しくは聞けなかったけど、なんかワケありっぽいのかな♡ おまけにこのNo.8とNo.9とはさ! 上位10位以内の上級ランカーだなんて、普通はなかなかお目にかかれないんもんだろうに?」

 見た目がかなり特殊なデザインしたスーツの胸ポケットのあたり、それぞれに固有のナンバーが描き込まれているのを読み上げては、ひとしきり感心するのだった。

 これにどちらも一度は立ち上がりかけながら、また口の中いっぱいに食べ物を詰め込んでモグモグやっていたふたりの中年のクマ族たちである。


 それがやがてごくんと口の中のものを飲み下したらば、やや苦笑い気味の照れたような笑顔を向けてくる。

「いやいや、そないに大したもんちゃいますわ! なりはこないですが、おれらしがないアーマー乗りってだけのことでして。なあ?」

「せやな。ぼくらアーマーをうまく扱うことだけが取り柄のただのおっさんですわ。お恥ずかしいはなしやけど……!」

「そんなこと♡ 『高空の大鷹と大鷲』とまで恐れられた、クマ族きっての熟練パイロットコンビ、よっぽどのもぐりじゃなければ知らないヤツなんていやしないよ!」

 まんざらお世辞でもなさそうな隊長からの発言に、また互いの顔を見合わせてこちらもまんざらでもなさそうな上機嫌で照れ笑いするおじさんたちだ。

「そないに言われると照れてまいますわ! ええ隊長さんに拾うてもらえてこっちは大助かりですさかいに。この軍艦、飯もめっちゃうまいし、ええことずくめやわ!!」

「ほんまや。今後ともどうぞよろしゅう。せやからぼくらも改めて自己紹介をさせてもらいますわ。噂ほどの腕があるかは知りませんが、ぼくはヒグマのザニー、ザニー・ムッツリーニ、階級は中尉であります……!」


「せやったら、じぶんはグリズリーのダッツ、ダッツ・ゴイスン中尉であります! よろしう願いますわ、ほんまに! マっジでがんばりますさかいに!!」


 息の合ったふたりからの歯切れのいい名乗りにあって、こちらもますます上機嫌で受け答えるベアランドだ。

「どうも♡ こちらこそ、頼りにしてるよ! だったらほら、遠慮しないでもっと食べてよ、じきにお代わりも来るだろうから。おなかペコペコなんでしょ?」


 鷹揚なクマ族の隊長からの催促に、いささか気後れすることもなくがっつりと頷くこちらも豪快なクマ族たちだ。

「はあ、それは、そんなら喜んでいただかせてもらいますわ!」

「ほんまにええ隊長さんや! でもなんで部隊を率いるっちゅうリーダーが、おれらよりも年下でおまけ格下の少尉さんなんや? このひと??」

 目の前のごちそうに再び取りかかりながらこちらをチラチラと目の端でうかがってくる灰色のクマ族に、向かって左隣の赤毛のクマ族はあいまいな顔つきでただこの頭を傾げさせる。

 おおらかな口ぶりの隊長はこれに気にするでも無く答えた。

「まあ、そのへんは今はどうか大目に見てよ♡ これから頑張って階級上げるように努めるから。ふたりとおんなじか、いっそ大尉さんくらいがいいのかな? 正直、個人的にはあんまりこだわりがないんだけど、そこらへん」

「ええです。気にしませんわ。ちゅうか、少尉どの、やのうて隊長さんが乗ってたあのアーマーを見たら、納得やわ。あないにバケモノじみたいかついギガ・アーマー、そこいらのパイロットには乗られへんのやさかい。実力は保証されとるっちゅうわけで」

「せやな! ビックリやわ!! あないなお化けじみたもんひとりで乗りこなすなんてありえへんで、ほんまに。ちゅうかマジでひとりでやってますのん? おっかないわあ……!!」

 おじさんのクマ族がふたりしてうんうんとうなずき合うのに、こちらも照れた笑いでうなずく若いクマ族だ。

「どういたしまて。とは言えで、そっちのアーマーもかなりのモノではあるんだけどね? 初期型のビーグルⅥとは言っても、現行の機体よりもよっぽど性能が良さそうだよなあ。実際に乗ってたコルクとケンスがとても扱いきれないって嘆いていたし?」

「フフッ、犬族のワンちゃんたちにはしゃあないですわ。なんちゅうてもベア・ヘッド! クマ族のぼくら専用にチューニングした機体なんやから。装甲からエンジン出力から桁違いですわ」

「あないなもん、ほんまにおれたちやから乗りこなせるっちゅうもんでの? せやから腹ごなしもして元気もりもり、クマ族コンビの実力っちゅうもんをいかんなく発揮してやりますわ!!」

 本当に息の合ったおじさんコンビに、心からの明るい笑顔になるベアランドだ。

「楽しみにしてるよ。ほんとに元気になってくれて良かった♡ 一時はどうなることかと思ってたからさ? ジーロ艦長のとこで独房にふたりそろってぶち込まれてたのを見た時には……!」

 いたずらっぽい笑みでウィンクしてやるに、途端に気まずげな顔を見合わせて、互いの肩をすくめさせるおじさんコンビだ。

「ああ、それはお恥ずかしいところを見られてしもうたわ……」

 ペロリと赤い舌を出して困惑顔する赤毛のクマ族に、対する焦げ茶色のクマ族は、はたと考えながらに聞いてくれる。

「うん。でもあれってのは、つまりはふたりともひどい船酔いで完全グロッキーだったんだよね? 今にして思えば??」

「せや! あの渋ちんの艦長さんが、空も飛ばんとずっと海面にへばりついておったから、航空巡洋艦やっちゅうてるのに!!」

 いまいましげに呻く灰色熊に、横のヒグマがおなじく険しい顔色で同意する。

「おお、燃費が悪うなるから空飛ぶんは必要に迫られてからゆうてたよな? ほんまにしんどいわ。ぼくらふたりとも海軍さんやのうて丘の陸軍出身やさかいに、あないにぐらんぐらん揺れる中ではしんぼうでけへんかった」

「地獄やったわ! それにくらべてこっちの空母はちゃんと空飛んでますやんか、マジで天国やわ! おかげでまるで揺れへんし、うるっさい波の音もちっとも聞こえへん!!」

「ああ、だからさっきはあんなピョンピョン跳ね飛んで地面を確かめてたのか。このクラスの重巡洋艦は空飛んでたほうがむしろ燃費がいいって言うからね? 試験飛行も兼ねてるから、次に降りる時はちゃんとした大地の上じゃないのかな。ふたりともこっちに来て正解だったんだ。ジーロ艦長には感謝しなくちゃね!」

「いいや、もう二度と関わりたくありませんわ」

「マジで!」 


 深いため息ついたかと思えば、それきりまたみずからの食事にいそしむベテランたちに、じぶんもお腹が減ってきたことを自覚する隊長さんだが、折しもそこに無人の移動カートに乗せられた山盛り一杯のごちそうがまた新たに到着した。

 これにヒュー!と歓迎の口笛を鳴らすおじさんたちだ。

 まだ食べる気まんまんなのらしい。

 そんなとても景気のいいクマ族たちに心底嬉しくなるこちらもクマ族のベアランドだったが、食べ物が満載のカートからがっちりと大盛りのプレートを持ち上げながら、その後ろにくっついてきた人影をそれと認めたりもする。

 四人目のチームメイトであるメカニック担当の青年クマ族なのだが、この後ろにまた大柄の中年のクマ族がいたりもするのにはやや不可思議な目線を向けるのだった。

 ちなみに士官用のフロアは目隠しの衝立(ついたて)がこの周囲にぐるりと張り巡らされているので、外からはこの中の様子がよくはわからない。

 よってつまるところふたりともこのやけに食べ物が豪快に盛られた自動カートの行く先に当たりを付けて、この後をくっついてここまで導かれたのらしかった。

 それを理解した上でふたりの凄腕のメカニックマンたちを迎えるベアランドだ。

「お、さすがにいいカンしてるね! 待ってたよ、リドル。あと第二小隊専属のチーフまでいるけど、一緒にお食事かい? ま、構わないけど、どう見てもグルメでグルマンのイージュンがいたらば、ごちそうの取り合いでケンカになっちゃいそうだな!」

 こんな冗談めかしたセリフにあって、だが当の本人は何やら浮かない顔つきで大きな肩をすくめさせるのみだ。

 クマ族の中でも飛び抜けて大柄な肥満体型である第二小隊チーフメカニックに、この前に立つとさながら子供のように映る細身の若いクマ族のこちらは第一小隊が専属のチーフメカニックマンは、ちょっとだけ苦笑いで答えた。

 あんまりにも勢いよく食事を平らげている右手のクマ族たちにどうやら引いているらしい。

「は、リドル・アーガイル、ただいま参りました。みなさんお食事中のところ失礼させていただきます。ぼくは食事はもう下のデッキで適当に済ませているのですが……」

「済ませているって、たかが小ぶりなハンバーガーをひとつだけつまんだくらいだろう? あんなものは食事とはいいやしない」


 後ろから巨漢のクマ族にいじられてなおさら苦笑いのリドルだ。これにベアランドが了解して右手の椅子を引いてみせた。

「いいからいいから! ならきみもちゃんと食事を摂らなきゃ♡ ふたりの新入隊員さんたちに紹介するついでにね! あと、そっちのイージュンもついでに紹介しておこうか。あいにくと第二部隊のメカニックだから、直接は用がないんだろうけど?」

「む、ついでにとは失敬だな? まあいいさ。オレはまだやることがあるからとっとと失礼させてもらう。用があったのはあんたらではなくて、あの生意気なオオカミ族と気弱なワンちゃんたちなんだ。アーマーのことでお願いしたいことがあってさ」

 浮かない調子で言って口をへの字に曲げるチーフメカニックに、これまた意外そうな目で見上げる第一小隊の隊長さんだ。

「ああ、そうなんだ? でも見ての通りで、あいにくとここには誰もいやしないよ。たぶんみんなよそのブリーフィング・ルームに詰めているんだろ。急ぎの用ならこっちで呼び出してあげようか?」

 みずからのスーツの腰にある士官専用の通信端末を示しながらの言葉に、冴えない顔した巨漢のクマ族は太い首を横に振った。

「いや、あの灰色オオカミは何かとめんどくさいから、あんたから言ってやってくれないか? それにどっちかと言ったら新人のワンちゃんコンビにお願いがあるんだ。そう、あの犬族たちのろくに塗装されていないアーマー、せっかくだからそれなりに色をつけてやりたいと思ってさ」

「あ、やっぱり未塗装だったのでありますか? 全身銀色でやけに目立つ機体色なのがおかしいとは思っていたのですが……!」

 うながされるままに椅子に座った若いクマ族が熟年のクマ族を見上げて問うのに、傍で聞いていてただちになるほどと納得するベアランドだ。

「やっぱりそうなんだ? はあん、でもあの機体、どちらも飛行型から地上戦、ないし海上戦仕様に機体の仕様を換えられちゃうんだよね? てことはもう終わったのかい??」

「いまやってる真っ最中だよ。両脚のホバーユニットの換装自体はわけないことだから、あとは背中の邪魔なフライトユニットも取り外してより地上戦仕様にふさわしく仕立ててやる。武装と装甲をより強化するかたちでね?」

「そいつはありがたいや! あの子たちも喜ぶんじゃないのかな? 頼れるメカニックがついてくれて一安心だよ。今後ともよろしくね! それじゃ、後でそっちに顔を出すようにふたりには伝えておくからさ♡」

「ああ、よろしく頼む。ただしオレの居住区のセル(個室)ではなくて、下のハンガーデッキに来るように伝えてくれ。来るのは明日以降で構わないから。それじゃ、オレはさっさとおいとまさせてもらうよ。あとはどうぞご自由に。こちとらやらなきゃならないことがまだまだ山積みなんだ」

「うん。ご苦労様♡ それじゃ、またね」

「ご苦労様であります! イージュン曹長どの!!」

 巨漢のクマ族がのっしのっしとこの視界からいなくなるのを見届けて、改めて残りのメンツを見回す隊長だ。

「よし、それじゃこちらも食べながら、いざ本題に入ろうか。せっかくこうしてみんなそろったんだから」

 するとぼんやりした顔で口をもぐもぐ動かしていた赤毛のクマ族が、ごくんと口の中の食べ物を飲み下して、今しも食堂から立ち去っていくでかいクマ族の背中を見ながらに言った。

「んん、いまのおひと、なんやえらい存在感がありましたが、イージュンってゆうてはりましたか?」

「せや、そやったらめっちゃ有名人やんな! 泣く子も黙る鬼のメカニック、イージュン・ビーガルっちゅうたら、知らんひとおらへんで、この界隈じゃ? さっすがにこんだけいかついフラッグ・シップともなるといたるところ猛者ばっかりや!」

 灰色のクマ族も興味津々でおっかなびっくりにその背中を追いかけるのに、もうとっくにこれを見慣れている隊長さんは、肩をすくめ加減にしてあいまいに応じるばかりだ。

「まあ、本来はよその軍艦に配属されてたのを今だけ特別に入ってもらったんだけどね? ここって基本人手不足だから。いつまでいてくれるんだか♡ それはさておき、こっちの紹介もさせてもらうよ。ぼくら第一小隊のチーフメカニックくんのことをさ」

 あらためて己の横に着く若いクマ族を示しながらの言葉に、ふたりのベテランが目をまん丸くして大口を開けた。

「へ、チーフメカニックさんでありますか? この見た感じいかにもお子ちゃまっぽい、クマ族の男の子が??」

「うそやん! まるでそんなふうには見えへんで? 隊長、冗談ゆうにもほどがありますて!!」

「ああ、いや、別にそう言うわけでは……!」

 ある意味まっとうな反応するベテランのパイロットたちに、苦笑いで右手の若いメカニックのクマ族を見つめるベアランドだった。するとこれにはリドル本人がすかさず席を立って、ピシリとした一人前の敬礼をしてくれる。

「ハッ、申し遅れました! じぶんはリドル・アーガイル、伍長であります! こちらでは第一小隊のチーフメカニックとしての任務に当たっております。見ての通りのまだ若輩者でありますが、どうぞ今後ともよろしくお願い申し上げます!!」

 そうきっぱりと宣言してくれるのをきょとんと見上げるばかりのクマ族たちだが、その後にとどめとばかり隊長から言い放たれた一言、ある有名な犬族の伝説的メカニックの名前にひたすらびっくりして互いの目を見合わせることになる。

「そないな大したおひとの愛弟子なんでっか? それは……!」

「うそ~ん、マジでビックリや!!」

「いや、その、それほどでも……!」


「基本的にはこのぼくのアーマーを面倒見てくれているんだけど、だったらなおさら納得だろ? あのお化けアーマーのメインメカニックマンなんだからさ♡ このトシで!」

 かしこまるリドルの肩をぽんぽんと叩きながらしたり顔するベアランドに、神妙な顔で正面に向き直る赤毛のクマ、ザニーはやがて真顔でうなずいた。

 ダッツはやや困惑顔のままだが、相棒が納得するからにはさしたる異論はないらしい。

「それは、信頼してええっちゅうことなんですな? メカニックの腕はパイロットの生命に直接関わるもんやから。隊長のお墨付きなら文句は言いようがあらへんですわ」

「うん♡ 全幅の信頼を寄せてくれて構わないよ。ビーグルシリーズくらいなら、片手でちょちょいのちょいさ!」

「ほんまに? なんかおっかないわあ!」


「いいえ、見るからにはちゃんと見るので、それで一見したところ、おふたりのアーマーは背中のフライトユニット以外にもプロペラントタンクが増設してありますが、あれは通常任務においても必要なものなのですか? あくまで航続距離を伸ばすのが目的ならば、激しい空中戦ではむしろ邪魔になるものかと思われますが……!」

「ほんまもんやわ! せやんな、明日からの任務には必要ないものやさかい、取っ払ってもろうてかまへんよ」

「せやったらじぶんのも頼むわ! あないにでかいワンちゃんのシッポみたいなもん、カッコわるうてしゃあないて!!」

 すぐにも意気投合しはじめるパイロットとメカニックを嬉しげに見るベアランドは、そこでちょっと考えながらに口を挟んだ。

「ん、明日から、かい? はじめに見た感じだと、どっちもあと2、3日は休養を取らないとダメかと思っていたんだけど、そんなに急いでいいもんかね? しばらくはぼくひとりのワンマン部隊の覚悟をしていたのだけど」

「そうなのでありますか? じぶんにはおふたりともどこも不調はないように見受けられますが。もちろんアーマー自体はいつでも出撃可能です!」

「あはは、明日からが楽しみだね! それではダッツ中尉、ザニー中尉、今後ともよろしく頼むよ♡ 北の空で敵無しと謳われた空中戦のプロの活躍ぶり、ほんとに頼りにしてるからさ」

 隣の若いクマ族同様に席を立ち上がるクマ族の隊長は、そう言って右手をテーブル越しのベテランのクマ族たちに差し出した。


 これにすかさず立ち上がって交互に固い握手を交わしてくれる赤毛と灰色熊だ。

 ただし素手で食べ物を掴んでいた利き手はどちらもぐっしょりと濡れていたが。

 ちっとも気にしないで座り直すとみずからもナイフとフォークは無視してごちそうを掴み上げるベアランドだ。

 横のメカニックにも自由に食べるように言って、鼻歌交じりに口いっぱいにパンやら肉やらをほおばる。

 明日からが楽しみで仕方がない隊長さんなのであった。



           ※次回に続く……!

