ブサイクだった主役のクマキャラをリテイクしたのと同様、主役の乗るメカもリテイクすることになりました♡
主役のクマキャラ、「ベアランド」のこれまでの変遷…




主役メカ「バンブギン」通称:「ランタン」
主役メカの変遷…


ただいまリテイク中!!







ついでに主役のクマキャラが搭乗する船艦もデザイン!
航空重巡洋艦
「トライ・アゲイン」

高速機動 重巡洋艦
「イカロス」

航空母艦「ガーエル」

主役のクマキャラ、「ベアランド」のこれまでの変遷…




主役メカの変遷…












※今回から新しく第一小隊のメンバーになった、ブタ族のタルクスくんの乗るアーマーのデザインが決まりました(^^)

メインキャラなのに見た目が雑なモブキャラだった、メカニックマンの「リドル」くんのデザインを全身刷新しました!!

遅ればせながら、イヌ族の若手パイロットキャラ、コルクとケンスの搭乗する新型(?)の戦闘ロボのイメージ決定!ただしこちらは飛行型で、#021以降の陸戦型仕様とはちょっと異なりますw

#021
Part1

超弩級の大型軍用艦の広い艦内に、それはけたたましい音量のサイレンが鳴り響いた……!
耳をつんざき腹に響くような重厚な音圧は、それが現在、艦内全域が戦闘態勢に突入したことを知らしめるものだ。
それだから音の大小はあれ、今やブリッジから機関室まで、ところ構わず鳴り響いているのに違いない。
そしてそれはまたもちろん、このパイロットたちが出撃を待つアーマーデッキにまでガンガンと轟いていた。
「いくら臨戦態勢とは言っても、今回はぼくらアーマー隊の出撃だけで、このトライ・アゲイン自体は動かないんだから、こんなに盛大に鳴らさなくてもいいもんなのにね……!」
みずからの大型アーマーのコクピットの中にその身をあずける第一小隊の隊長であるクマ族のパイロットが、そんな自嘲気味に言っては周囲のモニターに視線を送る。
分厚い何重もの装甲に閉ざされたコクピットの内部には本来、外部からの騒音など聞こえないものなのだが、スピーカー越しにははっきりと聞き取れるのだった。
そのほかの異音も、この耳には届いていたが。
正面の大型モニターの真ん中のあたりを四角く切り取ったウィンドウの中で、その真ん中に映っていた若いクマ族のチーフメカニックが、こちらもやや苦笑い気味に応じてくれる。
前面の天井に埋め込まれたスピーカーからそちらの音声が聞こえてくるが、この彼の声以外にも、サイレンやら怒鳴り声やらがやかましくまとわりつくのに、これを聞かされるエースパイロットどのもやや苦笑いだ。
「はい。ですがこの警報はじきに止むものと思われます。とりあえず今回の作戦のメインとなります、第二小隊のアーマーが各機出撃しましたら……!」
そう言いながら何かしら含むところがあるような表情のチーフメカニックのリドルに、したり顔したニヤニヤが止まらないクマ族の若いパイロット、ベアランドは言ってやる。
「そちらさんは、いざ出撃するにもてんてこまいみたいだね? さっきからそっちでやかましくギャアギャアとわめいているの、イージュンだろ? さては第二小隊の隊長のシーサーと揉めているんだw ま、いつものことだよね?」
ちょっと困り顔ではぁとうなずくリドルは、みずからの背後、コントロール・ルームの二番滑走路の管制ブースを巨体で占拠してコンソールに食らいついては、今も怒鳴り散らしているベテランのメカニックマンに、ちらりと困った視線を投げかける。
やがて仕方もなしに真顔で返すのだった。
「……はい。じぶんはこちらの管制に専念します! はじめの予定の通り、そちらのセンターデッキからベアランド少尉どのが出撃、その後に一番滑走路から今回はタルクス准尉どのが、じぶんのビーグルⅣでの出撃となります! それではどちらも準備よろしいでしょうか?」
「もちろん! てか、今回は、じゃなくてこれからずっとだろ? リドルのビーグルは戦場での補給担当としてこれをタルクスがまんま引き継いだんだから。ちゃんと引き継ぎはふたりで済ませたんだよね?」
ただちにはい!とうなずくリドルの声に、右手のスピーカーからは新しく小隊に編入された、こちらはブタ族の若いパイロットの声が重なる。
「こっちも準備OKなんだぶう! いつでもオーライなんだぶう!! ちなみにこれがオレの初陣なんだぶうっ!!」
とっても陽気で元気一杯の返事に、対してこちらはちょっと意外げに聞き返すベアランドだ。
「へえ、初陣って、戦場にアーマーで繰り出すのはこれが初めてなのかい? 大丈夫かな……リドル、ちゃんとレクチャーは済ませてあるんだよね、その機体、とにかくいじくり回して機体制御がめんどくさくなってるんだろ? いかに補給機とは言え!」
正面のモニターに問いかけるのに、かしこまった若いメカニックマンはやや戸惑いながらの返答だ。
「は、はい! ひととおりは……ですが自分は本来のパイロットではありませんので、補給機としての機動所作だけであります。だからそれ以上のことは……」
「それで十分だよ。あとはタルクスがどうかにしてくれるだろ? 仮にもこのアストリオンの正規兵のパイロットなんだから」
「もちろんなんだぶー! バッチコイなんだぶうっ!!」
ちょっとおっちょこちょいな感じのノリの返事に、右手のモニターに映ったブタ族くんをちらりと見てしまう隊長さんだ。
モニターに映ったその顔を見るには、初陣とは言いながらどこにも余計な力が入っていない慣れたそぶりで余裕綽々の表情のブタだ。ちょっとだけ肩をすくめて小声で独り言を漏らす。
「ま、基本は補給活動だもんね。そっち向きの訓練はきっちり受けてるわけで、無茶するわけじゃないから。あれ、本来のタルクスのアーマーって、いつ頃届くのかな? あと他にも援軍が来るってはなしだったけど……」
ちょっと考え込んでいたら、サイレンや怒号の中に混じって、何やら気の抜けたようなおじさんの声までも入って来た。
正面のスピーカーからだ。

四角いウィンドウの真ん中に腰を据えるリドルの両脇に、いつからか半分だけ見切れたふたりぶんのパイロットスーツ姿があって、おそらくはこの白地に赤のラインの入ったクマ族のベテランパイロットのなまり混じりのセリフであった。
「隊長、今回はぼくらはお留守番でええんですかあ? なんやヒマで死にそうなんですけどぉ……」
そんなどこかおとぼけたザニー中尉の言葉に、半ば呆れ顔で返す隊長の少尉どのだ。
「死ぬことはないだろう? せっかくなんだから楽しんでおきなよ。あいにくで遊べるようなレジャーはないけど」
適当にうっちゃってやったセリフに、もう片方の白地に青のラインが入ったパイロットスーツ姿が、ダッツ中尉が答える。
やっぱり独特ななまり混じりでだ。
「はいはーい、ほなら、ヒマつぶしにおれらでぶうちゃんの監督をやっときますよって、隊長はこころおきなくじぶんのお仕事に専念しはってください! ひゃは、なんやごっつおもろいことになりそうやんけ、ぶうちゃん、ビシバシいくでえ!!」
「あ、それじゃよろしく頼むよ。そのタルクスは主にふたりの補給役になるんだものね! とりあえず第二小隊が出てから出たいんだけど、まだかかるのかな? えらい手こずってる??」
ちょっと不審げに聞くベアランドに、正面で問われた若いクマ族は苦笑いでまたちらりとだけこの背後に視線を向ける。
結果、何を言うでもなく肩をすくめさせるのに、それと了解する隊長だ。
代わりにまたこの場で気になっていたことを聞いてやった。
「ああ、そう言えば、シーサーたちとは別働隊で出撃することになってた、あのゴリラくんとネコちゃんのコンビはどうしているのかな? ひょっとしてもう出撃していたりするのかい、あのどっちも正体不明の謎のアーマーで? こっちのシーサーたちがもたもたしているあいだにさっさとさ?」
これにまたしても困惑顔する若いメカニックマンは、本来のアーマー部隊を統括指揮するクマ族の隊長を前にやや言いづらそうに言ってくれた。
ちょっと目をまん丸くして聞くベアランドだ。
「ああ、はい。そちらのおふたりでしたら、もう既に甲板後部のリフターデッキを使用して艦外に出られております! 加えておふたりいわく、第二小隊とは連携を取らない完全に独立した部隊として行動するとのことで、こちらからの管制もあまり聞き入れてはもらえませんでした……!」
「あ、そ、みんな勝手だなあ! あれ、でも艦の守備隊や飛行部隊が使うようなあの射出型のリフターじゃ、せいぜいこの甲板の上の屋根に登るってだけのことじゃないのかな? どうやってそこから目的地に向かうんだい??」
「はい。もともとどちらも本艦デッキのカタパルトを使用できるような機体ではありませんので、本来なら緊急発着用のアンダーデッキから地上に降りるのが相当なのでしょうが、なんでもその、ショートカットをするとのことでして……」
自分で言いながらもなおさら困惑顔するリドルに、なおさらきょとんとした顔で聞き返すベアランドだ。
「ショートカット? え、何を言っているんだい??」
心底不可解げな隊長に、ひたすら困惑するばかりのメカニックだが、この横からベテランのパイロットが助け船を出す。
「ほえ、ほれ、小僧くん、説明するのはしんどいから、むしろ見てもろうたほうが早いんちゃう?? それしかないやろ、今ちょうど、その最中なんやし……!」
ザニーにそう促されて、仕方も無しに手元のコンソールを操作する若いクマ族だ。微妙な顔つきで言いながら、四角くくりぬかれたウィンドウの画像が、がらりと別のものに切り替わる。
「そちらは本艦ブリッジからの映像になります……! ええ、見ての通りで、二機のアーマー、艦の甲板の屋根から崖に飛びついて、そちらからさらにこの西側の断崖と山を超えてゆくものだと思われます。むちゃくちゃですね……」
「あらら、素直に地面のルートを伝っていくんじゃなくて、山越えで文字通りのショートカットをしようってのかい? あんな切り立った断崖、アーマーで越えるのはムリってものだけど、実はその先にいい抜け道があったりするのかな? 山岳や丘陵地帯を大回りしないで平野まで突っ切れるのならば、それは確かに近道ではあるのだけど……?」
「じぶんにはわかりかねます……」
若いメカニックが困惑して返すさなかにも、二対の戦闘ロボは器用に断崖を登って、その先の林の中へと姿をくらましてゆく。
この一部始終をのんびり眺めながら、とりあえずで了解するベアランドだ。
「ブリッジの艦長はどんな顔してこの映像を見ているのかね? まあいいや、現場で合流すればいいことだし、上空から見ていればちゃんとモニターできるよね! 今回はこのふたりのお目付役で、この実力のほどをそれとはかるのがぼくらの役目だし。リドルもこちらからの映像を見て確かめておいておくれよ? あとついでに、ザニーとダッツも!」
「了解!」
正面の映像がふたたび切り替わって、元に戻ったコントロールルームの中でピシリと敬礼するメカニックマンだ。
なんならあのイヌ族の博士さんにも見てもらいたいくらいだが、あいにくと当人はみずからの研究室にこもっているらしい。
さてはじぶんの研究対象以外にはまったく興味はないらしく。
そうこうしているうちに、あんなにかまびすしく鳴り響いていた警報が、今やぱったりと途絶えていた。
どうやら第二小隊のオオカミとイヌ族コンビがようやく出撃を済ませたものらしい。
お次はじぶんの番だと了解するクマ族の隊長は周りのモニターから余計な情報を削除して、前面のメインモニター一杯に大写しで映っていた正面のアーマー射出口が開いていくのを視認する。
先に見えるのは乾燥地帯の枯れ果てた大地と、青い空だ。
空飛ぶ軍艦は今は陸地に停泊しているから、いつもと比べたらずっと低い位置からの出撃となった。
画面から消え失せて、今や声だけとなったメカニックが天井のスピーカーからはきはきと指示を飛ばしてくる。
「それでは今回はミッションの性質上、少尉どのはアーマーの強制射出システムを使用しないでの、自力での発進となります! ゲート、フルオープン確認、アーマーの各部ロック解除、各種システム、機体ともにオールグリーン、いつでもどうぞ!!」
「了解!」

コンソール手前で赤く灯っていたパイロットランプが、管制からのゴーサインと同時に緑色に切り替わる。
こちらもきっぱり応じてから、みずからの握る操縦桿を手元に引き寄せるクマ族の隊長だ。
それまで機体を固定されていたデッキからその巨体を持ち上げるアーマーが、そのまま微速前進、ゆっくりと正面口からこの外部へとせり出してゆく。
完全に艦の外へと離脱してから、特殊な飛行システムを搭載した大型の機体がさらにゆっくりと大空をめざして上昇してゆく。
一番最後に戦場に駆けつけるくらいでいい今回のような作戦なら、このくらいゆっくりとした立ち上がりでも問題はなかった。
背後から後続のブタ族くんの機体も無事に発艦したのを見届けて、目的のポイントへと向けて機体を回頭、そこまでまっすぐに突っ切るコースでアーマーを前進させるベアランドだった。
はるか足下に見える地面の荒野では、先行したウルフハウンドたちの第二小隊が丘陵地帯から早くも平野へと突入するのを確認もする。はじめのもたつきを完全に挽回する急ピッチだ。
何かと性急で強引なオオカミ族の隊長どのに、あの気弱な若いイヌ族くんたちが泣かされていなければいいなとやや苦笑いで思いながら、それ以外の周囲に視線を向ける。
肝心のふたりの傭兵部隊の姿を見失っていたが、それもこの先で見つけられるだろうと、意識をはるか平野の先でポツポツと見渡せる街らしきに向けた。
中でもこの一番手前に見えるものが、今回の作戦域となる予定のポイントであった。
通称・ポイントX……!
戦場まではそう遠くはない。
Part2

時刻はおよそ正午過ぎ。
コクピット前面の視界モニター一杯に雲一つとなく晴れ渡った青空が広がる。
空高くから広く平野を見渡せる高度にまで機体を上昇させて、この眼下に広がる乾ききった茶色一色の砂漠地帯の景色を眺めるクマ族のパイロットだ。
母艦の周囲を取り巻いていた切り立った山岳や丘陵地帯から抜け出して、今は緑のまばらな荒野に一本だけ長く走る灰色の直線、あまり整備の行き届いていない国道らしきを注目――。
やがてそこにふたつばかりの違和感を見つけることとなる。
広角のロングで捉えた画像の中ではただの小さな黒い点であったものだが、これをいざ望遠でズームアップすると、例のあの黒い不格好な二体のアーマーであることがはっきりとわかる。
道なりに荒野を西へとひた走る二機のアーマーの後ろ姿をしげしげと眺めながら、ちょっと感心した口ぶりの隊長さんだ。
「あらら、もうあんなところにいるよ、あのおふたりさん! 本当に基地の周りの山岳地帯をまっすぐ突っ切って平野に出てきたんだ。まいったね……!」
誰にともなし言ってやったセリフに、右手のスピーカーからただちに明るい返事が返ってくる。
「おれたちみたいな空を飛べる飛行型ユニットでもないのに山越えだなんてすごいんだぶう! おまけに今は陸地をすごいスピードで走っているんだぶう!!」
後続の僚機から発信されるごくごくのんきで陽気なブタ族の返答に、こちらもしごく素直にうなずくベアランドだ。
「ほんどだな。あんな見るからに特徴的なスタイルのアーマーで長い距離を移動できるのか不思議でならなかったんだけど、ちゃんとどっちも脚部に高速機動用のモジュールが仕込んであったんだ? でも見たところはやりのホバーなんかじゃなくて、いわゆる単純な車輪(ホイール)式の走行タイプみたいだね?」
正面モニターの画像からそうじぶんなりに推測してやるに、すると今度はこの背後につけた機体よりか、ずっと後方に控えている母艦のデッキから返事が返ってきた。
チーフメカニックの若いクマ族、リドルのものだ。
こちらでモニターしている画像やデータをまんまあちらでも共有しているので、同時におなじものを見ながらそれぞれに考察や解析ができるのだった。一緒にいるはずの居残り組のダッツやザニーはだんまりだったが、ひょっとしたら別の管制ブースで後ろのタルクスに絡んでいるのかもしれない。
「はい。じぶんにもそのように思われます! ですがその場合、タイヤの構成素材がなんであるのかが気になりますが? とりあえず舗装路だから可能なことなのかもしれません……!」
「つまりはあくまで市街地用の装備ってことか……う~ん、さすがにそこまではここからじゃ見分けがつかないな? あんまり近づいたら気になるだろうし、敵に居場所を教えちゃうようなものだからね? 実際に戦闘に入らなければ、おちおち近づいてモニターもできないよ。でもネコちゃんの機体はスムーズに走ってるけど、でっかいゴリラくんの機体は、なんか大変そうだな? ずっと上体よれながら必死に食らいついているような??」
ちょっと首を傾げながらの感想に、するとまたよそからこちらはおじさんの声で補足が入る。
あの二体の謎のアーマーに興味があるのは彼らだけではなかったようで、みずからが担当する第二小隊の出撃を無事に見送って、今やすっかり手ぶらになった中年クマ族のチーフ・メカニックマンだ。
それが何やら少し冷めた調子で言ってくれる。

「走行用の内部機構(モジュール)とは言っても、おかざりみたいなもんだろう。おれが見たところじゃ、どっちもガチガチの格闘戦を主眼に置いた機体だ。よってちゃちなお飾り程度のカッチカチのタイヤがせり出してるくらいなもんだな! 乗り心地は最悪だろうよ? 酔い止めは飲んでるのかね?」
冷めた視線でかなりの皮肉交じりの文句に、あいまいにうなずいて了解するベアランドだ。無言でも苦笑しているのが気配でわかる若手のメカニックも、おおよそで同意見なのだろう。
「まあ、なんでも機能を詰め込むのは限界があるからね? ムリでもなんでもあのくらいのスピードで長いこと航行ができるのなら、及第点なんじゃないのかな。今のところは?」
そうしたり顔して言ってやるのに、左のスピーカーからはやはり皮肉めいたおじさんのだみ声である。
「ああ。ただしメカニックの立場からしたら、あまりおすすめできたもんじゃありゃしないな。特にあのでかいゴリラくんの機体、あんなの無理矢理すぎて居住性が最悪だろ! およそタイヤの大きさが釣り合ってないんだよ、ケツが痛くて仕方ない」
「あはは……!」
反対側のスピーカーからリドルのお追従笑いみたいなものが聞こえるが、たぶんその通りなのだろう。
内心で思わず、お気の毒さま……!とそのモニターの中の二機のアーマーの後ろ姿を眺めるクマ族だった。
一方、その当のふたりのアーマー乗りたちといえば――。
激しく小刻みに揺れるアーマーのコクピット内で、大きな身体を前のめりの姿勢で正面のモニターに食らいつくゴリラ族のパイロットだ。
太い手足をシートやペダル周りに踏ん張らせて、身体の姿勢を保ちながら、ひたすらに目の前のモニターをガン見していた。
地図の上では主要な国道ルートとは言っても、実際はおよそでこぼこで道としての役目を果たしてもいない道なき道だ。
あいにく荒れ地を走るようには作られていないみずからのアーマーのちゃちな三輪型車輪機構では、ちょっと油断したらすぐにでもバランスを崩して転倒しかねない……!
額にイヤな汗を浮かべながら、必死に前を走る相棒のアーマーの後ろ姿を追いかけるが、ちょっと弱音を吐きそうだった。
だがそんなもの言ったところで、前の機体は振り向きもせずにさっさと行ってしまうのだろう。
長年の付き合いで、相手の性格は熟知していた。
ちょっとそっちに気を取られていたら、ガクンと大きく機体が揺れて、ただでさえ前のめりだった頭が思わず正面のモニターに突撃しそうになる。さてはくたびれてひからびた舗装路に大きめの亀裂(クラック)が走っていたのだろう。
思わず舌打ちして、ちょっと距離の空いた相棒の背中に向けて文句をたれていた。

「うわっと! なんだよ……うほ、あのさぁ、イッキャ、道にクラック走ってるんなら、教えてくんない? こっちはただでさえこんなバランス悪いのにムリしてるんだから、転倒しちゃうじゃないか。この速度だったら最悪、大破とかもありえるよ?」
なるべく内心のイライラを声に出さないようにお願いしたはずなのだが、前の機体からはかすかな舌打ちめいたものがして、その後につっけんどな返答が返ってきた。
おもわず眉間にシワが寄って、げんなりするゴリラだ。
「それはおまえが間抜けなだけなんだにゃ! 四の五の言わずにさっさとついてくるにゃ! 気付いていると思うが、背後で上からあのクマの隊長が見ているにゃ! 間抜けなさまは見せられない。できたらもっとスピードをあげて、あいつらを巻いてやりたいくらいなんだにゃ!!」
「それじゃこっちが置いていかれちゃうよ! まったく、山を越えたらショートカットだとか言っておいて、目的地まではさして変わらないじゃないか? ぶっちゃけあのオオカミさんの部隊のほうが早く着いているかもよ?」
「それはむしろこちらの思惑どおりなんだにゃ!」
ちっとも悪びれるでもないネコ族の返事に、ちょっと怪訝に口をとがらせて聞き返すゴリラ族のベリラだ。
「え? なんで??」
ふたりきりの部隊の中ではリーダー格となる小柄なネコ族、イッキャはニヤリとしてみずからのコクピットの前面モニターの中で太い首を傾げるゴリラ、もといベリラに返した。
「まずはじめはあのオオカミとイヌ族のコンビたちに戦わせておいて、敵の意識がそちらに向いている隙に、おれたちはこの背後から忍び寄って奇襲攻撃をかけるにゃ! まんまと挟み撃ちにしてやるのだにゃw 慌てたやつらは総崩れになるのにちがいがないのだにゃ! 楽勝なのだにゃ!」
「はあ~……! 相変わらずそういう悪知恵が働くよね? まともにやってもおれたちならそう苦労はしないはずなのに、あの上で見張っているクマの隊長さんはどう思うのかな? もはやコソコソしながらなのは性分なのかな、このおれたちの……!」
何やら自嘲気味な相棒のセリフに、まるで気にするでもないネコ族はしれっとした口ぶりで言ってくれた。
「要は勝てばいいのだにゃ! 相手は手負いの敗残兵なのだから、オオカミたちが正面で戦っている間に、裏からさっさとケリをつけてやるにゃ! このおれとおまえのアーマーの力を持ってすれば、簡単なのだにゃ!」
「だったらこんなこそ泥みたいなやり口でなくてもいいんじゃない? 前の陸軍基地を襲った時もそうだったけど、いちいちめんどくさいんだよなあ、イッキャのやってることって……!」
思わず思ったまんまを口にしたら、不意に前を走るアーマーがさらにスピードを上げはじめた。おまけに捨て台詞みたいな言葉を発して、通信を閉ざすリーダーのネコ族だ。
「おまえが何も考えないから、このおれが作戦を立てているのだにゃ! 文句は一切、受け付けないのだにゃ、おまえは黙ってこのおれについてくればいいのだにゃ!」
「あ、ちょっと、待ってって! そんなに急いだらせっかくのズボラ奇襲大作戦がうまくいかないんじゃない? てか、あの上で見ているクマさんたちのアーマーが目立って、はなっからそんなの成立してないような……? あ、だから待ってってば! 置いてかないでよ、イッキャ!!」
荒野をひたすらに走る二機のアーマーは、そのはるか先に目的地となる街、通称ポイントXがあるのをこの機体の頭部のカメラの視界に捉えつつあった。
Part3

今回のアーマー部隊出撃の目的、その目標は、近隣のオアシス都市に反政府ゲリラのアーマーが複数出現したことにより、この討伐と街からの撃退を要請されたことによるものだった。
この中央大陸「アストリオン」の友邦国の軍艦として今はこの大陸連邦の領空領土に無条件でお邪魔させてもらっている都合、無下にはできないとのンクス艦長の判断であった。
ちなみにもっと厳密に言うのであれば、ゲリラのアーマーとはそもそもは彼らが占領しようとしていた、今は完全に廃墟と化している元陸軍基地の守備隊たちであり、その敗残兵が野党と化して近隣の街の脅威となっていると言うのがより正確なところだ。
ただしこの基地の占領(破壊?)に関してはもろもろ他の要素も強く関わっているのだが、傍から見れば彼ら、ベアランドたちの行いによるものと思われるのは致し方がないところではある。
それによる後始末という側面も強くあったが、そのあたりについては今さら言っても仕方が無いし、その当事者と思われるアーマー乗りたちも、今回の作戦にはしっかりと参加しているのだから、どうこう言うつもりはないクマ族の隊長だった。
それはある意味、本人がきちんと責任をもってその責務を果たすということでもあっただろう。
ひたすらに続く悪路の果てがついに見えてきた……!
母艦のトライ・アゲインを飛び出してからこれまでずっと代わり映えしない、干からびた乾燥地帯をひた走ってきた機体のメインモニターが、その中に不意に四角いアラートゾーンを現出!
自機が目標地点に近づいたことをパイロットに警告する。
それをチラとだけ一瞥して、コクピットの中で軽快なランニングのステップを踏むオオカミ族の小隊長どのは、ペロリと舌なめずりして鼻息をフンとだけ鳴らす。
ちょうどウォーミングアップは済んだところであった。
通常のアーマーのコクピットは真ん中に操縦席があって、そこにパイロットは着座するものなのだが、彼のそれはかなり独特な仕様で、シートから立ち上がった状態でのランニングスタイルの機体操作が可能なものとなっていた。
それは身体がでかくて鈍重なクマ族などにはおよそ考えられないものだ。
直感と瞬発力重視のセンスが何より求められる機体の操縦機構は、目下、この彼だけのものである。
目標が目前に迫ろうともみずからの走りのペースを緩めないオオカミ族の隊長、ウルフハウンドは、後続の二機の僚機、若いイヌ族の隊員たちへと向けて、戦場に到達したことを教えてやる。
「おい、ワンちゃんども、準備は出来ているな? 目標の敵アーマーは街中の至る所に潜んでいると思われるが、構うことはありゃしねえ、見つけ次第にこれを各個に撃破だ! 数は不明だが、中古のビーグルⅤごときはオレらの敵じゃねえ、間違っても反撃なんざくらうんじゃねえぞ? あと今回はよそ者の部隊も参加しちゃいるが、そんなヤツらに遅れを取ることは許されねえ。どっちもしっかりと星を稼げよっ!」
半ば吐き捨てるように言うことだけ言って、それきり目の前のモニターに映る景色に意識を集中するオオカミだ。
すると天井のスピーカーからは、ちょっとの間を置いて、かなり困惑したふうな部下の声が響いてきた。
はじめのひどく動揺した息づかいとその次にやけにおどおどとしたものの言いようが、それだけで全身毛むくじゃらで臆病者のコルクのものだとわかる。
内心イラッとはするものの、へんにどやしても返ってパニックするだけだろうから、黙って聞き流してやった。

「……えっ、あの、その、ええっと……しょ、少尉どの、それだけでありましょうか? なにか、その、作戦は……?」
モニターにその表情を映さなくても臆病風に吹かれているのがわかる新米のパイロットに、やはり内心で舌打ちしながら、ぶっきらぼうに返してやる。
「そんなものは必要ありゃしねえだろうが? ただ街の中をしらみつぶしに探索して、敵を見つけたらただちにこれを撃破する! ただそれだけだ。十分だろう?」
「えっと、その、あの、だって、あの……」
まったく要領を得ないイヌ族の代わりに、これの同僚でこちらはやけにさっぱりとした見てくれの細身のイヌ族のケンスが通信を開いた。普段からの落ち着いた若者は、はっきりとした言葉付きで相棒の言わんとしていたことを端的に申してくれる。
「ウルフハウンド少尉どの! それではこのじぶんたちは、隊長どのを背後からサポートする役割でよろしいのでしょうか?」
性格が何かととっちらかった毛むくじゃらと比べたらずっと律儀でまともな部下の質問に、だがぞんざいに答えてやる上官だ。
「そんなわけがあるか! おまえらみたいなひよっこにサポートとしてもらうなんざ、どんなシチュエーションなんだ? このオレの足を引っ張らないこと。各自に判断して状況を乗り切ることがおまえらの役目だ! ごたくはいいからとっととやれ!」
「あ、隊長! 行っちゃった……!! いやでも、そんなこといきなり言われたって、おれ、どうしたらいいかわからないよ……」
目標地点の街、ポイントXに到達するやいなや強引に正面突破をはかるウルフハウンドの銀色の機体は、それきり砂煙と共に街中へと消えて行った。
後には新米の若手パイロットの新型アーマーが二機とも虚しく取り残される。途方にくれるコルクだったが、どうしたものかと正面モニターの右上に映る、同僚のイヌ族に目線をやった。
モニター越しにこの目が合うケンスは、ちょっと肩をすくめ加減にして、半ば呆れたような調子で言ってくれた。
「あっと言う間にいっちまったな? 高速機動用のホバージェットもなしに二本の脚で! アーマーをあんな風に走らせることができるヤツなんて、オレはお前以外に見たことがないよ! てか、あれってぶっちゃけお前よりも速いんじゃないのか?」
皮肉か冗談まじりみたいなセリフに、顔色がいまいち冴えない毛むくじゃらのイヌ族は、うわずった声で応じる。
「ああっ、おれも敵わないと思う……! でも正直、うらやましい。おれもあんな風にアーマーを走らせたい。このホバー、直線的な動きしかできないし、飛んだり跳ねたりしてタマをかわしたりできないんだもの!!」
「それが普通なんだよ! ドタバタ動いたりするのが苦手なアーマーが速く走るためにあるんだから。そもそも飛行型のオレたちのアーマーじゃ、走るどころか歩くのだって一苦労じゃないか」
もっともらしい同僚のセリフに、ため息まじりの毛むくじゃらは心底、心もとなげに弱音を吐く。
「これからどうすればいいんだろう……! ウルフハウンド少尉どのとははぐれちゃったし、おれ、自信がないよ。なんで飛行部隊のおれたちが、こんなおかしな陸戦仕様のアーマーで、こんな街中で戦わなくちゃならないんだろ?」
「しっ! 隊長どのに聞かれてるかも知れないぜ? あと他にもベアランド少尉どのたちも上で見張ってるんだろ? こんなサマ見られたら、後で何て言って笑われるか。とにかくオレたちも戦いに参加しよう、オレが先行するから、おまえは後からバックアップをすればいいさ!」
「い、いや! おれが先に行くよ。後ろが誰もいないとコワイから! ケンスが見張っててよ、ふたりで強力して乗り切ろう!」
「ははっ、おまえほんとに面白いよな! 了解!」
隊長どのの突入から遅れておよそ2分半後、部下たちのアーマーも散発的な発砲音が鳴り響く乾いた戦場に突入していった。

