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DigitalIllustration SF小説 ガンダム コント ワードプレス 俺の推し! 機動戦士ガンダム

俺の推し!②

機動戦士ガンダム・二次創作ドレンが主役だ!!

二次創作サイトのハーメルンでも公開中! アンケートでお話の方向性を募集してます! 感想も募集中!!応援してね♡ https://syosetu.org/novel/381100

   ↓第一話からはこちら↓

 ↓オリジナルのノベルもやってるよ☆↓

宇宙(そら)のフロントライン リック・ドムの黒い三連星 ①

 黒い三連星のドムのヘッドのイメージ…
 なんかドムより可変MSのアッシマーっぽい?描き方??
 ちなみに後ろにも目、サブのカメラがありますw
黒い三連星のドム
一番機(ガイア機) ノーマルポジション
二番機(マッシュ) 索敵能力強化、射撃性能強化型
三番機(オルテガ) 近接戦闘・格闘特化型?

Scene2

 PartB


 四方八方、見渡す限りが宇宙ゴミだらけの暗礁宙域は、もうじき終わりを迎えつつあるようだった。

 あえて敵艦のレーダーによる補足を避けるために難しいコース取りを選んだのだが、迫り来る大小無数の残骸デブリもこれをものともせず。まっすぐの道のりをひたすらに突き進む、リック・ドム部隊だ。

 隊の頭を張る一番機の隊長、ガイアは、ここまでワンミスもなしに部隊を先導してのけたことに内心でにんまりとほくそ笑む。
 それだから背後の僚機たちへと意気揚々と通信を開いた。
 隠密機動でもここまで近づけば、敵方のレーダーに捕捉もされるだろう。視界の悪いこのゴミの海を抜けたらすぐさまドンパチなのだからもう遠慮することはないと、あえてでかいボリュームでがなってやる。

「ようし、もうじき始まるな? コクピット内の空気がヒリついてやがる……! だったら野郎ども、用意はいいか? デブリを抜けたら一気にしかけるぞ!!」

 景気良く号令を発する隊長に、僚機の部下たちからもおなじく威勢の良い返事が返ってくる。
 二番機のマッシュ中尉から了解とともに補足がなされた。

「了解! こっちのレーダーでもきっちりと三つ、反応を抑えているぜ? おそらくは話しの通りの駆逐艦、みんなおなじみのサラミス級ってところか!」
 
 元は同じタイプのMS(ドム)でも、索敵能力がより強化された機体を操る都合、隊長のガイア機よりも状況の解析はお手の物だ。
 MS部隊を最低でも一個小隊は擁しているだろう駆逐艦が三隻というのはちょっと骨なのだが、いくつもの死線をくぐり抜けてきたベテランパイロットたちは少しも臆したところがない。

 部隊の最後尾でしんがりを勤めるオルテガ機からもバカに明るい男のだみ声が入ってきた。

「あっは、それじゃガイアの兄い! ひとりあたま一隻でいいんだよなあ? 軽い軽い!! がっはっは!」

 頼もしい兄弟たちの返答に口元またにんまりとほくそ笑みながら、正面のメインモニターの先にあるだろう敵影をにらみつけ、その場においてのひらめきを口にする隊長さんだ。

 はじめにサラミス級が3とは聞かされていたが、状況としてこれをまんま鵜呑みにしているわけではなかった。

「おい野郎ども良く聞け、対空砲火がやかましい駆逐艦が三つも固まってられたら少々厄介だが、実際はそんなことはねえとこの俺は踏んでいるぜ? おそらくは2で、残りのはせいぜいちゃちな補給艦ぐらいなもんだろう。場合によっては護衛艦が1で、残りのふたつが補給艦とかもあるかもな!!」

「ああ、なるほど、確かにヤツらも補給はしないわけにいかないからな? 最寄りのコロニーから都合良く物資の援助、最悪強奪がかなうとも限らない。艦自体は地球から上がって来たのか?」

「どうでもいいことだろう。スクラップにしちまうことには変わるまいだ。もとよりアースノイドに遠慮はいらねえ……!」

 百戦錬磨のMSパイロットとしての経験と勘も踏まえての憶測に、なるほどと納得顔の二番機だ。加えて背後のしんがりからまた明るいだみ声が返ってくる。

「がっはは、いいや、補給艦が2なんてことあるのかな、ガイ兄? そんなもん支援物資たんまり抱え込んでちゃ、ただのどんガメの足手まといでしかありゃしないぜぇ??」

 それじゃ楽勝過ぎる!とことさら馬鹿笑いする巨漢の弟分に、長兄のガイアはニヤリとしながら意味深に返してやった。

「どっちも補給物資ばかりとは限らないだろう? ああ、ひょっとしたらMS(モビルスーツ)ってこともあるかもしれないぜ? 新型のよ?? ふふん、2ならそのラインがより濃厚だ……!」

 冗談交じりに口にしたセリフに、回線の向こうでは驚いた感じの静寂があるが、真ん中の機体の次男坊こと自称・隻眼のクールガイ、マッシュがしれっと口を挟む。

「おっと! 悪いな隊長、水を差すようでなんだが、それぞれの反応からすると、戦艦が2で補給艦が1だ! 熱反応が高いのが真ん中とこの右、左のはのっぺりしたブルー一色だ。やけにでかいな? まあ、それだけ物資が満載ってことか!」

「いいなあ! どうせならまとめて横取りしちまおうか? おれ達だけでこっそりと、げひっ!」

 口からよだれでも垂らしてそうな欲望まみれの物言いに、だがあんまり気乗りしない風な隊長はあっさりと受け流す。

「やめとけ。取りに戻るのが面倒だ! 補給艦はほっといて、問題は護衛のサラミスだ。当然MS隊が張り付いてるはずなんだが、まだ出てこないのか? もたもたしてたらブリッジにこのバズをドン!ではいさよならだぞ? 連邦め、よっぽどシロートの寄せ集めなのか、ふん、このドムがなめられたもんだな!!」

 互いの物理的心理的障害となる暗礁宙域を抜けたら一直線に視界が開ける。もうじき二番機ほどにレーダーの範囲が広くない通常仕様の自機でも相手を捕捉できるくらいになるだろう。
 ならば敵陣営にも動きがあって当然なのに首を傾げるガイアの耳元で、この背後に付けるマッシュがすこしいぶかしげに応じてくれた。

「ああ、そっちの反応は皆無だな? 戦艦の観測能力からしたら確かにおかしいっちゃあおかしいが、いいや、奴さんにオレ達がうまく近づきすぎてるのかもしれないぜ? まあいずれ蜂の巣をつついたみたいな大騒ぎになるんだろうがっ……ん、いや、待てよ? コイツはっ!!」

「ん、どうした? マッシュ?? ん、なっ……ぬあ!?」

 直後、それまでの静寂を突き破り、突如として激しく鳴り響く大小無数の警告音!

 反射的に見たモニターの中、この中央でかすかな光が明滅して、やがてはげしい光の洪水が目の前を満たした……!!

 まだ暗礁宙域を抜けきっていないのにも関わらず、いきなりの先制攻撃に目を見開くガイアだ。駆逐艦の攻撃レンジにはまだおよばない目測だったのだが、ビーム砲の一斉射が見舞われたのにこれを理解するよりも先に身体が反応していた。
 敵の射線上と己の間に障害のデブリを挟む回避機動を取るが、すぐさま背中のバーニア最大噴射で現空域を離脱!

 強力なビームの一撃は宇宙ゴミなどものともせずにこの射線上のものを蒸発させていた。ドムの装甲でも直撃は危うい。

「くっ、駆逐艦のビームじゃねえだろうがっ、この威力は!!」

 これまでの算段が多いに狂ったことが予期されたが、おなじく大きく回避機動を取ってフォーメーションを崩す二番機からの入電で嫌な予感が確定となる。 

「チッ……こいつはっ、巡洋艦だ! マゼラン級!! やばいぞすっかり射程に入っちまってるっ、護衛のサラミス(駆逐艦)は前進、MS部隊はこっちに張り付いてやがるな!!」

「ええいっ、話がまるで違うじゃねえか!! 補給艦の護衛に巡洋艦なんざ聞いたことがねえっ、何を積んでやがる? ……いいや、野郎ども、立て直しだ!! デブリを盾にしながら巡洋艦の攻撃を回避、近づいてくるMSと駆逐艦は各個に撃破だ!! まずは丸裸にしてから残った巡洋艦を蜂の巣にしてやるぜっ!! 補給艦なんざどうでもいいっ、それよりもっ!!」

 怒りにまかせた怒鳴り声を発して、目の前のサブディスプレに向けて渾身の中指を立てる隊長、ガイアだった。

「このくされあほんだらぁっ!! どう始末を付けてくれやがる? このオレ様のおろしたてのMSに傷なんざつこうものなら、その寝ぼけたツラ思い切りどつき倒してやるからな!! 覚悟しろっ!」

 モニターの向こうで思わずのけぞる肥満したおやじに啖呵を切ってにらみつけてくれる。あわてふためく相手はあわあわと何事か言ってくるが、あいにくノイズ混じりでよく聞こえなかった。

「この埋め合わせはきっちりとやってらもうぞ! マッシュ、オルテガ! フォーメーションは一時解除だっ、あの駆逐艦が不用意に間を詰めてきたら一気に畳みがける!! タイミングとちるなよ? MS相手でも暗礁の中ならこっちの地の利がでかいから、無理せず落ち着いてやれ! モグラ叩きだ!!」

「了解!!」

 気づけばドタバタの内に戦いの幕が切って落とされた。
 素人目には多勢に無勢の戦いだが、歴戦の猛者たちは怯むことなく敢然とこれに立ち向かう。
 緊迫した空気の中、離れた場所から通信してくる戦闘補助要員のおじさんの声がむなしく響いた。

『おい、どうした! 何があったんだ? だから状況を説明してくれよっ、おいって!!』

「うるさい黙ってろ! 誰のせいなんだよっ? このケツデカ!!」

 忌々しいことこちらの射程外からの連続のビーム砲撃を回避しつつ、迫り来る敵駆逐艦とのドッグファイト!! おまけにMSとの命がけの追いかけっこだ。果たしてどちらが鬼なのやら?

 何にせよ罰ゲームもはなはだしい。

 モニターの中で見知ったおやじが動転してるのが見ていて楽しいあたり、まだまだ余裕があると我ながら口元のあたりにんまりとするガイアだった。無駄玉は撃たない主義だが、あえて駆逐艦めがけてMSの利き手に持たせた大口径のバズーカをうならせてやる。あいにくとハズレだったが、そのせいでそこにへばりついていた子分どもをまんまと引きはがせたようだった。

 わらわらと浮き出たMSらしき影が方々に散っていく……!

 その内のひとつがたちまち赤いバッテンマークが点ってディスプレイから消失する……!! 部下のおそらくはマッシュが自前のバズーカで手堅く仕留めたのだと察するガイアだ。MSの索敵能力が高いぶん、射撃性能もその腕もピカイチの狙撃手であった。

「はあん、あちらさんも火の車みたいだな? 今の丸っこいの、ありゃMSじゃねえだろう? くく、追いかけっこにもならねえかもしれねえな! 野郎ども、駆逐艦は引き受けてやるからまずはおまえらで雑魚を仕留めろ!!」

 予備弾倉には手を付けないと決めていざ敵の駆逐艦に狙いを定めてバーニアをふかす隊長機だ。まずは直線軌道で浅めのヒットアンドアウェイ! いっそのこと全体に揺さぶりをかけてやる腹づもりで轟然と迫る。

『だからぁ、何がどうしたって、言うんだよぉおおお!?』

 耳の奥にこだまするおやじの遠吠えには食い気味にがなる。

「いっぺん死ね!!!」

 何故かこの時、勝利を確信していたガイアであった。

Scene3

 PartA

 暗礁宙域を抜けた先はもはや敵陣で、敵は大型の巡洋艦に護衛の駆逐艦、それにおまけで補給艦らしきがくっついていた。

 非力な駆逐艦の寄せ集めというはじめの予想を大きく覆すものだが、そもそもでこの最初の予測がどこらへんから来たのかも怪しい今現在だ。これにより初手だけややしくじりはしたものの、無難に不利な戦況を挽回していく隊長機のガイア以下、黒い三連星のリック・ドム部隊であった。

 巡洋艦を背後に控えて単艦で突撃してきた駆逐艦のサラミスはいわゆる陽動部隊の囮とでも言ったところか?
 だがそんなものお茶の子さいさいで右へ左へと軽々と翻弄する隊長機のリック・ドムだ。
 機銃やビームによる対空砲火の弾幕をいともたやすく突破して敵艦のブリッジへと肉薄する!
 ほぼ同時、MSの右肩に担いだバズーカの照準を艦橋に合わせかけたところで激しい警告のブザーがヘルメットをつんざく。
 舌打ちして回避機動に転じていた。

「チッ、狙ってやがったのか? こすいマネをしやがる!」

 重力のない宇宙空間では上も下もないものだが、機体の機動力をいかんなく発揮して縦横無尽に飛び回るガイア機だ。
 後方でいやらしいビーム砲撃をかましてくる巡洋艦との間に駆逐艦を挟んでいるのがみそだった。相打ちを避ける都合、思ったようには砲火を集中させずにビームの弾幕をいなしている。
 さっきのはこちらがブリッジにアタックをかけるのを見越した上での待ち伏せ、狙い撃ちだったのだろうと合点。

 するとこの状況を今は暗礁宙域の向こう側でのんきに見ているだろう艦長代理の副官には、胸の内を図星で言い当てられてまた舌打ちした。


『おい、完全に狙われているんじゃないのか? そもそも連邦の戦艦は艦橋が複数あるんだから、ブリッジ潰しは必ずしも有効打とは言えないだろう。若干のあいだ機能を麻痺させるくらいで? だったらいっそのこと……!』

「チッ、メインのエンジン潰しちまったほうが早いってか? さっすが、シロートさまは考えることが単純明快でいらっしゃる。いいや、エンジン潰すのなら不意打ちでかつ安全な距離を取ってからだ! 至近じゃ即座に爆発炎上する艦の爆風と破片にこっちまで巻き込まれて誘爆するのが見え見えだからな? そこいらのMSやファイターと違ってただ墜とせばいいってものじゃないんだよ、図体でかい戦艦ってのは!」

『ほおぉ! ……そうなのでありますか、少佐?』

 ちょっと怯んだ顔でおまけ背後の艦隊長どのにお伺いを立てるのには、呆れてまたこの中指立ててしまうガイアだ。

「バーカ、そんなのは時と場合とそいつの考え方によりけりだ、絶対なんてねえ!」

 内心でぺろりと舌を出しながら周囲のディスプレイを見渡して今現在の状況を冷静に把握する。
 正面下側のサブディスプレイで目を白黒させているおやじと無意識に視線が合うが、そのせいかまたもやあわ食ったさまで画面の中の代理艦長、副官のドレンが声を荒げる。

『おい、少佐が首を傾げているぞ? いい加減なヤツめ! まあいい、とにかくそちらの状況、巡洋艦が1に駆逐艦、サラミスがおなじく1なんだな? あとは補給艦? 了解した! 援軍は今から送って間に合いそうか?』

 相手からしたらおおまじめでも、こちらからしたらよっぽどにとぼけた言いように再三で舌打ち返す隊長どのだ。

「けっ、今さら何を言ってやがる? とろいザクであの暗礁宙域を突破してこられるとでも?? もとより状況見て言えよ。これがそんなピンチに見えるってのか、てめえの節穴じゃあ???」

『み、ミスったのはそちらがうかつだったのもあるだろうが? 俺だけの責任じゃないはずだ!! ここから挽回する!!』

「ぬかしやがれ! てめえにゃはなから期待なんざしてねえよ」

 あっさりと言い捨てて相手の言い分はすっかり無視する。
 言い合いしててもらちがあかないし、優先すべきは他にいくらでもあった。現時点での戦況は、こちらが押せ押せで断然有利だ。結局MSどころか中途半端なボール型の改修型突撃砲台が五機だけで、マッシュとオルテガの両機によってあっさりと撃破。

 残すは目の前の駆逐艦だけ。

 これをきれいに片してから大ボスの巡洋艦なのだが、何かまだ忘れているのではないかと首を傾げたところで背後のマッシュ機から通信が入った。

「隊長! 奥の巡洋艦、まるで動かねえと思ったらどうやら陽動だったみたいだぞ? あいつ自体がこっちの気を引くための!」

「どういうことだ??」

 怪訝に聞き返すに、マッシュではなくサブモニターのおやじが声高に返してくれる。

『おや、補給艦はどこに行った? いたはずだよな!? まさか仲間の護衛を置いてさっさとそれだけ戦線を離脱したのか!!』

 モニターで確認したら、そこに確かに大きな巡洋艦の隣で地味に映ってたはずのそれらしき艦影がすっかり消え失せている。
 はじめ目を疑うガイアだ。

「なんだあ? 自衛もろくにできやしない補給艦だけでおめおめと逃げ出すなんざ、おいおい、積み荷はそんなに大事なものなのかよ?? 何を乗っけてやがる!? どうする?」

 思わずサブモニターの見知ったおやじに聞いてしまうに、小さな画面の中でしばしだけ逡巡したかのベテラン士官である。
 すぐにまじめな顔つきして返してくれた。

『無視していい! 今はそれどころじゃないだろう? 二手に分かれて追撃したところで燃料が保つまいだ。無駄な危険は犯さないに限る! おまえらが還って来れなければ意味がないんだ』