リドル、イージュン登場 お代わりのワゴンの後から
ケンス、コルク、←シーサー ミーティング
ダッツ、ザニー、ベアランド、
イージュン、ケンスとコルクに用がある。ビーグルⅥ塗装? 

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ルマニア戦記/Lumania War Record #014

#014

 #014

Part1


 その時、実際の現場にはどれほどの〝間〟が流れたのか? 

 それぞれの体感としてはそれは長い沈黙の後、この海域のどこぞかに姿をくらましているものとおぼしき新型の巡洋艦の艦長、犬族のベテラン軍人の声が、再びコクピット内にこだました。

「……どうした? 返事が聞こえないぞ? 聞こえたんだろ? いいから、とにかく撃っちまえよ。お前の機体のメインアームで構わないから、目の前のでかいプラントに一撃見舞ってやれ!」

「ハッ……!?」

 果たして上官からのおよそ予想だにもしない命令に、部下である若い犬族のパイロットは、ろくな返事もできないままにひたすらに己の耳を疑っていた。

 よもや現実のことかとだ?

 これに傍で聞いていた相棒と、混乱した現場を取り仕切る若いクマ族の隊長さんも少なからず動揺して耳を澄ましてしまった。

 するとその沈黙に、ややもせずしてまた年配の大佐どのの、ちょっとイラッとした声色が響く。

「おい、でかグマ! おまえの部下どもは耳が聞こえないのか? 上官の命令にろくな返事ができてないだろう! このオレは至って単純な命令しか出してないぞ。目の前の敵に占拠されたプラントを攻撃しろって、ただそれだけだ。簡単だろ、あんなでかいの空からならおよそ外しようがない」

 ああ、やっぱり、そう言ってるんだ!

 本気なんだとようやく納得しながら、ずいぶんと乱暴なことをぬかしてくれるなと内心で呆れてもしまうベアランドだ。

 左右のスピーカーからは、ごくり、と息を飲んだり、ひどく狼狽したりした息づかいが、はっきりと伝わってくる。

 いよいよもって混乱してきた状況にひどい苦笑いの隊長ながら、とかく落ち着き払って右手のスピーカーに声をかけた。

「だってさ、コルク? 聞こえているよね、どうやら本気らしいから、ちゃんと返事しないと!」

 おそらくは狭いコクピットの中で息を殺して縮こまっているのだろう、毛むくじゃらのワンちゃんに向けて言ってやるのに、当の本人からは切羽詰まったようなうわずった返事が返ってきた。

「はっ、はいっ! 了解っ、あ、ですが、あの、そのっ、あの! し、しかしっ……!」

 まともにろれつが回っていなかった。

 もはや完全にパニックしたコルクの慌てぶりに天井を仰いでしまうベアランドだが、見上げた先のスピーカーからはやや憤慨したオヤジの声が降ってきたのには、なおさら天を仰いでしまう。

「しかしもカカシもあるか! おい、こいつはれっきとした上官命令だぞ? 貴様、命令を無視しようってのか! 何も遠慮することはない、こっちの本気を見せてやるためにやつらに一発かましてやればいいだけのことだっ、それで大きく潮目は変わる」

 決まり切ったことだろうと言わんばかりにきっぱりと断言してくれる艦長どのだ。およそ有無を言わさない迫力があった。

 これに若い犬族がなおさら萎縮してしまうのが、モニターの中の様子を見なくてもそれとわかる隊長さんが、仕方も無しに仲裁に入る。

「いや、しかしだね、艦長? そうは簡単に言ってくれるけど、民間の施設にぼくらみたいな軍が介入、しかも実弾を見舞うだなんてのはどうにも穏やかでない……てか、あれって実際に稼働してる大容量かつ大出力のエネルギープラントなんだよね??」

 そんなところに攻撃しようだなんておよそ正気の沙汰じゃないのは、まだ若い新人の隊員でなくともそれとわかりそうなものだが、相手の百戦錬磨のベテランはまるで意に介したふうでもなくあっさりとこのクマ族の意見をはたき落としてくれる。

「おい、誰がプラントそのものを攻撃しろだなんて言った? 撃つのはプラントの本体ではなくて、これをコントロールしている制御室、コントロール・ルームだ。当たり前だろう? あの海上ベースの真ん中におっ立っている高いタワーのてっぺんだよ! とにかくそいつを破壊しろ!!」

「そういうことは先に言いなよ! さっきっからさ、大事な部分がまるっきり事後説明になってるじゃないか? でも制御室を壊したりして、平気なのかい?」

 苦い顔でうなるクマ族に、相手の顔の見えない犬族はそ知らぬさまでこれまたぬけぬけとぬかしてくれる。

「平気だろ、プラントの内側にサブのコントロール・ルームがあって、そっちがむしろそのプラントの本丸だ。内密に海底資源をくみ上げるのもそっちでやってるんだからな。よってその表に見えてるのはお飾りみたいなもんなんだよ。ただし目立つぶんそこを叩いちまえば周りの敵にプレッシャーを掛けられるし、みんなとっとと逃げ出していくさ。文字通り、シッポを巻いてな?」

「はあ、そんなにうまいこと行くもんかね? コルク、コルク! 聞いてるかい?」

 押し黙ったままの犬族に話を振ってやるに、やはりテンパったままの当のコルクは、ひどく苦しげな返答を返してくる。

「で、ですが、あの、あのコントロール・ルームには、民間人のクルーがいるのではっ? なのにそこをじぶんが撃ったりしたら……!!」

 もっともな意見だったが、内心で首を傾げる隊長さんだ。

「ああ、いや、そんなに派手にど真ん中にぶち込む必要もないんじゃないかい? ちょっと天井とか、目標のやや下あたりにめがけてさ、あんまり被害が出ないくらいのを……!」

 そもそもがこんな状況だからとっくに退避している可能性もありそうなもので、性格的な心配性が過ぎるだけとも考えられた。

 だがこれに天井のスピーカーからは、いよいよいらだった犬族のオヤジ様のかんしゃくが降り注いでくる!

「いいから、オレは撃てって言っているんだよ! 構うことはない、躊躇してると敵さんが勢いづいてくるぞ? 早くやれよっ、おいっ、この能なしのボンクラどもがっ!!」

「ひっ、ひいっ……! おれっ、おれ! ひいいっ……」

「コルク! いいから落ち着けよ!!」

 同僚のケンスの声も響くが、あいにくと毛むくじゃらの犬族くんはまるで周りが見えていないようだ。

 合わせて困った隊長と怒った艦長の声も交差する。

「コルク! よく聞けっ、狙うんならちゃんとタワーのてっぺんだよ? そこ以外は致命打になるから! いろんな意味で!!」

「早くやれよ! おい貴様、命令違反をするつもりか!? ならそいつはこのオレをジーロ・ザットンと知ってのことだろうな!!」

「ひいっ、じ、ジーロ・ザットン……! と、父さんっ、おれ、おれ、どうしたらっ……!!」

「……?」

 出会ったばかりではまだ少年にも見えた青年が、ついには情けのないかすれた悲鳴を漏らす。

 ちょっと怪訝に聞くベアランドだったが、天井からそれをかき消すような怒号がするのには、うげっ!とうめいてもしまう。

「マズイな……! あの艦長さんてば、すっかり頭に血がのぼっちゃってるよ!」

 勝つためには手段を選ばない冷血漢とも噂される人物は、いざとなったら相当に手荒なこともやってのけるに違いない。

 この場が荒れるのはもはや必然だ。

 で、結果、ろくでもないことをでかい声でまくしたてる大佐どのなのであった。いわく――。

「ああ、だったらもういい! こっちでやるさ、ここまで来たらもうこそこそ隠れている必要はないからなっ、全艦戦闘態勢! 緊急浮上だ! おい、話は聞いているな、砲手長? 艦首が海面から出たらオレが言ったポイントをただちにぶち抜いてやれ!」 

 ブリッジのクルーから立て続け、おそらくは艦の砲手のセクションへ向けて声高に言い放たれた怒声にぎょっと目を見開くベアランドだ。強硬手段の強権行使はとどまるところを知らない。

「ああ、そうだよっ……は? 主砲じゃない、副砲、おまけのサブキャノンでだよ!! きれいにうわっぺりだけ吹き飛ばしてやれ!! あ、間違ってもエネルギーの貯蔵庫は撃つなよ? 目の前のクマ助どころかこっちまで巻き込まれちまうぞ!!」

「うわ、すごいこと言ってるな! コルク、ケンス、たぶん背後の海面にでかい巡洋艦が顔を出してくるから、その射線上から機体を退避させるんだ! やっこさん、かまわずぶっぱなしてくるぞ? あと、一歩間違ったら大爆発が巻き起こるから、その時は全力で緊急回避だ! ぼくは、ええいっ、めんどくさいな!!」

 こちらの命令通りに二機の僚機が左右に分かれていくのをモニター越しに確認しながら、本来ならじぶんもさらに上空へと退避すべきところを、あえてモニターをぐるりと半回転させて、この真後ろへと機体の頭を巡らせる。

 巨大なエネルギープラントを背後にして臨んだ海面からは、今しもそこに大型の戦艦の甲板が急浮上するのが見て取れた。

 思った通りに遠くの東の海域から流れ着いてきた巨大な人工の漂流物、廃墟と化したはずギガフロートを真ん中からまっぷたつに割る形で、新型の巡洋艦がその姿を現すのだった。

 おまけにこの鋼の船体を現すなりにブリッジの下に据え付けられた砲塔が盛大に海水はき出しながら、この仰角をこちらに上げてくるのに思わず舌打ちしてしまう。

「ちっ、やる気まんまんだね! でもそんなのでプラントを狙い撃ちしたら、示威行動以前に自殺行為になっちまうだろうさ? かくなる上は、仕方ない! こっちも腹をくくるしかないや、行けるよね、ランタン!!」

 左右から困惑した部下の犬族たちの声が響くが、今はそれらを一切無視して機体の制御に専念するクマ族の隊長だ。

 機体をゆっくりと上昇させて、前方に出現した戦艦の目標となっているプラントの制御タワーのてっぺんへとみずからの機体の高度を上げていく。

 さらには丁度相手の射線上にこの機体の胴体の中心が重なるポイントで、ぴたりと姿勢を固定させた。

 ふうっと息継ぎをして、前のめりに正面のモニターをにらみつける。

「いいね、エネルギー全開でバリアを展開だ! あのおじさんの砲撃をまともに真正面で受け止めるよ!! お前なら戦艦の艦砲射撃でも十分に耐えうるところを証明しておくれよ!! ついでにお前のちからをみんなに見せつけてやれ!!」

 やや苦し紛れな言葉をがなってみずからを鼓舞する。

 機体のエンジンをふかすことなく無理をしてここまで出て来たからパワーは満タン! おそらくは大丈夫なのだろうが、後で聞いた若手のメカニックがなんて嘆くのか見物だった。

「さあて、面白くなってきちゃったね……!」

 自然と口元に笑みがこぼれるが、天井のスピーカーからは例の冷めたオヤジの声がする。

「おい、何のマネだ、でかグマ? それじゃあお前ごとタワーを撃ち抜くことになるが、それでいいってのか??」

「いいや、ご心配なく! しっかりと受け止めてやるからさ!! そうでもしないとこの場は収まらないだろう? まったくこれも織り込み済みだったりするんじゃないだろうね?」

「ふんっ……!」

 威力が知れているアーマーの固定武装ならいざ知らず、でかい戦艦の艦砲射撃だなんてものをまともに食らったら軍事要塞でもない民間仕様のプラントごときはひとたまりもない。

 てっぺんをぶち抜くついでに崩落したタワーの一部がこの真下の貯蔵施設を直撃、結果として見事に誘爆、すべてが粉みじんに爆発炎上だなんてのは考えたくもないが、この確率としてはやはり無視できないものがあっただろう。

 結果的に部下の不始末の尻ぬぐいをやらされているのかと内心でげんなりするベアランドだが、こちらも負けん気は強いもので皮肉っぽく言ってやるのだった。

「要は相手に脅し、示威行動ってヤツをやってやりたいんだろう? 遠慮無くやればいいさ、これなら安心して撃てるんだろ! まさか外したりはしないよね?」

 結果はどうあれ、軍艦の艦砲射撃が民間のプラントめがけて放たれたとなれば、このインパクトはばっちりだ。

 部下たちも含めて周りはみんなどん引きするに違いない。

 頭上のスピーカーからは、いよいよもって腹立たしげな罵声がクマ族の左右の耳を打つ。

「ああ、いいから撃っちまえ! 仰角そのまま、パワーは落とすなよ? いっそ主砲をくれてやりたいところだが、今日のところはサブで勘弁してやるよ、でかグマ! じゃ、しっかりと歯を食いしばって気合い入れろよ? ほらよっ……てぇーーー!!」

 半ばやけっぱちじみた発射の号令と共に、こちらのコクピット内にはけたたましいアラームの警報が鳴り響く!

 まさしくロックオンされた艦砲射撃が撃ち放たれるのが、あたかもスローモーションで正面の大型モニターにリアルタイムで映し出された。

 対してこれを目をつむることもなくじっと凝視して、ひたすらこの身体を力ませるベアランドだ。

 まぶしい閃光が眼下の海面の中心で光ったと思ったら、直後には目の前が真っ白に染まっていた。

 機体がかすかに揺れるが、メインのキャノンでなかったぶんにさほどの変化、ダメージらしきは感じられない。

 また直後、すぐに目の前には元通りの光景が広がっていた。

 機体の各種センサーを即座にチェックするが、どこにもこれと目立った変化らしきはない。あっさりとやり過ごしたらしい。

 背後のカメラに映るプラントにも、これと変化はなし……!

 するとこれには大した物だとほっと一息、一安心してシートにでかい尻を落ち着け直す隊長さんだ。

「ふうっ、さすがに最新兵器は違うよね! ランタン、よくやったぞ。目の前のおじさんの顔を見てみたいもんだよ……!」

 そんな軽口叩いてやると、今しも目の前のモニターの中心が四角く切り取られて、そこにくだんの犬族の艦長どのが、ただちに顔面度アップで現れる……!!

