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SF小説 ファンタジーノベル ワードプレス 変態機甲兵〈オタク・ロボ〉ジュゲム

変態機甲兵〈オタク・ロボ〉 ジュゲム file-04 ドラフト!

アキバで拉致られババンバン♪ ④

なろうで公開中のジュゲムの下書きですw なろうで公開済みの部分は太字になります。

Episode-file-04


 知らぬ間に拉致られ、気がつけばマッパで監禁されていた謎の個室から、その現場は歩いてほどもないところにあった――。

 窓もなく薄暗い通路を二度くらい曲がった先の突き当たりだ。

 そこには、見るからに頑丈そうな両開きの金属製の扉があり、そこまで先導する監督官が、この扉の脇にある操作盤らしきを手早く操作することで、音もなく重厚なドアが左右に開かれてゆく。この時、背後を女性自衛官の監査官に詰められていたから身動きもできないままのオタクだ。逃げ道はない。
 促されるままにおずおずとこの内部へと足を踏み入れる。
 ドア越しにもパッと見でかなり広い空間だとはわかったが、全体的に薄暗くてはっきりとは見通しが効かなかった。
 かろうじてこの真正面がぽつりぽつりとライトアップされていたので、そこだけがそれと認識できるだろうか。で――。

 モノはそこにあった……!

 とぼとぼと部屋に入ってこの顔を上げたらいきなりのことである。見て丸わかりの言われたままのブツの登場にしばし圧倒されるオタクくんだ。もはや見まがいようもない、あまりにも露骨なありさまであったか。 

「はあああぁぁぁぁ~~~……!」

 言葉よりもまず長いため息が漏れるモブだった。
 正直、途方に暮れていた。
 あまりにも浮き世離れした現実が、がそこにはあったから。
 泣きたい。
 はじめ惚けた顔でそれを見上げるパイロットスーツのオタクは、改めておのれが直面している事態の異常さに驚愕するのだ。

「うわあ、マジであるよ? 何コレ、ロボ? ガチじゃん! いくらかかってるの? ここまであからさまだと、なんか引いちゃうよな、こんな巨大ロボっ……!!」

 目の前にそびえ立つのは、おおよそひとのカタチをした、巨大な戦闘兵器、ロボットなのだろうか? 
 果たしてこの意味も理由もさっぱりわからなくした、どこにでもいるはず平凡なオタクはたじろぐばかりだ。
 いかにもメカっぽい全身がずんぐりむっくりしたロボットは、ただ静かにそこに直立している。それだけで半端じゃない存在感なのだが、何故かまだどこかしら夢うつつな気分のモブだった。
 ひょっとして悪夢を見ているのではないかと、じぶんのほっぺたをつねったりしてみるのだが、ジクリとした痛みだけが伝わって、他には何も変わらない。
 悲しいかな、まごうことなき現実だ。
 仕方もなしに周りに視線を向けるのだが、これと言って他に目にとまるものはなかった。薄暗くした巨大な灰色の屋内に、巨大な人型ロボが仁王立ちしている。
 ただその事実だけが突きつけられる空間。
 泣きたい。マジで。
 周りに物音やひとの気配がないのが多少の違和感だったか。
 オタクの身からすれば、こういうシーンでは決まってやかましい騒音とたくさんのスタッフや資材が、そこかしこを忙しく動き回っている活発で雑多としたイメージなのだが……。
 あいにくとじぶんたち以外にはそこには誰もいなかった。
 非常なまでの静けさに満たされた大型ロボの格納庫だ。

「あぁ……だからなんか現実感がないんだ? じゃあ、ほんとに動くのかな、コレ? ただのハリボテだったりして??」

 思わず思ったままを口にすると、そのつぶやきをこのすぐ背後から聞きつけた中年の自衛官、村井がまじめな言葉を返す。
 またそのすぐ後に続く女性の監査官の指摘にも耳が痛く感じるモブだ。余計な物音がしないから小声でも楽に会話ができる。
 大きな空間につぶやきが響いてなんかおっかないカンジだ。

「そんなわけがないだろう? 紛れもなく本物だよ、アレは……! いやはや、もっと当事者意識を持ってもらいたいな。税金いくら投入していると思っているんだ。もはやシャレでは済まされない額だよ」

「あなたが今、身にまとっているスーツもおなじようにただごとではないだけの公金が投入されています。開発から実用化にこぎ着けるまでの年月も含めて、考慮していただければ幸いです」

「ううっ、そんなこと言われても、おれ、ただのオタクだから……! オタクってなんだよ? てか、やけに静かだけど他にひとっていないんですか、ここ?」


 しまいにはどっちらけて白けたまなざしで背後を振り返るに、真顔の監督官はおごそかに応じる。わざわざ一拍空けてから。
 なんだか芝居じみているようだが、そのあたりは気にしないことにした。なんかもう慣れつつあった。

「それはつまり、重要な機密を守る上での厳正なる対処だよ。この戦闘兵器のパイロットについては厳重なプライベートの保護、ないし報道規制が敷かれている。当然だな。これに則り、一般の整備班やその他の運用スタッフときみが顔を合わせることは原則禁止だ。国家機密厳守の観点から。問題があるかね?」