 その発言から優先順位が明らかに自分たちであることに自尊心が良い感じにくすぐられて自然と声のトーンが落ちるガイアだ。

「……ふうん、なら後で文句言うなよ? ま、このオレも言うほどにゃ興味はない。新型のMSって可能性、ゼロじゃないんだがよ?」

『そいつの中身が何であれ、連邦の木馬への到達自体は阻止したのだから目的は達成している。そこから転進して先行している敵艦に追いつくのは、今さらどのコース取りをしても不可能だろう? ならその新型は、どうぞよそでお披露目してもらおう!』

「あいよ。おかげでどこぞの誰かが結構な貧乏くじを引くことになるかもしれねえが、そんなのはそいつらの運だよな? オレたちが知ったこっちゃねえや……じゃ、オレは目の前のサラミスに専念させてもらうってことで!」

 大きな戦艦の残骸に一時だけ身を潜ませていたいかつい機体を素早く各部のバーニア噴かせて冷たい虚空に踊り出る。
 直後、駆逐艦の真上から攻めるかたちで、このメインブリッジを根元まで損壊させてやるべくバズーカ構えて急降下した。
 上も下もないのだが感覚的にはそういう感じになる。

 正面や側面から攻めるよりも真上は艦砲の守りが薄く、まばらな弾幕をすり抜けてあっさりとこの上面の屋根近くに降り立つドムである。それきり眉ひとつ動かさずに凄腕のMSパイロットはバズーカの引き金を引き絞るが、その半ばで不意に耳朶を打つ仲間の声に動揺が走る。舌打ちしてそこから機体を緊急離脱させていたのは死線を幾度もくぐり抜けてきた戦士の勘と反射神経だ。

「やばいぞっ、隊長! 回避だっ!! その駆逐艦ごとっ……!!」

「なっ、なんだとっ!!?」

「あっ、兄いぃっ!!」

 二番機から制止がかかる寸前、目の端でまばゆい光の閃光が幾筋も走るのは認めていた。てっきりじぶんめがけて放たれたビーム砲撃かと思ったが、それが思いも寄らぬところに集中してたちまち爆発炎上するのを両目をひんむいて凝視してしまう隊長だ。
 およそ言葉が出てこない。

「さ、サラミスを……!?」

 目の前で艦橋から胴体から激しく誘爆しながらすべてが炎に包まれ轟沈する敵艦。これにその場の全員が凍り付く。
 ヘルメットの中であわ食ったおやじの声が場違いに響いた。

『なんだっ、今のは、巡洋艦からのビーム砲? 同士討ちしたのか?? まさか、敵味方もろともに誘爆させて撃破しようってのか!?』

 それきり声が途絶えるのに、ゆっくり息を吐き出して応じるガイアだ。

「見ての通りだ……! ふざけやがって、ああ、だがおかげでちょっとだけ興味が出てきちまったな? そうとも、あの逃がしちまった船の中身ってヤツによ??」

 今となってはもはや手遅れなのだが、戦域からまんまと離脱していった敵の補給船の消えた行方を見つめてしまう。
 だが息つく間もなくさらなる状況の変化が警告音とともに巻き起こる。本番はこれからだった。

 二番機のマッシュが再度緊迫したセリフを発する。

「ガイア、MSが来るぞ! 反応三つ、ヤツら温存してやがったのか? しかも、待てよ……?」

「ああ、こっちでも感知してるぜ。おそらくはジムってヤツか? 今頃出してくるってあたり、さっきのサラミスはほんとに捨て駒だったんだな? 笑わせやがるぜ、万が一のチャンスを捨ててるあたり? ちゃちな雑魚の一個小隊ごときで、どうしてこのオレたち黒い三連星に抗えるって言うんだか……!」

「兄いの言う通りだぜ! でも兄い、のろっちいジムにしては、ちょっと早いみたいだぜ、この機動値演算からするには?」

『油断するなよ?』

「誰に言ってやがる? おい、マッシュ……!」

 顔つきむすりとして険しい隊長は戦況解析を随時にこなす二番機に目を向ける。すぐさま的確な返事が返ってきて納得しながら、今度は画面下のくたびれた二重あごに向けて聞いた。

「ああ、ジムには違わないが、こいつはこれまでのデータにない改良型だな! きっちりモニターしないと後々厄介なヤツだ」

「めんどくせえな? 他のヤツらにやらせろよ、じゃあどうする、ケツデカ、じゃなくて、ドレンの副官どの?」

『好きにしろよ? そちらの判断に任せる。なんだって現場優先だ! もちろん勝てるんだろ?』

「当たり前だろう? ちょっと機体をいじくったくらいのマイナーチェンジ機が、このオレ達専用にバージョンアップしたカスタム機にかなうはずがない。黙って見ていろ。それじゃあ野郎ども、今から最後の仕上げにかかるぞ!!」

「了解!!」

 大きな獲物を狩るべくした、三匹のどう猛なる番犬が暗い宇宙(そら)を縦横無尽にひた走る。

 小隊単独での敵戦艦二隻撃沈、MS多数撃破!
 
 黒い三連星の異名に花を添える暗礁宙域突貫の電撃作戦だ。
 期せずして連邦軍の逆襲計画のひとつを阻んだこともあり、以降、これが長きにわたり連邦軍の心胆寒からしめる伝説のひとつとなる……!


 Part B

 本来は地上侵攻作戦が主たる目的で開発された機体のドムを、宇宙戦仕様に発展改良させたものがリック・ドムである。

 そしてそれをさらに大規模改修いっそのこと魔改造して機体各部の姿勢制御系バーニアや推力エンジンを極端に増設、かつ出力を大幅に上げた超高速高機動型のカスタムモデルが黒い三連星のガイアたちの専用機となる。

  通称、三つ星・エディションと呼ばれる、ごく限られたエース級向けのハイスペックモデル・シリーズだ。

 メインのエンジン出力や各部バーニアの配置数が上がれば上がるほど機体制御やパイロットに掛かる負荷が激しく困難なものになるのだが、乗り手の要求するままに人間の限界一杯まで機能を詰め込んだ機体は、もはや通常機よりも一回りも大型で異様に肥大化した見てくれとなっていた。

 そしてそのためか以後、彼等と同じ機体を使用したパイロットはおよそ皆無であったというほどに――。

 およそ常人では扱いがたい強化型MSを乗りこなすガイアにとり、連邦の量産型MS・ジムは可もなく不可もないまるで面白味のない凡庸な機体となる。ただし今回のものは宇宙戦特化型の改良機であるらしく、これまでの動きののたくらしたザクに毛が生えた程度のそれよりかは、ずっと機敏に稼働しているようだ。

 記憶にある通常仕様機と比べればだいぶ身体つきがゴツゴツとしたバーニアましましの高機動型は、自軍の新型と比較してもそれなりの評価ができた。バカみたいな加速と減速を繰り返してはそのクセ糸の切れた操り人形みたいな不自然な挙動が、ちょっと薄気味悪いなと見やりながらに小さく舌打ちが出る。

「……っ、ずいぶんとイカれた運動性能してやがるな? オレの09も大概だが、あいつらのもあれでわけがわからない機動力を無駄なくらいに発揮してるぞ? ちょっと狂気じみてるだろ、宇宙でダンスを踊ってるわけでもあるまいに全部のバーニアをフルで噴かしてやがる! およそMS運用のセオリー無視だ。パイロットは正気を保っているのかね? 自殺行為だろ!!」


 バズーカの狙いを付けるのがほとほと困難な乱雑不規則な機動に、接近戦を仕掛けると一定の距離を保ってこれを全力で回避。
 まさしく追いかけっこ状態だが、あちらからはこれと仕掛けてくるようなそぶりがなかった。
 ひたすら謎のにらみ合いだ。
 これまでのMS戦では経験がないイレギュラーな相手機の挙動と無機質な反応に、ついにはこれとまともに付き合うべきか迷いが出る隊長か。
 どうしたものかと考えあぐねるのに、よそから何の気もなしにしたようなおじさんがしれっと応じてくれる。
 対岸の火事さながらで、これまた思いも寄らないすっとぼけた返事にムッと眉をひそめるガイアだった。

『なあ、ならいっそ無人機だったりするんじゃないのか? 案外と? 敵艦から遠隔操作されるなり、コンピュータ制御で相手機を牽制するような挙動を機械的にするだけだとか! 事実、あちらからはいっかなに攻撃らしい攻撃をしてこないじゃないか?』

「はあっ? 何をバカな……! 何の意味があるんだ??」

 不審げに迷惑顔して聞き返すに、小型の画面の中の副官、ドレンは神妙な顔つきとなって返す。

『わからん! だが少し引っかかることがある。残る巡洋艦のやけに散漫な砲撃といい、新型と言っていいのかわからんそのジムの不可解な行動といい……!』

 ちょっと思案顔で一度は言いよどむ中年太りの士官は、やがてまっすぐな瞳で戦場のパイロットたちへと語りかける。

『だったら、三人とも聞いてくれ! これはあくまで推測だが、この俺が思うに……』

 戦闘はしばしの膠着状態に陥った。

 まるで攻め気のない消極的な敵MS部隊に、今となってはこれと戦う意義すら見いだしにくい敵巡洋艦と……!
 いっそのこと撤退命令を下してもいいくらいに思えるドレンだが、さすがにそれは百戦錬磨の猛者達が許すまいと言葉を呑む。

 暗礁宙域のこちら側、ムサイ級のブリッジで憮然と考え込む副官どのだ。特設の戦況解析ブースで各種ディスプレイに映されたリアルタイムの現況を見ながらひたすら思案に暮れる。
 すぐ隣で船の舵を取る青年の下士官が恐縮しながら伺ってくるのに冴えない表情で答える。


「あの、どうしましたか、中尉どの……?」

「いや、やっぱりつじつまが合わないと思ってな? おそらくは大尉たちがうまくやってくれるはずだが、俺たちは俺たちで飛んだ貧乏くじを引いちまったのかもしれない。はじめのサラミスのあたりで引っかかりはしたんだが……!」

 浮かないさまの口ぶりに、きょとんとした操舵士の内心の困惑ぶりを汲んでわかりやすく説明してやる上官だ。

「まず今ガイアたちが対しているMSはどれも無人機に違いがない。つかず離れずでへばりついてばかりで、三機ともがきっちり同じ挙動をしているんだからな? 有人ならそんな無意味なことにはならないさ。あと人が乗っていると仮定したら、ありえない加速機動と回避能力だ。人間なら対Gスーツが保たないだろう。黒い三連星が攻めあぐねるなんてあたりが特に!」

「は、はあっ……あ!」

 興味津々で上官の話を聞きながら、舵を取る手をそこそこにちょっと身を乗り出してディスプレイをのぞき見る若者だ。
 それで偶然に自軍のMSパイロットどのと目が合ってしまったらしく慌ててこの頭を引っ込めた。
 いかにも若いそぶりに苦笑いでもおおらかにドレンは応じる。モニターの中の不機嫌ヅラには目でまあまあと制しながら。

「そもそものところで言ってしまえば、はじめの駆逐艦もおそらくはただの無人艦だな! おまけでくっついていたボール型の戦闘艇もこれまた同じで。いくら何でもはばかられるだろう、乗員何百人もいる艦をたかがMSを撃破するために巻き添えだなんて? はじめからそのつもりの無人艦ならいざ知らずだ! いやはや俺、個人としてはそうであってほしい」

「はあっ……」

 上背のある若いもんが、無重力の艦内でポジションがあやふや、足が床についていなかった。はたと首を傾げて猫背気味に肩の落ちているその右の肩口、パンと叩いてドレンは笑う。

「もっと柔軟に考えろ! いざって時の臨機応変さがなければ艦の舵なんて取れないだろ? ちゃんと足を踏ん張って、あとちょくちょくこっちの戦略コンソールを気にしてるみたいだが、あんまりよそ見してるとどやされるぞ? 俺は何も言わないけど!」

 すっかり懇意にしている間柄の認識がある若者に屈託のない笑みを向ける気さくなおじさんだ。もうじき終わるから転進の準備をしておけとも言ってやる。

「ん、ほうら、おいでなすったぞ? 我らが黒い三連星の大立ち回りだ! 燃料タンクの容量はまだ余裕があるはずだから、転進したら最大戦速で飛ばしていい。どうせ追いついてくるだろ」

「りょ、了解……あ!」

 ちょっと困惑顔でいながらまたもや、目の前であっけらかんと破顔するおじさんの手元のディスプレイをのぞいてしまう。 
 すっかりのぞき見がクセになっている操舵士だが、まさしくその動きが出る瞬間であった。
 ダメだと言っているだろう?とドレンに尻をつねられて太い首をすくめさせる下士官くんだ。

「も、申し訳ありませんっ! あは、は……」

「気になるのは仕方ないよな? でもまあ気をつけてくれよ。バルダ曹長、おまえのことは信頼しているんだから……な!」

 傍から見ればただのじゃれ合いか?

 つかの間、お互いに苦い笑みで見合ってしまう。

 この時、画面の中でむすりとしたひげヅラのオヤジがヘルメットのバイザー越しに見ているのを、ふたりは気づけていたか?

 PartC

 戦闘はまさしく膠着状態。

 むなしく時間ばかりが過ぎていく……!

 ひどくイライラして暗く狭苦しいコクピットの中で荒い息つく隊長機のガイアだが、果たして理由はそれだけだったか?

「くそったれが、いい歳こいたくされデブが人前でイチャイチャなんかするんじゃねえよ!」

 思わず憎々しげな苦言を漏らして、それを不覚にも周りの同僚たちにも聞かれてしまう。

 二番機のマッシュからただちに入電!

「ん、どうした隊長? なんかさっきからイライラしてないか?? まあ気持ちはわからんでもないんだが……」

「兄い! おれもイライラするぜえっ、こいつらうぜえぇっ!!」

 すかさず左右の耳から入ってくるそれは気心知れた仲間たちのだが完全に的外れな返答には、ちょっと拍子抜けして怒っていた肩のあたりの力が抜けるガイアだ。
 言えば一蓮托生の戦友であると同時、わざわざシェアハウスしてまで寝食を共にするまさしく家族も同然の間柄なのだが、一個人としてのパーソナリティが深く関わるところについてはまるで共有ができていなかったりする。

 それで良かったのだろうが。

 人間的に欠けているところだらけのポンコツの寄り合い所帯なのだから、ぬるいなれ合いなんて望むべくもない。
 およそデリカシーだなんてものを持ち合わせていない性格粗野な弟分たちが、今となってはかわいくて仕方なかった。
 ありがたいと思いながらも、ちょっとだけひがみっぽく口元のヒゲがゆがむ。

「ふん、おまえらにはわかるまいが? 今のこのオレの複雑にしてデリケートな胸の内は? だがストレス感じてるのは確かだからさっさと解消しちまおう、ようし、一気に仕掛けるぞ! まずは敵MSを各個に撃破! 間髪置かずに敵巡洋艦にアタックをかける! いいか、一撃で沈めるぞ!!」

「了解!!」

 かけ声ひとつで一気に戦闘モードに突入する凄腕たちだ!
 だがあいにくとこの空気感が伝わらない遠くの母艦のブリッジで、おやじの副艦長どのがのほほんと茶々を入れてくれる。

『なるほど了解だ! だが各自、この俺が言ったことをちゃんと考慮しておいてくれよ? 油断は禁物、相手は捨て身だからな!  いざとなったらバックれちまって構いやしない!!』

「ぐぬ、ぬかしやがれ! ひとりだけ安全圏でぬくぬくイチャついてるヤツに言われたくはねえ!! さっさと片を付けたらきっちりとこの落とし前は付けてもらうぞっ!!?」

『お、おうっ? て、なんで怒っているんだ? あ、ひょっとして更年期ってヤツか、男の??』

「イチャつくってなんだ? あ、ガイア! タイミングちと早くありゃしないか??」

「えぇ? あのブリッジにそんなにイカしたおねーちゃんなんていたっけかい、ガイアの兄い?? おーい……!」

「かああっ、どうしてこのオレの周りはこんなにもデリカシーのないヤツらばっかりなんだっっ!!!」

 魂の叫び!
 すさまじい気迫だ。
 おかげで一気にブースターの出力を上げて高機動型ジムに詰め寄るガイアのリック・ドム!!
 ろくに反撃に転じるでもない相手機は無理な急加速の回避機動に機体を激しく震わせるが、何度もやられてとっくに動きを見切っていた隊長は歯をむき出して、さらなる急加速のGをおのが身に叩きつける!! 
 もはや逃がすまいとだ。
 機体制御がバカ丸出しの相手に飛び道具の照準を合わせるのは不可能だとわかっていたから、奥歯をかみしめて左手のマニピュレーション・レバーを力一杯に押し倒す!!
 虚空に突き上げられたMSの太い左腕が右肩に装備した長物の柄をガシリと掴んで、ただちに暗い夜空を一閃、ひと思いに力の限りなぎ払う!! 
 狙いはまさしく相手の胴体、こしゃくなジムのコクピットを一刀両断の勢いで機体の加速度もろともに叩きつけるガイアだ。

「逃がしゃしねえよ! どんなに逃げ足早かろうがこいつの長い射程から逃げられるヤツなんかいやしねえっ! ましてやこのタイミングではっ……!?」

 背中から抜き出してコンマ一秒後には全体が灼熱の赤熱色に染まるヒートブレードは、ドム自体の全高にも匹敵する長大な刃渡りで射程が長いのが一番の強みだ。
 ビームサーベル相手でもある程度ならチャンバラ可能だし、エネルギー効率を考えたらこれに勝るものはないとドム使いなら決して譲らない。

 狙い通りに敵モビルスーツの胴体を捉えた灼熱の熱棒はそのまま機体を紙切れみたいに寸断する、まさにその瞬間、ガイアのヘルメットの中で今や誰よりも聞き慣れたおやじの声が弾けた!

