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ルマニア戦記/Lumania W○× Record #026

主役のクマキャラのパイロットスーツをリテイク!今回から新しい見た目に変わります(^o^)

フロント

所属する軍のナショナルカラーのグリーンをベースにしているのですが、ダークグレーとか黒とかでもいいような?あんまり色が暗いと悪役みたいになっちゃうのかな(^_^;)

バック

後ろから見るとかなりアレなカンジになるのですが、慣れですかね??おしりの上にちょこんと出ているシッポがキュートですw

 たぶん被らないけど、パイロットスーツに合わせたヘルメット(クマメット?)もデザインしました(^o^)

   新キャラ登場!

#026

 Part1


 当初の駐屯先であった大陸中央部の砂漠の陸軍基地から、もろもろの都合でこの大陸北岸の、さらに西の外れへ――

 やや辺鄙な港湾都市にその巨大な船体を休めることとなった、ベアランドたちの大型巡洋艦だ。

 そのいきさつまでにもひともんちゃくあったのは伝え聞くが、数日が経ち、船外に出る下船許可が下りるまでには状況は落ち着いていた。とは言え、いつスクランブルが掛かるかはわからないので、あまり遠出はするなとのお触れは出ていたが……。

 前回の航空部隊同士の戦いがやや消化不良気味だったので、この決着をつけるべくしてかの敵がふたたび襲来するのは、現場の隊員ならたやすく予期しえただろう。
 
 無機質な軍艦の中でまんじりとしないより、心身ともリラックスするためにひさしぶりに街に繰り出せるのはきっといいことであった。

 同じ部隊のクマ族のベテランコンビもやたら上機嫌なさまで、どこそこに行こうと算段しているようだ。
 どうやら近場にクマ族向けの有名な観光地があるらしい。

 だがあんまりそういったことに興味がないこの隊長自身は、船外ではなく見知った船内の見慣れた場所へと足を運んでいたが。
 それでもこの内心はうきうきとした鼻歌交じりにだ。

 そうこうしている内に何やら前方に見知ったようなクマ族の背中を見かけて、気楽に声をかけるベアランドだ。
 あちらもご機嫌な鼻歌交じりで、その足取りが軽かった。

「あ、やあ! そこのきみってニッシーだろ? おはよう! ずいぶんとご機嫌だけど、さては街にお散歩に行くのかい、パイロットスーツ以外の姿をはじめて見たけど、えらくラフだな? でもそれなら違和感なく溶け込めるよね! 似合ってるよ♡」

 いつものぎちぎちに全身を固めた地味な見た目の上下のつなぎではない、むしろやたらにラフな半袖半ズボンの若いクマ族くんの格好に、見え透いたおべっかを言ってやる部隊長さんだ。

 これにふとこちらを振り返った当のクマ族は、はじめぎょっとしたさまで目を見張らせたりした。

「あん? ああ、どうもっ……て、でかいな! アーマーじゃん!! いや、つうかなんすかその格好、隊長さんこれまでそんな大仰なスーツなんて着てなかったじゃないすか? うわ、上から下までガチガチじゃん、なんか引くわあ……!」

 言いながらひとのことを上から下までねめ回す新人パイロットの呆れたような言葉には、思わず苦笑いになるベアランドだ。
 おろしたての新型スーツは、控えめに言ってもこの見てくれが頑丈で大げさで、おまけかさばるし重たくもあった。

 個人的にはがっちりした着心地がとてもしっくりしてかなりのお気に入りなのだが、傍から見るにはしんどいらしい。
 その前にあったふたりのおじさんたちも口々にそんな反応(クレーム)をくれていた。

「ひどいな! みんなおんなじことを言ってくれるよ。もしかしたらこれが正規のパイロットスーツになるかもしれないのに? でも犬族たちはこんな重たいの着たりしないのかなw ま、ぼくらいかついクマ族にはまさしくうってつけってことで!」

「はあ、おれはかんべん願いたいかな……? それよりなんでそんな格好なんすか、まさかそれで街まで降りるとか?」

 そんなやや怪訝なさまで見てくる傭兵パイロットにまたも曖昧に笑っていかつい肩を左右ともすくめさせる。

「いやさ、ほら、せっかくだからこの格好でコクピットシート周りとのマッチングをしようかと思って? いざぶっつけ本番じゃ何かと不安だし、リドルも付き合ってくれるって言うからさ!」