「い、いやあっ、なんか大げさな気が? おれの正体ってそんなバレちゃダメなの? こんな馬鹿げたことをおおっぴらにしているのに?? 拉致監禁もされちゃったし。マッパにもされて、さすがにムリでしょ……」

 額に汗を浮かべて困惑するオタクに、冷静な監査官が応じる。

「いいえ、そちらのロボからあなた自身が顔を出さなければ、物理的に身バレすることはないものかと? ご自分から正体を明かすような真似をされるとこの身柄を保護することにならざるおえないので、くれぐれも機密の漏洩にだけはお気を付けください」

「保護? それって、また拉致られてこうやって監禁されるってこと? もうやってるじゃん! なんだよっ……」

 物腰の穏やかだがやけに他人行儀なあくまで他人事みたいな言い回しに、なんだかげんなりしてがっくりと肩を落とすモブだ。その肩をぐっと掴んで、嫌気がさすほどに真顔のおじさんが力一杯に言ってくれる。トドメとばかりに。

「もっと胸を張りたまえ! きみこそは選ばれしオタク、国を救うべくした正義のパイロット、いうなればヒーローなのだから。戦場がきみを呼んでいる」

「呼ばれたくないです。いやあ、あのですね、おれ、民間人ですよ? それがどうして……! あれってほとんになんなの??」

 再び正面に戻って目の前にある現実に向き合うが、どうにもこうにもで立ちすくむデブのパイロットスーツだ。村井が言う。

「ジュゲムと呼んでくれたまえ。あれの正式な名称だ。ただし口外は無用。いわゆる我々関係者の中だけでのコードネームだな。世間一般では、第三種災害対応兵器、ぐらいなものか?」

「第三種……! あのぉ、それって……あれ?」

 ゴチャゴチャやってる間に薄暗闇の中にどこかで耳慣れない物音がする。ゴゴゴッ……と低い重低音が響く方に目を向けると、問題のロボがこの腹のあたりを鳴らしているのだとわかる。
 今しもボディの真ん中にあたる部分、おなかのパーツが外部へとせり出して、ぽっかりと大きな穴をあけるのだった。
 おそらくはこのコクピットへのハッチとなる開口式装甲が開いて内部に通ずる入り口が開いたのだとは、シロウトながらに理解ができた。だが他にひとがいないはずなのになんでとは思うオタクくんだ。怪訝に眉をひそめてしまう。身体もこわばった。
 そんなモブの心境も素知らぬさまで、監督官が意味深な物の言いで促すのだ。

「オタクダくん。やはりきみは真のオタクだ。あれが呼んでいる……!」

「い、いやあ、そんなこと言われても、アレに乗んなきゃいけないの? このおれが?? ろくな免許もないのに……」

 完全に顔が引きつっていたが、真顔の自衛官はまじめな口ぶりで言い切ってくれる。

「免許なら、きみは既に持っているさ。オタクとはそういうものなのだから……! きみでしか乗りこなせないものが、今こうしてきみの搭乗を待っている。搭乗口を開こう。きみでしかわたれない一本道だ」

「は、はいっ?」

 言いながら背後の監査官に目配せすると、こくりうなずく神楽が背後の壁にある操作盤らしきに手を伸ばす。
 直後、何もなかった空間にガガガーっと低い音を立ててせり出して来たのは、言葉の通りの金属製の渡り通路だ。
 かろうじてひとが一人通れるくらいの。
 謎のロボの周りに設営された足場なりに接合されて道を開く。
 いよいよ逃げ場がなくなったことを実感しながら、ちょっと目つきが遠くを見るようになるモブはすぐそこのはずなのに果てしない距離感を感じていた。行きたくはない。間違っても。
 背後に立つおじさんは許してはくれなかった。
 もう乗り込むことが前提で話を進める村井だ。
 止められないし、その背後に立つおねーさんのメガネも光っていた。泣きたい。

「ううっ、乗るんだ、ほんとうにっ……! でも乗って、どうしたらいいの、おれ??」

 絶望感にさいなまれるオタクに、その背中をぐっと押さえながら非常の監督官が最後の言葉を投げかける。
 それにムッと眉をひそめるモブだった。
 意味がわからない。

「内部には先住者がいるかもしれないが、いや、おそらくはいるのだろうが、それはあのロボの主だから、安心してくれていい。きっときみをよろしく指導してくれるはずだ。失礼のないように。それでは、グッドラック!!」

「…………はっ!??」

 前途多難なオタクの戦いが、今、幕を開けた。



 

 

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変態機甲兵〈オタク・ロボ〉 ジュゲム file-03

アキバで拉致られババンバン♪ ③

Episode-file-03

 

 言うなればかなりの極限下で、かつ、かなりの悲壮な覚悟の下に血を吐く思いでぶちまけた、それはだ。

 知らぬ間に全裸スッポンポンのまま、無機質で頑丈な病院のストレッチャーよろしくした担架の上に担ぎ上げられていた、この自分からしてみれば。

 だがここは間違っても病院などではないのに……!