 ひどく冷めた目つき顔つきをして、不機嫌なのが丸わかりな口調で言葉を発してくれた。

「ひとつも変化なし……まったく、とんだバケモノだな! どこにもかすり傷すらにありゃしないとは……! やっぱり主砲をくれてやれば良かった。ちょうどいい実験になっただろう?」

「それはまた今度にしてよ♡ でないとリドルに泣かれちゃうから。うちの優秀なメカニックくんにさ。で、少しは気が済んだかい? ほんとに呆れた艦長さんだな。そんなんでこの場の始末は任せていいんだよね?」

 上官相手に臆するでもなく茶化した言いようのアーマー部隊の隊長に、なおさら気分悪げな犬族はひん曲がった口元で応じた。

「ふん、こうして出て来ちまった以上、そのつもりだよ。始末も何も、戦況はもう明らかだろ? 回りを見てみろ」

 ぶっきらぼうにアゴを揺すってみせる上官どのに、回りのモニターの変化を自分でもそれと見て取るベアランドは納得顔でうなずいた。

「ん! ……ああ、なるほど? みんな蜘蛛の子を散らすみたいにこの場を離脱していってるよ! 見事な引き際だ、てか、いいのかね、大事なプラントほっぽりだして?」

「元からその算段だったんだろ? そこからは見えない海上基地の背後に停留していた空母だかなんだかが、まんまとこの戦域を離脱したから、みんなでそっちに合流するんだ。こっちの艦砲射撃を撤退命令代わりにしてな」

「なるほど、きっといいタイミングだったっんだね♡ で、南のアストリオンに逃げ帰るってのかい?」

「無理だろ。そっちにはおまえらを乗せてきた最新鋭の航空巡洋艦がにらみを利かせてる。トライ、なんて言ったか? そいつを見越してわざわざ南に回り込んでからこちらに入ってきてくれと先生にはお願いしてあるんだ。まったく新兵器さまさまだな!」

 投げやりな言いようで皮肉めいたことをぬかす艦長だ。

 すっかりとへそを曲げたさまのおじさんに、ベアランドはひどい苦笑いで肩を揺らす。 

「いやはや、ほんとに回りを利用するのがお上手だよね? でもぼくらのトライ・アゲインとは合流はしないんだろ、ジーロ艦長は、あくまでどちらも単艦での戦闘行動を希望してるって聞いてるから?」

「ああ、あいにくと一匹狼な性分なんでな。元から少ない戦力を無理に集中しても方々で破綻するのが落ちだろ。だが、そちらに補給してやるくらいの度量はあるさ。寄って行けよ、おまえはどうあれ、使えない新人の部下たちは燃料の補給なりをしないと帰れないんだろう。あっちがここまで迎えに来てくれない都合」

「まあ、そうだね……!」

 仕方もなさげにしてくれたみたいなウェルカムにちょっと内心で考え込む隊長さんは、おかけで返事が歯切れ悪かった。そこにまた追加のお誘いもあって、ますます考え込んでしまう。

「あと、ついでにこのブリッジに上がってこいよ。いろいろと言いたいことがある。もちろん、ふたりのお間抜けな部下たちも連れてだな?」

「ああ、そう? まあ、いいんだけど……いや、どうかな……」

「いいや、その前にまず面を拝ませてもらおうか、その間抜け面をだな? 使えなくてもそのくらいはできるだろう??」

 かなり言い方に毒があるおじさんの要望に、いよいよどうしたものかと考えあぐねる隊長さんだが、これと断る理由もないものかと左右のスピーカーに言ってやる。

「まいったな、あんまりプレッシャーをかけないでおくれよ? ケンス、コルク! こちらの艦長さまが対面を希望しているよ。これから実際に会うんだけど、その前にどんな顔をしてるのか確かめてごらん!」

「は、はい!」

「あ、あのっ、了解……!」

 慌てた感じの返事がしてひどく緊張した空気が伝わるのに、完全に新人たちが名うての艦長さんに飲まれているがわかる性格のんびりしたクマ族だ。もはや苦笑いするしかない。

 ややもせずひどく白けたセリフが耳朶を打った。

「ふうん、なるほどね、そんなふざけた間抜け面をしてやがったのか、どいつもこいつも……ん?」

「?」

 憎々しげに言いながら、正面モニターの犬族が視線を左から右に流すにつれて、このベテランの艦長さんの表情がやや曇るのを、ちょっと不可思議に見るクマ族の隊長さんだ。

 一瞬だけ変な間が流れて、憮然とした犬族のキャプテンはなぜだかみずからの胸元にこの右手をやるのだった。

 何かをぎゅっと握りしめるみたいな動作だが、それが何かはここからではわからない。

 すると折しもモニターの向こうのブリッジでクルーの声が響いた。

 当該戦域に敵影はもはやないことの確認、これによる戦闘態勢の解除、最後にベアランドたち援軍との合流とこの受け入れを全艦に通達して、艦長との通信は終わった。

 後には死んだかのような沈黙が左右のスピーカーから伝わるが、まるで気にしたふうもなくこの部下たちにてきぱきと僚艦への合流待機を指示するベアランドだ。

 波乱はまだ続くものと覚悟はして、かつての悪漢ぶりが変わらない艦長との再会を楽しみにするクマ族だった。

 部下である若手の犬族たちがベテランの犬族にいびられるのをどうやって阻止してやろうかと考えを巡らせる。

 後からウルフハウンドたちの第二部隊も駆けつけるらしいから、数ではこっちが優勢だろうとあっけからんと構えるのだった。

 左右のスピーカーは依然として冷たい沈黙を守ったままだったが……!

Part2

 
 一時は混乱を極めたドタバタの戦闘劇がおざなりの内にも幕を閉じて、そのまま母艦に帰投するのかと思いきや、僚艦の艦長のはからいでそちらに一時的にお世話になることになる、ベアランドたち、第一アーマー小隊だった。

 実際にはお説教を受けに行くというのが本当のところなのだが、これに部下たちの僚機が補給してもらえるのはありがたい。

 無事に敵軍から奪還した、謎の海上エネルギープラント施設については、そのまま本来の所有となるはずの南の大国、「アストリオン」の正規軍に引き渡すとのことで、そちらとの合流もかねてのこの現状らしかった。

 この場の指揮権を一手に握る大佐どの、ジーロの独断であるが、それにつきコメントなどは差し控えるクマ族の隊長だ。

 面倒ごとに首を突っ込むのはまっぴらだった。

 そうでなくとも、ただ今のこの状況が面倒なのだから……!

 部下たちの飛行型アーマーが無事に巡洋艦のアーマードックに収容されるのを見届けてから、みずからはこの艦首のなるたけ拓けたスペースに向けて大型のアーマーを垂直着陸、着艦させる。

 通常のアーマーよりもかなり大型な機体は、これ専用のアーマーハンガーがなくてはまともに収容することがかなわなかった。

 洋上に浮かんでいる戦艦のバランスを崩さないように注意しながら、この機体のバランスも水平に保ちつつ、その場にピタリと固定……!

 待機モードに出力を落として、みずからはこのコクピットハッチから、艦の甲板へと速やかに降り立つ。

 タラップもないのを器用にアーマーの手足にホップステップ、最後のジャンプでダン!と鋼の甲板に着地。

 そこに待ち受けていたスタッフたちには、特にやってもらうようなことはないと気軽に言づてすると、さっさとその場から艦の中央にあるアーマードックに向かうベアランドだ。

「まあ、そもそもがリドルくらいじゃないとまともにメンテなんて出来やしないんだよな、このぼくのランタンは♡ あっと、いたいた、新人のパイロットくんたち! あらら、ガチガチだな……!」

 そちらに入る出入り口には、すでにみずからのアーマーから降り立っていたふたりの部下たちが、こちらに向けて律儀に敬礼!

 ピシッとした直立不動の姿勢で待ち構えていた。

 苦笑いの隊長は、肩をすくめて軽くだけ敬礼を返してやる。

「そんなにかしこまってくれることもありやしないだろ? まあ、気持ちとしては穏やかでないのは理解できるけど。だとしても、悪いのは自分たちなんだからさ!」

 仕方がないさと茶化したウィンクくれてやるに、ふたりのまだ若い犬族たちはげんなりとしたさまでうなだれるばかりだ。

 意気消沈とはまさしくこのことだろう。

 余計に苦笑いになって肩をすくめるベアランドだが、そのままふたりを伴って艦のアーマードックへと入っていく。

 するとさっきまでの心地の良い潮風が、よどんだ油臭い空気に取って代わって、おまけそこかしこでやかましい音が鳴り響くのは、どこもおんなじ風景だった。

 じぶんたちが世話になっている航空母艦と比べたら、天井の照明がだいぶ抑え気味なのに、薄暗い足下を気にしながらあたりを見回すベアランドだ。

 大型の巡洋艦にしてはアーマーがさして目に付かず、部下たちの新型アーマーばかりがやたらに目立っていた。

 これには、はてなと小首を傾げる隊長さんである。

「あれ、この艦の艦載機(アーマー)が見当たらないな? 確かきみらとおんなじ、ジェット・ドライブ・タイプの〝ビーグルⅥ〟の使い手がいるって聞いていたんだけど? おまけにこのぼくとおんなじクマ族だって聞いていたから、ちょっと会えるのを楽しみにしてたんだけど……!」

 そんな隊長のセリフには、きょとんとした顔を見合わせるばかりの新人たちだが、やがてすっきりとした見た目で長身の犬族のケンスが言った。

「はあ、そうなんですか? 見た限りはおれたちの以外はないですよね。こんなにでかいアーマードックなのに! でも、スタッフさんたちは珍しそうにあれこれ見てましたよ? こっちの機体と仕様がまるで違うみたいなことも言ってたし……」

「お、オレも、いろいろと聞かれた、聞かれました! プロペラントがどうだとか、航続距離がどうだとか、ぜんぜんうまく答えられなかったけど……!」

「まあ、設計者じゃないんだからね? でもアーマーの補給をしてもらう都合、できる限りのことは答えてあげないと……てか、補給作業とはあんまり関係ないような質問なのかな、それって? もうおおよそのところ終わってるっぽいし」

 メカニックのスタッフらしき犬族たちが何人も集まって、この二機のアーマーの足下で談義しているのを遠目に認めて、ちょっとこの声をひそめる隊長さんだ。

 あんなのに捕まったりしたら厄介だぞ、と遠巻きにやり過ごすべく気配を押し殺す。

 暗いからあんまり見通しのよくない現場の突き当たりの壁のあたり、この艦の中心となるメインブロックのブリッジタワーなのだろう区画を見つめて、目的地へのルートを見当した。

 おまけさっきからまったく顔色の良くない犬族たちに、この艦の強面の艦長を茶化したようなことを言ってやる。

「あはは、ほんとにケチ臭いったらありゃしないよね? こんなでっかい航空巡洋艦が空も飛ばずに、艦内の明かりもこんなに落としてさ! こんなんじゃ転んでケガしちゃうよ♡ まあ、あの渋ちんの艦長さんらしいっちゃあ、らしいんだけどさ! 表情も暗かったもんね?」

「……!」

 そんな軽口に、ふたりの部下たちは暗い表情を見合わせるばかりだが、これに意外な方向からツッコミが入れられた。

「ふん、しぶちんで悪かったな? 余計なことは言わんでいいから、さっさとこっちに上がって来いよ……!」

 聞き覚えのある声がエコーを伴った拡声音で頭上から降ってくるのには、思わず部下たちとお互いの目を見合わせるクマ族だ。

「……おっ! 聞かれちゃってたみたいだね? しっかりとマイクでこの声を拾われてたんだ。ほんとに陰険だな! ヘタな軽口も叩けやしないんだから♡」

 ペロリと舌を出して左右の肩を揺らすのには、やはり部下よりもこの艦の最上階でふんぞり返っているのだろう、ベテランの犬族の艦長どのが答えてくれる。

「余計なことは言わなくていい。さっさとこちらに上がってこい。第一艦橋(メインブリッジ)だ。そこからまっすぐ進んだ先にエレベーターが二基あるから、専用のものはお前たちのために解放してある。3分以内だ。以上!」

 言うだけ言ったら、ブツリと途切れる無愛想な館内放送に、大きく肩をすくめさせるベアランドだ。

「だってさ! さては画像もモニターされてたんだね? それじゃ、さっさとイヤなことは済まして、この新鋭艦の内部を楽しくお散歩でもさせてもらおうか。ふたりとも付いておいで」

 こうなれば仕方も無い。

 ふたりの部下たちを伴って、言われたとおりのまっすぐ突き当たりのタラップから上階の回廊、この左手の突き当たりに見えたエレベーターホールまで早足でたどり着く。

 アナウンスの通り、エレベーターは二基あって、右が通常のクルー用で、残りの一基は、途中の階層をパスしたブリッジまでの直行便だった。

 ブリッジ・クルー専用のそれがあるのは、じぶんたちの母艦のそれと同様だ。

 そのためか明らかに大きさが異なるものの、許容量がだいぶ小さめな見てくれをしたものの扉が開け放たれるているのを、その身をかがめてしげしげとのぞき込む大柄なクマ族だった。

 左の頬のあたりを人差し指でポリポリとかきながら、ちょっと考え込んでしまう。



「ああ、なんか、ずいぶんとちっちゃいエレベーターだよね? ブリッジ・クルー専用とは言ってもこんなに狭くすることもないだろうに。ぼくみたいないかついクマ族なんかよりも、すっかり犬族主体に考えちゃってるよ。確かにこんな軍用艦の乗組員は、おおかたでスリムな犬族たちがメインにしてもさ……!」

 みんなで乗れるかなと背後の部下たちを見下ろすのに、かしこまったきりのふたりの犬族たちときたらば、さも困惑したさまでお互いの顔を見合わせるばかりだ。

 そうしてやがて、おずおずと言うのだった。

 まずはこざっぱりしとた見てくれの犬族のケンスが、遠慮がちにものを申す。

「でしたら、どうぞ隊長どのがお先に行ってください……! おれたちは、なあ?」

 となりの相棒に向き合うのに、顔色の真っ青な毛むくじゃらの犬族は力なくこれに同意するのだった。先の戦闘でどやされてしまったここの犬族の艦長に会うのがよほど気が引けるのらしい。
  
「は、はいっ、おれたちは後からブリッジにうかがいます……

 もはや死にかけみたいな部下のありさまをどうしたものかと見つめてしまう隊長さんだ。

「はあ、とか言いながら、ふたりしてバックレたりするんじゃないだろうね? いいかい、敵前逃亡は銃殺刑だよ? まあ、この艦の中じゃ逃げようもないんだけど、発進許可がなければアーマーも出せやしないんだし。まあそうか……」

 ちょっと呆れ顔でふたりを見ながら、また狭いエレベーターに向き直るベアランドだ。これに背中から身を預けるかたちで乗り込むと、部下の犬族と相対した。

「ふうん、どうにか乗れなくもないのかな? まさか重量オーバーだなんて言わないよね? それじゃ、さっさとみんなで怒られに行こうか! それっ!!」

 ふたりの部下たちが気を抜いているところを無理矢理に太い腕を伸ばして捕まえて、この身にがっちりと押さえ込んでやる。

「わあ!」

「ひゃああっ!?」

 びっくりする犬族どもにしてやったりといたずらっぽい笑みで言ってやる。

「イヤなことはとっとと済ませちゃおうよ! 3分以内に来いって言われていることだし、もたもたしてられないから。確かに陰険でおっかない艦長さんではあるけれど、取って食われたりはしないんだからさ♡ あっと、これも聞かれてたりするのかな?」


 腕の中でもがくふたりをぎゅっときつくホールドしながら、さっさとエレベーターを起動させるクマ族だ。

 ブリッジまでの直行便はものの十秒足らずで艦の最上階までパイロットたちを送り届けてくれる。

 その先のブリッジでくだんの艦長と対面するベアランドたちだが、思ったよりも機嫌の悪い大佐どのに内心で肩をすくめる隊長さんだった。背後でいっそうに身をすくめる犬族たちとこってりとしぼられることになるのがもはや明白だ。

 部下でなくとも逃げ出してやりたい気分になりつつ、旧知の仲のベテラン軍人に立ち向かうエースパイロットだった。

                 
              ※次回に続く……!




 

 


プロット
ベアランド小隊、ジーロ艦に着艦。
ランタン 船首部に ビーグルⅥ アーマーハンガーに
アーマーハンガーのコルクとケンスと合流、ジーロの艦内放送でブリッジに招かれる。
ブリッジタワー、エレベーターが二基、その内の一気はブリッジまでの直行便、ただし狭い。
三人でブリッジへ。不機嫌なジーロとのやり取り。
なんやかんやでお茶をにごしていながら結局は命令を遵守できなかった部下、特にコルクへと話が移り……!
以下、#015へ? ※お説教中にウルフハウンドも合流。
部下ふたりは副隊長に任せて、ベアランドはジーロとの話し合いに。船酔い状態で完全グロッキーなダッツとザニーのクマキャラコンビがちょっとだけ登場? 

TO DO
アストリオンのマップ作成、ダッツとザニーのアーマー、ビーグルⅥプロトタイプの作画、ケンスとコルクのビーグルⅥ量産型の作画。ジーロの巡洋艦、????の作画。
  

 

 

本文とイラストは随時に更新されます!


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「オフィシャル・ゾンビ」13

オフィシャル・ゾンビ
ーOfficial Zombieー

オフィシャル・ゾンビ 13

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※世界最大のNFTマーケットプレイス、”OpenSea”にてノベルのイラストを出品中!ただいまほぼ最安値なので、安いうちにホルダーになってもらえれば、いずれ価値が出てくるかも??
※この線画のイラストは、ポリゴンNFTで、一点ものです(^o^)

※「ニコニコ生放送」で創作ライブやってま~す♡

オフィシャル・ゾンビ 13


 夕方、日暮れ前――。

 くだんの目的地へと到着した。

 そこでただちに今回のミッションのおおよその目的と目標など、手短なブリーフィングがあり、それを淡々とした口調で説明する日下部だ。

 みんなで楽屋に集まっていざ放送局を後にしてから、この芸人ばかりの即席チームのリーダーとしての役割をやはり淡々とこなしていた。

 そしてそのすぐ隣では、何故だかちょっとびっくりした表情でぽかんと目の前の建物を見上げる鬼沢だった。

 そう、そこはこの彼にとっては、もはやはっきりとその見覚えがある、都心の五階建てのごく中規模なオフィス・ビルだ。

 まださほど年数は経っていないだろう無骨で頑丈な鉄筋コンクリの建物に、大小合わせて10社ほどの新興企業やら何やらが入っているはずの、いわゆる雑居ビルだった。

 その内のひとつの会社の取材が目的で、複数の収録スタッフと共に番組のロケで訪れたのは、あれは果たしていつのことだったか?