「マジすか? せっかくの休日なのに、しんどいわあ! ちゃんと休んでくださいよ。隊長がそんなんじゃ他が気を抜けないし」

「いや、そんなことないんじゃないのかな?」

 部下のおじさんたちは思い思いの格好に身を包み、新しく入った新人のブタ族を伴ってとっくにこの船を下りている。

 対して若いクマ族のチーフメカニックくんは、外に出るよりメカをいじってるほうが楽しいと言い切っているから、無理に連れ出すこともできなかったわけで。ちなみにもうひとりのベテランのクマ族のチーフメカニックも同様の理由で居残りのはずだ。

 第二小隊のオオカミ族の隊長たちはよくわからないがきっと好きに方々を巡っているのだろう。気配はとっくになかった。

 そういえばこのクマ族の相棒である、若い犬族の女社長はどうしたのだろうかと内心で思っていると、それとおぼしき気配を背後に感じるクマ族の隊長さんだ。軽やかな足取りの足音がタッタと近づいてくる。おまけ甲高い声音がこれに続いた。

「あれ、ふたりでこんなところで立ち話? あんたその隊長さんと話すことなんて何もないでしょうよ? それにやだ、襟付きの服くらい着たらどうなの? 学生さんでもあるまいに!」

 顔を出すなり言いたい放題言って澄まし顔でふたりのクマ族たちを見上げてくる、それは勝ち気な女パイロットだ。
 対してラフな格好を揶揄されてちょっと鼻白むクマ族の平社員だった。それってモラハラじゃねえのかとでも言いたげなさまでせいぜい不満げな口ぶりする。

「学生じゃねえ、ゲーマーだぜ! 普段の服装にまで口出しされたくねえや、いかに雇い主の社長さまでも? そっちこそどうなんだよ、遊ぶ気満々じゃん! おれ、連れ回されんの??」

「当たり前でしょう? あんたはあたしのボディガード兼パイロットなんだから。雇用形態の契約書類に目を通さなかったの? だとしたらあんたの落ち度だから、黙って従いなさい。ほら、さっさと行くよ!」

 そんないつものつんけんした口ぶりで部下の愚痴をはたき落とすサラに、笑って相づち打つベアランドだ。

「仲がいいね! ま、せったくだから楽しんでくればいいよ。ぼくも余裕があったら街に繰り出してみようかな? 居残り組みのリドルやイージュンと一緒に♡ 街で出くわしたらよろしくね!」

「はあ、でかくてとろくさいクマ族さんは御免被るんですけど? あたしの足に付いてこれるなら構わないけど、うちにもとろくさいのがいるから、そっちのすばしっこそうなチーフメカニックくんとならトレードしても構わないかしら!」

「おれが御免被るぜ! なんで非番の時まであんなクソでかいクマのおやじと……マジ死ぬって……」

↑失敗して、結果、↓下の挿し絵に差し替えられましたw



 げんなりして肩を落とすニッシーだ。
 なおのこと苦笑いの隊長さんはしたり顔して言ってくれる。

「あははw じゃ、とにかく楽しんでおいでよ。たぶんそっちに行くことはないだろうから、ふたりとも気兼ねなくさ!」

「もちろんそうさせてもらいます。ふふ、とってもものわかりのいい隊長さま! あとでお土産のひとつでも差し入れしてやれるかもしれないから、どうぞ期待せずに待っててくださいね?」

「何だよ、じぶんだってめちゃめちゃ観光気分じゃん……!」

 気楽にピースサインを肩越しに見せてくれる女ボスに、がっくりとうなだれながらすごすごと歩いていく肥満気味のクマ族だ。

「うん。期待はしないよ。なんかコワイから! あはは♡」

 ふたりの傭兵コンビをお気楽に見送ってみずからも目的の場所へと向かうベアランドだ。入ればいつもと変わらぬ喧噪と活気にあふれたアーマーデッキには、すでにふたりのチーフメカニックたちがこの隊長の登場を真顔で待ち構えていた。

 Part2


 クマ族のエースパイロットの新型機をはじめ、各隊のアーマーを収容する広大なデッキフロアは、巨大な戦艦の中でもこの船底に位置した。

 その中でもみずからのアーマーが格納された大型機専用の中央デッキに向かう。するとそこには専属の若いチーフメカニックの他にも、オオカミ族たちの小隊のチーフメカを担当するはず、ベテランのクマ族のおやじまでが何食わぬ顔して立っていた。

 ちょっと意外そうな顔でこれを見るベアランドだ。

「あれ、イージュン? どうしたんだい、そんな気むずかしい顔して?? 第二小隊のチーフメカニックはこんなところに用なんてないはずだろうさ!」


 こちらとしてもそんなおやじに用はないと口にはしないまでも、この口ぶりと態度で言ってしまっていたものか?