Part4
中央大陸の南西部に位置し、アストリオンの現政権中央府とこれに反抗する西岸域一帯の新興都市国家群がにらみ合う緩衝地帯となる地域で、その中でも最大の規模を誇る商業都市が今回の戦場となっていた。
この大陸出身のブタ族のタルクスから言わせると、アルベラと呼ばれるらしいが、基本よそ者ばかりで地元の地理に長けていない隊員たちからは、便宜上、ポイントXと呼ばれていた。
街を東西に分ける大通りが南北に長く走り、中央の広場から蜘蛛の巣状に細い路地が走る田舎にありがちなレトロな街並みの中は、突然の野党のアーマーの襲撃にあって、今はどこも人気なく静まり返っていた。
避難命令が出されているのか戒厳令が敷かれてるのか知らないが、アーマー同士の戦いをする身からすればありがたいことだ。
およそ人的な被害を出さずに済むあたり。
物的損害に関しては、無論、出さないように努めるものだが、相手はそうも言ってはくれないのだから、もはや多少の被害は止む無しと諦めてもらうしかない。
そうすっかりとたかをくくった隊長のオオカミ族、ウルフハウンドはぬかりなく周囲のモニターを睨みながら、スピーカー越しに聞こえる外部からの音にも左右の耳をそばだてる。
広くて見晴らしのいい大通りには人影どころかアーマーのそれもなくてて、敵はこぞって建物の裏手の影に潜んでいるのがはじめの予測のとおりだった。
それこそ街中をしらみつぶしに探し出して敵を撃破すると言ったとおりの展開である。
古い建物に周囲を囲まれた路地裏で、アーマーが一機通るのがせいぜいのところをさしたる足音も立てずにみずからの機体を進ませるウルフハウンドは、この目前、T字路の先に大きな影が揺らぐのを素早く察知する。
現状、敵は攻める気がまるでなく、逃げに走ってばかりで完全に一方的な追いかけっこになっていた。
ゆっくりとした抜き足差し足の動作から一気に素早い突撃のモーションに移って、角の突き当たりに飛び出すとほぼ同時に左に機体を回頭させる。
モニターには慌ててそこから逃げようとする、それは良く見知ったはずアーマーの背中が大写しで映し出されるが、迷うことなくその背中めがけてハンドカノンを斉射していた。
前のめりにつんのめった敵機が道の真ん中で見事に爆発炎上、この原型もわからないくらいに大破する。
機体の戦況解析コンピュータが状況から敵機撃破を解析判定するまでもなく、またひとつ星を上げたことを確信する隊長は、ぬかりなく周りを見回しながら軽くガッツポーズを取る。
調子は上々だ。
「よっしゃ! これで三機目!! ロートルの機体が相手とは言え、まるで歯ごたえがありゃしねえな? よりにもよって友軍のはずのビーグルⅤとは、全部で何機いやがるんだ? おっと、いつものクセで突っ走り気味か。味方のワンちゃんたちは……!」
手前のモニターの状況表示一覧を一瞥するなり、難しい顔で愚痴をこぼす小隊長どのだ。
「なんだあいつら、どっちもまだ星がついてねえじゃねえか? 仮にも新型の機体で情けがねえ! ん、星がついたか? いや、こいつは……! 傭兵どものうさんくさいアーマーか。どうやらオレたちとは逆の街の北側から入ってきたみたいだが……!」
ますます険しい顔つきでモニターを睨みつけるウルフハウンドだが、そこによそからの通信を知らせる、短いアラームが鳴る。
頭上から聞こえてきたどこか脳天気な声に、どことなしに天井に視線を上向けるオオカミ族だ。

「シーサー、聞こえるかい? ずいぶんと派手にやってるみたいだけど、ちょっとだけいいかな。おりいってお願いがあるんだけど……!」
「あん、なんだよ、大将? 今忙しいんだから、後にしてくれ! こっちは戦いの真っ最中なんだ。のんきに世間話なんかしてるヒマはねえぜっ……」
露骨にイヤそうな顔で返してやるのに、相手の第一小隊のクマ族の隊長さんときたらば、まるで臆面も無く話を続ける。
「いや、そっちのコルクとケンスのことなんだけど、今は分かれているんだろ。別行動なんだ? それでなんだけど……」
相手の隊長がしつこく続けようとするのをただちに阻止する気が短いオオカミは、反射的に声を荒げていた。
「悪いがガキのおもりなんかする気はねえよ。足を引っ張られるのもゴメンだ! オレは一匹狼な性分なんだよ。甘ったれたワンちゃんどもなんか引き連れていたくはねえっ」
「ひどいな! そんなに見所なくもないだろう、ふたりとも? いやそうじゃなくて、今回はあのふたりには引っ込んでてもらおうと思ってさ! なんせ状況が状況だから?」
「?」
意外なことを言い出すクマ族に、灰色オオカミはいぶかしくモニターに映ってもいない相手をじっとにらみ付ける。
そんな相手の剣幕を雰囲気から感じているのか、ちょっと困ったふうなクマの隊長は苦笑い気味のセリフを続ける。
「今、シーサーたちが戦っているビーグルⅤって、機体のカラーリングがぼくらが見慣れたナショナルカラーのグリーンじゃなくて、茶色、ブラウン主体じゃないか? タルクスに聞いたら、ルマニアから輸入したあれって、いわゆる砂漠仕様であんなカラーリングらしいんだけど、今のコルクやケンスのビーグルⅥのそれとまんまかぶってるじゃないか? 見てわかるとおり?」
「……だからなんだよ?」
怪訝に聞くオオカミに、心配性なクマはどこかいいずらそうにまた続けた。
「ひょっとしたら、同士討ちとかになっちゃわないかと? 特にコルクがパニックしたりして。とにかくふたりには一度引っ込んでもらって、なんならシーサーにも引っ込んでもらいたいんだよね?」
「は? 何を言っているんだよ??」
ちょっと険悪に聞き返すのに、まるでてらいもなくみずからの都合をぶっちゃけてくれるそれはのんきなクマのリーダーだ。
「今回の作戦の目的は、確かに民間に紛れ込んだ残党のアーマーの撃退だけど、裏テーマとしては、あのネコちゃんとゴリラくんの腕試しってのもあるじゃないか?」
「そんなのこのオレの知ったことじゃありゃしねえよ! あんな得体の知れねえヤツらに任せてたら被害が拡大するだけじゃねえのか? 好き勝手に暴れ回って結果、街が半壊だなんてことになっても責任が取れねえだろうっ」
いっそ吐き捨ててやるのに、しかしながら天井のスピーカーからはしごく落ち着いた返事が返ってきた。
「……そうは言うけど、シーサー、今、ビーグルⅤを派手に大破させたよね? 街中で大爆発させるみたいな?」
手痛い指摘にぐっと言葉に詰まるウルフハウンドは、苦々しい顔でこの天井のどこともしれない空をにらみ付ける。
「良く見ていやがるな? いやらしいったらありゃしねえ! そこまで派手じゃなかっただろう? 建物はどこもまだ半壊なんかしちゃいねえぜっ」
「その前の二機も、思いっきり大破させてたじゃないか? もう十分だよ。今回はこの場をあのおふたりさんにゆずって、後は三人で残党のアーマーが逃げられないように包囲網を作っておいてくれないかな。コルクとケンスにはこちらから言っておくから! それじゃ、そういうことでよろしくね♡」
「あっ、何を勝手なこと……切りやがった! たく、しょうがねえな……」
好き勝手なことを言ってそれきり通信を閉ざす同僚のクマ族だ。これに不満顔で天井を見上げるオオカミ族だが、舌打ちして機体を反転、来た道をゆっくりと引き返していくのだった。
Part5

※主役の乗るメカをリテイクすることになりました!
理由はブサイクすぎるから(^^;)
補給機のタルクスを伴ってみずからが街の上空に到達したときには、すでに戦況は刻々と変化していた。
こちらにおおむね有利に事態が進んでいるのはほぼ想定していた通りだが、街に入るなりに肝心の黒いアーマーを二機とも見失ってしまったのには、内心で少なからず焦るベアランドだ。
大通りからゴミゴミとした路地裏に入り込まれては、真っ黒い機体は保護色も同然でほとんど見分けが付かない。
どうにかすべくうんぬんかんぬん頭をひねって、どうにか第二小隊のオオカミ族の了解を取り付けるまでこぎ着けた。
クマ族の隊長はしたり顔してみずからのアーマーのモニター越しに見下ろした街の様子と、この手元の戦況表示ディスプレイをしげしげと見比べる。
「ああ、早々とシーサーが三機も撃墜しちゃったけど、これでいいんだよね。コルクとケンスは今回は残念だったけど! おかげで肝心のあのコンビさんたちに集中できるよ。なんか気が付いたらもう一機、撃破しちゃってるし?」
おおよそで十機はいるものと思われた敵の数は、これでほぼ半減したことになる。ネコ族とゴリラ族のアーマーコンビは、第二小隊のウルフハウンドたちとは打って変わって、こちらはとてもしっかりとした連携プレイで敵を追い詰めているようだ。
ギリギリまで機体の高度を下げてこの様子をうかがうベアランドに、このすぐ後方に控えた補給機のパイロット、ブタ族のタルクスが明るい声音で通信を開いてきた。
「こんなに近づいているのに気付かれていないなんてすごいんだぶう! あの勘の鋭そうなオオカミの隊長さんも気がついていなかったんだぶう! すごいステルス性能なんだぶー!!」
「あ、でも限界はあるよ? 通常の戦闘中なら難しいんじゃ無いかな? 今回みたいに戦わないで傍観しているだけなら、エネルギーのロスを心配しないでフィールド・ジェネレーターをフル稼働できるから、結果としての副産物だよね、これって」
「機体の周囲に張り巡らせたフィールドバリアでステルスまで生み出すだなんて、でかい戦艦のエンジンでも難しいんだぶう? アーマー単体でこれができるだなんて、そんなのうちのボスのイン様のゲシュタルトンくらいしか思いつかないんだぶう! あ、今のはただのひとりごとなんだぶう!」
ちょっと慌ててすっとぼけるブタ族の若手パイロットに、クマのエースパイロットは苦笑いして受け答えた。
「とにかくなりをひそめていないとバレちゃうから、しっかりこのランタンの後ろに隠れていてくれよ? みんな市街地戦に夢中で空なんか見上げる余裕なんてないから気付かれないのもあるわけだし。あとそっちの国家元首さまが秘密裏に開発してるって言う決戦兵器みたいな大型アーマーは、知識としては入っているからそんな隠さなくともいいしね。みんな噂じゃ知ってるんだろ? ある種の都市伝説か陰謀論的な?」
「失言だったんだぶう~!」
茶化した言いように、こちらも苦笑いで応じるブタ族だ。
「ははは! とにかくここからは、あのネコちゃんとゴリラくんの戦いに集中しないとね? なんせこれが今回の一番の目的でもあるんだから、て、言ってる間にまた一機撃破されちゃったみたいだよ! おそらくはネコちゃんのアーマーが敵を追い立てて、その先で先回りしてるゴリラくんのあのいかついアーマーが仕留めているのかな? あ、ネコちゃんのアーマー、発見!!」
言っているさなかにも、眼前のモニター一杯に映し出された入り組んだ街中の裏手の通りの画像の中に、小型の真っ黒いアーマーが軽やかなステップで駆け抜けるのを認めるベアランドだ。
おまけその先の1ブロックほど離れた場所にある、ちょっとした広場らしきに、この相棒となる大型のこれまた真っ黒いアーマーも補足する。
それだからなるべくこの絵をズームで拡大して離れた母艦のメカニックたちにもわかるように努めるのだが、標的は結構なスピードで街中を右へ左へと縦横無尽に駆け抜けていく……!
そのさなかにもまた一機、見慣れたはずの機影でも茶色なのが違和感だらけのビーグルⅤをいともたやすく撃破するのに内心で舌を巻くクマ族の隊長さんだ。
戦場の第一線で現役バリバリの量産型アーマーは言うなれば彼らルマニア軍の主力兵器に位置づけられるのだが、まるでいいところなしのやられキャラと化している。
背後のタルクスはもはや状況がめまぐるしくて目が追いつかないらしい。すっかり黙ったきりだった。
かくして外野からこれをモニターするのも一苦労だと、額にうっすらと汗を浮かべるクマ族たちの一方で――。
☆
足場の整った市街地に入ったことにより、それまでの荒れ果てた砂地よりも格段に動きが良くなった自慢のアーマーのコクピットの中で、素早い手さばきでレバーとコンソールを巧みに操るネコ族だ。
目の前の高精細モニターに映し出したターゲットスコープの真ん中で、無様にその背中をさらす敵アーマーに向けてロックオンしたハンドカノンの引き金をただちに引き絞る。
コンピュータが相手の撃破を解析判定する間もなくその場をダッシュして、身軽なアーマーを暗闇に溶け込ませるのだった。
まるで人間かのような素早い身のこなしでアーマーを疾駆させるが、次の標的へと意識を向ける目つきの鋭いネコの耳元に、手元のスピーカーからは相棒のゴリラ族の、やけにのんびりとした音声通信が入ってくる。

「……イッキャ? 今どこにいるの? こっちはずっと待ちぼうけしてるんだけど、早いとこ敵さんをこっちに誘い込んでよ。さっきからひとりでずっと楽しんでない? さっき後ろから一機現れてビックリしたんだけど、あれってイッキャは関係ないよね? ま、あっさり片付けてやったから問題なかったけど……」
なんかやる気なさげなクレームじみた催促に、若干ムッとした表情になるネコ族のイッキャは、通信相手の身体がでかくて何かとマイペースなゴリラ、もといベリラに向けて返した。
「問題ないのならそれでいいのだにゃ! おまえはそこで黙って敵が現れるのを待ち構えておくのだにゃ! このオレが確実に敵どもを追い込んでいるのだから、四の五の言うななのだにゃ」
「その敵が来ないんですけど? こっちはなんか良くわからない広場だか公園だかでずっとひとりきりなんですけど? そんなに広くもないからさ、敵を倒すついでに、なんか子供の遊具みたいなのもペチャンコにしちゃったんですけど? これって後で弁償とか言われないよねぇ?」
「そんなものはこのオレたちには関係がないのだにゃ! 放っておけばいいのだにゃ!」
「もちろん、そのつもりだけど。でもイッキャばっかりずるくない? ひとりで星を稼いでるじゃないか。こっちにも何機かちょうだいよ、あと、こっちのセンサーで見ているに、イッキャ、ひょっとしてダミーを飛ばしてたりしない? すごいやりづらいんだけど、それやられると??」
ぐちぐちと文句をたれる相棒のゴリラに、額のあたりにうっすらと血管が浮き上がるネコ族は、声にもイライラを出しながらついにはつっけんどんに言い放った。
「何をどうしようがこのオレの自由なのだにゃ! おまえにどうこう言われる筋合いはないのだにゃ! そう言うおまえこそこっちのセンサーではやたらに明るい波形がでているが、エネルギーを無駄にロスしているんじゃないのかにゃ?」
鋭くツッコんでやるのに、受け答えるゴリラ、もといベリラは慌てるようなこともなく開き直った言いようで返した。
「これがあるからここまでほとんど無傷でこれたんじゃない。おれたち。超高出力のジェネレーターが結界さながらのバリアフィールドを展開、おまけに機体の電磁カモフラージュまでしてくれるだなんてさ……!」
「だが絶対ではないのだにゃ! あと上でオレたちを見張っているクマの隊長も、おんなじようなことをやっているようなのだにゃ? それじゃとっとと片をつけるのだにゃ! 残りを追い立ててまとめて大通りに誘導するから、おまえもそこから通りに出るのだにゃ! ここからは早い者勝ちなのだにゃ!!」
言うなり通信をブチ切るネコ族は、機体に激しいステップを踏ませつつも空へと向けて何発かの銃弾を見舞う。
それが号砲だとでも言うかのようにだ。
これに即座に応じるゴリラが乗っていたいかついアーマーが、前屈みのすさまじい勢いで狭い裏路地を疾駆する。
そこからわずか数分で、全ての決着はつくこととなるのだ。
かくして無事、作戦終了……!

※次回に続く……!
ベアランド、タルクス、(リドル、ダッツ、ザニー)
ベリラ、イッキャ……
ウルフハウンド小隊、
ポイントX アルベラ 西 エルスト? 北 カイトス?
艦内 サイレン ベアランド タルクス リドル ダッツ ザニー
21プロット
概要‐ベアランドたちの降り立った基地の周辺の町(仮称Point X)に残存兵のアーマーが襲撃、これを撃退すべく出撃!
敵アーマー、ルマニアのビーグルⅤ(カラーは緑ではなく、黄土色?)
メインは第二小隊のウルフハウンド少尉率いる陸戦部隊アーマー。ここに今回から参加した傭兵部隊のイッキャとベリラのアーマーコンビも出撃。ベアランドは今回はこのふたりのお目付役として、上空からアーマーでこの行動、戦いぶりを監視。
ダッツとザニーは今回はお留守番。補給部隊として出撃したタルクスにリモートでツッコミする。
敵、アーマー部隊を撃破したところで、終了。
22 サラとニッシーがいきなり登場?
×ブリッジクルー 今回は特に出番なし。
◎デッキクルー 第二小隊(ウルフハウンド(ギャングスター)、コルク、ケンス(共に、ビーグルⅥ陸戦型仕様機=ホバーユニット装備型))、傭兵部隊(イッキャ(リトル・ガンマン)、ベリラ(カンフー・キッド))がメイン。
第一小隊 ベアランド(ランタン)、タルクス(補給機改装型ビーグルⅣ)
ベアランド、センタードライバーから、システムを使用しないで自力で発進、タルクス、レフトデッキから出撃~
ウルフハウンド小隊、ライトデッキから各機出撃
イッキャとベリラは、アッパーデッキから、基地を囲む断崖を伝って、現場に潜入?
ルマニアがある東大陸から戦いの場を移し、主役のベアランドたちが現在いる、中央大陸・「アストリオン」のキャラクターたち! #019以降のキャラとメカたち~
●アストリオン国家元首。ブタ族。「イン・ラジオスタール・ザッツ・ガックン・アストリオン」現代正当後継者。

◎可変型イン専用大型ギガ・アーマー。「ゲシュタルトン」

◎ブタ族。インの直属の若手の部下。「タルクス・ザキオッカス」

◎リドルの補給機を暫定的にタルクスに引き継ぎ。
ビーグルⅣ(全面改修型補給機)

◎タルクス専用ギガ・アーマー。「オーク・プロト・ワン」

●タヌキ族。「モーグ・ズク・シャーキンス」

◎バンブギン量産型?ギガ・アーマー。「王将」

●キツネ族。「カッター・ウォルタリバーン・ビジュバンス」

◎可変型ギガ・アーマー。「ハットトリック」

※上記の二人はコンビで、以下はトリオの一般兵。
●クマ族(ヒグマ系?)「ダイル・オルベガ少尉」

◎空中戦仕様型ギガ・アーマー。「Hi-GUMA(ヒグマ)」

●イヌ族(シバイヌ系?)「アッキス・コントラ少尉」


●イヌ族(シェパード系?)「キクター・ムカン・シーン少尉」


●クマ族(灰色熊系?)パイロット。「ハンマー大尉」

◎近接戦闘特化型ギガ・アーマー、「クラッシャー」

●クマ族(ヒグマ系?)パイロット。「オムスン准尉」

◎近・中距離戦闘型ギガ・アーマー。「????」

●イヌ族(??系)「モルザス准尉」

◎可変型・ギガ・アーマー。「????」

●クマ族(ツキノワグマ系?)「カノン・シューン」

◎大型・中・長距離支援用ギガ・アーマー。「ガマ・ガーエル」

○ネコ族(??系)「イワック・ラー」

◎空中戦仕様型ギガ・アーマー。「アマ・ガーエル」







スピンオフ系のお話で、ハンマーの部隊と戦う予定の敵キャラのメカ関係です。ちなみにキャラはまったく出来上がっていません(^^;)











○イヌ族(??系)「サラ・フリーラ・シャッチョス」

◎空中戦仕様ギガ・アーマー。「ドンペリ・ピンク」

●クマ族(ヒグマ系?)「ニッシー・ロックデーモ・ナイ」

◎大型・長距離支援用ギガ・アーマー。「ジン・ジャエル」

●イヌ族(雑種・ミックス系)「タッカー少尉」

◎水上作戦仕様ギガ・アーマー。「イルカ」

●イヌ族(雑種・ミックス系)「トッシー少尉」

◎水上作戦仕様ギガ・アーマー。「オルカ」

●クマ族(シロクマ)「ザッキー・カラーノ少尉」

◎万能型?ギガ・アーマー。「オルソ・ビアンコ」

●オオカミ族「シーバ・アンタルシア」

◎ギガ・アーマー「」






ニコ生で応援してくれたり絡んだりしてくれてるひとたちを作者のおじさんが勝手な偏見と妄想でイメージしたキャラやメカシリーズw ちゃんとキャラとして出来上がれば本編やスピンオフで出てくる可能性大? たぶん出てくるよね(^o^)だってせっかく創ったんだもんwww





#020
※これまでのあらすじ※
海を越えて新天地の中央大陸に足を踏み入れるなり、海岸線から一気にその内陸部にあるという、敵基地への進軍と奇襲攻撃、そしてこの地域一帯の占領――。
因縁続きの強敵たちとの海上の攻防戦から立て続けのハードな作戦が、だが意外にも、いともあっさりと遂げられてしまった。
この作戦の先鋒部隊として突入したベアランドたちクマ族のアーマー小隊は、そこでこの大陸「アストリオン」の若手の正規軍兵士、ブタ族のタルクスと出会い、それによって連れられてきたある重要人物、イヌ族のシュルツ博士とも無事に合流。
その後に彼らの母艦であるトライ・アゲインとも合流し、今は完全に廃墟と化した元陸軍基地の滑走路に停泊する母艦の中で、それぞれがひとときの余暇を過ごしていた。
Part1

クマ族たちが属するルマニア軍の中でも、最大規模と性能を誇る、超大型の最新重巡洋艦の、そこは広大なハンガー・デッキ。
その中にいつの間にか見たこともないような巨大な人影があるのを、神妙な顔つきで見上げる、ふたりのクマ族の姿があった。
どちらもクマ族の中ではかなり大柄で、共にしげしげと興味深げに見上げては、その二体の人型戦闘ロボットを観察している。
その中のひとり、濃緑色のアーマー・パイロットスーツにその身を包んだ、若いクマ族が言った。
「ほんとにどこからどう見ても、どこにもさっぱり見覚えがない機体だよな、このどちらとも? 実際、どこの国の軍隊にだってこんなおかしな見てくれのアーマー、ありゃしないよね? てことは完全にオリジナルの機体、なのかな??」
そう心底いぶかしげにこの隣に立つクマ族、じぶんよりもさらに大柄でふとっちょなチーフ・メカニックマンに聞くのだった。
すると聞かれたもう一方、メカニックマンのくせにパイロットスーツみたいな、やけにがっちりとした作業着を着込んだ巨漢のクマ族、年齢的にはもういいおじさんのイージュンは、さも気のない返事で答える。
目の前の巨大な人型戦闘ロボに、果たして興味があるのかないのかわからないようなそぶりだが、本心はどうだかわからない。
「……オレも、こんなのは初めてお目に掛かったよ。できればどっちも全身バラして細かいところまで見てやりたいもんだが、これ以上、仕事を増やされてもたまらない! かと言えあの機械小僧のおチビちゃんも、今はおまえさんのおばけアーマーにかかりっきりで、ろくすっぽ手が回らないんだろう?」
じゃあどうするんだよ? と逆に冷めた目つきで聞かれてしまって、さあ? とばかりに、みずからの大きな肩をすくめさせる若手のエースパイロットの隊長さんだ。
「まあね? でも向こうさん、あの若いネコ族とゴリラ族くんたちも、じぶんたちのアーマーには勝手に触らないで欲しいって話だったから、いいんじゃないのかな? アーマーを収容するデッキさえあれば、後はじぶんたちでやってくれるらしいよ。きっと慣れてるんだね♡」
「そんなもんかね? 言えば流しで戦場を渡り歩いてる傭兵くずれどもなんだろう? こんな見るからに怪しい珍奇なアーマーを道連れにしてちゃ、往生することばかりだろうにな……!」
半ば呆れ混じりの言葉に、内心ですっかりと同意して苦笑気味にうなずくベアランドだ。

「ま、いろいろと訳ありみたいだね。でもどうしてかうちのボス、艦長とも知り合いみたいなカンジだったけど? 違うのかな??」
「ああ、そういや、我らが総大将の艦長さまがわざわざブリッジから降りてきたんだろう? あのならず者達に会うために??」
やけに不可解げなメカニックマンのセリフに、こちらもさも不可思議そうに目をまん丸くして答えてやる。
「まあ、素性のわからない人間をおいそれと旗艦のブリッジに上げるわけにもいかないから、便宜上そうなったんだろうけど、詳しくはわからないな。あのふたりに聞いてみないことには。でもふたりともきょとんとしていたような? あんな大御所のスカンク族さまが、一方的な知り合いってことでもないだろうにさ!」
いいながらこの太い首を傾げて、ちょっと前のことに思いを巡らせるベアランドだ。
そう、このじぶんの立ち会いのもと、デッキのブリーフィングルームで相対した老年のスカンク族の艦長と、若いふたりのアーマー乗りたちは、そこではろくに言葉をかわすこともなかった。
だが、そこでふとしたひょうしに顔色を和ませる艦長どのが、確かにこう言っていたはずなのだ。
『ん、おまえたち、大きくなったな……!』
『??』

それを傍でいぶかしく聞くクマ族なのだが、しかし当のネコ族とゴリラ族も意外げなさまで、この目を互いに見合わせていた。
あまり意思の疎通らしきは感じられない。
果たしてこの艦長だけが得心したさまで、その場を後にするのだった。このあたり、たぶん当人たちに聞いたところで、わからないのだろうと推測するクマの隊長さんだ。
しきりに正体不明のアーマーを見ているにつけ、不意にこのとなりででかい身体を身じろぎさせるメカニックマンがささやいてきた。
「お、噂をすればなんとやらだ。やっこさんたちが戻ってきたぞ? てか、あいつらっておまえのとこにつくのか? それともあの口やかましいオオカミ野郎か? 面倒だからおまえのとこに入れてほしいな。第二小隊だったらこのオレの受け持ちになっちまうだろ!」
ちょっとイヤそうな口ぶりに、これまた苦笑いでそちら、右手に視線を流すクマ族の第一小隊隊長どのだ。
「ああ、ブリッジから艦長と一緒に降りてきたオペレーターのイヌ族くんに、この艦のおおよそのところを教わってきたんだろ? ちなみにふたりともぼくらとは独立した、別個の部隊編成になるはずだよ。いきなり編入してもうまく部隊として機能するはずがないし、はじめは守備部隊くらいでいいんじゃないのかな?」
「それがいいな。仕事を増やされたくないし、アーマーを独立して運用するんなら、どうかデッキのすみっこでやってもらいたい。いつまでいるかも怪しいんだろ、ぶっちゃけ?」
「どうだか? できたら本人たちといろいろと話したいんだけど、あいにくで今はまた、別のお客さんが来ているから……!」
「ああ、あの例のキチガイ博士さまか、ちんけなイヌ族の! ん、噂をすればこれまたなんとやらだ。お出ましになったぞ?」
この船幅が通常よりも倍くらいもある超大型艦の構造として、大きく左右に分かれたデッキを中央でつなぐセンターブロックにあるエレベーターから姿を現した、二人の新参者たち。
そしてそこにこれまた新たな新参者、こちらはやけに小柄な人影が、おとなりのもうひとつのエレベーターから出現する。
こちらはおまけでお供の若いブタ族を引き連れていたが、それを置き去りに早足で突き進むイヌ族の博士は、脇目も振らずでまっすぐにこちらに向かってくる。
それに後から大慌てでこれに追いすがろうとするブタ族、名前は確かタルクスとか言ったはずの若手のパイロットなのだが、いきなりけつまづいてはそれきりあえなくその場にいたゴリラ族とネコ族にとっ捕まっていた。
なにやら騒動になっている。
もはや独りよがりなイヌ族には、すっかりと見放されていた。

新人同士のブタくんはいっそそちらに任せて、まずはこちらに向かってくる問題児のイヌ族と向き合うベアランドだ。
隣のイージュンは浮かない顔で、ただじっと目配せしてくる。
つまるところでお前に任せると言っているようだ。
確かこのベテランの技術屋の師匠は、こちらのお抱えの若手技術主任とも共通で、おまけに同じイヌ族ながら問題の博士とは、それこそが犬猿の仲で有名だったはずだ。
どうやら弟子の立場からしても苦々しい存在らしい。
混ぜるな危険……!
言われるまでもなくそれと察するクマ族だった。
それだからリドルと博士には互いにこのことは伏せておこうと心に固く誓うベアランドだ。
「ほんとにこれ以上めんどくさくなるのは勘弁願いたいからね! うわ、すんごい真顔だな? 博士、どうも♡ ところで何をそんなに急いでいるんだい?」
適当に当たらず障らずして語りかけてやったところ、すぐにもこの脇を通り過ぎる勢いの白衣の老人は、だがそこでピタリと立ち止まる。挙げ句こちらを見上げたかと思えば、つまらないものを見るようなひたすらな真顔で言ってくれた。
「ふん、おまえこそ何をそんなところでのんびりしているのだ? 時間は有限、一秒たりとも無駄にはできないものを……! ならばさっさとこのわたしをきさまのアーマーのところまで案内しろ。無論、主任のメカニックにも招集をかけてだな! この艦の構造からすればあちらなのだろう? ゆくぞ!!」
「あ、そんな急がなくても……行っちゃった!」
「いいから行ってこいよ、ゴリラと猫と、あとついでにあのぶぅちゃんの相手はオレがしてやるから!」
ベテランのメカニックにそう促されて、やれやれとその場を後にするクマ族のパイロットだ。
見ればイヌ族の博士はシッポを左右に大きく揺らしながら遠くの角をさっさと曲がってこの姿を消す。
いいトシなのに元気だよなあw。
とか言いながら、独りよがりで偏屈な博士が行った先でおかしな問題を起こしていないかを想像したら、自然とじぶんも早足になっていた。
そして案の定、その先でやはりちょっとした騒ぎが巻き起こるのをリアルタイムで目撃することとなる隊長さんは、またしてもやれやれとみずからの肩をすくめてしまうのだった。
Part2