 かくしてその訴えは見事に叶えられたようだが、を相手の挙動から察して、顔つきに不安が広がる裸の大将、ならぬ、マッパのオタクだ。

 無表情に近い真顔でとだけうなずく村井むらいはいずこか背後へと頭を巡らせる。

 これに部屋の真ん中に置かれたストレッチャーの反対側に立つ女性、確かとか名乗ったはず、神楽かぐらが静かに了解して応じる。

 おそらくは先輩であろう相手に気をつかってのことなのだろうが、これに村井は構わないとみずからその場を離れるのだ。

でしたらば、わたしが用意しましょうか? そちらはあいにくとここには入りきらなかったので、この外に置いてありますから……」

「構わない。。この彼のでかい体躯たいくにあわせて作られているからなおさら……! ならば君はこのストレッチャーを邪魔にならないよう、この部屋の片側に寄せておいてくれ」

「わかりました」

「え、? じゃなくて? やだな、って何が出てくるの? あっ、おれ、もう降りたほうがいいですか??」

 病人よろしく担架の上に寝かされてはいたものの、別段どこにも異常はない。

 服を着ていないこと以外は五体満足でいつもどおりしているのだから、そう思わず聞いてしまうとかく根が素直な青年だ。

 それには無言で担架をみずからの背後の壁際へと移動させる女性監査官、神楽はてきぱきと配置換えを完了させる。

 ただそんな無愛想なさまでもちゃんとこの上にじぶんが乗っかっているのを考慮してか、慎重な手つきで移動担架ストレッチャーを動かすのを見つめる小宅田オタクダだ。

 それだから気まずげなさまでも、この股間のが反応しないようにと手のひらに圧を加えたりする。

 幸いしゃれっ気のないメガネでその素顔が隠されていたが、メガネを取ったらけっこうな美人なのかなと思わせる雰囲気があった。

 意識したらマズイのでただちに視線を逸らす童貞くんだ。

 一度殺風景な部屋から姿を消した男の自衛官とおぼしきは、またすぐにもとドアを開けて入ってくる。

 その時には両手に小型のストレッチャーみたいな台車をたずさえて、部屋の片隅かたすみに控えていた後輩の女性自衛官らしきをともないながら、このすぐ目の前までと音を立てて歩んでくるのだった。

 そのさまをただぽかんと見つめるのふとっちょくんである。

 怪訝けげんな眼差しを真顔のおっさんに向けてあぐらをかく。

 もはやきちんと正座だなんて馬鹿らしかった。

 そんな不作法者を気にするでもなくした当の中年、村井はみずからが持ち出したモノを指し示す。

、きみ用の専用装備はすべからくがこちらで用意してある。見ての通りだ。さあ、遠慮せずに着てくれたまえ」

「…………? え、なんスか、?? おれ、が欲しかっただけなんですけど? なんかやけにかさばるけど、これってみんななの? なんで??」

 見た目きれいに畳まれているが、きっと広げればなのだろう。

 おまけにこのじぶんみたいなの、たっぷりとしたボリューム感の。

 それにつき目元がだいぶ引きつり気味のいまだ全裸の青年に、男の背後から悪気もなくしたメガネ女子がさりげない説明をよこしてくれる。

 聞かされる側からしたみたいなヤツをだ。

。見ての通りで結構な税金が投じられていますが、気にせずにおしになっていただければ? この世であなただけの、まさにですから……!」

「あのぉ、ツッコミどころが多すぎてもはやまともに口を聞く気にもなれないんですけど、? このおれがここで寝ているあいだ? だからこんなマッパなの? この世にプライバシーなんて概念はもはやなくなったの?? ついでに人権とかも??」

 顔つきが苦み走るばかりのオタクに、すぐこの正面に立つ監督官がたちまち破顔はがんして応じる。

 ただしこちらも大概たいがい、ふざけていた。

「ハッハ、まさか、馬鹿なことを言わないでくれ! つい今のさっきで、こんな急に作れるわけがないだろう? モノは全く違うが、言うなれば空自のパイロットがジェット機に乗り込むような正規のフル装備のパイロットスーツだよ? 。そちら向きの! その際、のだから? よってあとは実働試験あるのみだ。さあ、まずはそのパイロットスーツの装着を。すぐにも実戦が控えているのだから!」

「この国はいつからこんなにぃ? 待って、これって着たらマジでヤバいやつなんじゃ? 着なくてもヤバいけど、おれはほんとにが欲しかったですぅ! で構わないからぁ!」

「いいえ、を投じてあるのだから、それはありえません。だからこそ監査官としてこのわたしも見定める必要があるので、、あなたもすみやかに装着を願います。これは言うなればです。そしてもう時間がありません……!」

 またしても男の背後からのメガネのおねーさんの、反論の余地がなくなるオタク、もとい小宅田オタクダは半泣きでうなだれる。

「はあぁっ、人生ってこんなにもあっさりと終わりを迎えるんだ。おれまだ若いのに! パイロットスーツって、おれはただのしがないデブのオタクですよ? てか、あんたらが言うって、そもそもなんなの???」