『ダメだっ! 離れろ!! ガイアっ、緊急回避っっ!!!』

 コクピットに鳴り響く警告音、明滅するモニター群、仲間達の叫び声、機体がきしむ摩擦音、敵MSの影がコクピットを飲み込む瞬間の息を呑むような静寂、直後のつんざくような警告音!!

 目をひんむいて左右に握ったレバーを殴り倒し、足下のブーストペダルを親の仇くらいに思い切りに蹴り上げた!!
 頭に来るおやじの怒鳴り声から瞬く間の出来事だ。
 緊急離脱によるGで身体から血の気が失せるが、意識を飛ばすことなく浮いた身体をコクピットシートに尻から叩きつける。

「なあっ……くそったれめ!!」

 横なぎの胴切りでそのコクピットごと真っ二つになる寸前、いきなりドムのボディにしがみついてきた敵のジムだ。
 背後の巡洋艦から光りが瞬くのを見るよりも早くに全身を貫く稲妻のごとき危機感から、反射的にブレードの振りかぶりを相手の胴からこの腕を断つモーションに切り替え切断! 
 同時に太い足で相手のボディを蹴り上げ、その反動ごと機体を急速旋回させて敵艦の射線上から離脱、考える間もなく真上に向けて急上昇していた。

「……!」

 足下で豆粒ほどになったジムが巡洋艦のビームの餌食となって爆発炎上するのをマジマジと見つめるガイアだ。

 無性に腹が立つ。

 何がって、憎いあんちきしょうが言ったまんまのありさまにまんまと翻弄されてる自分がだ。
 するとちょっと冷めた調子でその当人が補足するかに語ってくれるのを、苦い表情で聞いていた。
 ちょっと歯ぎしりしてしまう。

 ぬううっ……!!

『ほうら、言ったとおりだろ? やっぱり自爆覚悟の無人型MSだって……! ちょっと危うかったんじゃないのか、大尉? ともあれでネタが割れたらやることはひとつだよな! 親玉のマゼラン(巡洋艦)は自爆もありうるから気をつけてくれよ?』

「ふん、偉そうに……! マッシュ、オルテガ、残りは適当に相手をしてやれ! トドメはオレが刺してくれる。おおらっ!!」 

 一気に背中のブースターを噴かして敵巡洋艦のブリッジの真上にまでつけるガイアのリック・ドムだ。
 こんなに至近距離に詰めているのにまるで反応がない。
 これに目の前の巨大な鉄の棺桶が無人の空っぽであることを実感する。ふざけた話だと苦虫噛みつぶしたような表情でギリッと奥歯を噛む隊長である。

「けっ、無駄弾は撃ちたくねえな? このまま勝手に自爆するって言うんなら? いや、撃たないと撃沈にはならねえのか? さっきのジム、あれって撃墜扱いでいいんだよな? おいっ……」

 不機嫌にヘルメットの中でうそぶくのに、遠いブリッジからはどこか呆れたようなおやじの声が返る。

『まあ、そういうことでいいんじゃないのか? こっちでもモニターできてるし、他にいないんだし、実際にくたばっているんだし? 無人機でもな。サラミスもしかりで? あと、自爆モードはそいつの場合は他のヤツらも近づかないとおそらく発動しないぞ? ジムが全機大破して、さあいよいよってことにでもならない限りには??』

「ちっ! てめえで言っておいて、おまえが思う限りでだろ? ほんとにふざけた話だな! こいつめ、ひょっとしたらただの囮で、本隊は他にいたりするんじゃないのか? よもやあの補給艦も無人だなんて言いやすまいな……!」

 苦々しげなセリフに、あちらからはしごく落ち着いた説明台詞がなされる。

『いや、むしろあっちこそが本命だろ! まんまとしてやられた。よくて引き分けか? あれ自身はおそらくは補給艦に偽装した高速輸送艇あたりだ。積み荷はあえて言うまい! 今さらだものな?』

「ふんっ……! 予備弾倉には手を付けないつもりだったんだが、あえてくれてやるよ。メインのブリッジつぶせば無人機も止まるんだろう、自爆するのか? おめえら気をつけとけよ」

 今も無人機とやり合っている部下たちが元気な返事をくれるのを聞き流しながら、どうにもつまらない心持ちで右肩のバズの弾倉を交換して目の前に狙いを定める。
 あるのは敵艦のメインブリッジの言うなれば平たい屋根だが、もう考えもなしにただ引き金を引いていた。

 ドゴォンッ!!

 至近距離で艦橋が大破、距離をさらに置いて、二発目、三発目をお見舞いする。
 かくして全弾ぶっぱなす前に炎と煙に飲まれてゆく大型戦艦の最期を看取ってやるのだ。

 結果を見れば、ガイアたち黒い三連星の圧勝。

 だが――。

 静まり返るコクピットで、なぜだか異様にむなしかった。

 もとい理由はなんとなく思い当たるのだが、MS撃破と勝利に沸く仲間達の歓声を遠くに聴きながらひとりだけ深いため息なんかつく隊長だ。

「なんか、納得がいかねえ……なんだこれ?」

 白けたまなざしを目の前に向けるにつけ、そこのディスプレイの一角に映り込んだ母艦のブリッジのさまにしごく納得がいく。

「仲良さそうだな? やけによ、へぇ、そいつはまた……」

 言われた相手はカメラの画角から外れた誰かと目を見合わせて、こちらにきょとんとした顔を向けてくる。

『は? 何を言っているんだ?? まあとりあえず無事、ミッションクリアだ! 各機速やかに帰投してくれ。気をつけてな?』

「……そうだな。わかった。帰ってから話しをつけよう」

『は? さっきから何を言っているんだ??』

 気がつけばすっかりと意気消沈。
 傍から見れば謎のローテンションだった。
 もはやろくな言葉もない隊長機は、二番機、三番機を残してさっさと戦域を離脱する。
 来た時同様、暗礁宙域のど真ん中をぶち抜く直線コースだ。
 はじめ怪訝にそのさまを見つめるドレンだが、何かイヤな予感めいたものを感じて横の操舵士に即座の転進と、最大戦速での現宙域からの離脱を命じていた。

 背後から追ってくるドムの小隊に、なぜだか異様な寒気を感じていたのだから――。

 
 

ドレンとガイア ④


Scene1


 敵・連邦部隊との戦闘を終えたガイア率いるリック・ドム小隊は、通常なら航行困難な暗礁宙域を再び渡って母艦であるこのムサイ級巡洋艦の元へと、全機が問題もなく無事に還ってきた。

 いやはやさすがだな! まことにめでたい!!

 ただしこの着艦に当たって、隊長機がちょっとゴネついたらしいのだが? その理由を聞くにあたり、あいつらしいっちゃあ、いかにもあいつらしいものだったから、ブリッジからこの様子を見に来たこの俺、艦隊副長のドレンである。
 
 ま、もともと発艦していった宙域でこれを待つこともなく、さっさと艦隊進ませちまったからな! おまけに最大戦速で!!

 ベテランの凄腕パイロットばかりなのだからそうそう問題はないはずだが、怒るヤツは怒るし、あいつは当然、怒る。

「……というか、元から怒ってたよな?」

 内心で首を傾げながら艦の一番上に位置するメインブリッジから、艦底のMSデッキまで直通の艦内中央通路(通称・トンネル)を降りた先で、気圧差緩衝ブロック手前の扉の前に付ける。

 ここから先のMSデッキはいわゆる空気のない真空状態で、艦外の宇宙空間と直結していることも多いことから、デッキの内部が酸素を含んだ清浄な空気と正常な気圧に満たされるまでの安全が確保されないと進入ができない。

 ちなみ、そういった危険性を考慮して、この長い一本通路のトンネルを渡る時はノーマルスーツの着用が推奨されるのだが、あいにくとそういった面倒ごとが根っからイヤなおじさんである。
 はっは、この俺が熱烈に推してる少佐なんかは、このMS搭乗時にだってパイロットスーツなんか着てやしないんだから!

 ま、自己責任だな。

 ともあれこの内側の状況をリアルタイムで示す表示ディスプレイを見るには……? そこが安全圏にあることを示す、緑色が点ったパネルの状態表示をじっと見つめてその内容を読み取る。

「お、メインデッキは正常値クリアしてるんだな? 二番機と三番機はもう着艦済みと! そういやさっきそれっぽいパイロットスーツとすれ違ったような? あいつら、無視しやがって……! ガイアの一番機は今、入ってきたところか? ふうむ、あいつめ、あんな横暴そうな顔と態度で、こういうところはやけに部下想いなんだよな……」

 さっさとMSの収容を終わらせて仲間たちを休ませてやりたいという親心ならぬ隊長心なのかもしれないが、これにあたりちょっと頭の隅に引っかかるところがあるこの副艦長さまではある。

「あん、あいつら、やけに早くに自室に引き上げていったが、帰投後のメディカルチェック受けてないんじゃないのか? それで前もめてたよな??」

 手近に艦内放送のブースがあれば大声でがなってやるところだが、あいにくとそんなものはないし、目の前のゴツい気密扉が開いてしまう。そうだ、この先でちょっと減圧するんだったか? 
 めんどくさいからとっとと済ませてデッキに入ることにする。

 緩衝ブロックを抜けてMSデッキに出ると、そこはやたらとやかましい騒音と機械油のニオイに満たされていた。

 そうか、今は空気があるからちゃんと音が伝わるんだな!

 でないとこの俺も窒息死してしまうのだが、左右のハンガーに二番と三番のドムが収容されて、ちょうど真正面の真ん中のハンガーに隊長であるガイアの一番機が機体収容を完了したところらしい。仰向けの状態で機体各部をがっちりと固定されている。
 これからメカニックスタッフたちによる点検整備だ。
 おそらくは前準備なのか、ノーマルスーツ姿のメカニックマンたちがちょっと遠巻きに機体を眺めているな。
 各種の機体情報と戦闘データの収集もしているのだろう。

 ようし、良いタイミングだ。

 そう思っていたら、これまたいいタイミングでMSのコクピットのハッチが開かれる。分厚い装甲隔壁の内部からひょっこりと黒い専用のパイロットスーツに身を固めた主が顔を出すのだ。

 お、ガイアだな……!

 ヘルメットを被っているから素顔が見えないが、三人の中ではやや小柄な小太りの野郎体型がそれだとわかる。

 ここからじゃまだ声が届かないなと左右を気にしながら、このまま向こうまで行ってしまっていいものかと考えあぐねる。

 部外者が出すぎたマネは危ないし迷惑だものな?

 が、この時、この俺よりも一足先にそのリック・ドムに向けて無重力のドック内を浮遊しながら泳いで渡る人影があった。
 デッキクルー用の簡易型ノーマルスーツを着たMSのメカニックマンだとひと目で見分けが付く。薄い緑色の生地に蛍光色の補強ラインが走る、独特な見てくれだからな。

「ん……! あんなヤツ、いたっけか?」

 そいつは空気があるからメットもなしでその素顔をまんまさらしていて、見た感じ、大柄なデブの若い兄ちゃんみたいだ。

 そう、おそらくは新人だな?

 遠目にもかなり個性的な顔立ちをしているが、もとよりイケメンである必要もない。顔つきのいかめしいひげヅラのおやじには打ってつけだ。ここからでは何を言っているのかわからないが、どうやら満面の笑みでみずからが担当するMSのパイロットであるガイアにねぎらいの言葉をかけているようだ。しきりと。
 まだそんなにさまになってない敬礼をひたすらに送っている。

 あれ、なんか、なつかれてたりするのか? 若いヤツに意外にも?? 人望あんのか、あんなんで!!

 傍から目を白黒させてそのさまを見てしまう俺だった。

 周囲のクルーの動きを見ながら、こちらも慎重に無重力のデッキ内を浮遊して泳いで渡る。

 そうれっ……と!

 だがおじさんの宇宙遊泳は傍目にはかなり滑稽なんだよな?
 仕方ない。
 それでいざ近づくと思ったよりもこの周囲が熱い熱気で満たされているのに、慌ててコース取りを変更した。

 あっち! まずい、ロケットエンジンやバーニアが集中している足下側じゃなくて、さっきの若いのが近づいて行ったみたいなメインカメラの頭上やコクピットと同一線上の脇腹あたりから攻めないとダメなのか! たく、あいつらバーニア無駄に噴かしすぎてやすまいな?

 パイロットとメンテナンスを真上から見る状態でしばしデッキに浮遊してしまう副艦長だ。みんな声を掛けずらいみたいだな。

「ようし、今度こそ……」

 整備用に張り巡らされたラインやら何やらを取っかかりにすっかり肥満気味の身体を真下に向けて固定、どのくらいの力加減で飛び立てば無難に目的地までたどりつけるか算段する。
 お山の大将と整備士くんの会話が気になるので耳をそばだてながら、タイミングを見計らった。
 さっきよりは近づいたからそれなり聞こえるのだが、やはりまだ若い新人のメカニックみたいだな?
 たどたどしい会話にちょっと好感が持てるおじさんだ。

「あっ、あのっ、あのあの、聞こえるでありましょうか? 大尉どのっ! たっ、大尉どのっ、あの~~~、あのであります、ガッ、ガイアっ、あの、おつかれさまでありますっ!! 無事のご帰還何よりでありますっ、聞こえてないのでありましょうかっ? だっ、だったら、大好きでありますっ、昔から大ファンでありますっ! 黒い三連星、めちゃくちゃカッコイイでありますっ!!!」

 ちょっと耳を疑う俺だった。

 コイツ、なに言ってるんだ?? 

 たぶん相手が聞こえてないのだろうから最後のあたりはぶっちゃけているのだろうが、あいにく背後で聞いてるヤツがいる。
 まあこのぶんなら周りにも触れ回ってみんな周知のことなんだろうが。でもそのクセ本人には伝えてないのか?
 ということは……。

「あいつも隠れて推し活してるのか! めちゃくちゃ不器用だな! というか、メカニックにそんなヤツがいるの、めちゃくちゃパイロット冥利につきるんじゃないのか? 打ってつけすぎる!!」

 感心を通り越してもはや感動すらおぼえる同じ推し活の同士のおじさんが見ている前で、健気な新人メンテナンスの若者は推しの凄腕パイロットの間近にまで迫った。

 胸の内バクバクなんだろうな? いやいや、顔が真っ赤だろう! なんでそんな老害みたない中年パイロットに?

 見ているこっちまでハラハラするが、果たして周りの気配にやっと気がついたらしい当の推し、もといリック・ドムの使い手のパイロットスーツは、おもむろにこのメットのバイザーを上げてその素顔をさらす。じぶんを真上から見下ろしている熱烈なファンに、じろりと冷めた視線を向けた。でぶちんくんの身体がびくっと硬直するのが後ろで見ていてわかったが、すぐにも脱力するのがこれもまたはっきりとわかった。かわいそうに。

「んっ、なんだ、またおまえか? いちいち出迎えになんて来なくていいと言っただろう! 仕事をしろ、おまえの仕事はコイツの面倒を見ることなんだから。違うか?」

「もっ、もちろんそのつもりでありますっ! でで、ですが、大尉どのの調子とご意見を伺うのも大事な仕事でありますっ! お心遣いありがとうございます!! とにかくご無事でなによりでありますっ、じぶんは、その、とても光栄でありましてっ、泣きそうでありますっ!!」

「は、何がだ? おまえ変なヤツだよな? まだ若いくせに腕はいいから文句はないが、もうちょっと肩の力抜いたらどうだ? 緊張しすぎなんだよ、見ていてこっちが疲れる! あとおまえ、名前なんつったっけ? デイビッド? 覚えてやるから」

 名前もまだろくに覚えてもらえてないのか。
 がっくりと落ちる肩に、もっとがんばれと念を送りながらこの推し活おじさんもただちに援護射撃に撃って出た。
 余計なお世話にならないように気をつけながら。

「ガイア大尉! おつとめご苦労!! また戦果を上げたな? 三人そろって老後は安泰だ。うらやましい限りだよ! よう、おまえもありがとうな! はは、俺にも名前、聞かせてくれないか?」

「なんだ、横からいきなり? ブリッジの人間がこんなところに我が物顔で出しゃばって来るんじゃねえよ、あとよくも置いて行きやがったな! おまえにはいろいろと話があるんだっ……」

「わかった! 後で聞く。それよりも今は取り込んでいるんだろう? な?」

 はいはいと肩をすくめさせながらニヤけた視線を緊張した面持ちで固まる若手のメカニックに向けると、なおさら緊張した不細工くんは無理に直立した姿勢を取って律儀な敬礼を返してきた。
 けっこうけっこう! これは俄然応援してやれるぞ。

 やることなすこと初初しいメカニックスーツの青年は、ちょっとうわずった調子で声を張り上げる。よっ、青春!

