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「オフィシャル・ゾンビ」⑥

オフィシャル・ゾンビ
ーOfficial Zombieー

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https://opensea.io/collection/officialzombie

オフィシャル・ゾンビ⑥(めんどくさいので今回からこのかたちにしました(^^)) 


 シンと静まり返った楽屋で、そこでは得体の知れない二体の何者かが物も言わずに相対していた。

 つい何時間か前にはそこにはそれなり名の知れたふたりのテレビタレントがいたはずなのだが、そんな面影はもはやどこにもありはしない。

 かたや毛深い毛むくじゃらの二本の足で仁王立ちして相手を見下ろすクマに、かたや四つん這いでうずくまる、こちらも毛むくじゃらでなんとも正体が知れない何かしらだ。

 力なくがっくりとうなだれているからこの顔つきがまだ定かではない。双方、見た目がケダモノで身体中毛だらけなのは同じだが、二体のバケモノたちはそれぞれが違ったカタチの衣装らしきをその身にまとっていた。

 それがまた異様さに拍車をかけているのだが、見ようによっては昔の武人が身にまとう鎧のようでもあり、頑丈な見てくれのアーマーと古めかしい装束の合わさったようなかなり独特なものだ。

 相変わらず黙りこくるクマが見ている前で、畳に突っ伏すケダモノが低いうめきを発する……!

「ううっ、う、ううう~~~っ……! な、なんだ、どうなったんだ、俺、どうして……ん、なんだ、これ??」

 あまりに突然のことに恐怖と混乱から反射的に身を固くしてその場にうずくまったそのケダモノ、もとい鬼沢だ。

 それだからようやくうっすらと目を開けて、まずそこに飛び込んで来たものにさも怪訝そうにこの顔つきをしかめる。

 ちょっと前までテレビでは人気のタレントだったはず芸人さんは目の前にあった見覚えのない毛むくじゃらの何かしら、おそらくは二本の腕らしきをしげしげと見つめるのだ。

 じいっと……!

 それが誰のものなのか認識がそれとできないままに、両手をグー、パー、グー、パーさせたりして、またしばし考え込んだ。

「……えっ! え、え、え、え???」

 ギョッとして、顔面に冷や汗じみたものを浮かべたのはこの直後のことだ。顔も全体くまなく毛むくじゃらなのに、イヤな汗をかいているのが傍から見てもはっきりとわかった。

 間近で見ているクマのバケモノ、元は日下部はうんうん、わかりますよ、ときっと内心では頷いてたのだろうか。

 よって裏返った悲鳴を発する、その元は鬼沢のバケモノだ。

「なっ、なんだこれ!? これ、まさか俺か?? いやいやいやっ、そんなわけないっ! んなわけないじゃん!!」

 ブルブルと震える両腕がそれがどちらも自分のものだとはっきりとこの身体の感覚として、そこに伝わる神経がまざまざと教えてくれるのだが、感情がそれを一切拒否、頭の認識がまるで追いつかない中堅どころの芸人だ。

 わなわなと全身を震わせながら、やがてハッとした表情で、次にはおそるおそるしてその毛むくじゃらの腕でみずからの顔を触ることとあいなる……。

「……っ!!?」

 生まれてこのかた、自分の身体からは一度たりとも感じたことがない毛むくじゃらの毛皮(?)の感触とまるで見覚えのない凹凸をなす顔の造形、いわゆる動物、ケダモノのそれにいよいよ絶句してしまうおじさんだ。

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 腰を抜かして背後の畳にぺたりと尻を付けてしまう。

 見上げる視線の先に謎のクマ、茶色いバケモノがいたが、今となってはそこに一切の驚きを感じられなかった。
 もはやどうでもいいくらいだ。

 言葉もないままにうつろな視線でどこをともなく見つめてしまうが、この視界の左の端に見切れるものに自然と焦点が合う。

 太い毛玉のような、神社の坊主が晴れの日に振り回すみたいなでかい毛筆のかなり特大のヤツがヒクヒクとひくついていた。

 それだけやけに異質だが、身体の感覚がやはりそれが自分の身体の一部であることをしっかりと教えてくれた。

 そう。人間には唯一なくて、ケダモノにはあるもの――。

 それが自分の尻のあたりから生えていることを、左手でグニュッとモノを掴んでその厳然たる事実をはっきりと自覚させられるのだ。

「う、これ、シッポ……か? ウソだろ、俺のケツから太いのが伸びてるぞ? 夢だろ?? そうに違いないよ、こんなの、ありえない……! おい、日下部、こんなの、冗談だよな??」

 半ば呆然として目の前で立ち尽くすクマに問いかけるが、こちらはこちらでやはり相当にありえない見てくれをさらしてしまっている若手のお笑い芸人だ。

 あえなく真顔でそのいかつい肩をすくめるばかりである。

 その上で変になぐさめを言っても虚しいだけだろうと、おのれが言えることだけをありのままに伝えてやるのだった。

「まあ、見たままですね……! はじめはパニックするかも知れませんけど、すぐに慣れますから。日常生活においてはむしろこっちのほうが便利な場面も多々あるし、あはは。基本的に不便はないはずですよ? それにしても鬼沢さん……」

「…………」

 まったくもって理解も納得もしがたい。

 そんなただ呆然自失の体で開いた口がふさがらない先輩タレントに現状すっかりクマの見てくれした後輩が言い放つ。

「やっぱり、タヌキだったんですね? 状況からしてそうなるんじゃないかなと予想はしていたんですけど、なるほど納得です。まあでも可もなく不可もなくで、良かったんですかね。鬼沢さんの元からのキャラに置き換えてもそんなに違和感なさそうだし」

「は? 何言ってんの? タヌキって、何??」

 いまだ呆然としたさまの鬼沢だ。
 この頭の中が真っ白けなのを察して、ごそごそとみずからの懐の内に片手を突っ込むクマは、ほどなくそこから何かしらを取り出して畳に尻をつけたままのタヌキにはいと手渡してくれる。

 それを無言で無意識に受け取るタヌキは、それをそのまま目の前にかざしてぼんやりした視線を投じてしばしのフリーズ。

 渡されたのはシンプルなデザインながらにやや大きめサイズの手鏡で、でかい頭をしっかりと捉えて克明に写しだしてくれる。

 そこに写ったものが果たして何なのか、それが果たして誰なのかを理解するのにちょっとだけまた間を要して、直後、とどめを刺されるかのような衝撃に見舞われるテレビタレントだ。

 ↑鬼沢が変化した姿のイメージです。タヌキですね♡
 ちなみに鬼沢自体がお笑い芸人のハ○イチのツッコミのひとがモデルなのですが、もはや原型が無くなっています(^^;)
OpenSeaでNFTとしても販売中!将来有望な激安物件です♡

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「うわあっ、マジでタヌキじゃん!! タヌキそのものじゃんっ!! ここに写ってるの俺か!? ウソだって!! いいや、認めない、認めないぞっ、こんなのでたらめに決まってる! ……やっぱりタヌキだあああああああ!!?」

 一心不乱に頭を振り乱して、一度強く目をつむって再び直視した鏡には、やはりおなじケダモノの顔面が写されていたのについには絶叫するタレントさんだ。もとい、元タレントさんか?

 いっそ失禁しててもおかしくないようなうろたえぶりでおまけこの世の終わりみたいな絶望的な声音を発するのだった。

「ああ、終わっちゃったよ、俺のタレント生命……! こんなんじゃどこにも顔なんて出せやしない。まずBPOが黙ってないよ。BPOってなんだっけ? そうでなくともPTAとか、なんかしらの振興会とか、動物愛護団体とか、おい、タヌキに人権ってあるのか??」

 完全に頭の中がパニックして思考がごちゃ混ぜになっている鬼沢に、見た目のほほんとした面構えのどでかいクマが右手を差し出してくる。
 のほほんとしたさまであっけらかんと言うのだった。


「まあまあ、そんなに落胆しないでください。何事も慣れですから。ぶっちゃけ嘆いているヒマなんてありませんし。むしろそれありきのお笑い芸人だし、タレント活動だって割り切ってしまえばそれでいいんですよ。このおれをはじめとして仲間は他にもいますから」

「……仲間って、俺も家族もこんなの想定外過ぎるよ。親や学校になんて説明するんだ? あとそういうの噂では聞いたりするけど、おまえ以外にはゾンビを公言してるヤツ、見たことないし。お先真っ暗じゃないか……!」

 がっくりとうなだれるその乾いた鼻先に、毛むくじゃらでごつい右手を突き出して笑うクマ、日下部はいつまでも尻餅ついたままのタヌキの鬼沢に立ち上がるように促しながらに言う。

「大丈夫です。国がうまいことサポートしてくれます。でないと世の中が乱れちゃいますからね。それよりももっと良く今の鬼沢さんの姿を見せてくださいよ。全身がタヌキに化けて、身につけているものもすっかり変わっているじゃないですか? 己を知り相手をしらば百選危うからずっていう通り、まずは自分のことをわからないことにはこの先やっていけませんよ? ついでにおれのことも見てください。お互い見せ合いっこですね。その後にいよいよ実践てことで……」

「実践? おまえ、以前と比べてだいぶ落ち着いてきたよな? 昔はそんなんじゃなかったじゃん! いいよ、自分で立つから。ほらっ、と……わ、なんだこの慣れないカンジの景色、ひょっとして背が高くなってるのか? あれ、でもまだおまえのほうがちょっと高いの??」

「クマよりでかいタヌキなんて違和感しかないでしょう。確かにおれのほうが若干だけ高いみたいですね? 鬼沢さんは、ふうん、はじめてにしてはちゃんとそれなりのカッコしてますよね? その時の状況によっては多少の誤差が出るかもしれないですけど、たぶん平均的な鬼沢さんの変化態(モード)、いわゆるゾンビ化した状態がこれなわけで……」

「ゾンビ……! て、あれ、なんで俺こんな格好してるんだ? 俺のお気に入りの私服が影も形もなくなっちゃったじゃないか? こんなヘンチクリンな衣装、俺のスタイリストは絶対に用意しないよ! というかこれって、服なのか??」

 まったく見覚えがないみずからの出で立ちに改めて意識が向いて、目をパチクリするばかりのタヌキはひたすらに首を傾げる。
 すると間近で向かい合うクマがしたり顔して言うのだった。

「スタイリストさんなんていないじゃないですか。間違いなく鬼沢さんの服、装束ですよ、それって。特殊な見た目をしているけど、そもそもで今まで来ていた服はサイズ的に無理があるじゃないですか? さっきのアイテム、X-NFTと同様の原理で物質が変化したユニフォーム版の神具楽(カグラ)だと思ってもらえばいいんですよ。これがおれたちにとっての正式な仕事着みたいなもんですから」

「うう、さっぱりわからないよ。ごめん、俺さっきからおまえが言ってることの半分もわかってないと思う。俺がさっきまで着ていた私服が、俺がこんなタヌキに、これタヌキなんだよな? なんか納得いかないけど、タヌキってあたりに、とにかくタヌキになったのと一緒に服もドロンって化けたってことなのか? あれ、俺、いま何を言ってるんだ??」