「いいから、まず着はてみたまえ。移動寝台ストレッチャーの上では危ないから、まずはここに降りて。着るのは簡単だから。最終的な目視のチェックをして、ただちにこの場を移動だ。現場は荒れているらしいからな!」

? 説明はなしっスか? てかこれ、ほんとにイカついな! マジでパイロットのスーツじゃん? いくらするの??」

 ただ真顔で見つめられて、しかたなく手にした装備品と向き合う青年だ。

 およそ、五分後――。 

「………………」

 このじぶん専用の装備品だという、やたらに重装備のパイロットスーツらしきものを、いやいやで着ることになるデブの青年オタク――。

 小宅田オタクダ 盛武モブは、あますところなくがっちりと固められたみずからのスーツ姿を見下ろして、言葉もなく立ち尽くしていた。

 正直、途方に暮れていた。 

 目の前のが言うとおり、着ること自体はそう難しくはないのだが、着た後が問題だ。確かにあらかじめだったとあって、着心地自体は悪くはない。むしろいいくらいだ。しっかりとなじんでいる。なんなら普段着?に欲しいくらいだ。いくらするんだろう? 

 もとい!

 気がつけばこんなわけのわからない格好をさせられてしまったおのれの境遇が謎すぎて、顔にひたすらに暗い影が走る青年だった。

 およそすべてが想定外過ぎる。

「…………? やたらにガッチリしてるんですけど? マジでガチのパイロットスーツじゃん! なんでおれが着てるの??」

 困惑の表情でおそるおそる目の前の背の高い中年男性を見上げるに、まるで感情が表に出ない自衛官? 村井は真顔で言うのだった。

、オタクくん、もとい、小宅田くん。加えてかくも協力的な姿勢を見せてくれて、まことに感謝する」

 

 内心で複雑な思いの小宅田は顔つきがなおのこと苦み走る。

 そんな本当に思っているのか怪しい限りの言葉に、と乾いた拍手が重なる。これも本気で思っているのかわからない、背後の若い女性自衛官のものだとわかるが、そちらには極力目をやらないようにして、正面の村井と向き合う囚われのオタクだ。  

「ま、まあっ、とりありえずを隠す必要がなくなったのはいいコトなんだよな? たぶんっ! でもなんかやたらにゴチャゴチャしてるけど、こんなのわざわざ着込む必要あるの? そもそもがなんなんだっけ……えっと……」

 おののいた眼差しを目の前に向けるに、平然とそこに仁王立ちする細マッチョの体格がいかにも自衛官してる村井は、ことさらに堂々と応じる。

 どこにも罪の意識はないらしい。おっかないこと。国家権力のなんたるかをまざまざと見せつけられる思いの小宅田こと、盛武モブだった。

「ふむ、どこにも支障はないようだね? アラート(警告)サインが出ないからこれにてだ。最後にいくつか質問はあったりするかね? 時間がないからそう長くはけないが、最低限度のQ&Aには答えよう。さあ?」

「えっ、ええ~~~? いや、わからないことだらけで、もはや何から聞けばさっぱりなんだけど、おれじゃないとダメなんですかね? この格好から見てわかると思うけど、おれ、さっぱり向いてないと思うんだけどなあ? ねぇ?」

 調

 そう言わんばかりにこのみずからのデブデブの身体をタプタプと揺らして見せる。だがこんな時だけ満面の笑みのおじさんときたら、文字通りオタクの言い分を即座に却下だ。

「問題ない。完璧だよ。オールグリーンだ。もはや君以外にありえない。税金もたっぷり使っている。わかるだろう? 逃げ場なんて、ない」

「はあっ、はああっ……! ほんとに泣いちゃうよ、おれ。あ、なんかって言ってしましたよね? それって……」

 半泣きで泣き言を言うデブ、もといモブに、忌々いまいましいことただちににもどる村井は、ひどく険しい眼差しだ。

「そのあたりについてはみだりに口にすることはできない。国家機密なのだから。むしろ実際に見てもらったほうがわかるのではないかな? の精神で君には何事にも邁進まいしんしてもらいたい。税金かけているんだから」

「うっさいな! おれはそんな金なんかひとつももらってないですからね! 実感ないし、だったらこのスーツ、こんなにガッチリ全身固めてるのに、なんですか? あとこの頭もさらしちゃってるし……!」

 目の前の台の上を探しても、頭にはめるメットや両手のグローブらしきはどこにも見当たらない。

 すると果たしてそこではじめて、かすかにたじろぐような困惑の表情をその顔に浮かべる監督官だ。

 そもそもでという響きも怪しくて仕方ないのだが、社会人で言ったらアブラの乗り切った働き盛りの中年オヤジは、さも口惜しげに何やらぬかす。

っ……! 申し訳ない。はじめに言っておくべきだったね? 残念ながら目下もっか、きみが頭にはめるヘッドギアはデザイン途上、もといでまだ少し時間を要するのだ。だが本来の運用にはさしたる支障はないだろう。今のところは……」