いわく、弱い犬ほどよくわめく……!
まさしくその通りで、角を曲がった先でそれはキャンキャンとやかましくわめき立てる、小柄な白衣姿のイヌ族の老人だ。
これに内心でいささかげんなりとなるベアランドだった。
そこにはまたおなじくげんなりしたさまのおじさんのクマ族たちがふたり、より近くにいるものだからなおさらに耳が痛そうな顔して、この老博士を眺めていた。
またおなじくクマ族でこちらはずっと若いクマ族のメカニックスーツの青年も、かなり困惑したさまで小柄な毛むくじゃらの犬族にいいようにギャンギャンと噛みつかれている。
いっそ本当に噛みつきそうな剣幕に、やれやれと苦笑いして仲裁に入る隊長さんだ。
「やれやれ、穏やかじゃないな? どうしたんだい、リドル、そちらの博士さまになにか失礼なことでもやらかしたのかい?」
そうあっけらかんしとた軽口みたいにいいながら、実際にはそんなはずはないだろうことは重々承知している。
そんな苦笑いの小隊リーダーどのに、対して小隊のアーマーを一手に引き受ける天才的メカニックの青年、もっと言ってしまえば少年のクマ族は、慌てて敬礼して返してくれるのだ。
陰険にして口さがない博士とは打って変わったとっても律儀で礼儀正しいさまに、またしても、あはは! と苦笑いしてしまうベアランドだった。
「はっ、少尉どの! ああ、いえ、その、じぶんは何も失礼なことなどはっ、て、博士どの? なのでありますか、こちらが?? それは失礼いたしましたっ……ですがいきなりどこからか現れて、このじぶんのことを見るなりに大きくわめかれて……!」
若いクマ族がかなり困惑したさまでおろおろするのをはじめどうにもおかしく眺めてしまうが、それをやはり傍でながめているおじさんのクマ族たちのうんざりした顔つきを見ているにつけ、状況をそれと把握する若いクマ族の隊長さんだ。
「そうか。二人とも今日が初対面だったよね? もっと早くに引き合わせておくべきだったかな。確かにどちらもびっくりだ。こんな小柄なおじいちゃんの博士と、こんなやたらに若くしたチーフメカニックくんじゃ!!」
そう笑い飛ばしてやるのに、当の博士はあからさまに不機嫌なさまでにらみ付けてくる。加えてまたキャンキャンとやかましくのたまうのだった。
それだから広いアーマーのハンガー・デッキの中をキンキンとこだまする老人の癇癪を、右から左に聞き流してはただ鷹揚にうなずくパイロットだ。
「フン、誰がおじいちゃんだ、失敬な! それよりもなんだこの貧相な小僧は? よもやこんな青二才がチーフメカニックだなどとほざくのではあるまいな? まったく飛んだ茶番だ。艦長を呼べ! わざわざこのわたしが出向いてやったのに、みずからの持ち場を留守にしておったあのうつけものをだな!!」
「ひどいな? ああ、そうか、ンクス艦長とは入れ違いになっちゃったんだ。ならもう今頃はブリッジに戻っているはずだけど? でも呼んだところで来てはくれないんじゃないのかな。それにそっちこそ失礼なんじゃないのかい、うちの自慢の天才メカニックさまをただの小僧呼ばわりだなんて! ね?」
そう言って傍で傍観者を決め込んでいる、ふたりのベテランパイロットに同意を求めてやるに、当のおじさんのクマ族たちは、ちょっと慌てて互いの目を見合わせる。
「はぇ? ああ、確かに、見た目はめっさ若いんやけど腕は立派なもんちゃいますか? ぼくらのアーマーを見た時も、機体の特徴や整備のクセを、一発でそれと見抜いてくれはりましたから」
「せやんな! わざわざ言わんでもかゆいところに手が届きよるし、何より、アレなんやろ? この子の師匠はん、めっちゃ有名なブルドックのおじいやんな? なんちゅうたっけ、確かドルスとか、ブルースとか……?」
ザニーのセリフに相づち打つかたちでダッツもうまいこと同調してくれるのだが、あまり触れては欲しくないところまにで突っ込んでくれるのには、顔つきが微妙なものになるベアランドだ。
相棒のザニーもちょっと微妙な面持ちでもってダッツに返す。
ただしそれがだめ押しの決定打となった。
「ブルース・ドルツちゃう? 名機の影にこのひとありと歌われた、泣く子も黙る鬼の整備士(メカニック)! ちゅうか、それってゆうてええんか? そのひと、この博士さんとは犬猿の仲やったんちゃうん?」
「あ、せやった! 有名やんな、めっちゃ! あれ、マズイことゆうてもうたか、おれ??」
「あらら……!」

慌てた調子で見返されても、返事に困る隊長さんだ。
リドルだけがきょとんとしたさまで周りのクマ族の反応を見つめている。ある地方のひなびた陸軍基地で身寄りの無いのを拾って育ててくれた犬族の老人は、まだ現役の凄腕メカニックであれども、みずからの過去の偉業は語ることがなかったらしい。
この目の前の性格冷血にして冷徹な博士と、とかく人情家の機械屋とでは、たとえ同じイヌ族であれど、火と油で交わることがないのは考えなくともわかるだろう。
おかげで微妙な空気がその場を支配するが、仏頂面した博士がやがて目の前の若い整備士に鋭い視線を投げかける。
余計にカンに障ってしまったものかと内心でヒヤヒヤするクマ族のパイロットたちが見守る中で、だがイヌ族の老博士は何食わぬさまで言うのだった。
「ブルース、だと……? ふん、あのくだらないおよそ数値にもならぬ感情やら感覚ばかりをほざくブルドックの機械屋めか? ならばまったく愚にも付かぬ世迷い言ばかりでこのわたしにことごとく楯突いた、あのおおたわけめの教え子だと言うのだな? 貴様は??」
「は、はい? ああ、ブルースは確かにこのぼくの育ての親であり師でもありますが、その父と何か関係がおありなのですか? でもあんまり良好な関係ではなさそうな……!」
ひどく怪訝な青年に、思わずうんうんと頷いてしまう隊長さんだが、この後に続いた博士の言葉には目をまん丸くしていた。
「ふん。いいだろう……! いささか性格に難ありではあったが、整備士としての腕は確かに一流ではあった。それだけは認めてやれる。それ以外はもはや全否定だが、それの弟子であるのならば、それなりのものは期待ができると推測はできるのだろう? ならばこのわたしが直々に見定めてやろう、貴様の価値、ちゃんと数値化したまごうことなきその真価をだな!!」
「は、はい??」
おじいちゃんの博士から真顔で言い放たれたセリフにすっかり面食らって、もはやちんぷんかんぷんのリドルだが、それをおなじく意外に聞くベアランドは、そのくちもとにこれまでとはまた違った苦笑いを浮かべていた。
「へえ、おやおや……!」
意外と気に入ってくれたものらしいとリドルにウィンクしてやる。やっぱりぽかんとしたさまの整備士だ。
「おじい、気に入ってるやん? おれらのチーフのこと!」
「ほえ、それはそれで微妙ちゃう? 正直めんどいでぇ、こないないらちなひと! ぼくやったらパスやわ、パス」
ダッツとザニーが小声で皮肉めいたことをぼそぼそ言っているが、そんなもの一切聞く耳持たない博士はさらに鋭く言い放つ。
「まずはアレの戦術解析データを見せてもらおうか。これまでのものをすべてだな? メインのコントロール・ルームに案内しろ。わたしのラボのメインコンピューターとただちにシステムを同期させ、以後はすべてこちらの指示に従ってもらう……!!」
「ラボ、でありますか?」
まったく話の流れについて行けてない整備士くんに、隊長さんがしたり顔して大きくうなずく。
「ああ、特別に博士専用の研究室を割り当ててもらったんだよね? みずからの個室(セル)じゃなくて、ちゃんとした作業場ってヤツをさ? でも場所がみんなの居住区じゃなくて、ひとりだけ機関室、つまりはこの艦のメイン・エンジンのすぐ隣りの、言ったらデッドスペースの倉庫だったけ??」
「倉庫ではない。ラボだ。ちゃんと資材や装置は運び込まれている。十分なスペースを確保するのにそこしかなかっだけの話」
「は、機関室のおとなりって、ひとが住めるようなとこやないんちゃうか? めっさ揺れるし、音もおっきいやろ??」
「ほえ、あとおまけに暑いんちゃう? そないなとこでアーマーの研究とか落ち着いてできへんのちゃうんけ??」
「まあね……!」

若干引き気味のおじさんたちにはこちらも疲れた苦笑いして、いやはやと肩をすくめる隊長だ。
だが何事でもなさげな博士は、周囲からのつまらない指摘をことごとく聞き流す。おまけしれっと言ってのけた。
「騒音や振動ごときは気にしなければいいだけの話だろう? よもや心頭滅却すれば火もまた涼し、という言葉を知らんのか?」
完全にどん引きするクマ族パイロットたちを尻目に若いクマ族の整備士にくってかかる博士は、しまいには付いてこいとばかりにシッポを一振りして、いずこかへと足早に突き進んでいく。
ただの当てずっぽうでだ。
さっき案内しろとか言っておいて身勝手な振る舞いにびっくりする整備士くんだが、慌ててこの後に追いすがる。
「あ、待ってくださいっ、博士! そちらはただの資材倉庫ですから、コントロール・ルームはあちらになります!!」
「早く言え! この役立たずめが!!」
クマ族のパイロットたちだけが取り残された場には、それきり嵐が過ぎ去ったような静けさがわだかまる。
やがて中でもベテランの赤毛のクマ族が言った。
「ええんですか? 大事な大事なぼくらのメカニックくんを、あないなしょうもないイヌ族のおじいに預けてもうて??」
「……ああ、いいんじゃないのかな? 意外と相性が良さそうな気がしてきたし。あのリドルをキライになる人間なんてそうそういはしないよ。あとあの子の腕の確かさを見れば、博士は決して邪険にはしないさ。そういう人間だよ」
「なんかビミョーやな……?」
あんまり納得がいかないような浮かない顔つきで目を見合わせるクマ族のおじさんたちには、やはり仕方がないよと肩をすくめるしかない、おなじくクマ族の若い隊長さんだった。
Part3

終始マイペースでなおかつキャンキャンとやかましいイヌ族の老博士と、これに慌てて追従するまだ若い青年クマ族の整備班長の気配は、まだしばらくはそこかしこに感じられた。
そこにかすかな反響音(エコー)を伴って。
だがさすがにこの視界からすっかりと消え失せたらば、それきり辺りはシンとした静けさに見舞われる。
おそらくはこの真上の上層階にあたる、目的のコントロール・ルームへと入ったのだろう。そこはハンガーデッキからの出撃射出時のカタパルトの集中制御と、収容された各アーマーのデータが集積される、戦闘を担う現場方の頭脳とも呼べる場所だ。
関係者以外は立ち入り禁止で、立ち入ることができるのはデッキクルーの中でもごく一部に限られる。そこになにかとやかましい博士のわめき声も厳重に密閉されたのだろう。
かくしてかすかにため息ついてその場に取り残された者同士、お互いの目を見合わせるクマ族のパイロットたちだ。
ちょっと疲れた感じで微妙な表情のベテランたちには、ま、仕方が無いよ……! と肩をすくめるばかりの隊長のベアランドだが、折しも背後からはまた新たなる気配がするのにそちらを振り返る。
軍用艦としても縦にも横にも馬鹿げた大きさでひたすらに広い艦内、必要がないところは極力照明が落とされた暗がりの中に、やがて大小さまざまな人影が浮かび上がるのをじっと見つめる。
おおよそでこの予測はついていたが。
よって、今度は博士以外の新人さんたちがこぞってこの場に顔を出してくるのを、まずはただ黙って迎え入れてやった。
背後で低いしゃがれ声が上がるのがわかったが、そう、本国ではなかなか見かけることがない、だが今となってはすっかり見慣れた若いブタ族以外にも、かなりレアな種族がまじっているのにおかしな感慨じみた感想をくちぐちに漏らすおじさんたちだ。
三人いる人影の中でも一番最後につけている、ひときわ大柄な真っ黒い毛だるま、もとい毛むくじゃらでおまけ筋骨隆々としたのは、これが遠目にもひと目でそれとわかる、ゴリラ族である。
言うなればこのクマ族たちの出身地である東の大陸でもそうはお目にはかかれないレア種であり、見たところまだ若いのだろうに、何やら言いしれぬ迫力みたいなものがあった。
まずこの顔だけ見たら、やたらにコワイ……!
その手前に肥満体型のブタ族のタルクスと、こちらは見てくれシュッとした細身で小柄なネコ族がいたが、いやはや後ろの筋肉だるまに見た目において圧倒されて、まるでこの存在感が目立たない。
ただし良く良く見れば、ネコ族でもこれまたレアな見てくれした、かなりクセのある雰囲気の出で立ちなのだが……。
おじさんたちの目にはまるで入らないようだ。
「ほええ、あのゴリラ族のアーマー乗りの子、思うたよりもほんまにゴリラゴリラしてるんやなあ? ちゅうか、ゴリラ過ぎるんちゃう? あんなのケンカしたら勝たれへんて!」
「しっ、聞こえてまうで! まっぴらやわ、あんなゴリゴリの筋肉ダルマとバチボコやり合うなんて、ロケットランチャー必要やんけ! うちの隊長さんくらいなんちゃうか、あんなんと生身で対決できるんは?」
「ぼくらの隊長さんでもキツいんちゃう? 何より顔がコワすぎるわ、愛されへんて、あの顔でバナナが大好きなんやろ?」
「それはええやんけ! ギャップがカワイイやろ、てか、バナナあげればええんやな? バナナであのガタイもちよるんか??」
そんなベテラン勢のしょうもないひそひそ声に苦笑いしながら、新人のパイロットたちに声をかける第一部隊の隊長さんだ。
「やあ、ふたりともこの艦の内部に少しは慣れたのかい? えっと、後ろのいかついゴリラ族がベリラくんで、前のはネコ族の、イッキャくんだったよね? 歓迎するよ、本艦のアーマー部隊大隊長として! 見ての通りで人手が足りなくて困っていたところだからね? もちろん、タルクスも!」
すっかり意気投合した、と言うよりはやや相手に押され気味で足下がおぼつかないブタ族がブウ!と返事をするが、あいにくとでかいゴリラと小柄なネコの反応は希薄だった。
だがここらへん、元から仲良しこよしをする気もないクマの隊長も、まるで気にせずに相手からの返事を待つ。
するとしばしの間を開けて、真っ黒い山みたいなシルエットのゴリラ族くんが、みずからの眉間を右手でポリポリ掻きながらにのんびりした調子の言葉を返してくれる。
「まあ、こちらこそこうしてお世話になるからには頑張らせてもらって、ここの艦長さんからもついさっき破格の待遇を示してもらってるし……! やけに気前がいいのがなんだかビックリだったけど、ねえ、イッキャ??」
「ああ、それはこっちもおんなじだよ、というかやっぱり、思い当たるところがないって感じなんだな? はて……」
相棒のゴリラの言葉にも、細身のネコは曖昧なさまでかすかにうなずくのみだ。そんな相手の口ぶりからこのふたりよりも、むしろ当艦の艦長どの自身に探りを入れたほうが話が早いようだと考えあぐねる。
やはり少しは気にはなったし、このアーマー乗りたちの乗る妙ちくりんなアーマーもかなりのクセがあって、ならばいっそそこら辺からも多少は手がかりが見いだせるかも知れない。
さっきは興味がないとか言っておきながら、今頃はこっそりとでかい図体をそのあいだに潜り込ませて、見慣れない機体をあれやこれや詮索しているにちがいない。あの機械オタクのクマ族のおじさんメカニックに聞いてみれば、それなりにおもしろい答えが返ってくるかもしれなかった。
だったらちゃんとこの時間を稼いでやらなければね!と内心でペロリと舌なめずりするベアランドに、対して小柄なネコ族めがやや怪訝な目つきで見上げながらに返してきた。
見てくれそぶりがやけにのんびりしたゴリラ族とは違って、こちらはかなりカンが利くほうなのかも知れなかった。
「……そうだニャ。ただしありがたく使わせてもらうが、あくまでやり方はこちらにまかせてもらうのだニャ! 余計な指図はやめてもらって、それでも十分なパフォーマンスを出せるはずなんだニャ、このオレたちにゃら!」
真顔でとかくきっぱりとした言いように、背後からまたおじさんたちの声が上がる。
「ほぇ、聞いたか、やけに小生意気なネコちゃんやな? 顔つきからしてえらいふてぶてしいっちゃうか。相棒のゴリラくんはのんびりしてるけど! さてはバナナ切れてるんか? こないな子らとうまく連携なんて取られへんのちゃう、ぼくら?」
「ちゅうかおれらは関係あらへんのやないか? 空なんて飛ばれへんのやろ、あのアーマーどっちも? むしろ地べたかけずり回ってる第二小隊の、あっこの気むずかしいオオカミさんとビビリのワンちゃんたちなんちゃうん、知らんけど!」
「ほえ、そやったらなおさらムリなんちゃうんけ?? ほんまに相性最悪やで! くわばらくわばらや……」
もはや結構でかめのひそひそ声には若干肩をすくめながら、あくまで鷹揚に応えてやるアーマー部隊の隊長さんだ。
「そうかい。なら楽しみにしてるよ。あとメンテナンスは自分たちでできるってことだけど、まともなメカニックがひとりもいないんじゃさすがにアレだろ? とりあえずとびっきりの腕利きをひとり紹介したいんだけど、本人も興味あるような口ぶりだったから。もちろん、余計なことなんてしやしないからさ!」
いかにも軽いノリで言ったそぶりの提案に、果たしてあちらはやや怪訝な面持ちでこの太い首を傾げるゴリラ族だ。
「え、別にそんな気をつかってもらわなくても……? よっぽど大破とかしちゃったらアレだけど、ここっていわゆる最新式のフルオートのマルチ・メンテナンス・デッキだから、ヘタなメーカーのそれよりかよっぽど設備としては整っているもんね?」
嫌がるほどではないがあまり乗り気でないさまなのに、無理強いしたら勘ぐられるなとそれ以上はしつこく言及しないベアランドだ。当たり障りのないことをうそぶいてやる。
「まあね! オートにしても限度はあるから、最終チェックもかねて要所要所でメカニックがいるんだけど、若い子の勉強がてらになったらいいと思って。ま、トシが近そうだからお互いに気も合うと思うし」
「へぇー……」

あんまりピンと来てないふうなゴリラ族、ベリラと名乗ったアーマー乗りはこの場の話し合いにもさして興味がないらしい。
しまいにはてんで明後日のほうに目線が向くのに、こちらもこれ以上の追撃は諦めて、手前にいるネコちゃんのほうに目線を落とした。見ると何やらもの言いたげなそぶりでこちらを見ていたネコ族のパイロットだ。
あとついでに何やら居心地の悪そうにしているブタ族にもみずからの背後を目線で示してほらと促した。
「タルクスは自前のアーマーがまだないんだから、うちの整備主任の補給機を引き継ぐんだよね。だったらそっちのザニーとダッツに連れていってもらえばいいよ。実戦ではこのふたりのベテランたちとつるむんだから、しっかりと話し合っておかなきゃ♡」
「ぶっ、ブウ! ああ、そう言われてみればそうだったんだぶう、それじゃよろしく頼むんだぶう! 先輩のクマさんたち!」
ベテランのおじさんたちと合流して、そこからがやがや騒ぎながらの気配がやがてこの上階へと流れていくのに、そこであらためてネコ族に向き直るクマ族の隊長だ。
するとネコ族、細身で小柄の簡易的なパイロットスーツに身を包んだイッキャは、鋭いまなざしで意味深な口ぶりだ。ちなみに相棒のゴリラ族とは色違いの同一仕様のラフなスタイルである。
「メンテナンスのはなしは聞くだけ聞いておくニャ! しかしそれならこちらも耳よりな話があるのだニャ。うんっ、そう、それは腕利きのパイロットと強力なアーマーの……! 見たところどうやら人手不足らしいから、こちらも悪い話ではないはずニャ」
「ああ、あいつらのコト? 話しちゃうんだ? 確かにあの女社長、クライアントに飢えてるとか言ってはいたけど……」
「ここなら文句のつけようがないニャ。オレたちのアーマーが引き受けられるなら、当然あいつらのアレもいけるはずニャ」
「?」
出し抜けにした何やら思ってもみない話の向きに、はじめただきょとんとしてふたりを見返すベアランドだが、マイペースなアーマー乗りのコンビはふたりだけで話を進めていく。
「ううっほ、確かにさ、ここって大型機が入るデッキがふたつもあって、その内のひとつは空いてるとか言ってたっけ? あれ、これって誰の話だったけかな? ん~……でもほんとにひとつ空っぽみたいだから、入るちゃっあ、入るのかなあ??」
「しっ、余計なことは言わなくていいんだニャ! だが戦力は少しでも多いに越したことはないはずニャ。あいつらはおいしい仕事にありつけてウハウハ、こちらは腕利きのパイロットが確保できてウハウハ、おれたちはどっちにもいい顔ができておまけに恩まで売れて、これまたウハウハのウィンウィンウィンにゃ!」
「あいつらって腕利きなのかな? そこだけが引っかかるけど」
ここに来てやや目つきが怪しげになるベアランドだ。
「あれ、勝手に話が決まりかけてないかい? さっぱりわからないんだけど。まあ、ならとにかく聞かせてもらって、その上でアーマー隊長として判断してから上の艦長に、ああ、もとい、その前にこのデッキを仕切るチーフメンテや、第二部隊の隊長のシーサーの了解も取り付けないといけないし。本国からの援軍が当分見込めないから傭兵部隊の参加はいつでも大歓迎なんだけど、いきなりの飛び込みはさすがにアレだものねえ?」
やんわりと前置きしてからしっかりと釘も差した。
「あと、それで言ったらきみらの実力もまだわからないままだし……!」
「それはおいおい示してやれるのニャ。この艦は常に戦場の最前線を突き進むと艦長が言っていたはずニャ、それならオレたちアーマー乗りの戦いにも事欠かないはずニャ……」
「うほ、だから破格の報酬を確約してもらえるんだものねぇ? なんかドキドキしてきちゃうな。武者震いっていうのか、あんなコソコソしないで正々堂々と戦場に立てるのって、いつくらいぶりだろ? もしかしたら初めてじゃない??」
「だから余計な話はするなだニャ!」
意味深な口ぶりで目を見合わせるゴリラとネコに、それを傍から見ているクマはしれっとかまをかける。
「ああ、そうだ。そういや、ここの基地を襲撃してまんまと壊滅に追いやったのって、さてはきみらの仕業なんだろ? いわゆる正当派のアストリオンに対立する新興革命派の最前線で、これに反抗する地元の現王権支持のレジスタンス勢力が活発に動いているって話だけど、いっぱしの軍隊相手に素手の野党がかなうはずがない。ましてこの前線基地を墜とすだなんて、腕利きの傭兵を雇わないことには、ね?」
もはや決めつけた言いように、果たしてふたりの傭兵たちは無言で目を見合わせた後に、やはり意味深な笑みを浮かべてこちらを見返してきた。
これと言及はないが、顔にはそれと書いてある。
決まりだな……!
予想していた通りなのをはっきりと確信して、それ以上は何も言わないベアランドだ。よってその実力があるのも了解して、ならばあちらの話の信憑性もそれなりには見込めるのだろうとネコ族の提案を聞いてやることにするのだった。
そうして実際にこのアーマー乗りたちの実力を確かめることになるのは、この数日後のことである。
ベアランドたちクマ族ばかりのアーマー小隊に新しく加わった、ブタ族のタルクスの初陣も含めて。
※次回に続く…!
プロット
ベアランド ダッツ ザニー →博士とリドル、離脱。
←イッキャ、ベリラ、タルクス 合流。
イッキャ ベアランドに話しがある。タルクスはダッツとザニーと打ち合わせの予定。タルクスはリドルのビーグルⅣを引き継ぐ段取り。
#020 プロット
トライ・アゲインのハンガー・デッキにて……
登場人物 ベアランド、イージュン、イッキャ、ベリラ、博士、タルクス、ザニー、ダッツ、リドル、(ウルフハウンド、コルク、ケンス?)
お話の冒頭で、いきなりベリラとイッキャが登場。このアーマーもおなじく登場。レジスタンスの一味として砂漠の陸軍基地を攻略したものの、後から来たトライ・アゲインに占拠されてしまい、この奪還を試みたものの、あっさりと見つかってしまう。
口からでまかせ?でフリーの戦術アドバイザーを名乗り、人手の足りない主人公たちの戦艦にノリと流れで乗り込んでしまう。
二つ並んでアーマー、リトル・ガンマンとカンフー・キッドを見上げながら、ベアランドとイージュンのだべり。
イッキャとベリラの元に、ブリッジから艦長、ンクスが降りてくる。「大きくなったな……!」謎の言葉を残して。
博士は、艦長と入れ違いでブリッジからデッキに降りてくる。
タルクスも護衛として同伴。タルクスはアーマーがないので、便宜的にリドルの補給機、ビーグルⅣを乗機とする。
ザニーとダッツ、めんどくさい博士を見送ってからイッキャ、ベリラ、タルクス(博士の後をおっかけてずっこけたところをつかまる)と合流。アーマーのお話で盛り上がる。
ベアランド、博士とリドルの引き合わせ。ダッツとザニー
ベアランド、リドル ← ベリラ、イッキャ タルクス
パート②
アーマー部隊出撃。イッキャとベリラも出撃。ベアランドはお目付役として上空から待機。
※各話にも載せているものと重複するかもしれませんが、そのへんのご愛敬で(^^)/

※上記の図はまだ完成していません。
※主人公たちが搭乗する重巡洋艦、射手座(サジタリウス)級・航空重巡洋艦「トライ・アゲイン」。ルマニア軍の中では最大級の最新鋭艦、つまるところで旗艦(フラッグ・シップ)と位置づけられる戦艦。艦長は、スカンク族の現場方の実力者、北の戦神の異名を持つ、「バルゼア・ンクス中将」。
◎艦橋(ブリッジ)……大型の艦長席を中心に据えた、広いフロアに、補佐官のシート、周囲に航海士長や各オペレーターのシートが壁際に並ぶ。艦長席の左斜め後ろには、ベアランドの専用機「バンブギン(ランタン)」の開発責任者である、シュルツ博士の専用ブースがある。博士の居住区兼実験室セルラボは、エンジンブロック近くのあまりひとが立ち寄らない場所にある。
◎アーマードック……ベアランドたちのギガ・アーマーが収容されるハンガーデッキ。通常の巡洋艦よりもずっと広大で発進口が多数ある。
○センターデッキ……艦のほぼ中心、中央に位置するベアランドの搭乗機専用のハンガーデッキ。マスドライバーシステムを応用した特殊なアーマー射出装置があるが、実はまだ実用段階ではない。
○ライトデッキ……ベアーズ(小)隊、ベアランド隊のザニーとダッツの主に使用するデッキ。
○レフトデッキ……ハウンド(小)隊、ウルフハウンドの部隊の使用デッキ。
○アッパーデッキ……守備隊の使用するデッキ。イッキャやベリラ、上昇射出機を利用できるアーマー、サラやニッシーなども利用する。
○アンダーデッキ……艦の最下層の下側に抜けるデッキ、主に上空からのアーマーの投下、海上、海中への投入に使用。










本編主人公のクマキャラのエースパイロット、ベアランドと仲間の小隊メンバー、ベテランのおじさんパイロットのザニーとダッツ、およびその搭乗機のイメージ!作者のオリジナルです(^^)








Part1
これまでの話の流れ……
強敵であるライバルのキツネ族、キュウビ・カタナ少佐率いるキュウビ部隊を海上の空中戦で辛くも撃退、そのまま目指すアストリオン中央大陸に上陸したベアランド達、第一小隊の面々。
途中、小隊のチーフメカニックの青年クマ族、リドルの補給機からの補給を受けて、いざひたすら目標となる「ポイントX」へと向けて、それぞれのアーマーを進ませるのだった。
※アストリオン中央大陸・略図

※ポイントX・略図

その始まりこそ、強敵の敵アーマー部隊の襲来と激しい空中戦で幕を開けたが、いざそれが過ぎ去れば、あとはすんなりと目標となる地点――。
中央大陸の広大な砂漠地帯のおよそ真ん中にあるターゲット地点まで無事、この駒を進めることができたベアランドたちクマ族小隊だった。
かくしてみずからが搭乗するアーマーのコクピットの中、上空からこの目標地点をモニター越しに見下ろしながら、ちょっと気の抜けた感じの言葉を漏らす部隊長だ。
「ふうん、いざたどり着いたのはいいものの、思っていたのとは大部この様相が違うな? 敵基地を空から強襲する作戦ってはずだったのに、まるで敵さんからの歓迎がないじゃないか……! おまけに見た感じ、なんだかひどくさびれた感じがするけど、実はもう無人だったりするのかな、あのベース??」