「はっ、は! お気遣いありがとございますっ!! じ、じぶんはっ、でい、デーミスと、いいますっ、MS09およびMS15系限定のメンテナンス技術兵としてこちらに配属されました! まだ若輩者ながら、どうかご指導よろしくお願いします!!」

「ほお、そうか。デーミスだな。やけに若いと思ったら、ドムとゲルググあたりに限定って、そりゃ仕方ないよな! こんな最前線のとっちらかった現場に放り込まれちまうのも? まあ本人的には、願ったり叶ったりなんだろうが……おほん!」

「デーミスか、とりあえず覚えてはやるよ。ザクは見れねえのか? 使い勝手が悪いヤツだな! 一番汎用性が高い機体なのに、現場なら基本中の基本だろうさ」

「は、はあっ、じぶんはその、大尉どのの大ファン、あ! じゃなくて、ドムのような独特かつ重厚な機体が好みでして、おまけにこのガタイですので、おまえはあっちのいかついのやれっ! てよく周りからも言われてしまいまして……!」

「おまえ、バカなのか?」

「おほん! 昨今は人員から何から逼迫(ひっぱく)していて、現場に早急に人手を送り出すためにはもはや仕方がないんだよ。新型機が出回っても現場がそれに付いていけなくちゃどうにもだろう? このデーミスみたいな即戦力は必要不可欠なんだ、おまえもちゃんとファンサ……じゃなくて、世話してやれよ。こんな有能な味方、そうはいないぞ?」

「何を言っているんだよ? おい新人、そういやおまえが言っていたこと、それなりには役に立ったぞ? 上から下までフル装備じゃなくて獲物をしぼって機体をスリムにしたほうが、障害物だらけの暗礁宙域を突破するには適当だろうっての、いざやったらみんな納得だ。ありがとうよ」

「そ、そんな、もったいないお言葉! はっ、めちゃくちゃ感動であります!!」

「俺だってそのくらい言うぞ? ちゃんとデーミスって呼んでやれ。バカは誰なんだか……! まあいい、話の前にやることやっておこう。忙しいところ悪いが、おまえも手伝ってくれないか? まずはこの大尉どのを医務室に連れて行く! 任務終了後のメディカルチェックはパイロットの義務なんだからな? ようし、暴れられたらあぶないからおまえもそっちから抑えてくれ、この素行不良のエースさまを!」

「なんでそうなる? 必要ない、オレはピンピンしてる。時間の無駄だろう、おいっ、なんだ!」

 ファンサービスがからきしできやしない有名パイロットを脇から抑えて、もう一方の脇を押さえろとデーミスにうながす。
 はじめ目を白黒させてたじろぐオタクの青年は、なおさらその顔を真っ赤にさせて、大きな深呼吸して覚悟を決めたのか?
 みずからの緑のノーマルスーツを黒いパイロットスーツへとぐぐっと強く押しつけた。しっかりと推しを確保だ。

 よしよし、しっかり感触を覚えておくんだぞ、なんなら頬ずりしたっていい! セクハラなんて言わせやしないさ。
 当人、わざわざヘルメットを脱いで来たってことは、それだけ身近にこのおっさん兵士の息づかいを感じたかったんだろう。
 健気で献身的なガチのファンだ。いくらだってやりがい搾取できるぞ? いや、させやしないが。本人も無自覚だからな!

「し、失礼いたします、ガイア大尉どの! わあ、思ったより小柄だけど筋肉質であります! さすがであります!! ジーク・ジオンでありますっ! めちゃくちゃ感動でありますっ!!」

 感情が爆発しているらしい。
 今や全身身震いさせて黒い猛獣にしがみつく怖い物知らずの若造に、ただごとでない親近感がわくおじさんだった。

「おまえ、ほんとうにバカなんだな! いや、いいことだ。上官としてとてもありがたい! 負ける気がしないからな! その調子でこれからも黒い三連星のバックアップは任せるぞ、もっとしっかり掴まないと逃げられる! 羽交い締めにしてやれ!!」

「りょ、了解! し、幸せでありますっ!!」

「な、何をしやがるっ、こら、離せっ! おい若造、調子に乗るなよ、このオレは黒い三連星のガイアだぞ!?」

「だからだよ! いいファンがついて鬼に金棒だろう? 連邦の白いヤツとの再戦も間近かもしれないが、少佐以外にも勝ちが見えてきたのかもしれないな! けっこうけっこう!!」

 作戦終わったばかりなのに元気に暴れる隊長を二人がかりで医務室まで送り届けて、無事に今回の強襲作戦を終わらせた艦隊副長の俺であった。かくして推しは違えどおなじ推し活の友を得て、殺伐とした戦場にある種の潤いを感じられたよい一日だ。

 ああ、まことにめでたい! まさしく推し活万歳だな!!

 最後にブリッジに戻ったら、艦内の戦闘態勢を解除していなかったことを推しの少佐にやんわり指摘されて、あえなくこの顔が真っ赤になるおじさんである。うわ……!
 ほんとにバカばっかりだ。
 合掌――。


 Scene2

 
 俺の名は、ドレン。

 赤い彗星こと、シャア・アズナブル少佐が率いるムサイ艦隊の副艦長を務めている。階級は中尉。忙しい軍務を日々こなしながら、影ながら推しである少佐の『推し活』に励んでいる。

 最初から最後までドタバタ続きだった強襲作戦がどうにか無事に終わり、今は自室にこもって鋭気を養う中年太りのおじさんだ。戦局は厳しく、連邦のように物資や人員に恵まれてもいない我らジオン公国の巡洋艦では、交代制もへったくれもない。
 休めるときにしっかりと休んでおかないとな!
 戦士にも休息は必要だ。

 立場的には、ムサイ級が三隻からなる艦隊の中でも上から数えて二番目となるあたり、艦内での居室はそれなりの広さのものが与えられていた。ありがたいことに。
 
 ごく一般の兵卒ならば、それこそ個室ではなく棺桶みたいなかろうじて身動きが取れるくらいの、ごくごく狭小なプライベートスペースしか確保ができない。
 パイロットなどの士官クラスでもなければ、個室など望むべくもないのだ。現にブリッジ・クルーの中でも個室付きは、この俺と艦隊総司令の少佐ぐらいなものだろうか。

 ちなみにパイロットなら、確か隊長のガイアが個室で、マッシュとオルテガはふたりで一つだったはずだ。仕方ない。

 巡洋艦の胴体部の左舷と右舷のふたつに分かれた居住区ブロックには、いざという時に艦の運営に支障を来さないよう、各人員とそれぞれの居室がバランス良く分けられていた。
 この俺、副艦長のドレンが左舷の個室ならば、反対の右舷のブロックには総司令の少佐の専用個室が配置される。
 パイロットもまた同様で、ガイアが左舷にいれば、その手下、もとい部下達のマッシュとオルテガの居室が右舷みたいな感じでだな? その他のクルーたちもやはり偏りがないようにそれぞれがばらけて乗艦していた。

「…………」

 部屋の照明を落とした中で、何をするでもなくぼうっと天井を見つめていた俺は、今回の戦闘におけるガイア小隊の主にMS戦に対する戦術レポートを枕元の小型ディスプレイに映してそれをぼんやり眺めたりするものの、すぐにディスプレイを消して無重力にこの身を投げ出す。重力がないから形ばかりのベッドなど意味をなさない。太い固定ベルトでこの肥満体をがっちり押さえ込まないと安定して安眠できないのだが、いざという時にすぐさま飛び起きれなくなるから、個人的には使いたくはない。
 対ショック軟性樹脂で固められた部屋の角っこで、なおかつこの体勢を固定できるネット型の寝袋を利用するのが大半だった。他にやることが思い浮かばないのでさっさと寝ようかと思った矢先に、部屋に来客があることを示す、チャイムが鳴った。
 誰だ? 今ごろ?



 



プロット
Scene1
ムサイ級 MSドック ← ドレン
黒い三連星のリック・ドム帰還 ガイア
MSデッキ 戦闘態勢解除につき、 空気あり
メディカルチェック メカニック(デーミス?)
メカニックはガイアの大ファン?ガイアは無関心

Scene2
ドレンの個室 ← ガイア(制服?)
少佐の戦闘データ(動画)入手
ガイアは操舵士とドレンの仲を疑っている。




ストーリーとイラストは随時に更新されます(^o^)

カテゴリー
SF小説 ガンダム ワードプレス 俺の推し! 機動戦士ガンダム

機動戦士ガン○ムの二次創作パロディをやっているよ!

まさかのあのおじさんキャラが主役でーす(^o^)

 タイトル

『俺の推し!』

 まさかのドレン、赤い彗星、シャア・アズナブルの副官のおじさんジオン兵(少尉?中尉?最終的には大尉だっけ??)が主役のおはなしですw 本来の主役のはずアムロとシャアそっちのけでジオン軍のおじさんが元気に推し活してまーすwww

まずは冒頭のナレーションから…

宇宙世紀0079…
 中略
人類は自らの行いに恐怖した…

「ドレン、艦は任せる…!」

「は! お任せください、シャア少佐!!」

 彼の名は、シャア・アズナブル――。

 またの名を「赤い彗星のシャア」――。

 その素顔を怪しき仮面に隠した謎多き人物であるが、しかるにその驚くべき実態は…!

 これは、仇敵であるザビ家への復讐を誓い、一年戦争を舞台に波乱の人生を駆け抜ける悲運のヒーローを、すぐ間近から陰ながら推しているおじさんの物語である。

「よし! 今日もかっこいいです! シャア少佐!!」


『俺の推し!』

 ガン○ムのいろんなキャラクター、主に脇役をメインにしていろんなお話をやらかしていきますw
   メインキャスト(予定)
ドレン(シャアの参謀?)
ガイア(黒い三連星のリーダー格?)
とりあえずシャアとアムロ
ランバ・ラル マ・クベ
ドズル・ザビ コンスコン ハマーン・カーン アナベル・ガトー クリスチーナ・マッケンジー カイ・シデン ハヤト・コバヤシ リュウ・ホセイ マッシュ オルテガ ララァ・スン エグザベ・オリベ セイラ・マス ブライト・ノア ミライ・ヤシマ

 まずはダイジェストでお話をやってみて、需要があればさらに堀り込むストロングスタイルでやっていきまーす(^o^)
    ↓オリジナルの創作ノベルはこちら(^^)↓

ストーリー NO.1

 サイド3(たぶん)にて…

『ドレンとガイア』


  Scene1


 俺の名は、ドレン。
 
 ジオン宇宙攻撃軍の士官だ。
 これでもムサイ級戦艦の指揮を執るくらいの立場にはある。
 そこそこ、偉い……はずだ。
 
 おほん! 
 
 だがそんな軍人にだって日常、プライベートはもちろんある。
 軍艦を下りたら、そこにいるのはただのおじさんだ。
 冴えない中年の見てくれした。
 それだからこの町中、みずからが乗り組む軍艦の駐留しているコロニーのどこぞにでもフツーにいたりはする。

 で、俺は今、行きつけのホビーショップのレジ前にいた。
 かねてから手に入れようと思っていた、プラモデルのでかい箱入りキットを大事にこの手にして。
 意気揚々とした気分でお宝を購入するべくレジの店長のおやじに箱を差し出したのだが、するとまったく同じタイミングでこの横からもプラモの箱を突き出す影、何者かがいた。
 この俺の真横、すぐ右隣に気配もなくつけてきたのか。

 ん……ひょっとして軍人か?

 あまりにも気配の殺しかたがうまいのに勘ぐってしまうが、それ以上に差し出されたブツにただならぬ違和感を感じてしまう。

「んっ……!」

 意識せずとも視界の隅に入るその妙ちくりんな見てくれをした、ド派手なカラーのMSだかMAだかが、この真ん中にでかでかと描かれた紙製の化粧箱にしばし見入ってしまう俺だった。

「(あ、今さらこんなの買うやついるのか?)……ザクレロ??」

 思わず言葉にしてしまって気まずい雰囲気になりかける。
 だが相手の中年の男らしきも、こちらの手の中にあるプラモをじっと凝視していたらしい。
 そうだ。その特徴的なゴツいシルエットでありながら高速機動が売りの重MSの図に、なにやら思うところがあるのか?
 やがてこの目線が上へと向けられてくる。
 こちらも自然と右手の男の顔へと視線を向けてしまって、だがそこでピキリとふたりして凍り付いてしまった。

 うわ、よもや知ってるヤツとこんなところで遭遇してしまうだなんて……! しかもコイツ、けっこうな有名人だろ?? いわゆるモビルスーツのパイロット界隈じゃ……!

「えっ? は、えぇっ? はあっ!?」

 互いに顔を認めるなり再び手元の箱を凝視、またしても互いの顔をマジマジとガン見してしまう。内心で思うところはあるものの、気まずい雰囲気で黙り込んだ。それ以上は言葉もないまま、ただ黙々と精算を済ませるおじさんたちなのだった。


Scene2


 まいどあり~~~!

 なじみの店のハゲおやじの店長に見送られて、ふたりでそろって店先に出て、それきり気まずい雰囲気のままに立ち尽くすふたりのおじさんたちだった。
 俺としてはとっととその場からずらかりたかったのだが、この右手に立つ歴戦のパイロットめがなにやらおかしな殺気めいたものを放っているのをひしひしと感じてしまう。
 うかつには背中をさらせない。ひたいにいやな汗がにじむのをいやでも実感していた。軍服着てないのがモロ致命的だ。

 めんどくせえなあ……!

 決して口には出したりしないが、言うなれば階級が上でしかも有名人の上官どのに出くわして、どうしたものかと考えあぐねる俺だった。あちらからしても、同じ宇宙軍所属の士官であるこの俺のことはわかっているはずだ。

 だからこんな気まずいんだし。

 今さらながらテキトーに敬礼かましてさっさととんずらしようかとハラを決めかけたタイミングで、問題の上官どのがなにやらぼそっと口にする。あらら、残念! 先を越されてしまった。 

 ちまたじゃ『黒い三連星』とかしゃれた異名を持つ三人組のリーダー格の男が、低く抑えた声音で上目遣いで言ってくれる。
 悪いが背丈はこちらのほうが上だ。あいにくフルネームまでは知らないが、この大尉どのは見るからに背が低くてらっしゃる。
 果たしてガイアと呼ばれるひげ面のおやじは鋭いまなざしで切り出した。俺はちょっと耳を疑ってしまう。

「……おまえさ、09、好きなの?」

 ……はい?

 意外な問いかけにはじめ目が点になる俺だ。
 その後に小さく舌打ちして、空返事をしてしまう。

「(チッ……うるせえな? ドムって言えよ、フツーに、このガノタが!)……ああ、いや別に、単にデザインが気に入ってるだけで。セールでゲルググより安かったし……」

 ちょっと目のやりどころに困りながらテキトーに返事をしてやるに、相手のエース級パイロットさまも何食わぬさまでうなずいたみたいだ。驚いたこと、ちょっとまんざらでもなさげな調子で了解してくれる。そりゃてめえが愛機としているMSだからな!
 そざかし愛着ってものがあるんだろうが、こっちとしてはさしたるこだわりはない。

 ぶっちゃけ、安けりゃゲルググかエルメス買ってた。

 言うまいだが。
 歴戦の勇士、どっかの戦線では敵軍の将を生け捕りにして一躍有名パイロットの仲間入りを果たした重モビルスーツ・ドムの乗り手、ガイアはしれっと言ってくれる。

「そうか……だがいいセンスしてるぜ? おまえさん、だったら……」

 だったら??

 話の向きが思わぬ方向に行きそうな、それはただならぬ予感に内心で構えてしまう俺なのだが、ほんとに思いもよらぬ相手からの誘いにまたしてもこの耳を疑ってしまう。

「見せあいっこするか? このオレと、おまえのヤツとで??」

 はじめ何のことだか、何を見せ合うのかちんぷんかんぷんで固まってしまう。が、状況から目の前の上官の言わんとすることを察知して、死ぬほどたまげてしまう俺だった。

「(おまえのそのザクレロと!? なんで?? てか、おまえこそドム買えよ! 三個買え!!)……ああっ、いや、俺はただ単にキットを組み上げるってだけだから。そんなにオタクじゃないし」

 仮にも上官だ。ちょっと相手を怒らせてしまう言いようだったかとひやりとするが、当のドムのパイロットどのはまったく気にしたふうがない。それどころかこの俺のおざなりな返答になおのこと食いついてくる始末だ。


「ふうん? そうなのか。だがいいもんだぜ? 見栄えもするし、愛着もわく。なんならそいつの塗り方、教えてやろうか?」

「えっ、なんで……??」

 思わず相手と見つめ合ってしまって、それきりその場に固まってしまう中年おじさんだ。しばし反応に窮していてると、それをどうやら遠慮だか何かと勘違いしたエースパイロットは無言でくるりと踵を返す。
 ひとの尻を気安くパンと叩いておいて、またプラモ屋の中へと姿を消すのだった。

「そういやコイツの塗料を買い忘れてた。ついてこいでかいケツ! ついでにおまえのぶんも見繕ってやるよ……!」

「なんで??? あっ、いや、あのっ……!!」

 これが俺とあいつとの出会いだった。
 まさかこれをきっかけ、この腐れ縁がこの先ずっと続くとはつゆほども知らぬままに――。 

プロット
プラモ屋の店先 ガイアとドレンがなんでたっている。
ドレン中尉(大尉より)(ガイア大尉よりも階級が下)はなるべく関わりたくないので、無視して立ち去ろうとするが、ガイアに呼び止められる。結果、また店に戻ることに…!
 ※ドムの型式は、MS-09

 オリジナルの一次創作もやっているよ!!


ストーリーNO.2

 ムサイ級のMSドックにて……

『ドレンとガイア』②

まずはシャア専用?ムサイの設定を考えてみよう!
ブリッジは通常のものと形状が異なる?
MSは何機搭載している?
シャア専用ザク ドム三機?

Scene1

 
 我らが少佐率いるムサイ艦隊に、損耗したMS部隊の補強として、また新たに一個小隊が回されたてきた。
 過酷な最前線にふさわしい、かなりの手練れたちだ。
 そう。
 人呼んで、黒い三連星!
 戦場のMS乗りでこの異名を知らぬものはいまい。
 おまけ乗り込むのは元は陸戦用の重モビルスーツ、ドムを宇宙戦用に改装改良した新型の機体だ。まことによろこばしいことではあるのだが、俺の内心はかなりビミョーなものだった。
 理由は……!