 ちょっとむすりとしたさまのベテランのクマ族メカニックマンは、口をへの字にしていかにも不服げなさまだ。

「……なにって、お前さんのところのお邪魔虫どもの大型機のメンテもしているだろう? これおれは。用がないなんてことはないんだよ、失敬な! あとちなみに、当のお邪魔虫、あののろまなクマ助くんはどこにいる?」

 となりに立つリドルが苦笑いで見ているが、こちらも同様に肩をすくめさせるクマ族の隊長さんは、ついさっき別れたばかりの若い新人パイロットのクマ族のことを思い浮かべながら答えた。

「ああ、ニッシーならついさっき、ボスのサラに連れられてこの船を降りていったよ? なんでも彼女のボディガードなんだってさ! パイロットやらエスコートやら、新人の平社員くんは何かと大変だねw」

「どうでもいいけどな! あのバカ、完全にあの女社長の犬族の尻にしかれてやがるだろう? 情けないはなしだ。こちらとしてはちょっと聞きたいことがあったんだが、ついでにおまえさんの意見も聞いてみたいところだよな。後でちょっといいか?」

「ん、まあ、構わないけど? ぼくに聞いたところで何もわからないんじゃないのかな?? それにこっちはこっちでやることあるから、どのくらい後かわからないよ」

 仲間達が続々と船を降りて羽を伸ばしに行っているのに、じぶんだけがここに来た理由をそれと大きな身体をガチャガチャと揺らして示してみせる。するとだが相手のクマ族のおやじはそれでかまわないさと真顔でうなずく。おまけこれまでよりもずっとごちゃごちゃとした見てくれのいかついパイロットスーツを微妙な顔つきで見ながら言ってくれた。

「思ったよりもずっと大げさなスーツだよな? まだテストケースなのか、もとよりそんな邪魔くさいもの犬族たちが着たがりやしないだろう? 特にあのやかましいオオカミ族の隊長とか!」

「まあ、そもそもであれのかさばるプロテクターを外して軽量化させたスーツで戦場に出るなんてのも珍しくないらしいからね? あくまでぼくらいかついクマ族向けの仕様なんじゃないのかな。でもニッシーやダッツやザニー中尉たちも、これを見たらばみんな口々に嫌がっていたけども!!」

 わはは!と破顔して楽しげにぶっちゃけるのに、対するオヤジのクマ族もイヤそうな顔してでかい頭を左右に振ってくれた。

「悪いが、おれも御免被る! ま、おれは着ることなんてありやしないが、生存確率を上げるためには致し方ないことなのかもしれないな? 昨今、アーマーの性能が格段に向上している都合、中身のパイロットもそれなりに身なりを整えないと、釣り合いが取れ無いんだろう。特に、その、な?」

 意味深な目つきをこちらは隣の若いクマ族に送っての言葉に、それを受けるチーフメンテナンスは素直にはいと受け答える。

「は! とてもお似合いであります、少尉どの! 最新鋭のアーマーに乗るのであれば、そのくらいに頑丈なスーツを着ていただかないとさすがに心配でしたので……!! そちらは対Gスーツとしてもとても有効な性能があると聞いております」

「ま、毎度毎度出撃するたびにあんな無茶苦茶なことをしているんだから、このくらいの保険は掛けてもらわないとな? まったく割に合わない! てか、おまえさん、ほんとに似合っていやがるよな? 冗談みたいな見てくれしてるのに!!」

「はは、そうかい? ま、冗談みたいなぼくの相棒のアーマーとこれでちょうど釣り合いが取れるのかな? イージュンが言ってるみたいに! 前のヤツもあれはあれで愛着があったんだけど」