※イラストはXRPのNFTコレクションとして順次にリリース!
オープニングセールのこちらは1XRP(23.12.24の夜中の時点でおよそ88¥くらい?)で、即日の内にめでたく即売(^^)
やったね! 感謝感激、これのカラーバージョンもリリース予定なので、よろしければよろしくお願いします♡
そんな疑問を口にしながら左右のスピーカーに耳を澄ますが、ちょっとの間を置いて聞こえたのは部下のおじさんクマ族たちの、これまたどこか気の抜けたような返事だった。
モニターにはあいにくこの顔が映らないが、さてはどちらも冴えない表情しているのがよくわかる。
まずは明るい赤毛のクマ族が、のんきなものいいで言った。
「ほえ、なんやようわりませんが、敵さんのわんさかおる秘密の軍事基地っちゅうよりは、ただの野ざらしの廃墟みたいにぼくには見えますさかいに。知らんけど? 実際、ひとっこひとりおらへんのちゃいますぅ?」
「せやんな! ただのくたびれたあばら屋やで、あんなん! あないなボロッボロの建物、軍事拠点とは言われへんやんけ? マジでひとの気配あらへんし!!」
名うてのベテラン・パイロット専用にあつらえた赤い機体に乗り込んだザニー中尉の言葉に続いて、こちらもまた専用の青い機体のおなじく中尉どののダッツも、思ったまんまの感想を口にしてくれる。
これにひとしきり納得して頷く隊長のベアランドも、手元のコンソール周りを見回しながらなおのこと不可思議に考え込む。

※こちらはカラーのシンプルなベタ塗りバージョン!
初回なので3XRPぽっきり!! 売れるかな? さらに陰影など加工したハイカラー版もリリース予定(^^) ↓リンクは以下にあります↓
https://xrp.cafe/collection/lumania01
「そうだね……! 各種センサー類はなんらの反応や異常も感知しないし、こうしてぼくらに上空を制圧されてもまるで無反応。あえておびき寄せているのにしても、ここまで偽装する必要はないし、リスクが高すぎるよ。それどころかあれってのはもはや、陸軍基地の体裁をなしてないものね!」
「ほんまにボッコボコにされてんのとちゃいます? どこの誰かはわからんけど、実際に戦闘の形跡なんちゅうもんもそこかしかに見られますやんけ! ほんまに誰や!?」
何かと性格がツッコミ性分で口やかましいダッツに、それとは逆にこちらはボケ気質で、のんびりした口調のザニーが返す。
「知らんがな。せやけど手間が省けたのには違いないような? てっきりぼくらが空と基地の周りをまとめて制圧して、後からやって来るあの口うるさいオオカミの隊長さんとこの第二小隊が、ガチガチの特攻かけるんかと思ってたんやけど?」
「せやったんか??」
「知らんけど」
「なんやねん!」
そんなのんきなおじさんたちの好き勝手ないいようにまだどこか顔つきの冴えない小隊長は、だがやんわりとそれを否定する。
「いいや。今のシーサー達の機体はあくまで海上作戦仕様のそれだから、おいそれとこの陸上まではね? 海岸線からずっと内陸のここまでどのくらい時間がかかるかわらないし、一旦は母艦に戻って、『トライ・アゲイン』と一緒に来るはずだよ。そうさ、今頃は元の地上戦仕様にリドルやイージュンたちが、それこそてんてこまいで換装し直しているんじゃないのかな?」
「そないですか。でも灰色オオカミさんの機体はいざ知らず、わんちゃんたちのビーグルⅥは、元はぼくらとおんなじ機体の空中戦特化型やから、さてはそっちに戻しはるんですか?」
「はあ、せやったら空中戦仕様ばっかりになってまうやんけ!」
どこまでものんきなおじさんたちの言いように、ちょっと困った感じの若手のクマ族は、おざなりな返事を返してやる。
「さすがにそれはね? ちゃんと陸上作戦用のパーツがあるはずだし、中尉たちのとおんなじ同型機とは言っても、ぶっちゃけあの子たちのはあんまり空中戦には向かないみたいだから……! てか、全身フルカスタムのその機体は、一発でこれがビーグルⅥだって見抜けるひと、そうそういないんじゃないのかな?」
「ふふん、それもそうですな! 昔のちみっちゃいビーグルⅤとはちごうてぼくらクマ族さん専用に作られた機体やから。言わば新型のⅥのプロトタイプ、それこそが元祖みたいなもんで。おかげさんでめっさ気に入っておりますわぁ」
「そいつは良かった! 裏じゃ走る棺桶だなんて呼ばれてたⅤは、そもそもしてこのぼくら大柄なクマ族が乗るにはおよそ適していないボディサイズだったからね? 今のリドルが乗ってる旧式のⅣとは、あきらかに犬族たち向けにサイズダウンしたみたいな……」
「せやせや! 軍の犬族のお偉いさんがなんやわしらクマ族をきろうてそうしたって、もっぱら噂になってたやんけ! う~ん、なんやめっちゃむかつく話やけど」
「知らんがな。今はどうでもいいこっちゃ。で、どないします、隊長??」
左のスピーカー、もはや緊張感なんてものがどこにもないザニー中尉の問いかけに、果たして困り顔でうなるベアランドだ。
このまま後続の本隊が来るのを待つのも芸がないかと、仕方もなしに荒れ果てた見てくれの目標地点を機体の右手で指さして、状況の確認をするように部下のおじさんたちを促す。
「なんだかこれはこれで返って手間が増えた気がするけど、ぼくらで基地の状況を把握して後続の母艦を誘導しよう。安全が確保されないままじゃ、艦長も艦をおいそれとこの場に着艦させられないし、どうせその役を負うのははじめにここにたどり着いた、このぼくらなんだし?」
はいはい、と冴えないおじさんたちの返事を左右から聞きながら、いざどこに着地したものかと正面のメインモニターを凝視する。すると普段からのんびりしたもの言いが性格おっとりしているようで、その実は意外と目端の利く、明るい赤毛のクマ族のザニーが気をきかして言うのだった。
「そないですか。でもせやったらまずはじめにこのぼくらが降りますよって、隊長はどうぞ後から降りてきてください。不意打ちなんてあらへんのやろうけど、みんなそろうて待ち伏せくろうたら面倒ですさかいに?」
「せやんな! じゃ、お先に、隊長! わははっ」
「あ、そうか、了解! 確かに見れば見るほどにいかがわしい感じだけど、やっぱり投棄されているんだよな、あの基地って?」
「実際に中をのぞいたらわかるんちゃいます? じゃ、ぼくらが場所を確保したら、そのごっついかついアーマーで降りてきてもろうて。それともじきに艦が来るまでそこで待ちはります?」
「いいよ。ぼくもなんやかんやで興味があるから。せっかくだからみんなであのでっかいお化け屋敷の探索としゃれこもう♡」
およそ迷いのない慣れた操作で、深い渓谷の谷間に造られた軍事拠点に向けて降りていく二機のアーマーを見ながら、みずからはぬかりなく周囲を見回しながらに冗談を言ってやる。
あいにく無言のスピーカーからは、ゆるい空気とぬるい息づかいだけが聞こえた。
おじさんたちはどうやら苦笑気味らしい。
やがてすんなりと地面に着地した二機のアーマーからOKの手振りと頭部カメラのライトの明滅を見て取って、自身も大型の機体を谷間の底へと下ろしていく、若いクマ族の隊長さんだった。
Part2
仲間たちの誘導によって、空から地上に降り立った大型アーマーからこのコクピットハッチを開けるなり、まずは周囲のありさまをマジマジとおのれの肉眼で確認するベアランドだ。
すでにこの脇に降り立っていた仲間のダッツとザニーはみずからのアーマーからも降りて、真下の日に焼けた大地がむき出しの地面からこちらを見上げていた。
あたりは乾燥した砂漠地帯だ。
乾いた空気が鼻先をなでるのを感じながら、やはり危険らしき兆候はないことを確認してこのクマ族の隊長も自機から地面へと降り立つのだった。
しっかりとした固い大地の感触を久しぶりに踏みしめる。
正面の視界一杯に廃墟よろしく荒廃した敵軍の軍事基地、この右を見れば見渡す限りが切り立った断崖絶壁、その反対に視線をやればそこには広くて平たい乾いた地平が拓けている。
いわゆる空軍やアーマーの離着陸向けの滑走路なのだろうが、放棄されてどのくらいが経ったものか、そこかしこに砂漠の砂らしきが降り積もっていた。
この場が放棄されているのが丸わかりだ。

※↑やはりXRPのNFTにしてリリースしたところ、1XRPでめでたく買い取られてくれました(^^) 時価で言ったら88¥?安いと売れるのか??
また乾いた風が吹くと、あたりに砂埃が舞うのにちょっとだけ顔つきをしかめるクマ族たちだった。
ただでさえ剛毛で毛深い身体にまとわりついた乾いた細かな砂のつぶは、真水では洗い流すのがひと苦労だ。アーマーのコクピットに戻る前にひととおり払い落としておかなければならない。
顔の前の砂気混じりの空気をうざったげに手で払いながら、いつもののんびりしたさまでザニーがとぼけたセリフを吐く。
すぐに相棒のダッツに横から突っ込まれたが。
「ほんまにお化け屋敷みたいやんな? 静か過ぎてちょっと気味が悪いわ。なんや出てきよったらどないしよう?」
「なんやってなんや? なんもおらへんやろ。あんなんただの廃墟やんけ! どこをどう見てもよう?」
「知らんわ。ほなら隊長、どないしましょ。やっぱり内部をのぞかないけませんか? ……隊長、どないしました?」
そう背後を振り返った赤毛のクマ族の中尉どのに問われて、何の気無しの返事を返す隊長さんなのだが、みずからが見つめるてんで見当違いの方角を指で示しながらに逆に問いかけていた。
「ああ、いやっ……! というか、あっちのあそこに停めてあるあれってのは、いわゆるジープ、だよね? しかもおそらくは友軍の?」
「はい? ああ、ほんまや、一台あんなとこにおったんや。ほならバッくれた敵さんがたまたま残していったんちゃいますか?」
遠くの滑走路とひび割れた地面の境界線のあたりに停められた、明らかに軍用車両然としたそれに、今になって気づいたらしきおじさんのベテランパイロットも、はあ、と気のない返事だ。

「いや、でも敵軍の車両は、アゼルタのは基本あんな色はしてないはずだから。ぼくらとおんなじ系統の緑色で、元はルマニアの車両なのかな? あれだけやけに見てくれきちんとしているんだけど、外部から乗り込んできたのかね、ぼくらとおんなじで? まだ砂埃をかぶってないから、比較的つい今し方にさ……!」
「ちゅうても誰もおらへんやんけ。持ち主はどこ行ったんや? てことは不審者がおるっちゅうことなんか? めんどいのう!」
怪訝なさまでダッツも後ろから顔を出して文句をたれるのに、なんとも言えない顔つきのベアランドは肩をすくめるばかりだ。
「まあ、何であれ用心するにこしたことはないね? 敵対者とは限らないけど、誰かしら第三者がここにいることは間違いなさそうだ。しかもあちらさんもこのぼくらの存在に気づいているだろうし、ね?」
「はあ、無防備にめっさ砂煙を巻き上げてアーマーで降りてきてまいましたからな? そんなもんで隠れるんならやっぱり……」
「あっこのお化け屋敷しかないやんけ! ほんまにめんどいわ。白兵戦なんかアーマーのパイロットがやることちゃうやんけ」
「だから敵対者とは限らないだろう? まあいいや、それなり気をつけながら、予定通りにいざ探検に繰り出すとしようよ。基地の状況の把握と安全の確保が第一だ。お客さんは無理に正体を追求しなくとも、後続の味方に任せてもいいわけだし」
「了解」
果たして目の前の廃墟とし化した目標の軍事拠点へと、三人で大股でのっしのっしと歩き出すいかついクマ族小隊だ。
あちこちが朽ちかけたコンクリの建物の、出入り口の一つと思われるものへと歩み寄って、その大型の鉄製の扉を見上げる。
分厚い鋼鉄の扉はだがこれが微妙にゆがんでいて、外側へと若干傾いでいるのが見て取れる。おまけにひとがひとり通れるくらいの隙間が空いているのに、先頭に立つザニーがちょっとおっかなそうに中の暗闇をのぞき込む。

※↑先の線画をカラーではなく、あえてのモノクロ仕様にした挿し絵です(^^) これもXRPNFTでリリース!!
「ほえ、とりあえずここから入れそうですわ。お客さんもこっから入ってたりして? ほんなら誰から入ります??」
「暗いな? てか、誰からでもいいよ」
「おまえから行けよ! いいトシのおっさんがお化けがコワイとか言うんちゃうやろ? そら、邪魔やからさっさと行けって、早うせいやっ、て、おわっ、いきなりコケんなや!!」
相棒の灰色熊にムリクリ押されて内部に入った途端にそろって何かにけつまずいたらしい。せわしないおじさんたちの後からのっそりとひときわ大柄な身体を潜り込ませるベアランドだ。
「ふたりとも落ち着きなよ。いいおじさんがみっともないてか、あらら、ほんとに真っ暗だな……!」
あたりはやはり真っ暗闇で、照明はおろかどこにも非常灯の明かりらしきすらなかったが、少しすれば目が闇に慣れるだろうとぼんやりした辺りを見回してみる。
人の気配はどこにもなく、すっかりと廃れたそれこそが廃墟であるのが肌身で感じ取れた。
ゴタゴタしながらその場に立ち上がるおじさんたちとまだ慣れない視界で気配だけで意思の疎通を図るが、いいや、直後にはみんなでぱちぱちとお互いの目を見合わせることになっていた。
「……おっ、明かりがついたね? いきなり! お客さんの仕業かな? 察するにどうやら中の様子に詳しいようだ。何でだろ? それにこの基地の主電源と動力部はまだ生きてるらしい。敵勢から奪還した後はそのまま本来の主のアストリオン側に引き渡す予定だったから、よしよし、破壊された廃屋をただくれてやるよりはまだ面目ってものがたったね!」
舌なめずりしてひとりでほくそ笑む隊長に、はじめまぶしげに天井の照明を見上げる部下のおじさんたちは、これがやけに微妙な顔つきでうさん臭げにあたりを見回す。
「ちゅうか、なんかイヤな感じですわ。まんまと内部におびき寄せられたような、あっちの手のひらの上で遊ばれてるような、敵でないんなら堂々と姿を現せばよろしいのに……!」
「ほんまやな! いけ好かんわ。みんなでドツキ回したらな!」
「いいじゃないか。こうやってわざわざ明かりを点けてくれるあたり、不意打ちする気はないってわけで、ひょっとしたらそもそもぼくらのことに気付いてなかったりするんじゃないのかな? 何かぼくらとは別の目的で侵入したんだと推測できるよ、もはや♡ 見つけたら仲良くしてあげよう」
「ほんまですか? そやかてぼくらはどないするんです、これと言って目的もなしにいたずらに入り込んでしもうて」
「目的ないんか? なんで入ったんや??」
「探索だろ? ほんとに敵はいないのか、現実に投棄された基地なのか、内部にあぶないモノが残されたりしてないか……なさそうだけど」
気楽に雑談しながらこれと行く当てもなしに建物の内部の奥深くへと無防備なさまでのそのそ歩いて行くクマ族たちだ。
とは言えさすがにアーマーのパイロットともなるとそれぞれに腕に覚えありの強者だったから、ちょっとやそっとのものと出くわしても無難に対処ができる。
で、入ってから三つ目の角を右に折れたところでだ。
思いも寄らぬものとまんまと真正面で出くわして、思わず悲鳴を発するザニーと謎の闖入者だった。
Part3

これと言った気配もさしたる足音もなしに、だがそれは忽然といきなり彼らの目の前に現れた……!
もとい、もっとしっかりと周囲に気を払ってさえいれば、事前に察知ができたのかも知れない。
なにはともあれ、無作為に見たまんまのT字路となる通路の角をひょいと右に折れた先で、まさかの謎の先客、潜入者との突然の邂逅を果たした明るい赤毛のクマ族のおじさんだった。
一番先頭に立って先導していたものだから、正体不明の相手とは、一番はじめに接近遭遇を果たすこととなるザニー中尉だ。
おまけに真正面からもろにこれと衝突した挙げ句、のわっと背後にのけぞっては後続の二人の仲間のクマ族にこの背中をすっかりと預けることとあいなる。
ドンっという鈍い衝撃音と、ザニーのくぐもった悲鳴と、何故か、ぶうっ!といったおかしな悲鳴が、ほぼ同時に発生する。
ただしこの頃には辺りにはしっかりと照明が灯っていたこともあり、緊迫感は希薄なのだが。
相手はいかついクマ族のおやじの体当たりをこちらもまた不意だったのか、それはまともに食らって派手に背後にのけ反っては、ただちにそのまま背中からそれは大げさに転倒していた。
すってんころりん!
さながらマンガみたいなありさまでだ。
「うわっ、いきなりなんだい? 大丈夫かい、ザニー中尉! あと、いまのぶうっておかしな悲鳴みたいなのは……誰だろ??」
見れば、ずてんと大の字で仰向けにひっくり返る何者かを、全身の赤毛を逆立たせてびっくり仰天! そんないまだに身体ごとのけ反るザニーの背中越しに、はてなと見下ろす隊長さんだ。
拍子抜けしてちょっと呆れた感じに見つめてしまった。
すると仲間のもうひとりの中尉どの、灰色熊のダッツがこれまた呆れまじりの罵声を浴びせる。
こちらはおのれの相方のクマ族に向けてだったが。
「おう、しっかりせいや! おもっいきりぶつかってもうてるやんけ? 油断しすぎやろ、ちゅうか、いま誰とぶつかったんや? なんやおもっくそぶちのめしてるやんけ! ええんか?」
「し、知らんわ! ほええ、びっくりしたぁ! ほんまにどないなこっちゃ、いきなりぶつかってこられてよけるヒマあらへんかった。不意打ちすぎるやろ……!?」
ふうっと胸をなで下ろしながらようやく落ち着いた様子のベテランパイロットのおじさんに、背後からこれを支える若手のクマ族は小首を傾げながらに視線で謎の第三者を指し示して言った。
「不意打ちだったのかな? 今のって?? ともあれ見たところじゃ相手は、まあ、どうやら敵さんなんかじゃないみたいだね? だってそうとも、あれっておそらくは……」
不可思議な目線で見ているさなか、地べたに尻餅ついた何者かからはおかしな悲鳴ともうめきともつかない声が発せられる。

「ぶううううううっ! いきなりなんなんだブウっ!? ブッ、ふっ、不審者がいるんだブウっ、しかも三人も!? おまけにみんなでかくてとっても人相が悪そうなクマ族なんだブウっ!! わわっ、おっかないんだブウっ、ピンチなんだブウウっ!!」
あんまり聞き慣れないもの言いと驚きようで、はじめこちらをひっくり返ったまんま顔だけで見上げてくる何者かは、顔面を真っ青にしながら反射的にその場にいそいそと立ち上がる。
見るからにひどく動揺している不審者だった。
おまけやけにたじろいださまで明らかに視線では逃げ道を探し始めるのに、対してちょっと困惑した顔で、とりあえずこちらに敵意はないことを両手を挙げて見せるベアランドである。
寄っかかるザニーをとりあえず背後に押しのけて、みずからが正面に立ってこの場のとっちらかった状況をとりなした。
「いやいや、そんなに怖がることないだろう? ほら、言ったら味方同士じゃないか、ぼくら? なんたって見たとおりルマニアの正規軍のぼくらに、そっちはこの大陸の、そうさ見たところじゃアストリオン公国の正規兵だろう、そこのきみってば?」
「ほんまや! あんまり見たことないアーマースーツ着とるけど、もろブタ族やんけ! じぶん? ぶうちゃん丸出しや!!」
「ほえ、アストリオンはブタ族が主流っちゅうんは、ほんまやったんですか? せや、やたらにぶうぶうゆうてるし、一番はじめに出会うたのがこのぶたさんちゅうことは、ほんまに多数派なんや? ちゅうか、人相が悪そうなクマ族ってどえらい人聞き悪いことゆうてるけど、じぶんみたいな顔面ぶっさいくなぶうちゃんに言われたないわ、そないなこと?」
ようやく事態がそれと飲み込めたらしく、ここに至ってちょっとしかめ面でお互いの顔を見合わせる中尉どのたちだ。
おかげでなおのこと人相が悪く見えるが、それを横目で見ながらやれやれと肩をすくめる隊長のおなじくクマ族だった。
それから目の前でおびえてすくみ上がるばかりの当のブタ族、その実はまだ若いのだろう青年兵士に向けて言うのだった。
「まあまあ。ひと口にブタ族とは言っても、いろいろあるらしいんだけどね? そうか、きみって見たところかなり正当派の純血のブタ族と見受けるけど、そんなブタ族さんがこんなところで何をしているんだい? おまけにたったのひとりきりで??」
とりあえず同盟を結んでいる友邦国家の人間同士、なるべく紳士的に臨んでやるのだが、三匹、もとい三人のクマ族の中でも特に背が高くてがっちりした体格のクマさんのもの言いには、これが如実に引きつった表情で二歩三歩と後ずさる若いブタ族だ。
「ひいいっ、た、食べられてしまうんだブウっ!! ぶぶうっ、誰か、助けてくれなんだブウ!!!」
「そんなわけがないじゃないか! ほんとに人聞きが悪いな!?」
不覚にもついには目をむいてわめいてしまう。
かくして閑散とした通路に響き渡るおのれの声に、はっと我を取り戻すクマ族の隊長だ。
一度わざとらしく咳払いなんかして、改めて目の前のブタ族に向き直るのだった。
「おほん! いいから落ち着きなよ、いい加減に? お互いに偶然にもこうして鉢合わせしてしまったわけだけど、それぞれにそれなりの理由があってのことだろう? だったらきみはどこの誰で、何の目的でここに潜入しているんだい? そう、あとついでにここがこんな状態なのも、それと説明ができるなら是非とも聞かせてもらいたいもんだよな……!」
「ぶっ、ぶううううっ……! 敵ではないんだブウ? いきなりだからびっくりしてまったブウけど、怪しい見てくれだから味方とはわからなかったんだブウ、ほんとに味方なんだブウ?」
ひとの言葉をどうにも信用しかねるように不信感があらわなぶたっ鼻をひくひくとひくつかせるブタ族である。
対してこちらはみずからの太い首をはてなと傾げるクマ族だ。
「? 怪しい見てくれって、あ、後ろのふたりのおじさんたちのことかい? ひょっとして?? まあ、確かにこのぼくなんかと比べたらだいぶ派手なカッコをしてはいるけど……」
言いながらぐるりと背後を見回すのに、これに目と目が合うふたりの部下のおじさんたちは、どちらも納得したような釈然としないような何やらビミョーな面持ちだ。
「ほぇ、つまりはこのぼくらのカッコのことゆうてるんですか、そこのぶうちゃん? なるほど、かつての王宮付きの特務戦術曲技団、ひと呼んで〝サーカス・ナイツ〟の衣装やから確かにレアなんやと思うけど、そないにビビらんでもよろしいのに」
「なんやっ、人相が悪いやらカッコがダサいやら、ほんまに言いたい放題やんけ! ほんまに焼き豚にして食ろうたろか?」
「ダサいとまでは言われてへんのちゃう??」
「ひええっ! やっぱりおっかないんだぶう!!」
「やめなよ。話が進まないじゃないか? ん、それじゃこちらから話すよ。とにかく良く聞いてくれ。ぼくらはルマニアから派遣された、独立遊撃戦術戦隊のアーマー部隊パイロットで、後ろにいるのが仲間のザニー中尉とおなじくダッツ中尉どのだよ。ちなみにこのぼくが隊長のベアランド、少尉だよ。よろしくね!」
相手からの自己紹介にあって、それまでの驚きの表情の中に今度はまた違った別種の驚きみたいなものが浮かぶブタくんだ。
「隊長、ベアランド? ブゥ、えらい中尉がふたりもいて、なのにこの若い少尉どのが隊長さんなんだブウか? 確かに一番強そんなカンジはしてるんだブウけど……?」
いざここまでにいたる複雑な経緯も含め、いろいろとワケありの寄せ集め部隊だからほうぼうに違和感はあるのだが、いちいち説明するのが面倒なのでこの顔つき苦めるだけの隊長さんだ。
挙げ句、後ろでひそひそ話が聞こえてくるのにはいっそうのこと苦笑いになる。

「ほうれ、困惑しとるで? あのぶうちゃん! そりゃそうや、階級下の若手のクマさんが階級上のベテランのおっさんふたりも従えとるもんやから、わけわからへんのやろ! それをゆうてるこのおれもわけわからんし!!」
「ええんちゃう? いざ外に出て、おのおのが乗っかってるギガ・アーマー見たら、それで一発でわかるんやろうし。あないにいかついお化けアーマーや。それをひとりで切り盛りしてるっちゅうたら、アーマー乗りならすぐにも目の前のおひとの実力のほどっちゅうもんが、イヤでも理解できるんやろ」
「ははは……っ、で、そっちはどうなんだい? さすがにもう落ち着いただろ?」
左右の肩をすくめ加減に聞いてやるに、相手のやや小柄だが丸っこい太った体格のブタ族は、まだ緊張の取れない真顔でありながら鼻息荒く言葉を返してきた。
とりあえず落ち着いては来たようだ。
それだからビッと敬礼返しながらにうわずった声を張り上げる若手のぶうちゃん、もとい兵士である。
「これは失礼しましたんだブウ! じぶんはアストリオン大公国宮廷直属・近衛師団所属のガードムンク、タルクス・ザキオッカス准尉なんだブウ! 見ての通りのアーマー・パイロットで、友邦国の援軍に加勢するべくはるばる駆けつけて来たんだブウ!!」
「へえ、そう言えばそんなこと言ってたっけ? ぼくらの艦長(ボス)?? 確かにここでお互いに落ち合う予定ではあったんだけど、なんか大番狂わせでどっちらけちゃったな? なにせ攻略するべき基地はこんなありさまだし、あときみ、合流部隊はたったひとりだけなのかい? おまけにアーマーもなしに??」
そんなちょっと白けたふうな顔で見返しながら、だったら基地の外に停めてあったあのジープはきみのやつかい? とついでに聞いてやったところ、ビクンと大きく跳ね上がってなおさらに声を荒げるブタ族くんなのだった。
「ブウ? ああ、あいにくじぶんの新型アーマーはまだ調整が間に合わなくて……あ! そうじゃなくて、じぶんは大事な役目を負ってここにはせ参じたんだブウ!! ある大切なVIPの護衛とこれを無事にルマニアからの援軍部隊に引き渡すために! ブウ、でもそれなのに肝心のそのひとが……!」
「ビップ? あ、それってひょっとして……」
頭のどこかに引っかかりを覚えたらしいクマ族のビミョーな表情に、なおさら切羽詰まった形相のブタ族がわめいた。
クマ族たちはみんな顔を見合わせてしまうのだが。
「ぶううっ、絶対に無事に送り届けるようにと言われたその要人と、気が付いたらはぐれてしまったんだブウっ!! 一生の不覚なんだブウっ、何かあったらただじゃ済まされないんだブウっ! だから大慌てで探していたんだブウっ!!」
「なんや、それであないに勢い込んでぶつかってきたっちゅうんか? えらい人騒がせなこっちゃ、こっちは心臓破けるくらいにびっくらこいてもうて、しんどいわあっ……このブウちゃん!」
「迷惑なこっちゃで! あと大事な任務をもろしくじっとるやんけ? ほんまに大丈夫なんか、じぶん??」
「ビップってのがやけに引っかかるけど、ぼくの頭の中の人物と一致するなら、ちょっと同情しちゃうかな? 話には聞いていたけど、すっかり忘れていたよ。ここど合流する予定だったんだ、あの根性ひねくれた天才博士、もういいトシした犬族のマッド・サイエンティストとは……!」
「?」
おじさんたちが背後で顔を見合わせるのに、肩をすくめて会えばわかるよ、とことさらにビミョーな顔で視線をよそへと流すベアランドだ。げんなりした雰囲気がなぜか全身から伝わった。
それから改めてブタ族の若い士官と向き合う。
「この中ではぐれたのかい? だったらそう遠くには行ってないだろう、相手はけっこうな年寄りで、軍人でもないんだから」
「博士のことを知っているんだブウ? とりあえず中を探索して、動力室を探り当ててこの電源を復活させたら、そこで忽然とその姿を消していたんだブウ! 外で気配がするとかなんとか最後に言い残して……」
「気配? あ、それってもしかしたら……! この中でかくれんぼするのならかなりの一苦労だけど、それだったらむしろ来た道をまんま戻ってこの外に出ればいいんじゃないのかな? 他に行くあてなんてないだろうし、あの根性ひねくれた博士さんの興味を引きそうなものって、もはやアレしかないわけだし!」
「?」
なおさら首を傾げて目を見合わせる仲間のクマ族たちには、とにかく出ればわかるよ、とひたすら苦笑いの隊長さんだ。
それだから新しく仲間に加わったブタ族を引き連れて来た道をまんま後戻りすることとなる。
「さあ、それじゃタルクス、だったっけ? ぼくらと一緒に来ればいいよ。お目当ての要人にはきっとそこで再会ができるから。ちょっと急ごう。まかり間違っておかしなことされたら厄介だし、あの偏屈で有名な天才開発者の興味本位なんかでさ!」
「わ、わかったんだブウ! よろしくお願いするんだブウ!!」
「ほんまにぶうぶうやかましいぶうちゃんだぶう、やのうて、ブタくんやわ。おかげでうつってまいそうや」
「ちゅうか、もろにうつされとるやんけ! にしてもここまで来てまた戻るんか? なんやめんどいのう」
ちょっと早足で先を急ぐ若いクマ族に、ベテランのクマ族たちとブタ族がぞろぞろと続いて廃墟と化した基地の通路のチリやらゴミやらをドタバタと踏みしだく。
かくして何事もなく外に出たところで、そこでまた新たなる人物と遭遇するベアランドたち一行なのだった。
Part4