「くそ、新参者がいきなり旗艦に乗り込んでくるだなんて、どれだけ自信過剰な自己中どもなんだ! いくら名の知れたエース級だからと言って……特にあの真ん中のガノタおやじ!」

 そんな文句が自然と口からだだ漏れる。
 新たな戦闘要員たちを迎えるべくブリッジからMSデッキへと降りた副艦長の俺は、浮かない顔つきでエアロックの解放サインを見上げていた。赤の点滅から緑の点灯に切り替わると、やがて分厚い気密ロックが解放される。大気のない真空状態の宇宙空間から酸素のある通常環境に移るには必須の手順だ。

 で、内側には思ったよりも少ないぽつんとした人影におやっと思うが、頑丈なパイロットスーツに身を包んだすんぐりむっくりした、見た目やや小柄な男が見るなりまっすぐこちらに向かってきた。

 無重力だから軽くフロアを一蹴りしてひとっとびで頭から突っ込んできやがる。遠慮がないさまにげんなりして腰まで引けてしまう俺だった。めんどくさいのがこの顔に丸わかりだったろう。
 それでもあちらはいけしゃあしゃあとぬかしてくれる。

「よう! 出迎えご苦労! 今日から世話になるぜ。部屋は当然こっちにあるんだよな? あと悪いが指揮官どのへのご挨拶はテキトーにそっちで済ませちまってくれ。そうだ、おまえさんの推しのあの若い少佐どのにはだな!」

「勝手なことを! 部屋の用意はできるが、本来なら……」

 この旗艦ではなくて、二番艦に着艦する予定だったはずなのを無理矢理ゴリ押ししてきた横暴なヤクザまがいどもだ。
 そんなものだからこっちは内心むかっ腹で非難のまなざしを向けるが、ヘルメットのゴーグルをあげて素顔をさらす強面のベテランパイロットめは澄ましたにやけヅラでせせら笑う。

「堅いことを言うな。オレとおまえの仲だろう? な?」

「くっ、勝手なことを……! それにどうしてひとりだけなんだ? ほかの二人は……」

 その異名のとおり、元来は三人組の荒くれた凄腕パイロットたちのはずなのに、今はこのリーダー格しか見当たらないのに不可思議に聞き返す。
 すると何食わぬさまではぐらかしたふうなものいいする小隊長どのだ。階級で言ったら上官なのだがほとほと性格難ありな大尉どのは、いっそうにやけた笑いでぬけぬけと言ってくれやがる。

「さあな? 来て早々、デッキのクルーどもと何やらもめていたみたいだが、興味がないからほうってきた。ガキじゃないからどうとでもなるだろ。おそらくはオルテガのヤツがまた着艦をとちったんだろうぜ。誘導員をスカートで引っかけたとか? 図体でかくて度胸はあるが何かとおおざっぱなのが玉に瑕だ……!」

「おいおい、そろいもそろって問題児だからって勘弁願う! そういうのを無難に収めるのが隊長であるおまえの役目じゃないのか? 着任早々、看過できない! こっちの立場も考えてくれ、ノーマルスーツを着込んで出ていくにも時間がかかるんだ!!」

 嘆かわしげに声を荒げるこの俺、ドレンにベテランのあほんだら、もといエースパイロットのガイアは失笑気味に肩をすくめる。ちっとも悪びれたそぶりがないのが本当に腹立たしかった。

「ほっとけ。乱闘なんかにゃなりゃしない。向こうにはマッシュもいるんだ。ま、あいつはあんな悪人面して対人交渉はお手の物だからな? うまいことやり過ごすさ。いつものことだ」

「ああ、あの無愛想な隻眼男か……ほんとに大丈夫なのか?」

「くどい。それよりも上官に対しての敬意がなくはないか? オレのほうが上のはずだが? 階級が上がったって聞いたが、それでもまだ中尉どのだろう、おまえさんは??」

 近頃は軍務以外で顔を合わせることが多いものだから自然とそのくせが出ていたのは確かだが、こちらも艦を任される立場にはある。他の乗員たちの手前、そうそう弱腰には出られない。

 いまいましいこと相手はやたらなネームバリューがあるからやや分が悪いのは承知の上で、あえて強気に出てやるのにあちらはからかいまじりで返してきやがる。

「噂には聞いていたが、あまりにも素行が悪いだろう? 規律が乱れるからやむをえない。艦の指揮を執る人間からしたらな?」

「はん。指揮を執ってるのはあの若くて素性の知れない若造だろう? 中間管理職はツライな! 赤い彗星てか? あんな派手なカラーリングで戦場に繰り出すなんてな気が知れないが、おまえさんがそうまで熱を上げるならそれなり見所があるんだろうよ。ただし、いざ戦果を上げさえすればこのオレたちも推すんだよな、なあ? このやたらにでかいケツの将校どのは!」

「悪いがそこまで偉くはない! あとケツがでかいのは生まれつきで、おまえのためじゃない! 気安く触るな!!」 

 にまりと笑って手を伸ばしてくれるのをとっさにこの身体をひねって直撃を避ける俺だ。こいつ油断してると当たり前みたいに無造作にひとのケツをもんできやがる。

 よほど女に飢えてるのか、よもやそっちの気があるのか?

 ぞっとしない俺は苦々しい顔つきで、その全身真っ黒なパイロットスーツに正面で向き合う。間近にこの顔を寄せようとしたら、ベテランの中年MS乗りはひとの身体にていっと蹴りをくれたその反動で無重力の室内を入り口までまんまとたどり着く。

 あっく、こいつめ……!

 艦内を移動するのに吸盤式のモバイルシューター(拳銃型の牽引装置)があるのだからそれで動けばいいものを、わざわざひとを足蹴にして! で、おまけに今さらそれを腰から抜き出して、あろうことかそいつをこっちに向けてくる大尉どのはにやけヅラが完全に極悪人のそれだ。

 ……ドビュン! 

 迷わず引き金を引いて弾丸代わりの吸盤をこのひとの腰回り、太いベルト部分に命中させる。頭のメットだったら迷わず本物の弾丸を撃ち返していたが、当てるなりにそいつでひとを身体ごと引き寄せる狼藉者に開いた口がふさがらない艦長代理だ。

 味方の人間相手にこんな無礼な使い方するか? いくら殺傷力がないからってガンタイプの獲物だぞ?? 親の顔が見たい。

「おまえっ、よくも!? くっ……!」

 強力な吸盤は銃身に巻き上げられない限りは解除ができない。
 いやが上にも至近距離で顔をつきあわせて、いかついメットの中でにやけヅラのやさぐれはタバコ臭い息でぬかした。

「とっとと案内しろよ。その無駄にでかいケツで誘導しろ。そうすりゃ迷うことないだろう。あとついでにおまえの部屋もな? はっは、せっかくこうしてご近所さんになったんだ!」

「ええい、好き勝手なことを! 荷物はまだないぞ? どうして俺の部屋を! だから、でかいからってひとのケツを気安くもむんじゃない! 俺は男だぞ?」

「かまいやしない。ケツはケツだ。おまけ減るもんじゃなし、そっちもかまわないだろう? 兵士の士気を上げるのにこのくらいのサービスはお安いもんだ。女をあてがってくれっていうわけでもなし。何よりこのオレとおまえの仲だろう」

「どんな仲だ! ええい、いまいましい! いいからついて来い。案内はしてやる。だからケツにさわるな!!」

 人目もはばからず声がでかくなるばかりの俺だ。
 根性悪いエースパイロットめはのどの奥をクックと鳴らしながら悦に入ったさまでしたり顔してくれる。

「またでかくなったな? けっこうけっこう! それでこそのケツでかのドレンさまだ。中年太り大いにけっこう、楽しいったらありゃしないな? なんならこのオレのケツももんでみるか?」

「けっこうだ! セクハラだろう!! おい、あとのふたりはおまえがちゃんと面倒を見るんだぞ? このいかれたケツフェチのガノタめ!! もむなら仲間の臭いケツでももんでろっ!」

「オレの名前はガイアだぞ? ふん、パイロットスーツで固めた野郎のケツなんざこのオレの趣味じゃない。臭いのはお互いさまだ。もとよりおまえのケツはそんなにきれいなのか? くっく、フェチってヤツはむしろそのあたりに惹かれるんだろ?」

 だったら屁でもこいてやろうか? 

 言葉よりも実力行使のほうが良さそうだと顔つきよっぽど苦々しくなるばかりの俺だが、折しも腹のあたりがぐるぐるしだして内心でしめしめとほくそ笑む。だったらそうら……!

 ブッ!!

 それだから完全に油断していたのだろう歴戦の勇者の鼻っ面に臭いのを一発、お見舞いしてやるのだった。若干の沈黙のタイムラグの後、背後で慌てた気配が巻き起こる。

「ん? うあっ、くせっ!! ぐあ、おまえまさか、上官のこのオレに向かって? こんなの許されるってのか??」

「うるさい。お望み通りのことをしてやったまでだ。臭いのが好きなんだろ? むしろ感謝しろ。ケツ好きな変態ガノタに公私ともつきあってやってるこの俺の底なしの度量と辛抱強さにな!!」

「くっ、よくも言いやがる。オタクはオタクとしかわかり合えないんだよ。それこそが宇宙世紀以前から決まってるとおりにな。ならおまえも立派なオタクだ! この借りは必ず返すぜ?」

 どうやってだよ??

 呆れた顔でヘルメットの中のヤクザづらを見返してから、さっさと職務に立ち返る俺だ。こんなの相手してたらキリがない。

「いいさ、このケツにロックオンしてるんだろ? なら見失わずにしっかりついてこい! ただし間違っても触るなよ? でないとこの艦の風紀が乱れる!!」

「ハッハ、違いねえ、軍人なんてバカばっかりだからな? 何よりそいつはこのオレさまだけのお楽しみなんだから、ひとに譲ってやる気もねえし」

「ああ、本当にバカばっかりだ! 少佐、助けてください!!」

 スキがあったらもう一発食らわしてやる! 

 そう心に決めてMSドックから居住ブロックへと向かう俺である。こんなバカどもとこれから戦場を渡り歩くのか……!

 やっぱりまとめて二番艦に押しつけてやれないかと考えを巡らせるが、そちらの艦長は嬉々としたさまで客人の来ないのを憂いていたのを思い出す。ちくしょう、どいつもこいつも……!!

 問題だらけの最前線、敵の新造艦を追尾する追撃戦が幕を開けた。


プロット ドレンの乗艦(シャアの旗艦ムサイ名前は?)に黒い三連星(ドム三機)が着艦―― ドレンとガイアのごちゃごちゃ


 ストーリーNO.3

戦士たちの日常 WBにて…①

今回は本来の主人公サイド、ホワイトベースのある日常風景を切り取ってみます。もちろんテキトーな妄想シーンだけどもw
 前編/後編でお届けの予定!

Scene1

 戦場ではしごく簡単にしてひとが死ぬ。
 そうたとえ運が良くとも、その人生や未来を戦禍の渦にさらわれて、思いもよらぬ宿命(さだめ)へと流されてしまうのだ……!

 地球連邦軍の新型強襲揚陸艦「ホワイト・ベース」

 本来の戦術を大きく逸脱したはず型破りな単艦での長期間運用は、もはや戦場におき彼等があからさまな囮として位置づけられること、その確たる証左に他ならないのだろう。

 赤い彗星率いるジオン軍の精鋭部隊に追われながら、最終目標であるジオン軍の宇宙拠点へと向けて航行する艦内では、およそ軍人らしからぬ面々が、穏やかな日常にひたるのであった。

 かりそめの平穏、戦士にも休息は必要だとばかりに――。

 居住ブロック・左舷・第二図書室にて。

 艦内戦闘態勢全域解除。
 今は平時における通常運用中の艦内だ。
 乗員がいる区域は無難に電力の供給がなされている。

 それだから食堂で食事を終えたら、かならず人気の少ないこのブロックで身を落ち着けるのが毎日の日課となっていた。
 一度この艦ごと地球に降下した先で非戦闘員の民間人たちを下ろしてからは、特に静かになって集中して物事に打ち込めるのだから。

 自分もかつてはその民間人の内のひとりだったハヤト・コバヤシは、手元の端末ディスプレイをひたすら凝視しながら頭の中で任意の操作手順を何度も反芻する。実機を用いたシミュレーションは何度やってもうまくいかないので、半ば意気消沈しながらの涙ぐましい自主練習であった。

「くそ、さっぱり意味がわからないや……! このおれのガンタンク、これって本当に運用できるのかな? こんな重力がない宇宙空間で?? いくら足回りの仕様を変えてるからって……」

 シビアな戦場ではそのすべてがやり直しがきかないそれこそが命がけのミッションとなる。
 だからこそ中途半端な状態のままで後悔するのは嫌だった。
 するとそんな真剣な面持ちで手元のパッドを食い入るように見ている彼に、不意にこの横合いから声をかける者が現れる。

 はじめその存在にまるで気がつかなかったが、いつの間にやらそばに立つ細い影はただそれだけでそれが誰だか判別できたし、予想に違わぬ軽い調子のセリフが背丈の低い新米パイロットの頭をかすめていった。
 これにちょっとめんどくさそうなカンジで視線をあげるハヤトである。 

「よう! 相変わらず精が出るねえ? 感心感心! でもあんまり顔つきよろしくないけど、ひょっとしてつまづいてたりする? だからって根を詰めすぎるとろくなことにならないんじゃないの、ハヤトくん?」

「ああ、カイさん……! いたんですか? さっぱり気がつかなかった。確かに詰まってはいるけど、仕方がないじゃないですか。コレ、やっぱり難しいですよ。カイさんが乗ってるガンキャノンとはまるで勝手が違うんですから!」

 浮かないさまで言ってくれる己よりもまだいくつか年下の青少年、実際ちょっと前まで民間人の学生さんだったなりゆき任せの学徒兵くんに、自身もなりゆきでMSの操縦席に座ることになった兄貴分は何食わぬさまで肩をすくめる。

「そう言いなさんな! まあね、確かに無理があるって傍から見てても思うけどもね? 本来は陸戦仕様のはずガンタンクが、あんなに形を変えて無理矢理に宇宙戦用機に仕立て上げました! って、本気で言ってるのかって? ま、シャレじゃどうにもならないんだけど」

「シャレじゃないですよ! 急ごしらえすぎてこの名前だってろくに決まってないのに、乗せられる人間は完全にモルモットじゃないですか? 責任なんて持てませんよ。アムロは期待しているなんて言ってるけど、腹の底じゃどう思ってるんだか……」

 苦い表情でやりきれない心情を吐露する。そんな若者に、どこかみずからの未来にあきらめたふうな投げやりさを漂わせるちょっとだけ先輩格の兄さんは、やれやれとばかりの軽薄な笑みだ。

「フッ、いやはや、あの天才くんははなっから誰からの助けも必要としちゃいないんでしょうよ? むしろこっちがおんぶにだっこの状態で! それより名前がないのはやりづらいよな、お互いに? ならいまつけちゃえば? そのくらいの権利はあるでしょ、どうする、リック・キャノンくらいにしとく??」

「へ、なんですそれは? リック……??」

 突飛な提案に思わず惚けた面で同僚の顔を見上げる東洋人の男子に、おなじく東洋系らしき細身でシャープな面立ちの若者は、やはりしての冷やかすような物言いだ。
 半分がた冗談まじりなのが見ていてわかった。

「だからほら、リック・ドムって言うじゃない? ジオンの奴らのあのやたらいかついMS! あれって確か元は陸戦用の機体だったドムをこっち向けに仕立て直した、まさしくおまえさんのそれとおんなじヤツなんだろ? リックってなんなんだろうな??」

「知りませんよ! こっちはまじめな話をしてるんですから、やめてください! スレッガーさんはスペース・ガンタンクとか言ってるし、あの三人のちびっ子たちは真に受けちゃって勝手に広まっちゃってるんですよ? フラウとか、セイラさんにまで!」

「じゃあそれでいいんでしょうよ? 悪くないじゃない、嫌ならブライトさんに決めてもらえば? わかりやすいの付けてくれるでしょ、ガンタンク・ウルトラブースターみたいな! 見たまんまのやつね」

「ひどいな、他人事だからって! もういいですよっ、何とでも呼んでくださいっ……! おれたぶん返事しませんからね?」

「はは、そんなふてくされなさんな! かわいいねえ、青春まっただ中のティーンくんは? おっと、ガチの軍人さんが来なすった。あんまりしょげてばかりいるとガツンと気合いを入れられちゃうよ、ハヤトくん?」

 普段、限られた人間しか顔を出さないこの室内にまた新たな人影を認めて、そのずんぐりむっくりした筋肉質な身体のラインから誰かを察知するカイ・シデンはにやけ笑いで顔を背ける。
 するとその肩越しにその人物を認めるハヤトは背筋を正してこれと向き合うのだった。

「あっ、リュウさん! て、またいつものトレーニングルームにいたんですか? なんだかすごい汗かいてるけど」

 無重力の艦内、もっぱらパイロットたちのたまり場となっているレクリエーションルームにふらりと顔を出したのは、ふたりよりもだいぶいかつい体つきの大柄な青年で、東洋系よりもずっと浅黒い肌色の真顔で答えた。
 こちらも見るからに若いが民間人上がりの彼等よりはやや年上らしく、落ち着いたそぶりがずっと軍人らしくあっただろう。
 その彼は、意味深な目つきをして低い声音に少なからぬ圧がこもる。