 当人しごく有名なテレビタレントでいろんなところに引っ張りだこだから、正直、そう詳しく中身までは覚えていないのだが、それでもまだ半年も過ぎていないはずだ。

「はあ~……! え、まさかここが目的地だったの? しかもこの五階って、まんまじゃん! でもいったい……なんで??」

 以前、この自分が訪れた時はそんなに怪しいような雰囲気はどこにもなかったはずだと、かつての記憶をうんうんと絞り出す。

 だがやはりこれと言ったものは脳裏には浮かんでこなかった。

 そんなほけっとして気の抜けたさまを、すぐ間近から怪訝に見る日下部が問うてくる。

「……おはなし、聞いてくれていますか、鬼沢さん? さっきから心ここにあらずってさまで、ねぇ、なんだかぼうっとしていますけど……?」


 これからアンバサダーとして肝心の作戦行動に入るのだから、しっかり聞いてくださいと念を押されるのだが、そんな忠告もてんで上の空の中堅芸人だ。

 それだからひどく困惑した顔をこの隣に向けると、やむなく困惑しきったその胸の内を吐露する。

 ここでのロケのことを内緒にしておく必要はないはずだから、覚えている限りのことをありのままにぶっちゃけた。

 すると日下部ばかりか、周りの関西弁のおじさんたちまでもが、驚いたさまで鬼沢の顔を見返してくるのだった。

「はえ、鬼沢くん、ここに来たことあったんかい? 偶然ちゅうか、えらいイタズラやの。運命なのか、悪運なのかしらんけど」

「偶然にしてはできすぎやない? ようわからんけど、呼ばれて来たみたいで気持ちが悪いわ! オニちゃん、なんか恨まれるようなひどいことしたんちゃうんか? ここのオーナーさんか誰かに??」


 関西弁でまくし立てられるのに、やはり困惑することしきりの関東芸人だった。おかげでちょっと腰が引けていたりする。

「まさか、そんなこと……! それにこのビルのオーナーさんには会ってなんかいないはずだし?」

 ひたすら首を傾げる鬼沢に、日下部もやや不審げなさまでものを言う。

「きっとただの偶然……なんですかね? でもどうあれやることはひとつで、変わりませんから。さっきも言ったとおり、ここのビルの最上階にいると思われるグールの討伐、ないし無害化、ただそれだけです」

「ああ、そうなんだ……! 最上階って、ほんとに俺がロケをしたところなんだよな? まさかあそこにこんなかたちで舞い戻ることになるなんて……それに討伐って、なんかな……!」

 そんな内心の複雑な思いが自然とこの口をついて出てくる。

 改めてその地上五階建ての建物の最上階を見つめる鬼沢だ。

 確か記憶では、建物のそれぞれのフロアに別々の企業が入っていて、五階はちょっと特殊な職種の個人経営の会社があり、そこの名物社長を取材する目的で来たのだった。

 屋上に大きな看板がでかでかとその企業名を宣伝していて、その目立つことおびただしいさまを目を細くして凝視してしまう。

 するとそんな自分の代わりに、この横に立つ先輩芸人の東田がこれをそのまま読み上げてくれた。

「えっと、五階っちゅうことは、あれやの? 『ドラゴン警備保障』、なんやありがちなような、ないような、ようわからんところやのう?」

「要は個人経営の警備会社っちゅうことやろ? でもいまどき流行らんのちゃうん? ふつうは大手の警備会社にお任せっちゅうもんで?? そっちのほうがお得やろうし!」

 なにやらとてもうさんくさげにそれを見上げるおじさんたちに、内心では同調する鬼沢も、しれっと本音を言ってのけた。

「まあそっか、てかうちもここらへんは大手のお世話になってるんだよなぁ? あの社長さんの前ではちょっと言えなかったけど! でもあっちは専属のガードマンみたいな、危険でより硬派なことを売りにしているところらしいんだけれども?」

「それはちょっと厄介かも知れませんね? いざゾンビになってしまえば、ただの人間相手に遅れを取ることはないでしょうけど、相手がプロの軍人みたいなことになると、手加減するのがしんどいですから。いたずらに殺すわけにも行かない手前……」


 おなじく頭上の看板を一瞥しながら、真顔の日下部が大まじめに言う言葉に、鬼沢は険しかったその表情がちょっとだけ緩む。

「殺したりはしないんだ? なんかホッとした。それにあの社長さん、そんなに悪いひとには見えなかったんだよな? とっても気さくでユーモアがあってさ、ちょっと体育会系でオラオラなカンジが正直、俺は引いちゃったりもしたんだけど、あとめちゃくちゃ日に焼けてた! いかにもやんちゃなケンカ商売してるみたいな??」

 昔の記憶がどんどんと呼び覚まされる売れっ子芸人さんの回想に、どこまでもこの真顔を崩さない日下部が、およそ面白みもない無味無臭な感想を述べてくれる。

「でもあいにくとその社長さんが今回のターゲットである確率が高いです……! これはかなり確かな情報源からもたさられたものなので、たぶんドンピシャですね? ですからいざこれと鉢合わせした時に、動揺したりするのはなしでお願いします」

「そうなんだ……!! てか、なんであの社長がターゲットだなんて断定ができるんだ? 確かな情報源って、そんなの世間一般の週刊誌では一番当てにならないヤツらの代名詞じゃん??」

 はじめ目を丸くして、またすぐにひどく疑わしげに眉をひそめたりもする鬼沢に、これには横合いから世話焼きおじさんの東田がもう何度目かの説明をしてくれた。

 ※お笑い漫才コンビ、バイソンのボケ担当、東田イメージです(^^) なかなかビミョーなのですが、ひょっとしたらモデルの芸人さんよりもいいおとこだったりして??


「ああ、確かな情報源ちゅうのはそやな、おそらくは〝パパラッチ〟や〝シーカー〟ちゅうヤツらからの情報なんやろ? 世の中にはそうヤツらがおるんよ。その手の情報を収集することに長けた、ぼくらゾンビほどではないにせよ、そっち向きの力を持った特殊な人間たちやな……!」

「せやな、わいらみたいに変身まではせんでも、特殊なちからを持った人間は他にもおるんやな! なんちゅうか、半分ゾンビみたいな? ハーフゾンビっちゅうのか……?」

 うんうんとひとり納得顔してうなずく津川に、対して間近で白けた視線を送る東田が、呆れ顔してこれを受け流す。

「ちゃうやろ! 鬼沢くんが混乱しよるから、あんまり適当なことをゆうてやるなよ? ぼくらとちごうて分類、カテゴリーはあくまでれっきとした人間扱いなんやから、ぼくらゾンビさんとはベツモノなんや、しょせんは……」

 かなり含むところがある言いようには、日下部も真顔でこれに同意するのだった。

 だがその一方で、ぎょっとしたさまでまた目をまん丸くする鬼沢だ。

「時には二類とか三類とか言われたりもしますよね? あえてゾンビの名称は伏せて……! 確かにおれたちとは別種のひとたちです。見えている世界が一緒なだけで。シーカーやパパラッチはおれたち同様、ゾンビやそのたぐいが肉眼で確認できるんです」

「え、そうなの? そんなひとたちがいるんだ?? てか、それってやばくないか? そうとは知らずに出くわしたら最悪見破られて、こっちの正体がバレバレになっちゃうじゃん!!」

 にわかに慌てふためく関東芸人にしかしながら関西出身のベテラン勢がでんと大きく構えたさまでなにほどでもないと応じる。

「だとしても問題ないやろ? 見えてるのはあくまでそいつだけで、他の大部分はさっぱりわからへんのやさかい。そないなもんはただの狂人のたわごとや。せやからそれを吹聴するよりも、むしろそれが専門のゾンビの管理機構にたれ込むほうが銭にもなるし、いい副業になるんやから、むしろ役得っちゅうもんやろ?」

「せやから〝パパラッチ〟や〝シーカー〟なんてケチ臭い名前で呼ばれてるんやもんなぁ? ほんまにうまいことやっとるんやで、入手した情報をしかるべきところに高値で売り渡しての! 他に競合する相手がそうそうおらへんさかい、こんなに安定した稼ぎどころは他にありやせんて。噂じゃそれが専業の芸人もおったはずやし、あとそれ自体がゾンビの正体を隠すうまい隠れ蓑になってもうたり……」

「…………」 

 微妙な会話の空白に怪訝な視線を関西弁の漫才コンビに向けるのに、東田が相方の言い渋ったことを露骨に言い直してくれる。

「あえてみずからをゾンビと名乗らんでも、むしろそっちの名目でうまいこと正体を隠し通しよるっちゅう利口な輩もおるんや。まずは正体を見せなそれとわからんもんやさかいに。この世の中、基本は自己申告やろ、何事も?」

「へー……! そんな意外な抜け道があるんだ? いわゆる例外規定的な?? なるほど、だったらこの俺もいっそのこと、そういうことにしちゃって……!!」


 おかしな知恵を付けてあげくは下手な算段までおっぱじめるそれはそれは浅はかな先輩芸人に、芸人としてはずっと後輩の日下部が、ちょっと顔色曇らせてすかさずこれをたしなめる。

「今さら無理ですよ。すっかりタヌキの正体さらしちゃってるじゃないですか? しかもよりにもよってこの公式アンバサダーである、おれの前で??」

「ああ、まあ、そうか……!」

 さすがにそれはないかとペロリと舌を出す坊主頭の芸人さんに、ボサ髪の若手くんは、だがそこで何やら驚いたことを抜かしてくれたりもするのだが……!

「あ、でもあのコバヤさんは、いまだにみずからを二類や三類と自称して、おのれがゾンビであること自体を公式には認めていないんですよね? びっくりしちゃうんですが……」

「は、無理だろ? 俺たちの目の前であんなにはっきりと変身しちゃってたじゃん!? あんな人間どこにもいないって!!」

 それこそがびっくり仰天してとっさに突っ込む本職はツッコミ芸人の鬼沢に、関西芸人たちまでもがやかましいガヤを発する。

「あほちゃう? 無理やて、あの兄さん、それはどうかとぼくらも思うわ。あないに気色の悪いおっかない見てくれで、往生際が悪すぎるて!! 人間があないに臭い屁なんかこくかいっ」

「ないの。ありえへんわ、あのコバヤの兄さんがゾンビでないやなんて! わけわからへん。正気の沙汰やないやろっ……」

 三人の芸人にして現役バリバリのゾンビたちに食いつかれて、肩をすくめるばかりの日下部だ。

 ちょっとだけ天を仰いでしまう。

 目の端に例の看板がまたチラついて、それをきっかけとして気を取り直すと、とりもなおさず作戦開始のゴーサインを出した。

「ああ、とにかく作戦に入ります。早くしないと日が完全に落ちて、いよいよあちらに有利な状況になりますから。地の利は元からあちら側にあるのだし。それではこれから突入しますが、ここはあえて二手に分かれての行動が得策と考えます。狭い建物の中に固まって突っ込むよりも、つまりはバイソンさんたちと、おれと鬼沢さんのペアでですね?」

「え、分かれちゃうの? 敵の本拠地に殴り込みかけるのに?? みんなで行ったほうが良くない? 日下部とふたりきりはなんか不安なんだよなあ、後輩の芸人だし、愛想が悪いし……」

 顔色があまりよろしくない鬼沢をよそに、こちらはしごく平然としたさまの東田がこくりとうなずく。

 了解するなりこの隣の相方に目配せもした。

「ええよ。そのほうがやりやすいやろ。コンビでの行動は漫才同様、慣れとるさかい。ぼくらはぼくらでやらせてもらうわ。ちゅうか、はなからそのつもりやったし……!」

「そやの、スマホのアプリ開いてよう見てみ! ちゃんと今回の案件の概要が出とるわ。日下部くんが執行者として確定されておるやろ。せやからギャラ狙いで他に寄ってくるアホももうおらんのやさかい。ここから先は早い者勝ちの実力勝負や! 負けへんで、ターゲットにかかる賞金、ギャラもけっこうな額やさかいに……!!」

 自身のケータイの画面を見ながらの津川のセリフには、目を白黒させるばかりの新人のアンバサダー見習いだ。

「賞金? ギャラってなんなの??」

「誰だってただ働きはまっぴらやろ? 命を賭けとるんやさかい、当然の報酬や。でなければ誰もアンバサダーなんてやりよるはずがあらへん。ただし今回は鬼沢くんがメインで活躍せなならん『訓練』の意味合いもあるんやから、ギャラは独り占めやなしにみんなで折半ちゅうのがいいんやろ。後後で揉めたりせんように?」

 落ち着いた口調の東田の言い分には、こちらも澄ました顔の日下部がどうでもよさげにみずからの言い分を重ねる。

「おれはどうでも構いません。まずはこのタスクをクリアしてしまうのが先決ですかね。あくまで情報の通りでグールが一体なら、さほど難しくはないでしょうから」

「なんか勝手に話しが進んでない?」

「さよか。それじゃぼくらは別ルートで潜入するから、ここでいったんお別れしよか。おい、いくで……!」

「お、そやな、それじゃオニちゃん、バイバイや! どっちが先にターゲットにたどり着くか、お互い競争やの!!」

「ほんとに勝手に進んでるよ! チームワークとかないんだ!?一切(いっさい)!! てか、何してるの、バイソンさんたち、なんかふたりして建物の壁にぴたっと取りついて……あれ? どうなってるの??」

 はじめは水平だった視線の向きが、どんどん上向きに変わって見上げるような角度でふたりのおじさんたちを見ている鬼沢は、内心の困惑がもはや隠せない。

 平気な顔でこれを見上げる日下部がなんでもなさげに言った。

「まあ、バイソンさんたちの能力なんですかね。ああやって壁伝いにはい上って、目的地に潜入するつもりなんでしょう」

「え、いやいや! どういう仕組みであんなことになるんだよ? てか、こんなまだ日も暮れない内からあんなパフォーマンス目立って仕方ないじゃんか、あ、ひとには見えないんだっけ? でもそれにしたって、意味がわからないよ、もうあんなに高くに張り付いてるし!!」

 あやしい手品かいっそ雑なドッキリを見ている心持ちの鬼沢はリアクションがはばかりない。

 これにあくまで冷静な日下部がぽつりと言った。

「バイソンさんたちは何に変わるんですかね? きっとそれの能力や性質によるところが大きいのでしょうから。ああやって垂直の絶壁を上れるってあたり、だいぶ限られますよね、動物にたとえのだとしたら……??」

「なにも動物とは限らないんじゃないのか? 案外と虫だったりしてさ? いっそのこと害虫のゴキブリとかナメクジとか……うわ、見たくないな!」

 じぶんで言っておきながらおえっと顔をしかめる鬼沢だ。

 これにただちに壁の中腹のあたりからやかましい関西弁のガヤが返ってくる。

「そないなはずがあるかい! イヤなこといいなや、テンション下がるわ、きみらもぼうっとしとらんで早うせいよ!!」

「とっととせな先にステージクリアしてまうで! そしたら当然ギャラはわいらの独り占めや!!」


 そのさまを半ば呆然と見上げる鬼沢が、またビミョーな顔つきで言う。

「あんなこと言ってるけど、ちゃんと中に入れるのかな? そもそもそこに非常口がないと入れないし、いざたどり着いた屋上に何かがいないとも限らないんじゃない??」

「いえ、待ち伏せされている可能性は低いと思いますよ。だとしてもベテランのアンバサダーコンビですから。コロナの都合で換気のために窓が開け放たれていることは多々あるし、非常口があればそれをこじ開けて入れます。原則として、原状回復が可能なちょっとやそっとの破壊工作なら認められているし、壁を思い切りぶち破ったりしなければ大丈夫です」

 見上げる目つきが段々と細くなる鬼沢に、みじんも動揺することのない日下部の返答だ。

 視線をすぐ隣に戻してあらためて聞いてやるに、あちらからはやはりあっけらかんとした回答が返ってきた。

「はーん、それじゃ、俺たちはどうするんだ? まさか建物の玄関から、真正面から強行突破だなんていいやしないよな??」

「いえ、そのまさかです……! 鬼沢さん、頭のキンコンカンを返してください。ここからはもうさっさと変身して、お互いにゾンビの状態で挑みます」

「へ? 変身しちゃうの? もうここで?? まだ五階の目的地にも着いてないのに、どうして?? セオリーって言っちゃなんだけど、このまま見えない状態で抜き足差し足して、ターゲットまで迫るんだろ?」

「いえ、それではらちがあきませんから。ゾンビのちから全開で一気に五階まで走っちゃいましょう! もうそれが一番手っ取り早いです」

 結構なぶっちゃけ発言に、目を白黒させるばかりの鬼沢だ。

「そんな雑でいいんだ? バイソンさんたち、立場ないよなあ」


 言ってるそばからさっさとひとの頭からこの金のワッカを回収すると、みずからの身体をいびつにふくれあがらせる日下部だ。

 これにみずからも意識を集中して、ひとならざる姿へと変化するお笑いタレントだった。

 十秒も経たずに、そこには2匹の大きな獣と人間の特徴を併せ持った、それは得体の知れない存在が仁王立ちすることになる。

 涼しい風がまた吹き抜けて、ちまたでは〝ゾンビ〟と呼ばれる獣たちを目的のビルへと誘った――。

 入り口付近からやけにイヤな感じの気配が漂うが、これに臆することもなく先をゆくクマに、おそるおそるでビクビクしながらこの後に続くタヌキだ。

 かくして戦いの幕は切って落とされた。

 果たしてその顛末やいかに?