 聞こえだけはもっともらしげなのらりくらりした言いように、だが元からさしたる気がないモブは覚めた目つきでテキトーに聞き流す。どうでも良かった。なんなら逃げ道のほうがよっぽど聞きたい。

「へー……? じゃ、この手にはめるヤツもまだこれからなんスか? なんならそこらのホムセンあたりで売ってる、でいいような気がするんだけど?」

「いや、それでは傷つけてしまうだろう? きみの何より大事な、を……」

?」

 何の気なしに言ったセリフにことさらな真顔で返す村井だ。

 怪訝な顔で聞き返すモブの表情がさらに曇った。

 それまで黙ってことの成り行きを見守っていた若い女性自衛官、監査官の神楽が背後からこれをいさめるのがまるで理解不能だ。

。それ以上は、にも関わりますので……!」

っ??」

 あんたらなに言ってんの?

 はっきりとこの顔に不信感が表れているのを、まるで歯牙しがにもけない目の前の公務員は、おまけ涼しい顔で話を勝手に切り上げる。

。それではいざまいろうか。きみの戦場はこのすぐ側にある」

「いや、まだなんにも納得どころか理解もできてないんですけど? できたら呼んでもらえません? その権利あるでしょ、今のおれには? 間違いなく!」

「いいえ、なにぶんに多額の税金が絡んでいますから。国家権力の前には残念ながら……ごめんなさい。ですがこのわたくしたちも国民の血税がつゆと消えないよう、最大限のサポートをさせていただく所存です。国家を揺るがす災害への防衛は、わたしたち自衛隊が身命しんめいして立ち向かうべき最大の使命です」

「おれ自衛隊じゃないですぅ! まだ入隊してないしぃ! 何やるのかもまだ知らないしぃ! 車の免許すら持ってないしぃ!」

「大丈夫。すべてクリアしている。こうして。よってそのあたりの書類は後日送付するので、すべからく署名してこちらに返送、わたしに手渡しで構わないから持ってきてくれたまえ。で構わないから。しょせんは便宜上だ。それより戦場がきみを待っている。さあ……!」

「お、おれのって、ひょっとしてだったりするのかなぁ……!?」

 非情の監督官の言うとおり、彼の戦場はそこから歩いて、――。

            次回に続く……!

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変態機甲兵〈オタク・ロボ〉 ジュゲム file-02

アキバで拉致られババンバン♪ ②

Episode-file-02

 目を覚ますなり思わずを上げてしまった――のは、そこがまったく身に覚えのない知らない場所だったからであり、それまでの経緯がさっぱり不明で、かつ、見知らぬベッド?の上に正体もなく横たわっていたこのみずからが、あろうことかだったからだ。

 それは寒いのもしごく当然!

 パンツすらいてないすっぽんぽんの自身のは、小さくすくみ上がっているのが見なくてもそれとわかる。

 もとい、体型が太っているので位置的に見えなかった。

? ?? っ、!?」

 知らない灰色の天井から、この視線を真下に落とすとこの視界の中にが見て取れる。

 強い視線が感じられた。

 無論、知らない人間だ。

 おそらくは仰向あおむけに横たわるおのれを間近から見下ろしている。

 あいだにじぶんをはさんで左右に分かれて立つ内の、すぐ左手に立つのが男で、ちょっとだけ距離を置いた右手にいるのが女性の影だとその細いシルエットから理解できた。

 そう広くもなさそうな薄暗い室内で、ぼんやりしたふたつの影が、こちらを……!

「だっ、だっだっだ、っ!? え、おれなんで! !? てか!!?」

 完全にパニックにおちいっている素っ裸すっぱだかの青年に、対する二人の謎の人物はしごく落ち着き払ったさまで応じてくれる。

 その冷静なありさまも含めてびっくり仰天の彼を見ながらに言うのだった。

「お、ようやく目を覚ましたな? ふむ、いささかのようだが、まずは鎮静剤ちんせいざいでも打ったほうがいいものかな? このオタクくんは……」

!? ナニ言ってんの? てか、そもそもでなんだって!? !!」

 のっけっからただならぬ気配と危機感に仰向あおむけのままで身体を硬直させる青年だが、それをもう一方から見つめる細い人影が静かにいさめる。

 ただし言っているのはじぶんにではなくて、むしろこの間近に立つ男にであるようなのに、ちょっとだけ心拍数が下がった。

「いえ、その必要性はないものと思われます。、あまり強行な手段はみだりに講じないように願います。職務とは言え、後々にだと疑われる行為は、見過ごすわけにはいきませんので……!」

「わかった。留意りゅういしよう」

! 待ってよ、ここどこっ、なんでおれはなの!? おじさんさっきから真顔で怪しすぎるって!!」

「あとちなみに、わたしはおじさんではない。その点は留意してもらたいな。こう見えてちゃんとしたがあるんだ。つまるところでそう、オタクの特任パイロットの、 〈オタクダ・モブ〉くん、きみと同じでな?」