「……ああ、まあな? おまえたちこそこんなところでコソコソと何をやってるんだ? ふたりともモビルスーツのパイロットなんだからトレーニングを怠るのは良くないぞ。戦場じゃ最後は体力と精神力がものを言うんだからな! さっきもサボり癖があるアムロをひっ捕まえて押し込めたんだが、おまえたちの面倒も見なくちゃいけないのか、この俺は?」

「うひゃひゃ、そいつは勘弁! いやあ、身体を鍛えるのはけっこうだけど、シャワーくらい浴びたらどうなんです? 汗くさいったらありゃしないや。いくらむさ苦しい軍人ばかりの軍艦だからって、レディたちもここにはそれなりいるんだから」

 自分が普段から軽薄なぶん、とかくまじめで見た目が重苦しいこの下士官どのが苦手なのか?
 どこかあさっての方角向いたまま軽口たたくカイに、当のリュウ・ホセイはやや冷めた目つきで応じた。
 ハヤトあたりからしたらこの二人はどうやらあまりそりが合わないように見えたものだろうか。
 ちょっと警戒した目つきだ。

「ふん、おまえに言われたくはないな? そんなににおうか? 確かにアムロのやつが嫌そうな顔してたが、人間なんだから当たり前だろう? シャワーは後で浴びるさ」

「はは、おれは嫌いじゃないですよ? 身体動かすのだって嫌いじゃないし、後でちゃんと筋トレします。そうさ、負けてられないよ、ただでさえみんなの足を引っ張ってるのに、役立たずはごめんだ……!」

「おやおや、完全にすねちゃって……! 悪かったって、へそをまげるのは戦争が終わってからにしてよ。わかるでしょ?」

「知りません」

「何の話だ? ん、ハヤト、おまえが見てるそれって、あの駆動系を大幅に改装したタンクのマニュアルだよな? だったらこの俺にも見せてくれよ」

 はじめ目をぱちくりさせながらふたりのパイロット仲間たちのやりとりを見て、やがて若い学徒兵が手にした端末の中の画像に見入る職業軍人だ。何やら興味津々なさまでのぞいてくる大柄なマッチョマンに、小柄なのがコンプレックスな若者はこれをちょっと意外そうに見上げる。

「え、かまいませんけど、見てどうするんですか? リュウさんはキャノンがあるんだからこんなの見たってどうにもならないでしょう……??」

 パッドにはMSの各種の操作系の複雑なコマンドモードでびっしりと埋め尽くされるが、これを解除して初期の出撃段階にまで設定を戻すとかろうじてこれがキャタピラ走行の重砲タイプの操縦システムだとわかった。皮肉屋の青年から言わせればぶっちゃけ肥満体型となる同じキャノンの正規パイロットは、なぜだかマジマジとこれを見つめながら答える。


「……いや、場合によってはこっちに乗り換えることにもなるかもしれないだろう? 戦場じゃイレギュラーが付きものだ。逆におまえがキャノンに乗ることだって十分にあるんだから」

「おれがキャノンに? でもそれって……?」

 あまりいい理屈が思い浮かばないハヤトに、横合いから皮肉屋が茶々を入れる。

「それってオレやリュウさんが死んじゃった場合ってことよね! でもセイラさんやスレッガー大尉がいるんだから、ハヤトに乗れなんて言うヤツいるのかな? オレはどっちでもいいけど!」

「わからないだろう」

「やめてください!」

 ケタケタと笑うやせぎすの軽薄男に、小柄と大柄のぽっちゃり体型が真顔で苦言を呈する。ちょっと雰囲気が悪くなりかけたところに、またそこで新たなる気配、高い声色の声が上がった。

「あのっ……!」

 中肉中背のこれもまたいまだ若くした青年だ。
 ハヤトと同じ年齢の、パッと見なら少年の部類か。
 これにその場に居合わせた誰しもがはっと意識的に息を潜めるのだが、これを敏感に感じ取る彼自身はちょっと困惑したさまで仲間のパイロットたちを見返す。

 このときにはもうニュータイプとして広く世間に認識される若きエースパイロットだ。だが現実は、およそこの風貌からはそうとはわからないほどに弱々しくした年頃の男の子であった。

 若干15歳にして数々の戦功をあげた天才パイロット。

 アムロ・レイ

 戦争の行く末すらも左右しかねない宇宙世紀における新たなる人類の先駆け、だがその彼は、皮肉なことに出身は地球、アース・ノイドであったという。

                後編に続く――

『ドレンとガイア』③

 

ストーリー NO.4

 サイド3(たぶん)にて…

Scene1


 俺の名は、ドレン。
 
 ジオン宇宙攻撃軍の士官だ。
 これでもムサイ級戦艦の指揮を執るくらいの立場にはある。
 そこそこ、偉い……はずだ。
 あ、おかげさまで最近、昇進もした。
 
 おほん!

 シビアな戦場を生きる軍人も、いざ軍艦を下りたらプライベートでは自前の居住地にいるわけだが、あいにくとそんなに豪勢な生活をしているわけではない。
 ま、現実なんてそんなものだ。
 とは言えで軍からの補助もあり、一人住まいにしてはそれなり広い場所に居を構えてはいたりする。幸いにも。
 ただしそう、こんないい年こいたおじさんの一人暮らしは、やはりしんみりとしたわびしいものがあり……。

 ん、誰か来たみたいだな?

 普段は鳴るはずのないチャイムが鳴って、リビングから不審に思いながら玄関へと向かう俺だ。ここに客人なんて来ることは希だから、てっきりくだらないセールスかと浮かない顔を出すと、そこには誰もいなかった。
 あ、いや、視線が合わなかっただけだな?
 気配は感じてこの胸元へと視線を落とす俺だ。
 ああ、やはりいた。いやがった。

「……!」

 客はセールスのたぐいではなかったが、あいにくと歓迎されないことには変わりがなかった。あまり背が高いとは言えない来訪者は、むっつりした顔で間近からひとを見上げてくる。

 う~む、目つきがおよそかたぎの人間のそれじゃないな?

 いいトシのオヤジが。おまけぶすりとしたとにかく愛想がないさまでぶっきらぼうに挨拶を発してくれるのだった。

「よう。来てやったぜ? どうせヒマしてるんだろ。なら遠慮なく邪魔させてもらうぜっ……よっと! 入り口でわざわざ靴を脱がなきゃいけないってのは、なんかめんどくせえよな?」

「また来たのか? 勝手に決めつけるな。誰が上がっていいと言った? おい??」

 小柄でも職業柄に普段から鍛えてるマッチョは突貫力がある。 
 そんなものだからひとの身体を真正面からこじ開けて当たり前みたいに廊下を闊歩しだした。一直線に。スリッパも出してないのに何食わぬ顔してリビングにまっしぐらだ! よもやジェット・ストリーム・アタック!だなんて言いやしないよな?

 ふざけやがって……!

 内心で舌打ちしながら廊下からリビングへと戻る家主に、招かれざる客はまるでそこが定位置みたいなさまでこの一角にペタリと尻をつける。靴を脱ぐ脱がないで胸ぐらつかみ合ってた頃よりかはだいぶマシだが、完全にルーティーン化されてしまったこの現状を果たして納得のいかぬままに立ちすくむ俺だった。

 なんでこんなことになったんだ??

 まったくちまたじゃ黒い三連星だなんて褒めそやされている凄腕のMSパイロットさまが、あろうことか無断で家宅侵入してきやがる。

 こんな白昼堂々、おまえこそがヒマなんだろうに?

 言えば近頃じゃいつものことなのだが、なんの前触れもなくズカズカ上がり込まれるのにはいささか迷惑して顔つきがこわばるこちとら年季の入った戦艦乗りだ。

 う~ん……!

 低いうなりを発しながら渋々とこの隣に腰を落とす俺は、つけっぱなしだったテレビモニターの音声を邪魔にならないくらいに落としてどうしたものかと思案する。
 本来なら通報案件だろう?
 するとひとの気も知らないで勝手に横であぐらをかいてくつろいでるMS乗りのオヤジが、それまで小脇に抱えていた包みをこの鼻先に不意に差し出してくる。
 相変わらずのコミュ障ぶりで、抑揚の低い不機嫌な声で言うことが振るっていた。あれ、ツンデレとかじゃないんだよな?

「……ん、出すのが遅れた。差し入れだ。上等な酒と、うまい缶詰。良いつまみになるぞ。どっちも保存が利くしな……」

「ああ、そいつはどうも! って、勝手に上がり込んで酒盛りしようってのか? まったく……あ、ほんとに高級品だな! ブランデーに、コニャック、いや、ウィスキーか? しかも地球産ときた! こんな御時世じゃ軍の上級将校くらいしか手に入らないものだろう! まさか……」

「勘ぐるな。その上級将校さまからじきじきにもらったもらいものだ。誰かはあえて言わないが……! ま、あるところにはあるってことだな。ならせいぜいありがたく思え」

 いかつい真顔で意味深な目つきを差し向けてくるのに、さらにいかつい軍服姿のご尊顔がこの頭に思い浮かんで納得だけする俺は、それでもまだ意外そうに聞き返してしまった。

「なるほど! あ、いや、でもだったらおまえらでやればいいんじゃないのか? こんな贅沢品、わざわざこんなとこに持ち込まんでも? 三人で盛り上がるのにちょうどいい量じゃないか。さすがあちらもわかってらっしゃる! ここらへんが現場のヤツらに好かれる理由なんだろうな、あのバカでかモンスター、ん、もとい、ボスザルどのの? いっそ人間ビグ・ザムが妥当か?」

「おまえ、それみんな悪口だろ? いくら言い直したところで? まあかまわないが、懐の深い小山の大将さまも、およそすべてを把握するまでには至らないってとこだな。そう、このオレはいいとして、あいにくオルテガのヤツはまったくの下戸だ」

「ウソだろ!?」

 ちょっと目をむいて不機嫌な白人系のオヤジの顔を見返してしまうこちらヒスパニック系のおじさんだ。

 だってそうだ! 黒い三連星と称される三人組の猛者たち、こいつらが戦場どころかこの日常でも生活を共にしている、いわゆるシェアハウスで共同生活を送っているのは聞いてて知っていたが、よくよく聞いたらおかしなことだらけなのだ。
 性格荒くれたヤクザものが一つ屋根の下に三人もそろっているのがまずアレなのだが、世間一般がイメージするところのシェアハウスとはおよそすべてがかけ離れているらしい。
 あんなのハウスじゃない。

 図体が一番でかいくだんの大男は大酒飲みの大食漢と誰がどう見ても認知されるべきところ、飲めないとは、詐欺にひとしい。
 おまけにまだ続いたが、お次はなんとなくわかるものではあった。いや、普段の澄ましたイメージとはまるで違うか?

「一滴も飲めねえんだよ。あのツラで! もう一方のマッシュは酒癖が異常に悪い。こっちはむしろ一滴も飲ませられないくらいにな? 飲むとどうなると思う?」

「あんまり想像がつかないが、想像しないとダメか?」

「地獄絵図だ」

 お手上げだな。ただの一言発してそれきり暗い目つきでどこともつかない天井を見上げるMS小隊隊長に、とりあえず納得してありがたく土産の入った包みを受け取る俺だった。

 あっと、グラスはどこだったかな? 缶詰はまんまでいいとして?

 散らかってるキッチンのあたりを見ながらこんなおっさんふたりが昼真っから酒盛りやっていいものか本気で思案しかけるが、いいやそれがまだ早いことを知らされる。そりゃそうか。
 凄腕パイロットめがここに来た理由がただ酒をひっかけたいだけじゃないこと、はっきりと思い出させてくれるのだ。
 そういやこのテーブルの上をかたづけるのが大変だったな。
 おまけにまたさらに散らかってしまうわけで。
 果たしてひげ面のオタクが言った。

「おい、このオレの作りかけのガンプラはどこにある?」

 
Scene2


 ある日、ひょんなことから地元のコロニーの町中で偶然に知り合った、重MSのベテラン・パイロット。

 その名は、ガイア。

 まるきりの有名人だな!
 黒い三連星の異名は敵味方を問わずに戦場に知れ渡る。
 それはお互いいいトシこいてガンプラが共通の趣味だとかいうおやじ同士の腐れ縁のはじまりだ。

 言えばひどく馬鹿げていたが、このジオン公国の軍人である俺にとり、これまで推しへの推し活しか生きがいのなかった戦場という日常に、ほんのささやかながらもある種の変化をもたらしつつあった。それは温かな……何かしらだ。

 平日の午後。

 殺伐と散らかったリビングで、地味な見た目をした中年のおっさんが何故かして、ふたりきり……!

 本来は招かれざる客、ガイアはむっつりした真顔でこちらを見つめてくるが、これに真顔で俺も応じるのだった。
 かつてヤツが勝手にひとの家に持ち込んだ私物のありかを聞いてきやがるのに、そんなものはなから聞くまでもないのだから。

「ああ、テーブルの下、すぐ足下にまとめて置いてあるだろう? まったく勝手に物置にしやがって、邪魔なことこの上ない!」

 目でガラストップのテーブルの下を示しながら文句を言うに、ああとうなずきながら何食わぬさまでみずからの足下をごそごそとやりだす小太りなオヤジだ。まったく透明なんだからそんなの見りゃわかるはずなのに、まだ不機嫌なツラで言い返す。

「うん? なんだ、へんな布きれが被せてあったから見落とした。どれ、ふうむ、前回のままでいじってないんだよな?」

「いじっていいのか? 前にも言ったがこの俺はオタクでもなければおまえみたいなガノタでもない。従ってヘタなことにはそうそう首を突っ込まない主義なんだ。あっと、塗料で部屋を汚さないようにちゃんとそっちの新聞紙を敷いてくれよ?」

「了解。つうか、これっていつの新聞だ? 相変わらず不景気なことばっかり見出しになってるが……まあいい、そういや腹が減ったな? まずは腹ごしらえをするか」

「あ、酒盛りが先か? 良い酒飲んじまったら気分が良くなってそれで終わっちまいそうだが、それに肝心の手元があやふやになって細かい作業どころじゃなくなるだろう?」

 作りかけのプラモの箱に入っていたこまごましたパーツをその手に取りだしかけて、ふとそれを元に戻すドムのパイロットは、そこでおもむろに立ち上がったりする。不審に見上げる俺を見下ろしながら、何食わぬさまで言うのだった。当たり前みたく。

「誰が飲むなんて言った? ただの腹ごしらえだ。悪いが台所、使わせてもらうぞ。はっ、このひとりもんのろくでなしが、冷蔵庫、またゴミためみたいになってないだろうな?」

 ブチブチと文句をたれながら、勝手にひとさまの台所に入り込んで、冷蔵庫をガチャリと開けたりするまことに独りよがりなパイロットさまだ。来てからまったく悪びれることがない。
 それだから呆れた顔で見つめる俺を振り返って、あちらもまた呆れたさまで言ってきやがった。

「ろくなものが入っていないな? 野菜と肉は切らすなと言っておいただろう? 安い冷凍ものでいいんだから、それなら保存も利くだろう。この卵はいつのやつだ?」

「いちいち覚えているもんか、腐ってなければいいだろう! 冷凍ものは下のほうにまとめて置いてある。あと常温で保存が利くドライフードが横のラックにあるし、なんなら軍の支給品のレーションだってあるだろう? 不足はないはずだ」

「お、ほんとだ。よしよし、これならそれなりに作れそうだな……!」

 食へのこだわりなんてほぼ皆無の一人暮らしのおっさんに言っても仕方がないようなことをブチブチとぶうたれる、雰囲気こじゃれたイタリア系おやじだ。イケメン気取りが時々鼻につく。
 来るたびに物の配置を変えやがるし。

 挙げ句にこっちはいやいやで応じてやっているのに、まるでじぶんの家よろしく他人のキッチンでガチャガチャと仕事をやりはじめるのだ。遠目にも慣れた手つきで食材をさばいていく。

 はあ、もっともらしげな顔つきといい、普段の見慣れたパイロットスーツじゃないからパッと見じゃただの料理人みたいだな?
 そんな性格何かと難ありの歴戦の勇者さまに、こちらは手持ち無沙汰でどうしたものかと考えあぐねる副官の艦長代理だった。

 トントントン、ガッガッガ、ジャアアアアアッッッ!!!

 中華か? いやイタリアンだよな?? まあおっさんのそれであれ、うまい手料理が食べられるのはありがたい。ありがたいのはありがたいのだが、これってなんなんだ?

 その人となりががさつで乱暴なイメージに似合わず、人並みかそれ以上に家事全般に長けているという中年の軍人パイロットの背中をはたと見つめてしまう俺だった。
 なんか謎の時間だよな!
 おまけ何の気なしに思ったことをまんま口にしてしまった。

「そういや、三人で同じ屋根の下に寝泊まりしているんだよな? ひょっとして、食事は全部おまえが作っていたりするのか?」

「あん、他に誰がやるんだ? 食事だけじゃない、掃除洗濯、あそこでの日常における家事その他諸々はこのオレが主に取り仕切っている! ふん、でなけりゃあんな社会不適合者どもとまともな生活が成り立つものか……」

「確かに、だが意外だよな? あの泣く子も黙る黒い三連星のガイアさまが、まさか家事が得意だなんて! そりゃ手先が器用なのは知ってはいたが……!」

 精巧なガンプラ作るのが趣味だなんてそれだけでも驚きなのに、いろいろと多彩な特技を持ち合わせているエースパイロットを目の前に、果たしてこれと得意なものが見当たらないひなびた軍人のおじさんは遠い目つきとなってどこともしれぬ天井を見上げてしまう。推し活は特技だなんて言えないもんな?

