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「オフィシャル・ゾンビ」12

オフィシャル・ゾンビ
ーOfficial Zombieー

オフィシャル・ゾンビ 12

※作者は特にリアルな現代劇の服飾系が弱いので、キャラの格好をどうするかとかいつも悩んでいたりします…! どなたかいいアイディアがあったら教えてくださいw

※まだ本エピソードはやりはじめたばかりです!
音声配信ライブで創作ライブやってます♡

オフィシャル・ゾンビ 12

 都内の一等地にある、某大手民放テレビ局の、ここは一階。

 全国にまたがる放送ネット網の中では「キー局」とも呼ばれる巨大で特徴的な造形をした建物の、その正面玄関口だ。

 この全面が大きなガラス張りをしたエントランスから繋がるロビーは、とかくだだっ広い造りをしていて、そこにはとかく大勢のひとびとがせわしもなく行き交う。

 みなが出入り業者や、番組に出演するタレントとその関係者、および局内の局員や番組スタッフなど、実にさまざまな職種の人間たちだ。

 そのひとの流れの絶えない出入り口の手前に、今は都合三人の芸人さんが、何故かおのおの何食わぬさまでぽつぽつとその場に突っ立っている。

 よりにもよってこんな目立つ場所で、それぞれがそれなりに名の知れたお笑いタレントなのに、何故だろうか?
 
 今はその場を行き交う誰からも振り返られることも無くして、局内のフロアの奥に向けて、みながただじっとこの視線を送っていた。

 奥にはエレベーターホールがあり、やがてそちらからひとりのこれまた名の知れたお笑い芸人が、ひょっこりとこの姿を現す。

 その人物がやはり何食わぬ顔でトコトコと歩み寄ってくるのを、対してそれぞれが真顔で待ち受ける、三人の有名テレビタレントさんたちだった。

 昨今、世間一般からゾンビと総称される「亜人種」は、大抵がみずからの姿をひとには見られないようにする不可視化、「フェード」や「ステルス」の能力があるから、このような人混みの中でも平気な顔で混じっていられるのだが、目の前に現れたこの四人目の亜人種は、どうやらちょっとだけこの毛色が異なっているらしい。

 まだなりたてで慣れていないのがわりかしはっきり顔と態度に出ている鬼沢に、ゾンビとしても芸人としてもずっと経験豊富な先輩の東田が声をかける。

「そうか、鬼沢くんはそのワッカをつけとらんと姿をうまいこと隠せないんやな? 本来は日下部くんのアイテムやろ、それ? そうとは知らんでさっきは失礼なことをゆうてもうたわ。すまん。それにこうしてよう見てみると、似合っとるわ、そのワッカ、ほんまに西遊記のおサルが頭に載っけとるあのワッカみたいやもんなあ? かわいいわぁ」

「ああ、どうも、お待たせしました……! てか、それって褒めてくれてるんですかね?」

 おそらくは茶化されているのだと理解しながら、まわりの人混みが気になって仕方ない鬼沢は、顔つきが浮かないさまでとても居心地が悪そうだ。

 これに東田の相方である津川が明るくはやし立てる。

 だがこちらに至ってはもはやただのガヤだった。

「でもオニちゃんがつけとると、おさるさんやなしに、三蔵法師さまがつけとるみたいで余計におもろいなあ! 坊主頭に金ピカのワッカがめっちゃ映えとるわ!! なんやきみだけ収録しとるみたいやんけ?」

「何の収録や? おいじぶん、さっきとゆうとることちゃうやんけ! まあええわ、それじゃあみんなそろったんやから、とっとと目的地へ向かえばええんやな?」

 覚めた調子の東田が出口に目線を流すのに、それまで憮然と立ち止まっていた日下部が、これまた覚めた調子でものを言う。

「はい。でもその前に、簡単なミーティングをしましょうか。場所柄ちょっと立て込んでいるんで、ごく簡単なのをですね……」

 するとこれに周りのひとだかりがやはり気になって仕方ない鬼沢が、うんざりしたさまで苦言を呈する。

 実はさっきから見知ったディレクターがこちらを見ているのに、内心ひやひやしながら首をすくめる新人ゾンビだ。

「歩きながらで良くない? なんか見知った顔のひともそこらにいるから、気が散って仕方ないもん。万一バレたらなんか気まずいし、このメンツでいるの、ちょっと説明がしずらいし……!」