 いかつい肩をことさらに大きく揺らして笑う隊長さんだ。

 これを白けたさまで見ながらまた意味深な目つきでベテランのメカニックが言ってくるのには、ちょっと苦笑いでこの視線を逸らしたりする。

「聞きたいことはまだ他にもある。まあその、聞いた話じゃ、また新しいアーマーが入ってくるんだろう? しかもふたつも! 懲りないよな。さてはあの熟練コンビのクマ族ども向けなんだろうが、おまけにコイツが出所が一切不明のとってもいかがわしい機体と来てやがる……そうなんだよな?」

「ああ、よく知ってるね? ひょっとしてリドルから聞き出したのかい? とは言え、まだ本決まりじゃないから中尉どのたちには言っちゃだめだよ? ぬか喜びさせちゃ気の毒だし。出所が不明なのは、そんなのもうみんな慣れっこだろう?? まずこのぼくの相棒のランタンがアレっちゃアレだし♡」

 むしろ出所がはっきりしている機体の方が少ないじゃないか! 

 しまいにはそんなことまでぶっちゃける隊長さんの発言には、小隊付きのメカニックの青年が苦笑いでうなずく。これにはそのとなりのオヤジもあきれ顔でうなずいて、また苦言だかクレームだかをぶちまけれてくれるのだ。

「まさしくだな! あのボンクラの新人くんの大型機はおろか、その連れの犬族の高機動型のももはや正体不明のアンノウン、見たことも聞いたこともありやしない! もっと言ったらおれが担当している第二小隊のやせオオカミのやつも、それに近いぞ? マニュアルもメンテナンス向けの仕様説明書もへったくれもないんだからな! ブラックボックスだらけだ!! ヘタにいじれないだろう?」

「とか言いながら、そういうのがとっても好きなんじゃないのかい? でっかいクマのおじさんが寝る間も惜しんでこれまたどでかいアーマーと取っ組み合いしてるって、もっぱらの噂だよ。みんなありがたく思わないとね!」

「どうでもいい。好きでやってることだからな? だがせめて協力はしてもらいたい。やるからにはだな!」

 プロのメカニックとしての矜恃みたいなものをでかい鼻づらに浮かべるオヤジは、鼻先でふんと息をついて、そこでまたちょっと口をとがらせたりする。不満げなさまに大きくうなずくベアランドだ。


「まあ、中にはそんなものつっぱのける恩知らずなヤツらもいるわけだが……! 近づくと露骨にイヤな顔をしやがるからな? だがあいつらの機体も、やっぱりわけがわからないよな、それが後部デッキを占領しちまってるときたもんだ! よくこうもポンポンと受け入れやがるよな、本来ならそこのおまえさんのデカブツで手一杯のはずなのによ!!」

「あのゴリラくんとネコちゃんのアーマーか! 確かに型式も国製も不明でそのくせびっくりするくらいに高性能なんだけどw でも大丈夫、そこらへんはうちのリドルが興味あるみたいで、探りを入れてるようだから、ね?」

 おとなしくふたりの話を聞いていた物腰の穏やかな青年メカニックは、明るい表情ながらあいまいにうなずく。

「ああ、はいっ、まあ……! ヒマを見てお邪魔してはじめは遠くから見学させてもらって、少尉どのに調達してもらった高級バナナを差し入れしていたら、ゴリラ族のベリラさんは近頃は普通に話しかけてくれるようになりました。相棒のネコ族のイッキャさんの目を盗んで触らせてくれたりもしますし?」

「バナナ? おまえ、それって餌付けじゃね? あのゴツいゴリラ相手によくもまあ、そそのかしてるそっちの隊長さんも隊長さんだが、ならネコちゃんは何をくれてやったら仲良くなれんのかね?」

「お金じゃないのかい? はは、別にモノなんてあげなくてもリドルの腕があればなんとでもできるよ。アーマーにメカニックはつきものじゃないか? しょせんパイロットだけじゃ運用なんてできないんだから! 黙ってたっていずれ必要とされたさ♡」

「そんなもんかね? いや、これからまたふたつも増えるかもしれないってのに、そんな余計なもんにかまけていたら身体がいくつあっても足りないんじゃないのか? まあいいや、実際にきたなら、そのうちのひとつくらいは受け持ってやるよ。ただし、あの落ち着きがなくて反応がやかましそうなグレーのじゃなくて、むっつりした赤毛のおやじのほうをだな?」