「どうせならおまえにも教えてやろうか? 少なくともあいつらよりはスジが良さそうだ。そのガンプラと同じでな! なんならうちに来てみればいい。みんなで歓迎するぜ?」

 こちらからは見えない手元で手早く一品料理を仕上げながら皮肉っぽいにやけヅラの横顔を見せる客人に、リビングで尻をつけたままの亭主関白な主は口元をひん曲げて言葉を濁すばかりだ。

 ちくしょうめ、もういいニオイがしてきやがった……! 

「ん、コワイから遠慮しておく。もとより血に飢えたオオカミどもの巣にひとなんか招き入れるな! 訴えられるだろう?」

「はん。確かに驚かれはするな? そう時々来るバカなセールスの営業どもをまずはこのオレが真顔で出迎えて牽制して、次に片目のヤクザヅラしたマッシュがビビらせてこの足下をすくい、最後のだめ押しで図体でかくておまけ化け物ヅラのオルテガの野郎にとどめをブッ刺さされて、みんな這々の体で逃げ出していく……わはは!」

「堅気(かたぎ)の人間にジェット・ストリーム・アタックなんかかけるんじゃない!! トラウマになるだろう? 戦場でもあるまいに、そんなんで軍にクレームが来たらどうするんだ! めんどくさい、最終的に文句を言われるのは現状、この俺だったりするんだろうが?」

「悪いな、その時には世話になる。その代わりと言っちゃなんだが、今はこうしてこっちが世話してやってるんだから、まあギブ・アンド・テイクってヤツだろう? ほら、できたぞ……!」

 両手に持ったプレートにうまそうに湯気が立つ料理をこんもりと盛り付けて差し出してくるもはやがっつりプロの料理人だ。
 はあん、これってこうやって料理するんだ? なんて内心で感心しながらもはやろくな文句も言えなくなる俺は、目の前に広げた新聞紙の上のプラモを奥に追いやって銀色の皿のブツを迎え入れる。自然とツバが出てきた。腹も鳴る。

 さっぱり名前がわからないがうまいことには間違いないのは、見てくれとニオイが保証してくれている。太鼓判だな。

 袖無しのジャケットの胸ポケットから取り出したナイフとフォークを一人前この目の前において、みずからも席に着く凄腕パイロットは、ちょっと自慢げにこちらを見やって言った。

「味はもちろん、見た目も悪くねえだろう? 叔父貴が料理人だったから、若い頃はしごかれたりした。あいにく途中で脱走しちまったが、ひなびた店を継がせたかったのかもしれないな? 今となってはもうあるのかないのかもわからないが……」

 ふうん。戦争で家族を亡くしているとは聞いていたが、そのおじさん自体はどうなんだかわからないな。初めて聞いた話だ。
 万一にもどこぞのサイドのコロニー群だったなんてことになったら最悪だから、話は広げずにテキトーな相づち打つ俺だ。

「ほう、今からだって遅くはないんじゃないか? 黒い三連星のドムドムレストラン! だとか、いくらでも客がつくだろう。命知らずな物好きが! 軍人は金の使い道が限られるんだ」

「あいつらのツラを見て言っているのか?」

「すまん。冗談だ。前言撤回!」

 口さえ聞かなければイタリア料理の頑固店主で通りそうなこの男はさておき、後の連れたちはどこをどう見てもアウトローなヤクザ者どもだ。客商売なんかできるわけもなく。

 よってはなからそんな気もないだろうトリオのリーダーもみずからの手料理のパスタを一口ほおばって、しきりと納得しながらうそぶくのだった。

「我ながら上出来だ。食えよ。ふん、しょせん堅気には縁のないヤクザもんだ、オレたちってのは。だからせいぜい今のうちに金を稼いで、後は悠々自適でコロニーやら地球やらを見て回るってのがいいだろう。どうせ世の中、争いは尽きないんだ……!」

「ああ、前にも言っていたな、フリーランスのMSパイロットで余生を過ごすのか? これも前に言ったが、できるかそんなこと?? よしんばまんまと自機のドムをかっさらっても、そんなもの弾薬の補給やら機体の維持やらに金がかかって仕方がないだろう! およそ現実的じゃない。まだ流しの料理人のほうが現実味が……いや、あのふたりを連れていたらどこでも修羅場になるな。今のうちに蓄えをしこたま積みましておくのが最善策だ。それ以外は推奨できない……おまえ、けっこうな負債を抱え込んでいるんだな? やつら戦場では頼りになるが、シャバでは……」

「いいからさっさと食え。冷めちまうだろう」

 冷めた目線で一瞥くれてそれきり黙々と食事に集中する凄腕料理人、もとい歴戦のパイロットだ。俺も言われたとおりに目の前のプレートに意識を向ける。おんなじ食材を使ってこうも変わるのかと内心で驚嘆しながら一口ほおばった。

「うまい……!」

 代わり映えしないただの日常が無愛想なおやじによってちょっとだけ色づく。目の前で推しを推している時の興奮とはまた違った穏やかな居心地の良さを感じつつある俺だった。
 おまけにうまい酒まであると来ている。
 退役したらこんな生活もいいもんだなとぼんやり思ったりしかけて、したり顔する隣のベテランパイロットと目が合って微妙に気恥ずかしさに視線をそらしてしまう。

「こうやってあいつらの胃袋もつかんだのか? そりゃなつきもするだろうな。ずるいヤツめ!」

「戦略家と呼べ。腹が減らないヤツはいないからな。おまえもこのオレのジェットストリームアタックの餌食だってことだ。たらふくお見舞いしてやるぞ、覚悟しろ!」

「だからあの手土産か? 本当の戦略家じゃないか! やばいぞ、酒の力も加わったら無条件で降伏勧告を受け入れちまいそうだ! 反則過ぎるだろう、こんな波状攻撃?」

「ふふん、いい夢見させてやる!」

「何を言っているんだ? ……あ、悪い!」

 うまい料理にテンションが高くなっていたのか、不覚にも尻のあたりから低い破裂音が鳴って、飲んでもいないのに顔が赤くなる俺だった。おじさんの悪いクセだな。出物腫れ物所嫌わず!

 苦い笑いで受けるオヤジはひげ面の口元をかすかに緩める。
 なんか嬉しそうだな?

「それしか取り柄がないのか? まったく大した肥満おやじだな! だがお互い様だから文句はない。うちじゃ誰も遠慮しないからな! 礼儀だなんてどこ吹く風だ」

「そう言われると何だか楽しそうだよな? ちょっと行ってみたくなった……いやいや、だまされちゃダメだ! わるいオヤジの言いなりにはなるまい、くわばらくわばら!」

「言っておけ。おまえはもうオレの術中だ。完食するんだろ? これまで残したことないし。お代わりだってまだあるしな」

「わかった。降参する。もう好きにしてくれ。悔しいがうちのキッチンはおまえさんの占領下だ。……ん、今、屁こいたか? ならもっと音を立てればいいだろう、そんなすかさないで??」

 思ったままを言ってやるに、あちらもちょっと顔を赤らめてひげヅラをそむけたりする。ほんとにお互い様だな。文句はない。

「おまえ、デリカシーがないよな? 良く聞いてやがる」

「俺みたいなおやじを相手に照れるのがどうかしてる。ひとのケツは平気でもみやがるのに! だが食事中は控えたほうが無難か。わかった善処しよう。あとひとつ付け加えるならば……」

「?」

 真顔で向き直る俺に、あちらも怪訝な顔を向けてくる。
 まだ顔が赤いな? おじさんがどうして照れるんだ。

「礼を言う。うまいものを作ってくれてありがとう。言ったことなかったよな? そういや彼女でもあるまいにだ?」

「……! おまえはやっぱりデリカシーがない……」

 微妙な顔つきのジェットストリームアタッカーにきょとんとなるベテランの臨時艦長職だ。よくわからないままにまた余計なことを聞いてしまう。

「あれ、またこいたか? トイレならあっちだぞ??」

「ぐ、おまえはほんとうにデリカシーがない!」

「???」

 代わり映えしない日常はにわかに色づき始める。
 ちょっとした連帯感を感じ始めるおじさんたちなのだった。
 ただしこの前途はまことに多難なものながら……!



 プロット
ドレンの自宅(ぼろいアパート? 1LDK?)
ガイア出現 酒を差し入れ ガンプラを製作
喫煙者 酒飲み オルテガは下戸 マッシュは酒癖が悪い
ガイアは家事全般が並以上にできる。黒い三連星はシェアハウスで共同生活。厳密にはMS運搬用のビッグトレーラーでコロニー間を移住している?軍を退役したら、愛機のドムを退職金代わりにいただいて三人でMS乗りとして生活していく約束をしている。ドレンにはできるわけないと言われる。
ジェットストリームアタック

戦士たちの日常 WBにて…     ① Scene2

ようやく登場! 本来の主役のアムロ・レイくんですw ただし本作二次創作世界においては出番はだいぶ控えめの予定www


Scene2

 見た目まだ若い少年の登場に、その場にいたおなじく若いクルーたちの空気がかすかに変わった。
 はっきりと意識はしないまでも、それぞれがMSのパイロットであったからこその微妙な機微みたいなものがだ。
 それは尊敬や畏怖、嫉妬のごときものであったか?

 そんな場の空気を敏感に感じ取ったものらしい、見た目がいかにもナイーブで華奢な少年はちょっと戸惑いがちに言うのだ。

「みんな、どうしたんだ? なんだかやけに暗い感じがするけど……?」

 誰も楽しく談笑なんかしてやしない。
 それまでピリついていたのは確かだ。
 しかしだからと言ってそれをはっきりと言葉にするのは誰しもはばかられたし、無理にごまかしても目の前の勘の鋭くある青少年はそれすらも見抜くのだろう。

 もとよりひとから言わせればエスパーだなんて言われてしまう特異体質(?)の持ち主だった。時としてこの対応に苦慮するのはこの艦の若い士官の艦長を見ていても明らかであり。

 よってはじめみなだんまりするのだが、身体つきのゴツい先輩パイロットごしにこれを見るハヤトがぶっきらぼうに答える。

「別に、どうもしないさ! ただまじめな話、困っているんだ。わかるだろ。そっちこそ顔色良くないんじゃないのか、アムロ? いいや、おまえってばいっつもそうだよな……」

「え……?」

 元はクラスメートで民間人出身の若いパイロット仲間だ。
 戦争に巻き込まれてどちらもやむなく今に至るという。
 それがどこか険のある言いようをはっきりと感じて、思わず困惑するエース級パイロットは二の句を継げなくなる。

 するとようやくその場でとりあえず最年長の若い職業軍人が、気まずげに場をとりなすように口を開いた。

「いいんだ、気にするな! それよりもアムロ、もうトレーニングルームから出てきちまったのか? ちゃんと体力つけないといざという時に後悔することになるぞ、いくらMSの操縦センスがあるからって! いつも言ってるが、戦場で最後にものを言うのは揺るがぬ精神力とそれを支えるみずからの肉体だろう? だったら……!」

 ちょっとお説教じみているリュウの文句には、どうにも浮かないさまであいまいな返事をするアムロだ。

「そりゃ、わかってますけど、あんまり得意じゃないんです。それにリュウさん、おれを置いてさっさと出ていっちゃうし? 周りのみんなの目が気になって、集中できなくなるし……!」

 十代の多感な年頃の言い訳に、するとおなじく多感な青少年が食ってかかる。これにも不可思議そうに目を丸くするアムロだ。

「気にしすぎなんだよ! 確かにすごいのはわかるけど、だからってみんな頑張っているんだから、おまえがそんなんじゃあさ、余計にこっちがみじめになる!!」

「え、ハヤト、何を言ってるんだ?」

「だからほら、そういうところなんだって!!」

「ハヤト、おまえもだろう? 他人のことを気にしすぎているのはっ……ふぅ」

 普段からみんなの兄貴分として回りを良く見ているにつけ、その心の内や根に持っているものはそれなりに理解ができる。
 ただでさえこどもは、はっきりとそれを表情に出すのだから。
 軍人として訓練を受けていた彼からしたらどちらも幼かった。 
 それだからちょっと困り顔で背後に視線を向けるリュウに、いまだ不服そうな顔のハヤトは舌打ちして視線を背ける。
 やはりこどもだ。
 気持ちとしてはかわいい弟分たちなのだが、やむなくまた前に向き直るリュウの兄ちゃんは、次にアムロに向けて言ってやる。
 なかば仕方もなしにした仲裁だ。

「多少は周りのやつらのことも分かってやれよ? できるだろ、おまえなら。ならおまえさんももう一度トレーニングに戻れ。食も細いし、からだつきも華奢なままじゃこの先は乗り越えられないだろう。敵の本拠地に近づくほど、戦いは激しくなるんだ」

「え、でも、向いてないんですよ……! 戦争なんて、それにモビルスーツだって、好きで動かしているわけじゃないんだし。みんなが乗れって言うから、でも特殊なのはこのおれじゃなくて、おれが乗っているガンダムなんだから……!」

「だがそのガンダムをうまく動かせるのはおまえだけなんだろ? ブライトもそう言ってる。セイラさんやミライさんだって……」

「まあまあ! みんなそうピリピリしなさんなって! 気が滅入っちゃうでしょう? 明るく明るく! 何であれみんなおまえさんに期待してるんだから、そんなむずがることないじゃない、アムロくん?」

「カイさんは調子が良すぎるんですよ!」

 軽薄な笑みでその場を取りなすもうひとりの兄貴分、カイのわざとらしいほど陽気なセリフに、いい加減嫌気がさしたみたいなしかめ面のハヤトが噛みつく。おやおやと肩をすくめるのに、気持ちが収まらない小学生みたいな小柄な見てくれの青年はみずからの端末とひたすらにらめっこする。
 ついには吐き捨てるように言うのだった。

「もういいですよ! みんなほうっておいてください。お互いに余計なことに気を回してる余裕なんてないんだから!」

「ハヤト……? ああ、そうか……」

 同い年のパイロット仲間の様子をはじめ怪訝にばかり見ていたエースパイロットの少年は、やがて何かしら合点してじぶんよりもさらに年下に見られがちな幼なじみに向き合った。

「ハヤト、それ、新しいタンクの操作マニュアルアプリケーションだろ? 実戦の動作シークエンスを組んでいるんだ? でもあまりうまく行ってないんだな? だったら……」

「そうだけど、なんだよ?」

 顔を近づけてこちらのタブレットをのぞき込んでくる天才シミュレーターにちょっと気圧されて身を引く小太りくんだ。これに細身の中背がなおのこと身をかがめて利き手を潜り込ませる。
 相手の是非も聞かずに手早くピピピッと操作コマンドを入力。
 まったく抜く手も見せないあざやかな手さばきでだ。

「アムロ、どうしたんだ??」

 傍で意外そうに見ていたリュウがカイやハヤトと目を見合わせて彼の手元のパッドに見入る。

「あっ、何を勝手なこと! 何をするんだよっ、ひどいぞっ、なんだよ、これ……??」

 横から奪われた操作端末にぎょっとしながら、慌ててこれを手元に取り戻して様変わりした画面の液晶表示に目を白黒させるハヤトだ。太い眉を逆立てて幼なじみを見上げるに、だがいささか悪びれるでもなく真顔のアムロは淡々と言い放つ。その意外なセリフに絶句するハヤトはリュウやカイに視線で助けを求める。
 しかしそれが無駄なことをすぐにも悟った。

「だから、ほら? 後付けのブースターで機動力がいくぶんか上がったからって、ハヤトのはあくまでのろまなタンクがベースじゃないか? ましてコアブースターやガンキャノンほどにも機動性があるわけじゃないんだから、速さじゃなくて本来の攻撃力と防御力を主軸にしてコマンドを組み立てたほうが性能を引き出せるのさ! 無理に前線なんかに出てこなくても?」

「そんなっ、それじゃわざわざ改装した意味がないじゃないか? おれだって装備がまともならみんなの役に立てるはずなのにっ」

「いやいや、後方支援だって立派な戦力なんじゃない? 敵味方が入り乱れる乱戦状態じゃ、あのタンクのでかすぎる火力って考え物だしね! それにハヤトは性格が落ち着いててスナイパーとしてはかなり見所があるじゃない? 慌ただしい接近戦なんかよりは格段に! そういう性分なんでしょ」

「ああ、いや、確かに、そのほうがこちらもやりやすいのかもしれないな? みんながみんなガチガチのストライカーなんてのよりか、防御と攻撃のポジションを使い分けられるボランチ、いわゆる伏兵ってヤツか……!」

「ええ。おれはそのほうがやりやすいです。だからハヤト、無理にあのかさばる機体で動きながらよりも、おれたちとホワイトベースの間で中継と援護射撃のほうがタンクの性能を活かせるよ。機動性は二の次でいい」

「そんな、勝手に決めつけるなよ! え、でも、そうなのか?」

 うろたえてマジマジと手の中の端末に注視する若いパイロットの目つきが、しかしながらじきにしっかりと定まってくる。
 傍から見ているリュウもそれを認めていた。すっかり迷っていた方向性が彼の助言により定まりつつあることを予感させる。

「いわゆるニュータイプのカンってヤツか……! 合っているのかもしれないな? ハヤト、俺からもブライトに言っておくよ。作戦を組み立てる上で重要な柱になるかもしれない、今後のな」

「ははん、良かったじゃない、いざとなったらけっこうな見せ場、フラウやセイラさんに見せられるかもしれないぜ? 誰も文句のつけようがないってくらいの!」

「?」

 軽薄も軽薄、おまけ意味深な目つきのカイの軽口に、きょとんとするアムロだが、ハヤトは苦い顔で反発する。

「やめてくださいよっ! そんなんじゃありませんっ、タンクは航続距離があるんだから、そればかりだとは限らないでしょう? そうだよ、でもアムロ、おまえからの忠告は素直に聞いておくよ。おかげで少しは考えがまとまったかもしれない!」

 じっと手元を見つめてから、ちょっとだけすまし顔でともだちを見上げる少年だ。それからまた素直に付け足しもした。

「ありがとう……!」

「ああ、うん。お互いがんばろうな……!」

 ピリついていたふたりのあいだの空気が穏やかなものへと変わっていく。やっぱり幼なじみの同級生だ。
 するとこれを傍からめでたげに見ていたでかい影の大男も、したり顔して大きくうなずくのだった。

「良かったな、ハヤト。おまえの迷いが晴れてこの俺も嬉しいよ。あとアムロ、ちゃんとパイロットとして体力トレーニングはやろうな? 俺もつきあうから」

 穏やかな笑みでやさしくうながすリュウの言葉には、えっと大きく目を見開くアムロだった。傍で聞いてたカイに茶化される。

「え、まだやるんですか? リュウさんも??」

「はっは、えらいひとに捕まっちゃったな? アムロは持久力が唯一の弱点ってヤツだから! ちゃんと克服しないとね?」

「おまえも来るんだよ」

「当然ですよね?」

「あらら……!」

 冷たい目つきで巨漢と小僧に見つめられて、軽薄な痩せ男が天を仰ぐ。新たな戦いがすぐそこにまで迫っていた――。

宇宙(そら)のフロントライン リック・ドムの黒い三連星 ①

黒い三連星仕様の宇宙戦型リック・ドムのイメージ…!
リアルタイムに書き換えていきます(^o^)
黒い三連星(ガイア・マッシュ・オルテガ)専用
「リック・ドム・三つ星カスタム」

 ついにMS戦がはじまりました!
 大丈夫なのか??
 ガンダムのカスタムデザインまだできてないのに!?