もと来た道を来たままにたどって、早足で最初の建物の入り口にまでたどり着いた、ベアランドたち第一小隊の面々だ。
半開きの扉から見える外界の乾いた景色はそこにこれと言った変化は見受けられない。なのではあるが、いざ外に出る時にはちょっとだけ慎重にあたりを見回してからの行動となった。
この直前、外部でおかしな物音と、かすかな振動が伝わったのに皆が一様にその顔つきをしかめる場面もあって。
その時、キョロキョロと鼻先を揺らしながらのダッツ中尉の言葉には、その場の誰もがいぶかしく首を傾げていた。
「いま、なんや発砲音みたいなもんがせんかった? ちょっと振動みたいなもんも伝わってきたし?? この足下、ちょい揺れたよな、なあ」
「知らんけど。なんや他にもおるんかの、おかしなもんが?」
「いや、今のはきっとぼくのランタンだね? どうやら外の何かしらに反応して自己防衛動作を発動したみたいだ。すぐに戻って来いって、異常感知のアラームも出てるし。ほら!」
自前の携帯端末の黒い画面の真ん中に、短く赤い警告文が出ているのを示しながら、入り口の手前で深呼吸してまずみずからが慎重に内部から乾いた外の大地に足を踏み出す。
「ん……!」
相変わらず乾いた風が吹くあたりには、これと目立った変化は見受けられなかったろう。
だがしかるに、それまではなかったはずのものが、ひとりの人影らしきがほどなく離れた場所に、ぽつん、とあるのを見つけるのだ。
用心してうかがうに、それ自体にはこれと危険性みたいなものは感じられなかった。見たところはあるひとりの小柄な男性らしきそれは、場違いな全体が白一色で裾と袖のやけに長い特徴的な見てくれした衣服で、つまりは白衣のそれだとわかる。
人気もなく殺伐としたこの場にはおよそふさわしくない、そのいかにもドクター然とした様相に、頭の中にあった人物のそれとすっかり合致するのを確信するクマ族の隊長だ。
おなじくそちらを見ている背後のおじさんたちが、さては怪訝な表情してるのがはっきりと気配で伝わったが、さらにその後ろからは、ぶひっと興奮したブタ族の声まで上がったりする。
「ぶううっ、いたんだブウ! あのひとなんだブウ! 博士っ!!」
「やっぱりね! いや、でもあの博士にわざわざ反応したってわけじゃあないんだよな、このぼくのランタンは? まあ、あれも立派な危険人物には違いはないんだけど……?」
ちょっと間の抜けた顔つきでジロジロと眺めてしまうのに、当の相手はなぜだかどこかあさっての方角を向いたまま、こちらにはてんで見向きもしない。
気配ではとっくに気付いているはずなのだが?
それに焦った護衛のブタ族くんがドタドタと駆けよってわめき立てて、はじめてこちらに身体を向ける白衣の人物だった。
「ぶうううっ! まさかこんなところにいたんだブウか? おかげで心配したんだブウっ、あんなにこのおれからは離れないでいてくれって、何度もお願いしてたのに!! ぶうっ!!」
ブタ族の護衛、タルクスのそれはあわ食った言葉にあって、だがあいにくでこれをただ怪訝な表情で見上げる相手の博士だ。
小柄で華奢な身を白衣に包んだ、かなり年配の犬族をちょっと真顔になって見つめながら、背後のおじさんクマ族たちには、ほらね?と意味深な目線をくれるベアランドである。
「VIPとも言われていた通り、かなりの重要人物ではあるんだけど、同時にまたかなりの問題児でもあるんだよね! あ、その顔つきからしたら、ふたりとも会うのは今日がはじめてなのかい? なら用心したほうがいいよ、いろんな意味合いで、ね?」
声のトーンを落として何やらやけに含むところがあるもの言いに、やや困惑気味のおじさんたちは冴えない面持ちで返す。
「なんやどないなひとかと思いきや、ただの貧相な犬族のおじいですやんけ? 吹けば飛ぶよな? なにがあかんのですか?」
「いや、それやったら噂くらいでは聞いたことありますわ。こうしてじかに見るのははじめてやけど。人畜無害っぽいちみっちゃいワンちゃん、ちゅうか、味方の技術者のえらい先生ちゃいます? それがこないな前線にまでわざわざ出てきはったんや」
反応ひどく冷め切ってこれと興味感心が希薄なベテラン勢に、それにつきすでに一度面識がある若手のエースパイロットは、若干のうんざり顔でついにはみずからの口元をひん曲げる。
「それってどんな噂だったんだい? 確かにルマニアきっての天才的科学者だけど、その性格や人となりが破綻しまっくってて、むしろそっちのほうが有名なんだよね。他に類を見ないほど独創的で革新的なアーマーの設計理論と思想がとにかくひとりよがりで独善的、かつこの言動が冷血にして非人道的な文字通りのマッド・サイエンティストってね……!」
ちょっとため息まじりでまた問題の上着の白衣が見かけ紳士然とした犬族をみてやるのに、こちらのことなどまるで意にも介さないような憮然とした態度面持ちの博士だ。
小柄だから見上げるブタ族に向けてぞんざいに言い放つ。
「やかましいぞ、この目障りなブタ族め。ひとを責めるよりもまずじぶんのふがいなさを恥じればいいだろう。護衛とは名ばかりで何の役にも立たない足手まといのこわっぱめが、片腹痛いわ」
みじんも容赦がない毒舌、聞きようによってはいわれのないただの誹謗中傷だ。それだからこれを真正面でもろに食らったブタ族のパイロット、タルクスは身体ごとのけ反っておののいた。
後ろで聞いてるクマ族たちからしてもどん引きだ。
「ぶううっ!? なんてことを言うんだぶうっ! 信じられないぶうっ、確かに護衛ではあるけど、そんな相手の一挙手一投足をいちいち見張ってなんかいられないんだぶうっ!! そっちこそ子供じゃないんだからちょっとは歩み寄ってくれないとっ……」
傍から聞いているぶんには納得のもの言いなのだが、独りよがりが服を着て歩いているかの犬族さまにはまるで通じない。
言い切る前にあっさりとはたき落とされていた。
おまけなおさら窮地に追い立てられる新兵くんだ。
「黙れ、たわけが。およそ無駄口と耳障りな鼻息だけだろう、きさまにできることは? おまけに図体ばかりでろくに空気が読めもしない、クマ族などという余計なものをぞろぞろと引き連れてきおって、つくづく役に立たないエスコートだな。言葉の意味、わかっているのか?」
「ぶううううううっ!?」
あえなく卒倒しかけて言葉を失う友邦国の友軍パイロットに、やむなく横からこの口を挟む若いクマ族の隊長さんだ。
「あらら、このままじゃお互いの友好関係が崩れちゃいそうだな? せっかくの援軍のパイロットくんとの! おまけに身内であるはずぼくらまでぶった切られちゃってるけど、ならさっさとこの身柄を引き渡してもらっちゃおうか! とっとと首根っこ掴んで黙らせたほうがいい……!」
「はあ、なんや気い悪いわあ! 言いたい放題やんけ?」
「ほええ、あないに噛みつかれてまうんですかぁ? 普通に口を聞いただけでえ? ほんまにしんどいわあ……」
「まあまあ、このぼくが相手をすればいいだけのことだから」
頼んます! とただちに敬礼されてすっかり任されてしまう。
ちょっと苦笑いしてから改めて小柄な犬族の老人に向き直る。
すると何か言うよりもこちらを低くからジロリと見上げてくる博士ときたら、有無も無きまま仏頂面して悪態の口火を切った。
やはり味方相手でもおかまいなしだ。
「ん、そもそもが貴様、何を間抜け面してそんなところに立っている? お前がいるべき場所はとうに決まっているはずだろう。まったく職務放棄もはなはだしい。まともなヤツが誰一人としておりはしないのか、このわたしを除いては?」
「ひどいな! みんないたってまともだろうさ、博士ひとりをのぞいては? あ、じゃなくて、博士、無事で良かったよ。護衛のこのタルクスとはぐれてどこぞかで迷ってるって話だったから? 見たところじゃ余計なこともまだしてないみたいだし、ぼくのランタンとかにさ!」
ほとほと困って苦笑いの対応に終始するクマ族に、札付きのクレーマーの犬族は不機嫌極まりないさまでのたまう。
「ふん、迷っていたのはそこの愚図のブタ族だろう。余計なこととはなんだ? 久しぶりの対面にある種の感慨にふけっていただけのこと。そうとも、このわたしの最高傑作たるギガ・アーマーとのだな?」
「ああ、王陣の番兵ならいたって健在だよ。バンブギン……あいにく今はランタンて呼ばれてるけど。やっぱり懐かしいのかい? あとぼくのこともしっかり覚えていてくれたみたいだし」
「ふん。貴様らのくだらない番犬など造った覚えは無い。大仰な名など、ただのお飾りでなんの意味も持ちはしないのだから。あいにく貴様の名前も覚えてはいないしな。ただ現状で唯一あれを動かせるパイロットとしての意義なら、無論、理解はしている。それ以外、貴様に意味などありはしないだろう?」
「ほんとにひどいな!! 名前くらい覚えておいてくれよ、ベアランド、こんなに覚えやすい名前もあったもんじゃないんだからさ。ぼくらの国じゃあ、ね、シュルツ博士? どうしてこんなところで合流したのか理由を聞きたいけど、どうせろくなことじゃないんだろう?」
ひどく苦い顔してあえて聞くまいと視線を逸らしてから、改めて小柄な犬族に問いかけた。
「ああ、そうだ、ぼくのランタンが今し方に警戒行動に出たはずなんだけど、まさか博士を相手にしてってわけじゃないよね? いくら危険人物か知らないけど、たかが人間相手に反応することはないはずだから。だったらこの場で果たして何に警戒したのか、博士、何か心当たりがあったりはしないかい?」
「知るか。このわたしの知ったことではない。わたしの興味は目下あそこにあるアレにしかないのだから。見たところではそれなりマシに扱えているようだな? メンテナンスはさぞかし腕がいいようだ。余計なアレンジを加えていないところを見ると……」
何を聞こうがどこまでも小憎らしく横柄な態度でつっぱのける博士は、あくまで自分の言い分をまくし立てるのみだ。
対して顔つきがげんなりとなる隊長だった。
「はあ、頭のてっぺんからつま先まで完全オリジナルで、他に共有できる機体がないんだから、アレンジなんかやりようがないじゃないか。それに見たらビックリするよ。ただし内気な子だからお手柔らかにね……あ、聞いてるかい? 博士!」
およそ他人の言葉を聞いてるのかいなのか、さっさとその場からきびすを返す犬族の老人にいよいよ匙を投げかけるクマ族だ。
「ふん……貴様らの艦はまだ来ないのか? そろって愚図ばかりだな。早くドックに収納してあれの運用データを見たいところなのだが。貴様の評価はその後でだ。良ければ名前の一つでも覚えてやる……!」
「今さっき名乗ったばかりじゃないか! あ、ボディ、たぶん熱くなってるから不用意に触らないでくれよ。手が焼けちゃうし、ヘタにいじられたくもないから! ああ、ほんとにこらえ性がないじいさんだな! 完全に自分を中心にして世界が回ってると思ってるよ……」
最後の悪態は小声でこの足下にだけ落として、左手にそろって直立する三体のアーマーの、中でもこの一番奥に控える大型の巨人へと早足でにじり寄る小柄な影をみやる。
背後でおじさんたちが文句をぶうたれるの聞き流しながら、ぐるりと辺りに視線を送る隊長だ。
「なんや、おれらのアーマーは完全に素通りしていきよったで、あのおいぼれのせんせ? ほんまに気い悪いわ! 仮にもアーマーの設計者ゆうんなら少しは気にせいよ」
「ええんちゃう? 絡まれたら厄介やし。こっちもあないな偏屈なおじいと絡みたないし。少尉どのにお任せやわ」
「まあ、そうだね……!」
辺りにおかしな気配がないことを改めて確認しながら、ちょっとだけ内心で首を傾げる部隊長だ。
鼻先をくすぐる乾いた風にかすかな違和感じみたものがあるのは気のせいか?と風の吹き寄せる彼方を見やる。
虚空に目を懲らしてもそこに何も答えるものはない。
ならじきに母艦が来るだろうことを考慮して、そちらに意識を向けるのだった。ここまではおおむねで良好だ。
ブタ族の青年に博士のおもりを今しばらく頑張ってもらって、それぞれがみずからの持ち場に戻るように指示する。
背後の建物、放棄された基地の裏手の絶壁、その頂上から静かに見つめる何者かの目線があるのは気付かないまま……!
※次回に続く…!
「アストリオン上陸作戦」プロット
アストリオン情勢
アストリオン・中央大陸(ルマニア・東大陸/アゼルタ・西大陸)
アストリオン・種族構成・ブタ族、イノシシ族、イノブタ族などがおよそ半数を占める。アストリオン自体は宗教色の強い、宗教国家でもある。元首・イン ラジオスタール アストリアス(家)
アストリオン・大陸構成
東側 アストリオン 60%
中央砂漠 空白地帯 25%
西側 ピゲル大公家 15%
西側は過去にあったルマニア(タキノンが領事だった?→後のタルマとの確執になる?)とアゼルタのゴタゴタで独立を宣言したピゲル公爵の独立領となり、後にアゼルタと同盟関係になる。
主人公、ベアランドたちが目指すのは、大陸の北岸地域から侵入して、大陸内陸部の中央砂漠にあるアーマー基地。今は西の大公家と結びついたアゼルタの支配下にあるのだが…?
実は無人化している?? レジスタンス(ベリラ、イッキャ?)の暗躍…!?


Part1
晴れ渡る空の下、西から吹く風はとても穏やかだ。
海面から高度およそ1000メートルの空中での対峙から両者、しばしの沈黙――。
まずはどちらから動くこともなく、しごく冷静に互いの隙をうかがう二機の隊長機だった。
その内の一方で、とかく大型で全体が濃緑色をした新型アーマーを駆るクマ族の若きエースパイロットは、ペロリと舌なめずりしてひとりごちする。
背後でやたらドタバタしているらしいベテランのおじさんパイロットたちのわめき声が今も左右のスピーカーからリアルタイムで垂れ流しだったが、そんなこと一切気にもとめずで正面のメインモニターをひたすらに注視していた。
「ふうむ、やっこさん、さっきからまるで動くそぶりが無いけど、どうしよっうてのかな? このまんまにらめっこするわけじゃないだろうに、さてはこっちから仕掛けるのを待ってる……なんて受け身なヤツでもありゃしないよね? んっ……!」
不意に耳朶を打つ、どこからか通信が入ったことを知らせる短い電子音とともに、メインモニターの一角にこの通知ウィンドウが表示される。
ただの一瞥してそれが目の前に仁王立ちする敵アーマーからのものだと理解するベアランドだが、やや苦笑いしてどうしたものかと考え込んだ。
「あらら、軍用でなくてちゃちな民間用の一般回線なんかで通信してきてるよ……! 確かにあちらさんの軍用回線のコードなんてわからないから、これが一番手っ取り早いんだろうけど、えらく割り切った隊長さんだな? どうしたもんだか……」
言いながらも手元のコンソールに利き手を伸ばしてスイッチをあっさりとオンにするクマ族の隊長だ。
こちらもとかくあっさりとした性格の持ち主だった。
するとただちに目の前の画面に見たこともない若い軍服姿の男が、このバストアップで出現するのだった。
てっきり音声でのみの交信をするものだと思っていた若いクマ族は、目をまん丸くして思わずそれに見入ってしまう。
ぱっと見ではもっさりとした見てくれの地味なカーキと焦げ茶の軍服、いわゆるパイロットスーツであったが、その実はすらりとしたスリムな体型であることがうかがえる男は見たところまだ若いキツネ族で、それがやけに落ち着き払ったさまでこちらを見返してくれている。
堂とした相手のさまに、片や内心でビックリしているのを見透かされてはいまいかと前のめりだった姿勢を背後へと落ち着けて冷静を装うのだが、ちょっと苦笑いして肩をすくめてしまった。
「あらら、まさかの画像付きで顔まで拝めるとは思ってもみなかったね! ビックリしちゃったよ。あ、てことは当然、こっちの顔もバレちゃってるんだ? いやはやまったく、誰でも傍受可能な一般の通信回線で、隊長さんがやるようなことじゃないだろうさ……!」

今さらだと取り繕うのをやめて思ったことをまんまぶっちゃけてやるに、この表情がぴくりとも変わらない相手機の隊長、こちらもまだ若いのだろうキツネ族の男は、済ましたさまで静かな口ぶりのもの言いをしてくれた。
「フッ……! このような見え透いた挑発にいともたやすく乗ってくれるあたり、貴様もなかなかのうつけなのであろう? そのふざけた見てくれのアーマーといい、相手にとって不足はなし。あらためて気に入ったぞ……」
それはやけに雰囲気のあるさまで、おまけ勝手に何かしらの納得をしたものか?
静かに左右の目を閉じる、キツネ族の男だ。
アーマー同士の戦闘中に大した度胸だった。
このあたり、えっ?と妙な違和感を感じる若いクマ族は、とてもビミョーな感じでそれを見てしまうが、真顔で瞳を開ける相手のキツネはまたさらに好き勝手な言いようでのたまうのだった。
静かな口ぶりでやたらな凄みがあるが、一方的に聞かされるクマ族の耳には、もはやちょっと痛い感じで聞こえていたか?
「名を名乗れ……! この場を限りに切って捨てるつもりだったが、いいや、貴様とは長い付き合いになるのやもしれん……そうよ、これまでの戦いが物語っている。不敵な面構えがやはりあなどれぬ男よ、違うか、クマ族の隊長どの」
「は? 何、言ってんの?? 名を名乗れっていきなり……! そういうのってまずはそっちから名乗るものなんじゃないのかな? 別に構わないんだけど、名乗らないとはじまらなかったりするのかな?? なんかおかしな展開になってきちゃったよ。通信に出たの、ひょっとして失敗だったかな……」
また大きく肩をすくめてしまうのに、モニターの中でこちらと対面する見てくれシュッとしたさまのキツネ族は、相変わらずひたすら静かなまなざしでこちらを見ている。
内心で舌を巻くベアランドだ。
「やれやれ、わかったよ。名乗ればいいんだろう? 戦場でのんきに名刺交換もありゃしないもんだけど、ぼくの名前はベアランドだよ。呼ぶならそう呼んでくれ。まんまで笑っちゃうよね! よもやフルネームは必要ないんだろう? なんならこのスリーサイズも教えてあげようか??」
そう観念したかに告げてやるに、だが茶化したセリフは一切、聞き入れないひたすら真顔のキツネ族は、どこまでも落ち着き払ったセリフまわしでまたほざくのだった。
「ベアランド、とな……なるほど。心に留め置いてやろう。この場で果てるような見かけ倒しの腰抜けではないと見越して……! わたしの名は、キュウビ・カタナ……カタナと呼ぶがいい」
「あらら、ご丁寧にフルネームで! でもそんなの呼ぶ機会はお互いにないんじゃないのかな? とりあえず覚えておくけど。なんの時間だったんだ。もう切ってもいいよね? この通信??」
「フッ、それがこの戦いのはじまりだと、貴様がとくと理解しているのであればな……好きにするがいい」
「あ、そ! じゃあね!! 背後のおじさんたちがえらくはしゃいじゃってるし作戦遂行中だから、遠慮無く切らせてもうよ! お互いに後悔しないように全力を尽くそうね、気取ったキツネのイケメン隊長さん!!」
「カタナだ。そう呼ぶことを今し方、許したはず……」
もはや聞く耳持たないクマ族の若い隊長さんだ。
「ようし、ランタン、パワー全開でただちに戦闘機動だ! あのおかしな白いアーマー、やたらにすかしたキツネ族の隊長さんをとっとととっちめてやるぞ!! 全砲門開いてお前の本気をしっかりと見せてやれっ!!」
Part2
※ベアランド小隊、ダッツとザニー、キュウビ小隊、チャガマとゴッペのコンビのアーマー・バトル!時間があれば…!!
保留w
Part3
大空に縦横無尽に無数の光りが走り、轟音がとどろく!
ビームと銃弾が激しく交錯する二機のアーマー同士の決闘は、いよいよ佳境を迎えつつあった。
ベアランドが搭乗する新型アーマーの周囲を凄まじいスピードで駆け巡り、四方八方から銃弾を見舞う敵のキツネ族のアーマーは、一瞬だけその動きを止めて、また互いに正面でこの機体を向かい合わせる。
白の可変型アーマーが今はスリムな人型のロボット形態となって空中に直立して静止。そのコクピットの中で正面のモニターをにらみ据える若きキツネ族の隊長は、異様な見てくれをした緑色の大型アーマーに向けて言葉を発するのだった。
あいにくとあちらからの通信は切られていたので聞こえはしないのだが……。
「フッ……! どうした、まだその実力の全てを見せてはいないのだろう、貴様は? のらりくらりと攻撃をかわすだけでは戦には勝てはしないぞ。いい加減に本気を出すがいい……!!」
いいざま殺気を放って操縦桿を手前に引き寄せる、自らをカタナと名乗ったキツネ族は目に止まらぬ足裁きと利き手のクイックモーションで機体をジェットフライヤーに変形、急上昇させる!
対するクマ族の隊長、ベアランドは飛行タイプで特攻さながらに急接近する敵影、これを反射的に真正面から受けてやろうと待ち構えるが、それが突如として目の前で急停止、おまけロボットのアーマー形態で対峙するのにちょっとだけ意表をつかれる。

「そんな無理矢理な突撃かけようがパワーとガタイのでかさじゃこっちが上さ! はたき落としてくれるっ……て、なんだ、いきなり急停止してそんな見つめられても? て、また!!」
つかの間の静寂だけ感じさせてさっさと飛行形態に変形、かつ上空へと逃げ去る敵影を一度は視線だけで追いかけるが、また直後には舌打ち混じりに背後へとその視線を転じていた。
目にも止まらぬ素早い機動で相手を攪乱した後、この死角を突いてくる敵のやり口はとっくに理解していた。
よって思ったとおりにこの機体の背後に上空から急襲かけてくる白いアーマーの影を、目の端でチラとだけ確認するなり迷わず手元のトリガーを引き絞るベアランドだ。
「ほんとにひとのバックを取るのが上手だな! いやらしいったらありゃしないよっ、でもあいにくとコイツに死角なんてありゃしないんだ! そら、ランタン、一発食らわせてやれ!!」
ドドンッ……!!
大きくていかつい見てくれの機体の至る所、果ては背後にまで装備した高出力のビームカノンを一斉射して不意打ち見舞ってやるが、憎らしいこと相手はかするでもなくこれを難なく回避してのける。
だがおよそ山勘で撃ったのは、はなからただの牽制のつもりだったクマ族のエースパイロットは、その隙に大型の機体をぐるりと反転させてまた敵のアーマーと真正面で対峙する。
ここでまたつかの間のにらみ合い……!
その末にもはやいっそゼロ距離射程での肉弾戦、ドッグファイトに持ち込もうかと図体のでかい機体のスロットルを利き足で踏み込むベアランドだが、あいにくと敵の白い影はこの姿をまたしてもやでいずこかへとくらましていた。
スピードではいささか分が悪いのがイヤでも思い知らされる。
「あらら! こりゃあらちがあかないな? いつまで経っても無意味な追いかけっこのまんまだよ。ひょっとしたらこっちのエネルギー切れを狙ってたりして? あの異常なスピードに対抗するのはできなくはないけど、一か八かなんだよな……!」
通常よりも巨大な機体の鈍重さを補うためのギミックとして、それすなわち本体から切り離して遠隔操作が可能な、両腕の独立機動型のハンドアームカノンがそれを担っていたが、これは既にネタがバレているので無闇やたらには使えないと承知していた。
相手のただならぬ力量から察するに、これ見よがしなロケットパンチは簡単によけられた挙げ句にまんまと撃ち落とされたりしかねない。母艦でこの帰りを待っている若いクマ族のチーフメカニックの青ざめた顔が脳裏によぎって、かなりためらわれた。
おまけ壊れたパーツを海から引き上げて持ち帰るのもかなりの難儀だ。開発経緯が何かと特異な新型機では従来機との部品の共有も困難だった。
内心で舌打ちしてしまうが、ふっと正面のメインモニターの左の隅で何やらやたらにガチャガチャとした光景が見切れた気がして、そちらに意識を向ける隊長のクマ族だ。
すっかり失念していたが、同じ部隊のメンバーのベテランのおじさんクマ族たちがかなり混乱したさまで自機のアーマーを右往左往させているのにパチパチと目を白黒させる。
「あっ、ダッツ中尉とザニー中尉どの、経験豊富なやり手のクマさんコンビがずいぶんと苦戦してるみたいだな? 意外と?? そういや相手のおんなじ赤と青のカラーリングのアーマー、どっちもかなり特殊な兵装だったけど、出撃前のブリーフィングで説明してなかったけ?? 所見でアレは確かにしんどいか……!」
左右のスピーカーはやたらとうるさいから今はオフにしていたのだが、あらためてオンにすると思った通りだ。
やかましいおやじたちのわめき声が左右の耳をつんざいた。
やはりこれまた思った通りの展開らしい。
それにつき、ははん、とひとりで納得する隊長さんだ。
「そうそう。あの赤い大型のアーマー、相手からのビームのエネルギーを機体前部にあるあのおかしな形のシールド・ジェネレーターで吸収して、おまけに跳ね返すだなんて反則じみたマネをするんだよね! それを相棒のあのやたらに身軽で小回りがきく青い小型のアーマーがさらに空中ではじき返して、あらぬ方向からカウンター攻撃を繰り出すだなんてこれまたとんでも戦法で相手を攪乱するという……あ、そっか! その手があったか!!」
ピンと何かしら閃いた顔つきでペロリと舌なめずり。
おまけに頭の左右の耳を楽しげピクピクさせるクマ族は、にんまり顔でもう傍らの白いアーマーへと向き直る。
「へっへ、いいこと思いついちゃった! 毎度毎度で申し訳ないんだけど、この場をお開きにするとっておきの戦法がぼくらにはできるんだよね? 思えば前回もピンチをこれでまんまと切り抜けたし♡ あの赤いアーマーくんには悪いんだけどさ……!」
アーマーの主動力源、メインエンジンのパワーバランサーを素早く片手で操作しながら手元の通信機のスイッチをオンにする。
すると通常の一般回線のそれはまだ生きていたようで、そちらに向けてしたり顔して言ってやる。
「おほんっ、ええ、聞いてるかい、キツネ族のやり手の隊長さん! ん、カタナ、だったけ? あいにくとこの場で決着はつけられなかったけど、とりあえずで判定勝ちくらいは決めさせてもらうよ。当然このぼくらのね!」
「……貴様、何を言っている? うつけたことを……」
やや間を置いて聞こえてきた怪訝な相手の返答には一切、耳を貸さずに一気にまくしたてた。
「悪いけどこっちもいろいろと忙しいんだ! 本来の目標はもっと先だし、なるべくならみんな無傷でたどり着きたい。ここでこんな消耗戦は望まないんだ。戦場は広いんだから、またしかるべき時にしかるべき場所でお相手するよ。それじゃまたね!」
言うなり今度は左右のスピーカーに向けてがなるクマ族だ。
「ダッツ、ザニー、両中尉とも流れ弾に気をつけてくれよ! ちょっと無茶なことをするから、とにかく全力で回避してね!! それじゃっ、ランタン!」
いきなりのおまけ何やらただならぬものの言いに、左右の耳にはびっくりしたようなおじさんたちの声が絡みつくが、やはり一切気にせずで握った両手の操縦桿に力込めるベアランドだ。
「よっし、なんの予行練習もなしにいきなりでアレなんだけど、フルパワーで全砲門一斉射撃だ! フルレンジバースト! ついでにメインのコアブラスターも完全解放、拡散なしの一点集中でぶちかますよっ、狙いは当然、あの赤いアーマーの突き出た土手っ腹のジェネレーターだ!!」
一度深呼吸しながら手前に引き寄せて、雄叫び発してただちにそれらを思い切りに押し倒す。
「そおらっ、ゆくぞ、ランタン! おおおおっ、フルバーストしてからのおっ、はああっ、ライトニングボルトぉおおっ!!!」
その瞬間、すさまじいエネルギーの圧がその機体の全身から吹き上がるのがよそからでもはっきりと見てとれただろう。
巨大な身体中の至る所に装備された無数の砲門が一斉に光りの光弾を四方八方へと吐き散らす。
それはそれは壮観な眺めだが、その場に居合わせた周りからしてみればおよそただ事ではない大惨事だ。
敵味方お構いなしに放射状に放たれる光りの束、ひとつひとつが戦艦の主砲さながらの灼熱のエネルギー弾は、ただの一発食らえば機体が粉みじんになりかねない。
しゃがれたおじさんたちのたまぎる悲鳴や怒号が聞こえたが、そこにはひとつも耳を貸さないで画面の左の奥にターゲットした目標をにらみ付ける隊長だ。
機体前面下部、腹からやや下のおよそ股関節あたりに位置する固定型の大型キャノンはここぞという時のための奥の手で、ひとたび唸りを上げれば射線上にあるもの全てを灰燼と化すほどの飛び抜けた威力を秘めていた。
ただしその代わりにひとたび撃てばエネルギーの損失が激しく連発は不能、かつこれ以降の機体の戦闘機動にかなりの支障を来したりもした。
ぶっちゃけ機体上部に装備した戦艦ばりの大出力シールドジェネレーター(バリア)の稼働がしばらく不可能になるほどの大食らいなのだが、そこにつけ込まれてはかなりキビシイ局面におちいる。
言うなれば諸刃の剣だった。
よって右手のモニターに映る敵の隊長機を目の端っこだけで意識しながら、だがこの焦点はしっかりと赤いアーマーにのみこの意識を集中させるやり手のクマ族だ。
してやったりと右の拳でガッツポーズをつくる。
「やったね! 大当たり!! ど真ん中にど直球でぶち込んでやれたよっ、さすがにキツいだろう? 戦艦の主砲を何発もまとめて食らった大ダメージはいかにエネルギー吸収型の新型ジェネレーター搭載機でも無事でいられるはずがない! ほうらね!!」
機体各部から白い煙か蒸気みたいなものを発する赤いでぶっちょのアーマーに、にまりとほくそえむ隊長さんだ。
左右のスピーカーからは部下のおじさんたちからあわ食った声が聞こえるが、やはりしれっと聞き流した。
そうしてぐるりと視線を左手のモニターへと向かわせる。
「ちょちょちょっ、なんやねんっ、いきなり!? びっくりしたあ!!」
「た、た、隊長、いきなりなんですの? わけがわからへん、どないして??」
「いいから! ぼくらの勝ちだよ、それだけだ! 見てればわかるさ♡」
「なんでぇ?」
「ほええ??」
ひどく動揺したおやじたちの声をやり過ごしながら、相手の隊長機の挙動にのみ意識を集中――。
するとつないだままの通常回線からかすかな舌打ちめいたものが聞こえたようで、回線をぶち切るなりに白いアーマーはあらぬ方向へとこの向きを転じる。
「ハッ、やっぱり、そうなるよね? 前回の時もそうだったけど……!」
頭のメインカメラが追尾する景色、およそこちらからの射程を外れた大回りの機動で被弾した仲間の元へと合流する白いアーマーは、息も絶え絶えかのような赤い大型アーマーと青い小型アーマーに転進を命じて、みずからはダッツとザニーのアーマーに威嚇の射撃を食らわせながら自身の機体もじりじりと後退させる。
これにて勝負ありだ。
負けじと気を吐くふたりのおじさんクマ族たちには深追いはするなと伝えながら、遠ざかっていく三機のアーマーをモニター越しに見送るベアランドだった。
「ふうむ、ああやって負傷した部下を見過ごしておけないってあたり、やっぱりいい隊長さんなんだよな? 性格的にあんまりおともだちにはなりたくないけど。やれやれだ! さすがに3度目はもう通用しないだろうから、また他の手を考えなくちゃね。そもそもリドルはこんな無茶なやり方、あんまり賛成はしてくれなさそうだし……」
いいながらちょっとだけ思案を巡らせて、残る仲間の機体に向けて通信を開く。
「それじゃ、ダッツにザニー中尉、休む間もなしにアレなんだけど、見たところどっちも機体に目立った損傷はなさそうだからこのまま目的地のアストリオンに……ん?」
不意にモニターの真ん中に浮かび上がる注意喚起のビックリマークと短い電子音の警告に、場の空気がちょっとだけ静まりかえる。
「え、今さら新手かい? いや、なんだろう、何かがぼくらの背後からやけに低速で近づいてくるぞ? これって……」
機体をぐるりと背後へと巡らせて、メインカメラが改めて捉えた映像に見入るクマ族の隊長はややもせずに納得していた。
「あ! あれって、ビーグルⅣだよな? リドルの補給機か! わざわざここまで追っかけてきてくれたのか、ありがたいな♡ 燃料と弾薬の補給ができるし、日が暮れる前までに内陸のポイントまで行けそうだ。それじゃ、合流するよ、我らが天才メカニックくんのお世話になろう、まさかの空中補給とは、でもこれはこれでいい訓練だよね!」
強敵との戦いから仲間の補助を受けて、また新たな任務、本来の目的へと駒を進めるベアランド小隊であった。
目的地の中央大陸はひたすらな広がりを見せて大海に横たわる。
その遙か内陸の地に、目指すべきターゲットがあった。
戦いはこれからなのだと弛みかけた気を引き締めるクマ族小隊である。
※次回に続く……!
プロット ベアランド vs キュウビ
お互いに通常回線でのやり取り、
ランタンとゼロシキの空中戦
ダッツ、ザニー vs チャガマ、ゴッペ
Part1
若いクマ族の小隊長が見ているさなか、おじさんのベテラン・クマ族コンビと、対してこちらはまだ若手なのだろう、敵アーマー・パイロットたちによる、新型アーマー同士の空中戦は、いざ始まればすぐにもこの大勢が決しようとしていた。
経験値の差もさることながら、それぞれのアーマー自体の性能差がもはや歴然、結果はやはり、はなから知れていたらしい。
よってあと少しで勝敗がつくのではと思われたところでだ。
だが不意に、それぞれのコクピット内に短い警告音、甲高いアラートが鳴り響く……!
これに反射的に目にした手元のレーダーサイトには、目指す大陸の西海岸域方面から出現したとおぼしき、また新たなる複数の敵影が、こちらに向けてまっすぐ急接近するのがはっきりと見て取れる。
これによりようやく今回の本命が登場、本番が始まったのだなと気を引き締めて正面のモニターに臨む、隊長のベアランドだ。
当人としても、そろそろだろうと予期はしていた。
迫り来る影は、いつぞやに見たものとまさしく同一であることを、それとしっかり視認もする……!
強敵だった。
ベアランド小隊(第一小隊) 隊長・ベアランド少尉(クマ族)、部下・ダッツ中尉(クマ族)、ザニー中尉(クマ族)と、その搭乗するアーマーのイメージ図。ベテランクマ族コンビのアーマーに、めでたく色が付きました!