 何食わぬ顔でそのくせにしれっと言ってのけるのを、若干吹き出し加減に了解する隊長さんだ。

「そういう認識なんだ? イージュンこそほんとに好き者だよね! 実はそれが言いたかったてあたり? 博士もある程度は協力してくれるだろうけど、リドルとノウハウの共有ができたならそれに超したことはないから、大歓迎だよ! 感謝感激!!」

 満面笑顔で舌なめずりまでするエースパイロットのクマ族に、ベテランのクマ族メカニックマンは何食わぬさまでとぼける。

「ふん。来たらの話だ。それにまだ他にも聞きたいことはある。若造の大型機はあらかた攻略したんだが、ひとつだけ良くわからんことがあって、そのあたりをだな? 当人に聞いてもわからないとかぬかしやがるから、ガチのパイロット目線の意見を聞きたいんだよ。あいつをとっちめて無理矢理に突き止めるのも手なんだが、あのボンクラくんときたら必要な時以外はこっちに顔を出しやがらない! なめてやがる」

「メカニックのおじさんがそんなおっかないからじゃないのかい? まあいいや、それじゃ早速、このスーツとコクピットとのマッチングをしちゃおうか。リドル、イージュンと一緒にコントロールでシミュレートをしておくれよ。シビアなのでかまわないから、機体の射出出撃から敵の編隊との会敵、交戦までひととおりに……! 半日くらいかけてくれてもかまわないから」

「はっ、了解であります! 少尉どの!」

「はあ、おまえも好きだよな? 半日は長いだろう。途中で抜けさせてもらうかもしれないが、終わったら声をかけてくれ」

「はっ、了解であります! イージュン曹長!」

「おまえは真面目すぎる。だったらおれはもう一度あっちの大型機の最終チェックに入るから、そっちはふたりでよろしくやっててくれ。じゃあな!」

 ドスドスと大きな足音を響かせて、じぶんたちとは反対側で向かい合わせに収容固定されている大型の機体へと歩み去るでかくてまあるい背中をにんまりとした笑顔で見送るベアランドだ。

「どの口が言うんだか、ひとのこと言えやしないじゃないかw」  

 そうしてみずからはくるりと頭を巡らせて、己の愛機の固定されたハンガーへと大股で進んでいく。ここからではそのコクピットブロックは見上げるほど高くにあるのだが……。

「あ、少尉どの! ちゃんと昇降機を使って上がってくださいね! 自分は管制室からモニターしておりますので、およそ30分後にスタートとさせていただきまして?」

 いつものノリでジャンプしてタラップをまとめて飛び越えようとしたのをまんまと呼び止められて、舌を出して振り返る。

「……おっと、そうだった! あ、でもだったら緊急発進モードで10分以内にスタートってことにしようよ? 本気で半日もかけてやるつもりもないからさ♡ どうにか集中して二時間くらいでやっつけちゃおう!」

「了解であります!」

 そんな軽口混じりにしたお気軽な演習のつもりだったのだが、それが10分後には現実のそれになることを、この時はまだ誰も知る由はなかった。


 Part3


 今回、試験的に導入された新しいパイロットスーツは、従来の軽量軽装を主眼としたものとはまるでコンセプトが異なる全身重装備型で、言わばクマ族向けのものであった。

 これによるコクピット周りのマッチングテストは、だがこれが思いも寄らぬ形で現実の出撃シークエンスを実行するこことあいなるのだった。
 
 ただの演習ではない、ベアランドの隊長機のみによる単機での緊急出動(スクランブル)だ。


 港に着岸したままの母艦から今回は自力で飛び立ったクマ族の隊長機は、上空およそ500メートルの高度でその大型の機体をぐるりと左に旋回しながら眼下に広がる乾いた大陸の景色と向き合う。

 そこでレーダーの索敵範囲を有効射程のはるか彼方にまで広げながら、母艦のブリッジへと通信を開くベアランドだ。


「ふうむ、とりあえずこうして出撃してはみたものの、肝心の目標らしきがどこにも見当たらないな? 艦長、未確認の反応ってのは、つまりは所属不明のアーマーのことでいいんだよね?」

