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DigitalIllustration NFTart Novel オリジナルノベル SF小説 ファンタジーノベル ルマニア戦記

ルマニア○記/Lumania W○× Record #019


 Part1

 これまでの話の流れ……

 強敵であるライバルのキツネ族、キュウビ・カタナ少佐率いるキュウビ部隊を海上の空中戦で辛くも撃退、そのまま目指すアストリオン中央大陸に上陸したベアランド達、第一小隊の面々。

 途中、小隊のチーフメカニックの青年クマ族、リドルの補給機からの補給を受けて、いざひたすら目標となる「ポイントX」へと向けて、それぞれのアーマーを進ませるのだった。


 その始まりこそ強敵の敵アーマー部隊の襲来と激しい空中戦で幕を開けたが、いざそれが過ぎ去れば、あとはすんなりと目標となる地点、中央大陸の広大な砂漠地帯のおよそ真ん中にあるターゲット地点まで無事、この駒を進めることができたベアランドたちクマ族小隊だった。

 かくしてみずからが搭乗するアーマーのコクピットの中、上空からこの目標地点をモニター越しに見下ろしながら、ちょっと気の抜けた感じの言葉を漏らす部隊長だ。


「ふうん、いざたどり着いたのはいいものの、思っていたのとは大部この様相が違うな? 敵基地を空から強襲する作戦ってはずだったのに、まるで敵さんからの歓迎がないじゃないか……! おまけに見た感じ、なんだかひどくさびれた感じがするけど、実はもう無人だったりするのかな、あのベース??」


 そんな疑問を口にしながら左右のスピーカーに耳を澄ますが、ちょっとの間を置いて聞こえたのは部下のおじさんクマ族たちのこれまたどこか気の抜けたような返事だった。

 モニターにはあいにくこの顔が映らないが、さてはどちらも冴えない表情しているのがよくわかる。

 まずは明るい赤毛のクマ族がのんきなものいいで言った。

「ほえ、なんやようわりませんが、敵さんのわんさかおる秘密の軍事基地っちゅうよりは、ただの野ざらしの廃墟みたいにぼくには見えますさかいに。知らんけど? 実際、ひとっこひとりおらへんのちゃいますぅ?」

「せやんな! ただのくたびれたあばら屋やで、あんなん! あないなボロッボロの建物、軍事拠点とは言われへんやんけ? マジでひとの気配あらへんし!!」

 名うてのベテランパイロット専用にあつらえた赤い機体に乗り込んだザニー中尉の言葉に続いて、こちらもまた専用の青い機体のおなじく中尉どののダッツも思ったまんまの感想を口にしてくれる。

 これにひとしきり納得して頷く隊長のベアランドも、手元のコンソール周りを見回しながらなおのこと不可思議に考え込む。

     https://xrp.cafe/collection/lumania01

「そうだね……! 各種センサー類はなんらの反応や異常も感知しないし、こうしてぼくらに上空を制圧されてもまるで無反応。あえておびき寄せているのにしても、ここまで偽装する必要はないし、リスクが高すぎるよ。それどころかあれってのはもはや、陸軍基地の体裁をなしてないものね!」

「ほんまにボッコボコにされてんのとちゃいます? どこの誰かはわからんけど、実際に戦闘の形跡なんちゅうもんもそこかしかに見られますやんけ! ほんまに誰や!?」

 何かと性格がツッコミ性分で口やかましいダッツに、それとは逆にこちらはボケ気質でのんびりした口調のザニーが返す。

「知らんがな。せやけど手間が省けたのには違いないような? てっきりぼくらが空と基地の周りをまとめて制圧して、後からやって来るあの口うるさいオオカミの隊長さんとこの第二小隊がガチガチの特攻かけるんかと思ってたんやけど?」

「せやったんか??」


「知らんけど」

「なんやねん!」

 そんなのんきなおじさんたちの好き勝手ないいようにまだどこか顔つきの冴えない小隊長は、だがやんわりとそれを否定する。


「いいや。今のシーサー達の機体はあくまで海上作戦仕様のそれだから、おいそれとこの陸上まではね? 海岸線からずっと内陸のここまでどのくらい時間がかかるかわらないし、一旦は母艦に戻って、トライ・アゲインと一緒に来るはずだよ。そうさ今頃は元の地上戦仕様にリドルやイージュンたちがてんてこまいで換装し直しているんじゃないのかな?」

「そないですか。でも灰色オオカミさんの機体はいざ知らず、わんちゃんたちのビーグルⅥは、元はぼくらとおんなじ機体の空中戦特化型やから、さてはそっちに戻しはるんですか?」

「はあ、せやったら空中戦仕様にばっかりなってまうやんけ!」


 どこまでものんきなおじさんたちの言いように、ちょっと困った感じの若手のクマ族はおざなりな返事を返してやる。

「さすがにそれはね? ちゃんと陸上作戦用のパーツがあるはずだし、中尉たちのとおんなじ同型機とは言っても、ぶっちゃけあの子たちのはあんまり空中戦には向かないみたいだから……! てか、全身フルカスタムのその機体は一発でこれがビーグルⅥだって見抜けるひと、そうそういないんじゃないのかな?」

「ふふん、それもそうですな! 昔のちみっちゃいビーグルⅤとはちごうてぼくら専用に作られた機体やから。言わば新型のⅥのプロトタイプそれこそが元祖みたいなもんで。おかげさんでめっさ気に入っておりますわぁ」

「そいつは良かった! 裏じゃ走る棺桶だなんて呼ばれてたⅤはそもそもこのぼくら大柄なクマ族が乗るにはおよそ適していないボディサイズだったからね? 今のリドルが乗ってる旧式のⅣとは、あきらかに犬族向けにサイズダウンしたみたいな……」

「せやせや! 軍の犬族のお偉いさんがなんやわしらクマ族をきろうてそうしたって、もっぱら噂になってたやんけ! う~ん、なんやめっちゃむかつく話やけど」

「知らんがな。今はどうでもいいこっちゃ。で、どないします、隊長??」 


 左のスピーカー、もはや緊張感なんてものがどこにもないザニー中尉の問いかけに、果たして困り顔でうなるベアランドだ。

 このまま後続の本隊が来るのを待つのも芸がないかと、仕方もなしに荒れ果てた見てくれの目標地点を機体の右手で指さして、状況の確認をするように部下のおじさんたちを促す。



「なんだかこれはこれで返って手間が増えた気がするけど、ぼくらで基地の状況を把握して後続の母艦を誘導しよう。安全が確保されないままじゃ艦長も艦をおいそれとこの場に着艦させられないし、どうせその役を負うのははじめにここにたどり着いたこのぼくらなんだし?」

 はいはいと冴えないおじさんたちの返事を左右から聞きながら、いざどこに着地したものかと正面のメインモニターを凝視する。すると普段からのんびりしたもの言いで性格がおっとりしているようで、その実は意外と目端の利く明るい赤毛のクマ族のザニーが気をきかして言うのだった。


「そないですか。でもせやったらまずはじめにこのぼくらが降りますよって、隊長はどうぞ後から降りてきてください。不意打ちなんてあらへんのやろうけど、みんなそろうて待ち伏せくろうたら面倒ですさかいに?」

「せやんな! じゃ、お先に、隊長! わははっ」

「あ、そうか、了解! 確かに見れば見るほどにいかがわしい感じだけど、やっぱり投棄されているんだよな、あの基地って?」

「実際に中をのぞいたらわかるんちゃいます? じゃ、ぼくらが場所を確保したらそのごっついかついアーマーで降りてきてもろうて。それともじきに艦が来るまでそこで待ちはります?」

「いいよ。ぼくもなんやかんやで興味があるから。せっかくだからみんなであのでっかいお化け屋敷の散策としゃれこもう♡」


 迷いのない慣れた操作で深い渓谷の谷間に造られた軍事拠点に向けて降りていく二機のアーマーを見ながら、みずからはぬかりなく周囲を見回しながら冗談を言ってやる。

 あいにく無言のスピーカーからはゆるい空気とぬるい息づかいだけが聞こえた。


 おじさんたちはどうやら苦笑気味らしい。

 やがてすんなりと地面に着地した二機のアーマーからOKの手振りと頭部カメラのライトの明滅を見て取って、自身も大型の機体を谷間の底へと下ろしていく若い隊長のクマ族だった。


 Part2


 仲間たちの誘導によって、空から地上に降り立った大型アーマーからこのコクピットハッチを開けるなり、まずは周囲のありさまをマジマジとおのれの肉眼で確認するベアランドだ。

 すでにこの脇に降り立っていた仲間のダッツとザニーはみずからのアーマーからも降りて、真下の日に焼けた大地がむき出しの地面からこちらを見上げていた。

 あたりは乾燥した砂漠地帯だ。

 乾いた空気が鼻先をなでるのを感じながら、やはり危険らしき兆候はないことを確認してこのクマ族の隊長も自機から地面へと降り立つのだった。

 しっかりとした固い大地の感触を久しぶりに踏みしめる。

 正面の視界一杯に廃墟よろしく荒廃した敵軍の軍事基地、この右を見れば見渡す限りが切り立った断崖絶壁、その反対に視線をやればそこには広くて平たい乾いた地平が拓けている。

 いわゆる空軍やアーマーの離着陸向けの滑走路なのだろうが、放棄されてどのくらいが経ったものか、そこかしこに砂漠の砂らしきが降り積もっていた。

 この場が放棄されているのが丸わかりだ。


 また乾いた風が吹くと、あたりに砂埃が舞うのにちょっとだけ顔つきをしかめるクマ族たちだった。

 ただでさえ剛毛で毛深い身体にまとわりついた乾いた細かな砂のつぶは、真水では洗い流すのがひと苦労だ。アーマーのコクピットに戻る前にひととおり払い落としておかなければならない。

 顔の前の砂気混じりの空気をうざったげに手で払いながら、いつもののんびりしたさまでザニーがとぼけたセリフを吐く。

 すぐに相棒のダッツに横から突っ込まれたが。

「ほんまにお化け屋敷みたいやんな? 静か過ぎてちょっと気味が悪いわ。なんや出てきよったらどないしよう?」

「なんやってなんや? なんもおらへんやろ。あんなんただの廃墟やんけ! どこをどう見てもよう?」

「知らんわ。ほなら隊長、どないしましょ。やっぱり内部をのぞかないけませんか? ……隊長、どないしました?」

 そう背後を振り返った赤毛のクマ族の中尉どのに問われて、何の気無しの返事を返す隊長さんなのだが、みずからが見つめるてんで見当違いの方角を指で示しながらに逆に問いかけていた。

「ああ、いやっ……! というか、あっちのあそこに停めてあるあれってのは、いわゆるジープだよね? しかもおそらくは友軍の?」

「はい? ああ、ほんまや、一台あんなとこにおったんや。ほならバッくれた敵さんがたまたま残していったんちゃいますか?」

 遠くの滑走路とひび割れた地面の境界線のあたりに停められた、明らかに軍用車両然としたそれに、今になって気づいたらしきおじさんのベテランパイロットも、はあと気のない返事だ。


「いや、でも敵軍の車両は、アゼルタのは基本あんな色はしてないはずだから。ぼくらとおんなじ系統の緑色で、元はルマニアの車両なのかな? あれだけやけに見てくれきちんとしているんだけど、外部から乗り込んできたのかね、ぼくらとおんなじで? まだ砂埃をかぶってないから、比較的つい最近にさ……!」

「ちゅうても誰もおらへんやんけ。持ち主はどこ行ったんや? てことは不審者がおるっちゅうことなんか? めんどいのう!」

 怪訝なさまでダッツも後ろから顔を出して文句をたれるのに、なんとも言えない顔つきのベアランドは肩をすくめるばかりだ。


「まあ、何であれ用心するにこしたことはないね? 敵対者とは限らないけど、誰かしら第三者がここにいることは間違いなさそうだ。しかもあちらさんもこのぼくらの存在に気づいているだろうし、ね?」

「はあ、無防備にめっさ砂煙を巻き上げてアーマーで降りてきてまいましたからな? そんなもんで隠れるんならやっぱり……」

「あっこのお化け屋敷しかないやんけ! ほんまにめんどいわ。白兵戦なんかアーマーのパイロットがやることちゃうやんけ」

「だから敵対者とは限らないだろう? まあいいや、それなり気をつけながら、予定通りにいざ探検に繰り出すとしようよ。基地の状況の把握と安全の確保が第一だ。お客さんは無理に正体を追求しなくとも、後続の味方に任せてもいいわけだし」

「了解」


 果たして目の前の廃墟とし化した目標の軍事拠点へと、三人で大股でのっしのっしと歩き出すいかついクマ族小隊だ。

 あちこちが朽ちかけたコンクリの建物の、出入り口の一つと思われるものへと歩み寄って、その大型の鉄製の扉を見上げる。

 分厚い鋼鉄の扉はだがこれが微妙にゆがんでいて、外側へと若干傾いでいるのが見て取れる。おまけにひとがひとり通れるくらいの隙間が空いているのに、先頭に立つザニーがちょっとおっかなそうに中の暗闇をのぞき込む。


「ほえ、とりあえずここから入れそうですわ。お客さんもこっから入ってたりして? ほんなら誰から入ります??」

「暗いな? てか、誰からでもいいよ」


「おまえから行けよ! いいトシのおっさんがお化けがコワイとか言うんちゃうやろ? そら、邪魔やからさっさと行けって、早うせいやっ、て、おわっ、いきなりコケんなや!!」

 相棒の灰色熊にムリクリ押されて内部に入った途端にそろって何かにけつまずいたらしい。せわしないおじさんたちの後からのっそりとひときわ大柄な身体を潜り込ませるベアランドだ。

「ふたりとも落ち着きなよ。いいおじさんがみっともないてか、あらら、ほんとに真っ暗だな……!」

 あたりはやはり真っ暗闇で、照明はおろかどこにも非常灯の明かりらしきすらなかったが、少しすれば目が闇に慣れるだろうとぼんやりした辺りを見回してみる。

 人の気配はどこにもなく、すっかりと廃れたそれこそが廃墟であるのが肌身で感じ取れた。

 ゴタゴタしながらその場に立ち上がるおじさんたちとまだ慣れない視界で気配だけで意思の疎通を図るが、いいや、直後にはみんなでぱちぱちとお互いの目を見合わせることになっていた。

「……おっ、明かりがついたね? いきなり! お客さんの仕業かな? 察するにどうやら中の様子に詳しいようだ。何でだろ? それにこの基地の主電源と動力部はまだ生きてるらしい。敵勢から奪還した後はそのまま本来の主のアストリオン側に引き渡す予定だったから、よしよし、破壊された廃屋をただくれてやるよりはまだ面目ってものがたったね!」

 舌なめずりしてひとりでほくそ笑む隊長に、はじめまぶしげに天井の照明を見上げる部下のおじさんたちは、これがやけに微妙な顔つきでうさん臭げにあたりを見回す。

「ちゅうか、なんかイヤな感じですわ。まんまと内部におびき寄せられたような、あっちの手のひらの上で遊ばれてるような、敵でないんなら堂々と姿を現せばよろしいのに……!」

「ほんまやな! いけ好かんわ。みんなでドツキ回したらな!」

「いいじゃないか。こうやってわざわざ明かりを点けてくれるあたり、不意打ちする気はないってわけで、ひょっとしたらそもそもぼくらのことに気付いてなかったりするんじゃないのかな? 何かぼくらとは別の目的で侵入したんだと推測できるよ、もはや♡ 見つけたら仲良くしてあげよう」

「ほんまですか? そやかてぼくらはどないするんです、これと言って目的もなしにいたずらに入り込んでしもうて」

「目的ないんか? なんで入ったんや??」

「探索だろ? ほんとに敵はいないのか、現実に投棄された基地なのか、内部にあぶないモノが残されたりしてないか……なさそうだけど」

 気楽に雑談しながらこれと行く当てもなしに建物の内部の奥深くへと無防備なさまでのそのそ歩いて行くクマ族たちだ。

 とは言えさすがにアーマーのパイロットともなるとそれぞれに腕に覚えありの強者だったから、ちょっとやそっとのものと出くわしても無難に対処ができる。

 で、入ってから三つ目の角を右に折れたところでだ。


 思いも寄らぬものとまんまと真正面で出くわして、思わず悲鳴を発するザニーと謎の闖入者だった。


 Part3



 これと言った気配もさしたる足音もなしに、だがそれは忽然といきなり彼らの目の前に現れた……!

 もとい、もっとしっかりと周囲に気を払っていれば、事前に察知ができたのかも知れない。

 なにはともあれ、無作為に見たまんまのT字路となる通路の角を右に折れた先で、まさかの謎の先客、潜入者との突然の遭遇を果たした明るい赤毛のクマ族のおじさんだった。

 一番先頭に立って先導していたものだから、正体不明の相手とは、一番はじめに接近遭遇を果たすこととなるザニー中尉だ。

 おまけに真正面からもろにこれと衝突した挙げ句、のわっと背後にのけぞっては後続の二人の仲間のクマ族にこの背中をすっかり預けることとあいなる。

 ドンっという鈍い衝撃音と、ザニーのくぐもった悲鳴と、何故か、ぶうっ!といったおかしな悲鳴がほぼ同時に発生する。

 ただし照明が灯っていたこともあり、緊迫感は希薄なのだが。


 相手はいかついクマ族のおやじの体当たりをこちらもまた不意だったのか、それはまともに食らって派手に背後にのけ反っては、ただちにそのまま背中から大げさに転倒していた。

 すってんころりん!

 さながらマンガみたいなありさまでだ。

「うわっ、いきなりなんだい? 大丈夫かい、ザニー中尉! あと、いまのぶうっておかしな悲鳴みたいなのは……誰だろ??」

 見れば、ずてんと大の字で仰向けにひっくり返る何者かを、全身の赤毛を逆立たせてびっくり仰天! そんないまだに身体ごとのけ反るザニーの背中越しに、はてなと見下ろす隊長さんだ。

 拍子抜けしてちょっと呆れた感じに見つめてしまった。

 すると仲間のもうひとりの中尉どの、灰色熊のダッツがこれまた呆れまじりの罵声を浴びせる。

 こちらはおのれの相方のクマ族に向けてだったが。


「おう、しっかりせいや! おもっいきりぶつかってもうてるやんけ? 油断しすぎやろ、ちゅうか、いま誰とぶつかったんや? なんやおもっくそぶちのめしてるやんけ! ええんか?」

「し、知らんわ! ほええ、びっくりしたぁ! ほんまにどないなこっちゃ、いきなりぶつかってこられてよけるヒマあらへんかった。不意打ちすぎるやろ……!?」


 ふうっと胸をなで下ろしながらようやく落ち着いた様子のベテランパイロットのおじさんに、背後からこれを支える若手のクマ族は小首を傾げながらに視線で謎の第三者を指し示して言った。

「不意打ちだったのかな? 今のって?? ともあれ見たところじゃ相手は、まあ、どうやら敵さんなんかじゃないみたいだね? だってそうとも、あれっておそらくは……」

 不可思議な目線で見ているさなか、地べたに尻餅ついた何者かからはおかしな悲鳴ともうめきともつかない声が発せられる。



「ぶううううううっ! いきなりなんなんだブウっ!? ブッ、ふっ、不審者がいるんだブウっ、しかも三人も!? おまけにみんなでかくてとっても人相が悪そうなクマ族なんだブウっ!! わわっ、おっかないんだブウっ、ピンチなんだブウウっ!!」

 あんまり聞き慣れないもの言いと驚きようで、はじめこちらをひっくり返ったまんま顔だけで見上げてくる何者かは、顔面を真っ青にしながらも反射的にその場にいそいそと立ち上がる。

 見るからに動揺している不審者だった。


 おまけひどくたじろいださまで明らかに視線では逃げ道を探し始めるのに、対してちょっと困惑した顔でとりあえずこちらに敵意はないことを両手を挙げて見せるベアランドである。

 寄っかかるザニーをとりあえず背後に押しのけて、みずからが正面に立ってこの場のとっちらかった状況をとりなした。
 
「いやいや、そんなに怖がることないだろう? ほら、言ったら味方同士じゃないか、ぼくら? なんたって見たとおりルマニアの正規軍のぼくらに、そっちはこの大陸の、そうさ見たところじゃアストリオン公国の正規兵だろう、そこのきみってば?」

「ほんまや! あんまり見たことないアーマースーツ着とるけど、もろブタ族やんけ! じぶん? ぶうちゃん丸出しや!!」

「ほえ、アストリオンはブタ族が主流っちゅうんは、ほんまやったんですか? せや、やたらにぶうぶうゆうてるし、一番はじめに出会うたのがこのぶたさんちゅうことは、ほんまに多数派なんや? ちゅうか、人相が悪そうなクマ族ってどえらい人聞き悪いことゆうてるけど、顔面ぶっさいくなぶうちゃんに言われたないわ、そないなこと?」


 ようやく事態がそれと飲み込めたらしく、ここに至ってちょっとしかめ面でお互いの顔を見合わせる中尉どのたちだ。

 おかげでなおのこと人相が悪く見えるが、それを横目で見ながらやれやれと肩をすくめる隊長のおなじくクマ族だった。

 それから目の前でおびえてすくみ上がるばかりの当のブタ族、その実はまだ若いのだろう青年兵士に向けて言うのだった。

「まあまあ。ひと口にブタ族とは言っても、いろいろあるらしいんだけどね? そうか、きみって見たところかなり正当派の純血のブタ族と見受けるけど、そんなブタ族さんがこんなところで何をしているんだい? おまけにたったのひとりきりで??」

 とりあえず同盟を結んでいる友邦国家の人間同士、なるべく紳士的に臨んでやるのだが、三匹、もとい三人のクマ族の中でも特に背が高くてがっちりした体格のクマさんのもの言いには、だが如実に引きつった表情で二歩三歩と後ずさる若いブタ族だ。

「ひいいっ、た、食べられてしまうんだブウっ!! ぶぶうっ、誰か、助けてくれなんだブウ!!!」

「そんなわけがないじゃないか! ほんとに人聞きが悪いな!?」

 不覚にもついには目をむいてわめいてしまう。

 かくして閑散とした通路に響き渡るおのれの声に、はっと我を取り戻すクマ族の隊長だ。

 一度わざとらしく咳払いなんかして、改めて目の前のブタ族に向き直るのだった。 

「おほん! いいから落ち着きなよ、いい加減に? お互いに偶然にもこうして鉢合わせしてしまったわけだけど、それぞれにそれなりの理由があってのことだろう? だったらきみはどこの誰で、何の目的でここに潜入しているんだい? そう、あとついでにここがこんな状態なのも、それと説明ができるなら是非とも聞かせてもらいたいもんだよな……!」

「ぶっ、ぶううううっ……! 敵ではないんだブウ? いきなりだからびっくりしてまったブウけど、怪しい見てくれだから味方とはわからなかったんだブウ、ほんとに味方なんだブウ?」


 ひとの言葉をどうにも信用しかねるように不信感があらわなぶたっ鼻をひくひくとひくつかせるブタ族に、対してこちらはみずからの太い首をはてなと傾げるクマ族だ。

「? 怪しい見てくれって、あ、後ろのふたりのおじさんたちのことかい? ひょっとして?? まあ、確かにこのぼくなんかと比べたらだいぶ派手なカッコをしてはいるけど……」

 言いながらぐるりと背後を見回すのに、これに目と目が合うふたりの部下のおじさんたちは、どちらも納得したような釈然としないような何やらビミョーな面持ちだ。

「ほぇ、つまりはこのぼくらのカッコのことゆうてるんですか、そこのぶうちゃん? なるほど、かつての王宮付きの特務戦術曲技団、ひと呼んで〝サーカス・ナイツ〟の衣装やから確かにレアなんやと思うけど、そないにビビらんでもよろしいのに」

「なんやっ、人相が悪いやらカッコがダサいやら、ほんまに言いたい放題やんけ! ほんまに焼き豚にして食ろうたろか?」

「ダサいとまでは言われてへんのちゃう??」

「ひええっ! やっぱりおっかないんだぶう!!」

「やめなよ。話が進まないじゃないか? ん、それじゃこちらから話すよ。とにかく良く聞いてくれ。ぼくらはルマニアから派遣された、独立遊撃戦隊のアーマー部隊パイロットで、後ろにいるのが仲間のザニー中尉とおなじくダッツ中尉どのだよ。ちなみにこのぼくが隊長のベアランド、少尉だよ。よろしくね!」

 相手からの自己紹介にあって、それまでの驚きの表情の中に今度はまた違った別種の驚きみたいなものが浮かぶブタくんだ。

「隊長、ベアランド? ブゥ、えらい中尉がふたりもいて、なのにこの若い少尉どのが隊長さんなんだブウか? 確かに一番強そんなカンジはしてるんだブウけど……?」


 いざここまでにいたる複雑な経緯も含め、いろいろとワケありの寄せ集め部隊だからほうぼうに違和感はあるのだが、いちいち説明するのが面倒なのでこの顔つき苦めるだけの隊長さんだ。

 挙げ句、後ろでひそひそ話が聞こえてくるのにはいっそうのこと苦笑いになる。



「ほうれ、困惑しとるで? あのぶうちゃん! そりゃそうや、階級下の若手のクマさんが階級上のベテランのおっさんふたりも従えとるもんやから、わけわからへんのやろ! ゆうてるこのおれもわけわからんし!!」

「ええんちゃう? いざ外に出て、おのおのが乗っかってるギガ・アーマー見たら、それで一発でわかるんやろうし。あないにいかついお化けアーマーや。それをひとりで切り盛りしてるっちゅうたら、アーマー乗りならすぐにも目の前のおひとの実力のほどっちゅうもんがイヤでも理解できるんやろ」

「ははは……っ、で、そっちはどうなんだい? さすがにもう落ち着いただろ?」

 左右の肩をすくめ加減に聞いてやるに、相手のやや小柄だが丸っこい太った体格のブタ族は、まだ緊張の取れない真顔でありながら鼻息荒く言葉を返してきた。

 とりあえず落ち着いては来たようだ。

 それだからビッと敬礼返しながらにうわずった声を張り上げる若手の兵士である。

「これは失礼しましたんだブウ! じぶんはアストリオン大公国宮廷直属・近衛師団所属のガードムンク、タルクス・ザキオッカス准尉なんだブウ! 見ての通りのアーマー・パイロットで、友邦国の援軍に加勢するべくはるばる駆けつけて来たんだブウ!!」

「へえ、そう言えばそんなこと言ってたっけ? ぼくらの艦長(ボス)?? 確かにここでお互いに落ち合う予定ではあったんだけど、なんか大番狂わせでどっちらけちゃったな? なにせ攻略するべき基地はこんなありさまだし、あときみ、合流部隊はたったひとりだけなのかい? おまけにアーマーもなしに??」

 そんなちょっと白けたふうな顔で見返しながら、だったら基地の外に停めてあったあのジープはきみのやつかい? とついでに聞いてやったところ、ビクンと大きく跳ね上がってなおさらに声を荒げるブタ族くんなのだった。

「ブウ? ああ、あいにくじぶんの新型アーマーはまだ調整が間に合わなくて……あ! そうじゃなくて、じぶんは大事な役目を負ってここにはせ参じたんだブウ!! ある大切なVIPの護衛とこれを無事にルマニアからの援軍部隊に引き渡すために! ブウ、でもそれなのに肝心のそのひとが……!」

「ビップ? あ、それってひょっとして……」

 頭のどこかに引っかかりを覚えたらしいクマ族のビミョーな表情に、切羽詰まった形相のブタ族がわめいた。

 クマ族たちはみんな顔を見合わせてしまうのだが。

「ぶううっ、絶対に無事に送り届けるように言われたその要人と、気が付いたらはぐれてしまったんだブウっ!! 一生の不覚なんだブウっ、何かあったらただじゃ済まされないんだブウっ! だから大慌てで探していたんだブウっ!!」

「なんや、それであないに勢い込んでぶつかってきたっちゅうんか? えらい人騒がせなこっちゃ、こっちは心臓破けるくらいにびっくらこいてもうて、しんどいわあっ……このブウちゃん!」

「迷惑なこっちゃで! あと大事な任務をもろしくじっとるやんけ? ほんまに大丈夫なんか、じぶん??」

「ビップってのがやけに引っかかるけど、ぼくの頭の中の人物と一致するなら、ちょっと同情しちゃうかな? 話には聞いていたけど、すっかり忘れていたよ。ここど合流する予定だったんだ、あの根性ひねくれた天才博士、いいトシした犬族のマッドサイエンティストとは……!」

「?」

 おじさんたちが背後で顔を見合わせるのに、肩をすくめて会えばわかるよ、とことさらにビミョーな顔で視線を流すベアランドだ。げんなりした雰囲気がなぜか全身から伝わった。

 それから改めてブタ族の若い士官と向き合う。

「この中ではぐれたのかい? だったらそう遠くには行ってないだろう、相手はけっこうな年寄りで、軍人でもないんだから」

「博士のことを知っているんだブウ? とりあえず中を探索して、動力室を探り当てて電源を復活させたら、そこで忽然と姿を消していたんだブウ! 外で気配がするとかなんとか最後に言い残して……」

「気配? あ、それってもしかしたら……! この中でかくれんぼするのならかなりの一苦労だけど、それだったらむしろ来た道をまんま戻ってこの外に出ればいいんじゃ無いのかな? 他に行くあてなんてないだろうし、あの根性ひねくれた博士さんの興味を引きそうなものって、もはやアレしかないわけだし」

「?」

 なおさら首を傾げて目を見合わせる仲間のクマ族たちには、とにかく出ればわかるよ、とひたすら苦笑いの隊長さんだ。

 それだから新しく仲間に加わったブタ族を引き連れて来た道をまんま後戻りすることとなる。

「さあ、それじゃタルクス、だったっけ? ぼくらと一緒に来ればいいよ。お目当ての要人にはきっとそこで再会ができるから。ちょっと急ごう。まかり間違っておかしなことされたら厄介だし、あの偏屈で有名な天才開発者の興味本位なんかでさ!」

「わ、わかったんだブウ! よろしくお願いするんだブウ!!」

「ほんまにぶうぶうやかましいぶうちゃんだぶう、やのうて、ブタくんやわ。おかげでうつってまいそうや」

「ちゅうか、もろにうつされとるやんけ! にしてもここまで来てまた戻るんか? なんやめんどいのう」

 ちょっと早足で先を急ぐ若いクマ族に、ベテランのクマ族たちとブタ族がぞろぞろと続いて廃墟と化した基地の通路のチリやゴミを踏みしだく。

 かくして何事もなく外に出たところで、また新たなる人物と遭遇するベアランドたち一行だった。 
 

 Part4



 もと来た道を来たままにたどって、早足で建物の入り口までたどり着いたベアランドたち第一小隊の面々であったが、いざ外に出る時にはちょっと慎重にあたりを見回してからの行動となった。

 そこに行き着くまでに外部でおかしな物音と、かすかな振動が伝わったのに皆が一様に顔つきをしかめる。

 キョロキョロと鼻先を揺らしながらダッツ中尉の言葉にその場の全員がいぶかしく頭を傾げた。

「いま、発砲音みたいなもんがせんかった? ちょっと振動みたいなもんも伝わってきたし?? なあ」

「知らんけど。他にもおるんかの、おかしなもんが?」

「いや、今のはきっとぼくのランタンだね? 何かに反応して自己防衛動作を発動したみたいだ。すぐに戻って来いって異常感知のアラームが出てる。ほら!」

 自前の携帯端末に赤い警告文が出ているのを示しながら、入り口の手前で深呼吸してまずみずからが慎重に乾いた大地に踏み出す。

 相変わら乾いた風が吹くあたりには、これと目立った変化は見受けられなかったが、それまではなかったはずのものが、ひとりの人影らしきがほどなく離れた場所にあるのを見つける。

 用心してうかがうが、これと危険性みたいなものはかんじられなかった。あるひとりの小柄な男性らしきそれは、裾と袖のやはけに長い衣服で白衣のそれだとわかる。ドクター然とした様相に頭の中にあった人物のそれと合致するのを確信するクマ族の隊長だ。背後のおじさんたちが怪訝な表情で見ているのが気配でわかったが、さらにその後ろからぶひっと興奮したブタ族の声が上がる。

「ぶううっ、いたんだブウ! あのひとなんだブウ! 博士っ」

「やっぱりね! でもあの博士に反応したわけじゃないんだよな、ぼくのランタンは? まあ、危険人物に違いはないんだけど……?」

 ちょっと間の抜けた顔つきで眺めてしまうのに、その相手はなぜだかどこかあさっての方角を向いてこちらに見向きもしない。

 気配ではとっくに気付いているはずなのだが?

 それに焦った護衛のブタ族がドタドタと駆けよって、はじめてこちらに身体を向ける白衣の人物だった。

「ぶうううっ! こんなところにいたんだブウか? 心配したんだブウっ、あんなにこのおれからは離れないでいてくれってお願いしたのに!!」

 ブタ族の護衛のタルクスのあわ食った言葉に、だが対して怪訝な表情でこれを見上げる相手の博士だ。小柄で華奢なかなり年配の犬族をちょっと真顔になって見つめながら、背後のクマ族たちにほらねと目線を向ける。

「VIPとも言われていた通り、かなりの重要人物であるんだけど、同時に問題児でもあるんだよね。ふたりとも、会うのははじめてかい? なら用心したほうがいい、いろんな意味でね?」

 かなり含むところがあるもの言いに、やや困惑気味のおじさんたちは冴えない面持ちで返す。

「なんやどないなひとかと思いきや、ただの貧相な犬族のおじいですやん? 吹けば飛ぶよな? なにがあかんのですか?」

「それやったら噂くらいでは聞いたことありますわ。こうして見るのははじめてやけど。人畜無害っぽいちみっちゃいワンちゃん、ちゅうか、味方の技術者の先生ちゃいます? それがこないな前線まで出てきはったんや」

 これと興味感心が希薄なベテラン勢に、すでに一度面識がある若手のエースパイロットは若干のうんざり顔で口元をひん曲げる。

「それってどんな噂だったんだい? 確かにルマニア軍きっての天才技術開発者だけど、その性格や人となりが破綻しまっくってて、そっちでも有名なんだよね。類を見ないほど独創的で革新的なアーマーの設計思想がとにかくひとりよがりで独善的、かつ言動が冷血にして非人道的な文字通りのマッドサイエンティストってね……!」

 ちょっとため息まじりでまた問題の白衣の紳士然とした犬族をみてやるのに、こちらのことなどまるで意に介さないような憮然とした態度面持ちの博士はブタ族に向けてぞんざいに言い放つ。

「」 





アストリオン・中央大陸(ルマニア・東大陸/アゼルタ・西大陸)
アストリオン・種族構成・ブタ族、イノシシ族、イノブタ族などがおよそ半数を占める。アストリオン自体は宗教色の強い、宗教国家でもある。元首・イン ラジオスタール アストリアス(家)

アストリオン・大陸構成
東側 アストリオン 60%
中央砂漠 空白地帯 25%
西側 ピゲル大公家 15%
 西側は過去にあったルマニア(タキノンが領事だった?→後のタルマとの確執になる?)とアゼルタのゴタゴタで独立を宣言したピゲル公爵の独立領となり、後にアゼルタと同盟関係になる。

主人公、ベアランドたちが目指すのは、大陸の北岸地域から侵入して、大陸内陸部の中央砂漠にあるアーマー基地。今は西の大公家と結びついたアゼルタの支配下にあるのだが…?
 実は無人化している?? レジスタンス(ベリラ、イッキャ?)の暗躍…!?

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ルマニア○記/Lumania W○× Record #018

#018 ※今回からグーグル アドセンスの都合でタイトルの表記が一部修正されています(^^;) はちゃ~…!