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接近する影は都合、三つ。
そのどれもが以前に会敵したことがあるものと同じであることを、正面のメインモニターに一時的に浮かび上がる、戦況表示ディスプレイがそれと教えてくれる。
アーマーの頭脳たる高度集積戦術コンピューターが相手機のデータを適宜に解析、覚えていたものと100%の確率で完全適合。
それらの中でもこの先陣を切ってこちらに突撃してくる高速機動型のアーマーは、これがなかなかにあなどれない実力者であることを、もはやその身をもって経験している隊長さんだ。
これはさしもの腕利きのベテランクマ族コンビでも、油断していたら一撃でのされかねないな……!!
と、それまで背後に控えさせていたみずからの大型アーマーを、慎重にゆっくりと微速前進させる。
どちらも戦いの最前線を渡り歩いてきた有力者たちなだけに、何かと我が強い、ダッツとザニーの両中尉どのたちだ。
よってこれにさてなんと言ってこの場を説明したものかと内心で頭をひねるのだが、何か言うよりもあちらのほうから何やらして、いささか気の抜けような声が通信機越しに入ってきた。
「はえ、なんやようわからんけど、相手のひょろっこいアーマー、どちらも下がっていきよるでぇ? カトンボが気配を殺して姿をくらますみたいによう? 隊長ぉ、どないしましょ??」
「え、そうなのかい? あ、ほんとだ! あっさり引いていくね? まったく引き際がいいやら、やる気がないのやら??」
これまでダッツとザニーの相手をしていたはず、モニターの正面に捉えられていた二機の飛行型アーマーは、そのどちらともが新手が入ってくるのと入れ替わりに、この機体を我先にとその場の戦闘空域から離脱して遠ざかっていく。
すぐにもただの点と点になるのだった。
事実、目の前のレーダーサイトからも、この機影がことごとくして消失……!
援軍の到着に、これ幸いとしっぽを巻いて逃げるかのごとくにだ。傍目にはあからさまな敵前逃亡かのようにも見えたが、新手の敵影ときれいに入れ替わるさまからすれば、必ずしもそういうわけではないらしい。
はなからそうする算段だったのかと首を傾げるベアランドだ。
そう、つまるところで主力がこの場に到着するまでのただの時間稼ぎ、言うなれば〝噛ませ犬〟だったのか?
するとこのあたりにつき、もうひとりのベテランのクマ族のパイロット、ザニーがこともなげに言ってくれる。
「ほぇ、ほんだらばあないなザコちゃんアーマー、ほっといてええんちゃう? それよりもまた勢いのあるのがようさんよそから来ておるさかいに? 言うてまえばあちらさんが本命なんやろ」
こちらの隊長にではなく、同僚のおじさんに向けて言ったものとおぼしきセリフには、思わず苦笑いして同意する。
「あ、するどいな! それじゃここからは、あの後からぞろぞろやって来たのにみんなで集中だね! ちなみにぼくは既にやり合ったことがあるんだけど、どれもなかなかの強敵ぞろいだよ?」
その瞬間、通信機越しにやや張り詰めた空気が伝わるが、おびえよりも低いうなり声とやる気がみなぎる。
ここら辺、やはりどちらもやり手のアーマーパイロットだ。
先日のまだなりたての犬族の新人コンビたちとは明らかに戦場での身のこなしが違う。これにまずは安心しつつも、また脳裏にある種の不安もよぎるベアランドだ。
そうこうしている間にも、迫り来る敵アーマーがこちらとの交戦空域に入ったことが、甲高いビープ音ともに知らされる。
中でも特にスピードの速い高速機動型のアーマーが、やはり単身で突っ込んでくるかたちだった。
前に会った時のままのそれはやる気の有り余るさまに、対して内心でひどくげんなりとなるクマ族だ。
どうにも執念深いことで、もはや目の敵にされているのがありありと伝わってくる。
これに即座に対応しようとするベテラン勢には、あ、いや、ちょっと待って!と、やや慌ててツバを飛ばす悩める隊長さんだ。
「あ、待った、それは無視してくれて構わないや! なんたって速くて強くて厄介だし、どうせこのぼくがお目当てなんだからさ? 中尉たちは後からおっかけてくるあっちの子分のアーマーたちをお願いするよ。あれはあれでまた厄介なんだけど……!」

「ほえ? 無視してええんですか? ぼくらはその後にやってくるやつらを相手にせいっちゅうことでぇ?」
「なんやようわからん! あないなただ速いだけのジェットフライヤー、おれらの敵やあらへんやけ? そないなもん、どないして避けなあかんの??」
通信機越しに左右のスピーカーからはどちらもややいぶかしがった返事が返るのに、内心で動揺しながらもあくまでベテラン勢を刺激しないような言葉を選ぶ、ベアランドだ。
「ああ、いや、あちらさんはもともとこのぼくだけに用があるみたいだから、そっちのほうははなっから完全に無視してくれちゃうと思うんだよね? だからその、無理して中尉たちが横から絡まなくてもいいってわけで! あとあれってのはああは見えて、現実はそう、ただのフライヤーじゃあ、ないからっ……!!」
これまでの戦いから、この歴戦の勇者たちの力をもってしても、ひょっとしたら危ういかもしれないと直感的に悟っていた。
その動揺を悟られまいと平静を装った態度そぶりに努めるのだが、あいにくと相手のおじさんクマ族たちからは、何故だろう、わずかな沈黙が通信機のスピーカー越しに伝わってくる。
その瞬間、果たして何を考えたものか?
ふたりのベテランパイロットたちは、みずからの顔を映したモニター越しの視線のやり取りだけで、何やら互いにはっきりとした意思の疎通をしてくれたらしい。
この時、イヤな予感が脳裏によぎりまくる隊長さんなのだが、果たして同時にその顔に不敵な笑みを浮かべる中尉どのたちだ。
よってこちらの忠告もそっちのけで、向かってくる見てくれ戦闘機タイプの敵めがけてみずからのアーマーを急速発進させる。
もうやる気が満々だった。
この部隊リーダーの意図などは完全に無視だ。
はじめげんなりしてそのさまを見るベアランドは、焦りと困惑で思わず声をうわずらせる。
「ああっ、だから、それは無視していいんだって! このぼくの担当なんだからさ!! 強いしとっても厄介なんだから!!」
「わはは、せやったらなおさらおもいろやんけ! 隊長の相手だけやのうて、こっちもしっかりサービスしてほしいもんや、バリバリ歓迎してやるさかいに!!」
「せやんな、ほな隊長さんはそこでよう見といてください。ぼくらでしっかりおもてなししてやりますよって。元よりあないなジェットフライヤーごときに遅れを取るよなこのぼくらやないですさかいに……!」
「いやいや、だから違うんだって!! ああ、もう、ろくにお互いの連携が取れないんじゃひどい混戦になっちゃうじゃないか? これってれっきとした上官に対しての命令無視だよ!?」
しまいにはちょっと嘆いてしまうのに、ずっと年上で経験に勝るパイロットたちは、やはりいっかなに聞く耳を持たない。
どちらのスピーカーからか、上官ちゅうかそっちのほうが階級下やんけ!みたいな本音が漏れていたが、それはあえて聞こえなかったことにする若手の部隊長だ。
そんなものだから慌てる隊長が見ているさなかにもさっさと敵の先鋒、その実をして一番の強敵と交戦状態に突入していた。
挙げ句、左右のスピーカーからどわっと驚いた声が上がったのは、その直後のことだ……!
「んん、なんやそれ!? ちょちょ、ちょい待ちぃ!!」
「ほえ、なんや、いきなり変形しおったで? ただのジェットフライヤーちゃうんかったんけ?? ぬぐおおおおおっ!?」
「ああっ、もう、だから言ったじゃないか!!」
およそ危惧していた通りの展開に、思わず天を仰いでがなってしまう。
二機の僚機のすぐ手前まで猛然と突撃をかけてきた戦闘機型の敵機は、あわや衝突すると思わせてこの直前でピタリと急停止!
もとい、そのカタチをまったくもって別のモノへと変えながらに、おまけ悠然と空中に立ち止まってくれる。
ただし制止したのはコンマ1秒以下だ。
そのいかにもアーマー然とした人型のプロポーションを見せつけた直後、直角の軌道を描いてさらに高い上空へと舞い上がる。
それは見事な操縦テクニックだったが、それとあわせて実はただの戦闘機が瞬時に戦闘ロボットへと華麗なる変身を遂げたのには、あんぐりと口を開けたまま、目を白黒させるばかりのふたりの熟練パイロットたちだった。
ただその瞬間、口では驚きの声を発しながらもアーマーの操作自体はぬかりなく対処していたのはさすがだが、見ているこちらは冷や冷やものだった。
おまけそれで肝を冷やすほどの臆病者でもないクマ族のおやじたちに、タチが悪いやつらばかりだと内心で舌打ちしてしまう。
上空でこちらを見下ろす敵のアーマー、おそらくはこれが隊長機とおぼしき機体は、やはり悠然としたさまでその場で対峙するかにこのアーマーをまたもや空中に制止させる。
その視線の先にあるのはこちらの大型アーマーなのだろうが、相変わらず空気が読めない仲間のクマ族たちが、うなりを発して上空の相手を威嚇する。
声は届かないが雰囲気としてはばっちり伝わったのだろう。
かくして相手をしてやるとでも言うかにしてふたりを待ち受ける、それはこしゃくな敵方の隊長機だ。
「まったく、どいつもこいつも好き勝手にやってくれちゃって! どうする、無理矢理に割って入って乱戦に持っていくか? あっちの後続は……あらら、しっかりスキをうかがっているね! これじゃヘタなことなんてできやしないか……!」
後からやってきた後続の敵のアーマーは、どちらも一定の距離を保ってこちらの様子をうかがっているのが、なおさらカンに障る。
さては親分格の指示なのだろうが、だいぶ聞き分けのいいあたりがこちらとはまるで正反対だ。
それがまたなおさらカンに障って仕方が無いクマ族の隊長は、実際に大きな舌打ちしてしまう。
この先の展開に、一気に暗雲がかかってくるのを、もはやはっきりと意識していた。
※以下のイラストははじめの線画バージョンです(^^)
すでにOpenSeaでNFTとして販売中!

Part2
混乱するクマ族たちのアーマー部隊に対して、また一方――。
その直前にあった先の知れた戦いに割って入った敵方のエースパイロットは、とかく冷めたまなざしで正面のメインモニターの中の情景を眺める。
キツネ族の若い士官は見下ろす眼下の敵の機体、青と赤の色違いの同型アーマーをつまらないものを見るようにしばしねめつけたが、やがて仕方もなさげに吐き捨てた。
「ふん、こしゃくなやつばらどもめ……! だがそうやってこのわたしの前に立ちはだかると言うことは、それ相応の覚悟は出来ているのだろうな?」
あくまでみずからのターゲットをその奥の緑色の大型アーマーのみに絞っていたのを、ようやく手前の二機に意識を向ける。
そこに後方からは、後続の同僚機からの通信が入った。
こちらはトシのいったおやじのものらしきだみ声がキツネ族の男のピンと尖った耳に親しげにまとわりつく。
「へっへ、ダンナ! 見た感じだいぶごちゃついてるみたいだが、俺たちはここで高見の見物してていいんですかい?」
「は、いいもなにも、そうするしかありゃしないだろ? ヘタに手出しなんぞしたら巻き添え食ってこっちが落とされちまう!」
もうひとりの年配の男の声が入るのに、何食わぬさまのクールなキツネ族の隊長は冷然と言ってのけるのだった。
「フ、無論だ。こちらへの手出しは一切、無用……! 中尉たちはそこで立ち見しているがいい。このわたしとあれの戦いを邪魔立てするやつばらだけはそちらに任せる」
「了解っ! ……てことは、おこぼれはこっちでいただいちまっていいってわけですかい? そんじゃ、おい、あの青いのと赤いの、どっちをやる? どっちも面白そうで捨てがたいが……!」
「は、おれはどっちでも構わねえよ! ダンナに落とされちまわなかったらの話だが、せいぜい楽しませてくれるのかねぇ?」
他愛のない世間話でもするかのように獲物を物色する部下たちに、何かと無愛想な部隊長は適当な相づちだけ打ってくれる。
「もとよりザコを相手にするつもりはない。危うくなればあやつが我が物顔をして出てくるのだ。その時は……」
「こっちでおいしく料理させてもらいますわ! 見たところそれなりに戦績上げてそうだから、でかい星が挙げられそうだぜ」
「はっ、調子に乗ってヘマすんなよ、ブンの字? この前みたいな情けないザマ、二度とゴメンだぜ?」
「ああ、誰に言ってやがんだ、五の字よ? もうアーマーも元通り、こっちに死角はありゃしないぜ! もとよりあんな見え見えの手はもう二度と食わない」
タヌキ族とイタチ族のベテランのパイロットたちの掛け合いに、まるで聞く耳を持たないキツネ族の青年は冷めたさまで通信を終わらせた。
「頼みにはしている。どちらも全力を尽くすがいい。あのような見かけ倒しのアーマーによもや遅れを取ることはあるまいが、かく言うこのわたしも全身全霊をもってあれを迎え撃つ……!」
「了解!!」
言うが速いか急降下で襲いかかるキツネ族のアーマーに、対するクマ族のベテランパイロットたちのアーマーが真っ向から応じる。
おのおのが命を賭けたしのぎを削るアーマー・バトル、その第二回戦の火ぶたが切って落とされた。
ベアランドたちの強敵として立ちはだかるライバルキャラ!
隊長にして凄腕パイロットのキツネ族、キュウビ・カタナとその部下のベテランパイロット、タヌキ族のチャガマ・ブンブ、イタチ族のスカシ・ゴッペとそれらが乗るギガ・アーマーのイメージ!






Part3
これまで幾多の戦場の最前線で腕を鳴らしてきた、百戦錬磨のベテラン・パイロットのダッツとザニーだ。
だがこれを相手に果敢にも単機で挑む敵のアーマーは、やはりあなどれない強さをふたりの勇猛なクマ族に対しても見せつけるのだった。
互いに肩を並べた横一列のフォーメーションでぬかりなくハンドカノンの銃口を向ける青と赤のアーマーの周囲を、それはすさまじいまでの速度の機動をかけて攪乱、半ば翻弄する白の飛行型可変アーマーである。
変幻自在に戦闘機とアーマーにその姿形を変えては、目にも止まらぬ高速機動で熟練のパイロットたちをあざ笑うかにターゲットサイトからその姿をくらます。
かくして強い舌打ちが左右のスピーカーから漏れるのに、みずからもかすかな舌打ちが出てしまう隊長のベアランドだ。
「ああ、もう完全に押されてるいるよな? にしてもよくもあんなにガチャガチャと変形しながらあちこち動き回れたもんだよ! もはや操作ミスったら一瞬で空中分解しちゃうんじゃないのかな? これはどうにも……!」
苦い顔つきで何事かアクションを起こしかけたところで、左のスピーカーからさも苛立たしげなおやじの文句ががなられる。
「ちょちょちょっ! ほんまムカつくわ! やたらに動き回って気が付いたらいっつも背後の死角におるやんけ!? どないなっとるんや? あないにふざけた高速機動、反則やろ!!」
「落ち着きや……! 空中戦ならぼくらの十八番やろ? せやったら、そや、そないにちょこまか動き回れんようにさしたらええんちゃう?」
「どないして? あないに速うやられてもうたら、キャノンの照準もろくすっぽ合わせられへんで??」
「そやから落ち着きや。ぼくらはふたりおるんやから、こないに固まっておらんでもやりようがあるやろ? もとより昔から空中戦で鳴らしたこのクマさんコンビやさかい、あないな新参者に負けるわけがあらへんちゅうもんや……!!」
「せやったな! あないなワケわからんくされアーマー、ふたりでボッコボコにしたろ!!」
左右のスピーカーからやかましく流れる、ふたりのおじさんの部下たちのやり取りに内心でヒヤヒヤしながら、さてこれはどうしたものかといよいよ考えあぐねる隊長さんだ。
おまけにこちらの階級がひとつ下なのもあって、実質上官のあちらは聞く耳持たないような節が少なからずあったりするもまた事実だ。
「ああ、もう参ったな……!!」
険しい表情で正面のメインモニターを睨みつけるベアランドだが、そうやって観ているさなかにも青と赤のアーマーは散開して大空を左右へと散らばる。
さては単機である敵機を左右から挟み撃ちにする算段なのだろうが、相手がうまいこと乗ってくれるものかと固唾を飲んだ。
かくして敵の白いアーマーを真ん中に挟んで、この同心円上で広く展開する、ダッツとザニーの両中尉どのたちだ。
都合、二対一で優位に立っているように見えるが、内実はそうでもないことは、手をこまねいてこれを見るばかりの隊長の少尉どのにも、またすぐさまはっきりと見て取れるようになる。
そう。相手はまさしくもっての強敵なのだった……!
「よっしゃ、捉えたで! ざまあカンカンっ……!?」
「これで終いや……! んっ?」
薄暗いアーマーのコクピットの中でみずからの射撃が必中することを確信するベテランのクマ族たちだが、引き金に人差し指が触れる寸前、この照準サイトがロックオンのオレンジから危険注意の激しい赤の点滅へと切り替わる。
しっかりと相手を挟み撃ちにした状態で、プレッシャーを掛けながらもこの攻撃機動(アタック)はことごとく失敗に終わっていた。
両者ともにだ。
今や完全にロボットの人型形態に固定された相手機は、空中で微動だにしない直立状態でありながら、空中戦を得意とするクマ族たちが照準を絞った直後にはこの姿をターゲットスコープから忽然とくらましていた……!
こちらの思惑を見透かしたかにした機体さばきでまるでふたりのクマ族の同士討ちを狙うかのごとくにだ。
静観していた若いクマ族の頭に乗っかるふたつの耳に、ややもせぬ内にひどく苛立ったおじさんたちの文句が絡みついた。
「おおい、さっきからやたらに真っ赤なのがチョロチョロ見切れておって、ほんまうざいでじぶん? わざとやっておるんか?」
「こっちのセリフやろが? 引き金しぼろうとした途端にブサイクなツラを出してきおって、青い機体が青空にまんま溶けてもうて見づらいったらあらへんわ! ほんまに撃ったろうか?」
互いに相手を牽制しながら毒づき合うおじさんコンビだ。
「稚拙な……! どうした、貴様は動かないのか?」
他方、敵方の隊長であるキツネ族のエリートパイロットは、左右前後からのプレッシャーをものともせずに、いまだ戦いには参戦していない緑の大型アーマーを正面のディスプレイに捉えて睨みすえる。それからまたつまらないものを見るかに左右のディスプレイの色違いの敵アーマーを一瞥してくれるのだった。
「フッ、無駄に距離ばかりを取って、まるで覇気を感じぬ。つまらん。もしや貴様らはただのお遊戯会をしているのか……」
言いざま、機体の両手に保持したハンドカノンを一斉射!
それが的確に二機の機影を捉える。
あわや撃墜かと隊長のクマ族が見ているさなか、どちらもギリギリでこの直撃を避けたものの、ダッツはただちに泡を食ったセリフをがなり散らす。
「んなっ! コイツ、むっちゃくちゃやんけ!! おおい、さっきからいいように遊ばれとるで、若い隊長さんの目の前でごっつ情けないわ!! どないしたろかっ」
「せやから落ち着けや。ええわ、照準が定まらへんのやったら、いっそ撃ってまえばええ。ただしお互いギリギリまで引きつけてからや。このぼくの言うてること、わかるやろ?」
「ん、せやけど……! ええんか? 万一逃げられてもうたら、こっちは火力がでかいぶんにじぶんにまで届いてまうで?」
「せやな。ただしその代わりにこっちは防御力っちゅうんが人一倍やさかい。いけるやろ?」
互いのアーマーの性能の違いを考慮した思考を巡らせるのに、ザニーが相棒を促して決定づける。
「一発勝負や。あの隊長さんにしっかりと見せたろ、このぼくらの腕前が決してあなどれんっちゅうことを……!」
「よっしゃ、了解や!」

相棒の応答をきっかけ、両者の機体が敵影へと向けてじりじりとこの距離を詰める。もはやただならぬやる気がうかがえた。
手に汗握って外野からそのさまを見守るベアランドだ。
相手の高速機動型アーマーはこれを悠然と直立静止したままで待ち構えるが、まるでビクともしないのがふてぶてしかった。
おのおのが殺気をこめてアーマーの機銃の照準を中心に居座る敵アーマーに定める。
撃てば必中の間合いだった。
まずダッツの青い機体が正面に構えた大型のライフルを一斉射!
「おおら、いてまえ!!」
一直線に敵を貫くと思われた赤い光弾は、だが結果として敵影をかすめもせずに虚しく宙を走る。
そしてその先にあったものは……!
それを尻目に見やる敵パイロット、キツネ族のキュウビ・カタナはさもつまらなさげにこの尖った鼻先から息を吐く。
「フン、同士討ちとは……無様だな……む?」
一直線に流れる敵弾は、同じ敵の赤い機体へと吸い込まれるようにヒットしたのを確信もするが、同時にかすかな違和感をも感知して機体をそちらへと巡らせていた。
その刹那、ただちに四肢に力をこめて回避機動へと転じる。
味方からの流れ弾を真正面に受けるかたちになって、全身に冷や汗をかく普段からポーカーフェイスの赤毛のクマは、この時ばかりはいびつな口元からキバがのぞく。
「こなくそっ、やっぱりよけるんかい! だがこっちもやられへんで、シールドパワー全開でしのいで食らわしたるわ!!」
機体の胴体前部に装備したシールド・ジェネレーターを真紅に輝かせて流れ弾をはじき返すや、みずからのハンドカノンの銃弾をただちに正面の白い機体へとお見舞いする!
「おうし、やったれ! むうっ、あ、あわわわわわわっ!?」
青い機体の相棒がここぞとかけ声を発するが、これがすぐさま慌てくさったおじさんの悲鳴へと変わる。
これまで同士討ちを危惧してこの攻撃がままならなかったクマ族たちだ。それをあえて同士討ちに見せかけることで起死回生の反撃を狙ったのだが、そのトリッキーな攻撃ですらもあっさりと躱されて、それがまたダッツの機体へと襲いかかることになろうとは……!!
すっかり勝ちを確信していた灰色熊は、狭いコクピットの中で機体の制御を失うくらいに操縦桿をバタつかせて味方からの流れ弾をぎりぎりで背後へとやり過ごす。
だが敵からの攻撃を受ければ即墜落くらいにきりもみ状態で落下しかけた機体を大汗かいてコントロールする。
敵からの追撃がなかったのは幸いだったが、もはや旗色が悪いのは誰の目にも明らかだった。
悲鳴と怒号がかまびすしく交差する薄暗いコクピットの中で、若いクマ族の隊長は、険しい表情で操縦桿を強く握りこむ。
「あらら、もう任せてはいられないな! 中尉どのたちには悪いけど、こっちから割り込ませてもらうよ。でないと……ん!」
敵の隊長格とおぼしき可変式飛行型アーマーに狙いを定めて大型の自機を進ませようとしたところに、奇しくもレーダーサイトに新たな動きと短いアラームが鳴り響く。
こちら同様、距離を取って様子見していたはずの残りの敵影、二機がともに味方と敵に割り込む形で急速接近してくる。
どうやら向こうはこちらと同じ思惑のようだが、味方の助けに入ると言うよりは、むしろ苦戦してばかりのダッツとザニーに止めを刺すくらいの勢いだった。
そして案の定、敵の青と赤のアーマーが入るのと入れ替わりで、白の隊長機はまんまとその場を離脱、この姿を正面モニターからくらましていた。
これを半ば呆れた顔で見ていたベアランドは、その後にこのみずからの機体の向きを背後へと巡らせる。
「やっぱりこっちが狙い、本命だったか……! ほんとにしつこい隊長さんだよね? ルマニアの大陸の僻地からこんな海の果てまで、呆れちゃうよ、このぼくってのはそんなに魅力的かい?」
見れば上空からひらりと舞い降りる敵の隊長機のアーマーへと向けて、皮肉っぽく笑ってそう問うてやる。
そう果たしてこれで何度目の対峙となるものか?
背後でベテランのクマ族たちが新手を相手に声を荒げるのはもうそちらに任せしまって、本来のターゲットとなるアーマーと正面切ってやりあうべく、これと真っ向から対峙する。
もう何度目かになる決戦の幕が切って落とされた……!
※次回に続く……!
Part4
「ライトニング……!!」
「こういう使い方はリドルは嫌がるのかな……?」
#17プロット
ライバルキャラ、キュウビ、ブンブ、ゴッペ再登場!
キュウビ VS ダッツ & ザニー 空中戦!
前哨戦の犬族キャラ、モーリィとリーンはしれっと退却。
ベテランのクマ族コンビはエースパイロットのキツネ族には大苦戦、やむなく隊長のベアランドと交代…!
ベアランド VS キュウビ
ダッツ & ザニー VS ブンブ & ゴッペ
持久戦の末に、キュウビ小隊退却…!
とりあえずベアランド隊の勝利?
補給機(リドル操縦)にダッツとザニーが補給(プロペラントタンク装備?)された上で、アストリオン北部海岸線から大陸に侵入、そのまま内陸の目的地へと向かう……
「アストリオン上陸作戦」プロット
アストリオン情勢
アストリオン・中央大陸(ルマニア・東大陸/アゼルタ・西大陸)
アストリオン・種族構成・ブタ族、イノシシ族、イノブタ族などがおよそ半数を占める。アストリオン自体は宗教色の強い、宗教国家でもある。元首・イン ラジオスタール アストリアス(家)
アストリオン・大陸構成
東側 アストリオン 60%
中央砂漠 空白地帯 25%
西側 ピゲル大公家 15%
西側は過去にあったルマニア(タキノンが領事だった?→タルマとの確執になる?)とアゼルタのゴタゴタで独立を宣言したピゲル公爵の独立領となり、後にアゼルタと同盟関係になる。
主人公、ベアランドたちが目指すのは、大陸の北岸地域から侵入して、大陸内陸部の中央砂漠にあるアーマー基地。今は西の大公家と結びついたアゼルタの支配下にあるのだが…?
実は無人化している?? レジスタンス(ベリラ、イッキャ?)の暗躍…!Part2 ベアランド小隊、
敵キャラ、モーリーとリーンに遭遇
↑
#17→ キュウビ小隊、出現!!
キュウビVSダッツ、ザニー…!
移行、アストリオンに上陸……
基地の占領完了と同時に、アストリオンからの守備部隊と合流?←ジーロ艦に合流したダイル?
タルクス、シュルツ博士登場!
プロットベアランド小隊、出撃 ベアランド、ダッツ、ザニーウルフハウンド小隊、出撃 ウルフハウンド、コルク、ケンスブリッジ 艦長 ンクス、オペレーター ビグルス、
副艦長は何故か不在?
友邦国のアストリオンの北岸域から侵入
内陸の基地を奪還、そのまま寄港するべく
海と空の戦い キュウビ小隊出現
Part1
小隊に新しくベテランのクマ族たちが加わって、貧弱だった部隊編成が見違えるほどに強化されたのだが、これが実際にみなでそろって出撃するのは、それから実に三日も後のことであった。
もろもろの都合、母国を遠く離れた彼らの母艦が公海上にしばしの足止めを食らうことになったのと、パイロットが万全だからとこの機体の調整までが万全とまでは行かなかったことがあり。
加えて全てが新型開発機ばかりのアーマー部隊は、この機体のマッチングに非常な手間暇がかかるのだ。
よって晴れてハンガーデッキの格納庫から海風をともなった外界を臨めたのは、およそ70時間も後のことなのであった。
言ってしまえば寄せ集め部隊なのだが、性格おおざっぱなクマ族たちが仕切り直しをするには、およそ十分な時間である。
ベアランド小隊(第一小隊) 隊長・ベアランド少尉(クマ族)、部下・ダッツ中尉(クマ族)、ザニー中尉(クマ族)