 自分の口から出た台詞に自分で困惑、げんなりしたさまで左右の眉をひそめる鬼沢に、若干の苦笑いみたいなものをそのキバが見える口元に浮かべる日下部は、こくりとうなずく。

「ちゃんと理解できてますよ。鬼沢さん。ついでにその衣装の仕様だとかもじぶんであれこれ探ってきちんと理解しておいてくださいね。ひょっとしたら意外な機能や能力があるかも知れませんよ? 昔からひとを化かすっていうタヌキだから、なおさらじゃないんですかね? 腰の左右に付いてる大きなポーチみたいなの、それっていかにも意味ありげだし……!」

「ポーチ? あ、これのことか、これって袋なのか? モノが入れられるみたいな?? なんか邪魔なカンジだよな、どっちかひとつでいいのに! 番組で用意された衣装だったら良くできてるけど、なんかビミョーだ。でも子供受けとかはするのかな? 俺、これからはよりご家庭の主婦層の支持とか人気が欲しいから、これってかなり重要なんだよな。子供がケガするような無骨な突起とかはないほうがいい! あれ、そう言うおまえはおまえでやっぱりおかしなカッコしてるよな、んんっ……」

「鬼沢さん、今さら主婦層人気なんて狙っているんですか? 鬼沢さんのところのアゲオンのファンの母体って、たいていは若めの独身男性層ぐらいに思ってましたけど。あんまり女子受けはしない芸風に見えるし……なんですか?」

 しげしげとみずからの格好を眺め回してから、次に目の前に仁王立ちする相手の出で立ちにまじまじと注目する、そのタヌキのおじさんの視線に若干気圧されながら太い首を傾げるクマだ。

 すると毛むくじゃらのタヌキは渡された手鏡を元の主に返しながら、何やらどっちらけるようなことを真顔でぬかしてくれる。

「日下部、おまえのそのカッコってさ、なんかダサくない?」

「は?」


「いや、ダサいだろう! 全体的に色味が暗いし、デザインももっさりとしてどこにも愛嬌が無いっていうか、デザイナーの意図するところがさっぱりわからないもん。俺のとは雲泥の差だ。絶対売れないだろ、そんなノーコンセプトな出で立ちの芸人!」

「はい? コンセプトは関係ないんじゃないですか? デザイナーなんていないし。失礼しちゃうな、もとより鬼沢さんのと大差ないと思いますよ。これって本人の気質、ゾンビの個体差に応じて実体化するものですから、まさしく状況に応じたベストなカタチなんですよ。変ないちゃもんつけないでください。芸人だったらむしろ悪目立ちして一発屋くらいは狙えますから」

「どうかな~? とにかく俺はないと思う。ダサいもん。子供が受け付けないって、なんか気色悪いもんな! 変質者が不気味な笑みを浮かべているように見えるぞ、おまえのその服の模様? あるいは悪質なピエロ??」

「ニコちゃんマークに見えるでしょう? 心理的に相手に不信感を抱かせないためのある種の擬態みたいなものだとおれは理解してますよ。誰にでも受け入れられる完璧なデザインです。ま、ふつうの人間には見えないんですけど、このカッコ自体は……」

「は? 見えないって何が? こんなにでかくて毛むくじゃらでむさ苦しいんだから、見えないわけがないだろう?? 俺もひとのことあんまり言えないけど、おまえは100メートル先からだって丸わかりだよ。みんなこぞって逃げていくだろ」

「そんなことないです。じゃあ試してみますか、実践で? 実際に外に出てみればわかりますよ。回りの反応ってヤツが……!」

「は? このカッコで?? できるわけないだろって、おい、何する気だ? ちょっと、そのポーズって、まさかさっきの……」

 利き手を腰だめに構えて意識をそこに集中するようなそぶりをする目の前のクマに、ちょっと危機感を感じてのけ反るタヌキ。

「はい。このおれの後に付いて来てください。これから実践に入りますので。まずは外に出てからですね、ということで、んん、伸びろ、如意棒……っ!!」


「あ、え、わあっ、ちょっと待って、まさか、壁をぶち破って無理矢理この外に放り出すつもりかっ!? そんなむちゃくちゃ、わああああああああああああああああっっっ!!!?」

「いいえ、壁ではなくて、窓です! 回りにひとはいないように配慮してありますから、問題ありませんよ。そうれっ!!!」

 派手なガラスの割れる音とおじさんの悲鳴を残して、がらんとした楽屋にはそれきりに人の気配が一切しなくなった。

 ぽつんと取り残された私物のバッグがそこにはあるだけだ。

 混迷を深める二匹の魔物、ゾンビたちの消息を知る手がかりはどこにもない。この瞬間を境にひとの感覚が及ばない未知の領域へとお笑い芸人たちの命運は転じるのだった。

                次回に続く……!

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「オフィシャル・ゾンビ」⑤

  オフィシャル・ゾンビ
  ーOfficial Zombieー

OpenSeaのNFTコレクションでも展開中!!

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 ※第一話はこちら↓↓

-さいしょのおはなしの、つづきの4-


 カポッ……!

 目の前にほらと示されたのは、例のあの金色の輪っかだ。

 これをそのままこのみずからのまあるい坊主頭にスポンとはめられた中堅どころのテレビタレントは、はじめぽかんとしたさまで目の前の何食わぬさまのバケモノ、その実は後輩のお笑い芸人である日下部(くさかべ)らしきを見上げる。

 すると見れば見るほどにいかつい異形のバケモノは、もはや当たり前みたいにその場にいてくれるのだが、内心でもやもやしたものが渦巻く鬼沢は困惑したさまでもようやく聞いた。

「は……なに、コレ?」

 サイズがぴたりで計ったみたいにジャストフィットする冷たい感触に、状況はそれと理解できるが、この意味がまったくもって理解ができないと目で訴えかける。

 相手のクマ(?)は知った風な顔してうなずいてくれた。

「はい。特典のX-NFT、説明するのは難しいので今は省きますけどの検出作業です。このおれの輪っか、通称「金魂環(キンコンカン)」はひとの、もといゾンビの隠された能力を現実に導き出すちからがあるんです。はは、便利ですよね? このおれ自身に限らず、こうして他人に対しても有効ってあたり……!」

「は? さっぱりわかんないんだけど?? おまえが言ってることちんぷんかんぷんで、こんなんじゃ俺どうにもできやしないよ。なあ、あと何より今のこの俺のありさまって、傍から見たらかなりお間抜けなんじゃないのか?」

 怪訝も怪訝の顔つきで見上げてくる鬼沢に、クマの日下部はちょっとだけ左右の肩をすくめてからそのくせ平然と受け答える。

「ああ、まあ、大丈夫ですよ。隠しカメラなんてどこにもありませんから。あとお間抜けな姿の鬼沢さんより、まずはこのおれに視線が釘付けになるんじゃないですか? だから制限かけてるわけでもあって、機密はちゃんと保持されてますから。いかに鬼沢さんがお間抜けなカッコしてても」

「どの口が言うんだよ? で、だからこれで何がどうなるんだ? そもそも特典特典て、俺、別にそんなの欲しくないんだけど」

 完全に覚めたまなざしで言うのに、こちらも覚めた目で見返すクマはマイペースなさまをいっかなに崩さない。

「欲しい欲しくないに限らずに、ゾンビたる者ひとつは持っていてしかるべきものですよ。特にオフィシャルに限っては、それが何よりの証明になるものですから? 個人個人でまるで違うものですから、どんなものかはそれこそが”ガチャ”でピンからキリまでさまざまなんですけど……ちょっとドキドキしますね!」

「全然。俺はまったくときめかない。まず意味がわらいないし、そのエックス、えー、なんちゃら、だったっけか?」

「んーと、あ、”魂魄霊子顕現化錬金合成物質”……だったかな? とにかく”X-NFT”とだけ覚えておいてくれれば問題ありません。そろそろかな? 頭のキンコンカン、輪っかが点滅してるでしょう。それってアイテムの錬金合成ができてるサインですよ。ちなみにぼくらの業界用語、いわゆる隠語ってヤツではこれを”神具羅”、カグラとも言うんですけど」

「おい、ほんとにさっぱりわからないぞ。でも確かに、俺の頭、ピカピカなってるのか? でもできてるって、どこにも何もないじゃないか? まさかどっかから宅配で送られてきたりするのか、それって??」

「無理です。たとえ武装したアマゾンやウーバーイーツでも入って来られないくらいに厳重な警戒態勢下ですから、ここって。それよりも身体のどこかしらに異変とか、感じないんですか、鬼沢さん? おれは感じてますけど、ほのかな気配、みたいな?」

「武装したアマゾンの配達員なんて見たことあるのか? 異変て、頭がピカピカなってる以外は何も変わらないだろう? うざいな! もう取ってもいいか、この頭の輪っか、ん……!」

 頭の上のコブでも見るように険しくした視線を上向けていた鬼沢は、そこから不意にこの足下へと目線を急降下させる。

 はたと小首を傾げながらに何かしらの変化らしきに気が付いたらしい。それだからこの足下から徐々に視線を上げていき、みずからの腰回りでぴたりと目線とこの身動きが止まる。

 怪訝なさまで、自身の地味な灰色のスラックスの尻の部分、おそらくは後ろポケットへとこの手を潜らせるのだ。

 ただ無言でそのさまを見守る日下部、クマのバケモノがちょっと緊張したさまでごくりと息を飲むのが伝わる。

 そんなに注目されてしまうとみずからの挙動もやや緊張してぎこちなくなる見た目よりメンタル繊細な坊主は、途中からやや困惑顔しておのれの利き手でつまみ出したものを目の前にかざす。

 直後、かすかな沈黙がその場を支配した。

「……あれ、これって……??」

 何の変哲もない白い無地のハンカチがそこにはあった。

 きれいにアイロンがかけられて折り畳まれたものがだ。

「それは……鬼沢さんの私物ですか?」

 全身モサモサとした剛毛の毛だらけのクマのバケモノが聞いてくるのに、さっぱりした丸坊主のこやじが答える。

「そうだよ。当たり前だろう、ひとの物のはずがないじゃん。て言うか、なんだよ、コレ! まさかこんなのが特典だなんて言いやしないよな?? あと頭のこの邪魔なの、いい加減さっさと取ってくれ!」

「ああ、まだそのままにしておいてください。その輪っかの反応からしたら、たぶんそれに間違いないですから。と言うことは鬼沢さんのそれって、おれみたいに疑似物体を現出させる具現化型なんかではなくて、もとからあるものを変質変化させる、変化型なんですかね? いいからもっとよく見てくださいよ、それってほんとにただのハンカチですか?」

 なにやらひとりでしきりと納得しているさまのクマに、まるで納得がいかないおじさん芸人は憮然としたさまだ。
 そんなものだから手元のハンカチをぞんざいに振り乱してくれる。良く見るも何もただのハンカチだろうと言いかけたその口が唖然と開かれたままになっていた。