 Part1

 
 晴れ渡る空の下、西から吹く風はとても穏やかだ。

 海面から高度およそ1000メートルの空中での対峙から両者、しばしの沈黙――。

 まずはどちらから動くこともなく、しごく冷静に互いの隙をうかがう二機の隊長機だった。

 その内の一方で、とかく大型で全体が濃緑色をした新型アーマーを駆るクマ族の若きエースパイロットは、ペロリと舌なめずりしてひとりごちする。

 背後でやたらドタバタしているらしいベテランのおじさんパイロットたちのわめき声が今も左右のスピーカーからリアルタイムで垂れ流しだったが、そんなこと一切気にもとめずで正面のメインモニターをひたすらに注視していた。

「ふうむ、やっこさん、さっきからまるで動くそぶりが無いけど、どうしよっうてのかな? このまんまにらめっこするわけじゃないだろうに、さてはこっちから仕掛けるのを待ってる……なんて受け身なヤツでもありゃしないよね? んっ……!」

 不意に耳朶を打つ、どこからか通信が入ったことを知らせる短い電子音とともに、メインモニターの一角にこの通知ウィンドウが表示される。

 ただの一瞥してそれが目の前に仁王立ちする敵アーマーからのものだと理解するベアランドだが、やや苦笑いしてどうしたものかと考え込んだ。

「あらら、軍用でなくてちゃちな民間用の一般回線なんかで通信してきてるよ……! 確かにあちらさんの軍用回線のコードなんてわからないから、これが一番手っ取り早いんだろうけど、えらく割り切った隊長さんだな? どうしたもんだか……」

 言いながらも手元のコンソールに利き手を伸ばしてスイッチをあっさりとオンにするクマ族の隊長だ。

 こちらもとかくあっさりとした性格の持ち主だった。

 するとただちに目の前の画面に見たこともない若い軍服姿の男が、このバストアップで出現するのだった。

 てっきり音声でのみの交信をするものだと思っていた若いクマ族は、目をまん丸くして思わずそれに見入ってしまう。

 ぱっと見ではもっさりとした見てくれの地味なカーキと焦げ茶の軍服、いわゆるパイロットスーツであったが、その実はすらりとしたスリムな体型であることがうかがえる男は見たところまだ若いキツネ族で、それがやけに落ち着き払ったさまでこちらを見返してくれている。

 堂とした相手のさまに、片や内心でビックリしているのを見透かされてはいまいかと前のめりだった姿勢を背後へと落ち着けて冷静を装うのだが、ちょっと苦笑いして肩をすくめてしまった。


「あらら、まさかの画像付きで顔まで拝めるとは思ってもみなかったね! ビックリしちゃったよ。あ、てことは当然、こっちの顔もバレちゃってるんだ? いやはやまったく、誰でも傍受可能な一般の通信回線で、隊長さんがやるようなことじゃないだろうさ……!」


 今さらだと取り繕うのをやめて思ったことをまんまぶっちゃけてやるに、この表情がぴくりとも変わらない相手機の隊長、こちらもまだ若いのだろうキツネ族の男は、済ましたさまで静かな口ぶりのもの言いをしてくれた。

「フッ……! このような見え透いた挑発にいともたやすく乗ってくれるあたり、貴様もなかなかのうつけなのであろう? そのふざけた見てくれのアーマーといい、相手にとって不足はなし。あらためて気に入ったぞ……」

 それはやけに雰囲気のあるさまで、おまけ勝手に何かしらの納得をしたものか?
 
 静かに左右の目を閉じる、キツネ族の男だ。

 アーマー同士の戦闘中に大した度胸だった。

 このあたり、えっ?と妙な違和感を感じる若いクマ族は、とてもビミョーな感じでそれを見てしまうが、真顔で瞳を開ける相手のキツネはまたさらに好き勝手な言いようでのたまうのだった。

 静かな口ぶりでやたらな凄みがあるが、一方的に聞かされるクマ族の耳には、もはやちょっと痛い感じで聞こえていたか?

「名を名乗れ……! この場を限りに切って捨てるつもりだったが、いいや、貴様とは長い付き合いになるのやもしれん……そうよ、これまでの戦いが物語っている。不敵な面構えがやはりあなどれぬ男よ、違うか、クマ族の隊長どの」

「は? 何、言ってんの?? 名を名乗れっていきなり……! そういうのってまずはそっちから名乗るものなんじゃないのかな? 別に構わないんだけど、名乗らないとはじまらなかったりするのかな?? なんかおかしな展開になってきちゃったよ。通信に出たの、ひょっとして失敗だったかな……」

 また大きく肩をすくめてしまうのに、モニターの中でこちらと対面する見てくれシュッとしたさまのキツネ族は、相変わらずひたすら静かなまなざしでこちらを見ている。

 内心で舌を巻くベアランドだ。

「やれやれ、わかったよ。名乗ればいいんだろう? 戦場でのんきに名刺交換もありゃしないもんだけど、ぼくの名前はベアランドだよ。呼ぶならそう呼んでくれ。まんまで笑っちゃうよね! よもやフルネームは必要ないんだろう? なんならこのスリーサイズも教えてあげようか??」

 そう観念したかに告げてやるに、だが茶化したセリフは一切、聞き入れないひたすら真顔のキツネ族は、どこまでも落ち着き払ったセリフまわしでまたほざくのだった。

「ベアランド、とな……なるほど。心に留め置いてやろう。この場で果てるような見かけ倒しの腰抜けではないと見越して……! わたしの名は、キュウビ・カタナ……カタナと呼ぶがいい」

「あらら、ご丁寧にフルネームで! でもそんなの呼ぶ機会はお互いにないんじゃないのかな? とりあえず覚えておくけど。なんの時間だったんだ。もう切ってもいいよね? この通信??」

「フッ、それがこの戦いのはじまりだと、貴様がとくと理解しているのであればな……好きにするがいい」

「あ、そ! じゃあね!! 背後のおじさんたちがえらくはしゃいじゃってるし作戦遂行中だから、遠慮無く切らせてもうよ! お互いに後悔しないように全力を尽くそうね、気取ったキツネのイケメン隊長さん!!」

「カタナだ。そう呼ぶことを今し方、許したはず……」

 もはや聞く耳持たないクマ族の若い隊長さんだ。

「ようし、ランタン、パワー全開でただちに戦闘機動だ! あのおかしな白いアーマー、やたらにすかしたキツネ族の隊長さんをとっとととっちめてやるぞ!! 全砲門開いてお前の本気をしっかりと見せてやれっ!!」

 Part2


 ※ベアランド小隊、ダッツとザニー、キュウビ小隊、チャガマとゴッペのコンビのアーマー・バトル!時間があれば…!!  
             保留w


 Part3


 大空に縦横無尽に無数の光りが走り、轟音がとどろく!

 ビームと銃弾が激しく交錯する二機のアーマー同士の決闘は、いよいよ佳境を迎えつつあった。

 ベアランドが搭乗する新型アーマーの周囲を凄まじいスピードで駆け巡り、四方八方から銃弾を見舞う敵のキツネ族のアーマーは、一瞬だけその動きを止めて、また互いに正面でこの機体を向かい合わせる。

 白の可変型アーマーが今はスリムな人型のロボット形態となって空中に直立して静止。そのコクピットの中で正面のモニターをにらみ据える若きキツネ族の隊長は、異様な見てくれをした緑色の大型アーマーに向けて言葉を発するのだった。

 あいにくとあちらからの通信は切られていたので聞こえはしないのだが……。

「フッ……! どうした、まだその実力の全てを見せてはいないのだろう、貴様は? のらりくらりと攻撃をかわすだけでは戦には勝てはしないぞ。いい加減に本気を出すがいい……!!」

 いいざま殺気を放って操縦桿を手前に引き寄せる、自らをカタナと名乗ったキツネ族は目に止まらぬ足裁きと利き手のクイックモーションで機体をジェットフライヤーに変形、急上昇させる!

 対するクマ族の隊長、ベアランドは飛行タイプで特攻さながらに急接近する敵影、これを反射的に真正面から受けてやろうと待ち構えるが、それが突如として目の前で急停止、おまけロボットのアーマー形態で対峙するのにちょっとだけ意表をつかれる。



「そんな無理矢理な突撃かけようがパワーとガタイのでかさじゃこっちが上さ! はたき落としてくれるっ……て、なんだ、いきなり急停止してそんな見つめられても? て、また!!」

 つかの間の静寂だけ感じさせてさっさと飛行形態に変形、かつ上空へと逃げ去る敵影を一度は視線だけで追いかけるが、また直後には舌打ち混じりに背後へとその視線を転じていた。

 目にも止まらぬ素早い機動で相手を攪乱した後、この死角を突いてくる敵のやり口はとっくに理解していた。

 よって思ったとおりにこの機体の背後に上空から急襲かけてくる白いアーマーの影を、目の端でチラとだけ確認するなり迷わず手元のトリガーを引き絞るベアランドだ。

「ほんとにひとのバックを取るのが上手だな! いやらしいったらありゃしないよっ、でもあいにくとコイツに死角なんてありゃしないんだ! そら、ランタン、一発食らわせてやれ!!」

 ドドンッ……!!

 大きくていかつい見てくれの機体の至る所、果ては背後にまで装備した高出力のビームカノンを一斉射して不意打ち見舞ってやるが、憎らしいこと相手はかするでもなくこれを難なく回避してのける。

 だがおよそ山勘で撃ったのは、はなからただの牽制のつもりだったクマ族のエースパイロットは、その隙に大型の機体をぐるりと反転させてまた敵のアーマーと真正面で対峙する。

 ここでまたつかの間のにらみ合い……!

 その末にもはやいっそゼロ距離射程での肉弾戦、ドッグファイトに持ち込もうかと図体のでかい機体のスロットルを利き足で踏み込むベアランドだが、あいにくと敵の白い影はこの姿をまたしてもやでいずこかへとくらましていた。

 スピードではいささか分が悪いのがイヤでも思い知らされる。

「あらら! こりゃあらちがあかないな? いつまで経っても無意味な追いかけっこのまんまだよ。ひょっとしたらこっちのエネルギー切れを狙ってたりして? あの異常なスピードに対抗するのはできなくはないけど、一か八かなんだよな……!」

 通常よりも巨大な機体の鈍重さを補うためのギミックとして、それすなわち本体から切り離して遠隔操作が可能な、両腕の独立機動型のハンドアームカノンがそれを担っていたが、これは既にネタがバレているので無闇やたらには使えないと承知していた。

 相手のただならぬ力量から察するに、これ見よがしなロケットパンチは簡単によけられた挙げ句にまんまと撃ち落とされたりしかねない。母艦でこの帰りを待っている若いクマ族のチーフメカニックの青ざめた顔が脳裏によぎって、かなりためらわれた。

 おまけ壊れたパーツを海から引き上げて持ち帰るのもかなりの難儀だ。開発経緯が何かと特異な新型機では従来機との部品の共有も困難だった。

 内心で舌打ちしてしまうが、ふっと正面のメインモニターの左の隅で何やらやたらにガチャガチャとした光景が見切れた気がして、そちらに意識を向ける隊長のクマ族だ。

 すっかり失念していたが、同じ部隊のメンバーのベテランのおじさんクマ族たちがかなり混乱したさまで自機のアーマーを右往左往させているのにパチパチと目を白黒させる。

「あっ、ダッツ中尉とザニー中尉どの、経験豊富なやり手のクマさんコンビがずいぶんと苦戦してるみたいだな? 意外と?? そういや相手のおんなじ赤と青のカラーリングのアーマー、どっちもかなり特殊な兵装だったけど、出撃前のブリーフィングで説明してなかったけ?? 所見でアレは確かにしんどいか……!」

 左右のスピーカーはやたらとうるさいから今はオフにしていたのだが、あらためてオンにすると思った通りだ。

 やかましいおやじたちのわめき声が左右の耳をつんざいた。

 やはりこれまた思った通りの展開らしい。

 それにつき、ははん、とひとりで納得する隊長さんだ。

「そうそう。あの赤い大型のアーマー、相手からのビームのエネルギーを機体前部にあるあのおかしな形のシールド・ジェネレーターで吸収して、おまけに跳ね返すだなんて反則じみたマネをするんだよね! それを相棒のあのやたらに身軽で小回りがきく青い小型のアーマーがさらに空中ではじき返して、あらぬ方向からカウンター攻撃を繰り出すだなんてこれまたとんでも戦法で相手を攪乱するという……あ、そっか! その手があったか!!」

 ピンと何かしら閃いた顔つきでペロリと舌なめずり。

 おまけに頭の左右の耳を楽しげピクピクさせるクマ族は、にんまり顔でもう傍らの白いアーマーへと向き直る。

「へっへ、いいこと思いついちゃった! 毎度毎度で申し訳ないんだけど、この場をお開きにするとっておきの戦法がぼくらにはできるんだよね? 思えば前回もピンチをこれでまんまと切り抜けたし♡ あの赤いアーマーくんには悪いんだけどさ……!」

 アーマーの主動力源、メインエンジンのパワーバランサーを素早く片手で操作しながら手元の通信機のスイッチをオンにする。

 すると通常の一般回線のそれはまだ生きていたようで、そちらに向けてしたり顔して言ってやる。

「おほんっ、ええ、聞いてるかい、キツネ族のやり手の隊長さん! ん、カタナ、だったけ? あいにくとこの場で決着はつけられなかったけど、とりあえずで判定勝ちくらいは決めさせてもらうよ。当然このぼくらのね!」

「……貴様、何を言っている? うつけたことを……」

 やや間を置いて聞こえてきた怪訝な相手の返答には一切、耳を貸さずに一気にまくしたてた。

「悪いけどこっちもいろいろと忙しいんだ! 本来の目標はもっと先だし、なるべくならみんな無傷でたどり着きたい。ここでこんな消耗戦は望まないんだ。戦場は広いんだから、またしかるべき時にしかるべき場所でお相手するよ。それじゃまたね!」

 言うなり今度は左右のスピーカーに向けてがなるクマ族だ。

「ダッツ、ザニー、両中尉とも流れ弾に気をつけてくれよ! ちょっと無茶なことをするから、とにかく全力で回避してね!! それじゃっ、ランタン!」

 いきなりのおまけ何やらただならぬものの言いに、左右の耳にはびっくりしたようなおじさんたちの声が絡みつくが、やはり一切気にせずで握った両手の操縦桿に力込めるベアランドだ。

「よっし、なんの予行練習もなしにいきなりでアレなんだけど、フルパワーで全砲門一斉射撃だ! フルレンジバースト! ついでにメインのコアブラスターも完全解放、拡散なしの一点集中でぶちかますよっ、狙いは当然、あの赤いアーマーの突き出た土手っ腹のジェネレーターだ!!」

 一度深呼吸しながら手前に引き寄せて、雄叫び発してただちにそれらを思い切りに押し倒す。

「そおらっ、ゆくぞ、ランタン! おおおおっ、フルバーストしてからのおっ、はああっ、ライトニングボルトぉおおっ!!!」

 その瞬間、すさまじいエネルギーの圧がその機体の全身から吹き上がるのがよそからでもはっきりと見てとれただろう。

 巨大な身体中の至る所に装備された無数の砲門が一斉に光りの光弾を四方八方へと吐き散らす。

 それはそれは壮観な眺めだが、その場に居合わせた周りからしてみればおよそただ事ではない大惨事だ。

 敵味方お構いなしに放射状に放たれる光りの束、ひとつひとつが戦艦の主砲さながらの灼熱のエネルギー弾は、ただの一発食らえば機体が粉みじんになりかねない。

 しゃがれたおじさんたちのたまぎる悲鳴や怒号が聞こえたが、そこにはひとつも耳を貸さないで画面の左の奥にターゲットした目標をにらみ付ける隊長だ。

 機体前面下部、腹からやや下のおよそ股関節あたりに位置する固定型の大型キャノンはここぞという時のための奥の手で、ひとたび唸りを上げれば射線上にあるもの全てを灰燼と化すほどの飛び抜けた威力を秘めていた。

 ただしその代わりにひとたび撃てばエネルギーの損失が激しく連発は不能、かつこれ以降の機体の戦闘機動にかなりの支障を来したりもした。

 ぶっちゃけ機体上部に装備した戦艦ばりの大出力シールドジェネレーター(バリア)の稼働がしばらく不可能になるほどの大食らいなのだが、そこにつけ込まれてはかなりキビシイ局面におちいる。

 言うなれば諸刃の剣だった。

 よって右手のモニターに映る敵の隊長機を目の端っこだけで意識しながら、だがこの焦点はしっかりと赤いアーマーにのみこの意識を集中させるやり手のクマ族だ。

 してやったりと右の拳でガッツポーズをつくる。

「やったね! 大当たり!! ど真ん中にど直球でぶち込んでやれたよっ、さすがにキツいだろう? 戦艦の主砲を何発もまとめて食らった大ダメージはいかにエネルギー吸収型の新型ジェネレーター搭載機でも無事でいられるはずがない! ほうらね!!」

 機体各部から白い煙か蒸気みたいなものを発する赤いでぶっちょのアーマーに、にまりとほくそえむ隊長さんだ。

 左右のスピーカーからは部下のおじさんたちからあわ食った声が聞こえるが、やはりしれっと聞き流した。

 そうしてぐるりと視線を左手のモニターへと向かわせる。

「ちょちょちょっ、なんやねんっ、いきなり!? びっくりしたあ!!」

「た、た、隊長、いきなりなんですの? わけがわからへん、どないして??」

「いいから! ぼくらの勝ちだよ、それだけだ! 見てればわかるさ♡」

「なんでぇ?」

「ほええ??」

 ひどく動揺したおやじたちの声をやり過ごしながら、相手の隊長機の挙動にのみ意識を集中――。

 するとつないだままの通常回線からかすかな舌打ちめいたものが聞こえたようで、回線をぶち切るなりに白いアーマーはあらぬ方向へとこの向きを転じる。

「ハッ、やっぱり、そうなるよね? 前回の時もそうだったけど……!」

 頭のメインカメラが追尾する景色、およそこちらからの射程を外れた大回りの機動で被弾した仲間の元へと合流する白いアーマーは、息も絶え絶えかのような赤い大型アーマーと青い小型アーマーに転進を命じて、みずからはダッツとザニーのアーマーに威嚇の射撃を食らわせながら自身の機体もじりじりと後退させる。

 これにて勝負ありだ。

 負けじと気を吐くふたりのおじさんクマ族たちには深追いはするなと伝えながら、遠ざかっていく三機のアーマーをモニター越しに見送るベアランドだった。

「ふうむ、ああやって負傷した部下を見過ごしておけないってあたり、やっぱりいい隊長さんなんだよな? 性格的にあんまりおともだちにはなりたくないけど。やれやれだ! さすがに3度目はもう通用しないだろうから、また他の手を考えなくちゃね。そもそもリドルはこんな無茶なやり方、あんまり賛成はしてくれなさそうだし……」

 いいながらちょっとだけ思案を巡らせて、残る仲間の機体に向けて通信を開く。

「それじゃ、ダッツにザニー中尉、休む間もなしにアレなんだけど、見たところどっちも機体に目立った損傷はなさそうだからこのまま目的地のアストリオンに……ん?」

 不意にモニターの真ん中に浮かび上がる注意喚起のビックリマークと短い電子音の警告に、場の空気がちょっとだけ静まりかえる。

「え、今さら新手かい? いや、なんだろう、何かがぼくらの背後からやけに低速で近づいてくるぞ? これって……」

 機体をぐるりと背後へと巡らせて、メインカメラが改めて捉えた映像に見入るクマ族の隊長はややもせずに納得していた。

「あ! あれって、ビーグルⅣだよな? リドルの補給機か! わざわざここまで追っかけてきてくれたのか、ありがたいな♡ 燃料と弾薬の補給ができるし、日が暮れる前までに内陸のポイントまで行けそうだ。それじゃ、合流するよ、我らが天才メカニックくんのお世話になろう、まさかの空中補給とは、でもこれはこれでいい訓練だよね!」

 強敵との戦いから仲間の補助を受けて、また新たな任務、本来の目的へと駒を進めるベアランド小隊であった。

 目的地の中央大陸はひたすらな広がりを見せて大海に横たわる。

 その遙か内陸の地に、目指すべきターゲットがあった。

 戦いはこれからなのだと弛みかけた気を引き締めるクマ族小隊である。

              ※次回に続く……!
 

プロット  ベアランド vs キュウビ
     お互いに通常回線でのやり取り、
     ランタンとゼロシキの空中戦
     ダッツ、ザニー vs チャガマ、ゴッペ

※本記事はまだ執筆途中です(^^;) 創作過程をニコ生ライブで絶賛公開中!オリジナルのキャラクターと話せたりキャラが歌ったりするよ♪

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ルマニア戦記/Lumania War Record #017

#017


 Part1


 若いクマ族の小隊長が見ているさなか、おじさんのベテラン・クマ族コンビと、対してこちらはまだ若手なのだろう、敵アーマー・パイロットたちによる、新型アーマー同士の空中戦は、いざ始まればすぐにもこの大勢が決しようとしていた。

 経験値の差もさることながら、それぞれのアーマー自体の性能差がもはや歴然、結果はやはり、はなから知れていたらしい。

 よってあと少しで勝敗がつくのではと思われたところでだ。

 だが不意に、それぞれのコクピット内に短い警告音、甲高いアラートが鳴り響く……!

 これに反射的に目にした手元のレーダーサイトには、目指す大陸の西海岸域方面から出現したとおぼしき、また新たなる複数の敵影が、こちらに向けてまっすぐ急接近するのがはっきりと見て取れる。

 これによりようやく今回の本命が登場、本番が始まったのだなと気を引き締めて正面のモニターに臨む、隊長のベアランドだ。

 当人としても、そろそろだろうと予期はしていた。

 迫り来る影は、いつぞやに見たものとまさしく同一であることを、それとしっかり視認もする……!

 強敵だった。


 ベアランド小隊(第一小隊) 隊長・ベアランド少尉(クマ族)、部下・ダッツ中尉(クマ族)、ザニー中尉(クマ族)と、その搭乗するアーマーのイメージ図。ベテランクマ族コンビのアーマーに、めでたく色が付きました!

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 接近する影は都合、三つ。

 そのどれもが以前に会敵したことがあるものと同じであることを、正面のメインモニターに一時的に浮かび上がる、戦況表示ディスプレイがそれと教えてくれる。

 アーマーの頭脳たる高度集積戦術コンピューターが相手機のデータを適宜に解析、覚えていたものと100%の確率で完全適合。

 それらの中でもこの先陣を切ってこちらに突撃してくる高速機動型のアーマーは、これがなかなかにあなどれない実力者であることを、もはやその身をもって経験している隊長さんだ。

 これはさしもの腕利きのベテランクマ族コンビでも、油断していたら一撃でのされかねないな……!!


 と、それまで背後に控えさせていたみずからの大型アーマーを、慎重にゆっくりと微速前進させる。

 どちらも戦いの最前線を渡り歩いてきた有力者たちなだけに、何かと我が強い、ダッツとザニーの両中尉どのたちだ。


 よってこれにさてなんと言ってこの場を説明したものかと内心で頭をひねるのだが、何か言うよりもあちらのほうから何やらして、いささか気の抜けような声が通信機越しに入ってきた。

「はえ、なんやようわからんけど、相手のひょろっこいアーマー、どちらも下がっていきよるでぇ? カトンボが気配を殺して姿をくらますみたいによう? 隊長ぉ、どないしましょ??」

「え、そうなのかい? あ、ほんとだ! あっさり引いていくね? まったく引き際がいいやら、やる気がないのやら??」

 これまでダッツとザニーの相手をしていたはず、モニターの正面に捉えられていた二機の飛行型アーマーは、そのどちらともが新手が入ってくるのと入れ替わりに、この機体を我先にとその場の戦闘空域から離脱して遠ざかっていく。

 すぐにもただの点と点になるのだった。

 事実、目の前のレーダーサイトからも、この機影がことごとくして消失……! 

 援軍の到着に、これ幸いとしっぽを巻いて逃げるかのごとくにだ。傍目にはあからさまな敵前逃亡かのようにも見えたが、新手の敵影ときれいに入れ替わるさまからすれば、必ずしもそういうわけではないらしい。

 はなからそうする算段だったのかと首を傾げるベアランドだ。

 そう、つまるところで主力がこの場に到着するまでのただの時間稼ぎ、言うなれば〝噛ませ犬〟だったのか?

 するとこのあたりにつき、もうひとりのベテランのクマ族のパイロットザニーがこともなげに言ってくれる。

「ほぇ、ほんだらばあないなザコちゃんアーマー、ほっといてええんちゃう? それよりもまた勢いのあるのがようさんよそから来ておるさかいに? 言うてまえばあちらさんが本命なんやろ」

 こちらの隊長にではなく、同僚のおじさんに向けて言ったものとおぼしきセリフには、思わず苦笑いして同意する。

「あ、するどいな! それじゃここからは、あの後からぞろぞろやって来たのにみんなで集中だね! ちなみにぼくは既にやり合ったことがあるんだけど、どれもなかなかの強敵ぞろいだよ?」

 その瞬間、通信機越しにやや張り詰めた空気が伝わるが、おびえよりも低いうなり声とやる気がみなぎる。

 ここら辺、やはりどちらもやり手のアーマーパイロットだ。

 先日のまだなりたての犬族の新人コンビたちとは明らかに戦場での身のこなしが違う。これにまずは安心しつつも、また脳裏にある種の不安もよぎるベアランドだ。

 そうこうしている間にも、迫り来る敵アーマーがこちらとの交戦空域に入ったことが、甲高いビープ音ともに知らされる。

 中でも特にスピードの速い高速機動型のアーマーが、やはり単身で突っ込んでくるかたちだった。

 前に会った時のままのそれはやる気の有り余るさまに、対して内心でひどくげんなりとなるクマ族だ。

 どうにも執念深いことで、もはや目の敵にされているのがありありと伝わってくる。

 これに即座に対応しようとするベテラン勢には、あ、いや、ちょっと待って!と、やや慌ててツバを飛ばす悩める隊長さんだ。

「あ、待った、それは無視してくれて構わないや! なんたって速くて強くて厄介だし、どうせこのぼくがお目当てなんだからさ? 中尉たちは後からおっかけてくるあっちの子分のアーマーたちをお願いするよ。あれはあれでまた厄介なんだけど……!」

「ほえ? 無視してええんですか? ぼくらはその後にやってくるやつらを相手にせいっちゅうことでぇ?」

「なんやようわからん! あないなただ速いだけのジェットフライヤー、おれらの敵やあらへんやけ? そないなもん、どないして避けなあかんの??」

 通信機越しに左右のスピーカーからはどちらもややいぶかしがった返事が返るのに、内心で動揺しながらもあくまでベテラン勢を刺激しないような言葉を選ぶ、ベアランドだ。

「ああ、いや、あちらさんはもともとこのぼくだけに用があるみたいだから、そっちのほうははなっから完全に無視してくれちゃうと思うんだよね? だからその、無理して中尉たちが横から絡まなくてもいいってわけで! あとあれってのはああは見えて、現実はそう、ただのフライヤーじゃあ、ないからっ……!!」

 これまでの戦いから、この歴戦の勇者たちの力をもってしても、ひょっとしたら危ういかもしれないと直感的に悟っていた。

 その動揺を悟られまいと平静を装った態度そぶりに努めるのだが、あいにくと相手のおじさんクマ族たちからは、何故だろう、わずかな沈黙が通信機のスピーカー越しに伝わってくる。

 その瞬間、果たして何を考えたものか?

 ふたりのベテランパイロットたちは、みずからの顔を映したモニター越しの視線のやり取りだけで、何やら互いにはっきりとした意思の疎通をしてくれたらしい。

 この時、イヤな予感が脳裏によぎりまくる隊長さんなのだが、果たして同時にその顔に不敵な笑みを浮かべる中尉どのたちだ。

 よってこちらの忠告もそっちのけで、向かってくる見てくれ戦闘機タイプの敵めがけてみずからのアーマーを急速発進させる。

 もうやる気が満々だった。

 この部隊リーダーの意図などは完全に無視だ。

 はじめげんなりしてそのさまを見るベアランドは、焦りと困惑で思わず声をうわずらせる。

「ああっ、だから、それは無視していいんだって! このぼくの担当なんだからさ!! 強いしとっても厄介なんだから!!」

「わはは、せやったらなおさらおもいろやんけ! 隊長の相手だけやのうて、こっちもしっかりサービスしてほしいもんや、バリバリ歓迎してやるさかいに!!」

「せやんな、ほな隊長さんはそこでよう見といてください。ぼくらでしっかりおもてなししてやりますよって。元よりあないなジェットフライヤーごときに遅れを取るよなこのぼくらやないですさかいに……!」

「いやいや、だから違うんだって!! ああ、もう、ろくにお互いの連携が取れないんじゃひどい混戦になっちゃうじゃないか? これってれっきとした上官に対しての命令無視だよ!?」

 しまいにはちょっと嘆いてしまうのに、ずっと年上で経験に勝るパイロットたちは、やはりいっかなに聞く耳を持たない。

 どちらのスピーカーからか、上官ちゅうかそっちのほうが階級下やんけ!みたいな本音が漏れていたが、それはあえて聞こえなかったことにする若手の部隊長だ。 

 そんなものだから慌てる隊長が見ているさなかにもさっさと敵の先鋒、その実をして一番の強敵と交戦状態に突入していた。

 挙げ句、左右のスピーカーからどわっと驚いた声が上がったのは、その直後のことだ……!

「んん、なんやそれ!? ちょちょ、ちょい待ちぃ!!」

「ほえ、なんや、いきなり変形しおったで? ただのジェットフライヤーちゃうんかったんけ?? ぬぐおおおおおっ!?」

「ああっ、もう、だから言ったじゃないか!!」

 およそ危惧していた通りの展開に、思わず天を仰いでがなってしまう。

 二機の僚機のすぐ手前まで猛然と突撃をかけてきた戦闘機型の敵機は、あわや衝突すると思わせてこの直前でピタリと急停止!

 もとい、そのカタチをまったくもって別のモノへと変えながらに、おまけ悠然と空中に立ち止まってくれる。

 ただし制止したのはコンマ1秒以下だ。

 そのいかにもアーマー然とした人型のプロポーションを見せつけた直後、直角の軌道を描いてさらに高い上空へと舞い上がる。

 それは見事な操縦テクニックだったが、それとあわせて実はただの戦闘機が瞬時に戦闘ロボットへと華麗なる変身を遂げたのには、あんぐりと口を開けたまま、目を白黒させるばかりのふたりの熟練パイロットたちだった。

 ただその瞬間、口では驚きの声を発しながらもアーマーの操作自体はぬかりなく対処していたのはさすがだが、見ているこちらは冷や冷やものだった。

 おまけそれで肝を冷やすほどの臆病者でもないクマ族のおやじたちに、タチが悪いやつらばかりだと内心で舌打ちしてしまう。

 上空でこちらを見下ろす敵のアーマー、おそらくはこれが隊長機とおぼしき機体は、やはり悠然としたさまでその場で対峙するかにこのアーマーをまたもや空中に制止させる。

 その視線の先にあるのはこちらの大型アーマーなのだろうが、相変わらず空気が読めない仲間のクマ族たちが、うなりを発して上空の相手を威嚇する。

 声は届かないが雰囲気としてはばっちり伝わったのだろう。

 かくして相手をしてやるとでも言うかにしてふたりを待ち受ける、それはこしゃくな敵方の隊長機だ。

「まったく、どいつもこいつも好き勝手にやってくれちゃって! どうする、無理矢理に割って入って乱戦に持っていくか? あっちの後続は……あらら、しっかりスキをうかがっているね! これじゃヘタなことなんてできやしないか……!」

 後からやってきた後続の敵のアーマーは、どちらも一定の距離を保ってこちらの様子をうかがっているのが、なおさらカンに障る。

 さては親分格の指示なのだろうが、だいぶ聞き分けのいいあたりがこちらとはまるで正反対だ。

 それがまたなおさらカンに障って仕方が無いクマ族の隊長は、実際に大きな舌打ちしてしまう。

 この先の展開に、一気に暗雲がかかってくるのを、もはやはっきりと意識していた。



※以下のイラストははじめの線画バージョンです(^^)
 すでにOpenSeaでNFTとして販売中!

https://opensea.io/assets/matic/0x2953399124f0cbb46d2cbacd8a89cf0599974963/88047277089427635657081635585532914949557992380650193262688159140125509419018/



Part2


 混乱するクマ族たちのアーマー部隊に対して、また一方――。

 その直前にあった先の知れた戦いに割って入った敵方のエースパイロットは、とかく冷めたまなざしで正面のメインモニターの中の情景を眺める。

 キツネ族の若い士官は見下ろす眼下の敵の機体、青と赤の色違いの同型アーマーをつまらないものを見るようにしばしねめつけたが、やがて仕方もなさげに吐き捨てた。

「ふん、こしゃくなやつばらどもめ……! だがそうやってこのわたしの前に立ちはだかると言うことは、それ相応の覚悟は出来ているのだろうな?」 

 あくまでみずからのターゲットをその奥の緑色の大型アーマーのみに絞っていたのを、ようやく手前の二機に意識を向ける。

 そこに後方からは、後続の同僚機からの通信が入った。

 こちらはトシのいったおやじのものらしきだみ声がキツネ族の男のピンと尖った耳に親しげにまとわりつく。 

「へっへ、ダンナ! 見た感じだいぶごちゃついてるみたいだが、俺たちはここで高見の見物してていいんですかい?」

「は、いいもなにも、そうするしかありゃしないだろ? ヘタに手出しなんぞしたら巻き添え食ってこっちが落とされちまう!」

 もうひとりの年配の男の声が入るのに、何食わぬさまのクールなキツネ族の隊長は冷然と言ってのけるのだった。

「フ、無論だ。こちらへの手出しは一切、無用……! 中尉たちはそこで立ち見しているがいい。このわたしとあれの戦いを邪魔立てするやつばらだけはそちらに任せる」

「了解っ! ……てことは、おこぼれはこっちでいただいちまっていいってわけですかい? そんじゃ、おい、あの青いのと赤いの、どっちをやる? どっちも面白そうで捨てがたいが……!」

「は、おれはどっちでも構わねえよ! ダンナに落とされちまわなかったらの話だが、せいぜい楽しませてくれるのかねぇ?」


 他愛のない世間話でもするかのように獲物を物色する部下たちに、何かと無愛想な部隊長は適当な相づちだけ打ってくれる。

「もとよりザコを相手にするつもりはない。危うくなればあやつが我が物顔をして出てくるのだ。その時は……」

「こっちでおいしく料理させてもらいますわ! 見たところそれなりに戦績上げてそうだから、でかい星が挙げられそうだぜ」

「はっ、調子に乗ってヘマすんなよ、ブンの字? この前みたいな情けないザマ、二度とゴメンだぜ?」

「ああ、誰に言ってやがんだ、五の字よ? もうアーマーも元通り、こっちに死角はありゃしないぜ! もとよりあんな見え見えの手はもう二度と食わない」


 タヌキ族とイタチ族のベテランのパイロットたちの掛け合いに、まるで聞く耳を持たないキツネ族の青年は冷めたさまで通信を終わらせた。

「頼みにはしている。どちらも全力を尽くすがいい。あのような見かけ倒しのアーマーによもや遅れを取ることはあるまいが、かく言うこのわたしも全身全霊をもってあれを迎え撃つ……!」

「了解!!」


 言うが速いか急降下で襲いかかるキツネ族のアーマーに、対するクマ族のベテランパイロットたちのアーマーが真っ向から応じる。

 おのおのが命を賭けたしのぎを削るアーマー・バトル、その第二回戦の火ぶたが切って落とされた。

 ベアランドたちの強敵として立ちはだかるライバルキャラ!
隊長にして凄腕パイロットのキツネ族、キュウビ・カタナとその部下のベテランパイロット、タヌキ族のチャガマ・ブンブ、イタチ族のスカシ・ゴッペとそれらが乗るギガ・アーマーのイメージ!


 Part3

 これまで幾多の戦場の最前線で腕を鳴らしてきた、百戦錬磨のベテラン・パイロットのダッツとザニーだ。
 
 だがこれを相手に果敢にも単機で挑む敵のアーマーは、やはりあなどれない強さをふたりの勇猛なクマ族に対しても見せつけるのだった。

 互いに肩を並べた横一列のフォーメーションでぬかりなくハンドカノンの銃口を向ける青と赤のアーマーの周囲を、それはすさまじいまでの速度の機動をかけて攪乱、半ば翻弄する白の飛行型可変アーマーである。

 変幻自在に戦闘機とアーマーにその姿形を変えては、目にも止まらぬ高速機動で熟練のパイロットたちをあざ笑うかにターゲットサイトからその姿をくらます。

 かくして強い舌打ちが左右のスピーカーから漏れるのに、みずからもかすかな舌打ちが出てしまう隊長のベアランドだ。

「ああ、もう完全に押されてるいるよな? にしてもよくもあんなにガチャガチャと変形しながらあちこち動き回れたもんだよ! もはや操作ミスったら一瞬で空中分解しちゃうんじゃないのかな? これはどうにも……!」

 苦い顔つきで何事かアクションを起こしかけたところで、左のスピーカーからさも苛立たしげなおやじの文句ががなられる。

「ちょちょちょっ! ほんまムカつくわ! やたらに動き回って気が付いたらいっつも背後の死角におるやんけ!? どないなっとるんや? あないにふざけた高速機動、反則やろ!!」

「落ち着きや……! 空中戦ならぼくらの十八番やろ? せやったら、そや、そないにちょこまか動き回れんようにさしたらええんちゃう?」

「どないして? あないに速うやられてもうたら、キャノンの照準もろくすっぽ合わせられへんで??」

「そやから落ち着きや。ぼくらはふたりおるんやから、こないに固まっておらんでもやりようがあるやろ? もとより昔から空中戦で鳴らしたこのクマさんコンビやさかい、あないな新参者に負けるわけがあらへんちゅうもんや……!!」

「せやったな! あないなワケわからんくされアーマー、ふたりでボッコボコにしたろ!!」

 左右のスピーカーからやかましく流れる、ふたりのおじさんの部下たちのやり取りに内心でヒヤヒヤしながら、さてこれはどうしたものかといよいよ考えあぐねる隊長さんだ。

 おまけにこちらの階級がひとつ下なのもあって、実質上官のあちらは聞く耳持たないような節が少なからずあったりするもまた事実だ。

「ああ、もう参ったな……!!」


 険しい表情で正面のメインモニターを睨みつけるベアランドだが、そうやって観ているさなかにも青と赤のアーマーは散開して大空を左右へと散らばる。

 さては単機である敵機を左右から挟み撃ちにする算段なのだろうが、相手がうまいこと乗ってくれるものかと固唾を飲んだ。


 かくして敵の白いアーマーを真ん中に挟んで、この同心円上で広く展開する、ダッツとザニーの両中尉どのたちだ。

 都合、二対一で優位に立っているように見えるが、内実はそうでもないことは手をこまねいてこれを見るばかりの隊長の少尉どのにも、またすぐさまはっきりと見て取れるようになる。

 そう。相手はまさしくもっての強敵なのだった……!