 どこを見るでもなく漠然と目の前のディスプレイを眺めながらの問いかけに、ほどなく正面の青空の一角に見知ったスカンク族のベテラン艦長の顔が、大写しで映し出される。


「……うむ。こちらでもこの反応のみを確認したのだが、おそらくは二機の所属不明機、どちらもアーマーであるものと推測はされる。ただしこちらに対しての敵対的行動や意思があるのかは不明。むしろ両者が交戦している可能性が高いとの観測がされるのだが……!」

「なるほど! それをぼくに偵察してこいってことなんだよね? あいにく出撃できるのはこのランタンだけだったし……!」

「うむ。だが少尉、くれぐれも無理な戦闘行動は取らなくていい。せいぜい牽制をかけるくらいのものでだな?」

 真顔でこちらを見下ろしながらの返答には、了解と目でうなずいて、あたらめて正面のディスプレイと向き合うクマ族の隊長さんだ。まさかこうしていきなり実戦になりかけるとはね?と内心で苦笑いしながら、母艦のデッキのコントロール・ルームで待機しているだろう若いメカニックのクマ族に向けて言った。

「リドル! こっちのモニターついでに戦況のモニターもしておくれよ。できるだろ? どうせイージュンもいるんだろうし!」

 半ばテキトーに言い放ったセリフには、即座に若いクマ族の青年の声と、ベテランのクマ族のそれが応じてくれる。

「は! 了解であります! 少尉どの! 幸いブリッジからリアルタイムのデータもいただいているので、問題なくこちらからサポートできるものと思われます!!」

「どうせってなんだよ? 居て悪かったな! いきなり出撃していきやがって、なんかめんどくせーことになってるみたいだが、おもしろそうだからオレも付き合ってやるよ。そっちで取ったデータを解析してやるからさっさと目標捕捉して、とりあえずこの画像をよこせよ。ついでに音声も当然な? アーマーのエンジン音からも推測できることはたくさんある。アーマー壊すなよ?」

「もちろん! あいにくと今はひとりっきりで、ベテランの中尉どのたちのサポートも望めないから無理はしないさ。あちらさんが必ずしも敵対的とは限らないしね? どっちも正体不明ってあたりがなんか引っかかるんだけど……!」

 ベテランのスカンク族の艦長から切り替わったこれまたベテランのクマ族のおやじのむすりとした表情を見上げながら了解してくれるのに、おやじの横からひょいとこの顔を出す若いクマ族が落ち着いたさまで補足をしてくれる。

「ちなみに少尉どの、ブリッジからのデータによると正体不明機はこのどちらかがかなりの大型機クラスであると見込まれるとのことです! 場合によっては少尉どのの機体と同規模くらいな? ですので予想される会敵ポイントにはすでにかなり近くまで接近しているので、モニターの視界からでもそれらを確認できるのではないでしょうか?」

 これにも了解してうなずくベアランドだ。

 そう。見ていると確かにそれっぽいのが正面のモニターのど真ん中にあるのだが、あいにくはっきりこれと見分けがつくようなさまではなかった。なんか怪しいのがあるくらいなカンジだ。

 それを怪しげに見ながらカメラの焦点にズームをかける。


「まあ、あそこらへん、確かにへんなケムリか煙幕みたいなものがあるのかな? でもあいにくでレーダーにはっきりとした反応が出てこないや! マイクでエンジン音が拾えるかい? あれ、消えちゃった……!」

 それはほんの一瞬だけ……!

 コクピットに短い警告音が鳴ったきり、ピタリと静かになる。

 ケムリの中から何かしらが飛び出したのはわかったが、それが何かを確かめる前にモニターから消失してしまうのだ。

 別々の方向に別れて散っていったのではないかと思われたが、あまりに突然のことでどちらも補足するまでに至らなかった。

「ちゃんとモニターしろよ! 完全に見失っちまってるだろう? こっちじゃさっぱり追跡ができない、ステルス性がヤバイくらいに高いんじゃないのか? ヘタに深追いできないだろうっ……」

「うん……まあ、そうなんだけど、しっかり相手には補足されちゃったんじゃないのかな? でも大型っぽいのはちょっとだけこの姿らしきが見えたから、そっちを追いかけるとしようか。もう一機はこの際もうほっといて!」