              次回に続く……!



 

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「オフィシャル・ゾンビ」09

オフィシャル・ゾンビ
ーOfficial Zombieー

オフィシャル・ゾンビ 09

 これまでのおおざっぱないきさつ――
 ある日いきなり人外の亜人種である〝ゾンビ〟の宣告をされてしまったお笑い芸人、鬼沢。おなじくゾンビにして、その公式アンバサダーを名乗る後輩芸人の日下部によってバケモノの正体を暴かれ、あまつさえ真昼の街中に連れ出されてしまう。
 そしてその果てに遭遇した、おなじくゾンビだという先輩のお笑い芸人、コバヤカワには突如として手合わせ、実地訓練がてらの実戦バトルを強要され、初日からまさかの〝ゾンビ・バトル〟へと引きずり込まれてしまうのだった…!


 時は、ある休日の、それはうららかな昼下がりのこと。

 戦いのはじまりを告げるゴングもなしに、いきなり〝バトル〟がはじまった……!

 舞台は、閉鎖されて人気のない廃屋と化したオフィスビル。

 ギャラリーは、見てくれのおかしなクマがただの一匹。

 そんな中で相対するは、有名なベテランのお笑い芸人と、正体不明のタヌキのバケモノだ。

 タヌキは顔こそタヌキだが、この身体はまさしく人間のそれでかつかなりの大柄、しっかりと二本の足で地面に立っている。

 それはまたこれを見守るクマも同様だ。

 もはや完全にとっちらかった状況で、完全にパニくったタヌキ、その実態は中堅お笑い芸人の鬼沢が裏返った声を発する。

「い、いきなりなんだよっ! かかってこいって、何が何だかさんっぱりわかんないじゃん!! コバヤさん、俺、きっと手加減なんてできないよ? だってまだこの自分の状況にも慣れてないし、納得もできてないのに、バトルだなんて正気の沙汰じゃないっ! おい日下部、おまえも黙って見てないでなんとか言えよ!?」

 そう思わず助けを求めようにも、黙ったきりのでかいクマはむしろ一歩、二歩とその身を背後へと遠ざけるのみだ。

 完全に外野に徹している。

 目の前でズイと一歩、足を踏み出すオヤジが渋い声で言った。

「おう、いい加減に観念せい! オニザワ、今さら泣き言なんて言うてもしゃあないで、見た目ばっかりでゾンビはつとまらへん! 実際に能力を発揮せにゃ、おのれはこの先、生き残ってはいかれへんのやさかい。ほな、とっと覚悟を決めい!!」

 強い語気で迫られて、でかい図体の腰が引けて仕方ないタヌキの鬼沢は、毛皮で覆われた獣の顔面に濃い苦渋の色を浮かべた。

 おまけキバをむきだして相手を威嚇するのは、果たしてそれが野生の動物の本能なのか、はたまたおのれの内の闘争心がなすものなのかもわからない。

 するとこれを傍から冷静に見つめるクマ、さながらリングサイドのセコンドよろしくした日下部が言った。

「別に殺し合いをしろと言っているわけではありませんから、できる限りでいいんですよ。鬼沢さん? 本気でやっても目の前の先輩は、きっと互角かそれ以上にやり返してくれます。このおれが保証しますよ。かく言うおれも、以前はずいぶんと苦戦しましたからね?」

「はっは! そうや、あの時の決着、今ここでつけたろうか? そこのしょうもない腰抜けのタヌキをちゃっちゃと張り倒して、そうや、こないなもんに三分もかからへんのやさかい!!」

「さ、三分? え、でも俺、今、こんなんだよ? 確かにコバヤさんて男っぽくてワイルドなキャラで売ってるけど、格闘技でそこまで強いだなんてイメージはないんじゃない?? でも戦うって、俺はどうしたらいいんだよ?」

 とりあえずファイティングポーズを取ってはみせたものの、その先のアクションがまったくもって想像つきかねる鬼沢だ。
 先輩芸人の怒声が響く。

「ええから! おのれの身体と心の向くままにやってみい、考えるよりも感じてその身のなすがままにや! おのれがまごうことなき真のゾンビなら、その見てくれと特性に合ったおのれのやり方っちゅうもんが、おのずと見えてくるやろ?」

「は、え、いや、何がなんだかさっぱりわからない……あ、あれ?」

 正直、何がなんだかさっぱりちんぷんかんぷんの鬼沢だが、自然と利き手がその腰のあたりにあった大きな腰袋みたいなものをまさぐっていて、そこからいざ取り出したものに目を丸くする。

 ごつい指先には、ぴらり、といつぞやの白いハンカチらしきがつままれていた。用途がまるきり不明な、およそ見た目と実際のサイズ感がまったくもってそぐわないアイテムだ。

 それを間近で認めるオヤジの先輩芸人がちょっと小馬鹿にした感じで喉仏をクックと鳴らすのには、思わず内心で焦る鬼沢だ。
 はっきりと顔に出して声がすっかり裏返っていた。

「なんや? いきなりそないなハンカチなんぞ持ち出しよって、手品でもしようっちゅうんか? はん、笑わせよるわ、よもやそないなもんがおのれの特殊能力なんか?」

「能力って、そんなの俺が知るわけないじゃない! こんなの手を拭く以外の使い方なんてなんにも思いつかないもんさっ、あ、だからなんでこんなにでかいんだよ!?」

 指先で軽く振って開いたはずの一枚のハンカチが、その実やたらな大きさとボリュームでもって目の前にばさ、ばさり!と広がるのに、またしても困惑することしきりだ。

 シーツよりももっとサイズがでかい感じで、いっそ漁船の大漁旗のようにたなびく白い布に、えっと目を細めるベテランは声を震わせる。

「おいおい! なんや、マジでやるんか? 手品!! おいオニザワ、その見てくれでその芸人根性は見上げたもんやが、褒めてはやれん、ちゅうか死ぬぞ、マジで? そないなシャレが通じるような甘ったれた世界やあらへんのや、わいらみたいなゾンビの生きる獣道は!!」

「知らないよ! やるわけないじゃん!! 手品なんて知らないし、このハンカチはなんて言ったっけ、その、エックスなんたらっていう、なんかよくわかんないけど特殊なアイテムなんでしょ? でも使い方がさっぱりわからない!! それでも持ってるとなぜか安心感があるから、悪いけどこれで戦うよ、俺!!」

「はあん、ゾンビのみが持ちうる疑似特性物質、それすなわち人呼んでX-NFT、いっちょまえに〝神具楽(カグラ)〟なんちゅうもんを扱えるのか? だが使い方がわからないならただの宝の持ち腐れやろ、そないなもんでどうやってこのわいにダメージを与えるっちゅうんや?」

「知らないよ! ただのでっかい布だもん!! でも使いようによってはどうにかできるもんなんじゃないの? そうだヘタに棍棒なんて持たされるよりかよっぽどこの俺の性に合ってる! 俺、暴力とかほんとにキライなんだよ!! 格闘技もマジで大っキライだ!!」

 派手にたなびく白いマントを利き手で振り回してオヤジの芸人を牽制するタヌキだ。まさしく闘牛士のマントさながらだが、これを傍から眺めるクマが思案顔して思ったことを口にする。

「こんな屋内で風もないのにバサバサと良くはためきますね? まるでみずから意思を持ってるみたいだ、あるいは鬼沢さんの意思を反映しているんですかね? なるほど、だとしたらこれって本当に使いようだ……!」

「ふん、そいつ自身が自然と身の回りに風を起こせる、〝風の属性持ち〟なんちゅうこともありよるんやないのか? そうやとしたらこのわいとは相性がすこぶる良くないのう! やりづらあてしゃあないわ!!」

「コバヤさんもどちからと言ったらそっち側の体質ですもんね? これはどうやら思いの外に面白い戦いになりそうです。ならばしっかりと見届けさせていただきますよ」

「おうよ、よう見とけ! しのぎを削る男と男の熱い生き様、しっかりとその脳裏に焼き付けとき! 見物やで!!」

「なんだよっ、俺はまだなんにも納得できてないんだから! とにかくどうすればいいんだよ、コバヤさんに一発入れればいいのか? てか、いいのか他事務所の先輩にそんなことして!?」

 かなり自暴自棄になりかけてるタヌキがシッポをぶんぶん振り回して、利き手の白旗もぶんぶん振り乱してはわめき散らす。
 覚めた目で見るクマがまた平然と答えた。

「はい。どうにか頑張って善戦してもらえれば……! いきなりあのコバヤさんに参ったを言わせるのはさすがに無理でしょうけど、あのひとがそれなりに手応えを感じられればそれでたぶん御の字です。おれも公正中立な立場と目で見ていますし」

「おう、ええから全力で来いやタヌキ!! まずはこの人間の姿のままのわいと互角にやりおうて、無様な赤っ恥をさらさなければOKや! おまけ万一にもわいの本性を暴くことができれば万々歳、褒美にうまいもんたらふくおごったるぞ! そこの立ち見のクマ助も込みでやな、せやからどうかこの他事務所の先輩さまにいい先輩ヅラをさせてくれや!!」

「なんだよっ、わけわかんないよ!! 俺は暴力なんてものとは真逆のキャラで、この先はもっと家庭の主婦とか安定した家族層の支持を取り付けたいと思ってるんだから、こんなのPTAとかから嫌われちゃうじゃないか! お笑い芸人がやるようなことじゃないよっ!! ああっ、もう、この、このっ!!! ちくしょう俺、きっとコバヤさんのことキライになっちゃうからねっ? あと日下部、もちろんおまえもだぞっ!!」

 毛皮で覆われていても顔面真っ赤なのがわかる鬼沢の血相に、憎らしいことどこまでも落ち着き払った日下部はいかつい肩をすくめてみせるのみだ。もう余計な茶々は入れないでじっと静観することに決めたらしい。

 荒れた言葉と一緒にバサバサと激しくはためく一枚のマントかカーテン、もしくはベールと言えばいいのか?
 薄っぺらい布が無闇に鼻先をかすめてそのたびに風を巻き起こすのを、少しめんどくさげに見やる先輩芸人のコバヤカワはやがて小さく舌打ちして喉を鳴らす。

「なんや、こうしてよう見てみるとマジで邪魔なビラビラやの? だが要はただの一枚の布っキレやろ? ゆうてしまえば! だったらかまわずひったくってしまえば、おおっ! 待て待て、マジで意思があるんか? こっちが手を伸ばした途端に引っ込みおったぞ! あるいはおんどれ、マジで手品をやっとるんか??」

「やるわけないじゃん!! でもなんかコツがつかめてきたぞ、ほんとにこの俺の思う通りに動いてるみたいだ、理屈がさっぱりわからないけど! 触った感じの感触じゃ、どうやら柔らかくて伸び縮みがするけっこう丈夫な布っぽいから、これならきっとカタチも自由に変えられたりするのかな、えっと……!」

「なんやっ!? おい、今っ、一瞬、へんな感じに形を変えよったぞ? どえらいブサイクな、バケモンみたいな?? コイツは、ひょっとしておまえの顔か、オニザワ!?」

「は? ブサイクで悪かったね!! んなわけないじゃん!! そうじゃなくて、もっとこう、こうゆうカンジに!!」

 利き手で掴んだ布とは逆の空いているほうの左手の拳にグッと力をこめて、何やらそのイメージを送り込んでいるらしい。

 一枚の薄っぺらい布が、やがて大きな袋のように丸くなったかと思うと、やがてそこに微妙な凹凸を刻んでそれはそれは大きな握り拳のような形へと変化する……!!

 タヌキがただちに大きな歓声を上げた。

「やったね! これぞでっかいグーパンチじゃん!! 俺の思ったとおりだ、接近戦でいい年こいたおじさんとボコり合いだなんてまっぴらごめんだから、これで距離を取って応戦できるもん! あとこのぶにぶにの風船パンチなら、コバヤさんにケガをさせることもないでしょ? ははん、俺ってあったまいい!!」

 悦に入ったさまで胸を反らせるタヌキに、対するおやじがだがこちらもニヒルにせせら笑う。
 おまけ少しもうろたえるでもなく目の前のでかい握り拳に、みずからの右パンチのストレートをかましてくれるのだった。
 大きいだけで中身が空っぽの布製特大パンチはいともたやすくはじかれる。

「ふんっ、こないに中身のすっかすかな空洞パンチ、怖いことなんてなんもあらへんやろ! かまわずに間を詰めてクロスレンジでのドツキ合いに持ち込むだけやっ、なんや、おのれはもうちょい能がある芸人やと思っとったが、がっかりやぞオニザワ!!」

「うるさいなっ! 世の中、殴り合いばかりが能じゃないでしょうっ? あとその目の前にあるのがただのグーパンチだと思ってたら、そんなの大間違いだからねっ、コバヤさん! なんならその証拠を見せてあげるよっ、せえーの、そうれっと、はい!!」

「ん、コイツは……うおおっ!! なんやこれはっ? まさかこないなことになりよるとは、オニザワ、おんどれ器用にもほどがあるやろっ! たまげたわ!!」

「へっへん! どんなもんだい!! さあ、そんな油断してるからだよ、コバヤさん? その状態じゃもうパンチもキックもできないし、降参するしかないんじゃない? ならここはめでたくこの俺の勝ちってことで……!!」

「…………」


 傍で見ているだけのクマ、日下部にしてやったり顔でニンマリした視線を送るが、当の黒茶のクマの亜人は黙ったきりだ。
 気のせいか、あんまり冴えないような暗い顔つきしている。

 妙な違和感を感じるタヌキの亜人の鬼沢は、目の前で戦闘不能のはずの先輩芸人に視線を戻した。

 するとどうしたことか、そのコバヤカワは口元にさっきよりもさらに不敵な笑みを浮かべて、喉仏をクックと鳴らしている。

 はじめただのグーのパンチと見せかけた巨大な風船パンチが、実は握っていた拳を大きく広げてパーに、さらにその開いた五本の指をすかさず相手の身体に絡ませて、再び握り込むカタチに変形、しっかりとその身を拘束していたはずなのだが、相手は少しも動揺したそぶりがなくてむしろ余裕のありさまだ。

 怪訝に見る鬼沢に先輩のお笑い芸人が言った。

「まあ、こないなもんは力で無理矢理引きはがすこともできなくはないんやろうが、とりあえずほめてはやるぞ、オニザワ! だがあいにくまだ勝負はついてはおらへん、おお、むしろこっからや。よう見とき、真のゾンビのありさま、他に類を見ないおっそろしい戦いようっちゅうもんを今からおのれに教えたるさかい、その五感でしっかりと体感せい!! ゆくぞっ、おおらぁっ……くらえっ!!」

 がっちりと巨大な拳でその身体をがんじがらめにされたはずのベテラン芸人がその身を震わせて雄叫びを発する。

 その瞬間、鬼気迫るようなやたらな迫力を感じたが、目の端ではクマ、同業の若手芸人がその身をビクとこわばらせるようなおかしな気配も感じた。

 そちらに目をやるとそこにはもうそのクマの姿はなかった。

 いきなりこの姿をくらます、さながらその場を慌てて逃げ出したみたいなありさまに大きな頭をはてと傾げる人間タヌキだ。

 またおまけにこの直後、目の前からは何やら巨大な、爆発音みたいなものがいきなりのタイミングで巻き起こる……!?

 ぶるおおおおおおおおおっんんーーーーーーーーんんっ!!