「よっしゃ、捉えたで! ざまあカンカンっ……!?」

「これで終いや……! んっ?」


 薄暗いアーマーのコクピットの中でみずからの射撃が必中することを確信するベテランのクマ族たちだが、引き金に人差し指が触れる寸前、この照準サイトがロックオンのオレンジから危険注意の激しい赤の点滅へと切り替わる。

 しっかりと相手を挟み撃ちにした状態で、プレッシャーを掛けながらもこの攻撃機動(アタック)はことごとく失敗に終わっていた。

 両者ともにだ。

 今や完全にロボットの人型形態に固定された相手機は、空中で微動だにしない直立状態でありながら、空中戦を得意とするクマ族たちが照準を絞った直後にはこの姿をターゲットスコープから忽然とくらましていた……!

 こちらの思惑を見透かしたかにした機体さばきでまるでふたりのクマ族の同士討ちを狙うかのごとくにだ。

 静観していた若いクマ族の頭に乗っかるふたつの耳に、ややもせぬ内にひどく苛立ったおじさんたちの文句が絡みついた。

「おおい、さっきからやたらに真っ赤なのがチョロチョロ見切れておって、ほんまうざいでじぶん? わざとやっておるんか?」

「こっちのセリフやろが? 引き金しぼろうとした途端にブサイクなツラを出してきおって、青い機体が青空にまんま溶けてもうて見づらいったらあらへんわ! ほんまに撃ったろうか?」

 互いに相手を牽制しながら毒づき合うおじさんコンビだ。

「稚拙な……! どうした、貴様は動かないのか?」

 他方、敵方の隊長であるキツネ族のエリートパイロットは、左右前後からのプレッシャーをものともせずに、いまだ戦いには参戦していない緑の大型アーマーを正面のディスプレイに捉えて睨みすえる。それからまたつまらないものを見るかに左右のディスプレイの色違いの敵アーマーを一瞥してくれるのだった。

「フッ、無駄に距離ばかりを取って、まるで覇気を感じぬ。つまらん。もしや貴様らはただのお遊戯会をしているのか……」

 言いざま、機体の両手に保持したハンドカノンを一斉射!

 それが的確に二機の機影を捉える。


 あわや撃墜かと隊長のクマ族が見ているさなか、どちらもギリギリでこの直撃を避けたものの、ダッツはただちに泡を食ったセリフをがなり散らす。

「んなっ! コイツ、むっちゃくちゃやんけ!! おおい、さっきからいいように遊ばれとるで、若い隊長さんの目の前でごっつ情けないわ!! どないしたろかっ」

「せやから落ち着けや。ええわ、照準が定まらへんのやったら、いっそ撃ってまえばええ。ただしお互いギリギリまで引きつけてからや。このぼくの言うてること、わかるやろ?」

「ん、せやけど……! ええんか? 万一逃げられてもうたら、こっちは火力がでかいぶんにじぶんにまで届いてまうで?」

「せやな。ただしその代わりにこっちは防御力っちゅうんが人一倍やさかい。いけるやろ?」

 互いのアーマーの性能の違いを考慮した思考を巡らせるのに、ザニーが相棒を促して決定づける。

「一発勝負や。あの隊長さんにしっかりと見せたろ、このぼくらの腕前が決してあなどれんっちゅうことを……!」

「よっしゃ、了解や!」

 相棒の応答をきっかけ、両者の機体が敵影へと向けてじりじりとこの距離を詰める。もはやただならぬやる気がうかがえた。

 手に汗握って外野からそのさまを見守るベアランドだ。

 相手の高速機動型アーマーはこれを悠然と直立静止したままで待ち構えるが、まるでビクともしないのがふてぶてしかった。

 おのおのが殺気をこめてアーマーの機銃の照準を中心に居座る敵アーマーに定める。

 撃てば必中の間合いだった。

 まずダッツの青い機体が正面に構えた大型のライフルを一斉射!

「おおら、いてまえ!!」

 一直線に敵を貫くと思われた赤い光弾は、だが結果として敵影をかすめもせずに虚しく宙を走る。

 そしてその先にあったものは……!


 それを尻目に見やる敵パイロット、キツネ族のキュウビ・カタナはさもつまらなさげにこの尖った鼻先から息を吐く。

「フン、同士討ちとは……無様だな……む?」

 一直線に流れる敵弾は、同じ敵の赤い機体へと吸い込まれるようにヒットしたのを確信もするが、同時にかすかな違和感をも感知して機体をそちらへと巡らせていた。

 その刹那、ただちに四肢に力をこめて回避機動へと転じる。

 味方からの流れ弾を真正面に受けるかたちになって、全身に冷や汗をかく普段からポーカーフェイスの赤毛のクマは、この時ばかりはいびつな口元からキバがのぞく。

「こなくそっ、やっぱりよけるんかい! だがこっちもやられへんで、シールドパワー全開でしのいで食らわしたるわ!!」

 機体の胴体前部に装備したシールド・ジェネレーターを真紅に輝かせて流れ弾をはじき返すや、みずからのハンドカノンの銃弾をただちに正面の白い機体へとお見舞いする!

「おうし、やったれ! むうっ、あ、あわわわわわわっ!?」

 青い機体の相棒がここぞとかけ声を発するが、これがすぐさま慌てくさったおじさんの悲鳴へと変わる。

 これまで同士討ちを危惧してこの攻撃がままならなかったクマ族たちだ。それをあえて同士討ちに見せかけることで起死回生の反撃を狙ったのだが、そのトリッキーな攻撃ですらもあっさりと躱されて、それがまたダッツの機体へと襲いかかることになろうとは……!!

 すっかり勝ちを確信していた灰色熊は、狭いコクピットの中で機体の制御を失うくらいに操縦桿をバタつかせて味方からの流れ弾をぎりぎりで背後へとやり過ごす。

 だが敵からの攻撃を受ければ即墜落くらいにきりもみ状態で落下しかけた機体を大汗かいてコントロールする。

 敵からの追撃がなかったのは幸いだったが、もはや旗色が悪いのは誰の目にも明らかだった。

 悲鳴と怒号がかまびすしく交差する薄暗いコクピットの中で、若いクマ族の隊長は、険しい表情で操縦桿を強く握りこむ。

「あらら、もう任せてはいられないな! 中尉どのたちには悪いけど、こっちから割り込ませてもらうよ。でないと……ん!」

 敵の隊長格とおぼしき可変式飛行型アーマーに狙いを定めて大型の自機を進ませようとしたところに、奇しくもレーダーサイトに新たな動きと短いアラームが鳴り響く。

 こちら同様、距離を取って様子見していたはずの残りの敵影、二機がともに味方と敵に割り込む形で急速接近してくる。

 どうやら向こうはこちらと同じ思惑のようだが、味方の助けに入ると言うよりは、むしろ苦戦してばかりのダッツとザニーに止めを刺すくらいの勢いだった。

 そして案の定、敵の青と赤のアーマーが入るのと入れ替わりで、白の隊長機はまんまとその場を離脱、この姿を正面モニターからくらましていた。


 これを半ば呆れた顔で見ていたベアランドは、その後にこのみずからの機体の向きを背後へと巡らせる。

「やっぱりこっちが狙い、本命だったか……! ほんとにしつこい隊長さんだよね? ルマニアの大陸の僻地からこんな海の果てまで、呆れちゃうよ、このぼくってのはそんなに魅力的かい?」

 見れば上空からひらりと舞い降りる敵の隊長機のアーマーへと向けて、皮肉っぽく笑ってそう問うてやる。

 そう果たしてこれで何度目の対峙となるものか?

 背後でベテランのクマ族たちが新手を相手に声を荒げるのはもうそちらに任せしまって、本来のターゲットとなるアーマーと正面切ってやりあうべく、これと真っ向から対峙する。

 もう何度目かになる決戦の幕が切って落とされた……!

     
                  ※次回に続く……!







Part4


「ライトニング……!!」

「こういう使い方はリドルは嫌がるのかな……?」


 



 

 





 



 

 






#17プロット
 
 ライバルキャラ、キュウビ、ブンブ、ゴッペ再登場!
 キュウビ VS ダッツ & ザニー  空中戦!
 前哨戦の犬族キャラ、モーリィとリーンはしれっと退却。
 
 ベテランのクマ族コンビはエースパイロットのキツネ族には大苦戦、やむなく隊長のベアランドと交代…!
 ベアランド VS キュウビ

 ダッツ & ザニー VS ブンブ & ゴッペ

 持久戦の末に、キュウビ小隊退却…!
 とりあえずベアランド隊の勝利?

 補給機(リドル操縦)にダッツとザニーが補給(プロペラントタンク装備?)された上で、アストリオン北部海岸線から大陸に侵入、そのまま内陸の目的地へと向かう……
 

「アストリオン上陸作戦」プロット
  アストリオン情勢

アストリオン・中央大陸(ルマニア・東大陸/アゼルタ・西大陸)
アストリオン・種族構成・ブタ族、イノシシ族、イノブタ族などがおよそ半数を占める。アストリオン自体は宗教色の強い、宗教国家でもある。元首・イン ラジオスタール アストリアス(家)

アストリオン・大陸構成
東側 アストリオン 60%
中央砂漠 空白地帯 25%
西側 ピゲル大公家 15%
 西側は過去にあったルマニア(タキノンが領事だった?→タルマとの確執になる?)とアゼルタのゴタゴタで独立を宣言したピゲル公爵の独立領となり、後にアゼルタと同盟関係になる。

主人公、ベアランドたちが目指すのは、大陸の北岸地域から侵入して、大陸内陸部の中央砂漠にあるアーマー基地。今は西の大公家と結びついたアゼルタの支配下にあるのだが…?
 実は無人化している?? レジスタンス(ベリラ、イッキャ?)の暗躍…!

Part2 ベアランド小隊、
 敵キャラ、モーリーとリーンに遭遇
 
          ↑
#17→     キュウビ小隊、出現!!
    キュウビVSダッツ、ザニー…!


    移行、アストリオンに上陸……
  基地の占領完了と同時に、アストリオンからの守備部隊と合流?←ジーロ艦に合流したダイル?

   タルクス、シュルツ博士登場!

プロット
ベアランド小隊、出撃 ベアランド、ダッツ、ザニー
ウルフハウンド小隊、出撃 ウルフハウンド、コルク、ケンス

ブリッジ 艦長 ンクス、オペレーター ビグルス
     副艦長は何故か不在?

 友邦国のアストリオンの北岸域から侵入
 内陸の基地を奪還、そのまま寄港するべく

 海と空の戦い キュウビ小隊出現

カテゴリー
DigitalIllustration Lumania War Record NFTart NFTartist Novel オリジナルノベル OpenSeaartist SF小説 キャラクターデザイン ファンタジーノベル メカニックデザイン ルマニア戦記 ワードプレス

ルマニア戦記/Lumania War Record #016

#016


Part1


 小隊に新しくベテランのクマ族たちが加わって、貧弱だった部隊編成が見違えるほどに強化されたのだが、これが実際にみなでそろって出撃するのは、それから実に三日も後のことであった。

 もろもろの都合、母国を遠く離れた彼らの母艦が公海上にしばしの足止めを食らうことになったのと、パイロットが万全だからとこの機体の調整までが万全とまでは行かなかったことがあり。

 加えて全てが新型開発機ばかりのアーマー部隊は、この機体のマッチングに非常な手間暇がかかるのだ。

 よって晴れてハンガーデッキの格納庫から海風をともなった外界を臨めたのは、およそ70時間も後のことなのであった。

 言ってしまえば寄せ集め部隊なのだが、性格おおざっぱなクマ族たちが仕切り直しをするには、およそ十分な時間である。

 ベアランド小隊(第一小隊) 隊長・ベアランド少尉(クマ族)、部下・ダッツ中尉(クマ族)、ザニー中尉(クマ族)

 広く視界の開けた専用の中央カタパルトからモニター越しの外界を眺めるアーマー部隊の隊長は、楽しげに舌なめずりした。

「さあて、いよいよ出撃だね! 予定通り、ここからずっと先に見えるあの大陸の内陸部を目指すんだけど、ぼくのランタンはいいとして、そっちのビーグルは燃料、大丈夫かな? どっちも股の下にくっついてた、あのばかでっかいプロペラントを外しちゃったでしょ?」

 見た目にずいぶんな幅を利かせていた燃料タンクをすっかりと取り外されていたのを思い返して、なにげに聞いてやるのに、左右のスピーカーからは問題ないとのおじさんたちの返事がただちに返ってくる。

「かましまへん。よっぽど過酷な最前線ならいざ知らず、まだ序の口でありますよって……! せやからどうかぼくらのことは気にせんといてください」

「ここも最前線なんちゃう? まあ問題あらしまへんわ。おれたち新人のワンちゃんたちとちゃいますから! ふふん、見といてください、バリバリ活躍してやりまっせ!!」

「そいつは良かった♡ それじゃあミーティングのとおり、ぼくらは派手に暴れ回るとしようか! あらかた近海の敵を蹴散らしてから、母艦をともなっていざ目指す南の大陸、アストリオンに上陸と……!!」

「了解!!」

 あいにくとここからではどちらも機体が見えないのだが、左右のハンガーデッキに分かれて待機している、青と赤の機体のクマ族たちからの返事に満足して、みずからも出撃に備えるベアランドだ。

 すると上面のスピーカーからは短いアラームと共に、この艦の主の声が響いてくる。

「ん、ブリッジのンクスだ。各機とも準備いいな? ただいまより〝アストリオン上陸作戦〟を開始する。各自健闘を祈る! 第一、第二部隊、共に必ず本艦に戻ってくるように……!!」

「もちろん! 了解♡ ……て、横にいるはずのあの副官どのは今はいないんだね? どこで何をしているんだか」

 小声で言ってマイクには入らないように配慮したはずが、正面のモニターの中のスカンク族の上官どのは、これが小さく咳払いするのに、ちょっと苦笑いで了解する隊長だ。

 無用な詮索はしないことだと……!

 画面の横のほうでちょっとだけ見切れている犬族のオペレーターが発進のコールを送るのに、また了解して正面に向き直る。

「少尉どの! こちらは制御室のリドルです! ランタン、発進準備OK、ランチャーカタパルト、今回は70で行きます!! よろしいですか?」

 艦長に代わって響いてきた、カタパルトデッキのアーマー発進制御室に詰めている若いクマ族の言葉には笑顔で応じる隊長だ。

「そんな遠慮しないで100でいいのに! それじゃ、先に行ってるよ! ふたりとも後から急いで追いかけて来てくれ、こっちはいざ走り出したら止まれないからね?」

「了解! て、ランチャーなんちゃらって、なんのこっちゃ?」

「知らん。見てればわかるんちゃう?」


「なら見て驚けよ。ただごとじゃありゃしないから……!」

「あはは! それじゃ、システム発動、健闘を!!」

「了解!!」


 どうやら第二部隊の巨漢のクマ族のメカニックも通信に混じっているらしいのに、なおさら笑顔になって身体中に力を入れる。

 一瞬後には巨大なGが全身に掛かりながら機体が弾丸のようにカタパルトからはき出されるのを体感していた。

 ベアランド機出撃!!

 カタパルトから発射されて、これがあっという間に見えなくなる隊長機の後ろ姿に、後から発進を控えた部下のクマ族たちは、騒然となってこれを見送った。

「はああっ、ちょ、ちょいまち! なんや今のあれぇ? あの隊長、いったいなにしてはるん??」

「わからん。あんなのアーマーの発進とちゃうんやない? ほんまにどうないなことになってはりますのん??」

 カタパルトの左右で困惑した通信を交わすクマ族たちに、デッキの中央コントロール・ルームの巨漢のクマが答えた。

「ふん、しょせんは人間わざじゃありゃしないのさ。あの機体じゃなければ空中分解必至の、弾丸ミサイル級の強引なマスドライバー発進、もとい、強制発射システムだ。おい、間違っても真似しようだなんて思うなよ?」

「思わへんて! あないなもんシャレにならへんやないですか? ちびりそうや、発進するのがこわなってきた!!」

「いいえ、ご心配なく、そちらのカタパルトシステムはごく通常のものですから! それではダッツ中尉、ザニー中尉、どちらも準備はよろしいですか?」

「ほえ、ちょい焦ったけどかまへんよ。お好きなタイミングでどうぞ。ぼくら同時の発進でかまへんから。はよせんと追いつかないやろ、あれ?」

「それ以前にこっちの第二部隊が待ってるんだ。早いところカタパルトを空けてくれ。ほら、とっとと出しちまえよ!」

「あ、はい、それでは健闘を祈ります! 両機ともカウント3で同時発進、3、2、1、カタパルト・Go!!」

「了解!!」

 全身を青と赤で塗りたくられたいかつい人型の機体が、左右のカタパルトから青空へと向けて同時に飛び立っていく!

 先に飛び立って行った緑色の隊長機を追って、どちらもまっすぐに白い軌跡の飛行機雲を描くのだった。

 これこそがいかついクマ族のみで編成されたアーマー小隊の記念すべき初陣であり、後に赤、青、緑の鬼の三原色部隊と恐れられる飛行編隊の誕生なのであった。


 Part2



 雲一つもなくした快晴の青空。

 轟音を立てて緑色の巨大な機体が大気を切り裂く。

 周りの空気との激しい摩擦で赤い蒸気めいたものをその全身にまとわりつかせながらにだ。

 耳を澄ませば風切り音もしてきそうなコクピットの中、目指す大陸の目前でゆっくりと操縦桿に手を伸ばして、しっかりとこの両手に掴み取る。

 深呼吸をひとつして機体のコントロールをみずからに手に持ち直すクマ族だ。

「よっしと……! 予定通りのポイントに無事到着、このぼくが一番乗りだね!! 敵さんもまだ見当たらないし?」
 
 まずは母艦から単機で先行して、無理矢理な出力と加速度にもてあそばれる機体とこの速度が、やがて通常に落ちるところまで安定させてから、いざ周囲の状況を見回すベアランドだ。

 レーダーサイトには今のところこれと言った反応がないが、じきにやかましく警告音が鳴り響くのはわかりきっていた。

 弾道ミサイルさながらの強引にして急速なアーマー発進は、敵の裏をかくのには便利だが、味方をことごとく置いてけぼりしてしまうのがたまにキズだ。

 よって静かなモニターの向こうに広がる大陸を見ながら、誰にともなしひとりごとみたいな文句を発する隊長のクマ族だった。

「は~ん、こうして見てみると、目標の空軍基地ってのはほんとに内陸にあるんだな? ここからじゃまだ確認ができないよ。もっと高度を上げれば見えるのかな? どうしたもんだか……! このまま単機で先行しても良さそうだけど、やっぱりベテランのパイロットさんたちを待ってたほうがいいよね?」

 言っているそばからレーダーサイトに複数の反応が出現!

 敵を表す赤の点(ドット)と、味方を表すそれとがほぼ同時にサイトの中に前と後ろからポツポツと発生するのだった。

 中でもサイトの後ろ側、背後から追いついてきた味方の友軍機の二機のアーマーのパイロットたちからただちに通信が入る。

 お国言葉のなまりが激しいおじさんのクマ族たちだ。

 緊張感をみじんも感じないお気楽なセリフを発してくれた。


「戦場の青いイナズマ! ダッツ・ゴイスン、ただいま到着! やっと追いつきましたわあ、隊長さん、早すぎやって!! 」

「ほんまに早いわあ! ひとりで何をそんなに急いでますのん? ひと呼んで赤い旋風のザニー・ムッツリーニ、おなじく到着しました、そいで敵さんも、もうぼちぼち来てはるんですな?」

 はじめに青い機体のクマ族の威勢のいい文句が耳朶を打つ。

 到着するなり回りの状況を適宜に把握しているこちらは赤い機体のクマ族のベテランパイロットの言葉に、すぐさま了解してモニターがマークする敵の機影を確認するベアランドだ。

ベアランドの乗機、バンブギン、通称ランタンと、ザニーとダッツの乗機、ビーグルⅥ・プロトタイプ(まだ描き掛け)


 おそらくはどこか遠くの洋上の母艦か、さらに遠くの大陸の西海岸の敵基地から飛び立ったものとおぼしき航空機いくつかが、こちらに向けて急速に接近してくるのをそれと認める。

 よって完全に慣れきったおじさんたち同様、こちらもいささかも焦ることもなくして、こともなげに言ってやるのだった。


「ああ、ジェット・フライヤーか! ああいう航空機タイプって、大抵は無人機なんだよね? 本命のアーマーが到着するまでの時間稼ぎぐらいなもので。だったら、さっさと落としちゃお♡ それじゃ主役のアーマーが来たら、各自で対応お願いね!」

 言いながら操縦桿のトリガーを二回、三回と引いて、迫り来るジェット機をことごとく打ち落とす隊長の緑の大型アーマーだ。

 そのまるで容赦がなくあっさりとしたさまに半ば感心したようなおじさんクマ族たちの返事が返る。

「了解! にしてもなんやちょろい作戦みたいやんな? 思うたよりも敵さんおらへんし、このまま海岸線の先まであっさり突破できそうやわ!!」

「せやんな、隊長さんのそのアーマーやったら敵なんかおらへんのちゃう? あ、来ましたで、本命のアーマー部隊! なんかひょろっちいのがこっちに向かって来てはるけど、あんなんおったったけ??」

「ん、ああ、あの見覚えのあるカトンボは、敵の新型機だね! 以前に会敵したことがあって、そんなには苦戦しなかったんだけど、あれとおんなじか別の同型機なのかな? どっちにしろそっちのビーグルで十分に対応できると思うよ」

 正面のメインモニターの中央に捉えた、どちらも見覚えるのある特徴的な細身のデザインの二機の軽量級アーマーに、だがこちらはまるで感心なさげに答えるベアランドだ。

 形状がまったく同じ見てくれのふたつの敵影は、おそらくは以前にやり合ったものと同一の機体なのではないかと思われた。

 前回、さして苦労することもなく撃退していたこともあり、こちらの経験豊富なベテラン勢ならそう手こずることもないだろうと確信する隊長さんだ。

 これに手練れのクマ族のパイロットたちが即座に応ずる。

「カトンボでっか? ふう~ん、なるほどや、ほなここはこのぼくらに任せてもらいましょうか、よって隊長さんはそこで気楽に見といてください」

「よっしゃ、やったるでえ! あないなひょろっちいザコちゃんアーマー、一発どついたらそれでしまいや!!」

 モニターの左右で不敵な笑みを浮かべる赤毛のクマと灰色グマをいかにも頼もしげに見ながら、こちらは若干の苦笑いになる茶色の若いクマ族だ。

「あんまり油断してると機体にキズをつけちゃうかも知れないよ? まだ初戦なんだからなるべく手堅く行ってよね! それじゃ、お言葉に甘えてぼくは高みの見物させてもらうけど、第二小隊のシーサーがなんか下からやかましく言ってるから、ちょっと高度を上げてぼくらはもっと上空でやり合おうか?」

 天井のスピーカーから何やらやかましい文句が入って来たのは、後発の第二小隊が追いついたその直後のことだ。

 小隊隊長のウルフハウンドのものだったが、これに傍で聞いていた赤い機体のパイロットのクマ族が了解してくれる。

「ああ、それやったらこっちにもテキストで入電しておりますな? なんやえらい怒ってはるようやけど?」

「尻にくっつけとる新人のワンちゃんたちがやりづらあてしゃあないから、おれたちみたいな邪魔もんはどっか遠くに行ってくれゆうてはるんやろ? なんやめっちゃひとりよがりやんなあ、そないなもんはそっちで面倒みたれよ!」

「まあまあ、言ってること自体は間違ってはいないんだから! あんまり混戦状態になったら同士討ちもありうるし、距離はちゃんと取っておこう。それにこのぼくのカンだとそろそろやっかいなのも出てきそうな頃だから、いざそっちに対応するためにも、スペースはなるたけ広く取っておかないとね♡」

「はあ? なんのこっちゃ? お、カトンボが早速こっちに来よったで! 相方、ようやっとこの腕の見せ所や、ぼくらの得意の空中殺法、ヤツらにガツンとお見舞いしたろ!」

「ガッテン!!」

 さすがにお互い息の合った熟練パイロットたちだ。

 同時にこの機体を海上からさらに上空へと舞い上がらせていく。

 するとこれを追いかけるかたちで敵の二体のアーマーも次次に上空へと導かれるように機体を上昇、一定の距離を保ちながら互いににらみ合うかたちとなった。 

 やかましく通信交わしながら機体高度を一気に上空にまで押し上げて新型機同士の一騎打ち、もとい、コンビ対コンビの空中戦タッグマッチが始まるのだった。


Part3


 ところ変わってこちらは対戦相手となる、敵側のアーマーパイロット、犬族のモーリィがいまいましげな愚痴ともひとりごとともつかないセリフを正面のモニターに向けてがなっていた。

 年の頃で言えば青年の若手パイロットはとかく血気盛んだ。

「ん、ちょい待ち、あっこにやなヤツがおるでぇ? いつぞやのでっかいお化けアーマー! おまけに子分を2匹も連れとるやんけ!! しんどいわあ、このまま知らん顔して帰ったろか? やってられへんやろ!!」

 あっさりと敵前逃亡をほのめかすのに、これを受ける相棒のこれまた犬族の、もさもさ顔したリーンが明るく答える。

「銃殺刑にされるんちゃう? せやったら少しは相手をしたらな! あのでっかいのは手をつけられへんとしても、子分さんはどうにかできるんちゃうん? なんや見たこともないようなアーマーやけど!」

「はん、しょせんはひとさまの領土やゆうて、みんなで開発機の実験しとるんかいな? えげつないわあ! せやけどあっちはやる気まんまんらしいから、それなり相手してやらな失礼になるんかの? ええわ、そやったらこっちも星を挙げて正規軍の仲間入りさせてもらお!」

「なんや、結局はやるんかいな!」


「当ったり前やろ! ちょうど二対二でええ勝負できそうやし、大ボスはずっと後ろに構えてはるから手を出す気はないんちゃう? 前もやる気なさそうやったから、ひょっとしたら本調子ちゃうのかも知れへんやん。こっちは本命の後続部隊が来よるまで持たせたればいいゆうてはったから、のんびり持久戦としゃれ込ませてもらお!」

「せやんな! ちゅうかわしら真打ち登場までの噛ませ犬かい」

「ええわ、ほな噛ませ犬もあなどれんちゅうことを見せたるわい!」

 再び登場! 関西弁の犬族キャラコンビ、モーリィとリーンの若手パイロット! アーマーは新型のロータードライブ型!!


 さも息の合った漫才みたいな掛け合いをしながら、じりじりと相手との距離を詰める、二体の飛行型アーマーだ。

 緑の大型アーマーを奥に控えさせた状態でこの前に立ちはだかる二機の青と赤のアーマーに、それぞれが個々に狙いを定める。

 果たしてはじめに仕掛けるのはどちらなのか?

 抜けるような青空の下で息もつかせぬ緊張感が高まった。

 これを傍から見ていた隊長のベアランドは、その静かな立ち会いに、それでも結果は知れていると周囲への警戒を怠らない。

「悪いけどその華奢で非力なアーマーじゃ、うちの大ベテランのおじさんたちには敵わないよね。むしろ問題はその後で……! 西岸の本拠地からより強力な増援部隊が来るのは明白で、本番はきっとそこからなんだ」

 そう言っているさなかにも眺めているモニターの中では、青いアーマーが瞬時に素早い機動に入るのだった。

 こちらにより先行していた敵のアーマーに向けて、ただちに一直線の突撃機動、激しいチャージをかける!

 空中での接近戦を果敢に挑むのをただじっと眺めていた。

 胸の内ではちょっとした胸騒ぎを感じながらにだ。

 大気を震わす轟音が鳴り響いた。

 戦場の青いイナズマ!ダッツと、赤い旋風、ザニーの専用ギガ・アーマーの図、とりあえずこんなカンジ?


 みずからを青いイナズマと言った通り、強力なターボジェットエンジンをいくつも搭載したアーマーは、そのずんぐりした見てくれによらない、急速発進と加速度で一瞬にして敵アーマーとの間を詰める。

 そのままショルダーチャージでも仕掛けそうな勢いだったが、すんでの所で急停止してアーマーの右手に装備したハンドカノンを相手めがけて振りかざす、ダッツの青いアーマーだ。

 その名を「ブルー・サンダー」。

 歴戦の勇者である中尉が、その幾多の戦火の中で勝ち得た、数ある異名の中の一つだと、そうベアランドは聞かされていた。

 まさしくだなと思う反面、さっさとケリをつけないでもったいつけたように相手にその銃口をちらつかせただけなのには、内心であれれ?と首を傾げてしまう。

 言ってしまえばまだ本気の本調子ではない、およそ遊んでいるような印象を受けるのだった。

「あらら、大丈夫かね? 窮鼠猫を噛むって言うし、あんまりなめてちゃいけないんじゃないのかな??」

 ちょっと突っ込んでやろうかと通信をオンにした途端、左側のスピーカーからやかましいがなり声が響いて面食らう隊長だ。

『見たかおんどれぇ! ビビッてんちゃうんか? 次はマジでやったるから覚悟せいよ、おおら行くで、おらおうらおらぁ!!』

「わっ! びっくりした……まあ、心配ないみたいだね?」

 結果、何も言わずに通信をオフにする隊長さんだった。

 ダッツからの猛攻に明らかに動揺する灰色の飛行型アーマーの中で、若い犬族のモーリィはあられもない悲鳴を上げてどたばたとのたうちまわっていた。

「わ、なんや! いきなりそないなむちゃくちゃしくさりおって、ぶつかってまうやないか!? は、挑発としるんけ? ええ根性やな、ええわ、やったるわ!! おおおおおおおおおうらあっ!!」

 機体の小回りを活かした空中の接近戦ならいくらでも勝ち目があるとあえて相手の挑発に乗ってやる若手のビーグル族だが、負けん気が強いのが今は仇となりつつあるようだった。

 空中での制止機動や上下運動が得意なロータードライブの利点を最大限に用いて右へ左へと機体を揺らして相手を翻弄するはずが、目の前のスピードとパワーが取り柄なだけのジェットドライブタイプはなんら苦も無くこちらの動きについて来ている。

 むしろこちらが翻弄されかけて、相手の構えた銃口の照準をずらすのに今はただただ必死のモーリィだった。

 ギリッと厳しく結んだ口元から、果ては言葉にならない悲鳴じみたものが漏れ出る。

 これにこちらが押していることを確信してますます本調子になる青のアーマー、ベテランパイロットのクマ族のダッツは舌なめずりして正面のモニターに凄みを利かせた。

「かっか、いい気味や! 小型で小回りが利くからこないなドッグファイトやったらじぶんのほうが有利やと思っとったんやろ? ざまあかんかん!! ジェットのパワーを最大限にかましながらの縦横無尽の空中殺法がこの青いイナズマこと、ダッツ・ゴイスンさまの最も得意とするところやからの! じぶん、もうフラグ立っとるでぇ? 観念しいや!!」

 あと一押し、ないしふた押ししたらばっちり照準を定められると勢い込んだところに、甲高いアラーム、警告音が鳴り響く!

「んっ、ちっ! おおい、いいところなんやから邪魔させんなや! あとのヤツはおのれの領分ちゃんけ?」

『わあっとるわ! そうやって間で遊ばれとるからやりづらいだけで、もうこっちもええとこまで追い詰めとる……!』

 片やお互いに距離を置いての銃撃戦にいそしんでいた赤いアーマーの相棒が、通信機越しにやや不機嫌な返事をよこしてくる。

『レッド・ストーム』と自身の異名から取ってつけた赤いジェットドライブ・タイプのアーマーは、相棒の青い機体のそれとは一部の仕様が異なるだけで、見た目ほぼ同一タイプの機体だった。

 背後から赤い一条の閃光が一直線に走ると、それきりやかましい警告音がピタリと鳴り止む。

 後方支援に回っている敵アーマーの射撃マークが外れたのが直感的に理解できたが、実際にてんで見当違いの方向に銃弾がばらまかれるのに相方の援護が適正に働いたのを現実にも理解する。

 舌なめずりするダッツは鋭い視線をモニターの正面に据えた。

 相手の灰色の機体は前後左右へと激しく回避運動をするのに、そのさまが今は獲物の子鹿が震えているかのように見えていた。

 そしてこのさまを傍から自機のコクピットの中でのんびりと構えて見ていたベアランドは、決着がじきに着くだろうことをそれと予感していた。

 言うだけあってさすがベテランのクマ族コンビは、それは腕利きのパイロットたちだ。

 激しい戦火を幾度もくぐり抜けて来ただけのことはある。

 思っていた通りかそれ以上の出来に内心で満足しつつ、目ではてんでよその方向を見ながらに、またもうひとつの予感が現実になりつつあることをそれと確信するベアランドだ。

「やっぱり、おいでなすったか……! まさしく今回の本命、さしずめ真打ち登場って感じなのかな?」

 目の前のレーダーサイトには、大陸の北西部の方角からこちらに向けて急スピードで接近する、三機のアーマーらしき点滅が灯っていた。

 抜けるような青空の下、暗雲が立ちこめるのをただひとりだけ実感しつつある若いクマ族の隊長だった。


  次回に続く……!




状況 海上 ベアランド 単機でアストリオンの北岸域へ…
  ダッツ、ザニーと合流の後、敵方のモーリー、リーンと交戦
  第二部隊が合流、上空へ ← キュウビ小隊

「アストリオン上陸作戦」プロット
  アストリオン情勢

アストリオン・中央大陸(ルマニア・東大陸/アゼルタ・西大陸)
アストリオン・種族構成・ブタ族、イノシシ族、イノブタ族などがおよそ半数を占める。アストリオン自体は宗教色の強い、宗教国家でもある。元首・イン ラジオスタール アストリアス(家)

アストリオン・大陸構成
東側 アストリオン 60%
中央砂漠 空白地帯 25%
西側 ピゲル大公家 15%
 西側は過去にあったルマニア(タキノンが領事だった?→タルマとの確執になる?)とアゼルタのゴタゴタで独立を宣言したピゲル公爵の独立領となり、後にアゼルタと同盟関係になる。

主人公、ベアランドたちが目指すのは、大陸の北岸地域から侵入して、大陸内陸部の中央砂漠にあるアーマー基地。今は西の大公家と結びついたアゼルタの支配下にあるのだが…?
 実は無人化している?? レジスタンス(ベリラ、イッキャ?)の暗躍…!

Part2 ベアランド小隊、
 敵キャラ、モーリーとリーンに遭遇 
          ↑
Part3     キュウビ小隊、出現!!
    キュウビVSダッツ、ザニー…!

    移行、アストリオンに上陸……
  基地の占領完了と同時に、アストリオンからの守備部隊と合流?←ジーロ艦に合流したダイル?

プロット
ベアランド小隊、出撃 ベアランド、ダッツ、ザニー
ウルフハウンド小隊、出撃 ウルフハウンド、コルク、ケンス

ブリッジ 艦長 ンクス、オペレーター ビグルス
     副艦長は何故か不在?

 友邦国のアストリオンの北岸域から侵入
 内陸の基地を奪還、そのまま寄港するべく

 海と空の戦い キュウビ小隊出現

カテゴリー
DigitalIllustration NFTart NFTartist Novel オリジナルノベル OpenSeaartist キャラクターデザイン ファンタジーノベル ルマニア戦記 ワードプレス 寄せキャラ

ルマニア戦記/Lumania War Record #015

#015

Part1


 一難去って、また一難……!

 戦場の嵐はどうにかこれをくぐり抜けたはずなのに、また新たな嵐に飲み込まれてしまう不運のアーマー部隊だった。

 一時的にお世話になるべく立ち寄った、新型の僚艦。

 その第一艦橋にみなで顔を出すなりこれに烈火のごとく怒り出すブリッジの主、ジーロ・ザットン大佐に恐れおののくふたりの部下たちの盾になりながら、どうにかこの怒りを納めようと悪戦苦闘するクマ族の隊長、ベアランドだ。

 内心ではそんなに怒ることもないだろうにと首を傾げながらも、後から艦に合流して上がって来た副隊長のウルフハウンドと共に、どうにかこうにか荒れ狂う艦長どのをなだめすかしてその場のお茶を濁すのだった。

 昔は教官と生徒であった間柄で知らない仲ではない。

 よって性格いささか難ありなこのおじさんの対処法はどちらもそれなりに心得ていた。

 かくして不機嫌ヅラでブリッジを後にする艦長の背中をいったんは静かに見送って、心身共に疲れ果てている部下たちを副隊長に任せたら、この後をひとりで追いかけるアーマー隊長である。

 いくつか聞きたいことがあったし、部下を抜きにしたもっと冷静な話し合いをあの切れ者の指揮官とは持ちたかった。

 相手は艦長室にこもるようなことを言っていたが、その性格柄で当てにならないと予想するかつての教え子は、何の気も無しにまったくの別方向へとこの足を向けていた。

 そこはこの艦の最上階のブリッジのさらに上、いわゆるてっぺんの天井、ロフト部分だ。

 すると思った通りに外部へのドアはロックが外されていて、外に出ると道なりにタラップをのぼってこの屋上部分へと顔を出す。

 見晴らしのいい真っ平らな鋼の屋根には、これまた思ったとおりの人物が、真ん中に仰向けで寝そべっていた。

 どうやらぼんやりと青空を眺めているようだ。

 やっぱりね……!