「オタク?? え、おっ、お、? なんで?? まったく知らないおじさんなのに? あと、そっちは??」

 当たり前みたいな顔でズバリ、おのれの名前を言い当てられてしまい、ひたすらキョトンとするまだ若い男子は、こわごわとふたりの大人たちを見上げる。

 およそ三十代半ば過ぎの男と、もっと若いお姉さんぐらいかとだけ認識して、それ以上は思考が停止していた。

 この見た目の格好からだけではそれが何とは判別できない。

 しがないフリーターであるじぶんとはまるで別世界のお堅い仕事柄の格好であることだけは予想がついたが……。いかんせん、普段からスーツ姿の仕事人とは会うこと自体が希な職域で生きながらえているこのじぶんだ。

 相変わらず真顔のまじめな社会人らしき人間たちを目の前にして、ちょっと引いてしまう情けのないじぶんを、こんな時にも意識してなおのこと身体が硬直する。

 それに……?

 とみずからのありのままの姿を改めて見るにつけ、ギョッとして跳ね起きて仰向けからただちに正座へとこの姿勢をただす。今さらながら。

 それまですっかりけっぴろげにしていた、このみずからの股間を両手でしっかりとガードしながらだ。

 そう、特に右隣のお姉さんの視線から……!

「あっ、あっ、ああ! !! ひいっ、もうやだよっ、こんなカッコで!? おれどうしてなの? おれなんか悪いことしましたっけ!!? あとこのおじさん返す返すも誰ぇ??」

 半泣きでパニックしながら涙目で見上げてくる若者に、ちょっとだけ困り顔になる中年の男は、咳払いして鷹揚おうように応じてくれた。

 悪い人間ではないのだろうか?

 この状況ではなかなかに判断がしがたい。

「おほんっ! まあ、気持ちはわかるが、少し落ち着きたまえ……! 見ての通りで、わたしは怪しい者ではない。とは言え一口ひとくちには説明がしがたいので、この場ではあえてはぶかせてもらうが、とりあえずとだけ答えておこう」

 しれっとした語り口で何やらやけに都合のいい申し開きに、どこにも合意なんてものができない裸の青年はひどくいじけた物言いになる。

 できたらパンツが欲しかった。

「えっ……は、省いちゃうんですかぁ? でもおれからしたらぁ、一番知りたいことなんですけどぉ……! それになんでマッパなのかぁ、さっぱりわからないんですけどぉ、これも省かれちゃうんですかぁ? あとそっちの若いお姉さんの視線がぁ、すっごく気になるんですけどぉ……!!」

 みずから村井と名乗る男のことよりも、むしろ右手に立つ女子のことをよっぽど気にしているような青年の返事に、やや肩をすくめ加減の中年男性だ。

 仕方もなしにおのれの正面へと視線で何やら促すのだった。

 するとこれを了解した当の若い女子が、落ち着きはらったさまでみずからの口を開く。

「ごめんなさい。驚かせてしまったのならば、この通り謝ります……! ですがここはれっきとした国の正規の施設で、詳しいことは省かせてもらいますが、あなたの身柄は安全に確保、もとい、保護されています。ですからどうか安心して、そんなに緊張しないで……」

「やっぱり省かれちゃうんだ? この状況でそれは無理というものでは……なんかマジで泣きそう……!」

 がっくりとうなだれるのに、男がまたまじめな顔でもっともらしげなことを付け加える。

「そんな状態でなんなのだが、君の安全は保証する。我々に関しては機密事項が多いのでそう多くは語れないのだが、とりあえず、とだけは明かしておこう。どうかな、少しは納得ができたかね?」

「え、? それってまさか、あの、……みたいな?」

 めちゃくちゃどん引きしていた青年の青い顔が、ついには驚きにより真っ白へと変わる……!

 泡食ったさまで男へと向き直った。隠していた股間がおろそかになるほどの動揺ぶりで正座の姿勢が崩れてしまう。背後にどっと尻餅ついて、うわごとを発するようにわめくのだった。

「そっ、それっていわゆるでしょう!? 昨今のSNS界隈かいわいで話題が持ちきりの!! マジでヤバいじゃんっ、おれ、このまま行方不明でどうにかされちゃうの!? とか、とか!?」

 寒さだけではなしにガクガクと震えるのに、対してこれを見下ろす男は、いまだ落ち着いたさまでかすかにため息をつく。やれやれとでも言いたげにかぶりを振って、ぬけぬけと言い放った。

「……フフ、さすがはオタクくんだな? 情報がかなりかたよっている! きみ、それは世間一般に流布るふされるそれこそというもので、実態はまるで別のものだ。当然だろう? まあ端的たんてきに言ってしまえば、! どうだ、納得がいったかね?」

「なおさらヤベーじゃんっっ!!? あ、わわわっ!! 見ないで!!!」

 たまらずに大股おおまたおっぴろげてがなってしまうのに、もう一方の無言の女子の冷たい視線に慌てて太った身体を縮こまる。相手はメガネ越しでこのレンズの反射具合では視線の向きが定かでなかったが、今のはもろに見られていたはずだ。