 その一方、こんな状況ももう慣れたもので、平然としたさまの先輩芸人が了解する。

 ただし相方がすかさずツッコミを入れるのだが。

「ええよ。ここじゃ確かにやりずらいから、玄関を出てひとのあまりおらへんところでやろうか。どや、あそこのベンチ、ひとがおらへんやろ、あっこで」

「めんどいわ! どこでもええやろ? ちゅうか、日下部くんが場所をしっとるんやから、日下部くんが歩いてみんなを誘導してぇ! 歩きながらでええやんか、はようせんと日がすっかり暮れてまうで?」

「まあ、それじゃ、そういうことにしまして……!」

 ひとには感知されにくいとは言ってもやはり限度がある。

 どこであってもいざ口を開けばまるきり口さがない、コテコテの関西芸人たちのやかましさが多少は気になったのか、さっさとこの場を離れようときびすを返して歩き出す日下部だ。

 ちなみに芸歴で言ったらば一番の若手なのだが、アンバサダーとしての経験上、それが当たり前のごとくで今回はこの彼がリーダーを務める役回りとなった。

 それだから先頭に立ってガラス張りのエントランスを抜けて、赤い太陽の光を浴びる遠くの街並みへとその歩を進める。

「なんかもう勝手にはなしが進んでいるよな……!」

 はじめにここに来た時よりも、だいぶ日が傾いてることを知る鬼沢も、また仕方も無しにトコトコとこの後に続いて、大理石の床面からタイル張りの地面へとみずから歩みだす。

 どうやら目的地まではみんなで徒歩で向かうのらしい。

 昨今、名の知れたタレント同士の行動でも、いわゆる番組のロケではないのだから、その移動に際してはそれ用の送迎バスなどが用意されるわけではないのだ。

 それだからここらへん、ちょっとだけわずらわしく感じる有名タレントさんだった。

 そんなに遠くじゃなければいいなぁとか思いながら、このひとから見えない亜人の体裁では、移動にタクシーを使うのはそもそもが無理筋なのをおのずと理解した。

 公共の電車くらいなら、よほどラッシュの時間でもなければ、こっそりと無賃乗車は可能なのだろうか?

 バスは車内が狭いから難しいだろうなあ、とかひとりでブツブツとやっていると、背後からちょんちょんと指でこの右肩のあたりをつつかれる。

 これに何かと振り返ると、真顔の東田が先頭の日下部を目で示しながら、低い声で注意してくれた。

「日下部くんが説明してくれよるから、鬼沢くんはよう聞いとかんと……! きみのための訓練がメインで、ぼくらはあくまでそのお手伝いなんやから。そやからこの先は極力じぶんで考えて、自力で対処せなあかんのやから?」

「あっ、はい、そうか……て、まだなんにも納得できてないんだけど! というか、そもそもが俺たち、これから何をしに、どこに行くんだったっけ??」

 いぶかしくその背中を眺めるのに、先頭を歩く当の本人がこちらも真顔で振り返ると、こともなさげに言ってくれる。

「はい。急げば一時間もかかりませんよ。日が落ちきる前にことを済ませられたら御の字です。これから日が傾いて、明るく差し込む夕焼けは、闇に属する存在はこれを特に苦手としますから。目的は、いわゆる未確認のグールの探索とこの浄化、無害化です。おれたちアンバサダーとしては初歩中の初歩ですね?」

「は? なに言ってんの?? あとグールとかなんだっけ、ゴースト? 今にしてはじめて聞くものばっかりなんだけど、なんか思ってたのとだいぶ違うことになってたりしない……??」

 いわゆるテレビの番組だったらば、早くもテコ入れで、方向の修正がされてるヤツだろうと渋い面の鬼沢に、列の最後尾でとかくあっけらかんとした笑顔の津川がぶっちゃける。

「ははんっ、ええやんけ、ちゅうか、いきなりガチのゾンビとやりおうたオニちゃんには簡単な案件なんちゃう? ゴーストもグールもわしらゾンビの親戚みたいなもんで、これからイヤっちゅうほど遭遇するもんなんやで? せやから、ゴーストはいわゆる幽霊で、これがひとにでも取り憑いたらグール、グールがさらに凶悪化したらゾンビ、くらいの認識でええんちゃう?」

 何やらかなり雑とも思えるざっくばらんな説明には、これを聞かされる鬼沢がただちに目を丸くして言葉を詰まらせる。

 これに東田がすかさずフォローを当ててくれた。

 またこれに対して日下部も日下部で、ぬかりなく補足を付け足してくれる。

「え、そうなの?? いや、凶悪化って……!」

「えらい乱暴な言い方やが、とりあえず間違ってはおらへんよ。ゾンビにもいろいろおる。そこいらのゴーストやない、霊格のごっつ高い神様みたいなもんがくっついての上級ゾンビ、いまのぼくらがそうなるんかの? でももっぱらが、低級霊や悪人の邪気が取り憑いての低級ないし悪性ゾンビとか、いろいろの……」