 これにはちょっとしたり顔してそちらに歩み寄る隊長さんだ。

 こちらから話しかけるよりも先にあちらのほうが反応した。

「どうしてわかった? 俺は艦長室に行くと言ったはずだが」

 すぐ間近から犬族の仏頂面を見下ろしながら、ぺろりと舌を出して応じるクマ族だ。

「どうしてって、教官どの、もといジーロ艦長が性格ねじくれた気分屋なのはみんな知ってるじゃない? ぼくなんかそれこそ昔からの旧知の仲なんだからね!」

「ふん、わるかったな……! 何の用だ? あいにく気ままなクマ族の相手なんかする気分じゃない」

 ますますしかめ面の上官どのにもお気楽なクマの隊長はいたずらっぽい笑みでウィンクくれてやる。

「そう言わずに! 久しぶりなんだからちょっとはお話しようよ、まじめな話ってヤツをさ?」

 短い舌打ちが聞こえたが聞こえなかったふりする隊長はしれっと言ってやる。

「さっきはずいぶんとお冠だったけど、あれじゃ若い芽がつぶされちゃうよ。上官とは言えパワハラだったんじゃないのかい?」

「…………」

 返事がないのにこれまたしれっと聞いてやる。

「まさかとは思うけど、コルクと何かあったのかい? あの性格気弱な毛むくじゃらの犬族くんと、過去にさ??」

「どうしてそう思う? 俺は初対面だと記憶している」

 むすりとした顔で青空見上げたままのジーロに、ベアランドは真顔で言葉を投げかける。

 ある意味、一番気に掛かった事柄だった。 

「そうか。でもあの子のことをはじめて目にしたって時に、なんだかちょっと驚いたような顔をしてたよね? 艦長?」

 また短い舌打ちが聞こえる。

「ッ……イヤなところをしっかりと見ていやがるんだな? この食わせ物のデカぐまめ! いいや、なんのことはない」

「?」

「そうさ、ただの他人のそら似ってヤツだ……! おまえにプライベートをあれこれ詮索されるいわれはないぞ? 気にするな。あいつとはあかの他人同士だよ」

 そんな幾分かトーンを落とした返答には、なるほどと納得して頷きながらもまたその首を傾げるクマ族だ。

「そうか、そりゃそうだよね。う~ん、それなのにひどいな、あの怒りようは?」

「八つ当たりをした覚えはない。ちゃんと必要なことを言ってやった。あんなビビリじゃそれなりに免疫つけなきゃこの先やっていけないだろう? おままごとをしているわけじゃないんだ」

「そりゃあね……!」

 浮かない顔の艦長は胸の内から取り出した何かしら眺めながら至って気のない返事なのに、ちょっとだけ引っかかりを覚えながらも話を変えるベアランドだった。

「ああ、そういや、ぼくらのボスとはなんの密談をしていたんだい? この先のことに関わるんだろうから、ちょっとはこっちにも教えてもらいたいんだけど」

「そんなものはそっちのボスに聞け! ンクス艦長、先生からはあっさりと断られたよ。悪い話じゃないと思うんだが、あちらにはあちらの思惑があるんだと」

「ふうん、あっさりと引き下がるんだ? らしくないなあ!」

「ほっとけ……ん!」

 それまでの穏やかな潮風が一転、身の回りがいきなり騒がしくなるのに両耳をピンと立てて回りの気配を探る艦長だ。

 これに身の回りをぐるりと見回してそれと認めるベアランドはちょっと意外そうに騒音の元となっている見慣れた同僚の機体を眺める。海を渡る機体と、空を飛ぶ二機のアーマーたちが見る間に小さくなっていくのを見送った。

「なんだ、もう帰っちゃうんだ、シーサーたち? せっかくこの艦の中をみんなで見て回る許可を得ていたのに!」

 これには足下から不機嫌そうなおじさんが言ってくれる。

「お前もさっさと帰れよ。あとなんであんな目立つところにあんなブサイクなアーマーを停めてやがるんだ。さっきから目障りでしかたがありゃしない」

「そんな青空を眺めながら文句を言わないでおくれよ。あそこにしか停められなかったんだから! 間違って塩水に漬けちゃったらうちのメカニックくんたちがきっと嘆くし♡」

 聞きたいことが空振りだらけだなと苦笑いしながら、また他に話を向けてやる隊長さんだ。

「そういや、この艦のアーマーらしきが見当たらないけど、ベテランのパイロットとその新型機ってのはデマだったのかい? 個人的にはちょっとだけ期待してたんだけど」

 するとこれには何故だかちょっと苦い顔つきしてひん曲がった口元で答えるジーロだった。

「あるさ。あるにはあるが、ただそれにつき若干の問題があって、出すに出せないってだけのことであって……!」

 そこで不意にむくりと起き上がって、でかいクマ族を見上げる犬族の艦長だ。そうして何かしら意味深な目つきと共に言ってくれるのだった

「そうか、だったらお前にいい土産話をくれてやる。せっかくだからな? 面白いものを見せてやるから、付いて来いよ」

「?」

 怪訝な顔で背中を見送るクマ族に、老獪な犬族はニヒルな笑みをその口元に浮かべて促した。

「だから、お前が見たいって言うヤツらに会わせやるって言っているんだ。おまけにこのアーマーにもな? 俺の気が変わらない内にさっさと来い」

 こうして言われるままにこの後を付いていくクマ族の隊長は、その先で思いも寄らない者たちと会うことになる。

 やがてひとりだけ母艦に帰投するアーマーの中で、この顔に苦笑いが張り付いて取れないベアランドであった。


Part2

 無事に戦いを終えてみずからの母艦に戻ったベアランド小隊であったが、その日の夜半にはまた再び出撃することとあいなるのだった。

 敵襲などではなく、友軍の僚艦にふたたび呼ばれてのことだ。

 例の偏屈な犬族の艦長にまたみんなでお説教を食らうのではあるまいな?とはじめ微妙な顔つきのクマ族の隊長さんだが、こちらの大ベテランの艦長から聞かされたのは、それは意外な先方からの提案であった。

 とは言えでさては何かしらの打算があるのではないかとこれまたビミョーな顔つきのベアランドなのだが、小隊の部下たちを引き連れてまた新型の巡洋艦へと向けて夜空に飛び立つのだった。

 ただし今回はベアランドの大型機だけで、ふたりの犬族たちの機体は航空空母に置き去りにしたままの、単機での発進だ。

 よってこの2名をみずからの機体のコクピットに同乗させての発艦だった。

 これに部下であるコルクとケンスは、さっぱりわけがわからないとひどい困惑顔をしながら、あちらに着いていざその場で命じられた命令には、なおさらギョッとして当惑することしきりだ。

 ついてほどなく、また母艦へととんぼ返りすることになる第一部隊は、今度は三機編成のアーマー小隊となってみずからの新型重巡洋艦の空母へとたどり着くことになる。

 ちなみにこの時、はじめ三名だったはずの隊員は、何故かこれが五名へと増えており……!

 詰まるところ以前に犬族の艦長どのが言っていた〝お土産〟が、早くももたらされた結果であった。

 大型のアーマーを専用の機体ハンガーに着艦収容させて、クマ族のパイロットは、ただちにこのコクピットからメカニックスタッフであふれかえるデッキフロアへと降り立つ。

 そこにはすでに新しく持ち帰った機体をこれ用のハンガーに収容させていた二名の犬族たちが、ピシッと敬礼して待ち構えていた。ここらへんはすこぶる礼儀正しい新人パイロットだ。

 軽くだけ敬礼して返す隊長のクマ族は、見上げてくる若い犬族たちにおおらかな口ぶりで声をかけた。

「ふたりともおつかれさん! で、どうだった? あの仏頂面の犬族のおやじさんからもらった新型機は? はじめてでおまけ夜間飛行じゃちょっとしんどかったかね、いくらきみらのアーマーと同型機とは言え……!」

 するとこれに敬礼を解いてから応じる長身の犬族、ケンスは戸惑い気味に答えた。

 その隣の同僚の犬族のコルクも何やら困惑気味の表情だ。

 どうやらこのふたりには、あまり相性が良くはない機体だったらしい。

 その様子だけでもはやなるほどと納得する隊長さんだ。

「機体の反応はとても良好でした。おれたちのと遜色ないです。ただ、操縦桿やスイッチのたぐいがとても重くて、やたらに固かったですね! あれじゃいざ戦闘になった時に大変だ……」

「お、オレも、とても苦労しました! あんなのオレたちの手には負えませんっ、ここまで飛ばしてくるのでやっとだったから……!」

「そうか。なるほどね! 知ってのとおりでクマ族のパイロットさんたちだから、そっち向けに操作盤回りがきつめにチューニングしてあるんだよ。ぼくらからしたら、犬族用のはむしろ設定がゆるゆるで、ちょっと肘が当たっただけで固定武装やら何やらが暴発しちゃうからね!」

 冗談めかした言いように、暗い顔つきのケンスが苦笑いして背後に立つ新しいアーマーを見上げた。

「そもそもが、コイツはおれたちのと同型機なんですか? まったく見てくれが違うように思えるんですけど……なあ?」

 横の相棒に問うのに、問われた毛むくじゃらの犬族はうんうんと激しく頷いて同意する。

 すると問われたクマ族の隊長も、ふたつ並んだ機体を見上げながらにやんわりとこの疑問に応じた。



「まあ、これっていわゆる試作機、プロトタイプってヤツでさ、きみらのビーグルⅥの元となった機体らしいよ? これを量産型に改良・改修したのがあっちの機体で、ある意味兄弟みたいなもんなんだよ♡ いたるところゴツゴツしてて、いかにもクマ族向けって感じだけども」

「犬族とクマ族で兄弟ってあんまりピンと来ないですけど……」

「あ、あの頭も、なんかクマっぽい……!」

「ああ、通称、ベア・ヘッドだって! この機体、ビーグルとは言いながら、ヘッドはぼくのとおんなじまあるいクマ型なんだよね。なんかブサイクな♡ でもぼくのランタンほどじゃありゃしないか!」

 茶化して笑う隊長に、やはり苦笑いの部下たちだった。

 この時、背後のほうで何やらごそごそと気配がし出すのに、そちらに気を向けようとしたベアランドだが、折しも横合いから声を掛けられてみんなでそちらに向かうこととなる。

 はじめに部下たちが同乗していた機体に、帰りはまた別のふたりの隊員たちを乗せていたのだが、それをすっかり失念していたのをようやく思い出すベアランドだ。

 それでもベテランの軍人たちなのだから、ほっておいても平気だろうとあえて気にかけずに、今はこちらに近寄ってくる同僚の副隊長に身体を向け直した。

 オオカミ族のウルフハウンドは気楽なさまで声を掛けてくる。

「おう、もう帰ったのかよ? 早かったな! ふうん、ずいぶんとブサイクな機体だが、それなりに使えるんだよな? おまえたちが乗って来たんだろ??」

「ハッ!」

 かしこまってまた敬礼する新人たちに、鷹揚な態度の第二部隊隊長はにんまり顔してこの喉を鳴らした。

「くっく、いい反応だな。多少は戦い慣れてきたってことか。学生さんがいっちょ前のパイロット面してやがる! それじゃ早速だが、こいつらは預からせてもうらうぜ?」

「ああ、そうか、明日付でふたりともシーサーの第二小隊に編入されるんだものね? ぼくのほうにふたり、ベテランが入ってきたから。なんか名残惜しいな♡ ぼくのこと忘れないでね?」

「忘れるも何もみんなおんなじ艦に所属の一個中隊じゃねえか? これからも毎日顔を合わせるんだからよ。明日から所属が別になるんだが、もう今からみっちりとミーティングだ! 戦い方も変わってくるから、そこらへんも覚悟して従ってもらうぜ?」

「ああ、なるほど。どっちも機体の仕様が飛行型から地上戦、ないし海上戦用に変わるんだっけ? 道理でふたつともこの区画に見当たらないわけだ。あの銀色のまっちろい機体?」

 表情をややこわばらせるふたりに明るい笑顔で言って、副隊長のオオカミ族には了解したと頷く隊長のベアランドだ。

「それじゃ、行っておいで。副隊長がキビシイからってへこたれちゃダメだよ? しっかりとそのシッポに食らいついて一人前のパイロットにならなくちゃ!」

 最後にびしっと敬礼してただちに灰色オオカミに連れられていく犬族たちを見送る隊長さんだった。

 それきり立ち尽くすが、しんみりとした気分に浸るには回りの喧噪がやかましすぎる。

 それで気持ちを切り替えると、ぐるりと頭を巡らせて、ふたたび自分のアーマーへと向き直るのだった。

 見ればそこには、新顔のふたりのパイロットたちが陽気なさまで立ち話をしている。

 何故だか楽しそうにピョンピョンとフロアで跳ねている、見てくれのそれはでっぷりとした大柄な年配のクマ族たちだ。

 これにはやたらな親近感が沸いてにんまりした笑顔が隠せない隊長さんである。

 こちらはこちらでまた忙しくなるのに違いなかった。

Part3


 巨大な軍用艦の食堂は、一度に大勢の乗組員が利用できるようにそれは大きな区画面積があり、一部には士官やパイロット用の専用フロアだなんてものまでが用意されていた。

 これに普段はさしたる意識もせずにそこらで食事を摂っているクマ族の隊長さんなのだが、あえて今だけはその人気のない専用スペースを陣取ることにする。

 つまりは今日付で編入されてきた新人の隊員たちをともなって、軽いミーティングの場を設けるためだった。

 先にデッキフロアから上がって、すでにミーティングを行っているはずの同僚のオオカミ族が率いる第二部隊はどこにも見当たらないので、おそらくはどこぞかのブリーフィング・ルームにでも詰めているのだろう。

 みなが大柄で大食漢ばかりのクマ族たちとは違って、その体つきがスマートな種族が大半のオオカミや犬族たちには、食べながらミーティングをするという発想や慣習がないのかも知れない。

 食堂の横長のテーブルのあちらとこちらに分かれて座るベアランドは、これと対面するふたりのベテランパイロットたちを実に頼もしげに見つめては、クックと喉の奥を震わせるのだった。



「ふたりともほんとに良く食べるな! 見ていてあっぱれだよ。小食なコルクたちに見習わせてやりたいくらいだ♡ よっぽどおなかが空いてたんだね? まあ、わからなくもないけど……」

 性格何かと難ありな犬族の艦長の巡洋艦に居た時の悲惨なありさまを思い返しながら、肩を揺らして笑ってしまう隊長さんだ。

「それじゃ、食べながらで構わないから、今からおおざっぱなブリーフィングをさせてもらうよ。改めて自己紹介をば♡ じぶんはこのアーマー部隊の隊長を務める、ベアランド少尉だ。ぼくらはとりあえず第一小隊、この戦艦の中では、いわゆる航空アーマー部隊ってヤツだよね、てことで以後よろしく!」

 これにテーブル上にどかんと置かれていた山盛り一杯の食事から、二人そろって顔を上げるクマ族たちは反射的に立ち上がろうとするのを、やんわりと制止するベアランドはまた続けた。

「あ、いいよ、敬礼はさっき済ませたばかりじゃない? そのまま食べ続けてていいから。どうせ面通しくらいのおざなりなものしかやらないんだし、いちいち細かいこという必要もないってものだしね? なんたってこんなにいかつい見てくれした大ベテランのパイロットさんたちじゃさ!」

 どちらもじぶんとおんなじ大柄なクマ族の上に、ふたりともこの艦内ではおよそ見かけないような一風変わった見てくれのスーツに身を包んでいるのを、いかにも頼もしげなニコニコ顔で眺める隊長さんだ。

 見ようによってはかなり異様な、いっそ囚人服だとかを思わせる横縞柄のパイロット・スーツは、これぞまさに知る人ぞ知るべくした王宮や内政府直属の守備部隊の専属衣装だった。

 すなわちよほどの熟練した手練れのみが身につけることを許された、アーマー曲技曲芸部隊、人呼んで『サーカス・ナイツ』の出身であることを、どのくらいのクルーが知っているのだろう。
 
 一説には暗殺だとかいった闇の仕事もこなすのだとか……?

 こうして目にすることもなかなかに無いはずのものなのだ。

 軍内部ではある種の「伝説」とまで化した戦闘集団だった。

 それだから見ていてわくわくが止まらない若いクマ族の隊長は、太い首を傾げながらにしみじみと言うのだ。

「う~ん、それがどうしてあのおじさん、もとい偏屈な犬の艦長さんのとこにいたのかねえ? あんまり詳しくは聞けなかったけど、なんかワケありっぽいのかな♡ おまけにこのNo.8とNo.9とはさ! 上位10位以内の上級ランカーだなんて、普通はなかなかお目にかかれないんもんだろうに?」

 見た目がかなり特殊なデザインしたスーツの胸ポケットのあたり、それぞれに固有のナンバーが描き込まれているのを読み上げては、ひとしきり感心するのだった。

 これにどちらも一度は立ち上がりかけながら、また口の中いっぱいに食べ物を詰め込んでモグモグやっていたふたりの中年のクマ族たちである。


 それがやがてごくんと口の中のものを飲み下したらば、やや苦笑い気味の照れたような笑顔を向けてくる。

「いやいや、そないに大したもんちゃいますわ! なりはこないですが、おれらしがないアーマー乗りってだけのことでして。なあ?」

「せやな。ぼくらアーマーをうまく扱うことだけが取り柄のただのおっさんですわ。お恥ずかしいはなしやけど……!」

「そんなこと♡ 『高空の大鷹と大鷲』とまで恐れられた、クマ族きっての熟練パイロットコンビ、よっぽどのもぐりじゃなければ知らないヤツなんていやしないよ!」

 まんざらお世辞でもなさそうな隊長からの発言に、また互いの顔を見合わせてこちらもまんざらでもなさそうな上機嫌で照れ笑いするおじさんたちだ。

「そないに言われると照れてまいますわ! ええ隊長さんに拾うてもらえてこっちは大助かりですさかいに。この軍艦、飯もめっちゃうまいし、ええことずくめやわ!!」

「ほんまや。今後ともどうぞよろしゅう。せやからぼくらも改めて自己紹介をさせてもらいますわ。噂ほどの腕があるかは知りませんが、ぼくはヒグマのザニー、ザニー・ムッツリーニ、階級は中尉であります……!」


「せやったら、じぶんはグリズリーのダッツ、ダッツ・ゴイスン中尉であります! よろしう願いますわ、ほんまに! マっジでがんばりますさかいに!!」


 息の合ったふたりからの歯切れのいい名乗りにあって、こちらもますます上機嫌で受け答えるベアランドだ。

「どうも♡ こちらこそ、頼りにしてるよ! だったらほら、遠慮しないでもっと食べてよ、じきにお代わりも来るだろうから。おなかペコペコなんでしょ?」


 鷹揚なクマ族の隊長からの催促に、いささか気後れすることもなくがっつりと頷くこちらも豪快なクマ族たちだ。

「はあ、それは、そんなら喜んでいただかせてもらいますわ!」

「ほんまにええ隊長さんや! でもなんで部隊を率いるっちゅうリーダーが、おれらよりも年下でおまけ格下の少尉さんなんや? このひと??」

 目の前のごちそうに再び取りかかりながらこちらをチラチラと目の端でうかがってくる灰色のクマ族に、向かって左隣の赤毛のクマ族はあいまいな顔つきでただこの頭を傾げさせる。

 おおらかな口ぶりの隊長はこれに気にするでも無く答えた。

「まあ、そのへんは今はどうか大目に見てよ♡ これから頑張って階級上げるように努めるから。ふたりとおんなじか、いっそ大尉さんくらいがいいのかな? 正直、個人的にはあんまりこだわりがないんだけど、そこらへん」

「ええです。気にしませんわ。ちゅうか、少尉どの、やのうて隊長さんが乗ってたあのアーマーを見たら、納得やわ。あないにバケモノじみたいかついギガ・アーマー、そこいらのパイロットには乗られへんのやさかい。実力は保証されとるっちゅうわけで」

「せやな! ビックリやわ!! あないなお化けじみたもんひとりで乗りこなすなんてありえへんで、ほんまに。ちゅうかマジでひとりでやってますのん? おっかないわあ……!!」

 おじさんのクマ族がふたりしてうんうんとうなずき合うのに、こちらも照れた笑いでうなずく若いクマ族だ。

「どういたしまて。とは言えで、そっちのアーマーもかなりのモノではあるんだけどね? 初期型のビーグルⅥとは言っても、現行の機体よりもよっぽど性能が良さそうだよなあ。実際に乗ってたコルクとケンスがとても扱いきれないって嘆いていたし?」

「フフッ、犬族のワンちゃんたちにはしゃあないですわ。なんちゅうてもベア・ヘッド! クマ族のぼくら専用にチューニングした機体なんやから。装甲からエンジン出力から桁違いですわ」

「あないなもん、ほんまにおれたちやから乗りこなせるっちゅうもんでの? せやから腹ごなしもして元気もりもり、クマ族コンビの実力っちゅうもんをいかんなく発揮してやりますわ!!」

 本当に息の合ったおじさんコンビに、心からの明るい笑顔になるベアランドだ。

「楽しみにしてるよ。ほんとに元気になってくれて良かった♡ 一時はどうなることかと思ってたからさ? ジーロ艦長のとこで独房にふたりそろってぶち込まれてたのを見た時には……!」

 いたずらっぽい笑みでウィンクしてやるに、途端に気まずげな顔を見合わせて、互いの肩をすくめさせるおじさんコンビだ。

「ああ、それはお恥ずかしいところを見られてしもうたわ……」

 ペロリと赤い舌を出して困惑顔する赤毛のクマ族に、対する焦げ茶色のクマ族は、はたと考えながらに聞いてくれる。

「うん。でもあれってのは、つまりはふたりともひどい船酔いで完全グロッキーだったんだよね? 今にして思えば??」

「せや! あの渋ちんの艦長さんが、空も飛ばんとずっと海面にへばりついておったから、航空巡洋艦やっちゅうてるのに!!」

 いまいましげに呻く灰色熊に、横のヒグマがおなじく険しい顔色で同意する。

「おお、燃費が悪うなるから空飛ぶんは必要に迫られてからゆうてたよな? ほんまにしんどいわ。ぼくらふたりとも海軍さんやのうて丘の陸軍出身やさかいに、あないにぐらんぐらん揺れる中ではしんぼうでけへんかった」

「地獄やったわ! それにくらべてこっちの空母はちゃんと空飛んでますやんか、マジで天国やわ! おかげでまるで揺れへんし、うるっさい波の音もちっとも聞こえへん!!」

「ああ、だからさっきはあんなピョンピョン跳ね飛んで地面を確かめてたのか。このクラスの重巡洋艦は空飛んでたほうがむしろ燃費がいいって言うからね? 試験飛行も兼ねてるから、次に降りる時はちゃんとした大地の上じゃないのかな。ふたりともこっちに来て正解だったんだ。ジーロ艦長には感謝しなくちゃね!」

「いいや、もう二度と関わりたくありませんわ」

「マジで!」 


 深いため息ついたかと思えば、それきりまたみずからの食事にいそしむベテランたちに、じぶんもお腹が減ってきたことを自覚する隊長さんだが、折しもそこに無人の移動カートに乗せられた山盛り一杯のごちそうがまた新たに到着した。

 これにヒュー!と歓迎の口笛を鳴らすおじさんたちだ。

 まだ食べる気まんまんなのらしい。

 そんなとても景気のいいクマ族たちに心底嬉しくなるこちらもクマ族のベアランドだったが、食べ物が満載のカートからがっちりと大盛りのプレートを持ち上げながら、その後ろにくっついてきた人影をそれと認めたりもする。

 四人目のチームメイトであるメカニック担当の青年クマ族なのだが、この後ろにまた大柄の中年のクマ族がいたりもするのにはやや不可思議な目線を向けるのだった。

 ちなみに士官用のフロアは目隠しの衝立(ついたて)がこの周囲にぐるりと張り巡らされているので、外からはこの中の様子がよくはわからない。

 よってつまるところふたりともこのやけに食べ物が豪快に盛られた自動カートの行く先に当たりを付けて、この後をくっついてここまで導かれたのらしかった。

 それを理解した上でふたりの凄腕のメカニックマンたちを迎えるベアランドだ。

「お、さすがにいいカンしてるね! 待ってたよ、リドル。あと第二小隊専属のチーフまでいるけど、一緒にお食事かい? ま、構わないけど、どう見てもグルメでグルマンのイージュンがいたらば、ごちそうの取り合いでケンカになっちゃいそうだな!」

 こんな冗談めかしたセリフにあって、だが当の本人は何やら浮かない顔つきで大きな肩をすくめさせるのみだ。

 クマ族の中でも飛び抜けて大柄な肥満体型である第二小隊チーフメカニックに、この前に立つとさながら子供のように映る細身の若いクマ族のこちらは第一小隊が専属のチーフメカニックマンは、ちょっとだけ苦笑いで答えた。

 あんまりにも勢いよく食事を平らげている右手のクマ族たちにどうやら引いているらしい。

「は、リドル・アーガイル、ただいま参りました。みなさんお食事中のところ失礼させていただきます。ぼくは食事はもう下のデッキで適当に済ませているのですが……」

「済ませているって、たかが小ぶりなハンバーガーをひとつだけつまんだくらいだろう? あんなものは食事とはいいやしない」


 後ろから巨漢のクマ族にいじられてなおさら苦笑いのリドルだ。これにベアランドが了解して右手の椅子を引いてみせた。

「いいからいいから! ならきみもちゃんと食事を摂らなきゃ♡ ふたりの新入隊員さんたちに紹介するついでにね! あと、そっちのイージュンもついでに紹介しておこうか。あいにくと第二部隊のメカニックだから、直接は用がないんだろうけど?」

「む、ついでにとは失敬だな? まあいいさ。オレはまだやることがあるからとっとと失礼させてもらう。用があったのはあんたらではなくて、あの生意気なオオカミ族と気弱なワンちゃんたちなんだ。アーマーのことでお願いしたいことがあってさ」

 浮かない調子で言って口をへの字に曲げるチーフメカニックに、これまた意外そうな目で見上げる第一小隊の隊長さんだ。

「ああ、そうなんだ? でも見ての通りで、あいにくとここには誰もいやしないよ。たぶんみんなよそのブリーフィング・ルームに詰めているんだろ。急ぎの用ならこっちで呼び出してあげようか?」

 みずからのスーツの腰にある士官専用の通信端末を示しながらの言葉に、冴えない顔した巨漢のクマ族は太い首を横に振った。

「いや、あの灰色オオカミは何かとめんどくさいから、あんたから言ってやってくれないか? それにどっちかと言ったら新人のワンちゃんコンビにお願いがあるんだ。そう、あの犬族たちのろくに塗装されていないアーマー、せっかくだからそれなりに色をつけてやりたいと思ってさ」

「あ、やっぱり未塗装だったのでありますか? 全身銀色でやけに目立つ機体色なのがおかしいとは思っていたのですが……!」

 うながされるままに椅子に座った若いクマ族が熟年のクマ族を見上げて問うのに、傍で聞いていてただちになるほどと納得するベアランドだ。

「やっぱりそうなんだ? はあん、でもあの機体、どちらも飛行型から地上戦、ないし海上戦仕様に機体の仕様を換えられちゃうんだよね? てことはもう終わったのかい??」

「いまやってる真っ最中だよ。両脚のホバーユニットの換装自体はわけないことだから、あとは背中の邪魔なフライトユニットも取り外してより地上戦仕様にふさわしく仕立ててやる。武装と装甲をより強化するかたちでね?」

「そいつはありがたいや! あの子たちも喜ぶんじゃないのかな? 頼れるメカニックがついてくれて一安心だよ。今後ともよろしくね! それじゃ、後でそっちに顔を出すようにふたりには伝えておくからさ♡」

「ああ、よろしく頼む。ただしオレの居住区のセル(個室)ではなくて、下のハンガーデッキに来るように伝えてくれ。来るのは明日以降で構わないから。それじゃ、オレはさっさとおいとまさせてもらうよ。あとはどうぞご自由に。こちとらやらなきゃならないことがまだまだ山積みなんだ」

「うん。ご苦労様♡ それじゃ、またね」

「ご苦労様であります! イージュン曹長どの!!」

 巨漢のクマ族がのっしのっしとこの視界からいなくなるのを見届けて、改めて残りのメンツを見回す隊長だ。

「よし、それじゃこちらも食べながら、いざ本題に入ろうか。せっかくこうしてみんなそろったんだから」

 するとぼんやりした顔で口をもぐもぐ動かしていた赤毛のクマ族が、ごくんと口の中の食べ物を飲み下して、今しも食堂から立ち去っていくでかいクマ族の背中を見ながらに言った。

「んん、いまのおひと、なんやえらい存在感がありましたが、イージュンってゆうてはりましたか?」

「せや、そやったらめっちゃ有名人やんな! 泣く子も黙る鬼のメカニック、イージュン・ビーガルっちゅうたら、知らんひとおらへんで、この界隈じゃ? さっすがにこんだけいかついフラッグ・シップともなるといたるところ猛者ばっかりや!」

 灰色のクマ族も興味津々でおっかなびっくりにその背中を追いかけるのに、もうとっくにこれを見慣れている隊長さんは、肩をすくめ加減にしてあいまいに応じるばかりだ。

「まあ、本来はよその軍艦に配属されてたのを今だけ特別に入ってもらったんだけどね? ここって基本人手不足だから。いつまでいてくれるんだか♡ それはさておき、こっちの紹介もさせてもらうよ。ぼくら第一小隊のチーフメカニックくんのことをさ」

 あらためて己の横に着く若いクマ族を示しながらの言葉に、ふたりのベテランが目をまん丸くして大口を開けた。

「へ、チーフメカニックさんでありますか? この見た感じいかにもお子ちゃまっぽい、クマ族の男の子が??」

「うそやん! まるでそんなふうには見えへんで? 隊長、冗談ゆうにもほどがありますて!!」

「ああ、いや、別にそう言うわけでは……!」

 ある意味まっとうな反応するベテランのパイロットたちに、苦笑いで右手の若いメカニックのクマ族を見つめるベアランドだった。するとこれにはリドル本人がすかさず席を立って、ピシリとした一人前の敬礼をしてくれる。

「ハッ、申し遅れました! じぶんはリドル・アーガイル、伍長であります! こちらでは第一小隊のチーフメカニックとしての任務に当たっております。見ての通りのまだ若輩者でありますが、どうぞ今後ともよろしくお願い申し上げます!!」

 そうきっぱりと宣言してくれるのをきょとんと見上げるばかりのクマ族たちだが、その後にとどめとばかり隊長から言い放たれた一言、ある有名な犬族の伝説的メカニックの名前にひたすらびっくりして互いの目を見合わせることになる。

「そないな大したおひとの愛弟子なんでっか? それは……!」

「うそ~ん、マジでビックリや!!」

「いや、その、それほどでも……!」


「基本的にはこのぼくのアーマーを面倒見てくれているんだけど、だったらなおさら納得だろ? あのお化けアーマーのメインメカニックマンなんだからさ♡ このトシで!」

 かしこまるリドルの肩をぽんぽんと叩きながらしたり顔するベアランドに、神妙な顔で正面に向き直る赤毛のクマ、ザニーはやがて真顔でうなずいた。

 ダッツはやや困惑顔のままだが、相棒が納得するからにはさしたる異論はないらしい。

「それは、信頼してええっちゅうことなんですな? メカニックの腕はパイロットの生命に直接関わるもんやから。隊長のお墨付きなら文句は言いようがあらへんですわ」

「うん♡ 全幅の信頼を寄せてくれて構わないよ。ビーグルシリーズくらいなら、片手でちょちょいのちょいさ!」

「ほんまに? なんかおっかないわあ!」


「いいえ、見るからにはちゃんと見るので、それで一見したところ、おふたりのアーマーは背中のフライトユニット以外にもプロペラントタンクが増設してありますが、あれは通常任務においても必要なものなのですか? あくまで航続距離を伸ばすのが目的ならば、激しい空中戦ではむしろ邪魔になるものかと思われますが……!」

「ほんまもんやわ! せやんな、明日からの任務には必要ないものやさかい、取っ払ってもろうてかまへんよ」

「せやったらじぶんのも頼むわ! あないにでかいワンちゃんのシッポみたいなもん、カッコわるうてしゃあないて!!」

 すぐにも意気投合しはじめるパイロットとメカニックを嬉しげに見るベアランドは、そこでちょっと考えながらに口を挟んだ。

「ん、明日から、かい? はじめに見た感じだと、どっちもあと2、3日は休養を取らないとダメかと思っていたんだけど、そんなに急いでいいもんかね? しばらくはぼくひとりのワンマン部隊の覚悟をしていたのだけど」

「そうなのでありますか? じぶんにはおふたりともどこも不調はないように見受けられますが。もちろんアーマー自体はいつでも出撃可能です!」

「あはは、明日からが楽しみだね! それではダッツ中尉、ザニー中尉、今後ともよろしく頼むよ♡ 北の空で敵無しと謳われた空中戦のプロの活躍ぶり、ほんとに頼りにしてるからさ」

 隣の若いクマ族同様に席を立ち上がるクマ族の隊長は、そう言って右手をテーブル越しのベテランのクマ族たちに差し出した。


 これにすかさず立ち上がって交互に固い握手を交わしてくれる赤毛と灰色熊だ。

 ただし素手で食べ物を掴んでいた利き手はどちらもぐっしょりと濡れていたが。

 ちっとも気にしないで座り直すとみずからもナイフとフォークは無視してごちそうを掴み上げるベアランドだ。

 横のメカニックにも自由に食べるように言って、鼻歌交じりに口いっぱいにパンやら肉やらをほおばる。

 明日からが楽しみで仕方がない隊長さんなのであった。



           ※次回に続く……!

リドル、イージュン登場 お代わりのワゴンの後から
ケンス、コルク、←シーサー ミーティング
ダッツ、ザニー、ベアランド、
イージュン、ケンスとコルクに用がある。ビーグルⅥ塗装? 

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ルマニア戦記/Lumania War Record #014

#014

 #014

Part1


 その時、実際の現場にはどれほどの〝間〟が流れたのか? 

 それぞれの体感としてはそれは長い沈黙の後、この海域のどこぞかに姿をくらましているものとおぼしき新型の巡洋艦の艦長、犬族のベテラン軍人の声が、再びコクピット内にこだました。

「……どうした? 返事が聞こえないぞ? 聞こえたんだろ? いいから、とにかく撃っちまえよ。お前の機体のメインアームで構わないから、目の前のでかいプラントに一撃見舞ってやれ!」

「ハッ……!?」

 果たして上官からのおよそ予想だにもしない命令に、部下である若い犬族のパイロットは、ろくな返事もできないままにひたすらに己の耳を疑っていた。

 よもや現実のことかとだ?

 これに傍で聞いていた相棒と、混乱した現場を取り仕切る若いクマ族の隊長さんも少なからず動揺して耳を澄ましてしまった。

 するとその沈黙に、ややもせずしてまた年配の大佐どのの、ちょっとイラッとした声色が響く。

「おい、でかグマ! おまえの部下どもは耳が聞こえないのか? 上官の命令にろくな返事ができてないだろう! このオレは至って単純な命令しか出してないぞ。目の前の敵に占拠されたプラントを攻撃しろって、ただそれだけだ。簡単だろ、あんなでかいの空からならおよそ外しようがない」

 ああ、やっぱり、そう言ってるんだ!