広く視界の開けた専用の中央カタパルトからモニター越しの外界を眺めるアーマー部隊の隊長は、楽しげに舌なめずりした。
「さあて、いよいよ出撃だね! 予定通り、ここからずっと先に見えるあの大陸の内陸部を目指すんだけど、ぼくのランタンはいいとして、そっちのビーグルは燃料、大丈夫かな? どっちも股の下にくっついてた、あのばかでっかいプロペラントを外しちゃったでしょ?」
見た目にずいぶんな幅を利かせていた燃料タンクをすっかりと取り外されていたのを思い返して、なにげに聞いてやるのに、左右のスピーカーからは問題ないとのおじさんたちの返事がただちに返ってくる。
「かましまへん。よっぽど過酷な最前線ならいざ知らず、まだ序の口でありますよって……! せやからどうかぼくらのことは気にせんといてください」
「ここも最前線なんちゃう? まあ問題あらしまへんわ。おれたち新人のワンちゃんたちとちゃいますから! ふふん、見といてください、バリバリ活躍してやりまっせ!!」
「そいつは良かった♡ それじゃあミーティングのとおり、ぼくらは派手に暴れ回るとしようか! あらかた近海の敵を蹴散らしてから、母艦をともなっていざ目指す南の大陸、アストリオンに上陸と……!!」
「了解!!」
あいにくとここからではどちらも機体が見えないのだが、左右のハンガーデッキに分かれて待機している、青と赤の機体のクマ族たちからの返事に満足して、みずからも出撃に備えるベアランドだ。
すると上面のスピーカーからは短いアラームと共に、この艦の主の声が響いてくる。
「ん、ブリッジのンクスだ。各機とも準備いいな? ただいまより〝アストリオン上陸作戦〟を開始する。各自健闘を祈る! 第一、第二部隊、共に必ず本艦に戻ってくるように……!!」
「もちろん! 了解♡ ……て、横にいるはずのあの副官どのは今はいないんだね? どこで何をしているんだか」
小声で言ってマイクには入らないように配慮したはずが、正面のモニターの中のスカンク族の上官どのは、これが小さく咳払いするのに、ちょっと苦笑いで了解する隊長だ。
無用な詮索はしないことだと……!
画面の横のほうでちょっとだけ見切れている犬族のオペレーターが発進のコールを送るのに、また了解して正面に向き直る。
「少尉どの! こちらは制御室のリドルです! ランタン、発進準備OK、ランチャーカタパルト、今回は70で行きます!! よろしいですか?」
艦長に代わって響いてきた、カタパルトデッキのアーマー発進制御室に詰めている若いクマ族の言葉には笑顔で応じる隊長だ。
「そんな遠慮しないで100でいいのに! それじゃ、先に行ってるよ! ふたりとも後から急いで追いかけて来てくれ、こっちはいざ走り出したら止まれないからね?」
「了解! て、ランチャーなんちゃらって、なんのこっちゃ?」
「知らん。見てればわかるんちゃう?」
「なら見て驚けよ。ただごとじゃありゃしないから……!」
「あはは! それじゃ、システム発動、健闘を!!」
「了解!!」
どうやら第二部隊の巨漢のクマ族のメカニックも通信に混じっているらしいのに、なおさら笑顔になって身体中に力を入れる。
一瞬後には巨大なGが全身に掛かりながら機体が弾丸のようにカタパルトからはき出されるのを体感していた。
ベアランド機出撃!!
カタパルトから発射されて、これがあっという間に見えなくなる隊長機の後ろ姿に、後から発進を控えた部下のクマ族たちは、騒然となってこれを見送った。
「はああっ、ちょ、ちょいまち! なんや今のあれぇ? あの隊長、いったいなにしてはるん??」
「わからん。あんなのアーマーの発進とちゃうんやない? ほんまにどうないなことになってはりますのん??」
カタパルトの左右で困惑した通信を交わすクマ族たちに、デッキの中央コントロール・ルームの巨漢のクマが答えた。
「ふん、しょせんは人間わざじゃありゃしないのさ。あの機体じゃなければ空中分解必至の、弾丸ミサイル級の強引なマスドライバー発進、もとい、強制発射システムだ。おい、間違っても真似しようだなんて思うなよ?」
「思わへんて! あないなもんシャレにならへんやないですか? ちびりそうや、発進するのがこわなってきた!!」
「いいえ、ご心配なく、そちらのカタパルトシステムはごく通常のものですから! それではダッツ中尉、ザニー中尉、どちらも準備はよろしいですか?」
「ほえ、ちょい焦ったけどかまへんよ。お好きなタイミングでどうぞ。ぼくら同時の発進でかまへんから。はよせんと追いつかないやろ、あれ?」
「それ以前にこっちの第二部隊が待ってるんだ。早いところカタパルトを空けてくれ。ほら、とっとと出しちまえよ!」
「あ、はい、それでは健闘を祈ります! 両機ともカウント3で同時発進、3、2、1、カタパルト・Go!!」
「了解!!」
全身を青と赤で塗りたくられたいかつい人型の機体が、左右のカタパルトから青空へと向けて同時に飛び立っていく!
先に飛び立って行った緑色の隊長機を追って、どちらもまっすぐに白い軌跡の飛行機雲を描くのだった。
これこそがいかついクマ族のみで編成されたアーマー小隊の記念すべき初陣であり、後に赤、青、緑の鬼の三原色部隊と恐れられる飛行編隊の誕生なのであった。
Part2
雲一つもなくした快晴の青空。
轟音を立てて緑色の巨大な機体が大気を切り裂く。
周りの空気との激しい摩擦で赤い蒸気めいたものをその全身にまとわりつかせながらにだ。
耳を澄ませば風切り音もしてきそうなコクピットの中、目指す大陸の目前でゆっくりと操縦桿に手を伸ばして、しっかりとこの両手に掴み取る。
深呼吸をひとつして機体のコントロールをみずからに手に持ち直すクマ族だ。
「よっしと……! 予定通りのポイントに無事到着、このぼくが一番乗りだね!! 敵さんもまだ見当たらないし?」
まずは母艦から単機で先行して、無理矢理な出力と加速度にもてあそばれる機体とこの速度が、やがて通常に落ちるところまで安定させてから、いざ周囲の状況を見回すベアランドだ。
レーダーサイトには今のところこれと言った反応がないが、じきにやかましく警告音が鳴り響くのはわかりきっていた。
弾道ミサイルさながらの強引にして急速なアーマー発進は、敵の裏をかくのには便利だが、味方をことごとく置いてけぼりしてしまうのがたまにキズだ。
よって静かなモニターの向こうに広がる大陸を見ながら、誰にともなしひとりごとみたいな文句を発する隊長のクマ族だった。
「は~ん、こうして見てみると、目標の空軍基地ってのはほんとに内陸にあるんだな? ここからじゃまだ確認ができないよ。もっと高度を上げれば見えるのかな? どうしたもんだか……! このまま単機で先行しても良さそうだけど、やっぱりベテランのパイロットさんたちを待ってたほうがいいよね?」
言っているそばからレーダーサイトに複数の反応が出現!
敵を表す赤の点(ドット)と、味方を表すそれとがほぼ同時にサイトの中に前と後ろからポツポツと発生するのだった。
中でもサイトの後ろ側、背後から追いついてきた味方の友軍機の二機のアーマーのパイロットたちからただちに通信が入る。
お国言葉のなまりが激しいおじさんのクマ族たちだ。
緊張感をみじんも感じないお気楽なセリフを発してくれた。
「戦場の青いイナズマ! ダッツ・ゴイスン、ただいま到着! やっと追いつきましたわあ、隊長さん、早すぎやって!! 」
「ほんまに早いわあ! ひとりで何をそんなに急いでますのん? ひと呼んで赤い旋風のザニー・ムッツリーニ、おなじく到着しました、そいで敵さんも、もうぼちぼち来てはるんですな?」
はじめに青い機体のクマ族の威勢のいい文句が耳朶を打つ。
到着するなり回りの状況を適宜に把握しているこちらは赤い機体のクマ族のベテランパイロットの言葉に、すぐさま了解してモニターがマークする敵の機影を確認するベアランドだ。
ベアランドの乗機、バンブギン、通称ランタンと、ザニーとダッツの乗機、ビーグルⅥ・プロトタイプ(まだ描き掛け)


おそらくはどこか遠くの洋上の母艦か、さらに遠くの大陸の西海岸の敵基地から飛び立ったものとおぼしき航空機いくつかが、こちらに向けて急速に接近してくるのをそれと認める。
よって完全に慣れきったおじさんたち同様、こちらもいささかも焦ることもなくして、こともなげに言ってやるのだった。
「ああ、ジェット・フライヤーか! ああいう航空機タイプって、大抵は無人機なんだよね? 本命のアーマーが到着するまでの時間稼ぎぐらいなもので。だったら、さっさと落としちゃお♡ それじゃ主役のアーマーが来たら、各自で対応お願いね!」
言いながら操縦桿のトリガーを二回、三回と引いて、迫り来るジェット機をことごとく打ち落とす隊長の緑の大型アーマーだ。
そのまるで容赦がなくあっさりとしたさまに半ば感心したようなおじさんクマ族たちの返事が返る。
「了解! にしてもなんやちょろい作戦みたいやんな? 思うたよりも敵さんおらへんし、このまま海岸線の先まであっさり突破できそうやわ!!」
「せやんな、隊長さんのそのアーマーやったら敵なんかおらへんのちゃう? あ、来ましたで、本命のアーマー部隊! なんかひょろっちいのがこっちに向かって来てはるけど、あんなんおったったけ??」
「ん、ああ、あの見覚えのあるカトンボは、敵の新型機だね! 以前に会敵したことがあって、そんなには苦戦しなかったんだけど、あれとおんなじか別の同型機なのかな? どっちにしろそっちのビーグルで十分に対応できると思うよ」
正面のメインモニターの中央に捉えた、どちらも見覚えるのある特徴的な細身のデザインの二機の軽量級アーマーに、だがこちらはまるで感心なさげに答えるベアランドだ。
形状がまったく同じ見てくれのふたつの敵影は、おそらくは以前にやり合ったものと同一の機体なのではないかと思われた。
前回、さして苦労することもなく撃退していたこともあり、こちらの経験豊富なベテラン勢ならそう手こずることもないだろうと確信する隊長さんだ。
これに手練れのクマ族のパイロットたちが即座に応ずる。
「カトンボでっか? ふう~ん、なるほどや、ほなここはこのぼくらに任せてもらいましょうか、よって隊長さんはそこで気楽に見といてください」
「よっしゃ、やったるでえ! あないなひょろっちいザコちゃんアーマー、一発どついたらそれでしまいや!!」
モニターの左右で不敵な笑みを浮かべる赤毛のクマと灰色グマをいかにも頼もしげに見ながら、こちらは若干の苦笑いになる茶色の若いクマ族だ。
「あんまり油断してると機体にキズをつけちゃうかも知れないよ? まだ初戦なんだからなるべく手堅く行ってよね! それじゃ、お言葉に甘えてぼくは高みの見物させてもらうけど、第二小隊のシーサーがなんか下からやかましく言ってるから、ちょっと高度を上げてぼくらはもっと上空でやり合おうか?」
天井のスピーカーから何やらやかましい文句が入って来たのは、後発の第二小隊が追いついたその直後のことだ。
小隊隊長のウルフハウンドのものだったが、これに傍で聞いていた赤い機体のパイロットのクマ族が了解してくれる。
「ああ、それやったらこっちにもテキストで入電しておりますな? なんやえらい怒ってはるようやけど?」
「尻にくっつけとる新人のワンちゃんたちがやりづらあてしゃあないから、おれたちみたいな邪魔もんはどっか遠くに行ってくれゆうてはるんやろ? なんやめっちゃひとりよがりやんなあ、そないなもんはそっちで面倒みたれよ!」
「まあまあ、言ってること自体は間違ってはいないんだから! あんまり混戦状態になったら同士討ちもありうるし、距離はちゃんと取っておこう。それにこのぼくのカンだとそろそろやっかいなのも出てきそうな頃だから、いざそっちに対応するためにも、スペースはなるたけ広く取っておかないとね♡」
「はあ? なんのこっちゃ? お、カトンボが早速こっちに来よったで! 相方、ようやっとこの腕の見せ所や、ぼくらの得意の空中殺法、ヤツらにガツンとお見舞いしたろ!」
「ガッテン!!」
さすがにお互い息の合った熟練パイロットたちだ。
同時にこの機体を海上からさらに上空へと舞い上がらせていく。
するとこれを追いかけるかたちで敵の二体のアーマーも次次に上空へと導かれるように機体を上昇、一定の距離を保ちながら互いににらみ合うかたちとなった。
やかましく通信交わしながら機体高度を一気に上空にまで押し上げて新型機同士の一騎打ち、もとい、コンビ対コンビの空中戦タッグマッチが始まるのだった。
Part3
ところ変わってこちらは対戦相手となる、敵側のアーマーパイロット、犬族のモーリィがいまいましげな愚痴ともひとりごとともつかないセリフを正面のモニターに向けてがなっていた。
年の頃で言えば青年の若手パイロットはとかく血気盛んだ。
「ん、ちょい待ち、あっこにやなヤツがおるでぇ? いつぞやのでっかいお化けアーマー! おまけに子分を2匹も連れとるやんけ!! しんどいわあ、このまま知らん顔して帰ったろか? やってられへんやろ!!」
あっさりと敵前逃亡をほのめかすのに、これを受ける相棒のこれまた犬族の、もさもさ顔したリーンが明るく答える。
「銃殺刑にされるんちゃう? せやったら少しは相手をしたらな! あのでっかいのは手をつけられへんとしても、子分さんはどうにかできるんちゃうん? なんや見たこともないようなアーマーやけど!」
「はん、しょせんはひとさまの領土やゆうて、みんなで開発機の実験しとるんかいな? えげつないわあ! せやけどあっちはやる気まんまんらしいから、それなり相手してやらな失礼になるんかの? ええわ、そやったらこっちも星を挙げて正規軍の仲間入りさせてもらお!」
「なんや、結局はやるんかいな!」
「当ったり前やろ! ちょうど二対二でええ勝負できそうやし、大ボスはずっと後ろに構えてはるから手を出す気はないんちゃう? 前もやる気なさそうやったから、ひょっとしたら本調子ちゃうのかも知れへんやん。こっちは本命の後続部隊が来よるまで持たせたればいいゆうてはったから、のんびり持久戦としゃれ込ませてもらお!」
「せやんな! ちゅうかわしら真打ち登場までの噛ませ犬かい」
「ええわ、ほな噛ませ犬もあなどれんちゅうことを見せたるわい!」
再び登場! 関西弁の犬族キャラコンビ、モーリィとリーンの若手パイロット! アーマーは新型のロータードライブ型!!



さも息の合った漫才みたいな掛け合いをしながら、じりじりと相手との距離を詰める、二体の飛行型アーマーだ。
緑の大型アーマーを奥に控えさせた状態でこの前に立ちはだかる二機の青と赤のアーマーに、それぞれが個々に狙いを定める。
果たしてはじめに仕掛けるのはどちらなのか?
抜けるような青空の下で息もつかせぬ緊張感が高まった。
これを傍から見ていた隊長のベアランドは、その静かな立ち会いに、それでも結果は知れていると周囲への警戒を怠らない。
「悪いけどその華奢で非力なアーマーじゃ、うちの大ベテランのおじさんたちには敵わないよね。むしろ問題はその後で……! 西岸の本拠地からより強力な増援部隊が来るのは明白で、本番はきっとそこからなんだ」
そう言っているさなかにも眺めているモニターの中では、青いアーマーが瞬時に素早い機動に入るのだった。
こちらにより先行していた敵のアーマーに向けて、ただちに一直線の突撃機動、激しいチャージをかける!
空中での接近戦を果敢に挑むのをただじっと眺めていた。
胸の内ではちょっとした胸騒ぎを感じながらにだ。
大気を震わす轟音が鳴り響いた。
戦場の青いイナズマ!ダッツと、赤い旋風、ザニーの専用ギガ・アーマーの図、とりあえずこんなカンジ?


みずからを青いイナズマと言った通り、強力なターボジェットエンジンをいくつも搭載したアーマーは、そのずんぐりした見てくれによらない、急速発進と加速度で一瞬にして敵アーマーとの間を詰める。
そのままショルダーチャージでも仕掛けそうな勢いだったが、すんでの所で急停止してアーマーの右手に装備したハンドカノンを相手めがけて振りかざす、ダッツの青いアーマーだ。
その名を「ブルー・サンダー」。
歴戦の勇者である中尉が、その幾多の戦火の中で勝ち得た、数ある異名の中の一つだと、そうベアランドは聞かされていた。
まさしくだなと思う反面、さっさとケリをつけないでもったいつけたように相手にその銃口をちらつかせただけなのには、内心であれれ?と首を傾げてしまう。
言ってしまえばまだ本気の本調子ではない、およそ遊んでいるような印象を受けるのだった。
「あらら、大丈夫かね? 窮鼠猫を噛むって言うし、あんまりなめてちゃいけないんじゃないのかな??」
ちょっと突っ込んでやろうかと通信をオンにした途端、左側のスピーカーからやかましいがなり声が響いて面食らう隊長だ。
『見たかおんどれぇ! ビビッてんちゃうんか? 次はマジでやったるから覚悟せいよ、おおら行くで、おらおうらおらぁ!!』
「わっ! びっくりした……まあ、心配ないみたいだね?」
結果、何も言わずに通信をオフにする隊長さんだった。
ダッツからの猛攻に明らかに動揺する灰色の飛行型アーマーの中で、若い犬族のモーリィはあられもない悲鳴を上げてどたばたとのたうちまわっていた。
「わ、なんや! いきなりそないなむちゃくちゃしくさりおって、ぶつかってまうやないか!? は、挑発としるんけ? ええ根性やな、ええわ、やったるわ!! おおおおおおおおおうらあっ!!」
機体の小回りを活かした空中の接近戦ならいくらでも勝ち目があるとあえて相手の挑発に乗ってやる若手のビーグル族だが、負けん気が強いのが今は仇となりつつあるようだった。
空中での制止機動や上下運動が得意なロータードライブの利点を最大限に用いて右へ左へと機体を揺らして相手を翻弄するはずが、目の前のスピードとパワーが取り柄なだけのジェットドライブタイプはなんら苦も無くこちらの動きについて来ている。
むしろこちらが翻弄されかけて、相手の構えた銃口の照準をずらすのに今はただただ必死のモーリィだった。
ギリッと厳しく結んだ口元から、果ては言葉にならない悲鳴じみたものが漏れ出る。
これにこちらが押していることを確信してますます本調子になる青のアーマー、ベテランパイロットのクマ族のダッツは舌なめずりして正面のモニターに凄みを利かせた。
「かっか、いい気味や! 小型で小回りが利くからこないなドッグファイトやったらじぶんのほうが有利やと思っとったんやろ? ざまあかんかん!! ジェットのパワーを最大限にかましながらの縦横無尽の空中殺法がこの青いイナズマこと、ダッツ・ゴイスンさまの最も得意とするところやからの! じぶん、もうフラグ立っとるでぇ? 観念しいや!!」
あと一押し、ないしふた押ししたらばっちり照準を定められると勢い込んだところに、甲高いアラーム、警告音が鳴り響く!
「んっ、ちっ! おおい、いいところなんやから邪魔させんなや! あとのヤツはおのれの領分ちゃんけ?」
『わあっとるわ! そうやって間で遊ばれとるからやりづらいだけで、もうこっちもええとこまで追い詰めとる……!』
片やお互いに距離を置いての銃撃戦にいそしんでいた赤いアーマーの相棒が、通信機越しにやや不機嫌な返事をよこしてくる。
『レッド・ストーム』と自身の異名から取ってつけた赤いジェットドライブ・タイプのアーマーは、相棒の青い機体のそれとは一部の仕様が異なるだけで、見た目ほぼ同一タイプの機体だった。
背後から赤い一条の閃光が一直線に走ると、それきりやかましい警告音がピタリと鳴り止む。
後方支援に回っている敵アーマーの射撃マークが外れたのが直感的に理解できたが、実際にてんで見当違いの方向に銃弾がばらまかれるのに相方の援護が適正に働いたのを現実にも理解する。
舌なめずりするダッツは鋭い視線をモニターの正面に据えた。
相手の灰色の機体は前後左右へと激しく回避運動をするのに、そのさまが今は獲物の子鹿が震えているかのように見えていた。
そしてこのさまを傍から自機のコクピットの中でのんびりと構えて見ていたベアランドは、決着がじきに着くだろうことをそれと予感していた。
言うだけあってさすがベテランのクマ族コンビは、それは腕利きのパイロットたちだ。
激しい戦火を幾度もくぐり抜けて来ただけのことはある。
思っていた通りかそれ以上の出来に内心で満足しつつ、目ではてんでよその方向を見ながらに、またもうひとつの予感が現実になりつつあることをそれと確信するベアランドだ。
「やっぱり、おいでなすったか……! まさしく今回の本命、さしずめ真打ち登場って感じなのかな?」
目の前のレーダーサイトには、大陸の北西部の方角からこちらに向けて急スピードで接近する、三機のアーマーらしき点滅が灯っていた。
抜けるような青空の下、暗雲が立ちこめるのをただひとりだけ実感しつつある若いクマ族の隊長だった。
次回に続く……!
状況 海上 ベアランド 単機でアストリオンの北岸域へ…
ダッツ、ザニーと合流の後、敵方のモーリー、リーンと交戦
第二部隊が合流、上空へ ← キュウビ小隊
「アストリオン上陸作戦」プロット
アストリオン情勢
アストリオン・中央大陸(ルマニア・東大陸/アゼルタ・西大陸)
アストリオン・種族構成・ブタ族、イノシシ族、イノブタ族などがおよそ半数を占める。アストリオン自体は宗教色の強い、宗教国家でもある。元首・イン ラジオスタール アストリアス(家)
アストリオン・大陸構成
東側 アストリオン 60%
中央砂漠 空白地帯 25%
西側 ピゲル大公家 15%
西側は過去にあったルマニア(タキノンが領事だった?→タルマとの確執になる?)とアゼルタのゴタゴタで独立を宣言したピゲル公爵の独立領となり、後にアゼルタと同盟関係になる。
主人公、ベアランドたちが目指すのは、大陸の北岸地域から侵入して、大陸内陸部の中央砂漠にあるアーマー基地。今は西の大公家と結びついたアゼルタの支配下にあるのだが…?
実は無人化している?? レジスタンス(ベリラ、イッキャ?)の暗躍…!
Part2 ベアランド小隊、
敵キャラ、モーリーとリーンに遭遇
↑
Part3 キュウビ小隊、出現!!
キュウビVSダッツ、ザニー…!
移行、アストリオンに上陸……
基地の占領完了と同時に、アストリオンからの守備部隊と合流?←ジーロ艦に合流したダイル?
プロットベアランド小隊、出撃 ベアランド、ダッツ、ザニーウルフハウンド小隊、出撃 ウルフハウンド、コルク、ケンスブリッジ 艦長 ンクス、オペレーター ビグルス、
副艦長は何故か不在?
友邦国のアストリオンの北岸域から侵入
内陸の基地を奪還、そのまま寄港するべく
海と空の戦い キュウビ小隊出現