「あっ、いえ、ですが、少尉どの! ここは一度帰還されたほうがよろしいのではないでしょうか?」

 顔つきからしてちょっと心配そうなチーフメカニックくんの言葉には、ただあいまいにだけうなずいて周囲の気配とモニターに目を懲らす隊長だ。

「ん……いや、でもね、それじゃわざわざ出向いて来た意味がなくなっちゃうじゃないか? 探りを入れてほしいって艦長からの直々の命令ではあるし、そんなヘタは打たないさ。なんか補足できたみたいだし!」

「え、いたのか? どれどれ! 見して見して!! 早く!!」

「うわっ、イージュン曹長、そんな興奮しないでください! ブリッジの方にも回線をつなげているんですから、筒抜けですよ」

「じゃあ音声オフっちまえよ? かまわねえだろ」

「え、でも現場の正確な状況とそれに即した解析データと、パイロットやメカニックのガチの意見を参考にしたいんじゃないのかい? それじゃ今から見せてあげるから、落ち着きなよ! ほら、あそこにある白い煙幕みたいなヤツ……ね、わかるかい?」

 ことがアーマー絡みとなるとなんでも前のめりで興味津々のベテランのメカニックに急かされながら、正面モニターの左の端のほうに捉えたそれはうっすらとした雲かもやみたいなものにメインカメラの焦点を合わせる。みずからの機体の向きもそちらに正対させながら、注意深く違和感の正体を探るベアランドだ。

「ああやってアレだけぽつんと不自然にあるのは、つまりは人工的に発生にしたものなんだよな? ちょっと背後のほうがムズムズするんだけど、なるべくそっちに頭のレーダー集中させるから、ふたりとも解析よろしく!」


 見ればある特定の地点からもくもくと吹き出る白い湯煙の中から、やがて黒い影がうっすらと浮き出るさまを怪しげに見るのだが、それがはっきりと姿を現した時には静けさの中にそれは少なからぬ緊張が走った。予想していたよりだいぶやっかいな有様にだ。通信機越しに呆れたようなおやじのだみ声が漏れてくる。


「……は? おい、なんだよありゃ! マジで見たことねえぞ! バカみてえな形状のヤツが、しれっと空を飛んでやがるっ、しかも超大型!! エンジンいくつ積んでやがるんだよ!?」

「想像がつきません! でもあれは、人馬タイプ……でいいのでありましょうか? 見たことがないです! あ、脚が4本で、腕は一対、胴体に頭があって、大型の機体を浮かせるのに大型のロータードライブが都合三基! 少尉どの、各部に高出力の射撃兵装らしきがうかがえるので、これ以上の接近は危険かと思われます! 機動力もかなりのものが予想されますので、機体の防御フィールドを最大限に展開しつつ……!」

 言ってしまえば臆病で心配性な青年が最後に飲み込んだ言葉が何かを理解しつつ、目の前のモニターに映し出される奇々怪々な見てくれのアーマーにまじまじと見入る隊長さんだ。

 やがて困ったさまで苦笑い気味のため息を漏らす。

「参ったな……! よもやこんなのに出くわしちゃうとは? 見るからに冗談みたいな見てくれしてるけど、造りがやたらにしっかりしているよな? おまけに空飛んでるってあたり、かなりのお化けアーマーだ。このランタンにひけをとらないよね!」

 この額にうっすらとイヤな汗をかいているのを意識しながら、各種レーダーの出力を最大限に上げてモニターの解析データを凝視する。外野にのんきに実況中継をお願いしている場合ではないと意識を切り替えた。艦長には悪いがブリッジとの通信は閉ざして、目の前の現実とだけ向き合うよう努めることにする。

 おまけにまだ一機、背後に控えているのをちらちら意識しながら、そちらはいっそブリッジのクルーたちに任せてしまうべく短くテキストの打電を送る。同じものを受け取ったデッキのメカニックたちもただちに了解して返してくれた。

「いいんじゃね? そのくらいやってもらわないとな! ブリッジからの観測データはこっちでも見ててやるから、おまえはそっちのデカブツくんに集中しろよ、でかいヤツ同士で!」

「少尉どの! くれぐれも無理はなさらぬように、防御主体であればおそらく無難にやり過ごせるものかと思われますが……」

 この性格柄か、何かにつけて無難で消極的なチーフメカニックの進言に、もうちょっと士気の上がる声がけはしてもらえないものかなと思いつつ、苦笑いのエースパイロットは臨戦態勢で正面のメインモニターに向き合う。