 本気なんだとようやく納得しながら、ずいぶんと乱暴なことをぬかしてくれるなと内心で呆れてもしまうベアランドだ。

 左右のスピーカーからは、ごくり、と息を飲んだり、ひどく狼狽したりした息づかいが、はっきりと伝わってくる。

 いよいよもって混乱してきた状況にひどい苦笑いの隊長ながら、とかく落ち着き払って右手のスピーカーに声をかけた。

「だってさ、コルク? 聞こえているよね、どうやら本気らしいから、ちゃんと返事しないと!」

 おそらくは狭いコクピットの中で息を殺して縮こまっているのだろう、毛むくじゃらのワンちゃんに向けて言ってやるのに、当の本人からは切羽詰まったようなうわずった返事が返ってきた。

「はっ、はいっ! 了解っ、あ、ですが、あの、そのっ、あの! し、しかしっ……!」

 まともにろれつが回っていなかった。

 もはや完全にパニックしたコルクの慌てぶりに天井を仰いでしまうベアランドだが、見上げた先のスピーカーからはやや憤慨したオヤジの声が降ってきたのには、なおさら天を仰いでしまう。

「しかしもカカシもあるか! おい、こいつはれっきとした上官命令だぞ? 貴様、命令を無視しようってのか! 何も遠慮することはない、こっちの本気を見せてやるためにやつらに一発かましてやればいいだけのことだっ、それで大きく潮目は変わる」

 決まり切ったことだろうと言わんばかりにきっぱりと断言してくれる艦長どのだ。およそ有無を言わさない迫力があった。

 これに若い犬族がなおさら萎縮してしまうのが、モニターの中の様子を見なくてもそれとわかる隊長さんが、仕方も無しに仲裁に入る。

「いや、しかしだね、艦長? そうは簡単に言ってくれるけど、民間の施設にぼくらみたいな軍が介入、しかも実弾を見舞うだなんてのはどうにも穏やかでない……てか、あれって実際に稼働してる大容量かつ大出力のエネルギープラントなんだよね??」

 そんなところに攻撃しようだなんておよそ正気の沙汰じゃないのは、まだ若い新人の隊員でなくともそれとわかりそうなものだが、相手の百戦錬磨のベテランはまるで意に介したふうでもなくあっさりとこのクマ族の意見をはたき落としてくれる。

「おい、誰がプラントそのものを攻撃しろだなんて言った? 撃つのはプラントの本体ではなくて、これをコントロールしている制御室、コントロール・ルームだ。当たり前だろう? あの海上ベースの真ん中におっ立っている高いタワーのてっぺんだよ! とにかくそいつを破壊しろ!!」

「そういうことは先に言いなよ! さっきっからさ、大事な部分がまるっきり事後説明になってるじゃないか? でも制御室を壊したりして、平気なのかい?」

 苦い顔でうなるクマ族に、相手の顔の見えない犬族はそ知らぬさまでこれまたぬけぬけとぬかしてくれる。

「平気だろ、プラントの内側にサブのコントロール・ルームがあって、そっちがむしろそのプラントの本丸だ。内密に海底資源をくみ上げるのもそっちでやってるんだからな。よってその表に見えてるのはお飾りみたいなもんなんだよ。ただし目立つぶんそこを叩いちまえば周りの敵にプレッシャーを掛けられるし、みんなとっとと逃げ出していくさ。文字通り、シッポを巻いてな?」

「はあ、そんなにうまいこと行くもんかね? コルク、コルク! 聞いてるかい?」

 押し黙ったままの犬族に話を振ってやるに、やはりテンパったままの当のコルクは、ひどく苦しげな返答を返してくる。

「で、ですが、あの、あのコントロール・ルームには、民間人のクルーがいるのではっ? なのにそこをじぶんが撃ったりしたら……!!」

 もっともな意見だったが、内心で首を傾げる隊長さんだ。

「ああ、いや、そんなに派手にど真ん中にぶち込む必要もないんじゃないかい? ちょっと天井とか、目標のやや下あたりにめがけてさ、あんまり被害が出ないくらいのを……!」

 そもそもがこんな状況だからとっくに退避している可能性もありそうなもので、性格的な心配性が過ぎるだけとも考えられた。

 だがこれに天井のスピーカーからは、いよいよいらだった犬族のオヤジ様のかんしゃくが降り注いでくる!

「いいから、オレは撃てって言っているんだよ! 構うことはない、躊躇してると敵さんが勢いづいてくるぞ? 早くやれよっ、おいっ、この能なしのボンクラどもがっ!!」

「ひっ、ひいっ……! おれっ、おれ! ひいいっ……」

「コルク! いいから落ち着けよ!!」

 同僚のケンスの声も響くが、あいにくと毛むくじゃらの犬族くんはまるで周りが見えていないようだ。

 合わせて困った隊長と怒った艦長の声も交差する。

「コルク! よく聞けっ、狙うんならちゃんとタワーのてっぺんだよ? そこ以外は致命打になるから! いろんな意味で!!」

「早くやれよ! おい貴様、命令違反をするつもりか!? ならそいつはこのオレをジーロ・ザットンと知ってのことだろうな!!」

「ひいっ、じ、ジーロ・ザットン……! と、父さんっ、おれ、おれ、どうしたらっ……!!」

「……?」

 出会ったばかりではまだ少年にも見えた青年が、ついには情けのないかすれた悲鳴を漏らす。

 ちょっと怪訝に聞くベアランドだったが、天井からそれをかき消すような怒号がするのには、うげっ!とうめいてもしまう。

「マズイな……! あの艦長さんてば、すっかり頭に血がのぼっちゃってるよ!」

 勝つためには手段を選ばない冷血漢とも噂される人物は、いざとなったら相当に手荒なこともやってのけるに違いない。

 この場が荒れるのはもはや必然だ。

 で、結果、ろくでもないことをでかい声でまくしたてる大佐どのなのであった。いわく――。

「ああ、だったらもういい! こっちでやるさ、ここまで来たらもうこそこそ隠れている必要はないからなっ、全艦戦闘態勢! 緊急浮上だ! おい、話は聞いているな、砲手長? 艦首が海面から出たらオレが言ったポイントをただちにぶち抜いてやれ!」 

 ブリッジのクルーから立て続け、おそらくは艦の砲手のセクションへ向けて声高に言い放たれた怒声にぎょっと目を見開くベアランドだ。強硬手段の強権行使はとどまるところを知らない。

「ああ、そうだよっ……は? 主砲じゃない、副砲、おまけのサブキャノンでだよ!! きれいにうわっぺりだけ吹き飛ばしてやれ!! あ、間違ってもエネルギーの貯蔵庫は撃つなよ? 目の前のクマ助どころかこっちまで巻き込まれちまうぞ!!」

「うわ、すごいこと言ってるな! コルク、ケンス、たぶん背後の海面にでかい巡洋艦が顔を出してくるから、その射線上から機体を退避させるんだ! やっこさん、かまわずぶっぱなしてくるぞ? あと、一歩間違ったら大爆発が巻き起こるから、その時は全力で緊急回避だ! ぼくは、ええいっ、めんどくさいな!!」

 こちらの命令通りに二機の僚機が左右に分かれていくのをモニター越しに確認しながら、本来ならじぶんもさらに上空へと退避すべきところを、あえてモニターをぐるりと半回転させて、この真後ろへと機体の頭を巡らせる。

 巨大なエネルギープラントを背後にして臨んだ海面からは、今しもそこに大型の戦艦の甲板が急浮上するのが見て取れた。

 思った通りに遠くの東の海域から流れ着いてきた巨大な人工の漂流物、廃墟と化したはずギガフロートを真ん中からまっぷたつに割る形で、新型の巡洋艦がその姿を現すのだった。

 おまけにこの鋼の船体を現すなりにブリッジの下に据え付けられた砲塔が盛大に海水はき出しながら、この仰角をこちらに上げてくるのに思わず舌打ちしてしまう。

「ちっ、やる気まんまんだね! でもそんなのでプラントを狙い撃ちしたら、示威行動以前に自殺行為になっちまうだろうさ? かくなる上は、仕方ない! こっちも腹をくくるしかないや、行けるよね、ランタン!!」

 左右から困惑した部下の犬族たちの声が響くが、今はそれらを一切無視して機体の制御に専念するクマ族の隊長だ。

 機体をゆっくりと上昇させて、前方に出現した戦艦の目標となっているプラントの制御タワーのてっぺんへとみずからの機体の高度を上げていく。

 さらには丁度相手の射線上にこの機体の胴体の中心が重なるポイントで、ぴたりと姿勢を固定させた。

 ふうっと息継ぎをして、前のめりに正面のモニターをにらみつける。

「いいね、エネルギー全開でバリアを展開だ! あのおじさんの砲撃をまともに真正面で受け止めるよ!! お前なら戦艦の艦砲射撃でも十分に耐えうるところを証明しておくれよ!! ついでにお前のちからをみんなに見せつけてやれ!!」

 やや苦し紛れな言葉をがなってみずからを鼓舞する。

 機体のエンジンをふかすことなく無理をしてここまで出て来たからパワーは満タン! おそらくは大丈夫なのだろうが、後で聞いた若手のメカニックがなんて嘆くのか見物だった。

「さあて、面白くなってきちゃったね……!」

 自然と口元に笑みがこぼれるが、天井のスピーカーからは例の冷めたオヤジの声がする。

「おい、何のマネだ、でかグマ? それじゃあお前ごとタワーを撃ち抜くことになるが、それでいいってのか??」

「いいや、ご心配なく! しっかりと受け止めてやるからさ!! そうでもしないとこの場は収まらないだろう? まったくこれも織り込み済みだったりするんじゃないだろうね?」

「ふんっ……!」

 威力が知れているアーマーの固定武装ならいざ知らず、でかい戦艦の艦砲射撃だなんてものをまともに食らったら軍事要塞でもない民間仕様のプラントごときはひとたまりもない。

 てっぺんをぶち抜くついでに崩落したタワーの一部がこの真下の貯蔵施設を直撃、結果として見事に誘爆、すべてが粉みじんに爆発炎上だなんてのは考えたくもないが、この確率としてはやはり無視できないものがあっただろう。

 結果的に部下の不始末の尻ぬぐいをやらされているのかと内心でげんなりするベアランドだが、こちらも負けん気は強いもので皮肉っぽく言ってやるのだった。

「要は相手に脅し、示威行動ってヤツをやってやりたいんだろう? 遠慮無くやればいいさ、これなら安心して撃てるんだろ! まさか外したりはしないよね?」

 結果はどうあれ、軍艦の艦砲射撃が民間のプラントめがけて放たれたとなれば、このインパクトはばっちりだ。

 部下たちも含めて周りはみんなどん引きするに違いない。

 頭上のスピーカーからは、いよいよもって腹立たしげな罵声がクマ族の左右の耳を打つ。

「ああ、いいから撃っちまえ! 仰角そのまま、パワーは落とすなよ? いっそ主砲をくれてやりたいところだが、今日のところはサブで勘弁してやるよ、でかグマ! じゃ、しっかりと歯を食いしばって気合い入れろよ? ほらよっ……てぇーーー!!」

 半ばやけっぱちじみた発射の号令と共に、こちらのコクピット内にはけたたましいアラームの警報が鳴り響く!

 まさしくロックオンされた艦砲射撃が撃ち放たれるのが、あたかもスローモーションで正面の大型モニターにリアルタイムで映し出された。

 対してこれを目をつむることもなくじっと凝視して、ひたすらこの身体を力ませるベアランドだ。

 まぶしい閃光が眼下の海面の中心で光ったと思ったら、直後には目の前が真っ白に染まっていた。

 機体がかすかに揺れるが、メインのキャノンでなかったぶんにさほどの変化、ダメージらしきは感じられない。

 また直後、すぐに目の前には元通りの光景が広がっていた。

 機体の各種センサーを即座にチェックするが、どこにもこれと目立った変化らしきはない。あっさりとやり過ごしたらしい。

 背後のカメラに映るプラントにも、これと変化はなし……!

 するとこれには大した物だとほっと一息、一安心してシートにでかい尻を落ち着け直す隊長さんだ。

「ふうっ、さすがに最新兵器は違うよね! ランタン、よくやったぞ。目の前のおじさんの顔を見てみたいもんだよ……!」

 そんな軽口叩いてやると、今しも目の前のモニターの中心が四角く切り取られて、そこにくだんの犬族の艦長どのが、ただちに顔面度アップで現れる……!!

 ひどく冷めた目つき顔つきをして、不機嫌なのが丸わかりな口調で言葉を発してくれた。

「ひとつも変化なし……まったく、とんだバケモノだな! どこにもかすり傷すらにありゃしないとは……! やっぱり主砲をくれてやれば良かった。ちょうどいい実験になっただろう?」

「それはまた今度にしてよ♡ でないとリドルに泣かれちゃうから。うちの優秀なメカニックくんにさ。で、少しは気が済んだかい? ほんとに呆れた艦長さんだな。そんなんでこの場の始末は任せていいんだよね?」

 上官相手に臆するでもなく茶化した言いようのアーマー部隊の隊長に、なおさら気分悪げな犬族はひん曲がった口元で応じた。

「ふん、こうして出て来ちまった以上、そのつもりだよ。始末も何も、戦況はもう明らかだろ? 回りを見てみろ」

 ぶっきらぼうにアゴを揺すってみせる上官どのに、回りのモニターの変化を自分でもそれと見て取るベアランドは納得顔でうなずいた。

「ん! ……ああ、なるほど? みんな蜘蛛の子を散らすみたいにこの場を離脱していってるよ! 見事な引き際だ、てか、いいのかね、大事なプラントほっぽりだして?」

「元からその算段だったんだろ? そこからは見えない海上基地の背後に停留していた空母だかなんだかが、まんまとこの戦域を離脱したから、みんなでそっちに合流するんだ。こっちの艦砲射撃を撤退命令代わりにしてな」

「なるほど、きっといいタイミングだったっんだね♡ で、南のアストリオンに逃げ帰るってのかい?」

「無理だろ。そっちにはおまえらを乗せてきた最新鋭の航空巡洋艦がにらみを利かせてる。トライ、なんて言ったか? そいつを見越してわざわざ南に回り込んでからこちらに入ってきてくれと先生にはお願いしてあるんだ。まったく新兵器さまさまだな!」

 投げやりな言いようで皮肉めいたことをぬかす艦長だ。

 すっかりとへそを曲げたさまのおじさんに、ベアランドはひどい苦笑いで肩を揺らす。 

「いやはや、ほんとに回りを利用するのがお上手だよね? でもぼくらのトライ・アゲインとは合流はしないんだろ、ジーロ艦長は、あくまでどちらも単艦での戦闘行動を希望してるって聞いてるから?」

「ああ、あいにくと一匹狼な性分なんでな。元から少ない戦力を無理に集中しても方々で破綻するのが落ちだろ。だが、そちらに補給してやるくらいの度量はあるさ。寄って行けよ、おまえはどうあれ、使えない新人の部下たちは燃料の補給なりをしないと帰れないんだろう。あっちがここまで迎えに来てくれない都合」

「まあ、そうだね……!」

 仕方もなさげにしてくれたみたいなウェルカムにちょっと内心で考え込む隊長さんは、おかけで返事が歯切れ悪かった。そこにまた追加のお誘いもあって、ますます考え込んでしまう。

「あと、ついでにこのブリッジに上がってこいよ。いろいろと言いたいことがある。もちろん、ふたりのお間抜けな部下たちも連れてだな?」

「ああ、そう? まあ、いいんだけど……いや、どうかな……」

「いいや、その前にまず面を拝ませてもらおうか、その間抜け面をだな? 使えなくてもそのくらいはできるだろう??」

 かなり言い方に毒があるおじさんの要望に、いよいよどうしたものかと考えあぐねる隊長さんだが、これと断る理由もないものかと左右のスピーカーに言ってやる。

「まいったな、あんまりプレッシャーをかけないでおくれよ? ケンス、コルク! こちらの艦長さまが対面を希望しているよ。これから実際に会うんだけど、その前にどんな顔をしてるのか確かめてごらん!」

「は、はい!」

「あ、あのっ、了解……!」

 慌てた感じの返事がしてひどく緊張した空気が伝わるのに、完全に新人たちが名うての艦長さんに飲まれているがわかる性格のんびりしたクマ族だ。もはや苦笑いするしかない。

 ややもせずひどく白けたセリフが耳朶を打った。

「ふうん、なるほどね、そんなふざけた間抜け面をしてやがったのか、どいつもこいつも……ん?」

「?」

 憎々しげに言いながら、正面モニターの犬族が視線を左から右に流すにつれて、このベテランの艦長さんの表情がやや曇るのを、ちょっと不可思議に見るクマ族の隊長さんだ。

 一瞬だけ変な間が流れて、憮然とした犬族のキャプテンはなぜだかみずからの胸元にこの右手をやるのだった。

 何かをぎゅっと握りしめるみたいな動作だが、それが何かはここからではわからない。

 すると折しもモニターの向こうのブリッジでクルーの声が響いた。

 当該戦域に敵影はもはやないことの確認、これによる戦闘態勢の解除、最後にベアランドたち援軍との合流とこの受け入れを全艦に通達して、艦長との通信は終わった。

 後には死んだかのような沈黙が左右のスピーカーから伝わるが、まるで気にしたふうもなくこの部下たちにてきぱきと僚艦への合流待機を指示するベアランドだ。

 波乱はまだ続くものと覚悟はして、かつての悪漢ぶりが変わらない艦長との再会を楽しみにするクマ族だった。

 部下である若手の犬族たちがベテランの犬族にいびられるのをどうやって阻止してやろうかと考えを巡らせる。

 後からウルフハウンドたちの第二部隊も駆けつけるらしいから、数ではこっちが優勢だろうとあっけからんと構えるのだった。

 左右のスピーカーは依然として冷たい沈黙を守ったままだったが……!

Part2

 
 一時は混乱を極めたドタバタの戦闘劇がおざなりの内にも幕を閉じて、そのまま母艦に帰投するのかと思いきや、僚艦の艦長のはからいでそちらに一時的にお世話になることになる、ベアランドたち、第一アーマー小隊だった。

 実際にはお説教を受けに行くというのが本当のところなのだが、これに部下たちの僚機が補給してもらえるのはありがたい。

 無事に敵軍から奪還した、謎の海上エネルギープラント施設については、そのまま本来の所有となるはずの南の大国、「アストリオン」の正規軍に引き渡すとのことで、そちらとの合流もかねてのこの現状らしかった。

 この場の指揮権を一手に握る大佐どの、ジーロの独断であるが、それにつきコメントなどは差し控えるクマ族の隊長だ。

 面倒ごとに首を突っ込むのはまっぴらだった。

 そうでなくとも、ただ今のこの状況が面倒なのだから……!

 部下たちの飛行型アーマーが無事に巡洋艦のアーマードックに収容されるのを見届けてから、みずからはこの艦首のなるたけ拓けたスペースに向けて大型のアーマーを垂直着陸、着艦させる。

 通常のアーマーよりもかなり大型な機体は、これ専用のアーマーハンガーがなくてはまともに収容することがかなわなかった。

 洋上に浮かんでいる戦艦のバランスを崩さないように注意しながら、この機体のバランスも水平に保ちつつ、その場にピタリと固定……!

 待機モードに出力を落として、みずからはこのコクピットハッチから、艦の甲板へと速やかに降り立つ。

 タラップもないのを器用にアーマーの手足にホップステップ、最後のジャンプでダン!と鋼の甲板に着地。

 そこに待ち受けていたスタッフたちには、特にやってもらうようなことはないと気軽に言づてすると、さっさとその場から艦の中央にあるアーマードックに向かうベアランドだ。

「まあ、そもそもがリドルくらいじゃないとまともにメンテなんて出来やしないんだよな、このぼくのランタンは♡ あっと、いたいた、新人のパイロットくんたち! あらら、ガチガチだな……!」

 そちらに入る出入り口には、すでにみずからのアーマーから降り立っていたふたりの部下たちが、こちらに向けて律儀に敬礼!

 ピシッとした直立不動の姿勢で待ち構えていた。

 苦笑いの隊長は、肩をすくめて軽くだけ敬礼を返してやる。

「そんなにかしこまってくれることもありやしないだろ? まあ、気持ちとしては穏やかでないのは理解できるけど。だとしても、悪いのは自分たちなんだからさ!」

 仕方がないさと茶化したウィンクくれてやるに、ふたりのまだ若い犬族たちはげんなりとしたさまでうなだれるばかりだ。

 意気消沈とはまさしくこのことだろう。

 余計に苦笑いになって肩をすくめるベアランドだが、そのままふたりを伴って艦のアーマードックへと入っていく。

 するとさっきまでの心地の良い潮風が、よどんだ油臭い空気に取って代わって、おまけそこかしこでやかましい音が鳴り響くのは、どこもおんなじ風景だった。

 じぶんたちが世話になっている航空母艦と比べたら、天井の照明がだいぶ抑え気味なのに、薄暗い足下を気にしながらあたりを見回すベアランドだ。

 大型の巡洋艦にしてはアーマーがさして目に付かず、部下たちの新型アーマーばかりがやたらに目立っていた。

 これには、はてなと小首を傾げる隊長さんである。

「あれ、この艦の艦載機(アーマー)が見当たらないな? 確かきみらとおんなじ、ジェット・ドライブ・タイプの〝ビーグルⅥ〟の使い手がいるって聞いていたんだけど? おまけにこのぼくとおんなじクマ族だって聞いていたから、ちょっと会えるのを楽しみにしてたんだけど……!」

 そんな隊長のセリフには、きょとんとした顔を見合わせるばかりの新人たちだが、やがてすっきりとした見た目で長身の犬族のケンスが言った。

「はあ、そうなんですか? 見た限りはおれたちの以外はないですよね。こんなにでかいアーマードックなのに! でも、スタッフさんたちは珍しそうにあれこれ見てましたよ? こっちの機体と仕様がまるで違うみたいなことも言ってたし……」

「お、オレも、いろいろと聞かれた、聞かれました! プロペラントがどうだとか、航続距離がどうだとか、ぜんぜんうまく答えられなかったけど……!」

「まあ、設計者じゃないんだからね? でもアーマーの補給をしてもらう都合、できる限りのことは答えてあげないと……てか、補給作業とはあんまり関係ないような質問なのかな、それって? もうおおよそのところ終わってるっぽいし」

 メカニックのスタッフらしき犬族たちが何人も集まって、この二機のアーマーの足下で談義しているのを遠目に認めて、ちょっとこの声をひそめる隊長さんだ。

 あんなのに捕まったりしたら厄介だぞ、と遠巻きにやり過ごすべく気配を押し殺す。

 暗いからあんまり見通しのよくない現場の突き当たりの壁のあたり、この艦の中心となるメインブロックのブリッジタワーなのだろう区画を見つめて、目的地へのルートを見当した。

 おまけさっきからまったく顔色の良くない犬族たちに、この艦の強面の艦長を茶化したようなことを言ってやる。

「あはは、ほんとにケチ臭いったらありゃしないよね? こんなでっかい航空巡洋艦が空も飛ばずに、艦内の明かりもこんなに落としてさ! こんなんじゃ転んでケガしちゃうよ♡ まあ、あの渋ちんの艦長さんらしいっちゃあ、らしいんだけどさ! 表情も暗かったもんね?」

「……!」

 そんな軽口に、ふたりの部下たちは暗い表情を見合わせるばかりだが、これに意外な方向からツッコミが入れられた。

「ふん、しぶちんで悪かったな? 余計なことは言わんでいいから、さっさとこっちに上がって来いよ……!」

 聞き覚えのある声がエコーを伴った拡声音で頭上から降ってくるのには、思わず部下たちとお互いの目を見合わせるクマ族だ。

「……おっ! 聞かれちゃってたみたいだね? しっかりとマイクでこの声を拾われてたんだ。ほんとに陰険だな! ヘタな軽口も叩けやしないんだから♡」

 ペロリと舌を出して左右の肩を揺らすのには、やはり部下よりもこの艦の最上階でふんぞり返っているのだろう、ベテランの犬族の艦長どのが答えてくれる。

「余計なことは言わなくていい。さっさとこちらに上がってこい。第一艦橋(メインブリッジ)だ。そこからまっすぐ進んだ先にエレベーターが二基あるから、専用のものはお前たちのために解放してある。3分以内だ。以上!」

 言うだけ言ったら、ブツリと途切れる無愛想な館内放送に、大きく肩をすくめさせるベアランドだ。

「だってさ! さては画像もモニターされてたんだね? それじゃ、さっさとイヤなことは済まして、この新鋭艦の内部を楽しくお散歩でもさせてもらおうか。ふたりとも付いておいで」

 こうなれば仕方も無い。

 ふたりの部下たちを伴って、言われたとおりのまっすぐ突き当たりのタラップから上階の回廊、この左手の突き当たりに見えたエレベーターホールまで早足でたどり着く。

 アナウンスの通り、エレベーターは二基あって、右が通常のクルー用で、残りの一基は、途中の階層をパスしたブリッジまでの直行便だった。

 ブリッジ・クルー専用のそれがあるのは、じぶんたちの母艦のそれと同様だ。

 そのためか明らかに大きさが異なるものの、許容量がだいぶ小さめな見てくれをしたものの扉が開け放たれるているのを、その身をかがめてしげしげとのぞき込む大柄なクマ族だった。

 左の頬のあたりを人差し指でポリポリとかきながら、ちょっと考え込んでしまう。



「ああ、なんか、ずいぶんとちっちゃいエレベーターだよね? ブリッジ・クルー専用とは言ってもこんなに狭くすることもないだろうに。ぼくみたいないかついクマ族なんかよりも、すっかり犬族主体に考えちゃってるよ。確かにこんな軍用艦の乗組員は、おおかたでスリムな犬族たちがメインにしてもさ……!」

 みんなで乗れるかなと背後の部下たちを見下ろすのに、かしこまったきりのふたりの犬族たちときたらば、さも困惑したさまでお互いの顔を見合わせるばかりだ。

 そうしてやがて、おずおずと言うのだった。

 まずはこざっぱりしとた見てくれの犬族のケンスが、遠慮がちにものを申す。

「でしたら、どうぞ隊長どのがお先に行ってください……! おれたちは、なあ?」

 となりの相棒に向き合うのに、顔色の真っ青な毛むくじゃらの犬族は力なくこれに同意するのだった。先の戦闘でどやされてしまったここの犬族の艦長に会うのがよほど気が引けるのらしい。
  
「は、はいっ、おれたちは後からブリッジにうかがいます……

 もはや死にかけみたいな部下のありさまをどうしたものかと見つめてしまう隊長さんだ。

「はあ、とか言いながら、ふたりしてバックレたりするんじゃないだろうね? いいかい、敵前逃亡は銃殺刑だよ? まあ、この艦の中じゃ逃げようもないんだけど、発進許可がなければアーマーも出せやしないんだし。まあそうか……」

 ちょっと呆れ顔でふたりを見ながら、また狭いエレベーターに向き直るベアランドだ。これに背中から身を預けるかたちで乗り込むと、部下の犬族と相対した。

「ふうん、どうにか乗れなくもないのかな? まさか重量オーバーだなんて言わないよね? それじゃ、さっさとみんなで怒られに行こうか! それっ!!」

 ふたりの部下たちが気を抜いているところを無理矢理に太い腕を伸ばして捕まえて、この身にがっちりと押さえ込んでやる。

「わあ!」

「ひゃああっ!?」

 びっくりする犬族どもにしてやったりといたずらっぽい笑みで言ってやる。

「イヤなことはとっとと済ませちゃおうよ! 3分以内に来いって言われていることだし、もたもたしてられないから。確かに陰険でおっかない艦長さんではあるけれど、取って食われたりはしないんだからさ♡ あっと、これも聞かれてたりするのかな?」


 腕の中でもがくふたりをぎゅっときつくホールドしながら、さっさとエレベーターを起動させるクマ族だ。

 ブリッジまでの直行便はものの十秒足らずで艦の最上階までパイロットたちを送り届けてくれる。

 その先のブリッジでくだんの艦長と対面するベアランドたちだが、思ったよりも機嫌の悪い大佐どのに内心で肩をすくめる隊長さんだった。背後でいっそうに身をすくめる犬族たちとこってりとしぼられることになるのがもはや明白だ。

 部下でなくとも逃げ出してやりたい気分になりつつ、旧知の仲のベテラン軍人に立ち向かうエースパイロットだった。

                 
              ※次回に続く……!




 

 


プロット
ベアランド小隊、ジーロ艦に着艦。
ランタン 船首部に ビーグルⅥ アーマーハンガーに
アーマーハンガーのコルクとケンスと合流、ジーロの艦内放送でブリッジに招かれる。
ブリッジタワー、エレベーターが二基、その内の一気はブリッジまでの直行便、ただし狭い。
三人でブリッジへ。不機嫌なジーロとのやり取り。
なんやかんやでお茶をにごしていながら結局は命令を遵守できなかった部下、特にコルクへと話が移り……!
以下、#015へ? ※お説教中にウルフハウンドも合流。
部下ふたりは副隊長に任せて、ベアランドはジーロとの話し合いに。船酔い状態で完全グロッキーなダッツとザニーのクマキャラコンビがちょっとだけ登場? 

TO DO
アストリオンのマップ作成、ダッツとザニーのアーマー、ビーグルⅥプロトタイプの作画、ケンスとコルクのビーグルⅥ量産型の作画。ジーロの巡洋艦、????の作画。
  

 

 

本文とイラストは随時に更新されます!


カテゴリー
DigitalIllustration Lumania War Record NFTart NFTartist Novel オリジナルノベル SF小説 ファンタジーノベル ルマニア戦記 ワードプレス

ルマニア戦記/Lumania War Record #013

#013

Part


 遙かな水平線はどこまでも穏やかに澄み渡っていた。

 空も見渡す限りが雲ひとつもなくした、まるきりの快晴だ。

 いっそここが血なまぐさい〝戦場〟だということを忘れてしまうくらいに平和なありさまに、巨大な空飛ぶ戦闘ロボットのコクピットで、その様子を今やぼんやりと眺めるばかりの若いクマ族のパイロットである。

 やがてちょっとだけ気の抜けたような言葉を発するのだった。

「はあん。いざ目標の当該戦域に着いたのはいいものの、人っ子ひとりいやしないなあ? ほんとに気配すらないよ。なのにどうしてここが戦場だって言えるんだか……!」

 目の前のメインモニターのすべてが青一色で、さっきから代わり映えしないのんびりした景色と、手元の各種レーダーの画面を交互に見比べながら、やはりこのどこにも敵影らしきがないのを認めてどうしたものかと考えあぐねる。

 後続の犬族の新人パイロットたちが追いつくのはまだ少し先のことだろう。

 最新鋭の大型巡洋艦が擁するハイパワーのマスドライバーをまんま流用した、アーマーの強制射出発進システムは先手を打つには打って付けだが、単機で先行しすぎるあまり後続機の援軍がすぐには望めないのが玉に瑕(キズ)だ。

 どの場面においてもまずはひとりで強襲急撃、その後も孤軍奮闘しなければならない。

 果たしてその覚悟を持って出撃したはずが、いざ来てみればそこはひたすら何もないただの公海のど真ん中だ。

 本来の戦闘域となるはず海上の孤島、ロックスランドからもかなり西にポイントを移したここでは、ただ広い海原が続くばかりで何をどうすればいいのかさっぱり見当がつかない。

「あれ、場所、間違っちゃったかなあ? さてはリドルのやつ、慌てて射出のポイントをミスってたりして??」

 ありもなさそうなことをつぶやいて、みずからの太い首をしきりと傾げてしまうベアランドだ。

 おのれの周囲を囲むように配置されたモニター群をぐるりと左から右へと眺め回しては、どこかしらに何らかの変化がないかと目を懲らす。

 左右の耳を澄ましてもアラームなどの警報は響かない。

 ただ右側のサブモニターの一角だけ、海面にある種の異物があるのが視認できたが、それをちょっとだけ拡大して、またすぐに視線を逸らすクマ族だった。

「なんか一個だけでっかいフロートが浮かんでいるけど、あれってロックスランドのヤツがここまで漂流してきちゃったんだよね? 完全に破壊されてすっかり廃墟みたいになっちゃってるけど、あのフロート自体がただ浮かんでいるだけで、まるで意味がないものなんだからさ……!」

 そこにあるのが不自然なこと極まりもなくした巨大な灰色の人工物らしきを、しかしさして気にすることもなくスルーする、性格とてもおおざっぱなエースパイロットさまだ。

 少しは気に掛けても良さそうなものをあえて放置していると、そこに折しもどこからかアラームと共に、誰かしら年配の男性らしき声が響いてくる。

「……おい、聞こえるか? でかグマ?」

 突如として聞こえてきた聞き覚えのある声とその言い回わしに、おっ!と頭の上のふたつの耳をピクつかせるベアランドだ。

「お、その声は、ジーロ艦長だよね? この現場の指揮権を持った最高責任者の! どこにいるんだい? ま、なんとなくで想像がつかなくはないけれども♡」

 右手のモニターの一角を今一度、軽く一瞥しながらの言葉に、頭上のスピーカーからは小さな舌打ちがして、ちょっとトーンを落とした返事が返ってくる。

「じゃあ、そういことなんだろう? それよりも、ちょっと耳を貸せよ。大事なお話がある……!」

 ピピッ!

 不意にまた軽いアラームが鳴って、正面のモニターの中に短いメッセージのウィンドウが浮かび上がってきた。

 それを見るなりクックとおかしげにこの喉を鳴らすクマ族だ。

「あ。これって、上級士官用の秘匿回線の通信コードだよね? わざわざこんなの使わなくたっていいものを、ほんとに用心深い艦長さんだよな! 返って怪しいったらありゃしないよ♡」

 苦笑いで思ったままを口にするのに、スピーカーからはまた舌打ち混じりの文句が返ってきた。

「いいから、とっとと開けよ。肝心なことをまだ何も知らされていないお前さんに、親切に教えてやるんだ。ありがたく思え!」

「はいはい! と、それじゃ、どうぞ?」

 言われた通りに複雑なパスコードでブロックされた軍用の特殊回線をつなぐと、スピーカーからはまた同一人物による、こちらはややくぐもった感じの音声が響いてくる。

 さては手のひらサイズの小型の通信機を使って小声で通信しているのだろうと察するクマ族だ。

 よってそのひそひそ話にこの耳を傾けた。

 すると相手の犬族のベテラン軍人の大佐どのは、何やら一度、もっともらしげに咳払いしてから続けてくれる。

「んんっ! まあ、知っての通りで、ここに来るように指示したのは何を隠そうこのオレなんだが、その場所だけでさっぱり後のことは伝わっていないだろう? 説明してやるから良く聞け。で、言うとおりにしろよ? それにつき余計な質問はなしだ。お前は黙って言われたことだけをやればいい……!」

 かなり上から目線のパワハラめいた口ぶりになおのこと苦笑いが強くなるベアランドだが、とりあえずは了解してうなずいた。

「ははん、相変わらず自分勝手な言いぐさだよな! まあいいや、ここはおとなしく艦長の指示に従うよ。さっぱり何が何だかわからないし、意味もなくここに導いたわけじゃないんだろ?」

 相手からの返事がないのにしたり顔したクマ族は明るい口調でまた言ってやる。

「さうさ、なんたって知るひとぞ知る、いかなる劣勢もものともしない先読みと知略に長けたキレ者ぶりで有名な、ジーロ・ザットン大佐だものね! あるいは勝つためには手段を選ばない冷血の極悪人、悪党ジーロ、だったっけ?」

 ちょっとどころかかなり冷やかしめいた口ぶりになるのに自分でもペロリと舌を出してしまうが、これに相手はまるで気にしたふうでもなくて冷めた口調で返した。

 モニターに相手の顔が映らないから実際のところはどうだかわからないが、このくらいで機嫌を損ねるような底の浅い人物でもないと理解はしているクマ族の青年だ。 

「お前に言われたくはないね。あいにくとこっちはわけあってこの姿を見せてはやれないんだが、いざとなったら多少の手助けはしてやるから、覚悟してかかれよ。言うまでもないが、そこはもうれっきとした〝戦場〟だ。で、見たところおまえひとりだけのようだが、後の僚機の部下どもはどうしたんだ? 確かふたり、新人のパイロットと新型機がいたはずだろう? どっちもまだ若い犬族の??」

「よくご存知で! なに、もうちょっとしたら追いつくよ、今しゃかりきになって追っかけてきてるはずだから♡ たぶんね?」

 いたずらっぽく余裕しゃくしゃくの返答を返してやったら、ちょっとだけ間を開けて、どこか呆れたような返事の艦長どのだ。

「まったく、そんなのろくさそうなでかい図体の機体でどうしてここに一番乗りしてやがるんだよ、おまえは? 相変わらずやることが人並み外れていやがるな、このバケモノめ! まあいい、どっちかと言ったら新型機とこのおまけの新人くんに興味があるんだが、お前のそのご自慢のアーマー、ルマニア軍が最新兵器の実力とやらもとくと見させてもらおうか、その……」

 またちょっとだけ間を開けて、そこから何かしら含んだようなものの言いをしてくれる犬族のおやじさんだった。

「いわゆるそうだな、その『王陣の番兵』シリーズってヤツのちからをだな……! ああ、軍がかねてより秘密裏に開発してる、巨大な能力を秘めた最終兵器のひとつなんだろう、そいつは?」

「あはは、ほんとによくご存知で! まったくどこから聞き付けてくるんだか? ぶっちゃけまだ開発途上の機体ではあるから、いざぶっつけ本番で実戦でテストしてるみたいな? あんまり参考になるかはわからないけどさ!」

「ほんとにふざけていやがるな……! ん、いいよ、そんなに静まり返ってくれなくとも! おい、全員聞き耳立てているのがまるわかりだぞ? どいつもこいつも、みんな仕事しろ!!」

 呆れかえったセリフの後に続いた、ひどくうざったげな文句が回線越しのこちらではなくて、実はむしろおのれの周りに向けてのものだと察するベアランドは、思わず吹き出してしまう。

「ふふっ、てっきり艦長室でコソコソやってるのかと思ったら、しっかりとブリッジのシートにふんぞり返っていたんだ! だったらこんな秘匿回線なんかわざわざ使う必要ないのにさ?」

「うるさい。余計なお世話だ! おっと、失敬。いいから、良く聞けよ。立場的に公言しにくいこともいろいろあるんだ。現実と建前ってのはとかく乖離(かいり)しているもんでな?」

「了解♡ で、ぼくは一体どうすればいいんだい? 見渡す限りが海ばかりでこれと何も見当たらないんだけど、この下に敵の潜水艦でもいるのかい? それってあんまり相性良くないなあ」

 ぐるりと周りのモニターに映る景色を見回すクマ族のパイロットに、ちょっとだけ苛立たしげな声色の犬族の艦長が続ける。

「だから、それを今から教えてやるって言っているんだよ! 良く聞け、もう肝心なポイントは過ぎ去ってしまっているんだ。放っておいても感づくかと思ったら、こういうところは至って鈍感なんだよな、おまえらクマ族ってのは? 世話が焼けるよ」

「へ? もう過ぎてるって、まだ何もありゃしないじゃないか?? そっちに見える怪しいフロートの漂流物以外は、なんにもありゃしないよ。あ、ひょっとしてその廃墟に向けてビームをぶちかませばいいのかい?」

 ちょっととぼけた返事を返すのに、あちらからはただちにかぶせ気味のがなり声が聞こえてくる。

 ひそひそ話はどこへやら?