「なに、今の音っ……!? なんだ、なんだ? な、な、なっ! く、くさっ!? あれ、なんだコレ、まさか、へ、く、くっさ、くさあ! くさいっ、くせっ、なんだよこのニオイっ、くさいくさいくさいっ!! あああっ、くさいいいいいいいいっ!!?」

「ぶわははっ、どうや、手も足も出んでも出せるものはあったやろ? ピンチはチャンス、これぞまさしく形成逆転のどんでん返しや!! まだこの姿のままやから死ぬほどっちゅうことはあらへんが、これからトラウマ級のヤツをお見舞いしたるぞ? おのれがここまで気張ったのに免じて、このわいの隠された本性を見せたる。そんでもって格別くっさいヤツをブッこいたるわ!!」

「ひいっ、ひい! くさいっ、くさいっ、息ができない! なにこれ、なんなのこれ! ああっ、くさすぎるっ、信じられない、コバヤさん、今、屁をこいたのっ!? あのバカみたいなでっかい爆発音っ、うそだっ、こんなの人間のおならのニオイじゃないよっ、かいだことないもんっ、こんなに強烈なの!! ああっ、だから日下部も逃げたんだっ、ずるいぞ日下部っ、誰か助けて! 死ぬっ、死んじゃうっ、くさいし、息できないし、メンタルもうボロボロだっ、苦しいっ、くさっ、くるし、くさっ、くさっ、くさあ、くっせええええっっ!! 鼻が死んじゃううっ!!!」

「おい待て、落ち着け! まだこれからやぞ!! これからこのわいのかっちょいい勇姿を拝ませてやるんやから、目と耳をかっぽじってこっちに注目せい! おい、そこまでやあらへんやろ? 不意打ちとはいえちゃんと手加減してやったっちゅうんや!! おんどれアホちゃうか? そやったらその手にしてるびらびらのマントで周りの空気を振り払えばええっちゅう話やろ!! ついでにそのまるで役に立たへんぶっといシッポもぶん回せ!! おいコラ、話が進まへんやろ!!」

「ああっ、ああん、あ、そうか! あっち行け! くさいのくさいの飛んでけ!! ああっ、少しは楽になってきたっ、ああ、でもまだくさい!! うわ、マントにニオイが移ってるぞ? くせっ、これじゃこの俺の身体も臭くなっちゃうじゃんか!! くうっ、バラエティの罰ゲームでだってここまでむごい仕打ちは受けたことないのに、俺、訴えるからね? コバヤさんのこと! おならで殺されそうになったって!! こんなの殺人だよ!!」

「好きにせい! そないな訴えが通るんなら、世の中警察もなんも必要あらへんやろが? それよりも注目すべきはこっちやぞ、おら、しかと拝めよ、この漢(おとこ)の中の漢、ジュードーコバヤカワのいまだ知られざるパワフルマッチョな真の姿! そのありえへんほどかっちょええまさしくスーパーヒーロー的なビジュアルをな!!」

「あ、え、コバヤさんの身体が、見る見る内に見たことない姿にって、あれ、なんだ? これ、まさか……ううっ!?」

 仁王立ちして不気味な気配をまとう先輩のお笑い芸人は不敵な笑みがぐにゃりといびつにカタチを変えていく。

 鬼沢が目を見張って見ているさなか、人間のそれとはほど遠い色かたちへと中年のオヤジが変化変身するのだ。

 三人目の〝ゾンビ〟が覚醒するのを目の当たりにするタヌキは唖然としたまま開いた口がふさがらない。

 さながら悪夢を見ているかの気分だった。


 まずグロテスクなシルエットはそこに悪魔的なイメージを強く想起させる。鬼沢にしてみたらまさしく悪魔だったか?

 やがてそこには思いも寄らないものが姿を現した……!!

 
              ※次回に続く……!

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「オフィシャル・ゾンビ」⑦

オフィシャル・ゾンビ
ーOfficial Zombieー

 オフィシャル・ゾンビ ⑦

 これまでのおおざっぱないきさつ――
 ある日、いきなり異形のゾンビ(亜人種)、タヌキの妖怪(?)と化してしまった人気お笑いコンビ、「アゲオン」のツッコミ担当、鬼沢 耀(オニザワ ヨウ)。そこに政府公認のオフィシャル・ゾンビとして公式のアンバサダーを名乗る、おなじくお笑い芸人にしてクマのバケモノと化した「宮田日下部(みやたくさかべ)」のボケ担当、日下部 煌(クサカベ コウ)により、すったもんだの末に自身もアンバサダーとしての実施訓練を強要されることとなり……!! 抱腹絶倒のドタバタコメディ佳境に突入!!


 ガッシャアアアアアーーーーーーンッ!!!

 狭い楽屋にひとつだけある大きな窓ガラスが派手な音を立てて粉みじんに砕け散る!

 その窓をみずからの背中で突き破った毛むくじゃらの人影が、勢いもそのままに仰向けで背後の虚空にその身を投じる。

 だがここは、地上から実に七階もの高さがあり……!

 もはや自殺行為、アクロバティックな身投げもさながらだ。

 ただし見た目がタヌキらしき謎の怪人は、それがみずから意図したものではなくて第三者に無理矢理に突き飛ばされただけに、およそ恥も外聞もなくした魂消るような悲鳴を発していた。

 その一部始終を間近で見つめるこちらも謎のクマの怪人めは、覚めたまなざしで空中で手足をバタつかせるタヌキを見送る。

「うっわああああああああああああああああっっっ!!!」

「あ、ちゃんと両足で着地してくださいねっ、鬼沢さん! 今はゾンビの状態だからよほどのことがなければケガなんてしませんからっ、頭から落ちなければ実質OKです!!」

「わああっ、なっ、何言ってるんだよっ、ここ何階だと思っているんだ!? うっわっ、あああああああああああっっっ!!!」

 やけに冷静なクマからの忠告に、背後の窓を派手に突き破って今しも高層階の楽屋の外へと放り出される哀れなタヌキが必死にわめき叫ぶ……!

 それきりすぐに見えなくなったのに続いて、これをただちに追いかけるべくしたクマもガラスの破片をさらに勢いよく飛び散らせて外へとその身を投げ出した!!

 いざ「ゾンビ」と化しての任務行動、公式アンバサダーとしての実施訓練のスタートだ。

「わああああっ! あ、え、ここって何階だったっけ?? は、わわっ、死んじゃう死んじゃうっ、死んじゃうよぉっっ!!」


 仰向けの姿勢で楽屋の窓を突き破ってそのまま虚空に放り出された人型のでかいタヌキは、その背中越しに振り返って見た光景にただちに全身の体毛が総毛立つ!

 はるか遠くにコンクリの地面が見えるが、今しもそこめがけてこの身体が重力の法則のなすがままに落ちていこうとしている。

 通常なら絶対に助からない高さと落下速度でもってだ。

「ああ、いやだっ、いやだよっ、死にたくなっ……あ?」

 シュタっ……!!

 目をつむって死の恐怖にあがきもがく見た目ひとがたのタヌキのバケモノだが、それはただ一瞬のことで気が付いたらばすべてが一変していた。

 地上七階から地べたまでの自由落下はほぼ一瞬で、頭から落ちるなと言われるまでもなくこの体勢を自然と空中で立て直していたタヌキ、もとい人気お笑いタレントの鬼沢だ。

 直後には足下に堅い感触を感じたくらいでしっかりとコンクリの地面に着地していたことに見開いた目をひたすら白黒させる。

「あれ、着地できちゃった? あんな高くから落ちたのに??」

 見上げたテレビ局の巨大な社屋、七階に相当するある一部だけが大きく窓が破損しているのを視認して、はたと首をかしげる。

「まあ、ゾンビだからそんなものです。もちろん個体差があるから一概にとは言えませんが、人間の時のそれよりはすべての感覚や運動能力が大幅に勝っているはずですよ? 今、鬼沢さんがその身をもってしっかりと実演してくれたように」


「……! なんだよ、おまえに無理矢理やらされたんだろ? よくもやってくれたよな、しかもこんなおかしな見てくれしてるのに、真っ昼間のこんな街中の屋外に放り出すだなんて……!!」

 気が付けば音もなくすぐそばに着地していたクマ、厳密には日下部の澄ました返事にこちらは仏頂面して文句がだだ漏れる。

「お互いさまじゃないですか。もとよりこの見てくれに関してはそんなに気にしてくれなくていいですよ。それをこれから現実に実演して証明してみせます。もちろんふたりでですね? つきましてはここから大通りを渡った先にあるわりかし大きな公園、わかりますか?」

「公園? わかるけどなんで?? この局からちょっと離れたところにある『第三市民公園』だったっけ、ずっと昔のまだ若手の頃に相方とそこで漫才の練習とかしてたから、いざ番組収録の前とか大事な時に! でもよりにもよってそんなところに顔出したらすぐさまパニックだろ、あそこって普段から家族連れで混んでるし、そこまでもけっこうな人通りがあるし?」 

 不審な顔で尖った鼻先をひくつかせるでかいタヌキに、相変わらずのんびりした顔つきの大柄なクマがちょっとだけ意味深な目つきで先輩の芸人、今や見てくれの怪しげなゾンビ(?)を、その背後に面した大通りへと誘う。

 局の敷地を離れたらそこはもう結構な人混みで、この格好で向かうのにはかなりの気後れがするタヌキの鬼沢をよそにさっさとそちらへと大股で歩きだした。

「おれの後に付いて来てください。ああ、おかしな物音を立てたりヘタに騒いだりしない限りは、見た感じちゃんと身体のステルス効いてるみたいだから大丈夫ですよ、鬼沢さん。周りにぶつからないように注意を払えば、走っても平気なはずです。それじゃ、行きますよ?」

「ステルス?? あ、お、おいっ! 行くって、このカッコじゃさすがにマズイだろ? ちょっと、クサカベ! 待ってよ、ひとりにしないでくれ!!」

 その場で二の足を踏む鬼沢だが、周りの人気を恐れてこわごわと自らも足を踏み出す。結構派手な物音を立てたばかりだから、この場にいても人目を避けることはできないのは理解していた。

 大股で詰めてそのでかい背中に手が届くぐらいになったら、この毛むくじゃらの巨体がいきなりスピードを上げて走り出した。

 有無も言わさずにだ。

 するとこちらも焦って駆けだしてしまうタヌキである。


「あっ、おいっ! そんな走るなよっ、て、信号もないところでいきなり渡っちゃうの!? だ、大胆だなっ、みんな見てるじゃんっ!! テレビタレントが人前でそんなことしたら、しかもこんなおっかない見てくれでっ、おおいっ、待ってくれよ!!」

 東京の都心で、おまけ昼間の街中じゃ人通りも車の通りも決して少なくはない。

 そんな中に正体不明のバケモノが二体も出現したら、ちょっとしたパニックは免れないだろうと恐れおおのくテレビタレントの心配をよそに、何の苦もなく大通りを横切ってその先のビル街の脇道へとその身をくらますクマの後輩芸人だ。

 その後を必死になって追いかけた。

 なんて悲鳴や罵声を浴びせられるのか気が気ではない鬼沢だが、なぜかどこからもそれらしきが上がらないのには、内心で不可思議な困惑と共に、もはや夢なのかとさえ疑ってしまう。

「いいや、だったらさっさと覚めてくれよ! おおい、クサカベっ、あ、騒いじゃダメなんだっけ? おおーい、いた! ちょっとクサカベっ!!」

 まだ慣れない感じの毛だらけの身体と背後でぶんぶんと揺れるシッポのバランスに悪戦苦闘しながら、どうにか見失いかけた後輩の背中に追いすがる。ちょっとスピードをゆるめて小走りくらいのクマは覚めたまなざしで大汗だらけのタヌキを見返した。

「……ほら、平気だったでしょ? この調子で目標の公園まで行きますよ。この姿になったおれたちは普通の人間の知覚や認識では捉えにくくなっているんですよ。人間じゃ無いんですね、しょせんは? 気を引き締めて息を殺していれば、まず感づかれることはありませんから」

「そ、そうなのか? 確かに周りの誰とも目が合わないのがびっくりなんだけど、つまりはこれって『透明人間』になってるってこと?? すごいじゃん!!」

「……いえ、厳密には違うと思いますよ? というか鬼沢さん、なんか今やらしいこと頭で考えてるでしょ? そういう煩悩や雑念が働くと途端に見えちゃったりするから、やっぱり透明人間じゃないんですよ、おれたち! 気をつけてくださいね?」

「や、やらしいって何だ! そりゃちょっとは想像したけど、この見てくれでそんなのただの変態だろ!! ……触ったりはできるんだ?」

「発言がことごとくいやらしく聞こえますよね? もちろんできますよ。でもたぶんその時点で、この身体のステルスが切れちゃうと思いますけども。フェードとかも言ったかな? 要は気配を殺して身を隠しているんですが、驚いたことにカメラとかの撮影機器にも写らないらしいですよ、ちゃんと意識してその状態を保っているぶんには?」

「いや、その状態って、どれがそれなんだかイマイチわからないんだけど? 意識をそれなり集中していればいいのか?? それともこれもいわゆる慣れってヤツ??」

「あはは、良くおわかりで。理解できてるんならこんな人通りを避けた裏道でなくても大丈夫ですね! それじゃさっさと人通りを渡って目的地へと向かいます。くれぐれも余計な物音は立てないでくださいね!」

「あっ、だからっ、ああっ、もう、待ってよ……!!」

 なるべく物音を立てないように用心しながら人混みを息を殺して走り抜ける二匹のバケモノたちだ。
 その身に古めかしい装束をまとってはいながら、この足自体はどちらも裸足なので余計な靴音などは響かない。
 だが雨上がりの歩道はいたるところに水たまりがあって、そこを渡るたびに水音だけがピシャピシャと鳴るのだった。

 ほどなくしてお目当てとしていた市民公園へとたどり着く。

 いざ公園に着いてみれば、そこは思った以上の家族連れで賑わっているのに、ちょっと意外げな顔でこの広場の入り口近くから辺りを見渡す鬼沢だった。

 雨上がりの晴れた日常の風景にじぶんがいかになじまない見てくれをしているのかひどい困惑を覚えながらも、目の前の平和な景色には内心でカレンダーの日付を思い出す。

「あ、そうか。今日って休日なんだっけ……! あ~ぁ、それなのにどうして俺はこんな……!!」

 恨みがましげにすぐ隣で呆然と同じ景色を眺めているいかついクマのバケモノを見やるが、その当人、後輩の他事務所所属の若手の芸人くんはそ知らぬさまで明後日の方向に目線をくれる。

 チッと小さく舌打ちして、それから辺りの平和な景色を改めて眺めては自然と深いため息をついていた。
 それにクスっと笑うような気配を発するクマが言ってくれる。

「ね、見えていないでしょう? こちらからわざとわかるようなそぶりを見せなければ、おれたちはほぼいないも同然なんです。それこそがゾンビのゾンビたるゆえんですね?」

「はあん、みんな家族の団らんを楽しんでいるよな。ここに得体の知れない不審者がいるとも知らずにさ! しかもふたりも!! こんな目立って仕方がないカッコをしていてもまったくバレないのはありがたいけど、タレントとしては悲しいものがあるよな……! いや、こんなゾンビ、もといバケモノじゃ仕方ないのか、おまけに俺ってタヌキなんだ? はああ、家族になんて説明すればいいんだよ……」

 がっくり肩を落とすタヌキの妖怪と化した鬼沢に、相変わらず他人事みたいな物言いのクマのバケモノ、日下部がぬけぬけと言ってくれた。

「言わなくていいんじゃないですか? さしあたって今のところは?? このあたりまだ法的な整備が整っていないんだし、亜人種管理機構への個人的なカミングアウトだけで十分ですよ。周りへの周知は後後にしておいてですね。かく言うこのおれもごく一部のひとにしかそれとはっきりとは言っていないし。まあ、噂はいろいろと走っているようですけど……」

「ああ、俺もいろいろ聞いてるよ。あることないこと、ありとあらゆる妄言から誹謗中傷みたいなことまで! まったくいざ自分の身に降りかかるとなると寒気しかしないよな、こんなの!!」

「慣れるしかないんですかね、誰しもが……? 社会の共通認識としてそれが正しく認知されるまで、あるいはおれたちが一方的に我慢し続けるか? 無理がありますかね。平和が一番だなんてのんきなことは言ってられないこのご時世ですから」

「なんか気が滅入ってくるよな? で、どうしてこんな真っ昼間の平和な公園なんかに連れて来たんだよ? 俺たち、ここじゃ異物か不審者でしかありゃしないぞ。くそ、家族と来てたら最高の思い出作りじゃないかよ。ここってこんな穴場だったんだ!」

 ちょっと悔しげなさまで身もだえするタヌキに、隣のクマがちょっとだけ苦笑いしてそこからまじめな話を切り出した。


「来たのにはちゃんと意味があります。実際の肌で感じた自分の身体の出来具合を見るのと、人混みに問題なく紛れることができるのかのチェックとかを兼ねてですね? この点、鬼沢さんは自然とできているから問題ないですよ。たとえ家族の前ででもその姿でいる限りは見つかることはありません」

「だからそれはそれで、なんか悲しいだろう? あれ、いざ正体を明かしたところでこの姿を見せることができなかったら、なんか説得力がないんじゃないのか? ただの嘘つきみたいな??」

「まあ、そのあたりは、説明がしづらいんですが、たとえば自慰をしているところをわざわざ家族に見せることはありませんよね? それと同じで、あえて隠さずに見せようと思えば見せることができるはずです。恥を忍んであえて恥部をさらすみたいな感覚で?」

 しまいにはえらくぶっちゃけた物言いをしてくれる後輩に、家に帰ればタレントからマイホームパパになる中堅芸人は泡を食ってわめいてしまう。周りを気にして口元に手のひらを当てて努めて語気を落としつつ、それでも最後にはまたわめいていた。

「待て待て! 自慰ってなんだ! ……あ、語弊があるだろう、俺は間違っても子供の前ではそんな姿見せないぞ? この姿はそんな恥ずかしいことなのか? 冗談じゃない! だったら俺は絶対に見せないぞ、家族にこんなわけのわからないゾンビ、じゃなくてタヌキのカッコ!! だからなんでタヌキなんだよっ!?」

「愛嬌があっていいんじゃないですか? おれは好きですよ、タヌキの鬼沢さん。むしろ元の姿の時よりも愛着あるかも? 普段は坊主の太ったおじさんですものね? いかにも見え透いたビジネススマイルの??」


「待て! それこそ語弊があるだろう? おじさんなのは認めるが、ビジネススマイルってなんだ?? 俺はお笑い芸人だよ、根っからの! そもそもまだ若手のお前にどうこう言われる筋合いはない。それよりも、これからどうするんだ?」

 ひょうひょうとした後輩の横顔を睨んで問いただすのに、いっかなに悪びれるでもないクマはこれまたぬけぬけとしたさまで果ては意外なことをさらりと言ってのけた。

「まあ、とりあえずはその状態に慣れてもらうことが一番ですかね? 来ている衣服、装束っていうのか、そのへんのアイテムだとかもそれなりに調べて使い方をきちんと押さえてもらって……あ、あと、あるひとを呼んでいますので、この場でそちらとの顔合わせもしてもらってですね……」

「あるひと? え、誰?? なんかコワイんだけど、このカッコで引き合わせるってことは、ひょっとしてそのひとも……!」

 怪訝なさまで毛むくじゃらの頭を傾げさせるのに、落ち着き払ったクマの妖怪はあくまでもクレバーな調子で言ってくれる。

「会えばわかりますよ。ちなみに鬼沢さんも知っているひとです。ちょっと意外かも知れないですけど? でも身元自体はとてもはっきりとしているひとですから」

「は? まさか顔なじみの先輩のお笑い芸人が出てくるなんてことはないだろうな? 頭に黄色いメットを被って?? ドッキリじゃん! タチの悪い? でもこの俺たちのことが見えるヤツなんだろ、だったらやっぱり……」

「来ましたよ。ほら……!」

「あ!」


 何かしらの気配に感づいたのか、ふと背後を振り返ってそれと目線でそちらを指し示す日下部だ。
 これに同じく背後を振り返る鬼沢なのだが、いざ振り返って見た先にいた人物に、ポカンとしたさまで大きな口を開けてしまうのだった。

 確かに見知った人間がそこにはいた。

 だがそれは実に思いもよらない人物で、なのに比較的に身近な立場にいるごく見知った人間だったのだ。

 それこそが……!