「だからっ、見たまんまだろうっ……! え、あれ、あ??」

 サイズで言ったらたかが知れているはずのハンカチが、だがこれをいざ開いてみたら結構な大きさで、胸の高さから腰を超えて足下までも届くのにギョッと目を見開いてしまう。

 ハンカチと言うよりはいっそシーツに近いくらいの布面積だ。

「な、なんだコレ!? ハンカチだったよな? シーツになってる?? でもこんなの俺のうちにないぞ、あれ、まだ大きくなってる? なんだこれ??」

 ひどい困惑顔で見上げるのに、見下ろすクマはやはり何食わぬさまで思案顔だ。

「……はい。鬼沢さんの特典ですね。まぎれもなく。その効果や使い方は自分で研究、会得していってください。実戦的な能力だったらいいですね。特典はひとつとは限らないし、変わることもありますから。それにつき相談には乗りますが、あくまで自己責任です。あと必ずしも申請する義務はありません。ここらへん、適当なウソでもわかりませんからね?」

「え、いや、だって? なにがなんだか、ほんとにシーツになっちゃったじゃん! こんなのがズボンのポッケに入ってたのか? なんか気持ち悪いな!! いらないよこんなのっ……あれ?」

 気味悪がって手放した途端に畳の上でシュルシュルと元のサイズにもどるハンカチだ。
 目がひたすら点になるお笑い芸人に、同じく芸人にして今は正体不明のクマのバケモノが納得顔で言った。

「はい。やっぱり鬼沢さんの能力ですね。ハンカチ自体が特典なのではなくて、鬼沢さんが身につけたものが特典化、つまりはX-NFT化するってことです。まさしく変化型かと。もちろんなんでもってわけではなくて、この場合はうすっぺらい布状のものなんですかね、おそらくは? 手放すとただちに効果がなくなるあたりは、術者本人の唾液や血液を付けることでより効果を持続させることができるかも知れないです。このおれの推測では……」

「は? は?? は??? いや、悪いけどさっぱりわかんない……! 俺、一体全体、どうなっちゃったの??」

「心中お察ししますが、慣れてもらうしかないです。あと、これからが本番ですから、いよいよ本日のメインイベントですよ」

 真顔で言ってくれるクマに、内心の焦燥があらわな中堅タレントはこの表情が血の気の失せた紫から興奮した赤へと変わる。

「はっ、なにが? は、あれ、なんだ、なんだか身体が……あっつくなってきてる? 熱があるみたいな、頭だけじゃなくて、ほんとに身体全体がっ、なんだこれ? コワイコワイっ!!」

「落ち着いてください。あんまりパニクった状態でゾンビ化しちゃうとそのまま闇落ちしちゃうかも知れないので……! 熱いのはそれすなわち身体が変化しているためで、ごく自然な反応ですから。すぐに元に戻りますよ。その代わりに見た目がすっかり変わってしまうんですけど、それもまた自然の流れですから」

「あっ、頭が痛い! 取ってくれコレ!! みんなコイツのせいなんだろうっ、おおいっ、日下部!!」

「よくわかってらっしゃいますね? 隠されたゾンビのちからを導き出すってのは、姿そのものを顕現化させることでもあるんです。おれがアンバサダーの仲介役を任命されている一番の理由ですね! 変化したら自然と外れますよ。もう用がないですから」

「おお、おいっ、うお、あ、あああああっ、ああああああ!!」


 苦しげなうめきを上げて身もだえする鬼沢はついにはその場にがっくりと両膝を付いてしまう。

 がくんと畳に突っ伏すかたちで頭を垂れた頭頂部から金色の輪っかが抜け落ちるが、その瞬間にひときわに強い輝きを放って畳に落ちる前にそれ自体は空気へと溶けていくのだった。

 そのまばゆい輝きに働き盛りのおじさん芸人が包まれて、光りが消えた後に残されていのは、それはそれまでとは似ても似つかないまったく別の何者かだった。

 一言で言ってしまえば、もはや人間ではない。

 かくてここ一番の沈黙がその場を長らく支配するのだが、目をまん丸くしてまじまじと見つめるクマのバケモノに、おそるおそるにこの顔を上げる毛むくじゃらの何者かは、みずからの異変にしばし理解が追い付かなかったのだろう。

 まず人間のそれとは明らかに違ったみずからの両手の異様なありさまに絶句して、すぐ目の前で固唾を飲んで見守るクマと互いの目線を見合わせる。

 ぼんやりしたさまのクマは、言葉を失うその元先輩芸人の何者か、この場に出現したまた新たなるバケモノに当たり障りのない感じで言ってくれた。

「ようこそ、鬼沢さん。こちら側の世界に……!」

 これに全身を小刻みに震わせる鬼沢らしきは、ただちに全身の毛を逆立てて喉から干上がった悲鳴を発した。

「な、なっ、な、なな、なあんだこれぇええええええっっ!?」

 日常を粉みじんに吹き飛ばす混迷と混乱はその絶頂に達したのだった。


            次回に続く……!

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「オフィシャル・ゾンビ」④

  オフィシャル・ゾンビ
  ーOfficial Zombieー

-さいしょのおはなしの、つづきの3-


 シーン……!

 あたりは静けさに包まれていた。

 おおよそ二時間後、相変わらずそこだけ人気のない某テレビ局のフロアに一仕事終えて戻ってくる坊主頭のタレントさんだ。

 マネージャーくらいは待ち構えてるものかと思っていたのが、肩すかしを食らってため息交じりに楽屋の扉に手をかける。

「はあっ……えっと、この後ってなんか入ってるんだっけ? いや、これで今日はもうおしまいだったような気が……あ」

 この後のスケジュールを頭の中でうんうんと思い返しながら、ガチャリと何の気も無しに開けたはず扉の向こう、その何の気も無しに見た楽屋の景色にそこが異常事態だったことを思いだす。

 まざまざとだ。

 はじめそれが何かまったく理解できないままにその場に釘付けで、しばしそのさまを見つめてしまった。

 結果、およそ10秒くらはそのままの姿勢で固まって、ただちに喉の奥から乾いた悲鳴みたいなものを発する芸人さんだ。

「ひっ、あ、あああああっ、なんかいる!? な、なんだアレ? ちょっと待てよ、さっきまでここにいたの、日下部だよな? おれとおんなじお笑い芸人の? あいつどこ行ったんだ?? そして何よりアレはなにっ!?」

 完全にのけぞって入りかけた出入り口から大きくこの上体を反らしてしまうが、足がすくんでそれ以上は動けなかった。

 本来ならばそれこそが大声を上げてその場から逃げ出してしまうところなのだが……!

 それまでの複雑ないきさつがあって、それもままならないと泣きそうな顔でおそるおそるにまた部屋の中をのぞき込む。

 やっぱりいた。何かが……!!

「なにアレ、なんだよアレ? ひとの楽屋で何やってんの!? 不審者どころの騒ぎじゃないじゃん! バケモンじゃん!!」

 何か得体の知れないものが部屋の奥に陣取っているのをまじまじと凝視する鬼沢は、それが何なのかまったく理解できないままにひたすらに考えを巡らせた。


「に、逃げたほうがいいよな? スタッフなんて呼んでも誰も来てくれないだろうし、来たってあんなのどうにもならないし! ほんとになんなのっ!? お、俺、知らないぞっ、なんか寝てるみたいだし、のんきにひとの楽屋で! 日下部もきっと逃げたんだよな? それじゃ俺もとっとと……」

 ゆっくりと扉を閉ざして何も見なかったことにしようとする中堅の芸人は、閉める寸前でまたひきつった顔で中をのぞき込む。

 その顔面全体に絶望の暗い陰が落ちた。

「……ダメだ。大事な荷物、部屋の中に置いたままだった。てか、あのバケモンがしっかり抱えてるじゃん! 俺のトートバッグ!! なんでだよ!? あの中にお財布とかスマホとか貴重なもの全部入ってるから、なくしたりしたらかみさんに怒られちゃう。へそくり用の内緒の通帳とハンコとかも入れてたっけ??」

 頭を抱えてこの世の終わりみたいな巨大な絶望感にさいなまれる三十代半ばのおじさんだ。

 人影のない廊下を見回して、仕方も無しに単身で立ち向かうべく正体不明の存在が居座る楽屋にそろりと足を踏み入れる。

 幸い相手は寝ているみたいだからどうにかバッグだけ奪取してこの場を逃げ去ろうと土足のままで畳に上がり込む。

 なんだかよくわからないでかくておまけ人型の何者かは、耳を澄ませばかすかな寝息みたいなものを立てているようだ。

 ひとの楽屋でふざけた話だが、なぜだかすっかり就寝中なのをいいことにこのバカでかい頭からつま先までをしげしげとガン見してやる鬼沢は、困惑も極致のさまで声を震わせる。

「ひっ、なんだこれ? クマ? 犬? ネコ……じゃないよな? いやいやっ、でかさで言ったらたぶんクマだけど、こんなの見たことない! ありえないよ、ほんとにバケモノとしか言いようがないじゃないかこんなの、寝ている、んだよな? くそっ、返せよ、ひとのトートバッグ! く、もうちょいっ……!」

 不自然な前屈みの姿勢で、目の前のいかつくて毛むくじゃらでおまけ丸太のように太い二本の腕でしっかりとホールドされたバッグの取っ手までどうにか指先を伸ばしてこれを掴むものの、ちょっと力を込めたくらいではビクともしなかった。

 完全に一体化している。

 もはやバッグは諦めて、この中身を救出するのが賢明かと取っ手てから内側に手を入れかけて、だがそこで何かしらの視線みたいなものを感じてふと目の前へと顔を上げる鬼沢だ。

「……あっ」


 正体不明のクマだかなんだかと思い切りにこの目線が合って、それきりフリーズしてしまう芸歴10年オーバーの芸人さん。

 リアクションが取れないことを責めるのはやはり酷だろう。

 完全に思考が停止していたが、謎のクマ(?)が不意にその大きな口をがばりと開いたのには飛び上がって悲鳴を上げる。

 コンマ1秒とズレのないさすがのリアクションだった。

「ひゃあああああっ! ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさあいっっ!! おいしくないからどうか食べないでえええええっ!!! ……あれ?」

 足がもつれてその場に尻をついてしまうのだが、一度大口を開けた相手がそれきりきょとんとしたさまでこちらを見ているのには、こちらも不可思議に見返してしまう。


 どうやらさっきのはただの大きなあくびだったらしいことに今になって気づく鬼沢だ。

 そのさなかにもでっかいクマのバケモノはのっそりとした動作で仰向けで寝ていた身体をよっこらと起こして立ち上がった。

 やっぱり、でかい……!!