Part1
一難去って、また一難……!
戦場の嵐はどうにかこれをくぐり抜けたはずなのに、また新たな嵐に飲み込まれてしまう不運のアーマー部隊だった。
一時的にお世話になるべく立ち寄った、新型の僚艦。
その第一艦橋にみなで顔を出すなりこれに烈火のごとく怒り出すブリッジの主、ジーロ・ザットン大佐に恐れおののくふたりの部下たちの盾になりながら、どうにかこの怒りを納めようと悪戦苦闘するクマ族の隊長、ベアランドだ。
内心ではそんなに怒ることもないだろうにと首を傾げながらも、後から艦に合流して上がって来た副隊長のウルフハウンドと共に、どうにかこうにか荒れ狂う艦長どのをなだめすかしてその場のお茶を濁すのだった。
昔は教官と生徒であった間柄で知らない仲ではない。
よって性格いささか難ありなこのおじさんの対処法はどちらもそれなりに心得ていた。
かくして不機嫌ヅラでブリッジを後にする艦長の背中をいったんは静かに見送って、心身共に疲れ果てている部下たちを副隊長に任せたら、この後をひとりで追いかけるアーマー隊長である。
いくつか聞きたいことがあったし、部下を抜きにしたもっと冷静な話し合いをあの切れ者の指揮官とは持ちたかった。
相手は艦長室にこもるようなことを言っていたが、その性格柄で当てにならないと予想するかつての教え子は、何の気も無しにまったくの別方向へとこの足を向けていた。
そこはこの艦の最上階のブリッジのさらに上、いわゆるてっぺんの天井、ロフト部分だ。
すると思った通りに外部へのドアはロックが外されていて、外に出ると道なりにタラップをのぼってこの屋上部分へと顔を出す。
見晴らしのいい真っ平らな鋼の屋根には、これまた思ったとおりの人物が、真ん中に仰向けで寝そべっていた。
どうやらぼんやりと青空を眺めているようだ。
やっぱりね……!
これにはちょっとしたり顔してそちらに歩み寄る隊長さんだ。
こちらから話しかけるよりも先にあちらのほうが反応した。
「どうしてわかった? 俺は艦長室に行くと言ったはずだが」
すぐ間近から犬族の仏頂面を見下ろしながら、ぺろりと舌を出して応じるクマ族だ。
「どうしてって、教官どの、もといジーロ艦長が性格ねじくれた気分屋なのはみんな知ってるじゃない? ぼくなんかそれこそ昔からの旧知の仲なんだからね!」
「ふん、わるかったな……! 何の用だ? あいにく気ままなクマ族の相手なんかする気分じゃない」
ますますしかめ面の上官どのにもお気楽なクマの隊長はいたずらっぽい笑みでウィンクくれてやる。
「そう言わずに! 久しぶりなんだからちょっとはお話しようよ、まじめな話ってヤツをさ?」
短い舌打ちが聞こえたが聞こえなかったふりする隊長はしれっと言ってやる。
「さっきはずいぶんとお冠だったけど、あれじゃ若い芽がつぶされちゃうよ。上官とは言えパワハラだったんじゃないのかい?」
「…………」
返事がないのにこれまたしれっと聞いてやる。
「まさかとは思うけど、コルクと何かあったのかい? あの性格気弱な毛むくじゃらの犬族くんと、過去にさ??」
「どうしてそう思う? 俺は初対面だと記憶している」
むすりとした顔で青空見上げたままのジーロに、ベアランドは真顔で言葉を投げかける。
ある意味、一番気に掛かった事柄だった。
「そうか。でもあの子のことをはじめて目にしたって時に、なんだかちょっと驚いたような顔をしてたよね? 艦長?」
また短い舌打ちが聞こえる。
「ッ……イヤなところをしっかりと見ていやがるんだな? この食わせ物のデカぐまめ! いいや、なんのことはない」
「?」
「そうさ、ただの他人のそら似ってヤツだ……! おまえにプライベートをあれこれ詮索されるいわれはないぞ? 気にするな。あいつとはあかの他人同士だよ」
そんな幾分かトーンを落とした返答には、なるほどと納得して頷きながらもまたその首を傾げるクマ族だ。
「そうか、そりゃそうだよね。う~ん、それなのにひどいな、あの怒りようは?」
「八つ当たりをした覚えはない。ちゃんと必要なことを言ってやった。あんなビビリじゃそれなりに免疫つけなきゃこの先やっていけないだろう? おままごとをしているわけじゃないんだ」
「そりゃあね……!」
浮かない顔の艦長は胸の内から取り出した何かしら眺めながら至って気のない返事なのに、ちょっとだけ引っかかりを覚えながらも話を変えるベアランドだった。
「ああ、そういや、ぼくらのボスとはなんの密談をしていたんだい? この先のことに関わるんだろうから、ちょっとはこっちにも教えてもらいたいんだけど」
「そんなものはそっちのボスに聞け! ンクス艦長、先生からはあっさりと断られたよ。悪い話じゃないと思うんだが、あちらにはあちらの思惑があるんだと」
「ふうん、あっさりと引き下がるんだ? らしくないなあ!」
「ほっとけ……ん!」
それまでの穏やかな潮風が一転、身の回りがいきなり騒がしくなるのに両耳をピンと立てて回りの気配を探る艦長だ。
これに身の回りをぐるりと見回してそれと認めるベアランドはちょっと意外そうに騒音の元となっている見慣れた同僚の機体を眺める。海を渡る機体と、空を飛ぶ二機のアーマーたちが見る間に小さくなっていくのを見送った。
「なんだ、もう帰っちゃうんだ、シーサーたち? せっかくこの艦の中をみんなで見て回る許可を得ていたのに!」
これには足下から不機嫌そうなおじさんが言ってくれる。
「お前もさっさと帰れよ。あとなんであんな目立つところにあんなブサイクなアーマーを停めてやがるんだ。さっきから目障りでしかたがありゃしない」
「そんな青空を眺めながら文句を言わないでおくれよ。あそこにしか停められなかったんだから! 間違って塩水に漬けちゃったらうちのメカニックくんたちがきっと嘆くし♡」
聞きたいことが空振りだらけだなと苦笑いしながら、また他に話を向けてやる隊長さんだ。
「そういや、この艦のアーマーらしきが見当たらないけど、ベテランのパイロットとその新型機ってのはデマだったのかい? 個人的にはちょっとだけ期待してたんだけど」
するとこれには何故だかちょっと苦い顔つきしてひん曲がった口元で答えるジーロだった。
「あるさ。あるにはあるが、ただそれにつき若干の問題があって、出すに出せないってだけのことであって……!」
そこで不意にむくりと起き上がって、でかいクマ族を見上げる犬族の艦長だ。そうして何かしら意味深な目つきと共に言ってくれるのだった。
「そうか、だったらお前にいい土産話をくれてやる。せっかくだからな? 面白いものを見せてやるから、付いて来いよ」
「?」
怪訝な顔で背中を見送るクマ族に、老獪な犬族はニヒルな笑みをその口元に浮かべて促した。
「だから、お前が見たいって言うヤツらに会わせやるって言っているんだ。おまけにこのアーマーにもな? 俺の気が変わらない内にさっさと来い」
こうして言われるままにこの後を付いていくクマ族の隊長は、その先で思いも寄らない者たちと会うことになる。
やがてひとりだけ母艦に帰投するアーマーの中で、この顔に苦笑いが張り付いて取れないベアランドであった。
Part2
無事に戦いを終えてみずからの母艦に戻ったベアランド小隊であったが、その日の夜半にはまた再び出撃することとあいなるのだった。
敵襲などではなく、友軍の僚艦にふたたび呼ばれてのことだ。
例の偏屈な犬族の艦長にまたみんなでお説教を食らうのではあるまいな?とはじめ微妙な顔つきのクマ族の隊長さんだが、こちらの大ベテランの艦長から聞かされたのは、それは意外な先方からの提案であった。
とは言えでさては何かしらの打算があるのではないかとこれまたビミョーな顔つきのベアランドなのだが、小隊の部下たちを引き連れてまた新型の巡洋艦へと向けて夜空に飛び立つのだった。
ただし今回はベアランドの大型機だけで、ふたりの犬族たちの機体は航空空母に置き去りにしたままの、単機での発進だ。
よってこの2名をみずからの機体のコクピットに同乗させての発艦だった。
これに部下であるコルクとケンスは、さっぱりわけがわからないとひどい困惑顔をしながら、あちらに着いていざその場で命じられた命令には、なおさらギョッとして当惑することしきりだ。
ついてほどなく、また母艦へととんぼ返りすることになる第一部隊は、今度は三機編成のアーマー小隊となってみずからの新型重巡洋艦の空母へとたどり着くことになる。
ちなみにこの時、はじめ三名だったはずの隊員は、何故かこれが五名へと増えており……!
詰まるところ以前に犬族の艦長どのが言っていた〝お土産〟が、早くももたらされた結果であった。
大型のアーマーを専用の機体ハンガーに着艦収容させて、クマ族のパイロットは、ただちにこのコクピットからメカニックスタッフであふれかえるデッキフロアへと降り立つ。
そこにはすでに新しく持ち帰った機体をこれ用のハンガーに収容させていた二名の犬族たちが、ピシッと敬礼して待ち構えていた。ここらへんはすこぶる礼儀正しい新人パイロットだ。
軽くだけ敬礼して返す隊長のクマ族は、見上げてくる若い犬族たちにおおらかな口ぶりで声をかけた。
「ふたりともおつかれさん! で、どうだった? あの仏頂面の犬族のおやじさんからもらった新型機は? はじめてでおまけ夜間飛行じゃちょっとしんどかったかね、いくらきみらのアーマーと同型機とは言え……!」
するとこれに敬礼を解いてから応じる長身の犬族、ケンスは戸惑い気味に答えた。
その隣の同僚の犬族のコルクも何やら困惑気味の表情だ。
どうやらこのふたりには、あまり相性が良くはない機体だったらしい。
その様子だけでもはやなるほどと納得する隊長さんだ。
「機体の反応はとても良好でした。おれたちのと遜色ないです。ただ、操縦桿やスイッチのたぐいがとても重くて、やたらに固かったですね! あれじゃいざ戦闘になった時に大変だ……」
「お、オレも、とても苦労しました! あんなのオレたちの手には負えませんっ、ここまで飛ばしてくるのでやっとだったから……!」
「そうか。なるほどね! 知ってのとおりでクマ族のパイロットさんたちだから、そっち向けに操作盤回りがきつめにチューニングしてあるんだよ。ぼくらからしたら、犬族用のはむしろ設定がゆるゆるで、ちょっと肘が当たっただけで固定武装やら何やらが暴発しちゃうからね!」
冗談めかした言いように、暗い顔つきのケンスが苦笑いして背後に立つ新しいアーマーを見上げた。
「そもそもが、コイツはおれたちのと同型機なんですか? まったく見てくれが違うように思えるんですけど……なあ?」
横の相棒に問うのに、問われた毛むくじゃらの犬族はうんうんと激しく頷いて同意する。
すると問われたクマ族の隊長も、ふたつ並んだ機体を見上げながらにやんわりとこの疑問に応じた。


「まあ、これっていわゆる試作機、プロトタイプってヤツでさ、きみらのビーグルⅥの元となった機体らしいよ? これを量産型に改良・改修したのがあっちの機体で、ある意味兄弟みたいなもんなんだよ♡ いたるところゴツゴツしてて、いかにもクマ族向けって感じだけども」
「犬族とクマ族で兄弟ってあんまりピンと来ないですけど……」
「あ、あの頭も、なんかクマっぽい……!」
「ああ、通称、ベア・ヘッドだって! この機体、ビーグルとは言いながら、ヘッドはぼくのとおんなじまあるいクマ型なんだよね。なんかブサイクな♡ でもぼくのランタンほどじゃありゃしないか!」
茶化して笑う隊長に、やはり苦笑いの部下たちだった。
この時、背後のほうで何やらごそごそと気配がし出すのに、そちらに気を向けようとしたベアランドだが、折しも横合いから声を掛けられてみんなでそちらに向かうこととなる。
はじめに部下たちが同乗していた機体に、帰りはまた別のふたりの隊員たちを乗せていたのだが、それをすっかり失念していたのをようやく思い出すベアランドだ。
それでもベテランの軍人たちなのだから、ほっておいても平気だろうとあえて気にかけずに、今はこちらに近寄ってくる同僚の副隊長に身体を向け直した。
オオカミ族のウルフハウンドは気楽なさまで声を掛けてくる。
「おう、もう帰ったのかよ? 早かったな! ふうん、ずいぶんとブサイクな機体だが、それなりに使えるんだよな? おまえたちが乗って来たんだろ??」
「ハッ!」
かしこまってまた敬礼する新人たちに、鷹揚な態度の第二部隊隊長はにんまり顔してこの喉を鳴らした。
「くっく、いい反応だな。多少は戦い慣れてきたってことか。学生さんがいっちょ前のパイロット面してやがる! それじゃ早速だが、こいつらは預からせてもうらうぜ?」
「ああ、そうか、明日付でふたりともシーサーの第二小隊に編入されるんだものね? ぼくのほうにふたり、ベテランが入ってきたから。なんか名残惜しいな♡ ぼくのこと忘れないでね?」
「忘れるも何もみんなおんなじ艦に所属の一個中隊じゃねえか? これからも毎日顔を合わせるんだからよ。明日から所属が別になるんだが、もう今からみっちりとミーティングだ! 戦い方も変わってくるから、そこらへんも覚悟して従ってもらうぜ?」
「ああ、なるほど。どっちも機体の仕様が飛行型から地上戦、ないし海上戦用に変わるんだっけ? 道理でふたつともこの区画に見当たらないわけだ。あの銀色のまっちろい機体?」
表情をややこわばらせるふたりに明るい笑顔で言って、副隊長のオオカミ族には了解したと頷く隊長のベアランドだ。
「それじゃ、行っておいで。副隊長がキビシイからってへこたれちゃダメだよ? しっかりとそのシッポに食らいついて一人前のパイロットにならなくちゃ!」
最後にびしっと敬礼してただちに灰色オオカミに連れられていく犬族たちを見送る隊長さんだった。
それきり立ち尽くすが、しんみりとした気分に浸るには回りの喧噪がやかましすぎる。
それで気持ちを切り替えると、ぐるりと頭を巡らせて、ふたたび自分のアーマーへと向き直るのだった。
見ればそこには、新顔のふたりのパイロットたちが陽気なさまで立ち話をしている。
何故だか楽しそうにピョンピョンとフロアで跳ねている、見てくれのそれはでっぷりとした大柄な年配のクマ族たちだ。
これにはやたらな親近感が沸いてにんまりした笑顔が隠せない隊長さんである。
こちらはこちらでまた忙しくなるのに違いなかった。
Part3
巨大な軍用艦の食堂は、一度に大勢の乗組員が利用できるようにそれは大きな区画面積があり、一部には士官やパイロット用の専用フロアだなんてものまでが用意されていた。
これに普段はさしたる意識もせずにそこらで食事を摂っているクマ族の隊長さんなのだが、あえて今だけはその人気のない専用スペースを陣取ることにする。
つまりは今日付で編入されてきた新人の隊員たちをともなって、軽いミーティングの場を設けるためだった。
先にデッキフロアから上がって、すでにミーティングを行っているはずの同僚のオオカミ族が率いる第二部隊はどこにも見当たらないので、おそらくはどこぞかのブリーフィング・ルームにでも詰めているのだろう。
みなが大柄で大食漢ばかりのクマ族たちとは違って、その体つきがスマートな種族が大半のオオカミや犬族たちには、食べながらミーティングをするという発想や慣習がないのかも知れない。
食堂の横長のテーブルのあちらとこちらに分かれて座るベアランドは、これと対面するふたりのベテランパイロットたちを実に頼もしげに見つめては、クックと喉の奥を震わせるのだった。

「ふたりともほんとに良く食べるな! 見ていてあっぱれだよ。小食なコルクたちに見習わせてやりたいくらいだ♡ よっぽどおなかが空いてたんだね? まあ、わからなくもないけど……」
性格何かと難ありな犬族の艦長の巡洋艦に居た時の悲惨なありさまを思い返しながら、肩を揺らして笑ってしまう隊長さんだ。
「それじゃ、食べながらで構わないから、今からおおざっぱなブリーフィングをさせてもらうよ。改めて自己紹介をば♡ じぶんはこのアーマー部隊の隊長を務める、ベアランド少尉だ。ぼくらはとりあえず第一小隊、この戦艦の中では、いわゆる航空アーマー部隊ってヤツだよね、てことで以後よろしく!」
これにテーブル上にどかんと置かれていた山盛り一杯の食事から、二人そろって顔を上げるクマ族たちは反射的に立ち上がろうとするのを、やんわりと制止するベアランドはまた続けた。
「あ、いいよ、敬礼はさっき済ませたばかりじゃない? そのまま食べ続けてていいから。どうせ面通しくらいのおざなりなものしかやらないんだし、いちいち細かいこという必要もないってものだしね? なんたってこんなにいかつい見てくれした大ベテランのパイロットさんたちじゃさ!」
どちらもじぶんとおんなじ大柄なクマ族の上に、ふたりともこの艦内ではおよそ見かけないような一風変わった見てくれのスーツに身を包んでいるのを、いかにも頼もしげなニコニコ顔で眺める隊長さんだ。
見ようによってはかなり異様な、いっそ囚人服だとかを思わせる横縞柄のパイロット・スーツは、これぞまさに知る人ぞ知るべくした王宮や内政府直属の守備部隊の専属衣装だった。
すなわちよほどの熟練した手練れのみが身につけることを許された、アーマー曲技曲芸部隊、人呼んで『サーカス・ナイツ』の出身であることを、どのくらいのクルーが知っているのだろう。
一説には暗殺だとかいった闇の仕事もこなすのだとか……?
こうして目にすることもなかなかに無いはずのものなのだ。
軍内部ではある種の「伝説」とまで化した戦闘集団だった。
それだから見ていてわくわくが止まらない若いクマ族の隊長は、太い首を傾げながらにしみじみと言うのだ。
「う~ん、それがどうしてあのおじさん、もとい偏屈な犬の艦長さんのとこにいたのかねえ? あんまり詳しくは聞けなかったけど、なんかワケありっぽいのかな♡ おまけにこのNo.8とNo.9とはさ! 上位10位以内の上級ランカーだなんて、普通はなかなかお目にかかれないんもんだろうに?」
見た目がかなり特殊なデザインしたスーツの胸ポケットのあたり、それぞれに固有のナンバーが描き込まれているのを読み上げては、ひとしきり感心するのだった。
これにどちらも一度は立ち上がりかけながら、また口の中いっぱいに食べ物を詰め込んでモグモグやっていたふたりの中年のクマ族たちである。
それがやがてごくんと口の中のものを飲み下したらば、やや苦笑い気味の照れたような笑顔を向けてくる。
「いやいや、そないに大したもんちゃいますわ! なりはこないですが、おれらしがないアーマー乗りってだけのことでして。なあ?」
「せやな。ぼくらアーマーをうまく扱うことだけが取り柄のただのおっさんですわ。お恥ずかしいはなしやけど……!」
「そんなこと♡ 『高空の大鷹と大鷲』とまで恐れられた、クマ族きっての熟練パイロットコンビ、よっぽどのもぐりじゃなければ知らないヤツなんていやしないよ!」
まんざらお世辞でもなさそうな隊長からの発言に、また互いの顔を見合わせてこちらもまんざらでもなさそうな上機嫌で照れ笑いするおじさんたちだ。
「そないに言われると照れてまいますわ! ええ隊長さんに拾うてもらえてこっちは大助かりですさかいに。この軍艦、飯もめっちゃうまいし、ええことずくめやわ!!」
「ほんまや。今後ともどうぞよろしゅう。せやからぼくらも改めて自己紹介をさせてもらいますわ。噂ほどの腕があるかは知りませんが、ぼくはヒグマのザニー、ザニー・ムッツリーニ、階級は中尉であります……!」
「せやったら、じぶんはグリズリーのダッツ、ダッツ・ゴイスン中尉であります! よろしう願いますわ、ほんまに! マっジでがんばりますさかいに!!」
息の合ったふたりからの歯切れのいい名乗りにあって、こちらもますます上機嫌で受け答えるベアランドだ。
「どうも♡ こちらこそ、頼りにしてるよ! だったらほら、遠慮しないでもっと食べてよ、じきにお代わりも来るだろうから。おなかペコペコなんでしょ?」
鷹揚なクマ族の隊長からの催促に、いささか気後れすることもなくがっつりと頷くこちらも豪快なクマ族たちだ。
「はあ、それは、そんなら喜んでいただかせてもらいますわ!」
「ほんまにええ隊長さんや! でもなんで部隊を率いるっちゅうリーダーが、おれらよりも年下でおまけ格下の少尉さんなんや? このひと??」
目の前のごちそうに再び取りかかりながらこちらをチラチラと目の端でうかがってくる灰色のクマ族に、向かって左隣の赤毛のクマ族はあいまいな顔つきでただこの頭を傾げさせる。
おおらかな口ぶりの隊長はこれに気にするでも無く答えた。
「まあ、そのへんは今はどうか大目に見てよ♡ これから頑張って階級上げるように努めるから。ふたりとおんなじか、いっそ大尉さんくらいがいいのかな? 正直、個人的にはあんまりこだわりがないんだけど、そこらへん」
「ええです。気にしませんわ。ちゅうか、少尉どの、やのうて隊長さんが乗ってたあのアーマーを見たら、納得やわ。あないにバケモノじみたいかついギガ・アーマー、そこいらのパイロットには乗られへんのやさかい。実力は保証されとるっちゅうわけで」
「せやな! ビックリやわ!! あないなお化けじみたもんひとりで乗りこなすなんてありえへんで、ほんまに。ちゅうかマジでひとりでやってますのん? おっかないわあ……!!」
おじさんのクマ族がふたりしてうんうんとうなずき合うのに、こちらも照れた笑いでうなずく若いクマ族だ。
「どういたしまて。とは言えで、そっちのアーマーもかなりのモノではあるんだけどね? 初期型のビーグルⅥとは言っても、現行の機体よりもよっぽど性能が良さそうだよなあ。実際に乗ってたコルクとケンスがとても扱いきれないって嘆いていたし?」
「フフッ、犬族のワンちゃんたちにはしゃあないですわ。なんちゅうてもベア・ヘッド! クマ族のぼくら専用にチューニングした機体なんやから。装甲からエンジン出力から桁違いですわ」
「あないなもん、ほんまにおれたちやから乗りこなせるっちゅうもんでの? せやから腹ごなしもして元気もりもり、クマ族コンビの実力っちゅうもんをいかんなく発揮してやりますわ!!」
本当に息の合ったおじさんコンビに、心からの明るい笑顔になるベアランドだ。
「楽しみにしてるよ。ほんとに元気になってくれて良かった♡ 一時はどうなることかと思ってたからさ? ジーロ艦長のとこで独房にふたりそろってぶち込まれてたのを見た時には……!」
いたずらっぽい笑みでウィンクしてやるに、途端に気まずげな顔を見合わせて、互いの肩をすくめさせるおじさんコンビだ。
「ああ、それはお恥ずかしいところを見られてしもうたわ……」
ペロリと赤い舌を出して困惑顔する赤毛のクマ族に、対する焦げ茶色のクマ族は、はたと考えながらに聞いてくれる。
「うん。でもあれってのは、つまりはふたりともひどい船酔いで完全グロッキーだったんだよね? 今にして思えば??」
「せや! あの渋ちんの艦長さんが、空も飛ばんとずっと海面にへばりついておったから、航空巡洋艦やっちゅうてるのに!!」
いまいましげに呻く灰色熊に、横のヒグマがおなじく険しい顔色で同意する。
「おお、燃費が悪うなるから空飛ぶんは必要に迫られてからゆうてたよな? ほんまにしんどいわ。ぼくらふたりとも海軍さんやのうて丘の陸軍出身やさかいに、あないにぐらんぐらん揺れる中ではしんぼうでけへんかった」
「地獄やったわ! それにくらべてこっちの空母はちゃんと空飛んでますやんか、マジで天国やわ! おかげでまるで揺れへんし、うるっさい波の音もちっとも聞こえへん!!」
「ああ、だからさっきはあんなピョンピョン跳ね飛んで地面を確かめてたのか。このクラスの重巡洋艦は空飛んでたほうがむしろ燃費がいいって言うからね? 試験飛行も兼ねてるから、次に降りる時はちゃんとした大地の上じゃないのかな。ふたりともこっちに来て正解だったんだ。ジーロ艦長には感謝しなくちゃね!」
「いいや、もう二度と関わりたくありませんわ」
「マジで!」
深いため息ついたかと思えば、それきりまたみずからの食事にいそしむベテランたちに、じぶんもお腹が減ってきたことを自覚する隊長さんだが、折しもそこに無人の移動カートに乗せられた山盛り一杯のごちそうがまた新たに到着した。
これにヒュー!と歓迎の口笛を鳴らすおじさんたちだ。
まだ食べる気まんまんなのらしい。
そんなとても景気のいいクマ族たちに心底嬉しくなるこちらもクマ族のベアランドだったが、食べ物が満載のカートからがっちりと大盛りのプレートを持ち上げながら、その後ろにくっついてきた人影をそれと認めたりもする。
四人目のチームメイトであるメカニック担当の青年クマ族なのだが、この後ろにまた大柄の中年のクマ族がいたりもするのにはやや不可思議な目線を向けるのだった。
ちなみに士官用のフロアは目隠しの衝立(ついたて)がこの周囲にぐるりと張り巡らされているので、外からはこの中の様子がよくはわからない。
よってつまるところふたりともこのやけに食べ物が豪快に盛られた自動カートの行く先に当たりを付けて、この後をくっついてここまで導かれたのらしかった。
それを理解した上でふたりの凄腕のメカニックマンたちを迎えるベアランドだ。
「お、さすがにいいカンしてるね! 待ってたよ、リドル。あと第二小隊専属のチーフまでいるけど、一緒にお食事かい? ま、構わないけど、どう見てもグルメでグルマンのイージュンがいたらば、ごちそうの取り合いでケンカになっちゃいそうだな!」
こんな冗談めかしたセリフにあって、だが当の本人は何やら浮かない顔つきで大きな肩をすくめさせるのみだ。
クマ族の中でも飛び抜けて大柄な肥満体型である第二小隊チーフメカニックに、この前に立つとさながら子供のように映る細身の若いクマ族のこちらは第一小隊が専属のチーフメカニックマンは、ちょっとだけ苦笑いで答えた。
あんまりにも勢いよく食事を平らげている右手のクマ族たちにどうやら引いているらしい。
「は、リドル・アーガイル、ただいま参りました。みなさんお食事中のところ失礼させていただきます。ぼくは食事はもう下のデッキで適当に済ませているのですが……」
「済ませているって、たかが小ぶりなハンバーガーをひとつだけつまんだくらいだろう? あんなものは食事とはいいやしない」
後ろから巨漢のクマ族にいじられてなおさら苦笑いのリドルだ。これにベアランドが了解して右手の椅子を引いてみせた。
「いいからいいから! ならきみもちゃんと食事を摂らなきゃ♡ ふたりの新入隊員さんたちに紹介するついでにね! あと、そっちのイージュンもついでに紹介しておこうか。あいにくと第二部隊のメカニックだから、直接は用がないんだろうけど?」
「む、ついでにとは失敬だな? まあいいさ。オレはまだやることがあるからとっとと失礼させてもらう。用があったのはあんたらではなくて、あの生意気なオオカミ族と気弱なワンちゃんたちなんだ。アーマーのことでお願いしたいことがあってさ」
浮かない調子で言って口をへの字に曲げるチーフメカニックに、これまた意外そうな目で見上げる第一小隊の隊長さんだ。
「ああ、そうなんだ? でも見ての通りで、あいにくとここには誰もいやしないよ。たぶんみんなよそのブリーフィング・ルームに詰めているんだろ。急ぎの用ならこっちで呼び出してあげようか?」
みずからのスーツの腰にある士官専用の通信端末を示しながらの言葉に、冴えない顔した巨漢のクマ族は太い首を横に振った。
「いや、あの灰色オオカミは何かとめんどくさいから、あんたから言ってやってくれないか? それにどっちかと言ったら新人のワンちゃんコンビにお願いがあるんだ。そう、あの犬族たちのろくに塗装されていないアーマー、せっかくだからそれなりに色をつけてやりたいと思ってさ」
「あ、やっぱり未塗装だったのでありますか? 全身銀色でやけに目立つ機体色なのがおかしいとは思っていたのですが……!」
うながされるままに椅子に座った若いクマ族が熟年のクマ族を見上げて問うのに、傍で聞いていてただちになるほどと納得するベアランドだ。
「やっぱりそうなんだ? はあん、でもあの機体、どちらも飛行型から地上戦、ないし海上戦仕様に機体の仕様を換えられちゃうんだよね? てことはもう終わったのかい??」
「いまやってる真っ最中だよ。両脚のホバーユニットの換装自体はわけないことだから、あとは背中の邪魔なフライトユニットも取り外してより地上戦仕様にふさわしく仕立ててやる。武装と装甲をより強化するかたちでね?」
「そいつはありがたいや! あの子たちも喜ぶんじゃないのかな? 頼れるメカニックがついてくれて一安心だよ。今後ともよろしくね! それじゃ、後でそっちに顔を出すようにふたりには伝えておくからさ♡」
「ああ、よろしく頼む。ただしオレの居住区のセル(個室)ではなくて、下のハンガーデッキに来るように伝えてくれ。来るのは明日以降で構わないから。それじゃ、オレはさっさとおいとまさせてもらうよ。あとはどうぞご自由に。こちとらやらなきゃならないことがまだまだ山積みなんだ」
「うん。ご苦労様♡ それじゃ、またね」
「ご苦労様であります! イージュン曹長どの!!」
巨漢のクマ族がのっしのっしとこの視界からいなくなるのを見届けて、改めて残りのメンツを見回す隊長だ。
「よし、それじゃこちらも食べながら、いざ本題に入ろうか。せっかくこうしてみんなそろったんだから」
するとぼんやりした顔で口をもぐもぐ動かしていた赤毛のクマ族が、ごくんと口の中の食べ物を飲み下して、今しも食堂から立ち去っていくでかいクマ族の背中を見ながらに言った。
「んん、いまのおひと、なんやえらい存在感がありましたが、イージュンってゆうてはりましたか?」
「せや、そやったらめっちゃ有名人やんな! 泣く子も黙る鬼のメカニック、イージュン・ビーガルっちゅうたら、知らんひとおらへんで、この界隈じゃ? さっすがにこんだけいかついフラッグ・シップともなるといたるところ猛者ばっかりや!」
灰色のクマ族も興味津々でおっかなびっくりにその背中を追いかけるのに、もうとっくにこれを見慣れている隊長さんは、肩をすくめ加減にしてあいまいに応じるばかりだ。
「まあ、本来はよその軍艦に配属されてたのを今だけ特別に入ってもらったんだけどね? ここって基本人手不足だから。いつまでいてくれるんだか♡ それはさておき、こっちの紹介もさせてもらうよ。ぼくら第一小隊のチーフメカニックくんのことをさ」
あらためて己の横に着く若いクマ族を示しながらの言葉に、ふたりのベテランが目をまん丸くして大口を開けた。
「へ、チーフメカニックさんでありますか? この見た感じいかにもお子ちゃまっぽい、クマ族の男の子が??」
「うそやん! まるでそんなふうには見えへんで? 隊長、冗談ゆうにもほどがありますて!!」
「ああ、いや、別にそう言うわけでは……!」
ある意味まっとうな反応するベテランのパイロットたちに、苦笑いで右手の若いメカニックのクマ族を見つめるベアランドだった。するとこれにはリドル本人がすかさず席を立って、ピシリとした一人前の敬礼をしてくれる。
「ハッ、申し遅れました! じぶんはリドル・アーガイル、伍長であります! こちらでは第一小隊のチーフメカニックとしての任務に当たっております。見ての通りのまだ若輩者でありますが、どうぞ今後ともよろしくお願い申し上げます!!」
そうきっぱりと宣言してくれるのをきょとんと見上げるばかりのクマ族たちだが、その後にとどめとばかり隊長から言い放たれた一言、ある有名な犬族の伝説的メカニックの名前にひたすらびっくりして互いの目を見合わせることになる。
「そないな大したおひとの愛弟子なんでっか? それは……!」
「うそ~ん、マジでビックリや!!」
「いや、その、それほどでも……!」
「基本的にはこのぼくのアーマーを面倒見てくれているんだけど、だったらなおさら納得だろ? あのお化けアーマーのメインメカニックマンなんだからさ♡ このトシで!」
かしこまるリドルの肩をぽんぽんと叩きながらしたり顔するベアランドに、神妙な顔で正面に向き直る赤毛のクマ、ザニーはやがて真顔でうなずいた。
ダッツはやや困惑顔のままだが、相棒が納得するからにはさしたる異論はないらしい。
「それは、信頼してええっちゅうことなんですな? メカニックの腕はパイロットの生命に直接関わるもんやから。隊長のお墨付きなら文句は言いようがあらへんですわ」
「うん♡ 全幅の信頼を寄せてくれて構わないよ。ビーグルシリーズくらいなら、片手でちょちょいのちょいさ!」
「ほんまに? なんかおっかないわあ!」
「いいえ、見るからにはちゃんと見るので、それで一見したところ、おふたりのアーマーは背中のフライトユニット以外にもプロペラントタンクが増設してありますが、あれは通常任務においても必要なものなのですか? あくまで航続距離を伸ばすのが目的ならば、激しい空中戦ではむしろ邪魔になるものかと思われますが……!」
「ほんまもんやわ! せやんな、明日からの任務には必要ないものやさかい、取っ払ってもろうてかまへんよ」
「せやったらじぶんのも頼むわ! あないにでかいワンちゃんのシッポみたいなもん、カッコわるうてしゃあないて!!」
すぐにも意気投合しはじめるパイロットとメカニックを嬉しげに見るベアランドは、そこでちょっと考えながらに口を挟んだ。
「ん、明日から、かい? はじめに見た感じだと、どっちもあと2、3日は休養を取らないとダメかと思っていたんだけど、そんなに急いでいいもんかね? しばらくはぼくひとりのワンマン部隊の覚悟をしていたのだけど」
「そうなのでありますか? じぶんにはおふたりともどこも不調はないように見受けられますが。もちろんアーマー自体はいつでも出撃可能です!」
「あはは、明日からが楽しみだね! それではダッツ中尉、ザニー中尉、今後ともよろしく頼むよ♡ 北の空で敵無しと謳われた空中戦のプロの活躍ぶり、ほんとに頼りにしてるからさ」
隣の若いクマ族同様に席を立ち上がるクマ族の隊長は、そう言って右手をテーブル越しのベテランのクマ族たちに差し出した。
これにすかさず立ち上がって交互に固い握手を交わしてくれる赤毛と灰色熊だ。
ただし素手で食べ物を掴んでいた利き手はどちらもぐっしょりと濡れていたが。
ちっとも気にしないで座り直すとみずからもナイフとフォークは無視してごちそうを掴み上げるベアランドだ。
横のメカニックにも自由に食べるように言って、鼻歌交じりに口いっぱいにパンやら肉やらをほおばる。
明日からが楽しみで仕方がない隊長さんなのであった。
※次回に続く……!
リドル、イージュン登場 お代わりのワゴンの後から
ケンス、コルク、←シーサー ミーティング
ダッツ、ザニー、ベアランド、
イージュン、ケンスとコルクに用がある。ビーグルⅥ塗装?