「間違ってもやるなよ! いいから、黙って言った通りにしろ。まずは転進、北に向いてる機体の方向を南西に向けろ。取り舵一杯! ほら、お前から見たら20時の方角だよ、わかるだろ?」

 相手からの言いようにちょっと戸惑い気味のベアランドだ。

 太い首を傾げながら、低速で前進していた機体を停止させる。

 言われた通りにおのれの左後ろへとモニターの景色を回転させて、ついぞ代わり映えしない青一色の世界を微速前進するよう大型なアーマーの機体をコントロールする。

 やはりその首を傾げながらにだ。

「ふーん、て、やっぱり何もありゃしないけどな? ねえ、これでいいんだよね、ジーロ艦長? 聞いているかい?」

「ああ、いいんだよ。そのまま微速前進で、すぐにわかるだろ。あ、だからそこでストップだ! 止まれって、また過ぎちまうぞ? おいこのでかグマ!!」

 途端に声を荒げる相手の言葉をまずはきょとんとした目つきで聞いてしまうクマ族だ。

 果たしてモニターの中にはそれらしきものはいっかな見当たらないのだが……?

「え、ここで止まるのかい? でも何もないけど? なんか海面一帯に白いもやか霧みたいなのがぼんやりとかかってるくらいで、なんにも怪しいものは見当たらないんだけど……」

「それが目標なんだよ! ちゃんと見えてるじゃないか? さてはさっきもそうやって見て見ぬフリして見過ごしたのか? このとんちきクマ助め! いいか、その海面を覆った白い濃霧こそが今回の目標を差し示す確たる証拠であり目印だ」

 これをはなはだ意外に聞くアーマーのパイロットはあまり納得のいかないさまで聞き返した。

「え、でもこれって、この下の海底火山か何かの影響による自然現象だよね? そういうポイントがあるってあらかじめ聞いてたし! 視界不良で戦闘するには不向きだからみんな避ける場所じゃないのかな?? 身を隠すには打って付けかも知れないけど、こんなところに潜んでもまるきり意味がないし!」

 もっともらしい意見を述べてやるのに、頭上のスピーカーからはため息交じりの返事が返った。

「その自然現象と、人工によるカモフラージュのスモークとをおまえはどうやって見分けるんだよ? 現実問題、その下には海底火山なんてものは存在しない! わかるか? だとしたら……」

「何かしらが潜んでいるのかい? でもそんなのむしろここに居るって言っているようなもんだよね? 常に一定のポイントで盛大に煙を吐き出しているのなら? どうして……」

 言いながらこれと怪しい動きは見当たらない濃霧に満たされた海域をいっそ怪しく見てしまうクマ族だ。

 これに犬族のベテランはあっけらかんと返した。

「人工による目隠しのスモークごときなら、いっそまとめて取っ払っちまえばいいだけのことだろ? おまえさんのそのバカみたいに出力のでかい機体なら造作もないはずだ。とりあえず周りの海面に向かって一斉射撃してみろよ? 海面の温度が上昇して気流が生じれば、周りのもやもいっぺんに消し去れるはずだ! ただしくれぐれも目標のブツには当てるなよ?」

 わかったふうなことを言ってくれる上官どのに、だが当のパイロットの若いクマ族はいぶかしげなさまで考えあぐねる。

「そんなこと言っても……! それじゃ適当にぶっぱなしちゃっていいのかい??」

 目標をこれと定めないままに射撃することに戸惑いを隠せないでいると、スピーカーからはぴしゃりと警告がなされる。

「あ、ただし中心は避けろよ? 今のおまえから見てそのまっすぐ先に問題の目標物はある。よってあくまでその周囲の海面に向けてだ。当てたら後悔するぞ? 必ずや!!」

「……何があるんだい? まあいいや、それじゃ、ランタン、とりあえずは手前の海面に向かって、軽く一斉射だ! そうれっと!!」

 こうなれば仕方もない。

 言われるがままにこの機体の各所、両腕や頭部から腹部にかけて搭載されたエネルギーブラスターをありったけ足下の海面に向かって撃ち込んでくれる。

 直後、至る所で大きな水柱が立ち上り、灼熱のビームが海面を激しく波立たせた余波でそこから熱波までが一気に立ち上る。

 それがあたりの白い霧を巻き込んでただちに上空へと走り抜けていく。機体にかすかな揺れを感じるほどの、激しい乱気流があたりをごうごうと震わせた。


 その場に居合わせたらきっと大やけどだ。

「あ、ほんとだ、霧の中からなんか出て来たよ! おまけにえらい大きいなっ、て、えっ……」

 かくして白いスモークが跡形も無く消え去った後には、青一色の海面と、その真ん中に思いも寄らぬそれは巨大な物陰が姿を現すことになる。

 かくしてそれをはっきりと目の前のモニターで視認して、思わず大きく目を見張らせるベアランドだった。

 その特殊で特異な形状をした人工の造形物に、はっと息を飲んでしまうアーマー部隊の隊長さんだ。

「こいつは、まさか……!」

Part2


 突如として海面に現れたのは、それは複雑でいびつな見てくれをした人工の建造物で、かつかなりの大規模なものであった。

 よってモニター越しのただの一瞥でそれが何であるのかを識別する、クマ族のアーマーパイロットだ。

 さらにその建物の全容を見定めるべく、みずからが搭乗する戦闘ロボット、でっぷりと大型でブサイクな人型をしたギガ・アーマーを上空へと遠ざけてこれと距離を置く。

 その全体のありさまを見て、はっきりとすべてを理解した。

「あらら、こんな人気のない公海上に、よもやこんな大げさな施設があるだなんてビックリだな? だってこれって最新型のエネルギープラントだろ? 艦長!」

 あいにくと目の前のモニターにはこれと映像がなかったから、あえて天井のスピーカーに向けて問うてやるに、するとそちらからはとかくしれっとした感じの返答が返ってきた。

「ああ、見ての通りだ。あとこんな誰もいない公海上だからこそだろ? こんな厄介でかさばる施設、よっぽど僻地の山奥かこんなところじゃなきゃおちおち建てられやしない……!」

「まあ、それはそうかも知れないけど、でもここって本来はどこの国にも属さない、いわゆる〝公海〟だろ? さすがにマズイんじゃないのかな、せめて自国の領海にでも置かないことにはさ、あとあと揉めるのが見え見えなんだけど……!」

 ちょっと困惑気味に頭を傾げるベアランドだが、どこぞの戦艦のブリッジにいるのだろうジーロは平然たる口ぶりだ。

「どこの国にも属さない特殊な企業体が運営してるとなれば話は別だろ? 何しろ電力エネルギーをまんま高濃度圧縮して固体化したエナジーブロック、いわゆる〝プラズマ・ペレット〟を産出するハイパワー・ブラストエンジン・プラントだ。おまえさんたちの乗ってるアーマーの高出力エンジンにも欠かせない? ま、裏には特定の国や利権が絡んでいるんだが、位置的にはどこが手ぐすね引いてるかおおよそで想像がつくだろ、それに我らが本国もまんまと乗っかってるってわけで……」

「タチが悪いな? ロックスランドのいざこざは実はこっちがメインの縄張り争いだったりするのかい? つまるとこでこのぼくらルマニアと、西の大陸のアゼルタ、あとすぐ南にある中央大陸のアストリオンと、まさしく三つどもえの??」


 少なからず嫌気がさした感じのアーマーパイロットに、新型巡洋艦の艦長どのはなおも平然たる口ぶりだ。

「安心しろ、アストリオンとこっちは今のところ共闘関係だ。よって敵はアゼルタの侵攻軍だな。南の大陸の西海岸側をほぼ占拠してふんぞり返ってる? 目の前のプラントも今はそっちに占拠されてるんだよな。ちなみに敵さんの目的は、そのプラントばかりでなくて、実はこの下にもある」

「は? 下ってなんだい? それってこの海面のそのまた下の海の中か、あるいはいっそのこともっと下の海底ってこと??」

「ご名答! この海底には貴重な資源がわんさと埋まっているんだと! これまたアーマーや戦艦の建造に必要なヘビーレアメタルやらオイルやらが? それを掘り出すための上物がそのプラントで、いわばそれ自体が目隠しの隠蔽工作みたいなもんだ。どうだ、一粒で二度おいしいとは、まさにこのことだろう?」

 思いも寄らないぶっちゃけ発言の連発に、聞いていて心底嫌気がさすベアランドだ。

「ほんとにタチが悪いな!! 占拠されてたロックスランドがあんなあっさりと取り返せたのはつまりはこっちが主戦場で、あっちはどうでもよかったってことなのか!? ほんとに!!」

ああ、そうだよ。だから気を付けろよ? そうやって隠していた姿を現してしまった都合、奥に潜んでいた敵さんがたが蜂の巣をつついたみたいにわらわらと飛び出してくるから、な?」

「ちょっと! そういうことはもっと早く言っておくれよ!! いくら新型だからって限度はあるんだからさっ、て、うわわっ! ほんとに一杯出て来たぞ!!」

 目の前のモニターがいきなりこの状況の急激な変化を映し出すのに、慌てて前のめりに機体の操作パネルに食らいつく。

 身体中に緊張が走るクマ族の頭上で相変わらずのんびりした犬族のおやじの声がだだ漏れてきた。

 現場の最高指揮官が、まるで他人事みたいにぬかしてくれる。

「もうじき後続の援軍が来るんだろ? それまでひとりでテキトーにしのいでおけよ。おまえの機体じゃパワーがありすぎてかすめただけでも大惨事だ。間違ってもプラントには当てるなよ? ただし敵さんはそれを見越してプラントを盾にして仕掛けてくるんだが、そんなに必死には攻めてきやしないだろ」

「何で? まあ、確かに数だけはわんさといるけど、だからってあんまり統制が取れてない感じだなあ? あまり攻め気を感じないような、前の敵さんの新型機の時もそうだったけど……」

「あちらもあちらでいろいろとあるんだよ。なんせ本拠地であるアストリオンの占領地、今はレジスタンス活動が活発化してそっちの沈静化に手一杯らしい。こっちにはろくな補給もできないってくらいにな? 補給と退路を断たれた状態じゃ、あとはずっと西に海を渡った本国に逃げ戻るしかありやしないわな? だがそれもここで手傷を負ってはままならないってわけで……」


 顔の見えない艦長のどこか気の抜けた説明に、怪訝な表情で考えあぐねるベアランドである。

「まさかここをさっさと放棄して逃げ出す算段してるってわけかい? そんなあっさりと……! でもだったら、とっととトンズラしてしまえばいいじゃないか?」

「おいおい、仮にも一国の正規軍だぞ? ろくな理由もなしに敵前逃亡なんてできるわけないだろ。で、その理由を今まさに作ってやっているんだよ、このオレたちで。ルマニア軍の最新鋭の大型巡洋艦と、おまえの最新型アーマーでな! せいぜい派手にかましてやれ、プラントは傷つけないように、あと無理して敵さんを撃墜しなくてもいいから、のらりくらりとだな。とどめのだめ押しは援軍が到着してらからだ。このオレの言うとおりにしておけば、誰も損をしないでこの場をきれいに納められる」

 相手はどこまでも好き勝手なことをぬけぬけと言ってくれるのに、半ばやけっぱちでがなる隊長さんだった。


「ちょっと! なんかさっきからいいようにばかり言ってくれてるけど、やるのはこっちなんだからね? 見渡す限りが敵だらけじゃないか!! えいくそっ、ランタン、蹴散らすぞ、パワーは抑えめでいいから派手にビームを光らせてくれっ!!」

「おお、さすがに飲み込みが早いな! その調子で場をつないでくれよ。それにしてもまだ追いつかないのか、後続の部隊は? でかグマ、おまえどんだけ無茶して飛び込んできたんだよ?」

「知らないよ! てか、このことを前もって知ってたらみんなでお手々つないでのんびりと来たさ!! ジーロ艦長、いざとなったら助けてくれるんだよね? そっちにも当然、艦載機のアーマーはあるんだから!!」

 アーマーのコクピットでがなり散らすばかりのパイロットに、どこぞでふんぞり返った艦長は何食わぬさまで返すばかりだ。

 その最中に不意に甲高い電子音が鳴り響く。

「悪いな。今はそっちはどうにも動かせない状態だ。理由はあえて言わんが。聞いたらがっかりするぞ? それだからこそこうして身を隠しているわけで……!」

「……おっと! このコールは!!」

 はっと息を飲むクマ族に、スピーカー越しの犬族がこちらもさも了解したふうに言ってくれる。

「来たようだな? ようやくのご到着か。どれ、どんなものだかじっくりと見させてもらうか……!」

 再び通信のコールが鳴ると、シートの右側あたりのスピーカーから聞き覚えのあるこちらはまだ若い犬族の声が響いてくる。

「た、隊長! 少尉どのっ、ただいま到着しました! オレです、コルクです! ケンスもいます!!」


「はいっ、遅ればせながらこれより両機とも参戦します! てか、すんごい状況ではありませんか? 見渡す限りが敵ばかりだ!! なんかでっかい海上ベースみたいなのもあるし!?」

 到着するなり内心の困惑したありさまがありありとわかる若手のアーマーパイロットたちに、どうしたものかとこちらも困惑してしまう若いクマ族の隊長さんだが、スピーカー越しの傍観者がいらぬ横槍を入れてくれる。

「おう、期待してるぞ! せいぜい気張って戦功を立ててくれたまえ。新型機なんだからわけないだろ。混乱したこの場をどうにか立て直すにはそこのでかいクマ助のお化けアーマーよりもおまえたちのまともな機体のほうが打って付けだ。それにつきちゃんとやり方は教えてやるから、言われたとおりにやれよ」

「また勝手なことを……!」

 内心で舌打ちしてしまうが、途端に動揺した声がまた左右から響いて本当に舌打ちしてしまうベアランド
だ。

「だっ、誰? 少尉どのの声じゃなかった??」

「ああ、他に誰かいるのか? だが友軍の識別信号はあの隊長の機体のしかないよな??」

「いや、気にしなくていいよ! ちょっとしたおっ節介なギャラリーがいるだけのことだから! 今は目の前に集中だ。ちなみにこの近くにいるらしいんだけど、ふたりとも知ってるだろ? いろいろと有名な犬族のベテラン艦長さん!!」

 冗談めかした隊長の言いようにスピーカーからは緊張感みたいなものがまたしてもありありと伝わって来た。

「そ、それって……!」

「ジーロ・ザットン……!?」

 まだ若い新兵の間でもその名は響き渡っているらしい。

 ただしそれが果たしてどのようなものかはかなりビミョーな気がしないでもないクマ族の隊長は、あたりに群がる敵のアーマーに威嚇射撃をしながら犬族たちのアーマーに向けて言い放った。

「どうやら敵さんはあんまり乗り気じゃないらしい! 理由はいろいとあるんだが、目の前の海上プラントには発砲しないように気を付けながら各個に敵を迎撃、できるものなら撃破して構わないから!! ただし深追いはするなよ? ぼくのランタンの射線上に出ないようにしながら左右から援護してくれ!!」

「了解!!」


 海洋上に広く散開する敵影はどれもがみな距離を取っていて、激しいドッグファイトを仕掛けてくるような動きもない。

 相手は持久戦に持ち込む腹づもりが見え見えなのに、さてどうしたものかと目の前のモニターに見入るベアランドだ。

 でかい海上プラントを背後にした飛行型のアーマーやジェットフライヤーは散発的な発砲をするばかりで、その他の敵影は海上でちらほらと様子見してるのが丸わかりだ。

 まるでやる気がないのにいっそじらされてしまうやる気も体力も旺盛なクマ族だった。我慢比べの持久戦ならこちらも自信はなくはないが、この燃費がバカにならない仲間の飛行型アーマーはそうも言ってはいられないのが実情である。

「あちゃ~、膠着状態になっちゃったな? ふたりとも頑張って機体を制御してくれよ? 小回りが利くロータードライブじゃないからしんどいだろうけど、こっちはバリア全開で敵の弾を片っ端からはじいてやるから、この後ろにいればいいよ!」

「りょっ、了解! え、でもっ……あ、あの、あの!」

「このままお互いにだんまりしてにらめっこですか? あとあの目の前にあるバカでかいプラントは実際に稼働しているものなんですか? なんだってこんなところに??」

「説明は後にしてくれ! 悪いけど今はそれどころじゃ、あと作戦はこの海域のどこかに雲隠れしてる犬族の名将どのが立ててくれるらしいから? ん、コルク、何か言いたいのかい?」

 右手の方から過呼吸なのがまるわかりなど緊張した息づかいが聞こえてきて、思わずそっちを見てしまうベアランドだ。

 実際に右手のモニターの中にワイプで犬族の新人パイロットの画像を映し出してやるに、完全に狼狽しきった毛むくじゃらのワンちゃんが大汗かいて干上がった声を発する。

 いくらなんでも緊張しすぎだろうと心配に見てしまう隊長のクマ族をよそに、うわずった声を上げる犬族の准尉は言いたかったことを一気にはき出してくれた。

「あの、そのっ、あの! ううううっ、うるふ、ウルフハウンド少尉どのも後から合流予定でありますっ! 第二部隊もこちらにっ、海を渡って、ですからその、あのそのあのっ……!!」

「え、ああ、そう! シーサーの第二小隊も来てくれるんだ? そいつはまた……そっちが合流してくれたらしょせんは多勢に無勢のこの戦況もどうにか巻き返せるかな? シーサー、問答無用で一撃見舞ったりなんかしないよね?? 大丈夫かな……」

 ちょっと驚きながらもそれはそれでやや考え込んでしまうのに、天井のスピーカーからうざったげな声が降ってくる。

「よせやい。これ以上味方が増えたら敵さんがたがいよいよテンパっちまうだろう? あのやせオオカミが来る前に終わらせちまうのが無難だな。どれ、こうして見たところじゃ新人くんどもはそれなりに使えそうだから、そいつらに一働きしてもらおうか」

「ああん、さっきからほんとに言いたい放題だよね! 新人のアーマー乗りに何をやらせるつもりなんだい? おまけにこんなとっちらかった状況で!!」

 しまいにはちょっと忌々しげにのど仏をうならせるクマ族に、犬族の艦長さんはすました声であくまでとぼけた返事だ。

「そんなやたらに目立つまっちろいアーマーで、はじめどうしたもんかと思ったが、どっちもちゃんとおまえに言われた通りに動いてるだろ? 飛行型と言ってもしょせん問題だらけで初期のテストパターンしか出回ってないレアな機体をだな。挙げ句にゃ開発途上で放棄されてまだ未塗装なんじゃないのか? 仮にも旗艦に配備された機体なんだから、色ぐらいちゃんと塗ってやったらどうなんだよ……!」

 おまけ呆れたふうな感想を長々と述べるのに、これを聞かされるクマの隊長は目をまん丸くしてむしろこの左右の隊員たちに聞いてしまう。

「え、きみたちのその銀色の機体って、実はまだ未塗装のヤツだったのかい? てっきりそういう派手なカラーリングなんだと思ってたんだけど??」

「えっ、いや、おれたちも何にも聞いて……そうだったのか?」

「え、え、え? いや、そう、なの??」

 左右で困惑した声が応じるのに、肩をすくめるベアランドだ。

 これにまたしても上から響いてくる犬族の声もやや困ったような心底呆れた響きがあった。

「おいおい、そろいもそろってなにをとぼけていやがるんだよ? オレたちルマニア軍のアーミーカラーは昔から渋いモスグリーンに決まっているだろう? 自由にこの色を決められるのはよほどの戦功を立てた歴戦のエースパイロットさまだ。そんなヤツがどこにいる? でかグマ、おまえはまた別だぞ? もともとの規格がイカレてやがるんだから!」

「ひどいな! まあいいけど、だったらどうすればいいんだい? 早くしないと第二小隊が追いついちゃうし、シーサーが黙っちゃいないよ。海上作戦仕様の機体じゃプラントを器用に避けて戦うのもしんどいだろうし、無傷では済まないんじゃないのかな?」

「そいつはごめんこうむる! おい、新人ども、それじゃはじめにここに来たヤツでいいや、機体に積んだ装備が軽いからより早く飛べたんだろ? 火力は低いほうがいい、この場合は。その手持ちのハンドカノンで構わないから、オレが言ったものをただちにしっかりと狙い撃て。いいな?」

「コルクのことだよね! 聞いてるかい? ケンスは強力なロングのキャノンを装備してるだろ? わかるよね!」

「コルク、艦長どのの命令だ! しくじるなよっ?」

「え、え、え、あの、あの、え? おれ??」

 一連のやかましくしたやりとりの最後に面食らった感じの声があぶなっかしくこだまする。ベアランドは天を仰いでしまうが、犬の艦長さんがぴしゃりと言い放った。

「お前しかいないだろ? おまえだよ。いいな、それじゃ良く聞けよ。やることはいたって簡単だ。それじゃその目の前のプラントを良く見て……」

 この後に下された命令に、その場の空気がただちに凍り付くこととなる。

 はじめ怪訝に耳をピクつかせるベアランドの右手で、思い切りに息を吸い込んでそれきり反応に窮する若い犬族の沈黙がもはや痛いくらいに伝わった。

 ヤバイな……!

 百戦錬磨の犬族の艦長が言うほどにはすんなりとは行かないだろうことがはっきりと予想されるクマ族の隊長さんは、かくなる上はじぶんでどうにかするしかないかなとギュッと両手の操縦桿を握り締める。

 皮肉なほどに晴れ渡った青空に、しかし確実に暗雲が立ちこめつつあるのをこの場のどのくらいが予期していただろう。

 直後には、怒号と悲鳴が交錯するそこはまさしくもっての戦場なのであった……!

                次回に続く……!!

イラスト・ギャラリー

https://opensea.io/assets/matic/0x2953399124f0cbb46d2cbacd8a89cf0599974963/88047277089427635657081635585532914949557992380650193262688159124732346630154/

 ↑二枚目のイラストの線画版です。OpenSeaにてNFTアートとして販売中!!




 


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ルマニア戦記/Lumania War Record #012

#012

↑一番はじめのお話へのリンクです(^^) ノベル自体はもろもろの都合であちこち虫食いだらけなのですが、できるところからやっていくストロングスタイルでやってます(^^;)

NFTアートはじめました!!

OpenSeaで昨今はやりのNFTのコレクションを公開、こちらのノベルの挿絵などをメインにアートコレクションとして売り出していきます! NFTアートと併せてノベルの認知向上を目指していきます(^^) 世界に発信、まだ見ぬ需要を掘り起こせ!!

#012

 

 公海上の上空を最大戦速で駆け抜けた大型の巡洋艦は、やがてその速度を落として目標のXゾーン、戦況が混乱した戦闘海域もこの最深部へと突入する。

 試験運用も兼ねた主力エンジンの回転出力を落とすと、それまで艦内にやかましく響き渡っていたうなりと振動も一段落する。

 これにより無機質な電子音が鳴り響くブリッジにオペレーターの声が響くのが、頭上のスピーカー越しにもそれと聞き取れる。

 みずからのアーマーのコクピットのパイロットシートに腰を据える大柄なクマ族のパイロットは、目を閉じたままでじっと耳を澄ました。


「報告! 本艦、ただいまより当該の戦闘空域に突入! 全方位索敵、高度500、エンジン出力50に低下、機関安定状態を維持、周囲の状況にこれと目立った変化は見当たりません!」

「……うむ。高度そのまま、全艦、第一次戦闘待機から完全臨戦状態に移行。取り舵20、微速前進、周囲の警戒を怠るな!」

「了解! 全艦に通達、本艦はただいまより戦闘状態に突入、各自の持ち場にて任務の遂行をされたし。繰り返す、本艦はこれより全艦戦闘モードに突入、各自、周囲の警戒を厳にせよ!!」

「全艦、フル・モード! 艦長、メインデッキ、アーマー部隊、第一、第二、いずれも発進準備OKです!」

 すっかりと聞きなじんだ声の中に、会話の最後のあたりではじめて耳にするようなものが混じったが、それが先日、新しく艦に乗艦した副官の犬族のものだと察するクマ族の隊長さんだ。

※LumniaWarRecord #012 illustration No.1 ※ OpenSeaのコレクション「LumniaWarReccord」にてNFT化。ちなみにポリゴンのブロックチェーンです(^^) イラストは随時に更新されます。

「はは、こんな声してたんだ。なんかまだ堅い感じだけど、さては緊張してるのかな? 見た目まだ若い士官さんだったもんね! それじゃこっちもまだ若い新人のパイロットくんたちは、やっぱり緊張してたりするのかな?」

 そう目を閉じたままに、離れた別のメインデッキでみずからのアーマーで待機している、新人の部下たちに聞いてみる隊長だ。

 するといきなりのフリに、これとはっきりした返事はなかったが、ごくり、と息を飲むような気配が伝わってそれと了解する。

 余計な軽口はプレッシャーになるだけだろう。
 
 実戦を前に皆、自分のことでおよそ手一杯なのだから。

 それでいいやと納得していると、頭上のスピーカーから重々しげな声が響いてくる。

「皆、聞いているな? こちらは艦長のンクスだ。第一小隊、ベアランド少尉、用意はいいか? 先行する君たちの部隊に今回の戦闘はすべて任せることになる。本艦はアーマーがまだ手薄な都合、第二小隊は艦の護衛に残しておかねばなるまいからな」

 ベテラン軍人の不景気な声色に、だがこちらはしたり顔して明るくうなずくクマ族だ。

 おまけ肩を揺らしてハッハと笑った。

「あはは! 了解。ぼくらやってることはイタチごっこかモグラたたきみたいなもんだもんね? 終わりが見えない持久戦じゃ、戦力しぼっていくしかありゃしないよ。第二小隊のシーサーが我慢できたらの話だけど♡ そっか、あっちも隊員が新しく補充されたんだっけ? まだ見てないんだけどなあ……」


 ちょっと太い首を傾げて考え込むのに、また頭上からは別の声が早口にまくし立ててくる。

 これには閉じていた両目を開けてはっきりと返す隊長だ。

「ああ、少尉どの! 第三デッキの発射口、もとい、発進ゲートをオープンにします。外から丸見えになっちまうからいざって時のために注意しておいてくださいよ! あとそちらの発進シークエンスは特殊過ぎるので、後はデッキの若い班長どのにすべてを引き継ぎます! よろしいですか?」

「ん、了解! ドンと来いだよ♡ それじゃ、アイ ハブ コントロール! 新型機のお二人さんも行けるよね?」

 また左右のメインデッキ、第一と第二のカタパルトでそれぞれアーマーを発進待機させている犬族たちに問いかけた。

 すると今度はどちらもしっかりとした返事が返ってくる。

「りょ、りょーかいっ!!」

「いつでも行けます! 少尉どのが先にぶっ飛んだらこの後に着いて行けばいいんですよね? でもオレたちこんなしっかりとしたカタパルトははじめてだから、ドキドキしてますよ!!」

「ハハ! じゃあ発進のタイミングはこっちに合わせておくれよ、あとこっちのドライバーは不発もあり得るから、いざとなったら冷静に各自で判断すること! もたもたしてたら敵が来ちゃうから、先行して制空権を確保することは大事だよ?」

「了解!」

Lumania War Record #012 novel’s illustration No.2
OpenSeaのコレクション「LumaniaWarRecord」でNFT化。
こちらは通常のイーサリアム・ブロックチェーンです。
ノベルの挿絵と同時に更新していきます
。 


 新人でもこのあたりはしっかりと心得ているらしい。

 そんな歯切れのいい返答に満足してうなずくと、耳元のあたりでまた別の若い青年の声がする。

 発進作業をブリッジから引き継いだクマ族のメカニックマンのものだった。

「ベアランド少尉、発進引き継ぎました! リドルですっ」

 ただちに正面のモニターに四角いワイプが浮き出て、そこに見慣れた若い細身のクマ族の顔が映し出される。

 見慣れた光景から、デッキの管制塔の映像だとわかった。

 本来はブリッジの仕事をメカニックが兼任しているのだが、そこにちょっとしたひとだかりができているのが見てとれた。

 すぐ背後から物珍しげにでかいふとっちょのクマ族のベテランメカニックマンまでのぞいているのに苦笑いが出る。

「ふふっ、そんな見世物じゃないんだからさ……!」


 するとこちらは真顔で物々しげな物言いのメカニックの青年が、畳がけるようにまくし立てた。

「アーマーとのマッチング完了、マスドライブ・システム、目標と照準を設定、コースクリア! オールグリーン、いつでも行けます!! そちらも体勢はそのままでフロート・フライト・システムをプラマイゼロに、発射時のショックに備えてください! タイミングはそちらに任せますが、本格的な運用は今回がはじめてなので、出力はこちらで調整、まずは最大時の半分の50でいきます!!」

「ああ、了解っ、てか、電磁メガ・バースト式のマスドライバーでアーマーをかっ飛ばすなんて、このぼくらがはじめてなのかね? 砲弾やミサイルだったら聞いたことあるけど! でもどうせだったら100でやってごらんよ、遠慮はいらないから?」

 軽口みたいなことを半ば本気で言ってやるのに、如実にワイプの中のひとだかりにざわめきが走った。

 おまけ若い班長の顔が見る間に青ざめていく……!

Lumania War Record #012 novel’s illustration No.3
OpenSeaのコレクション「LumaniaWarRecord」でNFT化。
ノベルの挿絵と同時に更新していきます
。 


「そ、そんな! 無茶言わないでください!!」

「自殺行為だろう……!」

 悲鳴を上げるリドルのそれに、画面に映らないところからベテランの艦長の声がまじる。

 これに座席の右側のスピーカーからも、おそるおそるにした声が聞こえてきた。

「……てか、そんなやっかいなやり方で出撃する必要あるんですかね? 無理せず自力で飛び立ったほうがいいような?? マスドライバーって、響きからして危ない気がするんですけど」

「お、おれ、絶対に無理っ! 衝撃で機体ごとぺちゃんこになっちゃうもんっ……!!」

 左右からするおののいた声に苦笑いがますますもって濃くなるいかついクマ族の隊長さんだ。


「大丈夫だよ! そんなに華奢にはできてないさ、このぼくもこのランタンも! でもあいにくとでかくて頑丈なぶんにのろくさいから、こうやってスタート・ダッシュを決めないと戦略的に優位に立てないんだ。その場にのんびり突っ立って拠点防衛してるわけじゃないんだからさ?」

「いいえ、だからって無茶はしないでくださいっ、もう十分に無理はしているんですから! 出力は50で固定ですっ」

 好き勝手にはやし立てる周りのスタッフの声を押しのけてリドルが声高に宣言する。

 それにもめげずにまだ食い下がるベアランドだ。

「90! いや、だったら80に負けてあげるよ♡ 機体はそっちが整備してきっちり仕上げているんだから、できなくはないだろう? でなきゃ泣く子も黙るブルースのおやっさんの愛弟子の名がすたるってもんだし!!」

「お言葉ですが、師匠だったらこんな無茶、絶対に反対してますよ! アーマーはおもちゃじゃないんだから!! やってること大陸間弾道ミサイルの打ち上げと一緒ですからね? およそ人間技じゃありゃしないっ!!」

「了解、だったら75で手を打つよ、今日のところはね♡」

「っ!! わかりました、60で行きます! これ以上は引き下がりませんからね!!」

「毎度あり♡」


 やかましい駆け引きの末にワイプの人だかりが消えて、正面モニターの明かりが一段落とされる。

 ただちに秒読みが始まった。


「第一小隊、発進を許可する。さっさと出撃したまえっ!」

 せかすような艦長のンクスの声を合図に、スロットルレバーを全開に押し開けるベアランドだ。

「了解! それじゃベアランド、ランタンっ、こよれり当該戦域に向けていざ発進!!」

 轟音と共に緑色の大きな機体が巨大な巡洋艦の発進口から射出される! 風切り音を伴って空の彼方へと飛んでいくのだった。

 それから若干のタイムラグを置いて、二機の機体がそれぞれに艦を飛び立っていく。

 すべてがぶっつけ本番。

 新人の隊長と新人の隊員による、新型機のみで構成された異色の編成チーム、この本格的な部隊運用がはじまった。

               ※次回に続く……!

ノベルは随時に更新されます。



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ルマニア戦記/Lumania War Record #011

#011

「寄せキャラ」登場!!

※「寄せキャラ」…実在の人物、多くはお笑い芸人さんなどのタレントさんをモデルにした、なのにまったく似ていないキャラクター群の総称。主役のメインキャラがオリジナルデザインなのに対しての、こちらはモデルありきのキャラクターたちです。
 似てない部分をどうにかキャラでごまかすべく、もとい、ノリで乗り切るべくみんなでがんばっています(^o^)

  新メカ登場!!

Part1


「あ~ぁ、まいったなあ! あのクマのおじさんったら、やたらに話が長いんだから、余計なお説教くらっちゃったよ…!」

 ブリッジから直接また元のデッキに戻るはずが、艦橋を出た途端に出くわしたクマ族の軍医どのにがっちりと行く道を阻まれて、そこから思いの外に時間を取られてしまった。
 いざ艦の船底に位置するアーマーの格納されたハンガーデッキに出ると、そこはもうすでに一仕事終わったかのような落ち着きがあるありさまなのに、ぺろりと赤い舌を出してしまう。

「うへぇ、新しい航空タイプのアーマーが空から着艦するところをこの目で見てみたかったんだけど、間に合わなかったか…! ちゃんと無事に着いたんだよね、どっちも?」

 目ではそれと確認ができないが、この足下では何やらやたらにガタガタした物音や複数の気配があるのに、着艦したアーマーが既に専用のハンガーに格納されていることを察するクマの隊長さんだ。
 ならばこれとセットであるはず新人の隊員たちの姿を探すが、この視界にまずとまったのは新顔の犬族ではなく、日頃から良く見知ったオオカミ族の同僚のウルフハウンドであった。
 血気盛んな副隊長はみずからの一仕事を終えて今はしごくまったりとくつろいださまだ。
 そこに迷わず大股で歩み寄るベアランドはただちに明るく語りかける。

「あ、シーサー! もう戻ってたんだ? 無事で何より! それでどうだい、足回りを一新したきみの海洋戦仕様のおニューの機体は?」


 するとデッキの手すりにもたれ掛かってどこかよそを眺めていたオオカミ族は、金属の床を大きく踏みならして近づいてくるずぼらで大柄なクマ族に済まし顔して答えた。

「…ん、ああ、悪くないぜ? あの態度のでかくていけ好かないデカブツのメカニックめ、言うだけのことはあっていい腕をしてやがる。ただ元のノーマルとの換装に丸一日かかるとか言うのがいささか難ありなんだが…」

「ああ、そのくらいはいいじゃない♡ こっちも仕上がりは上々だったよ、偶然出会った敵の新型も軽くひねってやれたしね!」

「ほう? そいつは興味深いな、つまりはそっちのとおんなじ飛行型だろ? てか、どこも新型だらけだな、この艦の増援も新型機だろう? 俺が戻るのとほぼ一緒に入ってきたヤツら!」

「ああ、そうなんだ。でもそれ、あいにくとぼくはまだ拝めてないんだけど、それにつき新人のパイロットくんたちを知らないかい? どっちも若い犬族くんだって言う?? あ、そういやさっきここでは初めて見る顔の士官さんとすれちがったっけ? やっぱり犬族の???」

 のほほんとした隊長の問いに、それにはさして興味がなさげな副隊長の灰色オオカミはやや首を傾げて応える。

「ん、ああ、そういやいたな? マリウスとかっていう、この艦の副官さんなんだとよ。さっき合流したばっかの新型に便乗して今さらのご登場だ。つうかこれまで何してたんだか…」

「へえ、そうなんだ? 確かぼくらより一個上の階級の中尉さんだったよね? えらく深刻な顔してたけど、さては上司がスカンク族の艦長の部下じゃ犬族としてはそりゃ気が重いのかな。ブリッジじゃガスマスク首から下げてるオペレーターもいるし!」

「ふざけた話だな? だがあっちのはそういうわけじゃないんだろ。およそシャレが通じねえって顔してたからな。あと中尉じゃなくて、大尉だったはずだぜ、やっこさん? つうか階級章の見分けくらいひと目でつくようにしとけよ、大将!!」

「あはは! そうだったっけ? ちっちゃいのにやたらゴチャゴチャしてるからわかりづらいんだよ、あれってば。それはさておき、新顔のアーマーのパイロットくんたち見てないかい? ぼくの部隊に編入だから、さっさと顔合わせしとかないとさ♡」

「ああ…まあ、それっぽいの見たには見たが、なんだかな…」

「?」


 かくして何やらやけに白けたさまで視線をよそへと流す相棒に妙な違和感を感じながら、ふたりのパイロットたちが向かった先を言われたとおりにたどる隊長だ。
 相棒の証言のとおり、ちょっと意外な場所にいた2人組の犬族たちへとゆっくりと近づいていく。

 そこでほけっと立ち尽くす2人の新人パイロットたちは、見ればこの隊長であるじぶんの大型アーマーを格納した特大サイズのハンガーデッキを見上げてひたすらに驚いているようだ。
 ふたりとも目がまん丸で口が半開きだった。
 体型やや太めでやたらにふさふさした長毛の犬族に、もうひとりはすらりとした長身でこざっぱりした短毛の犬族である。

 何事か小声でぼそぼそと言い合っているのに、苦笑いで頭のまあるい耳を澄ます隊長だ。
 するとぼさ髪の犬族がおっかなびっくりに軍の秘密兵器たるギガ・アーマーを見ながら言う。

「す、すごいな、こんなの見たことない…! すっごく大きくて、なんかとってもおっかない…!! おれ、おれこんなの動かす自信ない。まるでそんなイメージが湧かないっ…!」

「ああ、確かにな? つうか、なんでこんなにでかくてグロテスクなんだ? こんなんで空なんか飛べるのか? 俺たち飛行編隊に編入されるんだろ。いったいどんな隊長なんだろうな…??」

「あっ、お、おっかないクマ族なのかな、やだなっ…!!」

 ひどくビクついたさまで身を縮こめる毛むくじゃらに、ちょっと冷めた調子で肩をすくめる相棒だ。
 赴任したてで場慣れしていないのが傍目にもそれとわかる。
 見るからにそわそわしたさまの新人たちは、しまいにはこれって何人乗りなんだろうな?なんて頭をひねり始めるのだった。  

 おやおや…!