 見上げる鬼沢はひたすらぽかんとしたさまで開いた口がふさがらない。
 そのさまをやはり覚めたまなざしで見下ろすバケモノは、野太いうなり、もとい声で何事かのたまうのだった。

 そう。

 びっくりしたこと、ひと、人間の言葉をだ。

 目が点になる中堅芸人は頭の中が余計に真っ白になった。

↑日下部の亜人(ゾンビ)化した状態の姿のイメージです。とりあえずこんなカンジのカラーリングを考えています。ちなみにOpenSeaではこの他のカラーパターンもお安くNFT化して公開、販売中です(^^) 画像にリンクあり♥

「……ああ、もう終わったんですか、収録? お疲れ様でした。なんだかひどく慌ててるみたいでしたが、何かあったんですか? 収録で滑り倒したとか??」

「は? え、ええ?? なんで喋れるの、ひとの言葉? て、ま、まさか……おまえ、日下部か???」

 鳩が実際に豆鉄砲くらったらきっとこんな顔をするんだろうみたいな絶妙な表情でおそるおそる聞く鬼沢に、どうやら日下部らしきクマのバケモノは大きな頭をただちにはいとうなずかせた。

 当たり前みたいな調子でまたひとの言葉を吐いてくれる。

 見た目、完全なクマのバケモノが。

「はい。いやだって、他に誰がいるって言うんですか? ここで待っていると言ってたじゃないですか、おれ。何をそんなに驚くことがあるんですか?」

 いかにも不思議そうに太い首を傾げるのに、だが全身が総毛立つ鬼沢はおよそまともなリアクションの取りようがない。

 傍から見ていてもパニック必死の光景だった。

「な、なっ、ななな、なんだよそれ、ふざけてるだろ? なんかのドッキリだったりするのか、でないと納得のしようがない!」

 完全に腰が抜けてその場に脱力したきり、途方に暮れるお笑い芸人だ。こんな困惑することしきりの先輩に、後輩のお笑いタレントはにべない調子で言ってくれる。

「ドッキリじゃないですよ。だってこんなの放送コードに引っかかるでしょう? コンプライアンス的にも、完全アウトじゃないんですかね、いくらこのおれがオフィシャルなゾンビのアンバサダーでも?? 本来は人目に触れさせちゃいけない姿ですから」


「本来はって、ほんとに日下部なのか? どうして?? どう見たってそんなの……お化けじゃん」

「ま、ものは言いようですよね? 話を円滑に進める以上やむなくこうしてこの姿をさらしているわけですけど、アンバサダーの性格上、この姿で活動することもままあるんですよ? もちろん、それは鬼沢さんも同様です……!」

 目を白黒させるばかりのお笑い芸人に、こちらもお笑い芸人にしてクマのバケモノはみずからの太い手を差し出してくる。

「そのままじゃあれですから、どうぞ立ち上がってください。対等な立場でお話しましょう。なんならお茶でも飲んで?」

「あ、え、いや、何も喉を通らないよ。あ、ありがとうっ、おまえ、すごいな、ほんとに日下部なのか? はあ、ゾンビ、だったっけ?? いやはや、こんなことになっちゃうんだ……」

「あいにくちゃんと生きていますけどね。ピンピンしてます。それでは早速、お返事聞かせてもえらますか? 鬼沢さん、このおれと一緒に、オフィシャル・ゾンビのアンバサダーになってもらえますよね? 見ての通りでおれはここまでさらしています。だから鬼沢さんも……」

 まじまじと相手の姿を見つめて暗い顔つきになる鬼沢は、苦い目つきをよそへと投じる。それから嫌々でまた目の前のバケモノ、もとい日下部に向き直って、言えることだけを言った。

「なんだよ、もう……いや、それよりまずは俺のトートバッグ、返してよ。さっきからずっと握りしめてるけど、お前に預けたような覚えはありゃしないぞ? だから、れっきとしたブランド物なんだからな! おいっ、返せよ?」

 利き手の逆でしっかりと保持したままの私物の所有権を主張してやるに、相手は聞く耳持たないとばかりに黙り込む。

 さながら人質にしているみたいにだ。

 眉間に深い縦ジワが寄る先輩芸人はいっそ力ずくで取り返してやりたい気分だが、やるだけ無駄なのを察してため息と舌打ちまじりに言った。ほんとに嫌々でだ。

「はあっ、ち、わかったよ! なるよ、なればいいんだろう、アンバサダー! なんのことかさっぱりだけど、あと今のおまえもわけがわかんないけど、なればいろいろと保証してもらえるんだろ。ちゃんと責任取れよな! あと返せ、俺のバッグ!!」

 憮然とした顔で右手を差し出すのに、するとこれにはすんなりと私物のバッグが突き返されてくる。見上げるクマは満面の笑みであるのがわかるがそれがまたおっかなかった。

「あは、良かったです! もうちょっと強硬な手段を取らないとダメかと思っていたんですけど、さすがは鬼沢さん、世間一般のイメージと一緒でとっても物わかりがいいひとです」

「おい、さんざん脅して人質まで取っていただろう? 中身、元のまんまだよな? 一応確認するから、あっち向いてろよ」

「見られちゃまずいものでも入っているんですか? 興味ないから見やしませんよ。どうせこの場におきっぱで、後から来るマネージャーさんに回収してもらうんですから、意味ないです」

「は? なに言ってんの?? て言うか、おまえが言うアンバサダーってそもそも何?? 何すればいいの?? 俺、こう見えてわりかし売れっ子のタレントだから、そんなにヒマなんてありゃしないよ?」

「わあ、うらやましいですね、そういうのしれっと言ってのけられちゃうの! さすがは鬼沢さん。でも心配ないです。時間はちゃんと都合を付けてもらえますから。アンバサダーがらみの案件が入った場合は、ギャラはむしろアップしますよ。仕事も代わりのひとが担ってくれますし。昨今のコロナの都合でその手の対応はみんなお手の物でしょう」

「は~ん、事務所も局もきっちりと現場対応してくれるんだ? まさかダマでは無理だもんな、こんなわけがわからないこと! て言うかさ、おまえ、ほんとに何がどうなってそんなことになってるんだよ?」

「ああ、まあ、それはこれからわかることです。イヤでも。ええっと、そうだ、まずはアンバサダー就任の特典の付与からいきましょうか? では、はい!」

「は? なにこれ?? これっておまえのあの例の輪っかだろ? もらえんの??」

「違います。特典を交付するのにこれが必要なだけです。つまりは、こういうことですね……!」

「は??」

 いまだ他に人気のないフロアと楽屋で、おじさんとバケモノのドタバタはさらなる混迷を深めることとなる。

 哀れ中堅お笑い芸人の明日はいかなるものが待ち受けるのか?

        ※次回に続く……!

  ※第一話はこちら↓


 

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METAL POLYDONs ②

元祖ポリドンのシリーズ、とっちらかってきちゃったのでこちらにNo.041からリスタート、ミント&リストしたものから公開します!

https://opensea.io/collection/metalpolydons

No.041 POLYDON ORIGIN SILKYPINK-RED

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POLYDON RAIBO

OpenSeaのコレクション、「METAL POLYDONs」の中のニューウェーブ! ライボのラインナップをこちらで公開!!

イーサリアムがメインだった元祖ポリドンに対して、こちらはイーサリアムとポリゴンのNFTをバランス良く混合して展開する予定です(^^)

https://opensea.io/collection/metalpolydons

まずはすべての中核となる、線画versionのポリドン・ライボです♥

No.000 POLYDON REAL RAIBO line drawing version

No.001 POLYDON RAIBO ORIGIN RED

今回からトレーディングカードの要素を付け加えて、各ポリドンに能力値を設定してあります。
 ORIGIN RED 各種設定

体力   Life Power   15/20
魔力   Magic Power   9/20
攻撃力  Attack     15/20
防御力  Defense    10/20
素早さ  Speed      9/20
幸運   Luck      11/20
攻撃魔法 Dark Magic   8/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 85
クリティカル ヒット 1/2
特殊能力↑一回の戦闘につき、一度だけ相手の防御力を無視・無効化した大ダメージを与えることができる。

No.002 POLYDON RAIBO ORIGIN BLUE

 ORIGIN BLUE 各種設定値
体力   Life Power   10/20
魔力   Magic Power   15/20
攻撃力  Attack      11/20
防御力  Defense     8/20
素早さ  Speed      15/20
幸運   Luck       10/20
攻撃魔法 Dark Magic   11/20
回復魔法 Holy Magic    5/20
総合 85
 ダブル マジック  1/2
特殊能力↑一回の戦闘につき一度だけ、魔法攻撃を二度行える。

No.003 POLYDON RAIBO ORIGIN YELLOW

 ORIGIN YELLOW 各種設定値
体力   Life Power   15/20
魔力   Magic Power   10/20
攻撃力  Attack     12/20
防御力  Defense    15/20
素早さ  Speed      7/20
幸運   Luck      9/20
攻撃魔法 Dark Magic   5/20
回復魔法 Holy Magic   12/20
総合 85
特殊能力 パーフェクト ディフェンス   1/1
一回の戦闘につき一度だけ、相手のあらゆる攻撃を無効化できる。

No.004 POLYDON RAIBO ORIGIN GLAY

 ORIGIN GLAY 各種設定値
体力   Life Power   7/20
魔力   Magic Power  7/20
攻撃力  Attack     7/20
防御力  Defense     7/20
素早さ  Speed      7/20
幸運   Luck      7/20
攻撃魔法 Dark Magic   7/20
回復魔法 Holy Magic   7/20
総合 56

No.005 POLYDON RAIBO ORIGIN CHOCOLATE BROWN

 ORIGIN CHOCOLATE BROWN 各種設定値
※原則Giveawayによる頒布品のため、非売品の予定。

体力   Life Power   5/20
魔力   Magic Power   5/20
攻撃力  Attack     5/20
防御力  Defense     5/20
素早さ  Speed      5/20
幸運   Luck       5/20
攻撃魔法 Dark Magic   5/20
回復魔法 Holy Magic   5/20
総合 40
特殊能力 Giveaway   8/20
自分の能力値を下げる代わりに、仲間に同数の能力を振り分けることができる。

No.006 POLYDON RAIBO ORIGIN MAGENTA

 ORIGIN MAGENTA 各種設定値
体力   Life Power  12/20
魔力   Magic Power   7/20
攻撃力  Attack     12/20
防御力  Defense     9/20
素早さ  Speed      9/20
幸運   Luck       9/20
攻撃魔法 Dark Magic   6/20
回復魔法 Holy Magic   6/20
総合 70

No.007 POLYDON RAIBO ORIGIN CYAN

 ORIGIN CYAN 各種設定値
体力   Life Power   10/20
魔力   Magic Power  13/20
攻撃力  Attack      9/20
防御力  Defense     7/20
素早さ  Speed     12/20
幸運   Luck      7/20
攻撃魔法 Dark Magic    9/20
回復魔法 Holy Magic    3/20
総合 70