「ははっ、まずは相手の意図を確かめたいところだよね? いかに攻撃は最大の防御とは言え、出会っていきなり先制パンチってのも、あまり建設的ではないってもので……ん!」


 あわよくば互いの意思の疎通が図れないかと見ているさなか、奇しくも正体不明のアーマーが何かしらの信号らしきを発してきたのに真顔で注目する。
 この全身が真っ黒で、いかめしい不細工ヅラした頭部のメインカメラをビカリとひときわに輝かせる正体不明の大型アーマーだ。リドルが言っていたようにひとの上半身と馬の胴体を掛け合わせたような見るも怪奇なありさまのそれなのだが、しかしながらこの反応としてはしごく普通のものを返してくれていた。

「……あれって、さては交信のサイン、とりあえず通信回線を開いたりしてくれてるのかな? どこだろう、軍用の暗号回線とかじゃなくて、通常のラジオ帯域とか、まさかね? だとしたらベタな商用の無線通信だったり……やっぱり!」

 一般の商業回線のチューニングであっさりヒット!

 帯域を固定してこちらからも通信チャンネルを開放する。
 だがそれでいざ向こうからの音声入力に耳を澄ますよりも鼓膜を圧するような馬鹿みたいな声量の声高な挨拶に思わず面食らうクマ族だ。
 
 もはやカウンター気味の不意打ちであった。

「ルネッサ~~~ンスっっっ!!!」

 やけに声を張り上げた力一杯の第一声だ。

「つっ!? ……は???」

 左右の耳がキンとして思わずのけぞる。
 とっさに身体が反応するが思考がすっかり停止していた。
 いかんせん意味がわからなすぎて。
 スピーカーの向こうのメカニックたちも静まり返っている。

 あれ、本当にやっかいなのと当たってしまったのではないか?と内心で途方に暮れかける隊長さんに、通常回線越しの相手はまた元気に張ったバリトンボイスでカンカラと大笑い!
 おまけにまたも意味不明な応答をかえしてくれるのだった。

「ぶあっはっはっは!! おや、これは失敬! ん、反応が薄いな? そうか、この高貴なる我が輩の絵面がないから理解ができないものか? 庶民には? ならばどれどれ……!」

 これにつきさっぱり目つきがきょとんとなるベアランドだ。

 直後、ピピッ!とさらなる通信チャンネルの接続音がして音声ばかりかご丁寧に画像での通話回線がひらかれる。そこで目にしたものにいよいよ目がまん丸くなる隊長さんだった。

「あれ……本当に意味がわからないじゃないか? いったいどこの所属なのやら、これってこのアストリオンでも西大陸のやつでもありゃしないよね! しかもおまけに……!」

「はあっはっはっは!! ご機嫌うるわしゅう、しもじものパイロットどもよ! おや、返事がないな? フフン、なるほど、察するに、このわたしの愛機のあまりの偉容に恐れおののいているのではないかな? よいよい、無理もない! はあっはっははははは!!」

 ついさっきまで艦長のスカンク族が映っていたあたりに大写しで出てきたバストアップの男の画像に、絶句するベアランドだ。 
 おなじく左右のスピーカーの向こうでちょっとしたどよめきみたいなものが伝わって、ベテランのクマ族のおやじがあきれたような言葉を発してきた。あいにくでこの顔が映らないが声つきからその表情がどんなものだかありありと伝わってくる。


「は、なんだコイツ? さっぱり意味がわからないじゃないか?? 何様なんだよ、偉そうに! おい、一発ぶちかまして黙らしてやれよ! なんかめんどくせえから?」

「あちゃ~、まさかのイノシシ族か! よりにもよって……え、そんなわけにもいかないんじゃないのかい? あいての気性も考えたら、ここはなるたけ穏便に済ませたほうが無難な気がするんだけどね?? あれって伊達や酔狂じゃない見た目と迫力があるし、パイロットがこれじゃどうにもこうにもだよw おまけにまさかの貴族キャラ!!」

「少尉どの! あの、なんか怖いです……あまり深追いはしないほうがよいのではないでしょうか?」


プロット
ベアランド単機での出撃?
所属不明機?
ダン シャルク公爵? ボヤージュ?
パズル クロウ

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