 およそ軍人らしからぬ世間知らずな学生さんみたいなありさまにはじめ苦笑いがやまない隊長だ。

 言葉の通りで異様な見てくれをしたまさしく怪物アーマーをおっかなびっくりに見上げたまま、こちらにはまるで気付かないのがおかしくもありどこか心配でもあり…。
 それだからせいぜい当人たちを驚かさないよう穏やかな口調で語りかけてやった。

「ふふん、ひとりだよ♡ 通常サイズの汎用型アーマーと一緒で、きみらのとおんなじだよね! と言うか、ふたりともこんなところで何をしているんだい?」

 不意の登場だ。

 これにふたりの犬族たちはハッとこちらを振り返るなりにすぐさま敬礼!

「え、あ、うわっ、じょ、上官どのに、けっ、敬礼!」

「わわわわわっ!!」

 およそこれが軍属とは思えない大した慌てっぷりに、本当に吹き出してしまうベアランドだ。
 じぶんは軽くだけ敬礼を返して楽にしなよと態度でうながす。

「ふははっ! いやいや、そんなに偉くはありゃしないよ♡ ぼくだって言ったらまだ新人さんなんだから! にしてもきみら、ほんとに若いよな?」

 学生にしか見えないよと冗談まじりで言ってやったら、当人たちは思いの外に神妙な顔で黙り込んでしまう。
 あれ、ひょっとして図星を突いてしまったのか…?とやや複雑な心境になる隊長は、あえてそれ以上は触れないで話を戻した。

「…ん、まあ、みんないろいろあるよね! ところで、このぼくのランタン、もとい、ギガ・アーマーがそんなに珍しいのかい? 見てたらさっきからずっと眺めてるけど??」

「あっ、は、はい! て、た、たたっ、隊長どのでありますか!? うわっ…」

「あ、え、わわわわわっ、ごごご、ごめんなさいっ!!」

 それはそれはひどい慌てっぷりにいっそこっちが恐縮してしまうクマの隊長だ。

「あらら、まいったな。何をそんなにあやまることがあるんだい? ま、確かにこんな見てくれではあるけれど、それでもそっちのアーマーほどじゃありゃしないだろう? ブサイクででかくて強面で! さすがは軍部肝入りの新兵器ってカンジだよね♡」

 いまだおっかなびっくりの新人たちだが、それでも長身の方はまだ性格がしっかりしているらしい。ただちに気を取り直してじぶんよりもずっと背の高い大柄なクマ族に向き合う。
 となりのボサボサはごくりと生唾飲み込んだきりだ。

「失礼しました! えっと、その、ひとりで、でありますか? こんなデカブツ、じゃなくて、大型のアーマー! この機体制御ならびに火器管制その他もろもろを、たったのひとりで…!?」

「ぜっ、絶対に、ムリ…!!」

 騒然となる新人たちにでっかいクマの隊長さんはいやいや!とへっちゃらな顔でのほほんと応える。

「もちろん! ま、確かにこのクラスならメインとサブの副座式、いわゆるタンデム型のコクピットシステムってやつが言わばお決まりのイメージなんだろうけど、それはそれでコンビの熟練度ってものが問われるだろ? あとこのぼくに合わせろってのもなかなかにしんどいみたいだしね、あはは♡」

「はあ…!」

「ひ、ひとりでなんてムリだよ! でもこんなおっかないクマ族の隊長さんと2人乗りなんて、おれ、できる気がしない…」

 絶句したり震え上がったりと見ていて飽きない新人たちだ。  
 おかげで強面のクマさんが思わず破顔してしまう。

「おっかなくなんかないよ、いやだな!」

 こう見えて人懐っこい性格なんだから!とウィンクしてやるに、言われたワンちゃんたちはびっくりしたさまで互いの目を見合わせる。
 どうやらこの見てくれも性格もこれまでには会ったことがないタイプの上官であるらしい。おそらくは群を抜いて。
 よって種族や階級の違いなどおよそお構いなしのクマの少尉どのは、鷹揚なさまでまた続けるのだった。

「ま、ぶっちゃけまだ開発途上の機体だから、これってば。それでもうまいことひとりでやれるようにはなっているんだよ? オートパイロットシステムって擬人化AIやら何やら…ま、きみたちにはわかんないよね!」

 屈託の無い笑みでさも頼れる兄貴然とした隊長に、固かった表情が次第にほぐれてくる新人たちだ。
 ベアランドはよしよしとしたり顔してうなずいてやる。

「まあ、要は慣れだよね! こんなブサイクでいかつい見てくれしてるけど、実に頼れる相棒なんだよ。どのくらい頼れるかは、実際に見てのお楽しみとして♡ それじゃ、次はきみたちのも見せてほしいな、期待の次期主力量産機ってヤツをさ?」

 意味深な目付きをくれてやるに、当のふたりはまた神妙な顔つきして互いの目を見合わせる。
 それきり無言だ。
 その微妙な雰囲気をそれと理解する隊長だった。


「ああ、ま、とにかくよろしくね! ぼくらこれからひとつのチームになるんだから。ん、てことで、隊長のベアランドだよ。きみらのことはすでに戦績表(スコア)をもらってるからある程度は把握してるんだけど…えっと」

 ふたりの犬族たちの顔を見比べるクマ族の隊長は大きくうなずいてしごく納得したさまで続ける。

「そうだな、そっちのモジャモジャくんがコルクで、そっちのノッポくんがケンスだろ! 階級はとりあえず准尉で、実はまだアーマーのパイロットになってから一年も経たないんだっけ? なのに新型機のパイロットだなんてふたりともすごいよなあ!!」

 あっけらかんと言い放ったセリフにしかしながら言われた当人たちはただちに恐縮してすくみ上がる。

「い、いえっ、飛んでもありません! 俺たちそんなに大したもんじゃあ、前の隊長からはお互いに貧乏くじを引かされたって笑われてましたから。こんなアーマーをひとりで任されている少尉どのとは比べるべくもありませんっ…!」

「よ、よろしくお願いします! あの、その、ベア……ド、隊長っ…おれ、一生懸命がんばりますっ、まだ知らないことばかりですけど、ケンスと、一緒にっ…」

 よほどのあがり症なのかぎこちない挨拶をする毛むくじゃらの犬族に、こざっぱりした短毛種の犬族があいづち打ってあらためて自己紹介してくれる。

「今日付でこちらに赴任してまいりしまた、ケンス・ミーヤン准尉であります! あとこっちが…」

「あ、こ、ここ、コルク・ナギであります! あ、あと、じゅっ、准尉でありますっ!!」

「うん、知ってるよ。よろしくね♡ さてと、新型兵器の見学会はもう終わりでいいかい? 今度はそっちの新型くんの紹介をしてほしいんだけど、あいにく長旅で疲れてるだろうから休ませてやれってここの艦長からは言われているんだ。てことで、ここは一時解散かな?」

「は、はいっ…!」


 まだ力が抜けていないふたりを楽しく見てしまうベアランドだが、脳裏にふとある人物の顔がよぎってまた口を開く。

「そうだ、あとでこの艦の中をざっと見て回ろうよ、探検がてら! ぼくもここに来て日が浅かったりするんもだからさ…あ、そっか!」


 何かしら思い出したふうな隊長に、目をぱちくりと見合わせる隊員たちだ。
 新隊長のベアランドはペロリと舌を出して見上げてくる犬族たちにいたずらっぽい笑みで言う。

「そうだった、まずは軍医のおじさん先生に、メディカル・ルームに連れてくるように言われていたんだった! そうさぼくらメンタルやフィジカルのケアも大事な任務の一環だろ? ちょっと口うるさくて力加減のわからないおじちゃんなんだけど、性格は温厚で優しいクマ族の大ベテランだから♡」

「は、はあ…」

「また、クマ族…!」

 さては大柄で屈強な輩が多いクマ族に苦手意識でもあるのか、ボサ髪の犬族が青い顔色でうつむく。
 まるでお構いなしのベアランドは笑ってさっさとこのきびすを返した。

「へーきへーき! 見たカンジはとってもチャーミングなドクターだから♡ 案内してあげるよ。ひょっとしたら二番隊の隊長のシーサーもいるかもしれないし! そこで解散だね」

 それきりさっさと大股で歩き出すマイペースな隊長に緊張でシッポが下がり気味の犬族たちがとぼとぼとくっついていく…!

 かくしてこれが何かと問題ありな第一次・ベアランド小隊、人知れずした結成の瞬間であった。

Part2


 翌日、早朝――。

 まだ人気のまばらな艦の船底のハンガーデッキに、全身が濃緑色のパイロットスーツ姿の大柄なクマ族が、ひとり。

 無言で目の前のハンガーに格納される戦闘用の人型アーマーをただじっと見つめていた。
 その全高が10メートルを軽く超えるアーマーは横並びに二体あり、どちらも同じ見てくれと仕様の同型機に見える。
 かねてよりウワサの新型機だ。

 難しい表情で空中機動戦闘特化型の量産汎用機を見上げていたベアランドは、フッと軽いため息みたいなものをついてはどこか冴えない感じの感想を漏らす。

「あ~ん、何だかなあ…! 見たカンジは悪くはないんだけど、どうにも判断てものがしかねるよねぇ? この新型くん♡ 乗ってる子たちに聞いてもあんまりパッとした反応がなかったし…」

 これの専属パイロットである新人の隊員たちは、経験が浅いのも手伝ってまだ新型機の性能を全ては引き出せていないし、満足に把握も出来ていないらしい。

 おのれのと同様に、試験的な運用から実証まですべて現場任せなのかと呆れてしまう隊長に、申し訳なさそうに身を縮こめるばかりの犬族たちだ。

「ふうむ、やっぱり動いてるところを見るのが一番なのかね? 現行の量産型に乗っていた時はふたりともそれなりにいいスコア(戦績)を出してるから、パイロットにはこれと問題がないとして…おっ!」

 ウワサをすれば影で、口に出していた犬族がふたりしてそろってこの顔を出してくる。タイミングばっちりだ。

 どちらも同郷の言えば幼なじみらしいのだが、それが戦闘のコンビネーションを確実なものとする大きな要因であるならば、なんとも皮肉なことだと内心で思う隊長だった。

 背後で気配を感じたままこれと迎えることもなくのんびりと突っ立っていると、ふたりとも今はすっかり落ち着いたさまでこの両脇にそっと寄り添ってくる。
 視線を上に向けたまま、かわいいもんだなとかすかに口の端で苦笑するベアランドだ。

 ほんとに学生さんじゃないか…!

 あえて詳しくは聞かないが、履歴書にある公称の年齢と実際の年齢に少なからぬ誤差があることをあらためて確信していた。

 チラとそちらに視線を向けてやる。

 すると見てくれの暑苦しい毛むくじゃらの犬族は相変わらず冴えない顔つきで、まだどこか眠たそうだ。
 こんなぼんやりしたカンジで個人のスコアで星(ホシ)を少なからず付けているのがにわかに信じがたい思いの隊長だが、それはこれから確かめてやれると密かな楽しみにもしていた。

 他方、相棒とは打って変わってこの性格しっかりとして見てくれもシュッとしたノッポの犬族くんも、短いパイロット歴ながら撃墜マークのホシはしっかりと獲得していた。
 どちらも実際の年齢を考慮したら驚くべきことだと喉の奥でうなるベアランドだ。この現実の言い知れぬ皮肉さ。

 まだ子供なのにね…!

 そんな隊長の複雑な胸の内も知らないノッポくん、しっかり者のケンスがそこで一息つくとハキハキとした言葉を発した。

「おはようございます! 隊長!! ずいぶんとお早いんですね。出撃までまだだいぶ時間がありますが…?」

「お、おはようございますっ、ベア…あ…隊長っ」

 この相棒に続けてどさくさ紛れで声を発したのはいいものの、歯切れが悪くておまけもごもごと尻切れトンボで終わってしまうボサ髪のコルクだ。
 まだ寝ぼけているのか、隣でケンスがあちゃあ!みたいな顔しているのが見なくてもそれと分かった。

 ははん、書類上の経歴でウソはつけても実際は隠しきれないもんなんだよな♡

 内心でまた苦笑いして目線をそちらにくれるベアランドだ。

「ベアランドだよ♡ そっちこそ、早いじゃないか? 実際の出撃命令が出るのはまだ2時間くらい先だろ。とりあえずこの30分くらい前に集合って、そう言っておいたはずなのにさ」

「あ、その、緊張のせいか、目が冴えちゃって、おれたち…! 今さら寝付けないから、いっそスタッフさんたちの邪魔にならない時間にスタンバっておこうかなって…」

 まず臆病者の毛むくじゃらに言ってやるとこれがすぐさま目を逸らされるのを気にしないでもう片方の相棒に向く。
 ケンスはちょっとバツが悪そうな苦笑いで困ったさまだ。
 まさか隊長さんと鉢合わせするとは思っていなかったらしい。

「そっか、ふたりとも相部屋なんだよな。居心地はどうだい?」

 あえてまた右手の太めの毛むくじゃらに向かって言ってやると、言われた当人はビクっと反応しながらしきりとうなずいてつたない返答を吐き出す。

「は、はいっ、と、とっても快適、ですっ、あんなにきちんとした個室は、生まれてはじめてかもっ、べ、ベアランド、隊長…」

 すかさずこの横から個室じゃなくて相部屋だろ!と訂正されるコルクに苦笑いでうなずく隊長のクマ族だ。
 上官の名前がちゃんと言えてるんだから問題はない。

「うん。そっか、そいつは良かった♡ ふたりとも朝食はこれからだろ? 後でみんなでブリーフィングがてらにどうだい。直前じゃゲップが出ちゃうし、みんなで食べたほうがおいしいよ」

「は、はいっ!」

 見てくれのおっかないクマ族の隊長を前にするとどうしても肩から力が抜けない新人くんたちだが、これから実際の出撃を待っているのだから仕方ないと了解する。
 いざひとたびこの船を飛び立てば、そこはまさしく命がけの戦場だ。

「まあ、それはさておき、いい機体、なんだよね…? この面構えはぼくのランタンなんかよりずっと男前だし! まあ、いろいろとビミョーなうわさが飛び交ってる実験機ではあるけれど…次期主力機候補ってのがかなり眉唾(まゆつば)、みたいなさ?」

「…!」

 若くして軍に入隊して(させられて?)まだ右も左もわからないだろう新兵が、それでもうわさばなしくらいはその耳にすることはあるのだろう。
 昨日の少ない会話の中では、ちょっと前まで指揮を執っていた中尉どのはとても部下思いのいいおやじさんだったらしい。
 だったらなおさらだとここはちゅうちょ無くものを言ってやる新隊長だ。

「ちなみに知ってるかい? これって本来はもっとずっと別のところで使うために開発された機体の言わば雛形(ひながた)みたいなもんで、あくまでテストケースに位置づけられるものなんだって? まあ、ホントかどうかはさておいて…」

 振り返って見たふたりの新隊員の内、向かって左のぽっちゃりがうつむくのに対して反対側のほっそりが反射的に何もないはずの天井を見上げたのをそれと確認して、なるほどとうなずく。

 前任者はほんとにいい隊長さんだったんだね♡

「このビーグルⅥ(シックス)は戦場では希な機体でとどまるんだろうけど、だからって見下げたもんじゃありゃしないさ。なんたって軍の技術の粋を集めた機体なんだから! そうだろ?」

「はい…!」

 これにはふたりともしっかりとうなずくのに心配しなくていいよとこちらも力強くうなずく。

「これの本チャンがいわゆるビーグルⅦ(セブン)で、もしそっちに乗る機会があったらむしろラッキーじゃないか。ここでの経験をまんまフィードバックできるし、より負荷がかかる重力大気圏内での運用経験はそれはとんでもないアドバンテージだよ♡ どこでだってきっと互角以上に戦えるから…!」

 言っていること果たして理解できているのかできていないのか、冴えない表情を見合わせる新人たちにともあれで明るく笑うベアランドだ。

「ま、じきにわかるさ! それよりも本来の主力機を手に入れるのが先かな? ちょっと前にそれに近いのと偶然に会敵したんだけど、なかなかいいカンジだったよ。これにはだいぶ手こずったみたいだけど、その分に楽に扱えるよ、きみたちなら…」

 いよいよ顔つきが困り果てるばかりの部下たちに上官のクマ族も思わずこの苦笑いを強める。

「はは、いきなりあれやこれや言われても処理しきれないか! ま、今はとにかく目の前のことに集中すればいいよ。…ん、あっと、またお客さんだね♡」

「…!」

 頭のまん丸い耳を左右ともピクピクさせるベアランドが目でそれと示す先に、犬族たちもそこに新たな気配と足音がするのを察知する。
 また別の方向から軽やかなステップで走り寄ってくる細身のスタッフらしきを怪訝に見つめるのだった。

 その格好からしたら若いメカニックマンらしきは、三人の目の前でぴたりと立ち止まると即座に敬礼する。
 それからハキハキした口調で挨拶を発するのにはビビリの毛むくじゃら、コルクがシッポを立たせて後ずさりした。

「おはようございます! みなさんもうおそろいでしたか、こんなに朝早いのに!」

「ああ、まあね! いざこの船が戦闘空域に突入したらみんなでバタバタするから、落ち着いてやるにはこのくらいからでないとさ。いう言うリドルも早いじゃないか、てか、この新型は受け持ちじゃないよね?」

 事実上、じぶんのアーマーの専属メカニックとしてこの艦に乗り込んでいる若いクマ族に聞くと、それにはまっすぐにまじめな応えを返す根っからの機械小僧だ。

「はい! ですがじぶんもやはり興味がありましたので。スタッフさんが取り付く前にこっそりのぞいてみようと…! あはは、でもまさかこのパイロットの方達に会えるとは思いませんでした! スーツが違うからひと目でわかりますね?」

「ああ、確かにね! ふたりともここじゃ他にいないタイプの新型のパイロットスーツだ。色も全然違うし? でもそれもいろいろと難ありなんだよね?」

 しげしげと頭から足下を見回す隊長に、ふたりのクマ族に見つめられる部下たちはちょっと困惑したさまでうなずく。
 毛むくじゃらはなおのこと深くうつむいてしまった。

「はあ、まあ、おれたちみたいな犬族にはほんとにありがた迷惑な機能ですよね。スーツにトイレの機能を搭載しちまうなんて。みんな嫌がっておれたちみたいな新人に回されてきたようなもんだから、正直、使う気になれないですよ…!」

 げんなりしたケンスの言葉に、おなじくげんなり顔のコルクがひたすらうんうんとうなずく。
 苦笑いでしか答えてやれないベアランドは吹き出し加減だ。

「ふふっ、ニオイの問題は当然クリアしてるんだろ? アーマーにだって簡易式のそれはあるんだから、いらないっちゃあいらないんだけど、さては用を足すヒマも惜しんで戦えってことなのかね? ひどいはなしだよ!」

 冗談ごととじゃないですよとうんざり顔の犬族たちにそのうちに新しいスーツが支給されるよと気休めを言って、ベアランドはリドルを目で示して紹介する。

「丁度よかった、ふたりともこの子、ぼくの専属のメカニックははじめてだろ? リドルだよ。ぼとくおんなじでクマ族の男の子! あと、見ての通りで若いんだけど、たぶんきみらとおんなじくらいじゃないのかな? よろしくしてやってよ♡」

「はいっ、リドル・アーガイル伍長であります! ベアランド隊のチーフメカニックを主たる任務としておりますが、特に新型の少尉どの専用のアーマーを任されております。以後、よろしくお願いします!!」


 言いざままたもやびしっときれいな敬礼するのに、ふたりの若い犬族たちもこれに慌てて敬礼を返す。

「ケンス・ミーヤンであります! どうぞよろしく!」

「ああっ、こ、コルク、ナギであります! じゅ、准尉ですっ」

「あはは、なんだかとっても人柄の良さそうな隊員さんたちですね? 実はもっとおっかないひとたちを想像していたんですけど、良かったです!」

 朗らかな笑みで胸をなでおろすリドルに、ベアランドは肩を揺らして合点する。


「ははは! でもこう見えてもふたりともとっても優秀なんだよ? ちゃんと星も持ってるし、こうして新型機を任されるくらいなんだから! ま、リドルもアーマーの操縦はできるし、ホシだって持ってるんだからどっこいどっこいなんだけど!!」

 豪快に笑ってぬかした隊長のセリフに、だがこれを聞かされる周りの犬族たちがただちに色めき立った。
 ギョッとした顔で目の前に立つ若いメカニックマンをひたすら凝視してしまう。

「は、はいっ? このメカニックマンどの、撃墜マークを獲得しているのでありますか?? おれたちと同じ戦場で!??」

「え、え、ええっ、なんで?? メカニックなのに…???」

 ひどい困惑とともにジロジロと見つめられて、当の細身のクマ族の青年はこちらもひどい当惑顔でこの身をすくませる。

「あ、いえ、その…! ベアランドさん、そのはなしは無しでお願いします。このぼくも欲しくて獲ったものではないので…」

「?????」

 なおさらギョッとなる犬族たちに苦い笑いを向けて曖昧に肩をすくめる隊長だ。あらためて三人に向けて言ってやった。

「はは、まあ、いろいろあるんだよね、人生! それはさておき、朝食にしようか。みんなそろったんだから丁度いいや。リドルはこの機体がお目当てなんだろうけど、パイロットの生の意見や感想を聞くのもきっとためにはなるだろう?」

「あ、はい! それはぜひとも。よろしいでしょうか?」

 いかにもひとのよさげであどけない表情のクマ族のメカニックマンの言葉に、こちらもまだあどけなさが残る犬族の新人パイロットたちが目を見合わせる。頭の中は大パニックだ。
 もはやうなずくより他になかった。

「ようし、それじゃあみんなでレッツ・ゴー!! まだ出撃までには時間があるからたらふく食べようよ、あといろいろと楽しいミーティングもね? 聞きたいこといろいろあるんだ♡」

 これよりおよそ二時間後、ベアランド小隊は初出撃することとなる…! 




記事は随時に更新されます!

カテゴリー
Lumania War Record Novel オリジナルノベル SF小説 キャラクターデザイン ファンタジーノベル メカニックデザイン ルマニア戦記 ワードプレス

ルマニア戦記/Lumania War Record #010

#010

「寄せキャラ」登場!

 ※「寄せキャラ」…実在の人物、多くはお笑い芸人さんなどのタレントさんをモデルにした、なのにまったく似ていないキャラクター群の総称。主役のメインキャラがオリジナルデザインなのに対しての、こちらはモデルありきのキャラクターたちです。
 似てない部分をどうにかキャラでごまかすべく、もとい、ノリで乗り切るべくみんなでがんばっています(^o^)

 「新メカ」も登場!

Part1

 空はどこまでも澄んで、穏やかだった。

 眼下に広がる海も、見渡す限りが青く穏やかに見える。

 その最果ての水平線が、空と交わる先でゆるいカーブを描いているのをそれと実感。ここがおよそ戦場とは思えないほどに、今は全てが静かに落ち着き払っていた。

 かくしてそんなのんびりとした雰囲気に釣られて、軽い鼻歌交じりに周囲の景色、ぐるりとみずからを取りまく大小のモニターを見回す犬族のパイロットだ。
 それはご機嫌なノリで意味も無く手元のコンソールパネルのスイッチをガチャガチャといじくり回す。

「ふーん、ふっふ、ふんふん、ふんのふんのふんっと…!」

 まったく意味のない動作の連続で、無意味な操作音がピッピとコクピット内に鳴り響く。シートベルトでがっちりと固定されたシートの背後から、細長いシッポの先がブンブンと振れていた。

 本当にご機嫌なさまだ。

 あんまり調子に乗って機体の推進制御レバーにも手が触れたらしい。微速前進で空中に安定していたはずの機体が突如、ビクッと姿勢を崩すのに、ちょっと慌てたさまで両手をレバーに戻して機体の水平を保つ。

 苦笑いでぺろりと赤い舌を出すビーグル種の犬族だ。

「おっと、あかんあかん! 調子に乗ってもうた。これからガチの戦闘やのに!!」

 ピッと不意に短い電子音が鳴って、同僚の機体からの通信、茶々が入った。すぐ斜め後ろをおなじく微速前進で追従する相棒の犬族のパイロットの、これまた調子のいいツッコミだ。

「どしたん? ずいぶんとご機嫌やけど、なんかええことあったんか? これからバトルやのに?? 浮かれとる場合ちゃうやろ」

「ああっ、せや、せやけどいいカンジやろ? これのどこが戦争なんだかわからへんぐらいに平和になっとるやん! ほな鼻歌のひとつも出てまうわ」

「今だけやろ? よそのエリアじゃもうバリバリ戦闘に入っとるらしいで。なんや新型の空飛ぶ戦艦が入ってきもうて、ごっついアーマーも投入されとるらしいやん!」

「せやな。この万年戦闘水域の中心、本島のロックスランドをあっさり一日で落としたんやったっけ? あないに苦労して占領したのにムカつくわあ! ほんまにどついたろか」

 苦笑いがさらに強くなる犬族、モーリィは正面のモニターの中で小さく区切られた窓の中の相棒に、皮肉っぽくみずからの右のほほのキバをニィッとむいてみせる。

 おなじく苦笑いの相棒、こちらもまだ若いのだろう毛足の長い特徴的な顔つきをした犬族のリーンは、茶目っ気のある笑みで返す。

「好きにしたらええやろ! それよかそろそろみたいやんな? 早速レーダーにひとつそれっぽい反応が入ってきとるやろ?」

「さよか! ほな、ぼちぼちいったろか!」
 

 ビピッ、ピッピッピッピ!

 正面から右手のモニターにバストアップの映像が移った相棒が言った通り、自機のアーマーのレーダーサイトに反応がひとつ引っかかったことが、今しもアラームの警告音(ビープ)で知らされる。

 こちらよりまたさらに上空の空におかしな反応がひとつ。

 正面のモニターに映し出されたその映像にみずからの突き出た鼻先をひくひくとひくつかせる犬族だ。はてと小首を傾げながら、怪訝なさまで独り言めいた言葉をつぶやく。

「あれぇ、なんやようわからんヤツがおるわあ? なんやあれ、やけにいかつい見てくれしとるけど、あんなんこっちのデータベースに載っておらへんやん? アンノウンやて!」

「みたいやんなあ? こっちもおんなじ、ノーデータや! 現在、諸元とこの想定される性能を解析中……あ、そやから詳しう解析するためにようモニターしてくれっちゅうとるぞ?」

「知らんわ! そんなのこっちの知ったこっちゃあらへん。なんで命がけの戦闘しとる最中にそないなことせなあかんねん! わしらまだ予備軍扱いで、正規には採用されとらへんのやさかい」

「そやんなあ、それがいきなりあないな新型の敵さんと会敵なんて、しんどいわあ! どないする? ま、アーマーがピッカピカの新型なんはこっちも一緒なんやがのう」

「はん、新型っちゅうてもこないなもんは実験段階の開発途上機やん。そやからわしらみたいなペーペーでも任されとるんやし、それやのにあっちはやけにいかつない? もうちょいズームで、うお、でかっ! めっちゃごっついやん!! なにあれぇ?」

「うわ、なんかきしょない? なんであないなでかいもんが平気で空飛んでんねん? わいらのアーマーのサイズの優に倍はありよるで? ほんまに何で飛んでんのや、ローターエンジン付いとるか? ジェットドライブやったら燃費悪すぎやろ!」

「なんか、飛んでるゆうよりも空に浮いてるカンジせえへん? マジできしょいわ、わけわからへん。マジでどないしょ」

「逃げるわけにもいかへんもんなあ? 仮にも新型機で出撃しといて。この「ドラゴンフライ」の性能も見とかなあかんやろ? なんか大人とこどもくらいも機体に体格差あるんやけど」

「ドラゴンフライて、トンボやったっけ? あっちからしたらこないなチャチな機体、まさしく「かとんぼ」にしか見えへんのちゃうか、まともな足もついとらへん中途半端なもんは? 足っちゅうか、こんなんただのほっそいほっそい棒やん!!」

「空飛ぶんには足なんてあっても邪魔なだけなんやろ? 空中じゃ歩かれへんのやさかい、そやったらそないなもんは、ないほうが身軽になって飛びやすいっちゅうわけで!」

「言いようやんな! まあええわ、よっしゃ、それじゃその身軽なん使こうてふたりで一発かましたろか! あっちはあんなんやから素早くなんか動かれへんのやろ? 見てくれおっかないだけで図体でかいだけのでくの坊や。ははん、だったら楽勝やん!」

 息の合った掛け合いで漫才みたいなやり取りを一息に決めて、モニターの中の敵影にこれと視線を定める犬族のモーリーだ。
 自分がリーダーだとばかりに盛んに意気を吐くが、これにちゃっかりしたお調子者らしい相方が、それはそれは好き勝手な言いようほざいてくれる。

「ふたりっちゅうか、まずはひとりでいっときぃ、じぶんが! そのあいだにこっちでしっかりモニターしとるさかい、存分にその新型の力を試してみぃ! そしたらついでにそれもモニターしたるから、なんや、これってまさに一挙両得やんな?」

「は? いやいやいや! 何を勝手を言うとんねん?」

 まるでひとを使いっ走りみたいにそそのかしてくれるのに慌てて抗議するのだが、相手はまるで聞く耳を持たない。

「ないないっ、あんないかついもんに単機で突っ込むなんて自殺行為やろ! ふたりで挟み撃ちするくらいでないと無理やて、わしひとりでまんまと返り討ちにあったらどないすんねん?」

「そん時はさっさとトンボ帰りやわ! ほなさいなら!!って、ドラゴンフライなだけに? うまいこと言うたやろ? ほな、まずはひとりでいっときぃ、遠慮せんでええから、ほら、あちらさんもあないに手持ち無沙汰なままでじぶんのこと待っとるでえ? せやから今がチャンスやて!!」

「なんのチャンスやねん? あほちゃうか?? むりむり、あかんあかん! 死んでまうて、見れば見るほど、まともちゃうやんか! あないなグロいバケモン……あ!」

「あ、感づかれたんちゃうんか? じぶんがさっさと行かへんさかい、とうとうあちらからご指名がかかったんやな。ほな、ひとりでいっときぃ」


「なんでやねん!! おおい、マジで来よったで! 完全にロックオンされとるがな! あほなこと言うとらんでさっさと応戦や! 漫才ちゃうんやからつまらんボケは通用せんで、うお、マジでごっついやん!! シャレにならんて!!」

「しんどいわあ~、じぶんほんまに手の掛かる子やんなぁ? しゃあない、後ろから援護したるさかい、前衛はまかせたで!」

「なんでやねん!!」

 コクピット内にやかましい警告音が鳴り響く。
 それを戦いのゴングと了解して、ただちみにみずからの正面の操縦桿を握りしめるビーグルだ。モニターの向こうの相棒に目配せして、ガチの戦闘に入ることを互いに確認!

 二機の新型機がおのおの左右に分かれて旋回上昇軌道に入る。

 未知の敵との遭遇。

 かくして息つくヒマもない銃弾とビームの応酬が前衛芸術さながら、青一色の空のキャンバスにくっきりと描き出される。

 「戦争」がはじまった。


Part2
 主人公登場!!

 主役のクマキャラ、若いクマ族のパイロットのベアランドです。初代から数えてこれでテイク4くらいですね!

若いメカニックマンの男の子、リドルははじめの見てくれがかなり雑だったので、下のキャラに顔だけリテイクしています。
 作者的にはそれなりにお気に入りです♡

 Part2

 今はまだ、静かな世界だ。

 空も、海も、果てしなく青く、ひたすらに広がるばかり。

 ここは大陸からはかなり離れた沖合の海洋だ。
 本来ならどこの国にも属さない中立の公海水域なのだが、今やそこは広範囲にわたって敵味方が入り乱れる戦場と化していた。

 元は岩山ばかりが目立つ小さな小島と、その周りをぐるりと取り囲む形で配置された、人工の島々、ギガ・フロート・プラットフォームで形成された、世に言うルマニアの『拡大領域』だ。

 端的に言ってしまえば、海に浮かべた正方形や長方形の巨大なプラットホーム、ギガ・フロート上にそれぞれ任意の構造物を建造した前線基地とその周辺施設群なのだが、今やこの半分が敵方の手に落ちているというのがその実のところである。

 いざ無理矢理に領有権を主張したところで、本国から遠く離れた離れ小島は、地続きでないだけに援護や補給がままならない。

 大陸西岸の属州の港湾で補給を終えて、すぐさまこの混乱した戦線に加勢した巨大な空飛ぶ船艦のはたらきで、この中枢の小島の要塞は見事に奪還したものの、これを中心に西と東で支配権が分かれるフロートの各施設をただちに攻略および守護!

 そこかしこに潜伏する敵を掃討するのがみずからの役目である若きクマ族のエースパイロットは、周囲の青一色の景色ばかりを映し出すモニターに視線を流しながら、何気なくしたひとりごとを口にする。


「う~ん、こうして見てみるに、どこにもこれと言った戦艦らしき影が見当たらないなあ……! でっかいのがこれっぽっちも。友軍もそうだし、敵軍の戦艦、潜水艦なのかな、どこにもそれらしい気配がないんだよねぇ。頼みのレーダーはどれもさっぱり無反応だし。どうしたもんだか……」

「はい? 戦艦、でありますか? 友軍となると、ジーロ・ザットン将軍のものでありましょうか? 確かどちらかのフロートに付けているらしいとは聞いておりますが? それと少尉どの、こちらのトライ・アゲインとおなじで、最新鋭の航空型巡洋艦だったと記憶しておりますが……」

 今は離れた母艦からの応答、通信機越しの見知ったメカニックマンからの返事に、ちょっと小首をかしげてまたこれに応じる。

「まあね? この戦域の指揮を任されてるトップの指揮官なんだから、もっと目立つところに陣取っていてほしいんだけど、切れ者で何考えてるかわからないところがあるからさ、あのおじさん♡ ぶっちゃけ悪いウワサもバンバン飛び交ってるからね! いざとなったら手段を選ばない、冷血艦長の悪党ジーロって!!」

「あはは、そうなのでありますか? 恐れ多くてじぶんの口からは何とも。ですがあちらも目立つ最新の大型戦艦なのですから、よほど高空を飛んでいない限りは目で視認ができないだなんてこともないものだと思われます。かろうじてレーダーの目はごまかせたとしても?」


「うん、ぼくもそんなにお間抜けさんではないからね? まさか海の中に潜っているだなんてことはないはずだから、やっぱり巧妙に隠れているんだよね。となると、あやしいのはいっそあの本島のロックスランドの入り組んだ岩礁地帯か、もしくは……!」

 やや考えあぐねるクマの少尉どのがそう言いかけたさなか、不意にピピピッ!と甲高い警告音がコクピット内に鳴り響く。

 レーダーに反応あり! つまりは敵と遭遇したことを示すものだった。これに通信機の向こうで息をのんだ気配があり、ちょっと緊張したさまの若いクマ族のメカニックマンの声がする。

 今現在、自機がいるのがわりかし高空なのと、周囲に敵影がなかったので妨害電波らしきもないらしく、遠くの母艦で留守番している若いクマ族のハイトーンな声色がきれいに聞こえていた。

「反応、ありましたか? はい、こちらでも確認しました! ギガ・アーマー、二機の模様です。状況からして少尉どのとおなじ飛行型タイプでありますね。あれ、でもこれって……」

 まだ実験開発段階の都合、こちらの機体状況をつぶさにリアルタイムでモニターしている機械小僧のちょっと戸惑ったさまに、釣られて苦笑いのベアランドも太い首をうなずかせてまた言う。

「うん。ノーデータ。『アンノウン』だって! いきなり未確認の機体と遭遇しちゃったよ! いわゆる新型機ってヤツだよね。まいったな、てか、新型で正体不明なのはこっちもおんなじなのかな? あれって見たところどちらも同型の機体だよね、なんかえらい見てくれしてるけど……!」

「えらい見てくれ、でありますか? こちらでは画像の解析がまだできていないのでわかりませんが、飛行タイプのアーマーならば比較的小型、軽量級なのでありましょうか??」

 メカニックマンの推測に小首をかしげて目の前のモニターをのぞき込むクマのパイロットは、何やらあいまいな返答だ。

「う~ん、そのどちらもだね! なんか中途半端な見てくれしてるよ。やけに? なんなんだろ、ボディと飛行ユニット、あれってロータードライブなのかな、今流行(はやり)のさ? そこだけそれなりしっかりしているんだけど、それ以外の手足がオマケみたいな感じでくっついてるよ。脚なんかあれってばただの『棒』なんじゃないのかな??」

「はい? 棒、でありますか?? いやはや、まったくわかりません。少尉どのっ、新型機ならばなるべくこの性能と仕様をモニターするべきなのでしょうが、随伴するサポートの機体がいない今の状況ではいささか難しいものがあります。こちらでなるべく解析トレースしますので、無理のない機体運用をお願いします。そのバンブギン、いえ、ランタンもこの性能試験の真っ最中でありますので!」

「わかってるよ! とにかくいざ会敵したからには真っ向からやり合わなけりゃならないんだから、おのずとデータも入ってくるさ! 相手がひ弱な見た目だからって、遠目からビームの一発で終わらせようだなんて横着はしないから。それじゃこの子の運用データもろくすっぽ取れないしね?」


「了解! 敵影、どちらも動きに変化ありませんが、こちらには気づいているものと思われます。いかがいたしますか?」

「どうするって、こちらから仕掛けるしかないんだろう、この場合は? さいわいあちらさんの頭上を押さえているからやりやすいよ♡ それじゃあ行ってみようか、そうれっ……!!」

 言うなり躊躇なく手元の操縦桿を思い切りに押し倒す少尉どのだ。それによりアーマーとしてはかなり大型なみずからの機体が頭から前のめりに空中をダイブ! こちらよりは低空を飛んでいる二機の敵機めがけて一気に突撃する体勢に入る。

 戦いがはじまった。

 さすがに空中での格闘戦はまだ慣れていないので、機体に装備されたビームカノンを相手めがけて一斉射!!