No.008 POLYDON RAIBO ORIGIN GREEN

 ORIGIN GREEN 各種設定値

体力   Life Power  12/20
魔力   Magic Power   12/20
攻撃力  Attack     12/20
防御力  Defense     12/20
素早さ  Speed      7/20
幸運   Luck      7/20
攻撃魔法 Dark Magic   3/20
回復魔法 Holy Magic   10/20
総合 75

No.009 POLYDON RAIBO ORIGIN PINK

 ORIGIN PINK 各種設定値
体力   Life Power   12/20
魔力   Magic Power   12/20
攻撃力  Attack      8/20
防御力  Defense     8/20
素早さ  Speed      10/20
幸運   Luck       7/20
攻撃魔法 Dark Magic    7/20
回復魔法 Holy Magic   12/20
総合 75
特殊能力 Rescue   10/20
一回の戦闘につき一度だけ、仲間が瀕死のダメージを負った時にみずからのライフ パワーを分け与えることができる。


No.010 POLYDON RAIBO ORIGIN MOSS GREEN

 MOSS GREEN 各種設定値
体力   Life Power   8/20
魔力   Magic Power   8/20
攻撃力  Attack     8/20
防御力  Defense     8/20
素早さ  Speed      8/20
幸運   Luck       8/20
攻撃魔法 Dark Magic   8/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 64

No.011 POLYDON RAIBO ORIGIN Red Eye Frog

 Red Eye Frog 各種設定値
体力   Life Power   12/20
魔力   Magic Power   8/20
攻撃力  Attack     12/20
防御力  Defense     8/20
素早さ  Speed     12/20
幸運   Luck       8/20
攻撃魔法 Dark Magic   8/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 76

No.012 POLYDON RAIBO ORIGIN Blue Eye Frog

 Blue Eye Frog 各種設定値
体力   Life Power    8/20
魔力   Magic Power   12/20
攻撃力  Attack      8/20
防御力  Defense      8/20
素早さ  Speed      12/20
幸運   Luck        8/20
攻撃魔法 Dark Magic   12/20
回復魔法 Holy Magic    8/20
総合 76

No.013 POLYDON RAIBO ORIGIN ORANGE

 ORIGIN ORANGE 各種設定値
体力   Life Power   12/20
魔力   Magic Power   8/20
攻撃力  Attack     12/20
防御力  Defense     8/20
素早さ  Speed     12/20
幸運   Luck       8/20
攻撃魔法 Dark Magic   8/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 76

No.014 POLYDON RAIBO ORIGIN PURPLE

 ORIGIN PURPLE 各種設定値
オリジン パープル No.014
体力   Life Power   8/20
魔力   Magic Power   12/20
攻撃力  Attack     8/20
防御力  Defense     8/20
素早さ  Speed     12/20
幸運   Luck       8/20
攻撃魔法 Dark Magic   12/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 76

No.015 POLYDON RAIBO METALLIC RED

 METALLIC RED 各種設定値
体力   Life Power   18/20
魔力   Magic Power   12/20
攻撃力  Attack     18/20
防御力  Defense     13/20
素早さ  Speed     12/20
幸運   Luck       14/20
攻撃魔法 Dark Magic   11/20
回復魔法 Holy Magic   11/20
総合 109
特殊能力 カウンター ストライク
 相手からの直接攻撃に対して同じだけのダメージを与えることができる。魔法によるダメージは半分に減殺できる。
ストライク バースト
 一度の戦闘につき一度だけ、場にいるすべての敵に対しての直接攻撃が可能。

Extra Color version POLYDON SSS01 RAIBO -ORIGIN EARTH-

 -ORIGIN EARTH- 各種設定値
体力   Life Power   15/20
魔力   Magic Power   10/20
攻撃力  Attack      15/20
防御力  Defense      10/20
素早さ  Speed     10/20
幸運   Luck       20/20
攻撃魔法 Dark Magic   10/20
回復魔法 Holy Magic   10/20
総合 100
特殊能力 Call&Response  1/1
場にいない仲間のポリドンを一体だけ呼び出すことができる。呼び出されたポリドンは特殊能力を使うかLPがゼロになったら場から退散。

Extra Color version POLYDON SSS02 RAIBO -ORIGIN MOON-

-ORIGIN MOON-
体力   Life Power   10/20
魔力   Magic Power   15/20
攻撃力  Attack      5/20
防御力  Defense      10/20
素早さ  Speed     15/20
幸運   Luck     15/20
攻撃魔法 Dark Magic   15/20
回復魔法 Holy Magic   15/20
総合 100
特殊能力 Call&Response  1/1
場にいない仲間のポリドンを一体だけ呼び出すことができる。呼び出されたポリドンは特殊能力を使うかLPがゼロになったら退散。

No.016 POLYDON RAIBO METALLIC GLAY

オリジン メタリック グレー016
体力   Life Power   8/20
魔力   Magic Power   8/20
攻撃力  Attack     8/20
防御力  Defense     8/20
素早さ  Speed      8/20
幸運   Luck      8/20
攻撃魔法 Dark Magic   8/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 64
特殊能力、Divide Myself  1/2
能力値をそのままで二体に分身することができる

No.017 POLYDON RAIBO ORIGIN ALBINO

オリジン アルビノ No.017
体力   Life Power   15/20
魔力   Magic Power   152/20
攻撃力  Attack     12/20
防御力  Defense     12/20
素早さ  Speed     12/20
幸運   Luck       10/20
攻撃魔法 Dark Magic   10/20
回復魔法 Holy Magic   20/20
総合 106

No.018 POLYDON RAIBO ORIGIN BLACK

オリジン ブラック No.018
体力   Life Power   15/20
魔力   Magic Power   15/20
攻撃力  Attack     12/20
防御力  Defense     12/20
素早さ  Speed     12/20
幸運   Luck       10/20
攻撃魔法 Dark Magic   20/20
回復魔法 Holy Magic   10/20
総合 106

No.019 POLYDON RAIBO ORIGIN SILKYPINK-RED

オリジン シルキーピンクレッド No.019
体力   Life Power   10/20
魔力   Magic Power   10/20
攻撃力  Attack     15/20
防御力  Defense     10/20
素早さ  Speed     15/20
幸運   Luck       10/20
攻撃魔法 Dark Magic   8/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 86

Extra Color version POLYDON SSS03 RAIBO -ORIGIN SUN-

オリジン サン SSS03
体力   Life Power   15/20
魔力   Magic Power   15/20
攻撃力  Attack      15/20
防御力  Defense      15/20
素早さ  Speed      15/20
幸運   Luck       15/20
攻撃魔法 Dark Magic   15/20
回復魔法 Holy Magic   15/20
総合 120
特殊能力 Allrange Burst 1/1
場にいる敵すべてにスピードを無視した先制攻撃が可能。

No.020 POLYDON RAIBO ORIGIN SKY-PINK

オリジン スカイピンク No.020
体力   Life Power   10/20
魔力   Magic Power   9/20
攻撃力  Attack     10/20
防御力  Defense     9/20
素早さ  Speed     10/20
幸運   Luck       9/20
攻撃魔法 Dark Magic   9/20
回復魔法 Holy Magic   9/20
総合 75

No.021 POLYDON RAIBO ORIGIN BROWN

オリジン ブラウン No.021
体力   Life Power   10/20
魔力   Magic Power   8/20
攻撃力  Attack     10/20
防御力  Defense     8/20
素早さ  Speed     8/20
幸運   Luck       8/20
攻撃魔法 Dark Magic   8/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 68

No.022 POLYDON RAIBO METALLIC BLUE

メタリック ブルー No.022
体力   Life Power   18/20
魔力   Magic Power   18/20
攻撃力  Attack     13/20
防御力  Defense    13/20
素早さ  Speed      15/20
幸運   Luck      10/20
攻撃魔法 Dark Magic   15/20
回復魔法 Holy Magic   8/20
総合 110
特殊能力 カウンター Magic   3/3
一回の戦闘につき三回まで、魔法による攻撃を無効化、ないし魔法でカウンターができる。
Burstマジック
一度の戦闘につき二回まで、すべての敵に対して魔法攻撃の範囲を拡大、ないし倍加できる。

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「オフィシャル・ゾンビ」③

オフィシャル・ゾンビ
ーOfficial Zombieー

-さいしょのおはなしの、つづきの2-


 目の前でぼさぼさの頭に金の輪っかをはめた青年――。

 それなりに見知ったはずのお笑い芸人が、真顔になって何やらごにょごにょと口ずさみはじめるのを、言えばこの同業者である坊主頭のお笑いタレントは不可思議に見つめるばかりだ。

 怪訝なさまで相手をうかがうのに、みずからの腰のあたりに添えたその右手、おそらくは利き手なのだろうその手のひらを軽く握るようなそぶりを見せる若手の芸人は、どうやらそこに彼自身の意識を集中しているのらしい。

 傍目にはまったくもって意味不明なありさまながら。

 片やこれをいかにも怪しい手品でも見ているかの気分の坊主だが、ふと気が付けば何もないはずのそこに、何かしらの気配のごときものを感じているのには我ながら戸惑いが隠せない。

「え、なに、やってんの? おい、くさかっ……べっ……!?」

 次の瞬間、チラとこちらを見るむさ苦しいぼさ髪の男は何やら聞き覚えのある言葉と共にみずからの右手にぐっと力を込める。

 まさにその瞬間だった……!

「……伸びろっ、如意棒……!!」

「へ? にょ、にょいぼ、うっ? て、あっ、わああああああああっ!??」

 その不意に発した如意棒、にょいぼうのかけ声と共に、刹那、相手の手元から見えない何かがこちらめがけて走ったのか? 

 ブォオオオオオオオオーーーンンッ……!!

 低いうなりと共に、何か不可視の物体が突如としてみずからの身体を貫いた!

 もとい、思い切りに押しのける勢いでこの身体ごと背後の壁へと突き飛ばされた!?