Scene1


 進路転進、マイナス60、MS隊出撃準備……!

 ムサイ級の艦内。
 薄暗く照明の落とされたブリッジ内に、第一次戦闘態勢突入を知らせる警報がやかましく響き渡る。
 メットをしていてもガンガンと頭に響くうるささで、MSデッキとの通信も阻害されるのには毎度ながら嫌気がさした。

 まったくどうにかならんのか?

 顔つきが自然と苦くなる。出撃待機中のMSが出るまではこのままなのはわかっていたが、できたら止めてほしかった。

「ふんっ……MS隊、ガイア隊、各機、準備はできているんだな!?」

 内心で舌打ちしながら艦底のデッキで待機しているパイロットたちへと檄を飛ばすこの艦長代理ことこの俺、ドレンだ。
 本来の艦長である少佐は背後のキャプテンシートで場を静観している。ならばこのお手をわずらわせまいだな!

 専用の赤いMSで颯爽と出撃する推しをこのブリッジで見送って、その戦場での尊い勇姿を全力で見守るいつもの推し活とはだいぶ勝手が違ったが、これはこれで乙なものだとちょっととほくそ笑むおじさんである。そうとも、みずからの推しの存在を身近に感じられるあたりかなり胸熱なのだ。ふふっ……!

 はい、おっさんが気色が悪いとかいう意見は却下!

 とにもかくにも艦内警報がやかましくて仕方ないからさっさと出撃させちまおうと号令を発しかけたタイミングで、奇しくもそのデッキのほうから応答があった。半ばカウンター気味に。

 なんだよ、めんどくさいヤツだな?

 よそからの入電を知らせる短い電子音に眉をひそめてしまうが、警報がうるさいのを気にしてるらしいあちらもあちらでわざわざ画像つきで言ってきやがる。
 おまけにブリッジの上面のメインモニターにでかでかと顔面のどアップで現れる自己主張の激しさには、ちょっと腰が引ける俺だった。対してヘルメットのバイザーを上げてご丁寧に素顔をさらしてくれる汚いひげヅラだ。

「了解。いつでもいいぜ? てか、サラミス級が都合3隻、こいつをまとめてやっちまえばいいんだよな?」

「くっ、出たがりめ! 不細工なツラをでかでかと出してくるんじゃない、(シャア)少佐もいるんだぞ? 言いたいことがあるならこっちで聞く! 回線をよこせ!!」

 背後で見ている少佐の気をわずらわせまいとメインモニターの通信画面を一方的に遮断、横手にいる通信士からインカムを受け取ってそっちで受け答える。たく、もうあらかじめ用意しておいたほうが良さそうだな。軍内でも不良しぐさで有名な三人組の、このリーダー格で一番機のベテランパイロットは渋々な感じで切り替えてきた。ほんとにめんどくさい。

「ほらよっ、なんだ、やけに気が荒いな、ケツデカの艦長代行さま? さては推しが背後にいて緊張してやがるのか? いいおやじが任務に集中しろよ」

「なあっ、勝手なことを言うな! ケツデカってなんだ? 確かにでかいのかもしれないが、任務に差し支えはないだろう、そっちこそまじめにやれ!! あと他のヤツらも黙って出撃に備えろ、もういいからとっと行け!! おまえらが出ていかないとこの警報も止まらないんだからなっ!?」

 サラウンドでもあるまいにぎゃはは!と下卑た野郎どもの笑い声が二重にも三重にもインカムから響いて、これを叩きつけてやりたい衝動に駆られる。どうにか気持ちを抑えて冷静に応じた。

「ああっ……確かに、目下、我々が追撃している連邦の木馬に合流する目的とみられる敵の艦影が認められた。まんまと合流されては面倒だからこれを阻止するのが今回の作戦だが、こんなもの本来はこちらの仕事じゃない……!」

「追撃だもんな? だがこの宙域にはオレたち以外にゃいないから仕方なくってヤツだ、だがあの白いのがいないなら雑魚ばっかりだろ! ちょろい仕事だ。このオレたちからしたら?」

 自信たっぷりな良いように、よそからまた歓声があがる。
 ん、おい誰だ、口笛吹いてるのは? たく、ほんとに下品なおやじどもだな! 苦虫かみつぶした表情で舌打ちして返す俺だ。

「っ! あくまで敵艦の殲滅撃沈が目的なら他にも援護を出す! もちろん少佐以外のMS隊をだ!! だがのろいザクでは足手まといだとかぬかすんだろ? 迎撃に出てくるであろう敵のMS隊を潰してやれば、あっさりトンズラしてくれるさ! ならさっさとやることやって還って来い!!」

「ふん? ヤツらの木馬への補給が目的だったらそうそう簡単に済まないんじゃないのか? 四の五の言わずに墜としちまえばいい。なんなら練度が低い若手どもに手ほどきしてやってもいいんだが……ぼろいザクごときじゃ気が進まねえな? おい、前線担ってるんだからもっと新型の機体を調達したらどうなんだ?」

 見なくてもわかるにやけヅラのひげオヤジの戯言に、内心でイラっとしながら声高に答える。言いたい放題だな!

「弾丸も燃料も無限にあるわけじゃない! 貴様らは余計なことは気にかけずにやるべきことをやれっ!! 新型は少佐の専用機がじきに届く予定だ。まったく、あいにく練度が低い若手に貴重な新型機を回せるほどには我が軍には余裕がないんだよ、言いたくはないがっ……!」

 やはり苦虫かみつぶした表情だろうこちらの苦言に、あちらは果たして若干の間を置いてしれっと返して来やがった。

「ほう、察するに、それってなあのゲルググってヤツか? はあん、まあモノはそれなりいいんだろうがスピード重視で肝心の小回りがイマイチなんだろ? 気に入らねえな、むしろオレたちの09(ドム)だったら面白いのによ、派手な赤いヤツ?」

「悪いがそれはない! よりにもよっておまえ達なんかとおそろいなんてこっちが願い下げだ!! 俺の推しだぞっ、て、あ、聞かれちまってる! いいからさっさと行けよ!!」

「了解。さっさと済ましてくる。なあ、サラミス墜としたらなんかご褒美くれよ。酒でも缶詰でもかまわない、もしくは……」

 なんかほんとに好き勝手なことを言ってくれやがるふざけたエース級に、ちょっと皮肉をこめてこちらもにやけヅラだ。
 おまけこの語尾に若干の含むところがあるようなのはすっかり無視した。わからん。

「ん、もらいもので良ければな? いいからとっとと行け!!」

「了解! あとひとつ、燃料がどうたら言うのなら、この艦のカタパルトをザクでなしにこのオレ達の09用に改装しろよ?」

「うるさい、ドムって言え! ガノタが!! 健闘を祈る! 以上!!」

 インカムの通信をぶち切って通信士に突き返す。
 バカタレどもを追い出すのも一苦労だ。
 直後、三機のMS-09、もといドムの小隊が漆黒の冷たき海原をまっすぐに切り裂いて走る。
 いわゆるカタパルトの助走がないから自力での航行だが、かねてからの戦争の残骸だらけの暗礁宙域を苦もなく駆け抜ける凄腕の黒い三連星だった。

「……!」

 ようやくブリッジに静寂が戻る。

 俺はメインのモニターに大写しで映されるその三機のMSの後ろ姿に無言で敬礼を送って、そっとこの背後を振り返った。

 キャプテンシートにおもむろにその身を預ける若き英雄、シャア・アズナブル少佐は、これもまた無言のままにみずからの利き手をその額にまで寄せて、彫像かのようなクールな敬礼を決めている。周りのクルーたちもこれにつられるように敬礼を返していた。俺の時はやらないくせに。

 くうっ、しびれます! 少佐!! マジでカッコイイ!!

 かくしてごろつきどもの命を賭けた戦いと同時、この俺のおっさんのプライドを賭けた推し活の戦いもはじまった。

 激戦の予感……!



プロット
ムサイ級(シャア艦隊旗艦) ブリッジ 指揮ドレン 艦長シャア
シャアは艦長席にいる(今回は出撃なし MSはシャアザク? →新型機の納入待ち? ドム? ゲルググ? その他??)

出撃 黒い三連星(ガイア・マッシュ・オルテガ) 
サラミス級 3隻? MS 宇宙戦用ジム複数

Scene1でガイア機以下が出撃 ドレンとごちゃごちゃ
Scene2以降でMS戦

Scene2

 ホワイト・ベースの補給、援護用に出てきたサラミス級のMS隊のジムのイメージ、かなり雑ですけど最低限度このくらいわかればいいかな? くらいのヤツですw
 メインはあくまでガイアたち黒い三連星のドムカスタムなので、こっちがクローズアップされることはないはずなので!
 挿し絵でMSを描くのは苦労しそうですね(^_^;)

Scene2

 ◇PartA

 ムサイ級の巡洋艦が3隻からなる我らがシャア艦隊。

 その本来の目的は連邦の新型艦、通称・木馬の追撃討伐なのだが、強力な白い新型MSを擁する敵は手強く、かの若き英雄、シャア・アズナブル少佐の手腕をもってしてもこれを陥落せしむるには相当な困難をしいられた。
 そう、実際に現場にいるこの身からしても、それはただごとではないプレッシャーと危機感にさいなまれる日々だ。

 ただ今はやむなくしてこれとは別の敵艦を迎え討つにあたり、なぜだか心の内が軽くなるような、妙な気楽さや安心感みたいなのを感じているこの俺、ドレンであった。あいつら異常だ。

 黒い三連星だなんて異名を持つ凄腕のヤクザくずれ、もといMSパイロットが出撃してしばしの静寂に包まれる艦内。

 船の進路を変えてしまってこれに追いつくのがまた難しくなるんだろうな、なんてことをぼうっと考えていると、それが空気として回りに伝わったものか……?
 横からんんっと誰かが咳払いするのがわかる。
 それでハッと現実に立ち戻る俺だ。

 いかんいかん!

 チラリと背後をうかがうと、少佐はブリッジ中央も高くに据えられた艦長席に完璧なたたずまいでその腰を下ろしている。

 ならばわかっている。気配の主は、このすぐ左隣の男だ。
 若い下士官で操舵士のバルダに目線で了解の旨を送る。
 見た感じはいかにも軍人然とした屈強な体つきのおまけ無愛想なヤツなのだが、以外と気が利いたりする。時折この俺とパイロットたち、主にガイアとのごちゃついた通信を傍で聞いてクスクスと笑ってたりして。意外と愛嬌あるんだな? で、そんな褐色の肌をした精悍な顔つきの角刈りが真顔で聞いてくる。

「ドレン中尉。じきに大尉たちが標的の敵方MS隊と会敵するものと思われます。使いますか?」

「あ、そうか。済まない。本当に気がきくな! なら遠慮なく使わせてもらおう」

 何気ないさまで差し出してくれる操舵士兼、臨時の通信士だ。
 ま、都合でそういうことになってしまっているんだよな。
 渡されたインカムを装着しながら手元の作戦指揮コンソールに視線を落として状況を手早く確認。

 うむ。確かにもうじきおっぱじまりそうだな!

 背後で戦況解析に当たる情報士と艦長たる少佐が交える会話、通信士とMSパイロットとのあわただしいやりとりが交錯する。 

 「はじまるな……!」

 戦域の状況解析はひととおり終わらせてある。
 ある程度なら目をつむっていても把握できるし、その場におき的確な指示を下せる自信はあった。もとより言うことを素直に聞かない奴らではあるが、それなりに手助けはできるだろう。

 本来は操舵士のスペースに間借りして作った特設ブース?で無重力でも仁王立ちしてその時に備えるおじさんだ。
 すぐ隣でごくりと緊張した気配が伝わる。
 本来なら落ち着けとでも言ってやるべきところ、真剣なまなざしで正面を見据える若い士官に向けて頭を下げた。
 今更ながらちょっと気まずく思いながら。

「済まないな、バルダ? 正確にはバーダなんだっけか? 本来は曹長の場所なのに、こんな無理矢理に居座っちまって……!」

 気が優しくて力持ちって言葉がまさしくでぴったり合う青年は、かすかに笑ってこの太い首を左右に振る。

「いいえ、自分はかまいません。いざMS戦になってしまえば自分にできることは何もありませんから。少しでも中尉どのの助けになれば、それだけで! 必要とあらばなんなりとお申し付けくださいっ」

「悪い。じゃあ艦が揺れたりしたらこのおじさんが飛ばされないようにしっかり踏ん張っててくれ! 戦闘中は操舵士が一番体幹しっかりしてそうだから、遠慮なくしがみつかせてもらう!!」

「了解!」

 はっは、頼もしいったらありゃしないな! なんかおごってやりたいくらいだ。アホのガイアなんかじゃなくて? 

 近頃は言わなくても水も差しだしてくれたりする相棒の存在に今更ながらにありがたく思いながら、改めてブリッジから臨める暗い宇宙空間に目を細める。

 う~ん……。

 あいにくでここからでは遠すぎてその姿を確認はできなかったが、三機のドムは確実に敵陣深くへと迫りつつあった。
 ミノフスキー粒子はさしたる濃度がないので通信は生きている。やけに静かだが。今となっては良く見知った男の息づかいと、ぴりぴりとひりついた殺気みたいなものが目の前のモニター越しにもそれと感じられる俺だ。

「……んっ!?」

 事実、この直後に通信が乱れて呪いの言葉みたいなのがはき出されるのには目を丸くして戦慄してしまう艦長代理であった。
 予定では先制攻撃食らわせるはずだったのだが……。

 あれ、なんかしくじったか?

 思わず隣の操舵士と目を見合わせて、解析モニターにがばりと食らいつく。怖くて後ろは見れないおじさんだった。

 遠くの暗礁空域では混乱したオヤジどもの罵声が入り交じる。
 ガイアの顔が小型モニターの一角に映り込むが、鬼みたいな顔でこっちをにらみつけているのに思わずこの腰が引ける。

 うわ……! やべえな、完全に殺人鬼のそれだ。

 見ると隣の下士官ものけぞってた。あちゃあ、付き合わせて悪いな! マジでなんかおごってやるから勘弁だ。
 そのすっかり固まってる肩をがっちりと掴みながら、お互いにせいぜい気を落ち着けて状況に対処するよう努める。

 いまだ鬼みたいな形相のやさぐれパイロットが、おもっいきりモニターの中で中指立てているのに苦い表情でうめいた。くっ。

「悪かったな! 俺が悪いのか? いいから状況を教えろ!!」

 周りは撃沈した艦艇やら大破したMSやらの残骸のゴミだらけで光学センサーでは識別が不能だ。混迷を極める戦況に通信電波越しには口汚い罵詈雑言ばかりでらちがあかない。

 正面の巨大なガラスの窓越しに反射して見える少佐が艦長席からかすかに腰を浮かしかけているのを認めてほぞをかむ思いだ。
 なおさら操舵士の肩を掴む手に力が入るが、するとその真顔の好男子がすっと差し出してくる水入りのボトルを反射的に受け取った。いやそんな余裕ないんだが、流れでしかたなくだな。

 ボトルから突き出たストローをおもむろ口に含んで、冷たい水を一息に飲み下したら気分が落ち着いた。マジでありがたい。

 目が据わっているのが自分でもわかったが、その憮然とした表情のままでモニターの中でいきり立つエースパイロットにこちらも敢然と中指立ててやる。少佐から見えなければ構うまいだ。

「落ち着け! これでやられたらおまえらの責任だ。俺は悪くない。たぶん。死力を尽くして困難を乗り切れ! だから何があったんだ??」

 結果を言ってしまえばどうにかなったのだが、予想よりかだいぶ手こずったのが正直なところだろう。
 そうとも。おかげでめっぽうぶんむくれる小隊長どのの機嫌を取るのに苦心惨憺させられる、この中間管理職なのだから……!


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