「そうですね。ただしそこまで行く前にグールの状態で仕留めるのが理想です。でもそれはおれたちみたいなまっとうなゾンビにしかできないことですから。ちなみにゴーストは浮遊霊とか地縛霊とか、あらゆるタイプとパターンでどこにでもありうるものだから、元来、そんなに気にする必要性はないです」

「え……」

「ですから、よっぽどひとに取り憑いてグール化しそうなものならば、これを未然に排除するくらいでないと、おれたち自身の生活がままなりません。いわゆる除霊屋や、そのたぐいで済むものはすべてスルーしてしまって」

「え~とっ……」

 なおさらキョトンなる鬼沢に、どうやら世話好きな性格らしい東田がまた助け船を出してくれる。

「意識せんでも見えてまうのが厄介なんやけど、その内に気にならなくなるんちゃう? それこそが慣れっちゅうもんで。ま、いわゆるゾンビさんあるあるやな」

「やなあるあるやの! 収録の時に低級な霊のくせにやたらに絡んでくるアホもおるやろ? あと街ブラロケでちゃんと実体がありよる輩で、なんやこのひとグールなんちゃう?て疑ってまう時とか?? あれってボコってええんかなって!」

 最後尾でなにかとぶっちゃけまくってばかりの津川に、真顔の日下部が先頭からまた冷静な物言いをしてくれる。

「まあ、どっちにしろ、カメラが回ってる時はマズイんじゃないですか? アンバサダーのお仕事は人知れずこっそりとやるのが定石ってもので、そのためにフェードの能力がおれたちにはあるんだし。鬼沢さんも、その頭の「キンコンカン」がなくともできるように早く習得してくださいね」

「ん、まあ、家族が相手なら50パーくらいの確率でできるようにはなってきたんだけど……! ゾンビに、あのひとがたタヌキになった時の感覚をいざ生身で持ち続けるのは難しいんだよな? でも慣れなのかな? あ~あ、なんかやだなあ、もう勝手にアンバサダーを押しつけられちゃってるよ」

 しきりとその首を傾げる鬼沢に、すかさず背後から甲高い関西弁のガヤだかツッコミだかが入る。

「ええことやん! 国が後ろにおるっちゅうことは、自分も安泰、家族も安泰や! わしらもはじめはナチュラルさんやったけど、イヤが上にもオフィシャルにならななってもうたもんやから、きみかてどうせ時間の問題やろ! せやで、オニちゃん、きみ、普通に生活してて、たまたま絡まれた相手がグールで、これが厄介な職種の人間やったりした時のことを思うてみ!」

「厄介な?」

 いよいよその顔つきが怪訝なものになる鬼沢に、こちらもどこか苦い顔をした東田がやけに渋い口ぶりをして、しまいにはこの言葉を濁してまった。

「いわゆる公僕、わかりやすいところで言うたら、おまわりさんとかやな? どや、厄介やろ? 公的な権限を持った悪人ちゅうんは? ぼくらもそれで過去に取り返しのつかない過ちを、あやまちっちゅうのかの? 手ひどい目におうたんやから……」

 みずからの苦い過去を思い返すような顔と言葉付きする先輩芸人に、それにつき何やら思い当たる節がある後輩の芸人も、また微妙な顔をしてその首を逆方向に傾げるのだった。

「あ、そうか……! バイソンさんて以前、地元の大阪で事故か事件を起こしたみたいな報道されてましたっけ? あれって何年前? でもなんかうやむやのままでもみ消されちゃって、気が付いたらコンビで東京進出、みたいな? え、あれって、実はゾンビがらみのことだったの??」

 思わず立ち止まって遠慮がちな視線を後ろから前へと巡らせるのに、あいにく先頭を行く日下部は歩いたままでこちらを振り返ることはない。

 慌ててまたそれにくっついていく坊主頭のタレントに、最後尾で髪型ゆるい角刈りをしたおじさん芸人が、そこでなぜだか苦笑い気味な反省の弁みたいなものをたれる。

 これには相方の髪型で言ったらソフトバックの中年芸人も同調して、最後にやけに力のこもった言い回しで夕方の乾いた空気を震わせるのだった。

「ええねん。昔のことや。今さら何もいわへんよ。しょせんはこのわいの判断ミスで、自己責任や。相方にはえらい割を食わしてしもうたけど、今はこうしてちゃんと芸人さんできてる。おかげさんでゾンビとしてもいろいろやっとるけど」

「せやな。でもこの津川は何も悪いことはしとらへんよ。ミスったんはむしろこのぼくや。いまだに後悔しとるさかい。相方がほんまのピンチの時に、そばにおれへんかったちゅうことを……! そやからあの警官、今度おうたらこのぼくが、ほんまにぼっこぼこにしたるねん……!!」

 それきり場を重苦しい空気が包み込む。

 折しも涼しい風が吹いて、それをやけに冷たく感じる鬼沢は、背後のおじさん芸人たちにもそれはそれなりに深い事情があることを意識していた。

 わけありなのは、自分だけではないのだと。

 それにつき、ちょっと興味が湧いたがさすがにこの場で聞くのは気が引けて、意識を前へと向ける。

 先頭で黙ったきりの若手の芸人は知っているのだろうか?

