アキバで拉致られババンバン♪ ⑥
なろうとカクヨムで公開中のジュゲムの下書き版です! ノベルの更新に重きを置いて、挿し絵はもはやかなりテキトーになりますwww
ゴ、ゴゴゴゴゴッーーーンンンッ……!
期せずして、固く閉ざされたコクピット・ハッチ――。
金属製の分厚い装甲板は、人間の手では押し返せないだろう。
それきりに静まり返った半球状型の室内に、みずからの息遣いだけがやけにはっきりと意識される。
「ぬっ、ぬしっ…………!?」
ついさっきまでののほほんとした雰囲気が一転、異様な緊張感に包まれる戦闘ロボ?のコクピットだ。
今や完全に外界と隔離隔絶されてしまった密閉空間……!
そこで謎のおやじと対峙することになったオタクは、ひどい困惑顔で言葉に詰まるのだった。無理もない。
何しろここはよく分からないロボの操縦室で、よくわからないままにパイロットスーツを着させられたじぶんが、よくわからないままにこの操縦席に座らされて、挙げ句になんだかさっぱりわからないおじさんと、何故だかこうして向かい合っている……。
は??? である。
およそ筆舌に尽くしがたい状況だ。もはやどこをどう取っても、何人たりとも理解不能! 控えめに言っても詰みだろう。
とにかくしんどい。
とは言えここで降参しても事態は何ら変わらないのは明白。背もたれにしっかりと上体預けて眼前の強敵と向き合うデブだ。
はじめひとりきりだったはずなのに、おじさんはどこからともなくいきなり出現した言わばちん入者だった。
少なくとも呼んだ覚えはない。
そう何しろ当の本人は、のっけから言動が粗野で横暴!
バリバリにマッチョのあからさまな体育会系気質で、このモブが一番苦手とする部類の人種であるのだから……。
強いて老害とまでは言わないまでも、こんなの間違っても味方じゃないだろうと猜疑心の塊みたいな目つきで、ずっと年上のおまけ高飛車なおっさんを見つめる。
じいっと……!
じぶんと同じパイロットスーツを身につけているあたりから、おそらくは自衛隊の人間なのだろうか?
「自衛官? うそでしょ、こんなのが! おまけになんか、ぬしとか言ってるし……?」
焦燥感と共にもやもやした感情がこの胸の内を占める。
相手の出方を見ていてもこれと目立った動きがないので、仕方もなくこちらから言葉を発していた。
「…………おっ、おじさん、だれ? なんでそこにいるの??」
ぶっちゃけわからないことだらけなのだが中でも一番の疑問点だ。警戒心をまるで隠しもしない険しい表情で聞いてやるに、偉そうに腕組みなんかして後部座席にでんと陣取ったその人物は、口元にニヒルな笑みを浮かべてこちらを見下ろしてくる。実際に高くから見下ろされてはいるのだが、あからさまな上から目線にちょっとイラッとくるモブだった。
このじぶんと同じパイロットスーツを着込んでいるのがむしろ怪しい。でもどうやらビミョーに色違いみたいだな?と思ったあたりで、やっと角刈り頭のおっさんはこの口を開いた。
「なんでもナニも、はじめからここに居たと言ってるだろう? おまえが気づくのが遅かっただけだ。この寝ぼけ小僧が!」
「ね、ねぼけっ? いやいやいやいやいやっ! 寝ぼけてなんかないって!! ちゃんと見たもん、おれ!! はじめはいなかった! こんなふざけたおじさんどこにも!! 寝ぼけてたってわかるじゃんっ、こんな加齢臭がキツそうなこきたない中年!!」
「まず世の中年みんなに謝れよ? 今どきはアウトな発言だろう、やっぱり寝ぼけていやがるな! おっし、じゃあツラ出せ、そのパンパンに肥えた肉まんヅラ往復で優しくビンタしてやるから、それで目が覚めるだろ? それこそパンパンってな!」
「優しくってなに? うそつけ、そっちのほうがアウトじゃん!? タチが悪いよっ!! おれ言っておくけど暴力に対する耐性ゼロだから、そんなことされたら一生使い物にならなくなるよっ? もう黒歴史化してるけど身内のコネで入った上場企業だってそれで一発退場してるし、この体格の人間が無力化したら誰にも手に負えなくなるんだからねっっ!!!」
「やかましいっ、その腐った根性叩きなおすならなおさら力ずくしかねえだろうが! おまえ、世の中をなんだと思ってやがる? おまえを中心に回る世界じゃねえだろ、ちっとは我慢なり努力なりを覚えろ。せめてまだ若くて足腰がちゃんと立つ内に!」
「こんな得たいの知れない不審者なんかに言われたくないっ! まずじぶんがなんなのかはっきりさせてよっ!! おれはおれなり頑張ってるし、奈により今はこんな訳わかんないことになってるし!! おれこの被害者ポジションは死んでも死守するよ!!!」
売り言葉に買い言葉だ。かなりしょうもない。オタクとオヤジがやかましいラリーをひとしきりやってから、顔を上気させて荒い鼻息をつくモブに、見下ろすおやじはこの肩をすくめさせる。ため息もついたか?
「ふうっ、呆れたデブだな。死んだら死守もへったくれないだろう? まあある意味、見上げたもんだが……おい、褒めちゃいないからな? ふん、それじゃ改めて言ってやるが、さっきも名乗ったとおりだぞ? おれは見て野と売りで、ここの主だ。以上!」
ただちにラリー再開かと思いきや、頭から湯気をだしそうなでぶちんが何やら思いついたか、特徴的な太い眉をひそめて顔つき怪訝にする。正体不明の男は背中を背もたれに預けたままでアゴまで突き出す。完全な上から目線だ。おまけにまたため息。
「ぜんぜんわかんないじゃんっ!! なんにも名乗ってなんかいないって! あ、じゃあじゃあ、ひょっとして、ぬしさんて名前なの? キラキラ名字? ならせめて大名とか将軍とか公家さんとか、ほかにいくらだって……」
「はあっ、たく! このデブ、ほんとうに寝ぼけてやがるのか? そんなわけがねーだろ。いいや、ならまずはてめえの名前から名乗ったらどうんなんだ? おれはまだ聞いてないぞ。初対面の相手に対する礼儀としてだ、減らず口のでぶちんくん?」
「礼儀っ? 不審者が言う?? おじさんみたいな社会不適合者の見本みたいな 言ったら一番ダメなヤツなんじゃない? 」
「ぐだぐだうるせーぞ。そんなだからでぶった身体に一発入れられちまうんだろう! 役立たずの大口叩きはサンドバッグにされるのがせいぜいだ。他に使い道がねーからな? おまえもそう思うだろう、顔に描いてある! いやっ、どうでもいいか……!」
「なんだよっ、減らず口はそっちじゃん! あとおじさん態度で大口叩いてるからね? なんでそんな偉そうな口をきけるのか理由が聞きたいよっ、体育会系の人間、ほんとにキライっ!!」
「わかったわかった! 態度がでかいのは生まれつきだ。諦めろ。あとおまえの名前についてはもちろん知ってる、とっくの昔にな? ちゃんとデータとして上がってるし……そうだ」
どこか遠くを見るような目つきになってどこともしれない虚空を見据えるおじさんだ。思わず背後を振り返るモブだが、周囲にはそれらしき変化はなにもなかった。