 こんな真っ裸ではこのちんちんどころか尻の穴まで見られかねないと、うめくような泣き声が漏れ出た。

っ……! ひととしての尊厳が保たれないよっ、こんなんじゃっ!? まじめな話なんてできっこない、てか、これってまじめな話し合いなのっ!!? まずは服を返すところからはじめてよっ、あとおれのおサイフとかケータイとか、人権とか、んですけどっ!!?」

 悲壮な表情を男へと向けると無情な真顔の自称、監督官、ないし自衛官は覚めた調子で答えるばかりだ。

「無論、まじめな話だよ。きみの衣服や所持品についてはちゃんとしかるべき場所に保管されているはずだ。おそらくは。あいにく我々の領分ではないのでしかるべき人間に掛け合ってもらいたいのだが、。心配はいらない」

「…………って、こういうコトを言うんだ? おれもうんでますよね??」

 意気消沈して傍らのお姉さんに目を向けるに、相手は気の毒そうに無言で静かにこの顔を逸らした。本気で救いがない。そんなところに男がを畳がける。どうやら厄日みたいだ。

「話を本筋に戻そう。意味もなくこんなことになっているわけじゃないのだ。我々の目的は、そんなうさんくさい都市伝説やネットの風説とは無関係な、実社会に基づいたあるべき社会活動なのだから。ではそれにつき、、きみも聞き及んでいることだろう?」

「? なんのことですか? おれ、どっちかっていったらオールドメディアよりもネット派なんですけど?? まずこの状況をどうにかしようと思わないんスか? おれいつまでハダカなの?? じゃあもうこの隠さないスよ?」

「隠さなくていい」

「ダメだろっ! すっかりパニクって興奮しちゃって、アソコがひとさまに見せられないくらいに暴れちゃってるんだからっ!! おねーさんはできたら部屋から出てってくれません? せめて背中を向けるとか??」

 懇願こんがんする青年に、真顔で見下ろすあまり見かけない色合いのスーツ姿の女子は、にべもなくこれを完全拒否の構えだ。

「ごめんなさい。それはできないの。わたしにはとしての職務がありますので。申し遅れました。あまり多くを語れないのですが、わたくしは監査官の神楽かぐらとだけ名乗っておきます。今はそれだけで、徐々にこの壁を埋めていきましょう」

? があるんスか、まあそうか、こんなだもんね? おれ……」

「話を戻そう。ネットでも話題は尽きないはずだから、お互いの認識はそう違わないはずだ。君の今後にも大きく関わる……!」

「おれのはなしはマジで無視なんだ。もうどうでも良くなってきた。監査官てちんちん見るのが仕事なんですか? その真顔はマジでキツいです。見せたらプレイになっちゃうからおれの尊厳がどうにかなっちゃう! ただの変態じゃんっっ!!!」

 もだえるマッパを見下ろして監督官と名乗る男は真顔で言い放つ。

……! この言葉はすでに聞き及んでいるだろう?」

 まったく浮かない顔で応じる青年、このまわりからオタク呼ばわりされる小宅田はちょっと不機嫌に文句を垂れる。

「それこそじゃんっ! よくわかんないイタズラとか凶悪犯罪とか、いろいろと頻発ひんぱつしていて、警察が苦戦してるのは知ってるけど、犯人も動機も原因もまるでわからないんですよね? むしろあえて隠してるみたいな? で、そこにとうとう自衛隊までもが関与し出してって……それで今のこれなの?? うそでしょ」

「きみがオタクで良かった。じゃ、そういうことで、さっさと話を進めさせてもらおう。何だね?」

 奈落の底に突き落とされたみたいな絶望の表情で見上げてくるオタクにどこまでも無表情に相対あいたいする無慈悲の監督官、村井だ。

「ああっ、おれ、マジで詰んでる! 返す言葉が見つからないよ、ムリだって……おねえさんにも見られてるし。ああ、でもちょっとだけ落ち着いてきたから、せめて言えることだけ言っておこう……! あのっ……」 

 いっそ泣き崩れてやりたいくらいの心持ちをどうにか立て直して、自称・自衛官にすがるような眼差しで訴えるのだった。

 せめて一言――。

っ……!」

 風邪ひいちゃうと涙ながらの訴えに、果たして男は無言でうなずくのであった。

 めでたく合意がなされたでも言いたげなのに、とつもない不安が押し寄せるオタクの青年なのだった――。 

         次回に続く……!

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変態機甲兵〈オタク・ロボ〉ジュゲム

デブのオタクがある日いきなり拉致られて、国を救うロボのパイロットにされちゃいましたw 誰か助けて! 動力がエロでアレを強要されてます!? オナニックバトルヒーロー爆誕!!!