 後でこっそり聞いてみようと、心の中でもやもやしたものを押し込める中堅芸人だ。

 それきり無言のままで、周りの人目からは見ることができない透明人間たちの秘密の行進はしばしのあいだ続いた。

 目的地ははじめのテレビ局から徒歩で30分くらいのところで、かくしてこの建物を間近から見上げる四人のテレビタレントだった。

 見た目に何の変哲もない五階建てのオフィスビルらしきをしげしげと見る関西出身のベテラン芸人たちの隣で、あれ、なんか見覚えがあるなあ、と小首を傾げる鬼沢だった。

「あれ、ここって……??」

 そんなおかしな既視感めいたものを感じながら、やはりこれまた見覚えがある周りの街並みから、まさしくつい最近に収録で訪れたことがある現場におのれが再び立っていることを今更ながらに自覚する。

 淡々とした日下部の説明に内心で飛び上がるのだった。

 今回もまた出だしから波乱の予感がするのは、もはや気のせいではないだのろう。

 果たして新人アンバサダー(?)鬼沢の運命やいかに?


                   次回に続く……!

   オフィシャル・ゾンビ 12
 設定もろもろ~

ゾンビ 亜人 亜人種 法律が未整備 人間とは異なる
グール ゾンビになりかけの状態 扱いは一般人と同等
ゴースト ゾンビのタネ?  幽霊 霊体 邪気 邪念 人間以外

今回のミッション  グールの退治 通報があり 
シーカー、パパラッチからの通報

 ゴースト退治は道すがらにみかけたら対処
珍しい存在ではない。ゾンビの状態だとふつーに見えるカンジ。
 ※数が膨大なので、ヤバイヤツだけ対処するのがのぞましい。

グール 都内某所 中程度の規模のオフィスビルで最上階の企業の社長? 背後にカルトの存在らしきがある?
社長室に壺がかざってある ダサいカタチ
企業体 警備保障 個人営業のガードマンみたいな?
ドラゴン警備保障 社長 ドラゴン滝沢 滝沢竜雄たきざわたつお グール化した社長を取り押さえる。部下もややグール化?
 フロア全体が悪い邪気に満たされている。
◎みんなでドラゴン警備保障に乗り込んで、社長をぼっこぼこ!
○補足、鬼沢は滝沢と面識あり。以前に番組のロケで、とても人柄のいいナイスミドルのイメージ。体育会系のノリがちょっと苦手?
 日焼けした笑顔のマッチョおじさん。

季節 三月 私服
日下部 スボン(スラックス?)、革靴、白のワイシャツ、ノーネクタイ、ジャケット 色は地味目
鬼沢  ズボン、スニーカーないし、革靴、薄手のトレーナー、上着(ニット)
バイソン津川 ジャージに近いイメージのトレーナーと、トレパン スニーカー
バイソン東田 スラックス、シャツ(ノーネクタイ)にチョッキ

◎パパラッチ 芸人 水中動く歩道 佐々木ネズミ 火山バラバラ 佐々木ネズミ 鬼沢と遭遇 偶然をよそおって 鬼沢と接触してゾンビ化した状態のタヌキの毛をむしり取られる。
 鬼沢が佐々木ネズミパパラッチ行為をされてかなり追い詰められる。 
火山バラバラ 普通の人間?

 シーン①
某テレビ局の一階エントランスで再集合。
 日下部 鬼沢 津川 東田 ひとくだり~
11でやれなかったくだり、バイソンの関西でのある事件…
日下部、東田、津川、  ← 鬼沢(キンコンカン) 合流

 シーン2
ドラゴン警備保障 へ 徒歩で向かう。フェードをかけた状態。
今回の詳しいミッションを鬼沢に説明、シーカー、パパラッチの解説。
 シーン3
オフィスビルに到着、グールの討伐。鬼沢日下部、バイソンの二手に分かれて行動。バイソンは壁伝いに最上階を目指す。
 鬼沢と日下部は正面玄関から入る~

本文とテキストは随時に更新されます!