                ※次回に続く……!
 

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「オフィシャル・ゾンビ」⑥

オフィシャル・ゾンビ
ーOfficial Zombieー

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オフィシャル・ゾンビ⑥(めんどくさいので今回からこのかたちにしました(^^)) 


 シンと静まり返った楽屋で、そこでは得体の知れない二体の何者かが物も言わずに相対していた。

 つい何時間か前にはそこにはそれなり名の知れたふたりのテレビタレントがいたはずなのだが、そんな面影はもはやどこにもありはしない。

 かたや毛深い毛むくじゃらの二本の足で仁王立ちして相手を見下ろすクマに、かたや四つん這いでうずくまる、こちらも毛むくじゃらでなんとも正体が知れない何かしらだ。

 力なくがっくりとうなだれているからこの顔つきがまだ定かではない。双方、見た目がケダモノで身体中毛だらけなのは同じだが、二体のバケモノたちはそれぞれが違ったカタチの衣装らしきをその身にまとっていた。

 それがまた異様さに拍車をかけているのだが、見ようによっては昔の武人が身にまとう鎧のようでもあり、頑丈な見てくれのアーマーと古めかしい装束の合わさったようなかなり独特なものだ。

 相変わらず黙りこくるクマが見ている前で、畳に突っ伏すケダモノが低いうめきを発する……!

「ううっ、う、ううう~~~っ……! な、なんだ、どうなったんだ、俺、どうして……ん、なんだ、これ??」

 あまりに突然のことに恐怖と混乱から反射的に身を固くしてその場にうずくまったそのケダモノ、もとい鬼沢だ。

 それだからようやくうっすらと目を開けて、まずそこに飛び込んで来たものにさも怪訝そうにこの顔つきをしかめる。

 ちょっと前までテレビでは人気のタレントだったはず芸人さんは目の前にあった見覚えのない毛むくじゃらの何かしら、おそらくは二本の腕らしきをしげしげと見つめるのだ。

 じいっと……!

 それが誰のものなのか認識がそれとできないままに、両手をグー、パー、グー、パーさせたりして、またしばし考え込んだ。

「……えっ! え、え、え、え???」

 ギョッとして、顔面に冷や汗じみたものを浮かべたのはこの直後のことだ。顔も全体くまなく毛むくじゃらなのに、イヤな汗をかいているのが傍から見てもはっきりとわかった。

 間近で見ているクマのバケモノ、元は日下部はうんうん、わかりますよ、ときっと内心では頷いてたのだろうか。

 よって裏返った悲鳴を発する、その元は鬼沢のバケモノだ。

「なっ、なんだこれ!? これ、まさか俺か?? いやいやいやっ、そんなわけないっ! んなわけないじゃん!!」

 ブルブルと震える両腕がそれがどちらも自分のものだとはっきりとこの身体の感覚として、そこに伝わる神経がまざまざと教えてくれるのだが、感情がそれを一切拒否、頭の認識がまるで追いつかない中堅どころの芸人だ。

 わなわなと全身を震わせながら、やがてハッとした表情で、次にはおそるおそるしてその毛むくじゃらの腕でみずからの顔を触ることとあいなる……。

「……っ!!?」

 生まれてこのかた、自分の身体からは一度たりとも感じたことがない毛むくじゃらの毛皮(?)の感触とまるで見覚えのない凹凸をなす顔の造形、いわゆる動物、ケダモノのそれにいよいよ絶句してしまうおじさんだ。

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 腰を抜かして背後の畳にぺたりと尻を付けてしまう。

 見上げる視線の先に謎のクマ、茶色いバケモノがいたが、今となってはそこに一切の驚きを感じられなかった。
 もはやどうでもいいくらいだ。

 言葉もないままにうつろな視線でどこをともなく見つめてしまうが、この視界の左の端に見切れるものに自然と焦点が合う。

 太い毛玉のような、神社の坊主が晴れの日に振り回すみたいなでかい毛筆のかなり特大のヤツがヒクヒクとひくついていた。

 それだけやけに異質だが、身体の感覚がやはりそれが自分の身体の一部であることをしっかりと教えてくれた。

 そう。人間には唯一なくて、ケダモノにはあるもの――。

 それが自分の尻のあたりから生えていることを、左手でグニュッとモノを掴んでその厳然たる事実をはっきりと自覚させられるのだ。

「う、これ、シッポ……か? ウソだろ、俺のケツから太いのが伸びてるぞ? 夢だろ?? そうに違いないよ、こんなの、ありえない……! おい、日下部、こんなの、冗談だよな??」

 半ば呆然として目の前で立ち尽くすクマに問いかけるが、こちらはこちらでやはり相当にありえない見てくれをさらしてしまっている若手のお笑い芸人だ。

 あえなく真顔でそのいかつい肩をすくめるばかりである。

 その上で変になぐさめを言っても虚しいだけだろうと、おのれが言えることだけをありのままに伝えてやるのだった。

「まあ、見たままですね……! はじめはパニックするかも知れませんけど、すぐに慣れますから。日常生活においてはむしろこっちのほうが便利な場面も多々あるし、あはは。基本的に不便はないはずですよ? それにしても鬼沢さん……」

「…………」

 まったくもって理解も納得もしがたい。

 そんなただ呆然自失の体で開いた口がふさがらない先輩タレントに現状すっかりクマの見てくれした後輩が言い放つ。

「やっぱり、タヌキだったんですね? 状況からしてそうなるんじゃないかなと予想はしていたんですけど、なるほど納得です。まあでも可もなく不可もなくで、良かったんですかね。鬼沢さんの元からのキャラに置き換えてもそんなに違和感なさそうだし」

「は? 何言ってんの? タヌキって、何??」

 いまだ呆然としたさまの鬼沢だ。
 この頭の中が真っ白けなのを察して、ごそごそとみずからの懐の内に片手を突っ込むクマは、ほどなくそこから何かしらを取り出して畳に尻をつけたままのタヌキにはいと手渡してくれる。

 それを無言で無意識に受け取るタヌキは、それをそのまま目の前にかざしてぼんやりした視線を投じてしばしのフリーズ。

 渡されたのはシンプルなデザインながらにやや大きめサイズの手鏡で、でかい頭をしっかりと捉えて克明に写しだしてくれる。

 そこに写ったものが果たして何なのか、それが果たして誰なのかを理解するのにちょっとだけまた間を要して、直後、とどめを刺されるかのような衝撃に見舞われるテレビタレントだ。

 ↑鬼沢が変化した姿のイメージです。タヌキですね♡
 ちなみに鬼沢自体がお笑い芸人のハ○イチのツッコミのひとがモデルなのですが、もはや原型が無くなっています(^^;)
OpenSeaでNFTとしても販売中!将来有望な激安物件です♡

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「うわあっ、マジでタヌキじゃん!! タヌキそのものじゃんっ!! ここに写ってるの俺か!? ウソだって!! いいや、認めない、認めないぞっ、こんなのでたらめに決まってる! ……やっぱりタヌキだあああああああ!!?」

 一心不乱に頭を振り乱して、一度強く目をつむって再び直視した鏡には、やはりおなじケダモノの顔面が写されていたのについには絶叫するタレントさんだ。もとい、元タレントさんか?

 いっそ失禁しててもおかしくないようなうろたえぶりでおまけこの世の終わりみたいな絶望的な声音を発するのだった。

「ああ、終わっちゃったよ、俺のタレント生命……! こんなんじゃどこにも顔なんて出せやしない。まずBPOが黙ってないよ。BPOってなんだっけ? そうでなくともPTAとか、なんかしらの振興会とか、動物愛護団体とか、おい、タヌキに人権ってあるのか??」

 完全に頭の中がパニックして思考がごちゃ混ぜになっている鬼沢に、見た目のほほんとした面構えのどでかいクマが右手を差し出してくる。
 のほほんとしたさまであっけらかんと言うのだった。


「まあまあ、そんなに落胆しないでください。何事も慣れですから。ぶっちゃけ嘆いているヒマなんてありませんし。むしろそれありきのお笑い芸人だし、タレント活動だって割り切ってしまえばそれでいいんですよ。このおれをはじめとして仲間は他にもいますから」

「……仲間って、俺も家族もこんなの想定外過ぎるよ。親や学校になんて説明するんだ? あとそういうの噂では聞いたりするけど、おまえ以外にはゾンビを公言してるヤツ、見たことないし。お先真っ暗じゃないか……!」

 がっくりとうなだれるその乾いた鼻先に、毛むくじゃらでごつい右手を突き出して笑うクマ、日下部はいつまでも尻餅ついたままのタヌキの鬼沢に立ち上がるように促しながらに言う。

「大丈夫です。国がうまいことサポートしてくれます。でないと世の中が乱れちゃいますからね。それよりももっと良く今の鬼沢さんの姿を見せてくださいよ。全身がタヌキに化けて、身につけているものもすっかり変わっているじゃないですか? 己を知り相手をしらば百選危うからずっていう通り、まずは自分のことをわからないことにはこの先やっていけませんよ? ついでにおれのことも見てください。お互い見せ合いっこですね。その後にいよいよ実践てことで……」

「実践? おまえ、以前と比べてだいぶ落ち着いてきたよな? 昔はそんなんじゃなかったじゃん! いいよ、自分で立つから。ほらっ、と……わ、なんだこの慣れないカンジの景色、ひょっとして背が高くなってるのか? あれ、でもまだおまえのほうがちょっと高いの??」

「クマよりでかいタヌキなんて違和感しかないでしょう。確かにおれのほうが若干だけ高いみたいですね? 鬼沢さんは、ふうん、はじめてにしてはちゃんとそれなりのカッコしてますよね? その時の状況によっては多少の誤差が出るかもしれないですけど、たぶん平均的な鬼沢さんの変化態(モード)、いわゆるゾンビ化した状態がこれなわけで……」

「ゾンビ……! て、あれ、なんで俺こんな格好してるんだ? 俺のお気に入りの私服が影も形もなくなっちゃったじゃないか? こんなヘンチクリンな衣装、俺のスタイリストは絶対に用意しないよ! というかこれって、服なのか??」

 まったく見覚えがないみずからの出で立ちに改めて意識が向いて、目をパチクリするばかりのタヌキはひたすらに首を傾げる。
 すると間近で向かい合うクマがしたり顔して言うのだった。

「スタイリストさんなんていないじゃないですか。間違いなく鬼沢さんの服、装束ですよ、それって。特殊な見た目をしているけど、そもそもで今まで来ていた服はサイズ的に無理があるじゃないですか? さっきのアイテム、X-NFTと同様の原理で物質が変化したユニフォーム版の神具楽(カグラ)だと思ってもらえばいいんですよ。これがおれたちにとっての正式な仕事着みたいなもんですから」

「うう、さっぱりわからないよ。ごめん、俺さっきからおまえが言ってることの半分もわかってないと思う。俺がさっきまで着ていた私服が、俺がこんなタヌキに、これタヌキなんだよな? なんか納得いかないけど、タヌキってあたりに、とにかくタヌキになったのと一緒に服もドロンって化けたってことなのか? あれ、俺、いま何を言ってるんだ??」


 自分の口から出た台詞に自分で困惑、げんなりしたさまで左右の眉をひそめる鬼沢に、若干の苦笑いみたいなものをそのキバが見える口元に浮かべる日下部は、こくりとうなずく。

「ちゃんと理解できてますよ。鬼沢さん。ついでにその衣装の仕様だとかもじぶんであれこれ探ってきちんと理解しておいてくださいね。ひょっとしたら意外な機能や能力があるかも知れませんよ? 昔からひとを化かすっていうタヌキだから、なおさらじゃないんですかね? 腰の左右に付いてる大きなポーチみたいなの、それっていかにも意味ありげだし……!」

「ポーチ? あ、これのことか、これって袋なのか? モノが入れられるみたいな?? なんか邪魔なカンジだよな、どっちかひとつでいいのに! 番組で用意された衣装だったら良くできてるけど、なんかビミョーだ。でも子供受けとかはするのかな? 俺、これからはよりご家庭の主婦層の支持とか人気が欲しいから、これってかなり重要なんだよな。子供がケガするような無骨な突起とかはないほうがいい! あれ、そう言うおまえはおまえでやっぱりおかしなカッコしてるよな、んんっ……」

「鬼沢さん、今さら主婦層人気なんて狙っているんですか? 鬼沢さんのところのアゲオンのファンの母体って、たいていは若めの独身男性層ぐらいに思ってましたけど。あんまり女子受けはしない芸風に見えるし……なんですか?」

 しげしげとみずからの格好を眺め回してから、次に目の前に仁王立ちする相手の出で立ちにまじまじと注目する、そのタヌキのおじさんの視線に若干気圧されながら太い首を傾げるクマだ。

 すると毛むくじゃらのタヌキは渡された手鏡を元の主に返しながら、何やらどっちらけるようなことを真顔でぬかしてくれる。

「日下部、おまえのそのカッコってさ、なんかダサくない?」

「は?」


「いや、ダサいだろう! 全体的に色味が暗いし、デザインももっさりとしてどこにも愛嬌が無いっていうか、デザイナーの意図するところがさっぱりわからないもん。俺のとは雲泥の差だ。絶対売れないだろ、そんなノーコンセプトな出で立ちの芸人!」

「はい? コンセプトは関係ないんじゃないですか? デザイナーなんていないし。失礼しちゃうな、もとより鬼沢さんのと大差ないと思いますよ。これって本人の気質、ゾンビの個体差に応じて実体化するものですから、まさしく状況に応じたベストなカタチなんですよ。変ないちゃもんつけないでください。芸人だったらむしろ悪目立ちして一発屋くらいは狙えますから」

「どうかな~? とにかく俺はないと思う。ダサいもん。子供が受け付けないって、なんか気色悪いもんな! 変質者が不気味な笑みを浮かべているように見えるぞ、おまえのその服の模様? あるいは悪質なピエロ??」

「ニコちゃんマークに見えるでしょう? 心理的に相手に不信感を抱かせないためのある種の擬態みたいなものだとおれは理解してますよ。誰にでも受け入れられる完璧なデザインです。ま、ふつうの人間には見えないんですけど、このカッコ自体は……」

「は? 見えないって何が? こんなにでかくて毛むくじゃらでむさ苦しいんだから、見えないわけがないだろう?? 俺もひとのことあんまり言えないけど、おまえは100メートル先からだって丸わかりだよ。みんなこぞって逃げていくだろ」

「そんなことないです。じゃあ試してみますか、実践で? 実際に外に出てみればわかりますよ。回りの反応ってヤツが……!」

「は? このカッコで?? できるわけないだろって、おい、何する気だ? ちょっと、そのポーズって、まさかさっきの……」

 利き手を腰だめに構えて意識をそこに集中するようなそぶりをする目の前のクマに、ちょっと危機感を感じてのけ反るタヌキ。

「はい。このおれの後に付いて来てください。これから実践に入りますので。まずは外に出てからですね、ということで、んん、伸びろ、如意棒……っ!!」


「あ、え、わあっ、ちょっと待って、まさか、壁をぶち破って無理矢理この外に放り出すつもりかっ!? そんなむちゃくちゃ、わああああああああああああああああっっっ!!!?」

「いいえ、壁ではなくて、窓です! 回りにひとはいないように配慮してありますから、問題ありませんよ。そうれっ!!!」

 派手なガラスの割れる音とおじさんの悲鳴を残して、がらんとした楽屋にはそれきりに人の気配が一切しなくなった。

 ぽつんと取り残された私物のバッグがそこにはあるだけだ。

 混迷を深める二匹の魔物、ゾンビたちの消息を知る手がかりはどこにもない。この瞬間を境にひとの感覚が及ばない未知の領域へとお笑い芸人たちの命運は転じるのだった。

                次回に続く……!