 結果、完全に両足が畳から浮いてしたたかにこの背中を楽屋の壁に打ち付ける丸坊主のタレントだった。

「なあっ、なんだっ! これ!? いたたたたたっ、やめろっ、やめろよっ! おいっ、誰かあ!! 助けてくれっ……!!」

 思わずボサボサ頭越しに見える閉ざされたままの出入り口の扉に向けて助けを求める鬼沢だが、あいにくとそこから反応らしきはとんと返らないのに苛立たしげに歪めた顔でわめき散らす。

「ちくしょうっ、なんだよ! ひとがこんな目に遭ってるのに、どうして誰も来てくれないんだよっ、俺、演者だぞ!?」

 がなって目の前の後輩芸人、日下部に怒りの矛先を向ける。

「おいっ、日下部! おまえっ、こんなことしてただで済むと思っているのか!? オフィシャルだかなんだか知らないが、やっていいことと悪いことがあるだろう!! この、このくそっ……なんだよこれ!?」

 不可視の力で自らの腹部を強烈に圧迫するものをどうにか振り払おうとこの両手を身体の前で振り乱そうとも、虚しく虚空をかすめるばかりで何ひとつとそこに手応えがない。

 真っ赤な顔でいまだ目の前で冴えない表情の青年をにらみつけるのに、平然としたさまの後輩芸人は覚めたまなざしで見返すばかりだ。

 すかしているにもほどがあるが、肩の力が抜けきっていっそ無気力とすら見える相手は、挙げ句の果てにはみじんも悪びれたそぶりもないままに淡々と言ってのけた。

「あ、すみません。言うよりも実際にこうして見てもらったほうが話が早いと思って……! もちろん危害を加えるつもりなんてないですから。おれたち世間から〝ゾンビ〟って言われるヤツらのちからの一端をわかってもらえれば。今はこの人間の見た目のままですけど、本来は、まあ、そっちも見てもらったほうがいいんですかね? おれも見たいし、鬼沢さんの……ね」

「な、なにわけのわかんないこと言ってんだよっ、俺はゾンビじゃないっ! おまえだって人間の姿のままじゃないか!? なにがゾンビだっ、てかこのちからなんなんだっ、ほんとにわけがわからないっ、あとなんでこんなに騒いでるのに誰も来てくれないんだよっ!! おおいっ、スタッフ、誰もいないのかあっ!?」

「ああ、いないんじゃないですか? そういう風にお触れを出させてもらっていますから。オフィシャル・ゾンビの公式アンバサダーの権限をもってですね? 今このフロアにいるの、たぶんおれと鬼沢さんだけですよ。邪魔が入らないようにあらかじめに制限と特別な配置、配慮をしてもらっているんです。何よりも他の縁者さんとか、どこにもいなかったでしょう?」

※↑日下部の変身した後の姿、とりあえずでこんなカンジを予定しています。クマの人型亜人種(通称・ゾンビ)、みたいな?

https://opensea.io/assets/matic/0x2953399124f0cbb46d2cbacd8a89cf0599974963/88047277089427635657081635585532914949557992380650193262688159047766532685825/

 平然としたさまでどこまでもぬけぬけと言ってくれるのに、なおさら仰天して顔が赤くなったり青くなったりする坊主頭はなんだか丘につり上げられたタコみたいなありさまだった。

「なっ、なんだよそれっ! おまえいつからそんなに偉くなったんだ!? あとこのちからなんだ!! なんでなんにもないのにこんなにからだを押さえつけられるんだよっ、どんな手品なんだっ、日下部っ、いい加減にしろよ!!」

「ああ、はい。お気を悪くしたのなら謝ります。それではちからを解除しますから、受け身、ちゃんと取ってくださいね?」

「は? あ、わわわわわっ!? いたっ、たたあっ!!」

 ドンッ!


 身体ごと背後の壁にぐいぐいと押さえつけていた不可視の力が不意に喪失するのに、ろくな受け身も取れないままにしたたかに尻を畳に打ち付ける鬼沢だ。

 だから言ったでしょうと言わんばかりのしらけた後輩芸人の顔を見上げて泣きそうな声を出す。

「いっ、いきなりなんだよ! ケガしちゃうよ、もうちょっとやりようがあっただろう!? ゾンビもへったくれもありゃしない、ただのあやしい奇術じゃないかっ、くそ、俺は認めないぞ、こんなのただの嘘っぱちのまやかしだっ!!」

「はあ。いえ、まやかしも何も、れっきとしたゾンビのなせる技ですよ。ゾンビって言い方が悪いんですかね? でも何を隠そう、おれはこのゾンビの力、わざわざゾンビの姿にならなくても行使ができるんです。それこそがこの特殊な『輪っか』のおかげでですね……!」


「輪っか……。それがあればさっきみたいなことができるのか? いわゆる超能力みたいなのが使えるようになる、みたいな??」

「はい。まあ、誰でもってわけではないし、基本はこのおれ固有の能力ですよね。この輪っかもおれ専用のアイテムだし。ただしおれが認めれば貸与することもできますけど。あと、相手を拘束、捕まえたりする目的でも使えるし。とっても便利なんですよ、この輪っか、そうです、その名も『金魂環』!ってヤツは」

「きん、こん……かん? ひょっとしてふざけてる??」

 頭から取り外して改めて利き手でつまんで示してみせる金色の輪っかを、方やきょとんとしたさまで見上げるばりかの芸人だ。

 それにもまた平然とした様の後輩の日下部はまたしてもぬけぬけと言ってくれる。

 こちらは鬼沢の変身後の姿、のイメージです(^^)

「あ、そろそろ収録の時間なんじゃないですか? ここでお待ちしていますから、どうぞ行って来てください。あ、遠慮しないで、遅刻しちゃいますから。おおよそ二時間くらいですかね? それまでこちらはこちらでいいお返事を期待しながら待機していますので」

「え、もうそんな時間? なんだよっ、まだ心の準備がっ、てか、ここで待ってるの? ひとの楽屋で?? なんかヤだな! 貴重品とかマネージャーに預けておきたいんだけど」

「ああ、だったらおれが預かっておきましょう
か?」

「結構だよ! おい、ふざけんなよ、おまえが信用できないって言ってるんだからな!!」

「はあ、そうなんですか? でもあいにくとマネージャーさんは来ないですよ? さっきも言ったとおり、この現場に関係者以外は一切、出入り禁止の第一級の機密制限かかってますから」

「なんだよそれっ! マネージャーは関係者だろうっ、頭にくるな!! だからおまえにどうしてそんな権限あるんだよ!? あと何よりおまえが関係者ヅラしてるのが腹立つわっ!!」

「ですからさっきも言ったとおり、アンバサダーですから。政府公認の? あ、オフィシャルって意味、知らないんですか??」

「知らないよ!! いや知ってるけど! ええいもういい、おまえ、あっち行けよっ、やっぱり納得がいかない、俺の視界に入らないところでじっとしてろ! もう話しかけてくんなっ、できたら隣の楽屋でくたばってろっ、営業妨害だぞっ、ああ、ほんとにイライラする!! なんかまだ大事なことがあったはずなのに、すっかり忘れちまったじゃねえか!!」


「あ、ひょっとして衣装さんのことですか? その普段着の格好じゃアレですものね? でも当然、衣装やメイクさんも来ないですよ。制限かかってるんだから? さっきから言ってますけど」

「ほんとに営業妨害じゃないか!! わああっ、どうしてくれるんだよっ、もう時間ないぞ、てか、スタッフも誰も迎えに来ないじゃないか! なんだよっ、おかしいよっ、俺の人権おびやかされてるじゃんっ、さっきからずっと!!」

「大げさじゃないですか? いいえ、ちゃんと守られてますよ。鬼沢さんのゾンビがらみのマスコミの報道規制、今月の末までは有効期限がありますから。その後はどうだかわかりませんけど? でもオフィシャルのカミングアウトをしてアンバサダーになれば、ご家族ともども安泰ですよ。このおれが保証しますから」

「なんだよその保証!? いいや絶対に信用できないっ! あと報道規制ってなんだ!! マスコミって、うそだろっ、この俺の人権、マジでおびやかされてるの!?」


 しばしの口論の後にしまいには顔面蒼白で口をパクパクさせる鬼沢に、やや苦笑いの日下部がゆっくとり道を空ける。

 左手で出入り口の閉ざされたドアを指し示して言うのだった。

「どうぞ、はりきって行って来てください。応援してますから。何かあったらすぐに駆けつけるし。あとさっきの水晶石、捨てないでくださいね。転売は最悪、国家反逆罪とかになるんで、くれぐれもなしで。あと借り物だから、おれが怒られちゃいます」

「誰に?」

「秘密です。まだ。詳しくは晴れて鬼沢さんがアンバサダーの肩書きを手に入れてからですね」

「もう強制じゃん。おまえ、俺に何の恨みがあってこんなひどい仕打ちを? 背後にどんな組織があるって言うんだよ。こんなあからさまなひどい人権侵害っ……」

 もはやぼやきが絶えない鬼沢だ。

 がっくり左右の肩を落としてどん底まで落ち込む。

 それを前にしてくすりと笑う後輩芸人は、腐る先輩のコメディアンにしたり顔して言うのだ。

「国家ですよ。はい。こんなにでかい担保はないでしょう? やればわかります。やらなきゃ……それもまたわかります。おれは鬼沢さんが正しい判断をしてくれると信じてますよ。プロなんだから収録すっぽかして逃げるなんてしないですよね? それだからどうかこのおれを……」

「ちっ、なんだよ……!!」

 衣装やメイクはもう諦めてその場をズカズカと後にする鬼沢は振り向きもせずに出口へと向かっていく。


 荒々しい手つきでドアを開いて力任せに閉じる怒った背中に、これをその場で見送る日下部はちょっとだけ切なげな視線を投げかけて、ぼそり、と言葉の続きを述べるのだった。

 さながら祈るかのように。

「このおれを、人でなしにはしないでくださいね……!」

 ぱったりと人気の絶えた狭い部屋で、うつむく青年はゆっくりとその場にしゃがみ込む。

 そのまま静かに時は過ぎていくのだった。

 かくしてそう。


 またこの後に幕を開ける、ドタバタ劇の続きまでは――。


      次回に続く……!

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「METAL POLYDONs」/「メタル ポリドンズ」

OpenSeaの新しいコレクション、ちびっ子ドラゴン・キャラのポリドン/POLYDONのリリース情報をまとめて公開(^o^)

※もとはHEXAマーケットで開発していたキャラクターをマイナーチェンジ、より豪華なバージョンで展開してまいります!
 カラーリングコーディネートも募集中なので、遠慮なくTwitterにコメントください。あ、フォロワーさん優先です♡

HEXA版、オリジナル・ポリドン

https://nft.hexanft.com/users/Fpd2uwXfxfPQGy
 HEXAマーケットは日本円で売り買いができるNFTマーケットであり、Polygonマティックが主なNFTartです。
 OpenSea版の新型ポリドンは、主にイーサリアムNFTとなります♡ ぶっちゃけどっちがいいんですかね(^o^)

 以下、OpenSea版のポリドンの公開情報となります。

OpenSea Correction
  ”METAL POLYDONs”

https://opensea.io/collection/metalpolydons

No.000 “POLYDON ORIGIN” lined rawing edition

 一番はじめ、下絵のキャラクターデザインの線画版NFTです。
作者個人としてはこれが一番重要なコアのデザインとなりますので、ちょっとお高めに値段設定をしています。たぶん売れないでしょうね(^^;) 0.1ETHでリスト!

No.001 “POLYDON ORIGIN RED”

 線画に単純なべた塗り、さらに陰影を付け加えました!
 わかりやすいキャラクターデザインのノーマルタイプ・レッドくんです♡ それなりのお勤め価格? 0,01ETHでリスト!

No.002 “POLYDON METALLIC RED”

 線画に陰影処理を施した001の画像に、さらにハイライトのキラキラ効果を加えたメタリック・バージョンです(^o^)
 オリジンとメタリック、どっちがお好みですかね?
 ちょっとだけ001よりお高くして、0,011ETHでリスト!