 この頭上からの不意の攻撃にあって、相手機はどちらも泡を食った感じでひょろひょろっとそれぞれが回避機動に入る。
 ほんとうにひ弱なカトンボみたいなありさまだった。
 ちょっと拍子抜けしたクマのパイロットは、目をまん丸くしてそんな相手のありさまをしげしげと見入る。


「なんだい、あんまり統制が取れてない感じだな、どっちも? ひょっとしてまだペーペーの新人くんだったりして?? あんまり攻め気を感じないんだけど、ちょっとおどしたらあっさりと逃げ出したりするのかな……? まあいいや、とにかくやることやるだけだよね!」

 そんな考えているさなかにも、頭上のスピーカーからはすかさずに若いメカニックマンによるのサポートが入る。

「少尉どのっ、敵機、二手に分かれました! さては挟み撃ちするつもりなのでしょうか? ですがそのランタンに装備されたカノンはほぼ全ての方位に向けて射撃が可能なので、どうか落ち着いて対処願います!!」


「はいはいっ、わかってるよ! 誰に言っているんだい? 余計な茶々は入れないでいいから、黙って相手のモニターに専念しておいでよ。こっちは心配ご無用! ぼくとこのランタンにお任せだね!! とにかく慣れるだけ慣れないと、相手がガンガン攻め込むタイプじゃないみたいだから、まずは距離を取っての打ち合いに専念するよ。両手のハンドカノンの威力をできるだけ発揮させるから、そっちもちゃんとモニターしておいておくれよ!」

「了解!!」

 自機の周りをぐるりと取り囲んで、互いに一定の距離を置いたまま時計回りに旋回する二機のアーマーに、対して機体の両腕に装備されたハンドカノンをぬかりなく構えて冷静に狙いを定めるベアランドだ。

 相手はやはり警戒しているものらしく、あちらからはいまだ仕掛けてくる様子がない。通常のそれよりも大型で、異様な見てくれしたこちらのさまに多少なりとも動揺しているのかもしれないと思うクマの少尉どのだ。さてはまんまと萎縮している感じか。

「ああん、やっぱりやる気が感じられないなあ? そうかい、だったらこっちからガンガン攻めさせてもらうよっ!!」

 2対1と数では劣勢だが、決してこの分は悪くないとみずからの腕前と機体の性能にそれなりの自負がある大柄なクマ族は、ペロリと舌なめずりして自分から見て右手にあるモニターの中の機体にこの意識を集中する。

 まずは一機ずつ、着実に対処するつもりで利き手のレバーのトリガーをゆっくりと引き絞った。
 直後、赤い複数の閃光弾が青空にまっすぐの軌跡を描いて走り抜ける! その先には標的となった見慣れない灰色のアーマーが、複雑な軌道を描いてこちらもただちに回避機動に転じる。
 ひとの手に追い立てられる、それこそ虫の蚊もさながらにだ。

 全弾回避! ハズレだった。

 それなりに狙いを定めたつもりのクマの少尉は、チッと小さな舌打ちして見かけ通りの身軽な機体を恨めしげに見やる。
 運動性能はかなりのものらしい。やはりそんなに簡単にはいかないかと、どこか余裕ぶっていた気持ちをグッと引き締めた。

※以下、挿絵の作製の段階ごとに更新したものをのっけていきます(^^) これまでは随時に画像を差し替えていたのですが、試しにですね♡

 もとの雑な構図の下書きに、もうちょっと具体的なイメージを書き込みました。でもまだまだざっくりしてますね!

 さらに描き込み♡ ちょっとわかるようになってきたでしょうか? これをさらに具体的に描き込みできればいいのですが、最終的な着地点は決まっていまいちびみょーなところに収まるのがシロートの悲しい性です(^_^;)

 とりあえず下絵は完了? 色まで付けられるかはビミョーです。べた塗りくらいはできるのか?? 色つけの課程も随時に公開していく予定です。ちなみに作画の課程はツイキャスとかで無音で公開していたりするので、興味がありましたら♡

 主役のクマキャラ、ベアランドだけベタ塗りで色を付けてみました(^^) 余裕があったらもうちょっと加工してそれっぽくしてみたいのですが、かなりビミョー、たぶん単純なベタ塗りでおわってしまいそうです。ちなみにインスタライブでやりました♡

 全体べた塗りしました(^^) これで合っているのかどうか作者ながらにビミョーです(^_^;) これより先に加工するかはまだ未定ですね…!


 他方、ベアランドからの猛攻に追い立てられる哀れなカトンボの立場のアーマーパイロット、見た目はとかくメジャーな犬種の犬族のモーリィは、悲鳴を上げてジタバタわめきまくる。
 狭いコクピット内に警告音と鳴き声がやかましく交錯する。
 端から見たらばまったく訳がわからないありさまだった。

「おわわわわっ、あかんあかんあかんあかん! なんでそないにぎょうさんビームばっか撃ちまくってくんねん!? しかもこのわしにだけ!! 不公平やろっ、あほんだら! あっちの相方のほうにも何発か見舞ったれや!!」

「なんでやねんっ! そっちでなんとかしいや!!」

 モニターの真ん中にでんと居座るでかい機体に向けて思わず口走ったがなり文句に、相棒の犬族からすかさず苦笑い気味のガヤが入る。
 現在、大型の敵のアーマーを挟んで対極に位置するこちらと同型のアーマーは、ひとりだけ我関せずのひょうひょうとしたありさまでのんきに空を飛んでいるのを苦々しげににらみつけるビーグルだ。ひん曲がった口元からうなり声がもれた。

「うぬうううっ、そやったらちょっとはじぶんも援護しいや! なんでわしだけこんないにガンガン派手にビーム当てられやならへんのや!? まだ当たってへんけど!! でもこないにきつうやられたら反撃もままならへんやろ!! おわあっ!?」

 言っているさなかにも、相手からは盛大なビームのシャワーがひっきりなしにこれでもかと送られてくる。とんでもない大出力のハイパワーエンジンを搭載していることをまざまざと見せつけられる思いの犬族だった。

 通信機越しの相棒がまたもや驚きのガヤを発する。
 いたってのんきな言いようがこれまたしゃくに障るビーグルだ。

「あちゃちゃ、マジでシャレにならへんのちゃう? こっちの射程圏内の外からでも余裕のパワーがありそうやん! おまけに三発四発、同時に見舞ってきよるもんなあ!? あんなんじぶんようよけきれとるわ!!」

「感心しとる場合ちゃう! マジで蜂の巣にされてまうやん!! どないしょっ、ちゅうか、じぶんも相手の背後(バック)取ってるんやから反撃せいや!! なんでわしだけひとりでこないないかついバケモンの相手をさせられにゃならんねん!!?」

 もっともな訴えに、仲間の犬族はやはりしれっとしたさまで応じてくれる。もはやかなりすっとぼけたものの言いようでだ。

「無理やろ。あいにくこっちの射程圏内の外っかわに敵さんおるんやから? 撃っても届かへんて。危なくて近寄れへんやろ。新品のアーマーを傷だらけにしてもうたら怒られそうやしなあ!」

「何言うとんねん! 戦争やぞ、ガチの!! ちゅうても確かにあぶのうて近寄れへんか! このアーマーの装備じゃミドルレンジのハンドガンがせいぜいやけど、あっちはバリバリ、ロングレンジのキャノンの威力かましてるやん! マジ反則やて!!」

 今や逃げ惑うばかりのまさしくカトンボのアーマーだ。
 味方からのまともな援護も望めないままに、絶望的な逃避行を続けている。敗色は濃厚だ。それを見て全てを悟ったかのごとく、相棒の犬族がしれっと問うてくる。

「どないする? さっさとシッポ巻いて逃げてまうか? 敵さんどんくさい見た目しとるし、スピードやったらこっちが上みたいやんか、そやったらいくらか援護したるで??」

「マジか!? じぶんすごいな!! そういうところ、ほんまに尊敬してまうわ!! でも一発も見舞わないまんまに逃げ出すんいうんはあかんやろ? 取り上げられてまうで、この新品の新型アーマー! どれだけ使いもんになるかわからへんのやけど?」

「じゃあ、やれるだけやってもうて、さっさとバックれんのがええんちゃうか? 射程圏外からでも無駄ダマ、バリバリ撃ってまうノリで? あちらさんはそれほど本気な感じがせえへんから、いざ背中見せて逃げ出しても追っかけてこうへんのちゃう??」

 もはや身もフタもない言いようにしまいにはうんざりするモーリィだが、内心ではそれが正解かと判じてもいるらしい。

「納得いかへんわあ、理不尽ここにきわまれりっちゅう感じやん? いざ新型で出撃したら、あないにわけのわからへん新型に鉢合わせするなんちゅうんは! なんかわしだけ目の敵にしとるし!!」


 完全にさじを投げた調子の相棒の意見にいやいやで同調する、こちらもまだ新人のパイロットだ。機転と経験で現状を打開するよりも逃げるが勝ちと相手機との距離を取ることに専念する。

 攻撃はもはや二の次だ。

 かろうじて敵の背後を取っている相棒の機体が形ばかりの援護射撃をくれたらば、それを合図に即座にこの場をとんずらするべく、前屈みでモニターの中の大型の緑色した機体を注視する。

 対してこれを迎え撃つクマ族の若いエースパイロットは、数で勝るはずの相手がそのくせ逃げ腰なのをはっきりと見て取って、とうとう呆れたさまの物言いだ。

「あらら、これじゃ勝負にならないね? 相手さん、完全にやる気がありゃしないよ、逃げてばっかりでろくすっぽ撃ってこないもん! こんなんじゃ敵のアーマーのモニターどころかこっちの性能試験もままならないや。どうしたもんだか……」

 乗り気がしないさまではたと考えあぐねるのに、こちらも若いクマ族のメカニックがスピーカー越しにもそれとわかる、いささか戸惑い加減で言ってくれる。

「少尉どの! あまり戦いを長引かせればこちらの機体の機密を敵軍に無駄にさらすことにもなりかねません。距離を置いての戦いはこちらも得意とするところではありますが、できるなら一気に間を詰めての早期の決着を考えたほうがよいのでは? 片方が墜ちればもう片方には逃げられる可能性が高いのですが…!」

「ああ、まあそれは仕方がないよ。ぼくもホシを稼ぐばかりが能ではないからね! この機体は確かに万能で性能が高いけど、だからって殺戮兵器じゃないんだから…!! これってただのきれい事かな? ま、それじゃ、見ててごらん!」

 どうやら何事か決意したさまで左手のモニターの中のメカニックマンにチラリとだけ目配せすると、いざ正面に向き直って高く意気を発するクマ族だ。

「さあてお立ち会いっ、初見の相手はみんなこぞって度肝を抜かれること受け合いだよ! このランタンの攻撃パターンの多彩さをぞんぶんに思い知らせてやるさ、それじゃ狙いをしっかりと定めまして……ん、いくぞ!!」

 モニターのど真ん中に捉えたくだんの敵アーマーにしっかりとロックオンしたことを確認するなり、そこにまっすぐに突き出したみずからのアーマーの右手と、すかさず怒号を発して利き手のトリガーを思いっ切りに引き絞る!!

「食らえっ、ロケットパアアアアアアアアーーーンチ!!!」


 かくして戦場は大混乱の様相を呈するのだった。

 相手のひっきりなしのビーム攻撃からほうほうの体で逃げ回る犬族だが、不意に何かしらの嫌な気配を察するなり、コクピット内に鳴り響く警告音にびっくりしてこの背後を振り返る。

 バックに配置された中型のモニターには少し距離を置いてこちらを追いかける大型の飛行アーマーが、そこでなにやらしでかしているのを激しいライトの明滅とともに知らせてくれる。

 ビームではない、何かが急接近しているのがわかった。

 かくしてそれが相手の腕から繰り出された、それはそれはどでかいゲンコツのグーパンチ、まさしく『ロケット・パンチ』だと見て取るや、この全身がひいいっと総毛立つビーグルだ。

「ななななっ、なんそれ!? うそやろっ、あかんやつやん!! マンガちゃうんやから、ロケット・パンチなんて反則過ぎるやろ!!」


 まっすぐにこちらめがけて飛んでくるでかい右手首、巨大な鋼鉄のカタマリに恐れおののくモーリィは、必死にペダルを踏み込んで機体を急旋回させる。追尾式だったらアウトだが、そこまでマンガではないことを心の底から願った。スピーカーからさすがにこちらもちょっと慌てたさまの相棒の声がする。

「なんや、そないなビックリ機能があったんかいな! ドッキリやん! 離れてて正解やったわ!! でもうまいことよけられたみたいやで? あっさり通り過ぎてるやんか、おまけにカウンターのチャンスやったりして!!」

「簡単にいうなや! でもそやったらこのスキに一発食らわしたるわ! じぶんもよう援護せいよっ、ん、なんやっ、あわわわわわわわわわわわっ!?」

 ぐるりと機体を旋回させてどうにか立て直した視界の先に浮かぶ謎のアーマーめがけて、すかさず手持ちのハンドガンを狙おうとしたところ、またしても激しいビープ音に見舞われる!

 なにもないはずの背後からの不意の警告に、ギョッとして振り返るビーグルの顔に絶望の影が走る。


 どうにかやり過ごしたと思ったはずの巨大なグーパンチからのしつこいビームの一斉射撃だ。完全に裏をかかれていた。

 これをよける間もなく機体に激しい振動を感じて肝が冷える。

 機体を襲う激しい揺れに背後に備えたフライトユニットが一部被弾したこと、画面に激しいノイズが走るのに頭部のカメラも被弾したことを一瞬にして理解すると、右手に装備したハンドガンを宙に投げ出して機体を急降下、海に墜ちるくらいの覚悟でその場からの緊急離脱をはかる!!

 命よりも大事なものはないとそれだけが頭の中にあった。

「ひいっ、そんなん反則やんか! よけたパンチから攻撃しよるなんて、卑怯すぎるやろこのあかんたれ!! 助けてくれっ!」

「おう、そやったら多少は稼いでやるからさっさと機体を立て直しい! まだキズは浅いやろ!! 基地までならギリギリ帰れるはずやっ、相手の注意を引いてやるさかい、ん、こっちに来よったで、ホシには興味がないんちゅうんかい、ええ根性やの!!」

「おおきにっ、おいっ、死ぬんやないぞ! 枕元に立たれてもしんどいわっ!! おわっ、また行きよったで、今度は左手のロケット・パンチやん!!」

 意気が合った犬族のコンビは口やかましい掛け合いがますますヒートアップする。いつもひょうひょうとしていたはずの相棒がいつになく熱いさまで口からツバ飛ばしていた。

「そないにワンパターンな攻撃を何度も食らうかいっ、追尾式でないならそないに出所がはっきりしとるテレフォンパンチなんて当たらへんてっ! よいしっょ、よけたで!! 背後から食らわされる前に一発見舞ったる!! そうれや!!」

「おうっ、やったやん! て、まるで効いてへんやん!! 当たってるよな、今のそのハンドガンの弾? あ、ちゅうかまさかあの敵さん、バリアっちゅうやつまで備えとるんか!?」

 意気盛んに食らいつく相棒の奮闘ぶりを目を丸くして見つめるビーグルの目つきが途端に怪しげな半眼のそれになる。
 旗色が悪いのはどう見ても変わらないようだ。

「くうっ、まだまだあるで! 胸のキャノンはハンドガンと威力がよう変わらへんから、この頭のレーザー食らわしたる!!」

「そないなもん効果あるんか??」

 他方、終始距離を置いてまるでやる気がなかったはずの敵のアーマーが俄然やる気を出して食らいついてくるさまに、ここに来てちょっとだけ感心するベアランドだが、いかんせんこの戦力差はどうにもならないなと内心で肩をすくめていた。 

「ああん、これはいよいよもって弱いモノいじめになってきちゃったね? モチベーションが下がることおびただしいよ! ん、てかあのアーマーの頭で赤くピカピカ光ってるのって、いわゆるレーザーなのかな??」


 やる気だけはあるようで、そのクセさっぱり空回りしている相手の機体のさまを不可思議に見やるが、それならばとこちらも手元の操縦桿を引き寄せてモニターの中のターゲット・スコープに狙いを付ける。

「なんか弱々しいけど、実は対人用だなんて言いやしないよね? 対アーマーだったらこのくらいの威力はないと! それ!!」

 いかつい大型アーマーのクマの頭部を模したような不細工なヘッドの左右の耳、もとい近接射撃用のビームカノンが激しく火を噴く!
 これには大慌てで機体を急降下させる敵の飛行型アーマーだ。

「あかんわ! まるでお話にならへんっ、こんなん大人と子供の力比べやんかっ、まるっきり!!」

「おうっ、もうええで! ええからさっさと逃げてまえっ、こないな化け物とやりあう義理なんてわしらみたいな安月給の非正規雇用にはあらへんわっ! バリバリ給料もろてる正規軍のひとらにやってもらお!!」

「ほんまやんなあ! あやうく死んでまうところやったわ、ちゅうか、シッポ巻いて逃げるっちゅうんわこういうことを言うんやんな! ほな、さいなら!!」

「おう、もう二度と会わへんで!!」

 ふたりの犬族は捨て台詞を吐くなりに最大戦速で戦域からの離脱、脇目も振らずに空の彼方へと消えていく。ものの10分にも満たない戦いは呆気のない幕切れを迎えた。

「あらら、逃げられちゃったよ! なんかすばしっこさだけは人並み以上だったね? 火力はそうでもないけど、このランタンでなければちょっと手こずるのかな? ま、何はともあれどっちもいいパイロットだよ、このぼくの見立てによるならば♡」

 逃げ去る敵のアーマーたちを見送りながら苦笑交じりにホッと息をつくクマ族の青年パイロットだ。これにはきはきとした口調のメカニックマンが通信機越しにねぎらいの言葉をかけてくれる。

「おつとめ、ご苦労さまでした! 少尉どの。被弾は確認しておりませんが、どうぞお気を付けてお帰りください。星は取れませんでしたがとてもいいデータが取れたものと思われます。おいしいお飲み物を用意しておきますので、寄り道などはなさいませんように」

「うん、ありがとう。とびっきりに冷えたおいしいカフェオレでも用意しておくれよ。たっぷりとしたとっても甘いヤツをね! それじゃ、これよりベアランド機、母艦のトライアゲインに向けて無事に帰還しますっと! めでたしめでたしだね♡」

 広く晴れ渡る青空のした、全身緑色のでっぷりと不細工な見てくれした大型アーマーが悠然とその帰路につく。

 それまで戦いがあったのが嘘のような穏やかなさまでだ。

 果たしてそれはほんのつかの間、嵐の前の静けさのごとくしたかりそめの平穏であったか。

 Part3

 母艦であるトライ・アゲインに帰還したクマ族の少尉、ベアランドを待ち受けていたのはくだんの同じクマ族の青年メカニックマンのリドル伍長であった。

 アーマーのコクピットハッチを開けるなり、そこにすかさず明るい笑顔で出迎えてくれる若い専属チーフメカニックに、こちらも明るい笑顔で応じるエースパイロットだ。

 ハッチから半身を乗り出した顔の前にスッと突き出された飲み物入りのボトルを反射的に利き手で受け取って、コクピットから全身を抜き出すとそれをそのままグビグビと一息に飲み干すでかいクマさんである。

「おっ、ありがとさん! んっ、んっ、んんっ、ん! ぷはあ、おいしいね! リドルの煎れるカフェオレは絶品だよ♡ お砂糖の加減も実にいいあんばいだしね!」

「はっ、ありがとうございます! 任務、ご苦労様でありました。あとはこちらですべて引き継ぎますので、何かこれと気になった点はありましたでしょうか? あとンクス艦長より、後でブリッジに上がってくるようにとの要請がありました。今後のことについてのお知らせがあるとのことで?」


「ありがとう! そうかい、おおよそはこれから合流する予定の増援部隊についてなんだろうけど、楽しみだね♡ それじゃ早速顔を出してこようかな? ん、まだシーサーの機体は戻ってないんだ? あの勝手にリニューアルされちゃったヤツ??」

 飲み干したボトルをまた受け取り直すクマの青年機械工は、見上げる大柄なクマのパイロットにまたはきはきとした返答を返す。

「はい! ウルフハウンド少尉どのは本艦の周囲を索敵警戒中、ついでに機体の稼働性能実験も兼ねたモニターの真っ最中だと思われます。あいにくこの担当はじぶんではなくビーガル副主任なので、詳しくはわからないのですが……!」

 了解するクマの隊長さんは苦笑い気味にうなずく。

「ああ、あのでかいクマのおやじさんね! シーサーとはそりが合わないみたいだけど、じきに仲良くなれるんじゃないのかな。なんたってリドルとおんなじ、あのブルースのおやっさんのお弟子さんだったて話だから、腕は確かなんだしね♡ シーサーもそんなに分からず屋じゃありやしないさ!」 

「はい! じぶんもそのように思います。それではこの場はこのじぶんが引き継ぎますので、ベアランド少尉どのはメディカルルームでお休みになってください。チェックは必ず受けるようにとのこちらは軍医どのの要請でありすので。じぶんが怒られてしまいます」

「ああ、あの陽気なおデブのおじちゃん先生か! おんなじクマ族相手だと力の加減がまるでやってもらないでちょっと痛かったりするんだよな。ま、そっちには後で行くって言っておいてよ、先に肝心のブリッジ、あの強面のスカンクの艦長さまのほうを済ませてくるからさ! それじゃあとはよろしくね♡」

「了解!!」

  最新鋭の大型戦艦の船底に位置するアーマーのハンガーデッキから、この最上階に相当するブリッジ、本船を指揮する責任者である艦長がいる第一艦橋まで歩いてたどり着くのはかなりの骨だ。階段なら優に数百段とあり、タラップなら気が遠くなるような頭上を見上げてこれをひたすらよじのぼらねばならない。

 よってショートカットとなるこのデッキ部から艦橋まで直通の専用エレベーターでそこに向かうクマ族のパイロットだった。
 これを使えるのはごく限られた一部のクルーのみだ。
 パイロットなら正、副隊長以上、メンテナンスの人員では艦橋から許可が降りねば原則利用禁止。

 高速エレベーターはものの十秒足らずでおよそ100メートルの高低差を駆け抜けてくれる。

 音もなく開いた扉の先には、広い通路ごしの真正面に艦橋への大きな専用気密シールド隔壁、大きく「01」と数字の描かれた両開きのスライドドアがあった。

 人気のない通路を大股の三歩で横断。


 するとあらかじめ登録してあった本人の生体認証でその到着を感知したドアが耳障りでない程度のおごそかな音を立てて左右へと開かれていく…!
 わざわざこんな音がするのは振り返らずとも艦橋への出入りがあったことを察知させるための措置なのだろうと思いながら、ずかずかとこれまた大股で中へと踏み込むクマ族の隊長さんだ。

 戦闘態勢の解かれた平時のブリッジ内は明るくて平穏な空気に満たされていたが、いつもなら入るなりに方々から掛けられてくるクルーたちの挨拶がないのにふと首をかしげるベアランドだ。
 みんな息を潜めているのか、誰もこちらを振り返らずにみずからの職務に専念、しているように見せかけてその実、この注意はどこかあさってのほうに向いているようにも見える…??

 なおさら首を傾げさせるクマ族だが、あたりを一度見渡してそこでまっすぐ正面に捉えたものにしごく納得がいく。


「ああ、なるほどね…! うちのボスが例のワケあり艦長さんと通信中なのか。なんか不穏な空気かもしてるけど、さては何を話してるのかね?」

 その場でぴたりと足を止めて頭の上のふたつの耳をそばだてるベアランドだ。不用意に話しかけて会話を中断させるより、盗み聞きしてやろうとにんまり顔で気配を押し殺す。

 艦長席にどっかりと陣取った椅子からはみ出した大きなシッポが特徴的なスカンク族の老年のベテラン艦長は、ついぞこちらを振り返ることはなかったが、それが見上げる正面の大型スクリーンの中で大写しとなる相手の艦長職らしき中年の犬族は、こちらをちらとだけ一瞥してくれたようだ。


 さては感づいているものか?

 相変わらず抜け目がなくていやらしいおじさんだな!と内心で舌を巻く。

 自然と苦笑いでしばしの沈黙からやがてスカンクの艦長がもの申すのに周りのクルー同様、黙ってこれにじっと耳を傾けた。

「……しかしだな、当該戦域の指揮を任されている責任者がいまだ雲隠れしたままと言うのは、現場の指揮にも関わるものだろう? 新型の戦艦戦力を温存したいのはわからないでもないが、指揮官としてはその姿を示してしかるべきものだよ……!」

 どこか浮かないさまの口ぶりしたベテランだ。
 そうたしなめるようにして頭上のモニターへと問いかける。
 そこに顔面度アップで大写しの白い毛並みの犬族は、こちらもいささか暗い顔つきして視線をどこかあさってへと向けて返すのだった。

「いやあ、こちらもいろいろと理由(わけ)ありでして……! 姿を見せたいのはやまやまなのですが、肝心のアーマー部隊がろくすっぽ稼働できないありさまで。面目ない。先生、もとい、ンクス艦長の応援をいただいてまことに感謝することしきりです。ついでに優秀なアーマー部隊も少し分けていただけたらば、感謝感激雨あられなのでありますが……?」

 ひょうひょうとした口ぶりでおまけのらりくらりとした言い訳をモニターのスピーカー越しに垂れ流してくれる犬族だ。
 言葉ほどには申し訳なくも感謝しているようにも思われない。
 それを察しているらしいこちらのスカンク族も冷めた調子でまた返す。背後で聞くクマ族、ベアランドは思わず吹き出しそうになるが、どうにかこらえて艦長席の影ごしに正面モニターの切れ者艦長のしれっとした顔つきをのぞいていた。


「パイロットを選り好みしすぎなのだろう、しょせんキミは? みずからができるからと言って、それを他者にまで求めてばかりいては誰もついては来られまい。加えてそう、己の本心をこれと明かさないとなればなおさらだ……」

「いやあ、なんでもお見通しなんですなあ、こいつはまいった! 確かに返す言葉もありません。艦はこれを本拠地としているから隠していたのですが、心強い援軍があるならば今後は堂々と顔を出せるでしょう。話じゃ、ほかにも援軍はあるようだし?」

「うむ。キミの古くからの戦友であったよな? ならばアーマーの補充はそちらに頼めばよいのではないか? あいにくこちらにはその余力がない」


「はあ、しかしながら同輩には極力、借りをつくりたくないのでありますが。あいつはがめつい。食欲から性欲から、何かと欲張りなのはよくご存知でしょう? そのせいもあってかこのクルーもクセが強いヤツらばかりだし」

 淡々とした会話の中にどこかピリピリとした空気が漂う……。

「ふうーん、あのおじさんもこっちに出張って来るんだ? なんだか騒がしくなりそうだな♡」

 話の流れから誰のことなのかおおよそで想像がつくクマ族の隊長さんは、したり顔してこのまあるい頭をうなずかせる。
 そろそろ出てもいいもんかなとタイミングを見計らった。

「腕のいいパイロットといいアーマーはできればセットで保持したいものです。戦場では何かと不足しがちなものではありますが。わたしは部下が無駄に命を落とすことがないようにこのあたりには特段に気を遣っておりまして、そのせいで今回のような不足の事態を招いたのはまことに遺憾であります。そのあたり、折り入って頼みがあったのですが、今はとどめておきます。いらんクレームを付けて来そうなくせ者がいるようなので……!」

 あ、やっぱりバレてる……!

 モニターの中の犬族の艦長さんが何食わぬさまして、そのクセしっかりとこちらに視線を向けているのに苦笑いが一層濃くなる大型クマ族だ。するとやっぱりこれを察知していたらしいスカンクがこちらを見もせずに言ってくれる。

「出てきたまえ、ベアランド君。この彼はキミも旧知の仲だろう? そちらに増援として行く必要もあるかもしれない、今のうちに顔合わせをしておいたほうが話がスムーズにゆくだろう」

「おっ、さすがはせんせい! よくわかってらっしゃる。おい、出てこいよでかグマ! じゃなくてベアランド、だったか?」

 でかグマ……!

 ひさしぶりに耳にする呼び名だった。
 これを口にするのは頭上の有名軍人さま以外にはいない。
 かくてふたりに促されて仕方なしに顔を出すそれは大柄な熊族の隊長さんだ。苦笑いして真っ向からモニターの中の艦長職と向き合った。



「あはは♡ こいつはまいったな、ぼくのこと覚えててくれたんだ、教官どの? 悪漢ジーロ、もとい、ジーロ・ザットン大佐どの? 性格ぐれてる鬼教官どのが、現場に復帰されたとは聞いてはいたんだけど。まあ、あんまりいいウワサは聞かないよね!」

「おかげさんでな? 生意気な生徒に好き勝手言われて、そのままおめおめと引き下がるほどにはひとができていないんだ、このぼくは。言うだけのことがあるものか、きちんとこの目で拝ませてもらいたいもんだし。そちらさまはとっても優秀な戦績を納めているらしいな?」

 最後のは皮肉なんだろうと受け流しながら、苦笑いで応じる。

「それはどうだか? ご想像にお任せするよ。だからってまさかこのぼくをトレードしようだなんて言いやしないよね、腹の内がさっぱり読めないこのやり手の艦長さんときたら?」

「ふん、それほどとぼけてもいないさ。どうせならもっと従順で扱いやすいヤツのほうがいい。おまえさんのようなやることなすことおおざっぱで力任せなクマ族よりは、そうさな、慎重でありながら機敏でかつ鼻の効く、ま、このおれのような犬族あたりがベストなんだろうな」

「?」


 何か含むところがありそうな言いように、隣の艦長席のスカンクとちょっとだけ目を見合わせるクマ族だ。
 小首をかしげながらにぼそりと小声で隣に声を掛ける。

「犬族? ああ、そういやそんな新人くんたちがじきにこっちに来るんだっけ? このぼくの部隊に配属される予定の??」

「うむ。今日中に合流の予定だが。まったく抜け目がないことだ。機密情報をどこで聞きつけてくるものやら…!」

「フフ、まんまと横取りされないよに気をつけないとね! まずは新人くんたちをしっかりと歓迎してあげないと」

「そのあたりはキミに一任する


「了解♡」

 そんなしてふたりでごにょごにょとやっていたら、モニターの向こうの犬族が何やら浮かない顔してしれっと言ってくれる。

「ああ、まあそのあたりのことは後々に。その前にそちらの隊長どのには新人くんたちを引き連れて、一度こちらに顔を出してもらいたいもんだ。よろしいですよね、先生? こちらも丸裸でこの艦を敵にさらすわけにもいかない都合……」

「丸裸?」

 どういうことなんだと右手の艦長席のンクスに改めて目を向けるが、大ベテランの艦長はさてと肩をすくめさせるのみだった。
 そこにフッと鼻先で笑うみたいなノイズを残して白い犬族がおもむろに敬礼してくれる。

「では! 久しぶりの再会、まことにうれしく感慨深く思います。とりあえずそっちのパイロットも含めて。互いの健闘と勝利を祈りまして、今回の通信を終わらせていただきます。あと、アーマー部隊はすぐにでも遣わせていただきたいものであります。でないとこちらの身動きがとれませんので……では」

 何やら好き勝手なことをひとしきりほざいて相手の犬族の艦長からの通信は一方的に閉ざされることとなる。
 しばしの沈黙の後、クマ族の隊長はおおきく左右の肩をすくめさせる。

「まったく相変わらずだよね、あのおじさん! いいトシなんだからもうちょっと丸くなってもいいもんなのに」

「キミのひとのことは言えないのではないか? まあ、ある意味打って付けなのかもしれないが……」

 こちらも多分に含むところがありそうな物言いのキャプテンに、当のチーフパイロットはあっけらんかと応じてくれる。

「何が? そう言えば艦長はあのおじさんの直属の上官だったりするんだよね、その昔は? だったらぼくって孫弟子あたりにあたるんだ? あんまり自覚がないんだけど」

「なくてよろしい。今の話の流れでもう伝えるべきことは伝わったはずだ。それにつき何か質問はあるかね?」

 真顔で問うてくるンクスに、のんびりしたクマの隊長さんはさあと頭を傾げさせる。

「まあ、例の新人くんたちはこっちで引き受けちゃっていいんだよね? ブリッジにもしょっ引いて来いって言うんなら、連れてくるけど、いざ現場方の最高責任者さまがお相手とあっては、きっと震え上がっちゃうんじゃないのかな♡」


「その必要はない。すべてキミに一任する。言ったとおりだ」

 まったくしゃれっ気のない冷めた顔の艦長に内心で肩をすくめるクマさんだが、折しもそこで静まり返っていた周りのオペレーター陣にちょっとした動きがあったようだ。

 不意の電子音とともにいくらかの応答を交えて、中でも特に見覚えのある犬族の男がすぐさまこちらに振り返って報告を入れる。

「艦長、増援部隊、ビーグルの新型が二機、まもなく艦に合流するとのことであります! 受け入れは二番デッキでよろしいでしょうか?」

「うむ。両機とも、大いに歓迎すると伝えてくれ」


「お、新型のビーグルか! それって例のアレだよね? 何かと問題ありってうわさの♡ ちょっと見るのが楽しみだな、もちろん新人のパイロットくんたちもだけど! それじゃ早速、ハンガーにとんぼ返りして出迎えに行ってくるとするよ」

「ああ、アーマー単体の長旅だったのだからまずは休ませてやるといい。部屋は用意してあるはずだ。あとキミも、ちゃんと休養を取ることだ。パイロットとしてはこれもまた重要な責務ではあるのだからな?」

「了解♡」

 くるりときびすを返してブリッジを後にするアーマー部隊隊長だった。艦長からの忠告に軽く右手を挙げて答えながら、さてこれから忙しくなるぞっ!と舌なめずりしてズカズカと来た道を戻っていく。
 やがて艦に合流することになる増援部隊のありさまに想定以上の驚きがあることをまだ知らない彼だったが、波乱に満ちた戦いの予感は心のどこかにはもうすでにあったのかもしれない。


 以下、#011へ続く…!



 


Part3の流れ、プロット
ベアランド、母艦トライアゲインに帰還。
リドルの出迎え。
ウルフハウンドはまだ出撃中。くだり~
ベアランド、ブリッジに上がる。
艦長、ンクス、戦域統括官のジーロと通信中。
ベアランド、艦長と会話。
援軍の説明。
#011へ~…


 





 ドラゴンフライの兵装
 ミドルレンジのハンドガン
 ショートブレード
 胸部装備 実弾カノン
 頭部装備 レーザーカノン



状況
 ベアランド ランタンのコクピット内から
 リドルと交信
 ジーロ・ザットン ダッツとザニー
 モーリィ、リーンと交戦この

記事は随時に更新されます(^o^) 応援よろしく!

プロット

モーリー リーン 登場
ベアランド隊と会敵