 ひどいなwww  とにかくやっていきます。
 かなりきわどい下ネタ強めのおふざけお下劣ギャグノベルになりますので、そういったものが苦手な方はスルーでお願いします。ワードプレスないし、グーグル・アドセンスのコンプライアンスに引っかかるようになれば、おのずと自粛されるコンテンツとなります。たぶん、大丈夫だとは思われますがwww
 ちなみにこちらはいわゆるドラフト、下書きで、完成品は小説家になろうなどの投稿サイトで公開したものが完全版となりますwwwwww
 ちなみにファィル03まではなろうで組んだ本文をそのままこちらに移植したもので、うまいことルビと傍点が振られていますが、04以降はルビや傍点なしのベタの文章となります。従ってこの誤字脱字もそのままでありますが、ご容赦くださいm(_ _)m
 なろうのほうでは修正済みですwww

変態機甲兵〈オタク・ロボ〉
    ジュゲム

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Episode01
アキバで拉致られババンバン♪

 Episode-file-01

 暗かった。

 そこは、ただ、ひたすらに……!

 そんな暗い中に、どこからか、が、響いていたか……?

〝あれ、暗いな……? おれ、どうして……?〟

 うすらぼんやりとした意識の中で、ただぼんやりと考える。

 だがまるで考えがまとまらない。

 そんな中、どうしようもなくして、まわりのだけに耳を澄ました。

 どこか遠く、かすみがかった声が、何かしら言っているのだけはわかったから……! 

「…………くん、見たまえ……! これが……だ。どうだ……見るのは……かね?」

 どうやらの後に、今度はがするのがかろうじてわかった。

「…………はい。はじめて……ました。これが……実物の……なのですね……!」

「そうだ。これぞ……純度100%の……だ! そう……しかし……こう見るとやけに……」

「ええ……そうですね……! ちょっと、してきました……だって、……の……を、正直、……なので……!」

 ところどころにしか聞き取れないが、何を言っているのかさっぱりなのに、ぼんやりした中でもはたと首を傾げる。

〝え、なに……? なにを、言っている、の……??〟

 暗闇の中に、なぜか急に肌寒さみたいなものも感じはじめる。

 ちょっとずつ、この身体の感覚みたいなものも覚えはじめて、冷たくて硬いものが背中に当たるのも意識する。

 ベッドにしてはやけに無機質で真っ平らだったが……?

 何がなにやら、ほんとうにさっぱりだ。

 ぼんやりとした中でまわりの声がやけに鮮明に聞こえる。

「そう……見ての通りで、個体としてはまだ若いな。? さいわいにも。へんにトシを食っていると何かと気をつかうから、このくらいが丁度ちょうどいい!」

「……そうなのですか? なにぶんにはじめてなので、さっぱりわからないのですが……やっぱり若いほうががあったりするのでしょうか?」

「もちろん! そう、特にが……! まあして知るべしだ。ただなにぶんにみたいだがな、この個体のは? とりあえずであれば問題ないのだろうが」

「はい……、のですか、って? いいえ、なにぶんにはじめてなのでなのですが、でしたらそのように心得ておきます」

はこの程度で、はそうでもないのだろうかな? あまり期待はできないが、望ましくはそれなりのであってほしい。せめてな?」

「はい。でもいいんですか、こんなにと見てしまって? いくら意識がないからと言って、いささかプライバシーの侵害のような……」

「構うまい。じきに目を覚ますさ。それまでにしっかりと検分けんぶんしておけばいい、君はそれが職務たるなのだから?」

「はい。そうですね……」

 いまだぼんやりした頭の中に疑問符ハテナ渦巻うずまく……!

〝え、なに? 何を、言っているの? って……?〟

 やけに寒く感じるこの身体に、何故か間近から視線のプレッシャーのごときものを感じる。

 特にそう、この下半身、しかもそうだ、まさにのあたりに……?? 

 それから続く男女の会話に、いよいよ頭の中が混乱を極める。

「それで、その、が重要なとなるのですよね? でしたらこちらは、学術的には、どのように呼称すればいいのでしょうか?」

「……ん、とは?」

「その、ですから、この場合は、いわゆるその……と、その……と称するのが妥当なのでしょうか? はどちらになるのですか、両脇の球状のふたつと、都合この真ん中にある、いびつな形状のひとつのものと?」

「ん? 本体は、この当の本人、この個体、となるのじゃないのか? 呼び方は、もうフツーに、ないし、もしくはとかでいいんじゃないのか? こんなもの!」

「はあ……ち、……! ちん…………!!」

 何やらためらわれがちな女性が息を飲む気配に、なんだか非常に気恥ずかしい感覚を覚えて、自然とこの手が股間のあたりにゆく。

 まさしくそのものを手のひらに感じて、おぼろげだった意識が急激に覚めてゆくのを自覚――。

 すっかり小さくなっていた。

〝ちんちん? ちん……ぽこ? チンポコ!?〟

「なっ! は、わっ、わああああああっ!?」

 パッと意識を取り戻す彼は、だがその場の状況がわからずに目を見張ったきりにしばし硬直してしまう。

 絶句すること、およそ十五秒……!!

 たっぷりの間を置いて、またと絶叫を発する。

っ、っ!!?」 

 めでたく覚醒するのであった。

             次回に続く……!