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POLYDON RAIBO

OpenSeaのコレクション、「METAL POLYDONs」の中のニューウェーブ! ライボのラインナップをこちらで公開!!

イーサリアムがメインだった元祖ポリドンに対して、こちらはイーサリアムとポリゴンのNFTをバランス良く混合して展開する予定です(^^)

https://opensea.io/collection/metalpolydons

まずはすべての中核となる、線画versionのポリドン・ライボです♥

No.000 POLYDON REAL RAIBO line drawing version

No.001 POLYDON RAIBO ORIGIN RED

今回からトレーディングカードの要素を付け加えて、各ポリドンに能力値を設定してあります。
 ORIGIN RED 各種設定

体力   Life Power   15/20
魔力   Magic Power   9/20
攻撃力  Attack     15/20
防御力  Defense    10/20
素早さ  Speed      9/20
幸運   Luck      11/20
攻撃魔法 Dark Magic   8/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 85
クリティカル ヒット 1/2
特殊能力↑一回の戦闘につき、一度だけ相手の防御力を無視・無効化した大ダメージを与えることができる。

No.002 POLYDON RAIBO ORIGIN BLUE

 ORIGIN BLUE 各種設定値
体力   Life Power   10/20
魔力   Magic Power   15/20
攻撃力  Attack      11/20
防御力  Defense     8/20
素早さ  Speed      15/20
幸運   Luck       10/20
攻撃魔法 Dark Magic   11/20
回復魔法 Holy Magic    5/20
総合 85
 ダブル マジック  1/2
特殊能力↑一回の戦闘につき一度だけ、魔法攻撃を二度行える。

No.003 POLYDON RAIBO ORIGIN YELLOW

 ORIGIN YELLOW 各種設定値
体力   Life Power   15/20
魔力   Magic Power   10/20
攻撃力  Attack     12/20
防御力  Defense    15/20
素早さ  Speed      7/20
幸運   Luck      9/20
攻撃魔法 Dark Magic   5/20
回復魔法 Holy Magic   12/20
総合 85
特殊能力 パーフェクト ディフェンス   1/1
一回の戦闘につき一度だけ、相手のあらゆる攻撃を無効化できる。

No.004 POLYDON RAIBO ORIGIN GLAY

 ORIGIN GLAY 各種設定値
体力   Life Power   7/20
魔力   Magic Power  7/20
攻撃力  Attack     7/20
防御力  Defense     7/20
素早さ  Speed      7/20
幸運   Luck      7/20
攻撃魔法 Dark Magic   7/20
回復魔法 Holy Magic   7/20
総合 56

No.005 POLYDON RAIBO ORIGIN CHOCOLATE BROWN

 ORIGIN CHOCOLATE BROWN 各種設定値
※原則Giveawayによる頒布品のため、非売品の予定。

体力   Life Power   5/20
魔力   Magic Power   5/20
攻撃力  Attack     5/20
防御力  Defense     5/20
素早さ  Speed      5/20
幸運   Luck       5/20
攻撃魔法 Dark Magic   5/20
回復魔法 Holy Magic   5/20
総合 40
特殊能力 Giveaway   8/20
自分の能力値を下げる代わりに、仲間に同数の能力を振り分けることができる。

No.006 POLYDON RAIBO ORIGIN MAGENTA

 ORIGIN MAGENTA 各種設定値
体力   Life Power  12/20
魔力   Magic Power   7/20
攻撃力  Attack     12/20
防御力  Defense     9/20
素早さ  Speed      9/20
幸運   Luck       9/20
攻撃魔法 Dark Magic   6/20
回復魔法 Holy Magic   6/20
総合 70

No.007 POLYDON RAIBO ORIGIN CYAN

 ORIGIN CYAN 各種設定値
体力   Life Power   10/20
魔力   Magic Power  13/20
攻撃力  Attack      9/20
防御力  Defense     7/20
素早さ  Speed     12/20
幸運   Luck      7/20
攻撃魔法 Dark Magic    9/20
回復魔法 Holy Magic    3/20
総合 70

No.008 POLYDON RAIBO ORIGIN GREEN

 ORIGIN GREEN 各種設定値

体力   Life Power  12/20
魔力   Magic Power   12/20
攻撃力  Attack     12/20
防御力  Defense     12/20
素早さ  Speed      7/20
幸運   Luck      7/20
攻撃魔法 Dark Magic   3/20
回復魔法 Holy Magic   10/20
総合 75

No.009 POLYDON RAIBO ORIGIN PINK

 ORIGIN PINK 各種設定値
体力   Life Power   12/20
魔力   Magic Power   12/20
攻撃力  Attack      8/20
防御力  Defense     8/20
素早さ  Speed      10/20
幸運   Luck       7/20
攻撃魔法 Dark Magic    7/20
回復魔法 Holy Magic   12/20
総合 75
特殊能力 Rescue   10/20
一回の戦闘につき一度だけ、仲間が瀕死のダメージを負った時にみずからのライフ パワーを分け与えることができる。


No.010 POLYDON RAIBO ORIGIN MOSS GREEN

 MOSS GREEN 各種設定値
体力   Life Power   8/20
魔力   Magic Power   8/20
攻撃力  Attack     8/20
防御力  Defense     8/20
素早さ  Speed      8/20
幸運   Luck       8/20
攻撃魔法 Dark Magic   8/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 64

No.011 POLYDON RAIBO ORIGIN Red Eye Frog

 Red Eye Frog 各種設定値
体力   Life Power   12/20
魔力   Magic Power   8/20
攻撃力  Attack     12/20
防御力  Defense     8/20
素早さ  Speed     12/20
幸運   Luck       8/20
攻撃魔法 Dark Magic   8/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 76

No.012 POLYDON RAIBO ORIGIN Blue Eye Frog

 Blue Eye Frog 各種設定値
体力   Life Power    8/20
魔力   Magic Power   12/20
攻撃力  Attack      8/20
防御力  Defense      8/20
素早さ  Speed      12/20
幸運   Luck        8/20
攻撃魔法 Dark Magic   12/20
回復魔法 Holy Magic    8/20
総合 76

No.013 POLYDON RAIBO ORIGIN ORANGE

 ORIGIN ORANGE 各種設定値
体力   Life Power   12/20
魔力   Magic Power   8/20
攻撃力  Attack     12/20
防御力  Defense     8/20
素早さ  Speed     12/20
幸運   Luck       8/20
攻撃魔法 Dark Magic   8/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 76

No.014 POLYDON RAIBO ORIGIN PURPLE

 ORIGIN PURPLE 各種設定値
オリジン パープル No.014
体力   Life Power   8/20
魔力   Magic Power   12/20
攻撃力  Attack     8/20
防御力  Defense     8/20
素早さ  Speed     12/20
幸運   Luck       8/20
攻撃魔法 Dark Magic   12/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 76

No.015 POLYDON RAIBO METALLIC RED

 METALLIC RED 各種設定値
体力   Life Power   18/20
魔力   Magic Power   12/20
攻撃力  Attack     18/20
防御力  Defense     13/20
素早さ  Speed     12/20
幸運   Luck       14/20
攻撃魔法 Dark Magic   11/20
回復魔法 Holy Magic   11/20
総合 109
特殊能力 カウンター ストライク
 相手からの直接攻撃に対して同じだけのダメージを与えることができる。魔法によるダメージは半分に減殺できる。
ストライク バースト
 一度の戦闘につき一度だけ、場にいるすべての敵に対しての直接攻撃が可能。

Extra Color version POLYDON SSS01 RAIBO -ORIGIN EARTH-

 -ORIGIN EARTH- 各種設定値
体力   Life Power   15/20
魔力   Magic Power   10/20
攻撃力  Attack      15/20
防御力  Defense      10/20
素早さ  Speed     10/20
幸運   Luck       20/20
攻撃魔法 Dark Magic   10/20
回復魔法 Holy Magic   10/20
総合 100
特殊能力 Call&Response  1/1
場にいない仲間のポリドンを一体だけ呼び出すことができる。呼び出されたポリドンは特殊能力を使うかLPがゼロになったら場から退散。

Extra Color version POLYDON SSS02 RAIBO -ORIGIN MOON-

-ORIGIN MOON-
体力   Life Power   10/20
魔力   Magic Power   15/20
攻撃力  Attack      5/20
防御力  Defense      10/20
素早さ  Speed     15/20
幸運   Luck     15/20
攻撃魔法 Dark Magic   15/20
回復魔法 Holy Magic   15/20
総合 100
特殊能力 Call&Response  1/1
場にいない仲間のポリドンを一体だけ呼び出すことができる。呼び出されたポリドンは特殊能力を使うかLPがゼロになったら退散。

No.016 POLYDON RAIBO METALLIC GLAY

オリジン メタリック グレー016
体力   Life Power   8/20
魔力   Magic Power   8/20
攻撃力  Attack     8/20
防御力  Defense     8/20
素早さ  Speed      8/20
幸運   Luck      8/20
攻撃魔法 Dark Magic   8/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 64
特殊能力、Divide Myself  1/2
能力値をそのままで二体に分身することができる

No.017 POLYDON RAIBO ORIGIN ALBINO

オリジン アルビノ No.017
体力   Life Power   15/20
魔力   Magic Power   152/20
攻撃力  Attack     12/20
防御力  Defense     12/20
素早さ  Speed     12/20
幸運   Luck       10/20
攻撃魔法 Dark Magic   10/20
回復魔法 Holy Magic   20/20
総合 106

No.018 POLYDON RAIBO ORIGIN BLACK

オリジン ブラック No.018
体力   Life Power   15/20
魔力   Magic Power   15/20
攻撃力  Attack     12/20
防御力  Defense     12/20
素早さ  Speed     12/20
幸運   Luck       10/20
攻撃魔法 Dark Magic   20/20
回復魔法 Holy Magic   10/20
総合 106

No.019 POLYDON RAIBO ORIGIN SILKYPINK-RED

オリジン シルキーピンクレッド No.019
体力   Life Power   10/20
魔力   Magic Power   10/20
攻撃力  Attack     15/20
防御力  Defense     10/20
素早さ  Speed     15/20
幸運   Luck       10/20
攻撃魔法 Dark Magic   8/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 86

Extra Color version POLYDON SSS03 RAIBO -ORIGIN SUN-

オリジン サン SSS03
体力   Life Power   15/20
魔力   Magic Power   15/20
攻撃力  Attack      15/20
防御力  Defense      15/20
素早さ  Speed      15/20
幸運   Luck       15/20
攻撃魔法 Dark Magic   15/20
回復魔法 Holy Magic   15/20
総合 120
特殊能力 Allrange Burst 1/1
場にいる敵すべてにスピードを無視した先制攻撃が可能。

No.020 POLYDON RAIBO ORIGIN SKY-PINK

オリジン スカイピンク No.020
体力   Life Power   10/20
魔力   Magic Power   9/20
攻撃力  Attack     10/20
防御力  Defense     9/20
素早さ  Speed     10/20
幸運   Luck       9/20
攻撃魔法 Dark Magic   9/20
回復魔法 Holy Magic   9/20
総合 75

No.021 POLYDON RAIBO ORIGIN BROWN

オリジン ブラウン No.021
体力   Life Power   10/20
魔力   Magic Power   8/20
攻撃力  Attack     10/20
防御力  Defense     8/20
素早さ  Speed     8/20
幸運   Luck       8/20
攻撃魔法 Dark Magic   8/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 68

No.022 POLYDON RAIBO METALLIC BLUE

メタリック ブルー No.022
体力   Life Power   18/20
魔力   Magic Power   18/20
攻撃力  Attack     13/20
防御力  Defense    13/20
素早さ  Speed      15/20
幸運   Luck      10/20
攻撃魔法 Dark Magic   15/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 110
特殊能力 カウンター Magic   3/3
一回の戦闘につき三回まで、魔法による攻撃を無効化、ないし魔法でカウンターができる。
Burstマジック
一度の戦闘につき二回まで、すべての敵に対して魔法攻撃の範囲を拡大、ないし倍加できる。

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「METAL POLYDONs」/「メタル ポリドンズ」

OpenSeaの新しいコレクション、ちびっ子ドラゴン・キャラのポリドン/POLYDONのリリース情報をまとめて公開(^o^)

※もとはHEXAマーケットで開発していたキャラクターをマイナーチェンジ、より豪華なバージョンで展開してまいります!
 カラーリングコーディネートも募集中なので、遠慮なくTwitterにコメントください。あ、フォロワーさん優先です♡

HEXA版、オリジナル・ポリドン

https://nft.hexanft.com/users/Fpd2uwXfxfPQGy
 HEXAマーケットは日本円で売り買いができるNFTマーケットであり、Polygonマティックが主なNFTartです。
 OpenSea版の新型ポリドンは、主にイーサリアムNFTとなります♡ ぶっちゃけどっちがいいんですかね(^o^)

 以下、OpenSea版のポリドンの公開情報となります。

OpenSea Correction
  ”METAL POLYDONs”

https://opensea.io/collection/metalpolydons

No.000 “POLYDON ORIGIN” lined rawing edition

 一番はじめ、下絵のキャラクターデザインの線画版NFTです。
作者個人としてはこれが一番重要なコアのデザインとなりますので、ちょっとお高めに値段設定をしています。たぶん売れないでしょうね(^^;) 0.1ETHでリスト!

No.001 “POLYDON ORIGIN RED”

 線画に単純なべた塗り、さらに陰影を付け加えました!
 わかりやすいキャラクターデザインのノーマルタイプ・レッドくんです♡ それなりのお勤め価格? 0,01ETHでリスト!

No.002 “POLYDON METALLIC RED”

 線画に陰影処理を施した001の画像に、さらにハイライトのキラキラ効果を加えたメタリック・バージョンです(^o^)
 オリジンとメタリック、どっちがお好みですかね?
 ちょっとだけ001よりお高くして、0,011ETHでリスト!

No.003 “POLYDON ORIGIN BLUE”

 まずは赤、青、黄の信号カラーで展開すべくしたポリドンシリーズの青のバージョンです(^o^) 色を変えるとやっぱり雰囲気もかわりますね! お勤め価格の0.01ETHでリスト!

No.004 “POLYDON METALLIC BLUE”

 ウィンタースポーツが大得意! 青いポリドンのぴっかぴかメタル属性ポリドン、メタリック ブルーです♡
 オリジン ブルーと同じ、0.01ETHでリスト!競争です(^^)

No.005 “POLYDON ORIGIN YELLOW”

 大食漢で健康体力自慢のイエローくんです♡
 前述の赤と青とそろったらまさしく信号トリオの結成!
 とりあえずのアベレージ、0,01ETHの価格帯でリスト!

No.006 “POLYDON METALLIC YELLOW”

 永遠のデブキャラ? イエローくんのピッカピカバージョン!
 さながらゴールドかと見まがうキラキラ加減ですけど、並べて見てしまうと…(^^;) ガンバ♡ 0.011ETHでリスト!

番外編♥ Extra Color version

  01 ―POLYDON EARTH― 

   02 ―POLYDON MOON―

No.007 “POLYDON ORIGIN GREEN”

 自然と屋外活動が大好きなグリーンが登場! お花見のお供にぴったり♡ 0.011ETHでリスト!

No.008 “POLYDON METALLIC GREEN”

Coming soon!

 POLYDON GREEN ??

POLYDON ORANGE??

 POLYDON BLACK ??

 

記事は随時に更新されます(^o^)

カテゴリー
DigitalIllustration NFTart NFTartist OpenSeaartist Uncle Bear Tom キャラクターデザイン

OpenSeaNFT/UncleBearCorrection!

OpenSeaで公開しているコレクションの内、一押しのアンクルベアシリーズの売り出しを敢行!爆安でやってます!!

https://opensea.io/collection/unclebeartom
↑コレクションのURLです。画像にもリンクあり(^^)

 ETHで0.001っていうのは、およそで3$前後、日本円で300¥前後なんですかね?
 他にもありますがまた新しい仲間や別ポーズやシチュエーションを加える予定です。めでたく売れたらまた別のパターンを加えてもいいんですかね(^^)
 ちなみにカラー版よりも元となる線画のほうが高かったりするんですが、これは個人的なこだわりみたいなものがあるからで。

カラー版もリリースする予定です(^o^)