No.003 “POLYDON ORIGIN BLUE”

 まずは赤、青、黄の信号カラーで展開すべくしたポリドンシリーズの青のバージョンです(^o^) 色を変えるとやっぱり雰囲気もかわりますね! お勤め価格の0.01ETHでリスト!

No.004 “POLYDON METALLIC BLUE”

 ウィンタースポーツが大得意! 青いポリドンのぴっかぴかメタル属性ポリドン、メタリック ブルーです♡
 オリジン ブルーと同じ、0.01ETHでリスト!競争です(^^)

No.005 “POLYDON ORIGIN YELLOW”

 大食漢で健康体力自慢のイエローくんです♡
 前述の赤と青とそろったらまさしく信号トリオの結成!
 とりあえずのアベレージ、0,01ETHの価格帯でリスト!

No.006 “POLYDON METALLIC YELLOW”

 永遠のデブキャラ? イエローくんのピッカピカバージョン!
 さながらゴールドかと見まがうキラキラ加減ですけど、並べて見てしまうと…(^^;) ガンバ♡ 0.011ETHでリスト!

番外編♥ Extra Color version

  01 ―POLYDON EARTH― 

   02 ―POLYDON MOON―

No.007 “POLYDON ORIGIN GREEN”

 自然と屋外活動が大好きなグリーンが登場! お花見のお供にぴったり♡ 0.011ETHでリスト!

No.008 “POLYDON METALLIC GREEN”

Coming soon!

 POLYDON GREEN ??

POLYDON ORANGE??

 POLYDON BLACK ??

 

記事は随時に更新されます(^o^)

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「オフィシャル・ゾンビ」②

NFTを絡めた実験企画ノベル、OpenSeaでは完全版(?)を公開中(^o^)

https://opensea.io/collection/officialzombie

オフィシャル・ゾンビ
ーOfficial Zombieー

-さいしょのおはなしの、つづき-


 シーン……!

 しばしの沈黙の後、悲痛な表情でついにはがっくりとその肩を落とす先輩のテレビタレント、鬼沢は言葉もない。

 今やすっかり観念したかのさまで、手にしていたスポーツ紙の紙面を破れるくらいに強く握りしめるばかりだ。

 ぐしゃぐしゃになった紙面にぽたぽたと水滴らしきが落ちた。

 泣いているのか?

 それだからそのすぐそばに膝を落とす後輩芸人のぼさぼさ頭、日下部(くさかべ)はとかく落ち着いた声色でささやくように言うのだ。

 しかしながらそれは決して慰めなどのたぐいではなくて、むしろ冷静にして冷酷な〝最後通告〟だった……!

「そうです。だから、鬼沢さんもなってくださいよ……俺とおんなじ、アンバサダーに……! オフィシャル・ゾンビ、公式アンバサダーの採用認定に今日はお伺いしました。鬼沢さんは間違いなくその資格がありますから。はい、この俺が保証します」

「公式、アンバサ、ダー……? よくわかんないよ、おれ、それに家族に何て言えば? みんなごめん、パパ、今日からゾンビになっちゃいましたって、そんなの誰も笑えないだろ? いきなり一家の主がさ? そうだよ、というか、そもそもゾンビってなんなんだよ! あとなんでお前が保証できんの??」

 絶望と困惑のない交ぜになった表情で視線をさまよわせる哀れな妻子持ちの著名人に、あいまいな笑みを浮かべる若手の独身芸人はわずかにこの肩をすくめる。

「ああ、まあ、いろいろと整理しないといけませんよね? 基本的に口頭での説明で、何かしらの書類にハンコとか押す必要はないから、なるだけ手短に。ここらへん法的にまだろくすっぽ整備がされてないらしいんですよ。これから収録ですもんね?」

 日下部のとりあえずのイメージです。実際のモデルの芸人さんよりもおじさんぽくなっちゃってますが、これから補正していきます。あと何より似てないですね(^_^;)

 ともすればどこか拍子抜けするような、いっそのこと天然じみたものの言い様だ。

 対して内心では複雑な感情が渦巻くのだろう。

 とかく苦い表情の鬼沢は恨めしげな視線で冷めきった日下部の目線を見返す。

「……うん。でもそんなのちっとも集中できないと思う。はあ、できたらいっそのことドタキャンしてやりたい気分だよ、こんなのはじめてだ。おい、お前のせいだからな? ひとのことをいたずらに〝ゾンビ〟呼ばわりしてくれやがって……!」

 だが相手からの悲痛な訴えも何のそのでまるで動じることがない日下部は、抑揚のないセリフをまたぬけぬけと吐いてくれる。

「ものは言いようですよねぇ? ほんと、ここらへんひとによって意見がえらく分かれるし、だからこそ今時じゃ一般的で、かつ一番わかりやすくって、おまけシンプルな呼び方ってヤツに便宜上で定まったってことなんでしょうけど」

「なんでゾンビなんだよ? 他にも言い方あるだろうっ」

「ああ、まあ、確かに……えっと、憑依霊、ツキモノツキ、背後霊、あるいはあやかしとか妖怪、精霊、悪魔、邪気、悪霊、未確認生物、その他いろいろありますけど、でもやっぱり最近じゃこれが一番ポップでポピュラーなんじゃないですか? すっかり市民権を得ているっていうか、取っつきやすさにかけたらば! それにつき政府が公式に発表している、後天性・遺伝子突然変異型・異形亜人種……だなんて、そんなの誰も覚えられやしないでしょ。ちなみに新聞だとかじゃ亜人種と書いて、ゾンビってルビが振られてたりしますよね! もう一般化しちゃったんですよ。気がつきゃ広辞苑とかにも載ってたりして、ね」

「だからって……ゾンビはあんまりだろ。おれ違うし。絶対に。おれのどこが腐った死体だって言うんだよ、この身体のどこか腐っているように見えるってのか?」

 沈んださまで身をすくめる先輩を間近でぼんやり眺める後輩くんは、やがてその口元に意味深な笑みを浮かべて続ける。

「一口にゾンビって言っても、世間一般でイメージされるものとはかけ離れてたりしますよね、実際の俺たちは? 鬼沢さん、確かにどこも腐っているようには見えないけど、ほんとは身体、ところどころ痛かったりするんじゃないですか? 顔に出てるし」

「んっ、何が? どこも怪我なんてしてやしないだろ? なんだよその目? お前に何がわかるんだよっ!!」

 不機嫌なさまでそのくせ左の肩のあたりを利き手でさする鬼沢は、不安げな顔でみずからの身体をしげしげと見回したりする。

 どうにもウソはつけない性分なのらしい。

 これにしたり顔する日下部はおっとりしたさまでひょうひょうと続けるのだ。


 そしてそれがまたけっこうなぶっちゃけ発言だったりした。

「俺、見てましたから。身体中を盛大に噛みつかれてましたもんね、鬼沢さん! あれは完全な致命傷でしたよ。あの場に俺がいなかったらとっくにあの世行きでした。まあ、結果こんなことになったのは、俺の責任もちょっとはあるってもので、反省はしてます。結果取り憑かれちゃったわけですからね、見事に……!」

「??? ……は? なに言ってんの??」

 ひどく困惑したさまで身体ごとこちらに向き直る鬼沢に、臆面もなく見つめ合う日下部はテンションの低いままでのたまう。

「あの日のこと、何も覚えてないんですか? 結構ショックな出来事に見舞われて、あげく命まで失いかけたのに。身体の違和感はその後遺症みたいなもので、言わば動かぬ証拠でもあるんですよ。あなたが政府公認の認定ゾンビになったっていう?」

「その言い方やめろ! おれはまだ認めてないんだからっ!! それよりもお前、見ていたってどういうことなんだ? 記憶があいまいでぼんやりとしか思い出せないんだけど、おれはお前なんか見た覚えないぞ! いい加減なこと言うなよな、ひとをおちょくって……んっ」


 言葉を荒げると途端に表情を歪めてその場にうずくまる鬼沢だ。

 おまけ身体の自由がきかないのか、それきり固まってしまう。

 これを平然と見つめる後輩芸人は何食わぬ顔でそそくさと懐から取り出した何かしらを相手の眼前に突きつける。

「はい。それじゃ収録にも差し支えるでしょう? アンバサダー、なるしかありませんね。それじゃとりあえず回復アイテム渡しておきますよ。これ、しばらく肌身離さず持っていてください。傷ついたあなたの魂魄をゆっくりと癒やしてくれますから」

「は? なに、コレ??」

 差し出されたものを反射的に受け取ってしまって困惑することしきりの芸人さんだ。

 みずからが手にした、それは小ぶりな長方形の水晶石みたいなものを怪しげに見つめる。

 見かけ半透明のガラス片は内から緑色の光を放つ不可思議な発光体でもあった。

 そう。


 一言で言えば、なんか怪しい。

「いいから持っていてください。魂魄結晶石(クリスタル)なんて一級のレアアイテムなんですからね! 回復が得意な芸人さん、もとい、知り合いの認定ゾンビ、じゃなくて公式アンバサダーのおじさんの念がたっぷりこもっているんですから。そのぶん効果は絶大ですよ」

「は? だから、なに言ってんの、さっきから??」

 ちんぷんかんぷんで手元の怪しい水晶持てあます鬼沢だ。

 ぼさぼさ頭をぽりぽりと掻く日下部はちょっとめんどくさげな顔つきして言葉を濁す。

「ああ、だからその、ここから先は正式にアンバサダーに就任してもらってからですね? でないと機密事項が多すぎて説明のしようがないんですよ。その水晶は特例ですから、他人には見せないでくださいね! 魂魄顕現化ブロックチェーン錬金技術を実現応用したX・NFTなんて国家機密の最たるものなんだから」

「こんぱく、ぶろっ……? えっくす、えぬ、なんだって??」

 いよいよ目が点になるそろそろ中堅どころのベテラン漫才師に、こちらはおなじく若手の漫才師のはしくれの青年はまた別の何かしらをみずからの利き手に取り出して見せた。

「理論や技術的なところはぼくらがどうこう言っても仕方ないことですよ。どうせ理解なんてできないんだから。それでもアンバサダーになった暁には、その特典として付与されるものでもあるんです。たとえばこの俺のこの輪っかもそのひとつですから」

「え、なにそれ? てか、今どこから出したんだ、そんな大きな金属の輪っかみたいなの?? なんか見覚えあるような……」


 頭にはめるヘアバンドくらいの大きさはあるだろう金色の輪っかを手品みたいに虚空から取り出した日下部は、それを実際にみずからの頭にすっぽりとはめてみせたりした。

 その、イメージ的に中国の有名な昔話にあっただろう、妖怪の主人公が頭にはめていたのと酷似したカタチと色合いには、ただちに納得顔して大きくうなずく鬼沢だ。

「あ、そっか、それって西遊記のアレじゃん! やたらに毛深いおサルの主人公が頭にはめてたヤツ!! あれって何て名前だったっけ? てか、お前ってばサルのお化けに取り憑かれてるの? すごいじゃんまさしく孫悟空じゃんっ!!」

「違いますよ。サルじゃないです。でも、ほぼおんなじことができたりするんですよ? この頭の輪っかはこの姿のままで亜人種が持つ力を顕在化させることができるんです。つまりは……」

 そうしておもむろに利き手を目の前にスッと構える日下部だ。

 はじめ怪訝にこれを見る鬼沢だが、何もないはずのその手が何かしらを持っているかの錯覚を覚える。

 そこにあたかも透明の物体みたいなものを……?

 直後、その瞳が驚きにまじまじと見開かれることになる。

 それは真昼の怪奇現象とでも呼べばいいのか?

 結構なことがみずからの身に巻き起こり、魂消る悲鳴を上げてしまう悲しきリアクション芸人だった。

 かくしてまだあたりにひとの気配は見当たらない。

                 次回に続く――

記事は随時に更新されます。

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「オフィシャル・ゾンビ」①

ノベルとイラストとNFTを絡めたオリジナルコンテンツ、いざ開幕、開幕~(^o^)

オフィシャル・ゾンビ
ーOfficial Zombieー

-さいしょのおはなしの、はじまり-


 コン、コン……!

 まったりとのどかな気配が漂う昼過ぎの楽屋に、短く控えめなノックの音が、ひっそりと響いた。

 すると間もなくこの出入り口のドアが開いて、声もないままにそこにひとりの男が入ってくる。

 見た感じはスタッフとも取れる地味な見てくれの青年だった。

 これと主義主張のない平凡な格好に、ろくに手入れもしていないのだろうもっさりとしたぼさ髪と、おまけこれと化粧っけのない素顔で、ひょっとしたら番組ADかと見間違えてしまうほどだ。

 もとい今時のテレビ局ならスタッフのほうがまだこぎれいか?

 その、さながらスタッフ然とした男が、冴えない顔つきしてぼさぼさ頭をぺこりと下げて、ぼそっと一言。

「あ、おはようございまぁーす……!」

 この業界ではほぼお決まりの挨拶文句だ。


 それをいかにも緩い口調で発すると、また頭を上げた先にいる部屋の主のさまをじっとうかがう。

 こぢんまりした畳の和室は六畳ほどで、そこに年の頃で言ったらおそらく三十代も半ばくらいの壮年の男が、ひとりだけ。

 真ん中に木製の座卓があって、傍らの座布団に腰掛けてそこに前屈みで寄りかかる。

 こころなしかやけにかったるそうなさまだ。

 どこか見覚えがある風体で、それは昨今のテレビではよく見かけるそれなり有名なタレントさんだった。

「…………」


 対してそのテレビタレントは、およそろくな返事もないままに視線だけで来訪者の青年をじろりと眺めてくる。

 ひどく怪訝なさまで普段のテレビで見せるような明るさがまるでない、それはそれはひどい素の真顔だった。 

 歓迎されている気配がみじもんない。

 だがこちらもそんなことは端から承知の上で、あはは、とその顔に見え透いた愛想笑いみたいなものを浮かべる青年だ。

 そこからまた控えめな口調でいながら見た目的に完全ノーウェルカムの男性タレントさんとの距離を、しれっと詰めてくれる。

 くたびれた革靴を脱いだらそそくさと畳に上がり込んでた。

「失礼します。あの、今、お時間ありますか? その、できたらちょっとだけ、お話させていただきたいんですけど……」

 相手までソーシャルディスタンスギリギリのところで足を止めて、突っ立ったままで先輩のタレントの丸い坊主頭を見下ろす。

 言えばお笑いタレントとして知られる著名人に、臆面もなく平然と相対していた。

 また言えばじぶんもそのたぐいではあったこともあり。

 やや太めの体つきでさっぱりとしたこぎれいな丸刈り坊主の男は、うざったげな顔つきでこれを見返してきた。

 今やその声つきにもちょっと不機嫌なものがあっただろう。

「……とか言いながら、しっかりと上がり込んでるじゃないか? この俺にはまるで拒否権なんてないみたいにさ。スタッフさんとの打ち合わせはついさっき済ましたから時間なくはないけど、俺、これから収録だよ?」

「ああ、はい。すぐに終わりますから。というか、俺が来た理由、もうわかってたりするんじゃないですか、鬼沢さん?」

 ↑う~ん、まだキャラが固まってない? はじめはこんなもんか…(^_^;)
 OpenSeaでは完全版のノベルを公開中!!↓

https://opensea.io/collection/officialzombie

 ちょっと苦めた笑みで問うてやるのに、当の鬼沢――オニザワと呼ばれた相手は仏頂面でこの視線をそらす。

 内心じゃ苛立たしげなのがもうはっきりと声にも出ていた。

「知らないよ! ていうかお前って何様? お前とこうして話しているところ、ひとに見られたら変な誤解を受けそうだから、出ていってくれないかな? そうだ、もとはただのお笑いタレントが、国の認定だかなんだか知らないけど、怪しいにもほどがあるだろうっ! 俺には関係ない」

「あは、コロナから始まって、ほんとおかしな世の中になっちゃいましたよね、今って? それにしてもひどいなあ、そんなに毛嫌いすることないのに! いくらおれでもちょっと傷ついちゃいますよ、まあ、慣れっこなんだけど……」

 苦笑いではぐらかした物言いしながら、ちょっとだけ寂しげな目つきで相手の横顔を見つめる青年だ。

 これに顔を逸らしたままで恨めしげな視線だけをつとよこす先輩の中堅タレントは、苦渋のさまでまた言葉を発した。

「仕方ないだろ? 俺、ぶっちゃけ怖いよ、お前のこと。だって良くわかんないじゃん。わからないことだらけじゃん。お前ってば……! なあ、日下部、お前って本当に、何なの??」

 日下部――クサカベと呼ばれたその訪問者は穏やかな顔つきのままではじめただ静かにうなずく。

 そうして落とした声音で、何かしらの説得でもするかのようにまた続けた。

 そうたとえ目の前の相手が聞く耳を持たなくともにだ。

「そうですね。でもそれはほら、今の鬼沢さんにだって当てはまることなんじゃないですか? ほんとはわかっているんでしょう、心当たり、きっとあるはずだから……ね」

「ないよ! うるさいなっ、もう出ていってくれっ」

※お笑いコンビ・アゲオンのツッコミ担当、鬼沢のとりあえずのイメージです。実在するお笑い芸人さんをモデルにしたキャラなのですが、うっすらとビミョーですね。てか、似てません(^^;)


 完全にそっぽを向いて吐き捨てる坊主頭はかたくなな態度だ。

 それきりすっかり心を閉ざすのに、顔色の穏やかな、それでいてどこか冷めたまなざしの青年は、ただ一言だけ。

 ぽつりとある言葉を口にする。

「ゾンビ……!」

 ぽつりとだ。

 そして何故だろう、およそそれまでの話の流れにはそぐわない、それは不可思議な響きのワードだった。 

 それきりしばしの間があって、座卓に前のめりで屈む先輩芸人、無言の鬼沢はしかしながらこの身体を小刻みに震わせているのが手元の湯飲みのなす、それはかすかな身震いでわかった。

 良く見ればその横の急須もカタカタと音を立てている。

 もはや内心の動揺は隠せなかった。


 やがて憎悪にも似た歪んだ表情を見せる坊主はきついまなざしで後輩の芸人をきっと見返す。

 あげくは攻撃的な口調でまくし立てるのだった。

 もう我慢がならないとばかりにだ。

「……は? なんだよ、ゾンビって? 誰のことだよっ!? おいっ、誰のことだよっ!! おいっ、ふざけんなよ、どこにいるんだよっ! こいつ、黙って言わせておけば、よくもっ、このおれのどこがゾンビなんだよっ、生きてるんだぞっ、ちゃんと生活してるんだっ、家族だっているんだぞ! だったらおまえこそがっ、おまえだろうよ!! なんだよっ、ゾンビって、ゾンビってなんなんだよっ、ふざけやがって……こんちくしょう!!!」

 激高する相手を相変わらず静かに見つめる青年だった。

 少し不自然なくらいのうっすらとした笑みを口元に浮かべて、どこまでも落ち着き払った物の言いをしてくれる。

 相手の目をただ静かに見返しながら。

「外に声、聞こえちゃいますよ? そんなふうにじぶんから騒いじゃったら。俺もイヤなんで……」

 いきり立つ先輩タレントがぎっと唇をかみしめてみずからの荒げた息を殺すの見届けてから、こちらもみずから前屈みになる訪問者は、さらに声をひそめてぼそりと問いかける。

「……はい。そうですね。俺は、周知の通りです。でも、あなたも、あなただって、そうです。鬼沢さん、あなたももう一度は、死んでいますよね……?」

「……っ、…………!」

 言葉もなく見開いたふたつの眼、その瞳孔が大きく見開くのを黙って見つめる青年、日下部だった。

 そして喜怒哀楽のどれにも当てはまらない穏やかな表情、さながらデスマスクみたいな真顔で言い放たれた言葉、それは果たして真実であったのか。

 物静かでいながら確かな断言、はっきりと断定するかの冷たい響きが余韻にこだました。


「死んで、生き返ったんですよ、あなたも、この俺も……! それにつきゾンビって言葉が正しいかどうかわかりませんが、それでも、事実です。鬼沢さん、わかっているんでしょう。だから俺がここにいるんです。もう、逃げられませんから……」

「ひっ……知らない。知らないよ、やめてよ……」

 顔から完全に血の気の引いたタレントがうなされるみたいな言葉を発する。

 そのさま、まるで動じない青年はただ静かに眺めるばかりだ。
 
 それきりお通夜みたいな静けさが満ちた。

 あたりに人の気配はない。


 そこにひとなどいなかったのか。

 かくしてここにまたひとつの悪夢が目を覚ますのだった。

 悪夢の名は、オフィシャル・ゾンビ――。

 人の世ならざるものが人の世に降り立つ。

 今や悪夢は昼夜を問わずに訪れた……!
 

                次回に続く――

ONCYBERでNFT化したノベルの展示会もやっています!↓↓

https://oncyber.io/officialzombie01

※ノベルとイラストは随時に更新されます!

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DigitalIllustration NFTart NFTartist OpenSeaartist Uncle Bear Tom キャラクターデザイン

OpenSeaNFT/UncleBearCorrection!

OpenSeaで公開しているコレクションの内、一押しのアンクルベアシリーズの売り出しを敢行!爆安でやってます!!

https://opensea.io/collection/unclebeartom
↑コレクションのURLです。画像にもリンクあり(^^)

 ETHで0.001っていうのは、およそで3$前後、日本円で300¥前後なんですかね?
 他にもありますがまた新しい仲間や別ポーズやシチュエーションを加える予定です。めでたく売れたらまた別のパターンを加えてもいいんですかね(^^)
 ちなみにカラー版よりも元となる線画のほうが高かったりするんですが、これは個人的なこだわりみたいなものがあるからで。

カラー版もリリースする予定です(^o^)